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二の悲劇 新装版 [法月綸太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

主人公は、「きみ」。二人称で描かれる失楽園の秘密とは! 
名探偵を最も翻弄した幻惑と苦悩の連続殺人! 
逆転に次ぐ逆転。驚愕の超絶技巧ミステリ! 

「きみ」は京都四条河原町の雑踏で突然に名前を呼ばれる。思いもかけぬ再会に惹かれ合う二人。
すべては、東京世田谷で「彼女」が殺されて暗転した――。死体から見つかった、
たった一本の小さな鍵。「長さ90センチ相当」のキーホルダーから、
作家探偵法月綸太郎はひとつの推理を導いた。だがそれは、
果てしなき迷宮(ラビリンス)への入口にすぎなかった……。奇蹟の超絶ミステリ再臨!


この『二の悲劇』から、『生首に聞いてみろ』まで、法月綸太郎長編はしばらくの間
消息が途絶えることになります。
あとがきを読むと、極度のスランプと法月先生が書かれているように、
そのような形跡も見られるので、本書執筆かそれ以前くらいから、本格ミステリという
難題にぶち当たってしまった感が伺えますね。

個人的感想にもちろん過ぎないのですが、本書と『生首に聞いてみろ』、
類似点結構あるなあと。
ある意味では何度も推理を重ねていくという倫太郎の姿はシリーズお馴染みなのかも
しれませんが、像の首が切断された理由を巡り二転三転する物語と、遺体は誰なのか、
日記には何が書かれていたのかという2点である意味謎が交錯していくのは、
どことなく似ている感じを受けます。
というか、本書は遺体は誰なのか、なぜ遺体は鍵を飲み込んでいたのか、鍵は何の鍵なのか、
日記には何が書かれていたのか、日記に隠された謎とは何か・・・と
ある種矢継ぎ早に謎が登場するんですが、いずれも緊密な繋がりがあることから、
違う謎を倫太郎が解いている感じを受けないんですよねえ。

逆を言えば、それだけ振り回されているとも言えるのかも(笑
倫太郎が推理を竜胆にぶつける場面がありますが、あの段階で彼に与えられた持ち駒では
おそらく最大級の推理なんだろうと。
だからこそそれが違う、となったとき、さらに混迷が深まるのです、が・・・

本書は、いわゆる「ノックスの十戒」に若干引っかかるものがあります。
当時どのように書評や評価されていたのかはわかりませんが、ラストの謎解きは
それに直結するでしょう。
「きみ」という二人称を最初の章で使用することで、ある意味これを仄めかしたとも
取れなくはないですが、どう考えたものか。

私は、この最後の謎解きより、本書は清原奈津実、葛見百合子、二宮良明、
この3人(竜胆、三木も多少プラス)のすれ違いの物語なんだろうと思います。
このすれ違いの描写というか、これはさすがの一言で、実に読ませます。
犯人が誰なのか、ということよりも、このすれ違いと謎解きの過程に
惹かれました。

しばらくの沈黙を経る直前の長編。このところ法月作品も多くが新装版として
登場してますので、ぜひシリーズ全編を読んで欲しいですね。

ところであとがきで出てくる「リレー小説が」、創元推理文庫から出た「吹雪の山荘」とは。
書き始めから、ものすごい時間がかかって出たんですね(苦笑
これも驚きました。


二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

  • 作者: 法月綸太郎
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/10/13
  • メディア: 文庫






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