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シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 [シャーロック・ホームズ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1889年冬。とある名家のマダムと知り合ったホームズとワトスンは、一族の夕食会に招かれた。
だが最後の料理皿の銀蓋を開けると、そこに人間の切断頭部が…。事件調査のため、
一族が暮らすスコットランドの古城にすぐさま向かった二人。その城は幽霊が出ると噂されていて、
何年も前から不審死が相次いでいるようで―。
すべての謎はやがて予想外の結末へ!本格パスティーシュ第2弾。

ポニー・マクバードによるシャーロック・ホームズの冒険譚第2弾。
前作と本作を読んで、なんとなくですが、これらはポニー・マクバードが
シャーロック・ホームズという人物を探偵役に据えて描いた事件で、
ホームズパスティーシュではないのではないか、ということです。

ホームズを探偵役とすれば、パスティーシュあるいはパロディだと
考えるのが当然なのでしょうが、
「芸術家の血」と本作で描かれているホームズは
聖典のホームズとは、違う印象を強く持ちます。

前作も本作もホームズらしからぬミスがあったり、
前作は派手なアクションシーンらしきものがいくつも出てきたり、
本作では、ホームズの語られざる学生時代、しかもそこに
アイリーン・アドラー以上の女性が登場したりと、
聖典からだいぶかけ離れてるなあと。

特に本作では上記の語られざる学生時代の話が、物語の核心でもあるし、
想像を逞しくすれば、ホームズがアイラ・マクラーレンからの依頼を
頑なに受けなかったのも、上記の過去が関係している事は明白ですね。
何よりも事件そのものへの興味から、ホームズは依頼を引き受けるのであって、
邪推かもしれませんが、個人的な事で引き受けないというのも
聖典ではないでしょう。

解説で日暮雅通さんが書かれているように、ホームズがなぜ大学を去ったのか、
女性を避けるようになったのかを、見事に説明している、という捉え方も
あるのでしょうが、うーん、中々に難しい。
シャーロキアンの方々は、本シリーズをどう受け止めているのだろうか。

事件の始まりや、亡霊の出る館の秘密など、それらの謎は中々面白く、
終盤にあかされていくマクラーレン家(当主)の抱えていた秘密と密接に関係してきて、
読み応えがあるのですけどね。
(ただし、エリザベス・マクラーレンの死はよくわからず。)

といいつつも、おそらく三部作最終作も購入して読むはずです(笑



シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

  • 作者: ボニー マクバード
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: 文庫



シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

シャーロック・ホームズの事件録 眠らぬ亡霊 (ハーパーBOOKS)

  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ジャパン
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: Kindle版



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ひとり暮し [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

東京の大学に入学した依子は、念願のひとり暮しをすることになった。
家賃が安いだけがとりえのアパートに決めたはいいが、複雑な事情がありそうな住人ばかり。
入居早々、部屋は隣に住む女性の荷物に占領されており、自分の荷物を預かってくれている
という部屋を訪れると、そこの住人が倒れていた!どうやら、自殺未遂を繰り返している人物…。
しかも、彼女を助けたことがきっかけで、女優デビュー?波瀾万丈の青春ミステリ。

赤川作品はこれまで多く読んできましたが、この作品はこれまで読んだ系統には
あまり当てはまらない感じがしました。
というのも、説明文には「青春ミステリ」とあるのですが、
本書はミステリというジャンルになるのかなあと。

主人公の板垣依子の成長を描く物語、かとも思いましたが、
そうでもない(苦笑)
というのも、物語が進んでいっても、
彼女自身の性格は全く変わっていないからです。
むしろ、持ち前の優しさで、彼女の周囲の人たちの人生を良い方向へ変えていきます。

そして殺人など到底起こりません(傷害事件は起こりますが)。

赤川作品のヒロイン像とも依子は少し違うし、ユーモアミステリでも
青春ミステリでもなく、だけど、おもしろく、読後感が良い小説。
まだまだこうした赤川作品も多そうな気がします。



ひとり暮し (角川文庫)

ひとり暮し (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: 文庫



ひとり暮し (角川文庫)

ひとり暮し (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: Kindle版



ひとり暮し (幻冬舎文庫)

ひとり暮し (幻冬舎文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 文庫



ひとり暮し (幻冬舎文庫)

ひとり暮し (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2002/09/30
  • メディア: Kindle版



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女學生奇譚 [川瀬七緖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

この本を読んではいけない――奇妙な警告文の挟まれた古書が
オカルト雑誌の編集部に持ち込まれた。
古書の持ち主だった兄が数カ月前に失踪し、現在も行方不明だと竹里あやめは訴える。
フリーライターの八坂駿がその本を少しずつ読み始めると、周囲で不気味な出来事が続く。
いたずら? 狂言? それとも……。
八坂はペアを組むカメラマンの篠宮、依頼人のあやめとともに、古書の謎を追う。

以下、ややネタバレあり。


川瀬さんの作品は「よろづのことに気をつけよ」以来2作目。
前作は期待外れだったんですよねえ・・・

本作もオカルト系という伝承系とミステリの組み合わせだと思いましたが、
「女學生奇譚」を読みながら、謎を解いていく八坂&篠宮コンビは好感が持てます。

女学生たちがどこへ連れて行かれたのか、その真相を看破し、
奇譚に描かれている屋敷や遺骨を発見するまでは、1つのミステリとして
かなり面白かったです。

ただ、ここからが問題。
というか、最初に「この本を読んではいけない」という警告文から
全てが始まっているのですが、
途中途中に挟まれる八坂を襲う不可思議な現象。
唐突に登場する八坂の双子の弟。

このあたりの伏線を一気に回収するのが、最後の謎解き&真犯人の登場なんですが、
これは蛇足だったような気がします。

むしろオカルト系ライターとしての八坂とカメラマン篠宮コンビを主人公とし、
こうした奇書の謎を解いていくシリーズとした方が良かったのではないでしょうか。

シリーズを重ねていく上で、八坂の弟の存在や、彼の持つ特殊な性格、
それらを匂わせながら、本作の展開にもっていった方が、まだ受け入れやすい。

物語がタイトルの「女學生奇譚」から、一気に乖離していくのが非常に残念。
ただ、「この本を読んではいけない」は八坂の興味を惹くだけでなく、
読者の興味も惹くので、無かった方がいいかと言えば、微妙なところ。

「女學生奇譚」という奇書をめぐるミステリとしては快作。
しかし、全体としてみると、陰謀論のような、残念な作品な気がしました。



女學生奇譚 (徳間文庫)

女學生奇譚 (徳間文庫)

  • 作者: 川瀬七緒
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 文庫



女學生奇譚 (徳間文庫)

女學生奇譚 (徳間文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: Kindle版



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泡坂妻夫引退公演 手妻篇 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。その最後の贈り物である作品集を、
二分冊にした文庫化でお届けする。
手妻篇は、辛辣な料理評論家を巡る事件の謎を解く「カルダモンの匂い」ほか、
ヨーガの達人にして謎の名探偵・ヨギ ガンジーが活躍するミステリシリーズ、
酔象将棋の名人戦が行われた宿で殺人が起こる、単行本刊行後に発見され初書籍化となる「酔象秘曲」、マジシャン同士の心の機微を描く「ジャンピング ダイヤ」ほか、
マジックショップ・機巧堂を舞台にした奇術もの、
住人が次々と死んだマンションの一室で交霊会を行い、
真実を暴く戯曲「交霊会の夜」など13編を収録。

ずいぶん前に「引退公演」は読了していたのですが、アップが遅くなりました。

本書にはなんといってもヨギ ガンジーシリーズ短編が久しぶりに読めることが大きい。
ただ『ヨギ ガンジーの妖術』収録のものと少し異なり、
「カルモダンの呪い」「未確認歩行原人」いずれも、より「日常の謎」が強く出ているかなと
感じました。
それだけに未完に終わった「ヨギ ガンジー、最後の妖術」が残念でなりません。

本書所収白眉は「酔象秘曲」という、かつてあった「酔象」という駒を使った
将棋をめぐる殺人事件。
少し艶っぽい描写、またトリックありと、楽しめる作品となっています。

またわずか4ページの「絶滅」は星新一のショート・ショートを彷彿とさせる快作。
「聖なる河」も短編ながらも最後にどんでん返しが待っている良作です。

「交霊会の夜」はぜひ戯曲を小説として描いて欲しかったなあ。
かつてクリスティのポワロもので戯曲「ブラック・コーヒー」を
別の作者が小説として刊行した事がありますが、これを小説化してくれる方が
居ればなあ。

近日中に「絡繰篇」もアップ予定です。


泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: Kindle版



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クジャクを愛した容疑者-警視庁いきもの係 [大倉崇裕]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

学同院大学で起きた殺人事件の容疑者は、クジャク愛好会の奇人大学生!
だが無実を信じる警視庁いきもの係の名(迷)コンビ、窓際警部補・須藤友三と
動物オタクの女性巡査・薄圭子はアニマル推理を繰り広げ、
事件の裏側に潜むもうひとつの犯罪を探り当てる!?
表題作と「ピラニアを愛した容疑者」「ハリネズミを愛した容疑者」の傑作中編3本を収録!

シリーズとしても円熟期に達しつつあるいきもの係ですが、
本書はこれまでのシリーズとはひと味違う試みがなされています。

まず大きいのはいきもの係に3人目が配属されたことでしょう。
「ピラニアを愛した容疑者」で登場した所轄署の刑事・芦田巡査部長。
彼に与えられた大きな役割は運転手。
私としては、毎回繰り返されるタクシー運転手とのやりとり、楽しみだったのになあ(笑
3回に1回くらいはタクシー使う場面を描いてほしい。

そして、もう一つは「ピラニア」と表題作「クジャクを愛した容疑者」のラスト。
これまでは事件解決→コメディタッチな終わり方があったのですが、
この2作は、あの刑事コロンボのような終わり方をしています。
作品が実は繋がっている<福家警部補>を逆輸入したのかもしれませんね。

もっとも薄巡査のキャラクターや聞き間違いは全く変わりませんのでご安心を(笑

「ハリネズミを愛した容疑者」が公安との関わりもあり、事件含めて面白いのですが、
前2作の犯人との直接対決は中々読み応えがあり、どの作品も甲乙付けがたい。
つまり、どれも楽しめるということです(笑)

次々と動物たちが増えますが、須藤警部補がお世話をする所もぜひ読んでみたいものです。


クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: 文庫



クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: Kindle版



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