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名探偵のはらわた [白井智之]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

史上最強の名探偵VS.史上最凶の殺人鬼たち! シリーズ新刊『名探偵のいけにえ』が
「2023本格ミステリ・ベスト10」ぶっちぎりの1位獲得! 怒濤の多重解決・どんでん返しに陶酔する
全ミステリファン必読の圧倒的傑作!!
「亘くん、きみは真実を語るべきだ」農薬コーラ毒殺魔、局部切断女、そして恐怖の三十人殺し! 
昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵からよみがえり、現代日本で殺戮の限りを尽くす。
空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか? 
「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、
緻密なロジックによる美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。(解説・若林踏)

久しぶりの更新です。

白井さんの作品は初めて読みます。
解説にあるように、スプラッター的要素が強そうな(タイトル)だなあと(笑)
今まで手に取ってきませんでした。
しかし本書は、解説を読んだところそこまででもないようなので、試しに購入。

コミックやラノベなどで、星の数ほどある特殊設定ミステリですが、
その本質は、紛れもなく超一級の本格ミステリです。
連作ミステリではありますが、このタイトルの伏線も良いですね。
「神咒寺事件」でみせる、原田亘の推理から始まり、
最終話「津ヶ山事件」で魅せる、はらわたの推理。
ここで「名探偵のはらわた」が誕生するわけです。

特殊設定と書きましたが、最初の「神咒寺事件」だけは、特殊設定下ではなく、
純粋に新本格の謎解きになっていて、やはり一番好きです。
はらわたが名探偵になる際、助手を務めていた浦野灸の言葉を思い出すのがよい。
古城倫道ではないのです(笑)

そのため、第1話で浦野探偵が退場するのは非常に残念でした。
その後の特殊設定ミステリのためには退場してもらうしかなかったとは思いますが、
彼とはらわたコンビの活躍をもっと読みたかったですね。

たぶんそういう考えを持ってしまうと言う事は、特殊設定ミステリがあまり私は
好きではないんだろうな(苦笑

本作では<追儺>、節分とかで鬼を払う行事ですね、これの逆<召儺>というのが
行われたことで、かつて猟奇的あるいは大量殺人を犯した犯人達が
現世に甦る、という特殊設定が登場します。

この設定を最大限活かしているのは「毒入りコーラ事件」でしょう。
本作はある種の密室トリックで、犯人がどう事件現場を出たのかを、
この特殊設定を用いて行っています。
これは純粋になるほどと唸りました。

本書はいずれも多重解決という構成になっています。
さらっと書いてますが、これはかなり緻密かつ見事な伏線の張り方です。
最終話の多重解決は圧巻そのもの。
遙か昔に書かれた手記から、手掛かりを見つけ出すはらわたもすごいですが、
この推理合戦ともいうべきところは本書でも最大の読み場ではないでしょうか。

『名探偵のいけにえ』も早く手に取りたいですね。


名探偵のはらわた(新潮文庫)

名探偵のはらわた(新潮文庫)

  • 作者: 白井智之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/02/25
  • メディア: Kindle版






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二の悲劇 新装版 [法月綸太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

主人公は、「きみ」。二人称で描かれる失楽園の秘密とは! 
名探偵を最も翻弄した幻惑と苦悩の連続殺人! 
逆転に次ぐ逆転。驚愕の超絶技巧ミステリ! 

「きみ」は京都四条河原町の雑踏で突然に名前を呼ばれる。思いもかけぬ再会に惹かれ合う二人。
すべては、東京世田谷で「彼女」が殺されて暗転した――。死体から見つかった、
たった一本の小さな鍵。「長さ90センチ相当」のキーホルダーから、
作家探偵法月綸太郎はひとつの推理を導いた。だがそれは、
果てしなき迷宮(ラビリンス)への入口にすぎなかった……。奇蹟の超絶ミステリ再臨!


この『二の悲劇』から、『生首に聞いてみろ』まで、法月綸太郎長編はしばらくの間
消息が途絶えることになります。
あとがきを読むと、極度のスランプと法月先生が書かれているように、
そのような形跡も見られるので、本書執筆かそれ以前くらいから、本格ミステリという
難題にぶち当たってしまった感が伺えますね。

個人的感想にもちろん過ぎないのですが、本書と『生首に聞いてみろ』、
類似点結構あるなあと。
ある意味では何度も推理を重ねていくという倫太郎の姿はシリーズお馴染みなのかも
しれませんが、像の首が切断された理由を巡り二転三転する物語と、遺体は誰なのか、
日記には何が書かれていたのかという2点である意味謎が交錯していくのは、
どことなく似ている感じを受けます。
というか、本書は遺体は誰なのか、なぜ遺体は鍵を飲み込んでいたのか、鍵は何の鍵なのか、
日記には何が書かれていたのか、日記に隠された謎とは何か・・・と
ある種矢継ぎ早に謎が登場するんですが、いずれも緊密な繋がりがあることから、
違う謎を倫太郎が解いている感じを受けないんですよねえ。

逆を言えば、それだけ振り回されているとも言えるのかも(笑
倫太郎が推理を竜胆にぶつける場面がありますが、あの段階で彼に与えられた持ち駒では
おそらく最大級の推理なんだろうと。
だからこそそれが違う、となったとき、さらに混迷が深まるのです、が・・・

本書は、いわゆる「ノックスの十戒」に若干引っかかるものがあります。
当時どのように書評や評価されていたのかはわかりませんが、ラストの謎解きは
それに直結するでしょう。
「きみ」という二人称を最初の章で使用することで、ある意味これを仄めかしたとも
取れなくはないですが、どう考えたものか。

私は、この最後の謎解きより、本書は清原奈津実、葛見百合子、二宮良明、
この3人(竜胆、三木も多少プラス)のすれ違いの物語なんだろうと思います。
このすれ違いの描写というか、これはさすがの一言で、実に読ませます。
犯人が誰なのか、ということよりも、このすれ違いと謎解きの過程に
惹かれました。

しばらくの沈黙を経る直前の長編。このところ法月作品も多くが新装版として
登場してますので、ぜひシリーズ全編を読んで欲しいですね。

ところであとがきで出てくる「リレー小説が」、創元推理文庫から出た「吹雪の山荘」とは。
書き始めから、ものすごい時間がかかって出たんですね(苦笑
これも驚きました。


二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

  • 作者: 法月綸太郎
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/10/13
  • メディア: 文庫






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死への招待状 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

西村京太郎の描く渋い探偵が味わえる、秀逸の短編集。

私立探偵・松尾のところに、ある男の将来性を調べて欲しいと依頼があった。将来はバラ色……
と調査を終えようとした途端、事態は思わぬ方向へ。
表題作ほか、危険な男・秋葉京介の活躍も読める短編集。

十津川警部と左文字進が、御大の代表的なシリーズ探偵かもしれませんが、
佐々木丈太郎や本書に登場する秋葉京介も、御大が生み出したシリーズ探偵です。
本書は秋葉京介シリーズと、1編しか登場しないも探偵を務める者達の短編集です。

表題作が一番面白いかなあと思います。後味はかなり悪いですが。
こういう「依頼」は意外と多いのでは無いかと。自分を客観的に見つめるために。
まあ母親の過保護が異常なのもあって、あまりにも不運すぎる最期です。

「血の挑戦」も読ませる中編です。日本の探偵の「特色」的なものを述べながら、
クライマックスではそれとは真逆のやりとりが繰り広げられるのは、良いですね。

かつて御大のノンシリーズ長編で傑作・秀作ものはだいたい(入手可能なものは)
読んだと思いますが、今度は短編も集めたいと思います。


死への招待状 (角川文庫)

死への招待状 (角川文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: Kindle版






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