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双蛇密室 [早坂吝]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

本邦初トリックに唖然!

「蛇の悪夢」は「地と天の密室」に関わりが?
ミステリランキングを賑わす「らいちシリーズ」最強作!

援交する名探偵・上木らいちの「お客様」藍川刑事は
「二匹の蛇」の夢を事あるごとに見続けてきた。
幼い時に自宅で二匹の蛇に襲われたのが原因のようだが、
その裏に藍川の両親が関わった二つの密室事件が隠されていた。
らいちが突き止めた前代未聞の真相とは?
「本格」と「エロ」を絶妙に融合した人気シリーズ!

以下ネタバレを少し含みます。





今回はシリーズキャラクター、というか、らいちの援交相手である藍川刑事の
過去に迫る作品。
タイトルでどかんと銘打っているように、ずばり密室トリックです。しかも2つも。

2匹の蛇と2つの密室(天の密室と地の密室)が実にうまくリンクしています。
藍川刑事の夢に出てくる蛇も、実在の蛇とメタファーとしての蛇という、
密室と同じく2つの意味があるというのは、援交探偵というシリーズらしい、
うまさを感じました。

そして、2つある密室の、地の密室のトリックは、推理小説史上、前例のない
前代未聞のトリックであることは間違いありません。
このトリックも援交探偵というシリーズだからこそできたトリックとも言えます。

ただし、このトリック、あまりに飛び抜けすぎていて、見抜けるかどうかとかでなく、
実現可能なのかどうか・・・ここは評価が分かれそうです。

一方で、本作は藍川刑事にとってどうやら大きな転換になった物語であり、
ラストの1行が、シリーズ次作を早く読みたいという衝動に駆り立てます。
もっともあとがきを読むと、藍川刑事は登場はするみたいですが(笑
それでも、二人の関係性はどうなるのか気になるところです。


双蛇密室 (講談社文庫)

双蛇密室 (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: 文庫



双蛇密室 (講談社文庫)

双蛇密室 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: Kindle版



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綱わたりの花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

誘拐された花嫁は別人!?
本物はどこへ?

結婚式に覆面をした三人組が飛び込み、花嫁を誘拐した。
しかし、さらわれたのはアルバイトで花嫁のふりをしていた久美子だった。
久美子の母親や友人の塚川亜由美は、本当の新婦・美亜の父親で
大富豪の坂戸に身代金の立て替えを頼むが、聞く耳を持たない。
その横暴な態度が、思わぬ波乱を巻き起こすことに!
長編ユーモアミステリー、人気シリーズ第30弾。



花嫁シリーズでは、久しぶりの長編です。
(というか前回の長編は何でしたっけ?手元に無く確認できず)

誘拐された花嫁が、実はアルバイトでという所から始まる誘拐ミステリ。
普通に考えればその時点でタイムリミットサスペンスになるのですが、
そこがそうならないのが、赤川作品。
なんと誘拐された花嫁が誘拐団に加わるという奇想天外な事態に。

さらに、本物の花嫁・坂戸美亜は、八田圭治と駈け落ちするのですが、
その周囲でもなにやら不穏な空気が・・・

花嫁の誘拐という事件から、殺人事件やさらにその他の事件まで
次々と起こり、長編らしさを感じます。

最後は相変わらず、かなり強引な大団円的な結末なのがちょっとなあ・・・と思いましたが、
亜由美の両親が普段と何ら変わらないのはさすが。

本作はシリーズ第30作目という記念作品なんですね(それもあり長編?)。
シリーズ一覧を見ると、『紙細工の花嫁』とか『半人前の花嫁』などを思い出します。

亜由美のボーイフレンドである谷山先生の影が最近かなり薄いので、
次作ではぜひその活躍をみたいです。


綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫



綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: Kindle版



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いまさら翼といわれても [米澤穂信]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

謎解きを通し〈古典部〉メンバーの新たな一面に出会う、シリーズ第6弾。

「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」夏休み初日、折木奉太郎にかかってきた
〈古典部〉部員・伊原摩耶花からの電話。合唱祭の本番を前に、
ソロパートを任されている千反田えるが姿を消したと言う。
千反田は今、どんな思いでどこにいるのか――会場に駆けつけた奉太郎は推理を開始する。
千反田の知られざる苦悩が垣間見える表題作ほか、〈古典部〉メンバーの過去と未来が垣間見える、
瑞々しくもビターな全6篇。

久しぶりの<古典部>シリーズ。
短編集ですが、本シリーズとしての転換点が描かれる作品群ではないでしょうか。

奉太郎の省エネ主義がいつからなのか。「やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことなら手短に」というのはいつから始まったのかが
明かされる『長い休日』
この主義。<古典部>入部してからの奉太郎に果たして当てはまるのかなあ(笑

伊原摩耶花の漫画研究会退部と、その過程、(さらには進路?)を窺わせる
『わたしたちの伝説の一冊』
そして摩耶花の奉太郎への微妙な感情が描かれた『鏡には映らない』

最もミステリ色が濃いのは『箱のなかの欠落』ですが、
これは犯人の目的も意図も不明すぎるのが難点でしょうか。
そこは奉太郎らには確かに関係ないのですが(票が増えた理由を明かすのが目的)
それにしても、不可解すぎるなあと感じました。

表題作『いまさら翼といわれても』は千反田えるの<家>に関わる問題。
本作があるからこそ、次作以降の<古典部>がどうなるのか楽しみです。
千反田家の事情なども次作以降で明かされるのでしょうか。


いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれても (角川文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



いまさら翼といわれても 「古典部」シリーズ (角川文庫)

いまさら翼といわれても 「古典部」シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版



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狩人の悪夢 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「俺が撃つのは、人間だけだ」
臨床犯罪学者・火村英生と、相棒のミステリ作家、アリスが、
悪夢のような事件の謎を解き明かす!

人気ホラー小説家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、
京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。
そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。
しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、
白布施のアシスタントが住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、
右手首のない女性の死体が発見されて……。

以下ややネタバレです。







作家アリス&臨床犯罪学者・火村英生シリーズ文庫版最新作。
これまで国名シリーズも含めて、このシリーズ全て読んでいますが、
本作はシリーズ最高傑作ではないかと、個人的に感じました。

本シリーズの核は、ど派手なトリックや、どんでん返し、意外な犯人等々・・・
いまよく帯やポップで見る宣伝文句ではありません。
本当に綿密に組まれたロジック。そして火村英生の詰め将棋のような推理。
派手さはありません。しかし、推理小説として極めて完成度が高い。

本作では、被害者の右手首と左手首が切断されるという、極めて奇妙な謎が
提示されますが、火村に言わせれば、それも「散らかっているだけ」
そしてもうひとつ、火村の言をあげれば、
「動機については無視して考えました。これは私のいつものやり方です。」
と、解説の宮部みゆきさんも引かれている一言。

そう、あくまで火村は誰がこの事件を起こすことができたのか、
それを絞り込んでいくフィールドワークを丹念に行っていくのです。

今回も先ほど挙げた切られた手首や、最初の被害者沖田頼子が探していたものとは何か。
亡くなった渡瀬信也を巡る人間関係等々・・・いくつもの興味深い謎が提示されますが、
物語の核心はそれらではない(もちろん核心にせまるピースではあります)。

上記は僕が火村が犯人を名指しした推理の過程を読んで思ったことなのですが、
この過程はかなり驚きました。
犯人の絞り込み、実に極めてシンプルなのです。それは読者へも提示されていたのですね。
それだけに驚きが増しました。

しかるにそれだけでなく、犯人を追い詰める役が火村からアリスへ変わった所も驚き。
これまでのシリーズでは無かったのでは?(あったらすいません。)
これは犯人との関係性もあったのかもしれませんが、久しぶりに事件に二人で
取り組むというのも理由の一つだったのかも。

そしてこの推理を犯人に突きつけた時、物的証拠は一つも無いという事実もまた驚き。
状況証拠と推理で火村は犯人を追い詰めるつもりだったのです。
火村にとっては当然なのかもしれません。なぜならあらゆる状況を考えて、
この人物しか犯人たり得ないと結論付けていたから。

事件発生までがおよそ100ページ。解決編が始まるのが384ページから。
およそ300ページ弱、火村のフィールドワークが続き、
その結果、推理はおおよそ50ページ程。
一体この流れから、どんな事件が起こるのか。
そしてこんな容疑者が少なく、五里霧中のような事件を火村はどう解くのか。
それを考えれば一気読み確実のミステリです。



狩人の悪夢 (角川文庫)

狩人の悪夢 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版



狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版



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闇が呼んでいる [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

それは、
君たちの噓のせい。
復讐の幕があがる!

女子大生の田渕美香は友人の轟淳子、黒沼さとみ、池内小百合と六本木の店で
マリファナを喫っていた。ところが、薬で眠らされてしまう。気がつくと乱暴された跡が!

美香は外務大臣の娘。麻薬パーティにいたなんて知られるわけにはいかない!
同級生の西川勇吉を乱暴した犯人に仕立て上げ逮捕させることに成功する被害者づらの彼女たち。
西川は追い詰められ自殺してしまう。

数年後「逃れることはできない」と奇妙なメッセージが彼女たちのもとに届く。
差出人は罪を着せられた西川だった!
復讐の幕があがる。


単なるクラスメートにえん罪をきせ、自分たちの幸せは守ろうという、
そして田淵美香の父親は現職の大臣。財力もある。
金と権力で不祥事を揉み消す、絶好の立場です。

ただし、父親は娘の言い分しか知らないため、美香ほどの罪はないでしょうが・・・

この4人組は仲良し四人組というだけではない点は、大学生時代の頃から、
特に池内小百合から語られますが、
この小百合が一番このえん罪事件で大きく変わってしまったのではないでしょうか。

特に黒沼さとみは意図していないにはしても、彼女を頼ったおかげで、
人生の絶頂とどん底を味わっています。

美香の家も最後家庭崩壊するのですが、しかし、これはえん罪事件による
ものだけではありません。
夫である清水真也が浮気したことは、この事件を聞かされたから、だけでしょうか?

西川自身も死んでしまい、両親も亡くなった今、彼女たちに復讐しているのは
誰なのかが、最後までわかりません。
しかし、この犯人の行動も、復讐という面だけでなく、贖罪という面も大きいような
気がします。

ところで、ものすごく蛇足でかつ物語に一切関係ないのですが・・・
4人組の一人である轟淳子と、同じ同級生の馬場百合香が母校で講師をしているという
のは、かなり恵まれているよなあ。また20代の若さで大学講師とは・・・(笑
後にいずれも非常勤講師ということが判明しますが、それでもすごい。
今の時代は考えられませんね。


闇が呼んでいる (徳間文庫)

闇が呼んでいる (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/05/14
  • メディア: 文庫



闇が呼んでいる (幻冬舎文庫)

闇が呼んでいる (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/09/30
  • メディア: Kindle版



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