SSブログ

ミダスの河 名探偵・浅見光彦 vs.天才・天地龍之介 [柄刀一]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

骨髄移植の取材で山梨を訪れた浅見光彦は、ドナーの誘拐事件に巻き込まれた。
一方、砂金採りのイベントに参加していたIQ190の天地龍之介は、事故車から落下する死体を目撃。
出火した車内は金色だった。別々の事件を追う二人は、甲斐の黄金王と呼ばれる名家に辿り着く。
ところが、二人に殺人容疑が。埋蔵金伝説の地で連続して起きる悲劇の真相に、名探偵コンビが迫る。

久しぶりの更新です。
このところほとんど読書に時間を割いておらず、寝てばかりいました・・・
積ん読本が増えるばかりでしたが、ちょこちょことまた楽しく読んでいきたいと思います。


さて、これまた久しぶりの柄刀一先生の作品です。
柄刀先生の他作家さんのキャラクターリスペクト作品では、
『御手洗潔対シャーロック・ホームズ』が即座に思い浮かびます。


そして今回は浅見光彦という、国民的名探偵を登場させました。
しかも、ご自身のシリーズキャラクター・天地龍之介との共演です。

<天才!龍之介が行く>、ずっと読んでましたねえ。
『殺意は幽霊船から』が確か祥伝社文庫が始めた400円文庫か何かだったと
記憶してますが、そこから読み始めて、他も読みあさり・・・だったような。
ところが、『紳士ならざる者の心理学』より後の作品がなぜかノベルズ版のみで、
文庫化されず、その後は未読です・・・(ノベルズ版を買え!とお叱りを受けそうですが)。
『青列車』とか好きですねえ。

浅見光彦シリーズももちろん相当久しぶりです。
本当に久しぶりに光彦に会えました。

本作の光彦、ルポライターという仕事にかなり積極的、アグレッシブに行動しています。
『旅と歴史』の取材というわけではなく訪れていたり。
そういや、珍しく藤田編集長が大活躍でしたね(笑

本書は基本的には浅見光彦、内田康夫先生リスペクト作品かなと思います。
浅見光彦シリーズの『日蓮伝説』『菊池伝説』『隠岐伝説』など、
主に角川文庫で刊行されていた『伝説』シリーズを思い起こさせます。

光彦の容姿を記した場面(309頁)
「風貌は中村俊介に近く、もう少し成熟すれば辰巳琢郎と榎木孝明を足したような渋みも
生まれるかもしれない」
なるほど、柄刀さんはこのお三方のシリーズを観ていたなと勝手に思いました(笑)
しかしこの描写だと、かなり若い頃の光彦の印象を受けますね。

ただ、天才ぶりというか、推理力ではいずれもその能力を発揮しているものの、
龍之介に軍配かなあと思いました。さすが天才。
光彦お得意の、あの閃きの瞬間がものすごく具体的に書かれていたのも
印象に残りました(何頁か失念・・・)。
思わず笑ってしまったので(失礼)、みなさんも是非読んでほしいです。

本書全体としては、追う謎が意外と多い。まあタイトル通りではあるのですが、
殺人事件と平行しているので、余計にややこしいんですよね。
最初の連れ去り事件が、なんというか曖昧なんですよね。

それから光彦がルポしていた細胞移植の話は、タイムリミット(つまり時間との勝負)
という所に押し込められてしまって、そこをもっと活かしても良かったのではと。
ただ、そうすると龍之介の登場は難しいんですよね。
『箱庭』や『透明な遺書』『中央構造体』『遺骨』などの、いわゆる社会派になってしまう
ので、中々難しい。

まあ無いものねだりなんですけどね(すいません)。

最後に龍之介が披露した、楢崎聡一郎の事件の推理は、かなり見事。
あの場で、あの状況を打開するために思いついたと思われますが、
実際、あれが真相だったのかどうか、意外と語られていないんですよね。
でもまあ、あの場面での「推理」と考えると、お見事すぎます。

後読みどころとしては、光彦の龍之介評と、光章の光彦評が読めること。
(たしか龍之介の光彦評は明確にはなかったような。間違ってたらすいません。)

すでに第2作『流星のソード』も文庫化していますので、こちらもそのうち
読み始めます。

令和の時代の光彦の活躍も楽しみです。
これを記念して、残りの龍之介シリーズの文庫化を望みます!





ミダスの河 名探偵・浅見光彦vs.天才・天地龍之介 (祥伝社文庫)

ミダスの河 名探偵・浅見光彦vs.天才・天地龍之介 (祥伝社文庫)

  • 作者: 柄刀一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: 文庫







nice!(8)  コメント(8) 
共通テーマ: