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Yの悲劇 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。
警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。
解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、
ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは? 
巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、
オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!


ドルリー・レーン4部作の2作目。
古典的名作とは、いつ読んでも抜群に面白いです。
とはいえ、実は初読という、ミステリファンにあるまじき振る舞いです(汗

古くさい部分ももちろんあります。
しかし、それはこれだけ時代が経っているのだから、仕方ない面があります。
しかしそこはミステリの根幹には関係ありません。
本作は今読んでも、十二分に謎解きを楽しむことができます。

もうありとあらゆる方々が、本作品について語られているし、分析もされているし、
もう私ごときが何かを書くのもおこがましい限りですが・・・

犯人のヒントは、ルイザ・キャンピオンの証言でほぼ全て出そろっています。
しかし、それでも犯人が分からない。すごい構成です。

また、レーンがなぜか推理を拒否する態度を示しつつ、
最後に語る真相と、ある事件の真相があまりに見事すぎて脱帽です。

特に犯人が、想定を超えた行動、「概便の指示」に反した行動を取るという、
レーンにとって驚愕の事態が発生し、かつそれをレーンの推理で知る読者も
、つまり私も驚愕しました。
ここから、物語は全く別の方向に向かっていくのです。
ここはもう凄いの一言でした。

前にも書きましたが、○○の悲劇、アルファベットを使用した等の本歌取りの作品
を読んだ方、原点の古典的傑作をぜひ読んで下さい。


Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/08/19
  • メディア: 文庫






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逢魔が刻 腕貫探偵リブート [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神出鬼没の公務員探偵「腕貫さん」を“だーりん”と呼び慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ。
同級生の小泊瀬海人から「親族が関わった殺人事件を題材にミステリ小説を書いてみたい」
と相談され、大乗り気でストーリー作りに着手。ユリエは腕貫さん顔負けの名推理を披露するが、
行き詰まって相談した腕貫さんから、
ユリエに厳しい駄目出しが…・・・!?(「ユリエの本格ミステリ講座」)

今作ではほかに、鳥遊葵、阿藤江梨子、安達真緒、水谷川刑事etc.……
シリーズ既刊でお馴染みの面々も集結。喪主による殺人、連続不審死、留学生監禁など、
腕貫シリーズのホームタウン櫃洗市で続発する、禍々しくも珍妙な事件の真相は!?
解説の浜崎広江さん(今井書店)も激賞の一作、乞うご期待!


腕貫探偵シリーズの文庫版最新作。
とはいえ、肝心の腕貫さんはほとんど登場しません(笑
櫃洗市を舞台にした別のミステリ短編集と言ってもいいですね。
まあスピンオフですね。『必然という名の偶然』に近いかな。

江戸川コナンの住む米花町が、凄まじい勢いで犯罪が発生する街として、
犯罪者が多すぎる街という風刺がありますが、
この櫃洗市は、探偵が多すぎる街、かもしれません。
腕貫さんを「ダーリン」と慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ、
大富豪探偵の異名を取る(?)月夜見ひろゑ、
櫃洗署の刑事さんも中々に優秀なので、この市で犯罪を起こすのはマヌケでしょう。

表題作は、謎が解けていく過程も面白いですが、やはり最後に明かされる事実は
中々に衝撃です。櫃洗大学に勤める久賀谷先生が推理を巡らせる訳ですが、
この大学、大丈夫か?!と心配してしまいます。

問題作という、私が一番わからなかったのは「マインド・ファック・キラー」
最後まで読んでも分からなかった。
櫃洗との無理矢理くっつけている感もあり、櫃洗市シリーズより、
西澤作品のノンシリーズ短編集収録の方が良かったと思います。
他の方の感想をみると、「最後の一撃」的な事が書かれているのですが、
わかる方、お教えください。

タイトルに「リブート」とあるように、シリーズ再起動、という事なのでしょう。
あとがきで、西澤先生がスマホの扱い方とかかなり苦労されていることを書かれていますが、
長寿シリーズは確かにこの辺りは難しいですよね。
それらを上手く扱うことが可能になれば、おそらく再び腕貫さんは姿を現してくれるでしょう!


逢魔が刻 腕貫探偵リブート (実業之日本社文庫)

逢魔が刻 腕貫探偵リブート (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/12/08
  • メディア: 文庫






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ハートフル・ラブ [乾くるみ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。
交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、
一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって――
(書き下ろし「数学科の女」)

他に、突然の余命宣告を受けて結婚を決意した夫婦を描く
「夫の余命」(日本推理作家協会賞候補)や、アイドルの握手会をまさかのミステリに仕立てた
「なんて素敵な握手会」など、
どんでん返しの名手の技が冴える珠玉のミステリ7篇収録。


乾くるみ先生の御著書はいつ以来だろうか・・・もしかしたら、
林三兄弟シリーズの『六つの手掛かり』以来では。

表題作の作品はありません。
これはまあ、『このミス』だったか、『本格ミステリ』だったかでも
語られていましたが、出版社と相談の上、決定したとあった気がします。
『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』に続く、という感じなんでしょう。


最初の「夫の余命」はさすが乾先生という、仕掛けが施してあります。
これが最初というのが良い。
「同級生」は少し儚い・悲しい物語。短いながらも読ませます。
一番面白いのは「消費税狂想曲」。これは社会風刺がきいていながら、
しっかりミステリという、何か政府に翻弄される国民で、それが殺人まで・・・(苦笑
なんていう妄想まで膨らませてしまいました。

「九百十七円は高すぎる」は、乾作品では珍しいのでは?
一瞬西澤保彦先生降臨かと思いました(笑
しかし、この金額から何を購入したのかを推理するという、日常の謎ですが、
それだけに留まらず、先に述べたように、そのコンビが西澤作品的という。

「数学科の女」
恐るべき米原さん。そして本編で語られるのは、殺人計画やDNA鑑定への備え
さらには殺人教唆まで、とにかく米原さんは先の先の先まで考え抜いています。
本来であれば、恐るべき話になるのですが、語り手である箕浦の、どこか飄々とした
態度やラストの終わり方などから、そう恐ろしい話には感じられないのです。
そこがまた恐ろしいのかもしれませんが。

林三兄弟の活躍もまた久々に読みたくなりました。


ハートフル・ラブ (文春文庫)

ハートフル・ラブ (文春文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/12/06
  • メディア: Kindle版






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いつもと違う日 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「あの英秀治郎ですか?」
旅行社の風谷は信じられなかった。
誰もが知っている有名作家が、二十年ぶりに英国から帰国する。
本好きを理由にその世話役を任されたのだ。
風谷は英の大ファンである妻のためにサインをもらうが、
受け取った彼女の反応は予想と全く違っていた。
そして、風谷は同僚から英の本当の帰国理由を聞かされて――。(「私だけの巨匠」)
非日常が日常を覆す五篇のミステリー。

「本日は休校日」と「忘れものの季節」の2編が、ある意味両極端でオススメです。
前者は赤川ワールド全開の作品。
休校日に忘れもの(?)をして取りに行くハメになった(しかも友達のせいで!)河口彩子。
なぜなら、休校日にロッカー等の持ち物検査を教員がするからだ。
しかもその忘れ物は、友人のラブレター。勝手に自分のロッカーに入れられた(笑
ところがなんと学校で死体が!しかも殺人?!
まさに赤川ワールドです。
間一髪で助かった彩子ですが、助けてくれた森山先生の戻ってきた理由が秀逸過ぎますね。
いや犯罪だろうと(苦笑

後者は昨今相当な問題にもなっている、学校の規律や校則に関わる一編。
京子と夕香の関係や、生徒たちが一斉に走る姿は、明るい未来を想像させますが、
その両親や弟は、この校則を守るためとんでもない行動に出ていて、実に極端ですね・・・
子どもの方がよっぽどまともです。

「支払われた少女」は、一見すると非常に良いエンディングを迎え、心も温まる
結末なのですが、ストーカー的でもあるし、祖父はあまりに無謀な賭けをしてるよなあ。

最後の「私だけの巨匠」は、落ち着いた物語だけども、読ませる作品。
それでいて、素晴らしい作品です。

赤川作品は長編も短編も面白い。


いつもと違う日 (徳間文庫)

いつもと違う日 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/12/08
  • メディア: 文庫






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逃げこんだ花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

友人達と旅行で温泉に向かっていた亜由美は、決闘へ向かう男たちと出会う。
その成り行きが気になり、後日、殿永刑事に調べてもらっていた亜由美のもとへ、
十三歳の少女が逃げて来た。
決闘の原因となった抗争に巻き込まれてしまい、
年上の男と無理に結婚させられそうだと言うのだ。
なんと男の年齢は——。
表題作のほか「花嫁学校の始業式」収録。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新年一発目は、私のブログでおそらく最も多い赤川次郎先生作品。
花嫁シリーズは、ジョイノベルズ→角川文庫のパターンでしたが、
実業之日本社文庫創刊により、そのまま実業之日本社から文庫も刊行される
ようになりました。
本書は、角川からの逆輸入ですね。

この頃の花嫁シリーズ、勢いありますね。物語がスピーディーなのは
言うまでも無く、登場人物たちの会話や行動のテンポも素晴らしい。
亜由美の両親も相変わらずの凄さを魅せますが(笑
聡子との掛け合いも面白い。

まだ谷川准教授登場前で、そういえば八木刑事っていたなあと思い出しました。
ちなみに表題作より「花嫁学校の始業式」の方が面白いです。
入学したいという変な男と表現される殿永部長刑事や、
妙な服装の八木刑事などが見られます。

表題作はむかーしの地方には本当にありそうですね。
さすがにこれほどの喧嘩は騒乱罪になりそうな気もしますが・・・

また実業之日本社で文庫を集めてしまうかもしれません。


逃げこんだ花嫁 花嫁シリーズ (角川文庫)

逃げこんだ花嫁 花嫁シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: Kindle版






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