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本と鍵の季節 [米澤穂信]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、
同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、
快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、
図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、
その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、
男子高校生ふたりが挑む全六編。

「古典部」や「小市民」シリーズを比較として挙げておられる方も多いようです。
青春ミステリーという括りになるんでしょうが、個人的には結構ダークな面もあるなと
いうのが読了後の感想。

青春ミステリに近いのは「ない本」かなあと個人的に。
死というのが、中高生にも極めて近い存在となっているのが現在であり、
もちろんイジメによる自殺などもっての外で、断罪されるべきですが、
なんとなく生きていることに不安を持ち、自殺してしまう若者も多い。

この作品では自殺そのものがメインではないですが、長谷川先輩の
行動はなんとなく理解できます。
それと、探偵役である堀川と松倉の考え(というか、捉え方)がまるで違うというのも、
本作ではしっかり浮かび上がっていて、その後のある意味本書メインの
「昔話を聞かせておくれよ」に繋がるんですよね。

最もミステリ色が濃いのはどれか?これは中々難しく、
どんでん返し的な面白さでいえば、「913」。
ただこの作品も暗さがかなり強いんですよね。「昔話を~」にも繋がる話でもあります。

探偵役が完全に第三者的なものでいえば、「ロックオンロッカー」
美容院の店長の、何気ないある一言から、推理を組み立てていく2人はまさに名探偵。
暗さもなく、最後の描写も面白いです。

解説とは私では捉え方が違うのでしょうが、最終話「友よ知るなかれ」は
ラストシーンで果たして松倉は図書室に来たのかどうか、実は来なかったのではないか、
という余韻を残したように、私には感じました。

別に松倉が悪いわけではないのです。堀川の説得も素晴らしい。
しかし、それでも彼は来られなかった、堀川が選んでほしかった選択肢を
選ばなかったとも読めて、ダークな印象なんですよね。

ところで、解説で続編に触れているのですが、確かに「このミス2021」の「私の隠し球」
で米澤先生が触れています。
ということは、松倉は図書室に現れたんですねえ。
一方で、なんとなく本作はこれで終幕でも意外とよかったなと思う自分もいます。


本と鍵の季節 (集英社文庫)

本と鍵の季節 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/01
  • メディア: Kindle版







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コースケ

皆様、遅くなりましてすいません。
nice!ありがとうございます!
by コースケ (2021-09-11 15:11) 

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