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魔王城殺人事件 [歌野晶午]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

星野台小5年1組の佐藤翔太たちは、探偵クラブ「51分署捜査1課」を結成する。
二学期最初の活動は、町はずれに建つ洋館“デオドロス城”のガサ入れ。
潜入直後、突然ゾンビ女(?)が現れ、庭の小屋の中で消失する。後日、再潜入した翔太らは、
今度は小屋の中で死体を発見する。本格ミステリの楽しさ満載の一冊。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」と銘打たれて
刊行された、講談社ミステリーランドの一冊。
なんだ子ども向けかと侮っていたこともあったような(汗)甘くみてはいけません。
あの『神様ゲーム』や『カーの復讐』、そして『ほうかご探偵隊』etc・・・
十分に大人も楽しめます。

そもそも、自分たちが子どもの頃に読んでいた、ざっくりいうと「ミステリ」という分野
の本も、結構面白かったのが多かった気がしますね。

本書も51分署捜査1課といった名称や、本書で用いられている要のトリックなど
楽しませる要素はたくさんありました。それなりに満足したのですが・・・

どうも作者が歌野晶午さんということで、深読みしすぎたかなあという(苦笑
たとえば登場人物たちの名前、ローマ字表記、ニックネーム、カタカナ表記など、
これはもしかしたら何かあるのでは?と勝手に思ってしまいました。

期待値を勝手に上げすぎてしまいましたが、純粋に楽しめるミステリです。



魔王城殺人事件 (講談社文庫)

魔王城殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 文庫



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マンション殺人 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

西洋の城をイメージした都心の高級マンション。モデルルーム見学に訪れた客の一人が、
浴室で何者かに撲殺された。三日後、郊外にある団地の浴室で、またも撲殺死体が発見される!
類似した殺人の手口。そして二人の被害者が持っていた同じ偽造名刺。
深まる謎に刑事たちが戸惑う中、さらなる殺人事件が続発する。不動産業界の闇を映す、
長編社会派ミステリー。

西村御大初期の社会派ミステリ。
品川署の田島刑事と、北多摩署の園田刑事、この二人の刑事の地道で、執念ともいえる
捜査の過程、そして犯人を突き止めるまでの、二人の刑事の捜査が丁寧に描かれます。

それにしても、最初のモデルルームで殺人というのは、かなり挑戦的な殺人です。
一緒にモデルルームを見学に行った人物の中に、犯人がいると考えるのは必然でしょう。
犯人にとっては、「マンション」という場所で殺人を犯すことに拘った動機があり、
それが、本書を社会派と言わしめる理由でもあります。

とにかく被害者と容疑者の繋がりを洗おうとする田島刑事のしつこさは本当にすごい。
現実に自分がやられたら堪りませんが(笑

ところで、、、品川駅前の高層マンションで、価格がなんと1500万から2000万という
最初の場面で驚きます。当時は安かったんだなあ・・・(笑)むろん当時の金銭価値も
違うので、一概に比較は当然できませんが。
高層マンション(タワーマンション)を求めるのは今も昔も変わらず、ですね。



マンション殺人 (光文社文庫)

マンション殺人 (光文社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/05/26
  • メディア: Kindle版



マンション殺人

マンション殺人

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2016/12/16
  • メディア: Kindle版



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奇術探偵曾我佳城全集 上 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

若くして引退した、美貌の奇術師・曾我佳城。普段は物静かな彼女は、
不可思議な事件に遭遇した途端、奇術の種明かしをするかのごとく、鮮やかに謎を解く名探偵となる。
殺人事件の被害者が死の間際、天井にトランプを貼りつけた理由を解き明かす「天井のとらんぷ」。
本物の銃を使用する奇術中、弾丸が掏り替えられた事件の謎を追う「消える銃弾」など、
珠玉の11編を収録する。

講談社文庫から刊行されていた『曾我佳城全集』を底本にしつつ、
発表順に再編集したのが創元推理文庫版となります。
以下、ややネタバレ。





これまで数多くの作品で泡坂ワールドを堪能してきましたが、
奇術師である御大の真骨頂ともいうべき作品が本作なのかもしれません。

最初の「天井のトランプ」から、その魅力は存分に発揮されます。
レギュラーキャラクターとなる竹梨警部も登場。
カードマジックという、奇術の基本から入るのも良いですね。

次作「シンブルの味」は奇術大会を見る団体が突然登場し、
あれ佳城は・・・?と思いきや、「大岡佳子(おおおかよしこ)」がなんと曾我佳城!
考えてもみれば、すでに彼女は引退しているわけで、本名を名乗っているという
のは不思議でもなんでもないのです。しかし、私はこの名前の問題こそが、下巻に続く
壮大なトリックの足がかりでもあるのです。これが実にうまい。

戯曲風の文体で描かれる「白いハンカチーフ」も印象的。
テレビの生放送内での事件解決で、最後も番組終了で締めくくるという、
テレビやマスコミの風刺ともいえるラスト見物。

もう一人のレギュラーキャラクター、いや佳城の弟子となる串目匡一が初登場する
「消える銃弾」、銃弾のトリックも見事なのですが、もの悲しい結末なんですよね。

「シンブルの味」に通じるものもある「石になった人形」。
昔の見世物小屋的なことを想像したりもしましたが、ここでは佳城のこれまでとは
違った一面を竹梨警部が発見してしまう所が一番の衝撃でしょうか。

ラスト「剣の舞」はこれまたもの悲しい物語。
「わたしには悲劇でした」と平然と話す佳城が印象的です。

佳城と串目匡一の魔術城への道程は下巻へと続きます。


奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: 文庫



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壁の花のバラード [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

伊原有利はNデパートに勤めている、二十六歳。
容姿は人並みだが彼氏なし。素敵な出逢いを求めて出席するパーティーでは
いつも壁の花。そんな有利の平凡な人生が一変した。いつものように出席したパーティーで、
ハンサムな青年実業家・沢本徹夫にダンスを申し込まれたのだ。夢心地の有利。
だがなんと、彼は幽霊だった!
驚く有利に沢本は、自分を殺した犯人を捜してほしいと頼む。
彼を殺した犯人は誰!?

以下、ややネタバレ。




赤川作品には平然と幽霊は登場します(笑
最近復刊された『幽霊はテニスがお好き』、『三毛猫ホームズの騒霊騒動』
『怪談人恋坂』etc・・・
しかし、出てくる幽霊は結構明るいタイプも多く、本作品のようにどこかとぼけた
感じの幽霊もチラホラ。

主人公は伊原有利、デパートに勤める人並みのOL。
しかし、婚活パーティーで沢本徹夫という幽霊に出会ったことから人生が一変します。

本書は、沢本を殺したのは誰なのか?を突き止めるのが目的ですが、
その裏には、沢本との出会いで、有利の人生そのものが変わっていく物語でもあるのです。

彼女のかつてのクラスメートである山形とその部下の黒岩が良い味出してますねえ。
有利のことを想い続けていた山形の、食事へ有利を誘うシーンが全然ロマンチックな場面
で描かれないところもまた面白い。

それにしても、真犯人はわかったのにまだ成仏できない沢本と有利は
この先どうなってしまうのか?(笑


壁の花のバラード 〈新装版〉 (徳間文庫)

壁の花のバラード 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫



壁の花のバラード (徳間文庫)

壁の花のバラード (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/04/12
  • メディア: 文庫



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儚い羊たちの祝宴 [米澤穂信]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、
会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、
四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。
甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、
脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

かなり前にでた(ある意味)連作短編集ですが、
そういえば未読だったので、購入してみました。

さてややネタバレしつつ感想を。




「最後の一撃」「どんでん返し」とは本書のためにある用語なのかもしれません。
「バベルの会」は確かに各短編に登場するのですが、実は意外と繋がりは弱い。
1つずつの物語で、「バベルの会」についてそれほど深く言及されているものはないものの、
最終話「儚い羊たちの祝宴」への繋がりはしっかり担保されているところはさすが。

「身内に不幸がありまして」は、まず動機を突き止めることは不可能でしょう。
そしてこれほど短編の内容を示した表題作もないのでは。

「北の館の罪人」は同じ境遇下にあるかのような2人の物語と思いきや・・・
しかもその目論見をも見抜いていた六綱早太郎のある仕掛けが見事です。

「山荘秘聞」、この作品は屋島守子にはやや同情してしまう点もありますね。
もっとも資産家がどういう思考なのかなど、知る由もありませんが・・・
ところで、ベッド数などからある推理を導いた歌川ゆき子は見事の一言。
変わったお肉、が上手いミスリードなのですが、さらに後に出てきた“煉瓦のような塊”
とは何だったのか・・・異様な恐ろしさは続きます。

「玉野五十鈴の誉れ」は、本当に「最後の一撃」をラストに持ってくるために
構成されたかのような物語。残酷さでは群を抜いています。
しかし、小栗純香の命が助かったのはよかった。

最終話「儚い羊たちの祝宴」、「実際家」である大寺鞠絵による、「バベルの会」の
消滅を描いた話。しかし、最後に再び羊たちが集まりそうな場面が描かれる所で終幕。

どの話も、「バベルの会」は出てくるものの、その会をメインとした話は実は無いんですよね。
そして、ここで描かれた人々は、最後の<アミルスタン羊>の難は逃れたのでしょうか?






儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06/26
  • メディア: 文庫



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