SSブログ

星空にパレット [安萬純一]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

九重高校の浩介たちが探偵部を創設させてまもなくの放課後、
黒ずくめの男が合宿費を強奪していった。あまりの足の速さに、誰もが追いつけない。
味をしめたのか数日後に、再び登場した黒ずくめの犯人は、
逃げ込んだ倉庫で他殺体として発見される――。学園ミステリ、嵐の山荘ものなど、
二転三転するフーダニットとハウダニット!鮎川哲也賞作家・安萬純一が、
本格ミステリの粋を星空のごとく詰め込んだ、全四編収録の短編集。文庫書き下ろし。



以下、ややネタバレ。






アマン先生でお馴染みの安萬純一先生によるノンシリーズ短編集。
各短編集のタイトルが非常に凝っています。

最終話「病院の人魚姫」。犯人が犯行に用いたトリックよりも、
被害者へ近づこうとした方法の方が恐ろしいですね・・・
ストーカー気質だったのか、そんな方法よりも、もっと簡単な方法があったのではないか。

「黒いアキレス」は、最初の推理は明らかに違うだろうと思いながらも、
確かにそれ以外、思いつかんなあという。
高校を舞台にした学園ミステリですが、走り方から糸口を掴むという、
中々小説では表現できない事件解決のきっかけが、少し目を惹きました。

本作所収の短編集は、筆者があとがきで述べるように、
「フーダニットとハウダニットをが密接に絡まり合っている」という点のようです。
つまり片方が分かれば、そのもう片方もわかる、そういう形式にしていると。
一方で、ノンシリーズということもあり、全て異なるキャラクター(探偵役)が配置され、
彼彼女たちへの描写はそこまでないため、個人的にどういう存在なんだ?と思った
人物も多かったです。

その最たるものが「夏の北斗七星」。
タイトルはどこかロマンティックで、「日常の謎」でも起こるのかと思わせるものですが、
全然違います。雪の密室、嵐の山荘もの、ど真ん中の本格です。
個人的には最もオススメ。
まず主人公役が、はっきり探偵と名乗っているのですが、そもそも彼らはどこへ行こうとし、
実際殺人事件などを解決したことがあるだろうか?という、実に物語とは関係ない疑問が
次々と読みながら浮かんできました(笑
叔父である床平昭治が「警察OB」と名乗ったこともあるのでしょうが、
松島弘が「探偵」だと言ったところで、普通ならば事件を任せようとはしないでしょう(笑)

それと最初に床平が披露する推理は、あるゲームの真相だったような記憶があります。
私の大好きなゲームで、PSVitaロンチで発売されたアレです(違ったかな?)。

探偵松島の推理は、知り得た情報の中で組み立てたものとしては、かなりいい線を
行っていたと思うのですが、最後に明らかになる真相は中々に衝撃です。
ただ、登場人物が全て話をしていれば、もしかしたら松島も気づくことができたのでは?
と思うと、そこが残念ですね。
まあ、へっぽこ探偵なのは確かなのかもしれません(笑)

いずれこの短編集の主人公・探偵役から、シリーズ探偵が出てくるよう、
安萬先生、お願いします!
まあ床平・松島コンビはもし出てきたとしたら、まず本作所収事件の真相から
話してもらう必要がありますが(笑


星空にパレット (創元推理文庫)

星空にパレット (創元推理文庫)

  • 作者: 安萬 純一
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/01/20
  • メディア: 文庫










nice!(8)  コメント(8) 
共通テーマ: