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三世代探偵団 枯れた花のワルツ [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

天才画家の祖母、生活力皆無な母と暮らす女子高生の有里。祖母が壁画を手がけた病院で、
有里は大女優・沢柳布子に出会う。彼女の映画撮影に関わるうち、3人はまたもや事件に
巻き込まれ――。ユーモアミステリ第二弾。


2作同時刊行されたのに、2作目が遅くなってしまいました。

前作は有里、幸代、文乃のキャラクター確認がメインで、かつそれなりに深刻な事件も発生。
しかし、本作はもちろん殺人事件が起こり、深刻な事件も起こります。
ただ、それ以上に、有里と幸代の活躍とキャラの確立が目立った作品だなと思いました。

また有里と、そして有里自体もどういう思いなのかよくわからない村上刑事のファンクラブ
が設立されます(笑)。当の村上刑事はまるで気付いていませんが、好意を寄せてくる女性
が幾人も・・・なんてうらやましいんだ。
有里は、なんとなくその女性たちにムッとするものの、彼女にもボーイフレンドが
ついに登場します。

かつての大女優・沢柳布子が、再び主役を務める「影の円舞曲」の撮影過程で起こる
それぞれの事件。天本幸代は布子の側に付き、彼女に降りかかる災いを見事に守って
いきます。今回、絵を描いているシーンはほとんどなかった(おそらく)のですが、
最後にある人物を描いた絵が登場するので、どっかで書いてたのかなあ。
しかし、前作と同じく、画家としてではなく、彼女の鋭い洞察力は本作では
さらに磨きがかかっています。

一方、三世代探偵団と銘打っているのですが、文乃はどこか仲間ハズレ感が
本作では強かったですねえ。
ある人物(しかも妻子持ち!)に恋してしまう場面があるのですが、出番は
ある意味そこだけ。
彼女がメインを張る作品は、今後登場すると期待したいですね。

ところで本作はしっかり時系列が描かれていて、次々作は「影の演舞曲」プレミア上映が
舞台とのこと。
赤川作品で時間が過ぎていくのは、中々珍しく(杉原爽香シリーズは別)
シリーズとしてどこまで描いていくのかも気になりますね。


三世代探偵団 枯れた花のワルツ (角川文庫)

三世代探偵団 枯れた花のワルツ (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版






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ドアを開けたら [大崎梢]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

マンションで発見した独居老人の死の謎に
中年男と高校生のコンビが挑む、心温まるミステリー。

鶴川佑作は動揺を隠せなかった。引っ越しの準備をする佑作がマンションの同じ階に暮らす串本を訪ねると、彼はこと切れていたのだ。来客対応中だったらしい。老齢ながら彼は友人だった。通報もせず逃げ出す佑作。だが、その様子を高校生の佐々木紘人に撮影され、部屋に戻れと脅迫される。翌朝、動画の消去を条件に佑作は紘人と再訪するが――今度は遺体が消えていた!


鶴川さんと佐々木くんの出会い方はなんとも不穏ですし、さらに死体が消える、
さらには怪しげな宗教団体まで登場、そして串本の隠された本性まで明らかに?!

この二人の間、打ち解けてからの関係は何とも表現しがたいのですが、
二人で謎を解いていきつつ、二人それぞれの生き方までが変化していきます。

一方、最初から終盤までは上記書いたさらに深い謎にいくかと思いきや・・・
謎そのものと、串本さんの悲しい過去はあるのですが、
串本さんが果たせなかった事を、鶴川&佐々木コンビが見事に引き継いで、
ラストも素晴らしい終わり方です。
このラストまでの道程こそ、本書タイトルの示したかったものなのでしょう。

コロナ禍だからこそ、こうしたミステリーで心を和ませたいものです。


ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/04/15
  • メディア: 文庫






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アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 [大倉崇裕]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

有力政治家の三男が殺害された。現場で飼われていたアロワナは、
十年前にシンガポールの実業家のもとから盗まれた個体だと判明。
窓際警部補・須藤友三、生き物オタクの巡査・薄圭子のコンビは、
密輸ブローカーに焦点を絞り調査を開始する。タカやランが関わる事件も同時収録。
痛快アニマル・ミステリー!


本作はこれまでのいきもの係とは少し趣向が異なり、
今のところの文庫唯一の長編『蜂に惹かれた容疑者』に登場した、
新興宗教団体『ギヤマンの鐘』といきもの係との壮絶なる戦いが繰り広げられます。

しかも、それだけに留まらず、これまたこれまでにない趣向、
つまり「タカを愛した容疑者」では、なんと薄巡査が容疑者扱いに!
さらに初めて植物が登場する「ランを愛した容疑者」。いきもの係は、
正式には<動植物管理係>、そう、植物の世話もするのです!

いくつかの変化球を織り交ぜつつ、さらには大倉先生の別シリーズから、
福家警部補まで登場するという、豪華な内容になっています。

最初の「タカを愛した容疑者」。久しぶりに読んだからなのか、薄巡査の
とめどないボケについて行けませんでした(苦笑)。
それくらいわかるだろ!と怒髪天になりそうでした。

しかし、本作の中でこの作品は、いわば「顔のない死体」という、ミステリのある種の作法を
実に上手く使っているところが秀逸。所収作の中では、個人的にはミステリとしての
完成度は一番高いと思います。

表題作は、薄巡査がスーパー警察官であるということが明らかになるという(笑
福家警部補も以前のブログで書きましたが、スーパーウーマン化していくようで、
どうもそこまでしなくてもなあというのが、私の中にはあります。

ところで、解説でも書かれていますが、表題作の続編的位置づけになる作品は、
福家警部補シリーズで描かれているとのこと。いやこれを読むのは相当先になりそうだ。
しかも、「ギヤマンの鐘」は<問題物件>シリーズにも登場するということで、
いやいやこれまた困ったなと。読むシリーズが増えてしまう・・・


アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/04/15
  • メディア: 文庫







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花嫁は三度ベルを鳴らす [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

実業家の片瀬は、妻の靖代とその妹の早紀と東欧を旅していた。
途中、靖代が体調を崩して亡くなってしまう。
異国だったが仕方なく現地に埋葬するが、
そこには、棺の中から鳴らせるように墓標の十字架にベルを取り付ける奇妙な風習があった。
鳴るはずのないベルが鳴り響くとき女子大生・亜由美は事件に巻き込まれていく!
人気シリーズ第33弾。


赤川次郎先生作品が続きました。
花嫁シリーズも長い!33作目とは。
現在は35作目(『花嫁、街道を行く』)まで刊行されています。

通常と変わらず、本書にも2作が収録。
表題作は後回しにして、まずは「花嫁は滝にのぼる」から。

近年の赤川作品だなあというのが感想。
大きな権力に立ち向かっていく、それを亜由美とドン・ファンらが助けるという。
それと本作での花嫁は誰なのかなあと。
宇佐見しのぶ?これは騙しのためだから、実際はせずで、やはり高野良子ですかね。


さて表題作ですが、久しぶりに谷川准教授が登場します。
本作、かなり楽しめます。
亜由美一行はいきなりルーマニアへ行きますし、母である清美も大活躍します。

黒幕自体はすぐわかるのですが、亜由美たちをルーマニアまで行かせた人物は
一体誰なのか?谷川というのが仄めかされ、さらに諸岡早紀のことを
「ずっと前から好きだった」という衝撃の証言まで・・・
いやいや亜由美にとっては、重大なる謎が残りましたね。
これ、次作以降で描かれるのでしょうか?気になります。

それにしても、赤川先生作品は、ページをめくる手を止めさせないなあ。

ちなみに、多くの赤川作品を読んできましたが、実は双葉文庫刊行作品には
手を出していないのです(笑
あれも多いんですよねえ。あれに手を出すと、相当数読むものが増えてくる。
さてどうしたものか。


花嫁は三度ベルを鳴らす (実業之日本社文庫)

花嫁は三度ベルを鳴らす (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/06/03
  • メディア: 文庫






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