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翳ある墓標 [鮎川哲也]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

トップ屋集団「メトロ取材グループ」の杉田兼助は、同僚の高森映子とともに
銀座のキャバレーで取材をするが、協力した映子の友人のホステスが屍体となって発見された。
警察の自殺判定に納得がいかない映子は独自に調べ始めるが、彼女も殺害されてしまう―。
本格ミステリ界巨匠の異色作品。
読み継がれるミステリファン必読の短編「達也が嗤う」を特別収録。

鮎川御大の作品は光文社文庫から出ている「完璧な犯罪」「アリバイ崩し」などの
ベストミステリー短編集、さらには「朱の絶筆」や創元推理文庫で復刊した
「りら荘事件」(後に角川文庫でも発売)などの星影龍三シリーズをこれまで読んで来ました。

本書はノン・シリーズものではありますが、今月8日、あの幻の名作「白の恐怖」が
やはり光文社文庫から発売されたのを機に、同時購入しました。
以下、ややネタバレあり。



ノン・シリーズものですが、個人的には快作です。
いくつものアリバイトリックと、鬼貫警部のアリバイ崩しを彷彿とさせる構成。
そのアリバイ崩しもアンフェアでなく、論理的思考で説かれていくある種の美しさ。

個人的に好きなのは、途中の謎の転換です(という表現で良いか微妙ですが)。
元々、映子は友人であるホステスのひふみの自殺に納得できず、他殺の疑いを持って
事件の取材(捜査)を始めますが、その映子が殺害され、「探偵役」が同僚の杉田へ
バトンタッチされます。

映子も杉田もひふみの恋人に行き当たり、彼女の死の真相を聞かされます。
ところが、ここで物語は終わらないのです。
映子はその先に何を見つけたのか?そしてなぜ彼女が殺されたのか?
ひふみ殺害の犯人から、映子殺害の犯人へと謎が引き継がれるのです。
(大きな意味ではひふみの殺害犯と映子殺害犯は同一ではありますが、あえてここは独自解釈)

本書は異色作、通俗小説とありますが、そんなことはありません。
読者へは謎を解く鍵は全て示され、多重のアリバイトリックなど、まさに本格推理。

あえて難点をいえば、犯人が明らかになるところでしょうか。
ここがあまりにもあっけなかった。突然の終幕といった感じでしょうか。
真犯人、というのが良いのかわかりませんが、やや蛇足だったような気もします。

ところで、御大のあとがきでは、ある事情によりプロットを大幅に変更することになった、
とあるのですが、これはどういう事情だったんでしょうか。
そして元々はどんなプロットだったのかとても気になりました。

もう一つの収録作「達也が嗤う」は犯人当て小説。
元々は日本探偵作家クラブの例会で朗読された作品で、後に小説化したもの。

本作についてはもはや語るまでもなく傑作です。
この短編の中に、これでもかと謎とそのヒントを詰め込み、あくまでもフェアに
事件を解決できるという素晴らしさ。
その表題作までヒントが隠されているというこだわりはさすが本格の鬼。

余談ですが、犯人よりもある人物が男だという事の方が難しいと思います(笑

次は「白の恐怖」を読みます!



翳ある墓標 (光文社文庫)

翳ある墓標 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫



nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

コースケ

31さま、nice!ありがとうございます~
by コースケ (2018-08-13 23:15) 

コースケ

@ミックさま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2018-08-13 23:18) 

コースケ

マルコメ様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2018-08-13 23:23) 

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