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記憶の中の誘拐 赤い博物館 [大山誠一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

緋色冴子シリーズ第二弾。文庫オリジナルで登場!
赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、
未解決事件に挑むシリーズ第二弾。

本書第一弾のブログ記事は2018年。ということは4年ぶりの新作ということです。
以下、ネタバレあり。
第一弾はコチラ





前作は安楽椅子探偵でもありましたが、本作ではすべて緋色警視が資料館から
外出するというのが特徴です。

「夕暮れの屋上で」。「先輩、もうすぐお別れですね。」という言葉の意味を
どう捉えるのか。本作はこの1点が極めて秀逸です。
卒業式間近という時期、「先輩」「お別れ」という言葉。
こうした状況と言葉から、ある種の必然ともいえる思い込みを見事に覆した作品です。

「連火」。犯人はなぜ放火するのか。放火された家の共通点とはなにか?
これが本作最大の謎です。
この真相は、いわゆる隠れ事故物件、というより事故土地でしょうか。
そんなオカルト的な話にありそうですが、本作で上手いのは、
「またあの人に会えなかった」という犯人と思われる人物が残した言葉の意味でしょう。
これも前作と似ていて、「あの人」とは誰なのか、というのが、
緋色の、完璧にまでに論理づけられた絞り込みにより、判明するところがお見事。

「死を十で割る」。犯人はなぜ被害者をバラバラにしたのか。そこにある必然性、
しかも、どうバラバラにしたのか、つまり単なるバラバラ殺人ではなく、
どこをどのようにバラバラに切断したのか、から推理を組み立てていくという傑作です。

犯人自体はなんとなく(むろん緋色の論理立てた推理から導くのではなく)予想できる
のですが、上記のバラバラから、死後硬直の時間、72時間から96時間以内に被害者が
死んだことを知らしめたい人物、特殊な姿勢が犯人と結びついている、この3点から
犯人を指摘します。
特に、2番目の条件が実に慧眼で、思わず唸ってしまいました。
個人的には本作愁眉。

「孤独な容疑者」。本作は、緋色の推理はともかく、果たして犯人がここまで
上手く逃げおおせられるか、というのがやや疑問でしたね。

「記憶の中の誘拐」。最後に緋色がいう、2003年に時効が成立しているというところ。
殺人罪ですが、時効が撤廃されているが、時効なのかと、どうでもいいところが
気になりました(笑)
wikiによると、「「人を死亡させた罪であって(法定刑の最高が)死刑に当たる罪」
については公訴時効が廃止」とあるので、それに該当しない、という事なんでしょうか。

全編にわたっていえることですが、緋色の推理は火村英生の詰め将棋の如き推理を
彷彿とさせますね。決して突拍子もない所からの出発点ではない。1つ1つの論理を
綿密に組み立てていき、彼彼女しか犯人たり得ない、と結論づける。

とはいえ、彼女がずっと資料館に留まっている謎は未だ解明されず。
次作に期待です。


赤い博物館 (文春文庫)

赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 誠一郎, 大山
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 文庫



記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/01/04
  • メディア: Kindle版










nice!(5)  コメント(5) 

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コメント 5

コースケ

xml_xslさま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-05 18:06) 

コースケ

鉄腕原子様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-05 18:09) 

コースケ

@ミック様さま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-05 18:10) 

コースケ

31様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2022-05-05 18:10) 

コースケ

サイトー様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2022-05-05 18:10) 

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