SSブログ

ダイヤル7をまわす時 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

【生誕90年記念出版第1弾】
泡坂ワールドのすべてを愉しみ、
愛することができたのは、
この本に出会えたからだ――櫻田智也(解説より)
読めば必ず騙される!
名品『煙の殺意』に匹敵する短編集

戸根市で対立する暴力団・北浦組と大門組は、事あるごとにいがみ合っていた。
そんなある日、北浦組の組長が殺害された。しかも殺害現場で、
犯人が電話を使った痕跡が見つかる。犯人はなぜすぐに立ち去らなかったのか、
どこに電話を掛けたのか? 
「読者への挑戦」付きの、正統派犯人当て「ダイヤル7」。船上で起きた殺人事件。
犯人はなぜ死体をトランプで装飾したのか? 
トランプの名品〈ピーコック〉をめぐる謎を描く「芍薬に孔雀」など7編。
貴方は必ず騙される! 
奇術師としても名高い著者が贈る、ミステリの楽しみに満ちた傑作短編集。

泡坂妻夫先生の本書と、櫻田智也先生の『蝉かえる』が同時文庫発売とは、
明らかに東京創元社さんは狙ってますね。
なお、『蝉かえる』はまだ未読。まずは御大のお手本をと(笑

ここ数年、都筑道夫先生作品と同様、泡坂妻夫先生の作品も数多くが復刊され、
嬉しい限りです。
創元推理文庫を中心に、河出文庫からも刊行されました。
しかし、まだまだ作品は多くあり、本書も当然ながら未読でした。

タイトルの「ダイヤル7」は、先生作品では珍しい犯人当て小説!
当然のことながら、わかりませんでした(苦笑

今の若い世代が読んでも、まずわからない「ダイヤル」式の電話ですが、
鑑識の意地の捜査で、触れているダイヤルがわかり、そして、なぜ
犯人が殺人を犯した後に電話をしなければならなかったのか?ここに全ての謎が
詰まっています。
ところで、本作はある場で聴衆がいる前で、塚谷さんの依頼で、長く警察に勤めていた
久能なる人物が語る内容になっています。
ここは犯人当てとは直接的に関係ないものの、ラストまで行くと決して犯人当てだけでは
終わらない結末となっています。

「芍薬と孔雀」は、奇術師の顔を持つ御大ならではの作品です。
そしてトランプが事件の鍵を握るのも流石。
しかもこの作品。謎の解けていく過程が見事で、本書所収内で一番かと思います。

「飛んでくる声」は「意外な結末」の好編。
さらには「意外な探偵」も登場します。

「可愛い動機」、動機がものすごいところから来てますが、
今の世の中では珍しくないかもしれないと思ってしまうところが怖いですね・・・

「金津の切符」はコレクター同士の諍いを描く物語。
倒叙形式で書かれていて、箱夫の心情がそれなりにわかるだけに、すこし辛い作品ですね。
しかし刑事のラストの謎解きは、刑事コロンボのラストのような驚きがあります。

さて本作の中で私のオススメは「広重好み」です。
この作品は、亜愛一郎シリーズの「DL2号機事件」を、個人的には彷彿とさせました。
殺人や盗みなどの犯罪は一切描かれないものの、このタイトルの意味と結末は
泡坂先生にしか書けないのではないか。

「青泉さん」は、彼によって周囲の人生が変わる物語。
殺人が起きてはいますが、そこが主眼ではなく、「青泉さん」の生き方が主眼です。


ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/02/20
  • メディア: 文庫






nice!(5)  コメント(1) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 1

コースケ

皆様、いつも御訪問&nice!ありがとうございます!
by コースケ (2023-06-24 21:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。