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少年検閲官 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印
が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、
クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。
書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。
本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。



『オルゴーリェンヌ』が文庫化されたので、シリーズを読み始めようと
購入した1冊。

あくまで私個人のこれまでの嗜好として、メルヘンというか、特殊世界というか、
異世界というか、そうした場所を舞台としたミステリは避けていました。
北山先生の作品は『『アリス・ミラー城』殺人事件』が初で、
その後引きこもり探偵シリーズを読み始め、『猫柳十一玄』を読み・・・と
きたところで、以前書いた講談社文庫の2冊や、本シリーズなどは
意図的に避けていた、という感じです。

が、ここにきて色々と幅を広げるという意味でトライしているという。

本作は、書物がない、禁止されている世界、焚書が当たり前、
人類には政府の大本営発表的なラジオから発信される情報しかないという、
ディストピア的な世界で、描かれる殺人事件を、検閲官が解き明かすというストーリーです。

なので、本書を読んでいく際には、事件の謎だけでなく、この世界観、世界の種々の
謎(まあ設定でしょうか)も合わせて考えていく、知っていく必要があるので、
中々読み応えがありました。

犯人の動機は極めてこの世界の中においては極めて単純ですが、
それを実行すると、これほどまでに残酷になるのか、というのが最初の感想。
物語の中では平然と語られていますが、想像を絶しますね。
それを平然と聞いていられる関係者も凄かったな。
この辺りが、この世界に住む人々の特殊性なのかもしれません。

ミステリそのものは、かなり練り込まれていて、
最初で描かれた小屋が消えるトリックや、少女が「復活」する話。
そして事件の中心的トリックたる湖での犯人消失。また、家に赤い印を付ける意味。
これらの謎が見事に論理的に解き明かされていくのは流石の一言。

また、この世界観から、犯人が探偵と呼称され、事件を解決するのが検閲官というのも
面白いですね。クリスが物語中で苦しむのも理解できる。
しかし、なぜこの街の人々は、この犯人を「探偵」と名付けたのか?
その辺りはよく分かりませんでした。

また、「ガジェット」という、本作世界観では欠かせなそうなシロモノが
出てくるのですが、いまいち重要性がわからなかったなあ。
「首切り」のガジェットというのがあって、それを持っていた、だから
犯人は首切りを行っていた?訳ではないですよね。
(私の読み込みがまるで足りてないのかもしれません、すいません。)

物語全体としては、ミステリとしては非常に面白いものの、
作者が創ったこの世界観をそれに充分に活かせているかはかなり疑問。
焚書や書物のない世界、もミステリだけない訳ではなく、他の本もないですしね。
それと、探偵は謎を解く存在なのだ、というクリスの思いも、本世界観だけでは
中々説明しにくい。実際に書物を知っている人たちも大勢まだいるようですし。

とはいいつつ、次もそのうち読み始めよう。


少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: Kindle版







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コメント 7

コースケ

xml_xslさま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-29 18:38) 

コースケ

31さま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-29 18:38) 

コースケ

サイトー様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-05-29 18:38) 

コースケ

鉄腕原子様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2022-05-29 18:39) 

コースケ

@ミック様さま、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2022-05-29 18:39) 

コースケ

mayuさま、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2022-05-29 18:39) 

コースケ

むうぴょんこ様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2022-06-05 15:05) 

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