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静かな町の夕暮に [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。


こんなに楽しくていいのかな。
小さな町に撮影隊と事件がやってきた。

山あいの田舎町に三週間だけ映画の撮影隊がやってきた。
ビッグニュースに町は沸く。
地元の高校演劇部にも声がかかり、部長の法子もスクリーンデビューすることに!
撮影が終わったある夜、演劇部の後輩克枝が夜中に保健室の明りを見つけ、
近づくとそこには男女の姿があった。
その二人は誰だったのか法子に話す前に克枝は殺されてしまう!
高揚していた町は不思議な沈黙に包まれ――。


更新が止まってしまっておりました。しかし暑い!
以下、ややネタバレありです。





赤川さんのノン・シリーズはほとんどハズレがない。
講談社文庫でかつて発売されていたとは知りませんでした。
それにしても、徳間さんの新装版、復刊は本当にありがたい。感謝感謝です。

本作の主人公は赤川作品常連ともいえる、女子高生の指田法子。
彼女の住む、山間の町に、映画のロケ隊がやってきたことから、事件は始まります。

といっても、彼女が探偵役という訳ではありません。
ただ、彼女は、このロケ隊が来たことから、自身の人生や、自分が住んでいた町、
さらには大人たちの勝手な都合などを、次々と目にすることになっていきます。

真相が語られた最後、彼女は「『良かったですね』なんて言う資格は、誰にもないわ」と
強い口調で言います。これが彼女の今回の事件への怒りそのものですね。

「かもしれない」、という曖昧な表現で、なぜか町の外れに住む平井家の人々が犯人に
されているのか。かつてあったある事件がきっかけとはいえ、これは極めて陰湿です。

今でもあるのかもしれませんが、ある意味「村八分」的なものなのでしょう。
事件は確かに解決しました。しかし三屋久美、佐野康代・ユリ母娘、平井啓一、
彼彼女たちは誰一人として、救いがありません。
(啓一にとっての唯一の救いは、殺害された岡田典子の手紙でしょうか。)

そして、法子たちが住んでいた町も、平穏を取り戻すのでしょう。
しかし、町の本質は変わっていません。
法子たちが東京へ引っ越すというのも、ある意味脱出とも取れてしまいます。
この辺り、大団円と見せかけて、中々に後味の悪い作品を描かれたなあと
勝手に思いました。

ところで解説で述べられている、講談社推理特別書下ろし、の第1期ラストを
本作が飾ったというお話。もちろん初めて知りましたし、
この叢書レーベル自体も初耳でした。
確かに後世に残る作品が送り出されていて、素晴らしいの一言。

過去のミステリの歴史を振り返る作品というのは、
『本格ミステリ・ディケイド300』などあり、私も持ってますが、
より奥深く、こうした各出版社のレーベルのみならず、そのラインナップにも
迫る、ミステリ評論のような書籍が出てくれると、うれしいですね。
刊行した作家さんのオーラル・ヒストリーもぜひ収録で。
(すでにされている書籍があったらすいません。)



静かな町の夕暮に 〈新装版〉 (徳間文庫)

静かな町の夕暮に 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/06/08
  • メディア: 文庫



静かな町の夕暮に (講談社文庫)

静かな町の夕暮に (講談社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: Kindle版










nice!(9)  コメント(4) 
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コメント 4

31

コースケ さん、こんにちは。
実はこの「静かな町の夕暮に」、講談社推理特別書下ろし版で持ってます。
当時の第一線ミステリ作家がこぞって書いていたような......
たしか岡嶋二人の「そして扉が閉ざされた」もこの叢書だったかと。
by 31 (2021-07-18 19:15) 

コースケ

皆様、nice!ありがとうございます。いつもご訪問、感謝いたします。まとめての御礼、ご容赦ください。
by コースケ (2021-07-20 23:18) 

コースケ

31さま、こんばんは。
コメントありがとうございます。

それはすごい!いや、プレミアついてるかもしれませんね。
島田荘司さんの「異邦の騎士」「暗闇坂」などもそうで、
いやすごいシリーズですね。
一方、内田康夫さんや西村京太郎さんも書かれていたようで、まさにオールスター的な感じだったんでしょうかね。
by コースケ (2021-07-20 23:22) 

コースケ

ゆーじあむ様、ご無沙汰しております。
nice!ありがとうございます!
by コースケ (2021-07-31 19:12) 

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