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恋のゴンドラ [東野圭吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

都内で働く広太は、合コンで知り合った桃実とスノボ旅行へ。
ところがゴンドラに同乗してきた女性グループの一人は、なんと同棲中の婚約者だった。
ゴーグルとマスクで顔を隠し、果たして山頂までバレずに済むのか。
やがて真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込み、衝撃の愛憎劇へと発展していく。
文庫特別編「ニアミス」を収録。

『白銀ジャック』から続く実業之日本社文庫のこのシリーズ(何シリーズというのでしょう?)
今作は完全にミステリではなく、ラブコメ連作短編集。
まあ、ある意味ミステリとも言えるのかもしれませんが・・・とくに「ゴンドラ」は(笑

シリーズキャラクター(?)でもある根津が活躍する「スキー一家」がオススメ。
根津の活躍もさることながら、ラストが中々格好いいのです。

今回の登場人物たちから、根津&千晶のようなコンビが果たして生まれるでしょうか?
再び『白銀』『雪煙』『疾風』のような、サスペンス路線にまた戻ってもらいたいなあと
いう願望もこめてぜひ。


恋のゴンドラ (実業之日本社文庫)

恋のゴンドラ (実業之日本社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 文庫



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メインテーマは殺人 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、
自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で
知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。
自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!
7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!

書き手であり、一人称の「わたし」を使い、物語を進めるのが、作者の分身(?)
ともいうべき、ホロヴィッツ。探偵役はホーソーンという元刑事。
関係性は非常に微妙ながらも、ホームズ&ワトソン型のシリーズとして
中々面白く読みました。

資産家の老婦人であるダイアナ・クーパーがなぜ殺されたのか、
そしてその事件を本にまとめようという依頼を突然持ちかけられたのがホロヴィッツ。

第一章を見せて、全てに駄目だしをくらい、憤然とするホロヴィッツですが、
次第もホーソーンを先んじようとする試みが出てきたり。

スピルバーグとの会話の最中に、突然ホーソンが割り込んでくる場面は
現実的ではないにしろ、物語上でも、ホーソーンの人格を疑ってしまいましたね。
そこまで変人として描かれているわけではないので、余計にホーソーンの振るまい
だけでなく、この場面そのものが奇妙に感じました。

ところで、現実の事件の捜査とともに、その捜査過程などの本も執筆しているという
設定が、実は事件解決のヒントでもあるというのが、本作最大のアイディアではないでしょうか。

ホーソーンに指摘された「事実だけをきっちり書きしるし」というのも、
物語終盤でようやくその意味がわかるんですよね。

息子であるダミアン・クーパーが殺害されたことで、私自身も、途中ホロヴィッツが
披露した推理と同じ事を思いましたが、あっさりホーソーンに袖にされました(笑)。
このあたりは、完全に作者のミスリードに嵌まったなと思います。

なお、解説を読むと、本作はシリーズ物第1作のようです。
つまり、ホーソーン&ホロヴィッツは今後何作にもわたりコンビを組むわけですね。

その点を加味すると、本作で触れられたホーソーン個人のことなどは、
今後のシリーズに期待でしょうか。


メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫



メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: Kindle版



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失われた過去と未来の犯罪 [小林泰三]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子高生の梨乃はある日、記憶が短時間で消えてしまうことに気付く。
この現象は全世界で発生し人類はパニックに陥った―。それから数十年。
記憶する能力を失った人類は、外部記憶装置なしでは生きられなくなっていた。
記憶=心が切り離せるようになった世界で「わたし」は何人分もの奇妙な人生を経験する。
これは本当に自分の記憶?「わたし」は一体、何者なのか…?『アリス殺し』の鬼才が贈る、
予測不能のブラックSFミステリ。

人類が体験した、わずか10分程度しか記憶を保つことができなくなる「大忘却」
しかし、人類はこの未曾有の危機を、外部記憶装置に記憶を留め、
それを装着できる人類を創り出すことで乗り越えます。

そして本書は、外部記憶装置が当たり前となった世界の中で、
各人が体験した物語が(連作的に)語られます。

外部記憶装置の人体間での入れ替えや、記憶装置のコピーなどが
物語の中核となるのですが、本来人類は10分程度しか記憶が保たれないにもかかわらず、
なぜか最初の人格の記憶が残っていたり、自分が誰なのかわからなくなったり、
どちらが自分自身なのか、いや同じ記憶装置にもかかわらず、別人格が形成されたり、
果ては、現在起こっている事が現実なのかどうか、それすらあやふやになることに。

つまり、外部記憶という極めて科学的かつ合理的な方法を採ることで、
人類を安定化させているのですが、にもかかわらず、
上記のような科学とはかけ離れたことが起こるという矛盾が生じていくのです。

生と死とは何か。肉体と魂、肉体と心は?
記憶が保持できなくなることを科学的に解決したのに、上記のような哲学的、非科学的
な問題が襲いかかってくるという、SFなのですが、人の根源を突いている小説でした。

最後の場面は、イタコを生業としていた「人物」が各人格の記憶等を持ち続けているのか、
それとも、その「イタコ」に装着されている外部記憶装置が、それらの記憶等を上書きせず
持っているのか、実はここはうまくあやふやにしていて、後者の解釈を取れば、
SFホラーでもあり、機械にある意味支配されていく人類を描いているとも考えられます。

しかし、ここまで酷いことは起きていないとしても、スマホ、PCなどにより、
電話番号もいつの間にか暗記する必要もなく、漢字も覚える必要ない日常が
当たり前になってきています。
脳は記憶装置だけではもちろんありませんが、案外と記憶を保てなくなる人類は
近い将来来そうな気がしますね。


失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)

失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 文庫



失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)

失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: Kindle版



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屍人荘の殺人 [今村昌弘]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、
同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、
ペンション紫湛荘を訪れる。初日の夜、彼らは想像だになかった事態に見舞われ、
荘内に籠城を余儀なくされるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。
たった一時間半で世界は一変した。数々のミステリランキングで1位に輝いた
第27回鮎川哲也賞受賞作!

以下、ややネタバレ。






新本格の嚆矢である綾辻行人先生の『十角館の殺人』を思わせるような、
クローズド・サークルでの事件に、
昨今(?)流行りのパニック・ホラーを組み合わせた作品。

パニック・ホラーの象徴たるゾンビが突如登場しますが、
きっかけは本シリーズの核になりそうな「斑目機関」なる組織。

しかし、このゾンビが突如襲ってくるという設定は、
パニック小説らしさを出しているかというと、全くそんな感じはありません。
これが良いのか悪いのか判断に苦しみますが、
あくまでも本書のクローズド・サークルの大きな設定に留まっている印象です。

ただし、この設定を相当に活かしたトリックが用いられているのは確かで、
最初の殺人と次の殺人については、この設定により群を抜いてます。

一方で、犯人はこの偶然生じた事態が起こらなければ、どうするつもりだったのだろうと
いうのも少し感じたところ。
偶然を実にうまく計画に入れているのですが、あらかじめ起こることが予想されていない
ため、本来の計画はどうであったのか(それも周到に練られたものなのか)などは
不明瞭なままでした。

個人的には最初の殺人が一番唸ってしまいましたが、
あとは明智恭介の扱いは、もっとどうにかならなかったのかと思いました。


屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/11
  • メディア: 文庫



屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/13
  • メディア: Kindle版



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