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迷子の眠り姫 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

体育祭に備えてクラス対抗リレーの練習に出かけた昼下がり、誰かに川に突き落とされ、
「あの世」に行きかけた高校一年生の笹倉里加。病院で目を覚ますとなぜか
不思議な力がそなわっていた!自分の背中を押した犯人の正体、家族や友達に迫る危機に、
不思議な力が味方する!?異色の青春ミステリー長篇。

少しの間でも「あの世」を見てしまったことで、何か不思議な力を
手に入れた、主人公の笹倉里加。
その能力とは、遠くにいる友人やその周囲の行動・会話を聞く事ができる場所に
居たりする、なんとなく幽体離脱に近い感じもありますね。
しかし、彼女を救ってくれた祖母から、能力のことを話さないよう言われていて、
彼女自身は、気になった、感じたという表現でぼやかしています。

彼女の周囲で(自分の家庭を含め)起こる様々な問題は、彼女が力を
手に入れる前から起きていたものでした。
その問題を力で知ることができることで、彼女なりにそれらをうまく解決に
導いていく、というのが大まかな流れです。
しかし、彼女の性格から考えると、おそらくそんな能力が無くても、
自分他人関係無く、問題を精一杯解決していこうとするでしょう。

この物語の核心は、彼女の能力にある訳ではありません。
話が進むにつれて、彼女と徹の関係、また親友との関係に変化が生じてくるのですが、
このあたりが赤川さんが描きたかったとこなのだろうと、勝手に思いました(笑)。

「私、特別な力をもってるなんてうぬぼれてたけど、親友の気持ちもわからなかった」と
いう台詞は、「恋心」という物語後半の核の中、彼女自身が言うことで
非常に深いものがあります。

家族が崩壊しようとしたり、麻薬の密売にかかわったり、赤川作品の主人公(女子高生)
たちは、本当に理不尽な境遇ですが、その中で強さや弱さも垣間見えているところが、
なんとなく読者の共感を得るのかもしれません。



迷子の眠り姫-新装版 (中公文庫)

迷子の眠り姫-新装版 (中公文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫



迷子の眠り姫 (C★NOVELS)

迷子の眠り姫 (C★NOVELS)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/12/19
  • メディア: Kindle版



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夜会 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

川で溺れている男の子を助けた水泳世界大会金メダリストの沢井聡子。
そのお礼にと少年の母親に招かれ贅沢な夏休みをすごしていた。姉に早く戻るよう言われるが、
数日後に迫る男の子の誕生会までは居ることに。一方、友人の焼身自殺の真相を追う
高校生の佐山清美はあるパーティに参加することになった。
それは聡子が助けた少年の誕生会だった。二人が目撃した「夜会」の真実とは?

このところYoutubeサーフィンしていて、本をあまり読んでません(笑
本書も結構前に読了したもの。

以下、ややネタバレ。




この「夜会」、昔読んだ記憶があります。
特にクライマックスはよく覚えていて、さて何で読んだのだろう?と。
Amazonで調べると、本書は徳間書店からしか刊行されていないようで、
おそらくトクマノベルズを購入したんだと思います。
当時は文庫でなく、新書版も積極的に購入していたのです(笑)。

再読になるのですが、本書は内容(結末)的にはホラーに分類されるのだと思います。
ただ、それ以上に、突然有名人(主人公の沢井聡子は当時全然注目もされておらず、
無名だったのにもかかわらず、金メダルを取る快挙を成し遂げています。)に
なった主人公やその周辺に訪れた大きな変化が主題なんでしょう。
最後に、亡くなった間宮しのぶ(の幽霊?)から、「人生のピークは、一つだけじゃありませんよ」
と諭されたこともあり、考えを改めることができました。
しかし、唐突に変わってしまった環境で、自分や周囲も突然変わってしまうことへ
簡単に対応できる人はいないでしょう。沢井家は結果的には悪い方へ変わってしまったのです。

また奇妙な植物が敵(?黒幕)として登場するのは、次の文からその理由がわかります。
252頁「柳田も父も「聡子」から養分を吸い上げて生きてきたようなものだ-人の心の中にも、
あの植物は根を張っているのかもしれない。」
本当はあんな奇妙な生物は居らず、人間が生み出した欲の塊みたいなものだったのかも
しれないという、ちょっと突拍子もない考えまで浮かんでしまいました。
しかし赤川さんは上手いですねえ。ホラー小説なんだけども、人間社会とうまく関連づける
というか、人ごとではないんだよ、というのを描くのが実にうまい。流石です。


最後に気になった点。姉の初子は元に戻ったんでしょうか?
明らかに倉田のせいであちら側に行ってしまった描写があったんですが・・・
彼らが消滅したことで、その効果も消えたのでしょうね。



夜会 <新装版> (徳間文庫)

夜会 <新装版> (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/05/12
  • メディア: 文庫



夜会 (徳間文庫)

夜会 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/06/21
  • メディア: 文庫



夜会 (トクマ・ノベルズ)

夜会 (トクマ・ノベルズ)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/06/21
  • メディア: 新書



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壁の花のバラード [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

伊原有利はNデパートに勤めている、二十六歳。
容姿は人並みだが彼氏なし。素敵な出逢いを求めて出席するパーティーでは
いつも壁の花。そんな有利の平凡な人生が一変した。いつものように出席したパーティーで、
ハンサムな青年実業家・沢本徹夫にダンスを申し込まれたのだ。夢心地の有利。
だがなんと、彼は幽霊だった!
驚く有利に沢本は、自分を殺した犯人を捜してほしいと頼む。
彼を殺した犯人は誰!?

以下、ややネタバレ。




赤川作品には平然と幽霊は登場します(笑
最近復刊された『幽霊はテニスがお好き』、『三毛猫ホームズの騒霊騒動』
『怪談人恋坂』etc・・・
しかし、出てくる幽霊は結構明るいタイプも多く、本作品のようにどこかとぼけた
感じの幽霊もチラホラ。

主人公は伊原有利、デパートに勤める人並みのOL。
しかし、婚活パーティーで沢本徹夫という幽霊に出会ったことから人生が一変します。

本書は、沢本を殺したのは誰なのか?を突き止めるのが目的ですが、
その裏には、沢本との出会いで、有利の人生そのものが変わっていく物語でもあるのです。

彼女のかつてのクラスメートである山形とその部下の黒岩が良い味出してますねえ。
有利のことを想い続けていた山形の、食事へ有利を誘うシーンが全然ロマンチックな場面
で描かれないところもまた面白い。

それにしても、真犯人はわかったのにまだ成仏できない沢本と有利は
この先どうなってしまうのか?(笑


壁の花のバラード 〈新装版〉 (徳間文庫)

壁の花のバラード 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫



壁の花のバラード (徳間文庫)

壁の花のバラード (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/04/12
  • メディア: 文庫



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7番街の殺人 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。
手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の
付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。
予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、
21年前に祖母が殺害された団地だった―。一気読み必至の青春ミステリー!

本当に一気読みしてしまいました。
今の赤川作品は、シリーズものより、ノンシリーズものの方が面白いですね。

本作は、主人公の綾乃の祖母が殺害されている所から始まります。
そして、綾乃の母・佑香がまだ若く、しかも綾乃の父との出会いから。

物語は一気に進み、綾乃が女優として芝居に打ち込みつつ、
母の病により、痴話喧嘩のもつれに巻き込まれ、女優の付き人になったり、
同棲している只野との関係など、自分自身の人生がめまぐるしく変わっていく様が
まさに、ジェットコースターのように描かれていきます。

そんな彼女はふとしたことから祖母が殺害された事件を
その事件を捜査していた刑事から聞かされます。
そこからが再び物語が二転三転。

ラスト、浅野から「あの事件が眠りからさめたせいで、君がとんでもない目にあった」
という台詞に、綾乃は「いいえ、はっきりして良かったんです」と答えます。
そう、綾乃が中原真知子の付き人にならなければ、実はこの事件の解決はなかったのです。
犯人にとっては因果応報なのです。

そして、「生きるって、余計なことが積み重なってできてるんですよね」という
綾乃の台詞は赤川作品の主人公らしさでもあり、まさにユーモア・ミステリと呼ばれる
作品群を象徴する言葉だと思いました。

文庫で422頁。中々の厚さですが、そんな厚さを感じさせない展開、謎、
そして張られた伏線・・・
今、非常に大変な時期でご自宅にいる方も多いかと思いますが、
良質なミステリを楽しんでみるのも良いかもしれません。


7番街の殺人 (新潮文庫 あ 13-46)

7番街の殺人 (新潮文庫 あ 13-46)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: 文庫



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静かなる良人 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

浮気をして家へ帰ると、夫は血まみれで倒れており、一言「ゆきこ」と言い残して息絶えた。
冷たい世間の眼と間抜けな刑事の尾行のなか、後ろめたさから自ら犯人捜しにのりだした
妻の千草であったが、犯人捜し過程で、「いい人」だけど退屈で面白みのない人間、
と思い込んでいた夫の意外な一面を知る……。千草は果たして夫を殺害した犯人を
捜し出すことができるのか?夫婦の絆を描いたユーモア・ミステリの傑作。

普通は物語の最中に殺人が起こり、それを解いていくのが、大半のミステリかと思います。
しかし、本書は妻が浮気をして帰ると、真面目な夫が殺害されていて、
しかも最後に遺した言葉が女性の名を想起させる「ゆきこ」。
そして次々と舞い込む、夫の知らない一面・・・

千草は夫を殺した犯人を突き止めるというより、自分が全く知らなかった夫の
顔を探すために、(世間からどう思われようと)積極的に行動していきます。
それがさらなる事件も引き起こす引き金にもなるのですが、
夫が亡くなった後に、自分にはもったいない夫で、これ以上の男はいないと豪語する千草
の台詞は、ある意味とても皮肉が効いています。
落合刑事がまたいい脇役で、最後に千草を口説くのがまたおもしろい。

赤川作品はまだまだ未読本がたくさん。これからも読んでいきます。


静かなる良人-新装版 (中公文庫)

静かなる良人-新装版 (中公文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 文庫



静かなる良人 (角川文庫)

静かなる良人 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: Kindle版



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死体は眠らない [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

妻を殺したらどんな気分だろう?三十代半ばで四つの会社の社長である
池沢瞳は大仕事をやってのけた。ついに妻の美奈子を殺したのだ。
やたら威張っていた妻を。さて、死体をどうするか?と、思案していたところへ妻の友だちは来るわ、
秘書で愛人の祐子が現れるわ、脱走した凶悪犯に侵入されるわ、
次々と訪問者が!妻を誘拐されたことにした瞳だったが―。嘘が嘘を呼び大混乱!

2020年もどうぞよろしくお願いします。

さて、本年一作目は、正真正銘年明けに初めて読んだミステリです。
赤川次郎作品ということで、新年からユーモア・ミステリで楽しもうという。

ところが、本作はユーモア・ミステリではありませんでした。
ユーモア・サスペンス、というジャンルがあるかわかりませんが、
登場人物全てに、常識人が居ないという、カオス状態。

特に警察がすごい。終盤に出てくる上田刑事が唯一まともな感じです。
誘拐事件なのに、自分たちの飯の心配しかしない刑事たち。
とにかく食に対する執着心がすごすぎます。

添田刑事も鋭いところを見せたのでもしかしたらと思ったのですが・・・彼も酷すぎる。
社長秘書の早川祐子に恋をし始める池山刑事。彼は殺されてしまいますから、
気の毒ではあるんですが・・・

主人公の池沢瞳も、早川祐子が偽名であると告白しているのに、なんだか平然と
しているし、好きだ好きだを連発し、殺人事件が多発しているのに、ラブシーンを
演じ続けているという。
被書の吉野と早川祐子の最期もあまりにひどすぎる・・・

最終章の「ハッピー・エンド」のタイトルの皮肉が秀逸過ぎます。
確かに池沢にとっては、そうかもしれません。
しかし、他の人たちにとっては、全く逆の結果に・・・

ただ、不謹慎かもしれませんが、めちゃくちゃ面白かったです。
あまりの突飛すぎる話の連続に、一気読みでした。

さて、本年もたくさんミステリを読めたらいいなあと思っております。



死体は眠らない 〈新装版〉 (徳間文庫)

死体は眠らない 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: 文庫



死体は眠らない (角川文庫)

死体は眠らない (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: Kindle版



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人間消失殺人事件 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

校二年の南尾小百合は、ある日、通学途中にバスを乗り過し、終点の小さな町に降り立つ。
しかし、そこで一人の男性に出会った後、行方不明になってしまい―(表題作)。
どこへでも突然現れる、警視庁捜査一課の名物男・大貫警部が、今日も事件の現場に居合わせる。
謎あり笑いありの大人気シリーズ最新刊!

このシリーズも長寿ですが、赤川さんの心境の変化とでもいうのか、
シリーズを重ねるごとに、大貫警部の存在が少しずつ変わってきている気もします。

相変わらず次々と逮捕したりしてますが、意外と人情味あふれる所を
表題作では見せています。「ナイフが勝手に刺さった」というまさに大貫理論(笑
しかも、ここ数作品に見られるのは、マスコミを実にうまく使っているんですよねえ。
むろん最初の「東西南北」でも自らの突飛押しも無い推理を雑誌に話したりしてますが、
マスコミの嫌な部分を逆手に取っている印象です。

「上昇志向殺人事件」は現在の「IT長者」を皮肉った作品。
大貫警部の「刑務所では一番上の階に入れてもらうよう頼むんだな」という台詞は
皮肉が効きまくっています。

よくよくシリーズを見てみると、大金持ちだろうが、国会議員だろうが、自分の思ったことは
必ずやり遂げる取るという、忖度など一切しない、ある意味警察官の鑑のような気もします(笑
でも、思いついたことが人間離れしている事も多々ありますね。

本書で全編にわたって描かれているのは、母と子の関係かなと思いました。
警部の、あくまでも偶然の行動で、両者の絆が深くなるというのもまたおもしろい。

しかし、警部にはもっと強権を振るってもらいたい時もあり、
そんな作品もまた読みたいですね。


人間消失殺人事件 (講談社文庫)

人間消失殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: 文庫



人間消失殺人事件 四文字熟語 (講談社文庫)

人間消失殺人事件 四文字熟語 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: Kindle版



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目ざめれば、真夜中 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ビルに立てこもった殺人犯に指名され、仕事中にもかかわらず刑事に連れられてきた真美。
建物の中に入ると、そこには高校の同級生だった白木が婚約者の悠子を人質にとっていた。
しかし、事件の真相が明かされる前に、白木は警察に射殺されてしまった。不審に思った真美は、
事件の調査に動き出すが、行く先々で妨害工作に遭う。
さらにプライベートでも仕事でも問題が発生する。
人間関係の綾が織りなすサスペンス・ミステリ。

とにかく女性陣が強い。とくに射殺された白木の母親である
幸江の行動力はすごいものがあります。

そして、主人公たちである、矢田部真美、広田悠子、宮坂初枝、彼女たちは
私生活でもそれぞれ問題を抱えながらも、白木が射殺された事件に端を発する
大きな大きな事件に果敢にぶつかっていきます。

本作は女性たちの活躍だけでなく、意外なところで心境が変化して良い上司になる
須田課長など、ところどころでユーモア・ミステリを感じるところもありますが、
やはり社会派、より現実的な、赤川次郎先生からの、現実社会への警鐘小説なのでしょう。

P423「結局、一部の人間だけが責任を取って辞め、ことはうやむやに終わる可能性のある」
というのは、決して小説内だけの話ではないでしょう。
責任を取るどころか、とかげのシッポ切りにもなりかねません。

本書のタイトルは、気付いたら(世間・世界は)真夜中のような状態であった、
ということを意味しているような気がしてなりません。


ラストの真美と京子、そして須田との掛け合いがとても和やかで
物語は締めくくられるところが唯一の救いですね。


目ざめれば、真夜中 (角川文庫)

目ざめれば、真夜中 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/09/21
  • メディア: 文庫



目ざめれば、真夜中 (角川文庫)

目ざめれば、真夜中 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/09/21
  • メディア: Kindle版



目ざめれば、真夜中 (幻冬舎文庫)

目ざめれば、真夜中 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/04/01
  • メディア: 文庫



目ざめれば、真夜中 (幻冬舎文庫)

目ざめれば、真夜中 (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/03/31
  • メディア: Kindle版



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ひとり暮し [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

東京の大学に入学した依子は、念願のひとり暮しをすることになった。
家賃が安いだけがとりえのアパートに決めたはいいが、複雑な事情がありそうな住人ばかり。
入居早々、部屋は隣に住む女性の荷物に占領されており、自分の荷物を預かってくれている
という部屋を訪れると、そこの住人が倒れていた!どうやら、自殺未遂を繰り返している人物…。
しかも、彼女を助けたことがきっかけで、女優デビュー?波瀾万丈の青春ミステリ。

赤川作品はこれまで多く読んできましたが、この作品はこれまで読んだ系統には
あまり当てはまらない感じがしました。
というのも、説明文には「青春ミステリ」とあるのですが、
本書はミステリというジャンルになるのかなあと。

主人公の板垣依子の成長を描く物語、かとも思いましたが、
そうでもない(苦笑)
というのも、物語が進んでいっても、
彼女自身の性格は全く変わっていないからです。
むしろ、持ち前の優しさで、彼女の周囲の人たちの人生を良い方向へ変えていきます。

そして殺人など到底起こりません(傷害事件は起こりますが)。

赤川作品のヒロイン像とも依子は少し違うし、ユーモアミステリでも
青春ミステリでもなく、だけど、おもしろく、読後感が良い小説。
まだまだこうした赤川作品も多そうな気がします。



ひとり暮し (角川文庫)

ひとり暮し (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: 文庫



ひとり暮し (角川文庫)

ひとり暮し (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: Kindle版



ひとり暮し (幻冬舎文庫)

ひとり暮し (幻冬舎文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 文庫



ひとり暮し (幻冬舎文庫)

ひとり暮し (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2002/09/30
  • メディア: Kindle版



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綱わたりの花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

誘拐された花嫁は別人!?
本物はどこへ?

結婚式に覆面をした三人組が飛び込み、花嫁を誘拐した。
しかし、さらわれたのはアルバイトで花嫁のふりをしていた久美子だった。
久美子の母親や友人の塚川亜由美は、本当の新婦・美亜の父親で
大富豪の坂戸に身代金の立て替えを頼むが、聞く耳を持たない。
その横暴な態度が、思わぬ波乱を巻き起こすことに!
長編ユーモアミステリー、人気シリーズ第30弾。



花嫁シリーズでは、久しぶりの長編です。
(というか前回の長編は何でしたっけ?手元に無く確認できず)

誘拐された花嫁が、実はアルバイトでという所から始まる誘拐ミステリ。
普通に考えればその時点でタイムリミットサスペンスになるのですが、
そこがそうならないのが、赤川作品。
なんと誘拐された花嫁が誘拐団に加わるという奇想天外な事態に。

さらに、本物の花嫁・坂戸美亜は、八田圭治と駈け落ちするのですが、
その周囲でもなにやら不穏な空気が・・・

花嫁の誘拐という事件から、殺人事件やさらにその他の事件まで
次々と起こり、長編らしさを感じます。

最後は相変わらず、かなり強引な大団円的な結末なのがちょっとなあ・・・と思いましたが、
亜由美の両親が普段と何ら変わらないのはさすが。

本作はシリーズ第30作目という記念作品なんですね(それもあり長編?)。
シリーズ一覧を見ると、『紙細工の花嫁』とか『半人前の花嫁』などを思い出します。

亜由美のボーイフレンドである谷山先生の影が最近かなり薄いので、
次作ではぜひその活躍をみたいです。


綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫



綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

綱わたりの花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: Kindle版



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闇が呼んでいる [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

それは、
君たちの噓のせい。
復讐の幕があがる!

女子大生の田渕美香は友人の轟淳子、黒沼さとみ、池内小百合と六本木の店で
マリファナを喫っていた。ところが、薬で眠らされてしまう。気がつくと乱暴された跡が!

美香は外務大臣の娘。麻薬パーティにいたなんて知られるわけにはいかない!
同級生の西川勇吉を乱暴した犯人に仕立て上げ逮捕させることに成功する被害者づらの彼女たち。
西川は追い詰められ自殺してしまう。

数年後「逃れることはできない」と奇妙なメッセージが彼女たちのもとに届く。
差出人は罪を着せられた西川だった!
復讐の幕があがる。


単なるクラスメートにえん罪をきせ、自分たちの幸せは守ろうという、
そして田淵美香の父親は現職の大臣。財力もある。
金と権力で不祥事を揉み消す、絶好の立場です。

ただし、父親は娘の言い分しか知らないため、美香ほどの罪はないでしょうが・・・

この4人組は仲良し四人組というだけではない点は、大学生時代の頃から、
特に池内小百合から語られますが、
この小百合が一番このえん罪事件で大きく変わってしまったのではないでしょうか。

特に黒沼さとみは意図していないにはしても、彼女を頼ったおかげで、
人生の絶頂とどん底を味わっています。

美香の家も最後家庭崩壊するのですが、しかし、これはえん罪事件による
ものだけではありません。
夫である清水真也が浮気したことは、この事件を聞かされたから、だけでしょうか?

西川自身も死んでしまい、両親も亡くなった今、彼女たちに復讐しているのは
誰なのかが、最後までわかりません。
しかし、この犯人の行動も、復讐という面だけでなく、贖罪という面も大きいような
気がします。

ところで、ものすごく蛇足でかつ物語に一切関係ないのですが・・・
4人組の一人である轟淳子と、同じ同級生の馬場百合香が母校で講師をしているという
のは、かなり恵まれているよなあ。また20代の若さで大学講師とは・・・(笑
後にいずれも非常勤講師ということが判明しますが、それでもすごい。
今の時代は考えられませんね。


闇が呼んでいる (徳間文庫)

闇が呼んでいる (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/05/14
  • メディア: 文庫



闇が呼んでいる (幻冬舎文庫)

闇が呼んでいる (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/09/30
  • メディア: Kindle版



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三毛猫ホームズの証言台 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

因縁めいたつながりのある人々が集った“高原ホテル”。法廷で決定的な証言をし
無罪をもたらした女性と結婚した千葉。大企業の社長令嬢の婿となった記憶喪失の男、辻川。
彼の出現により未来を失った安西…。奇しくもホテルに同行した片山刑事たちは、
複雑な人間閑係が巻き起こす事件に対峙する。そして、ホームズの可愛らしい後輩も登場!
国民的大人気シリーズ第51弾!

はや51作目ですか。いや本当に長寿シリーズです。
本作は「高原ホテル」が舞台となりますが、ホテルで思い出すのは
やはり「黄昏ホテル」
本書も「黄昏ホテル」同様、まさに解説文にあるように因縁めいたつながりの
ある人々が集います。

それにしても、これだけの登場人物を本当にうまく描ききるなあと感心します。
プロローグのおそらくは虚偽の証言をした森川礼子と、それを依頼した千葉克茂。
この二人の物語が次項から始まるかと思いきや、お見合い叔母さんの異名を取る
児島光枝が登場し(笑)さらには辻川寿男とその妻・友世・・・と
目まぐるしい場面展開にもかかわらず、読みづらさを感じない。さすがです。

本作ではホームズの弟子(?)パリという子猫が登場します。
どういう風貌なのかはっきり書かれていないのですが、ホームズがなにやら指導をしている
場面もあるし、かなり優秀な弟子のようです。

最後の大団円は、ご都合主義といってしまえばそれまでですが、
しかしこれがホームズや片山たちが持つ事件解決の力なのでしょう。

今回の解説で山前譲さんは、カッパノベルズ刊行時の<著者のことば>を
引用して、このシリーズのおおまかな流れを説明されています。

ところが文庫購入だとこの<著者のことば>を読めず、今回紹介されて、
改めて本シリーズの位置づけの変遷を垣間見ることができた気がします。


「推理」や「狂死曲」「怪談」「降霊騒動」といった作品群から、
「花嫁人形」「危険な火遊び」「怪談を上る」そして本作「証言台」。
山前さんも指摘されるように、本シリーズは現実社会の変遷を相当受け入れつつも、
そこにホームズ・片山姉妹・石津刑事・栗原捜査一課長といった「変わらない」
シリーズキャラクターを入れる事で、現代社会や時の世相へ常にメッセージを
送り続けているのでしょう。
赤川さんはそれを一貫して行ってきたのかもしれませんが、
やはり初期・中期と比較しても、この色合いは近年の作品群に多く見受けられる
気がします。

とはいえ、前にも書きましたが、初期・中期の作品群のテイストも読みたいのは確か(笑
先生、ぜひお願いします。


三毛猫ホームズの証言台 (光文社文庫)

三毛猫ホームズの証言台 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



三毛猫ホームズの証言台 (光文社カッパ・ノベルス)

三毛猫ホームズの証言台 (光文社カッパ・ノベルス)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/12/20
  • メディア: Kindle版



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ゴールド・マイク [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

川畑あすかは友達の佳美とともにオーディションに挑戦していた。三度目にもかかわらず、
“あがり性”のあすかは、途中で歌えなくなってしまう。ところが、本選終了後に
審査員のNK音楽事務所中津が声をかけたのはあすかだった!佳美にそのことを話せぬまま、
アイドルへの道を進みだしてしまったあすかは一気にスターへの階段を駆け上がるが、
周囲には大人たちの黒い思惑が渦巻いていた!

この作品はダブル主人公という、赤川作品では珍しい作品だと思います。
しかも、芸能界を舞台としており、「川畑あすか」は偶像世界の、「前田佳美」は現実世界の、
というある種の棲み分けが出来ているんではないかと深読み。

あすかをめぐる各芸能事務所の思惑や、その関係者、そして家族・・・
ドロドロした汚いものが見える中で、
あすかと佳美は、自らを見失うことなく、力強く前に進んでいきます。
これがとても素晴らしい。

そして全てを見通しているかのような存在である佳美の彼氏・高林悟。
実のところ真の主人公ではないかと思いました。

ひとつ腑に落ちないのは、川畑亮の事件。
結局亮が殺人犯だったようですが、あの場面や説明はちょっとよくわかりませんでした。


それにしても赤川作品が続きました。やっぱり面白いんですよね。


ゴールド・マイク (徳間文庫)

ゴールド・マイク (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: 文庫



ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/10/01
  • メディア: 文庫



ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

ゴールド・マイク (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/09/30
  • メディア: Kindle版



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スパイ失業 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

入院中の夫と中1の娘を抱える主婦のユリ。その正体は東ヨーロッパにある小国のスパイだった!
しかし財政破綻で祖国は突然消滅、ユリが表の仕事である通訳に専念しようと決めた矢先、
駅のホームから突き落とされかけたり、派遣先のパーティ会場で大臣を狙う暗殺者に遭遇したりと、
周囲が騒がしくなる。ついには夫と娘にも危険が迫り、ユリは謎の敵に立ち向かう―。
すべては家族を守るため。戦う母のユーモアミステリー!

以下、ややネタバレ。





赤川先生の作品では殺し屋(元殺し屋)や泥棒などは主人公で多く登場しますが、
スパイはあまり居ないイメージです(知らないだけでしたらすいません。)
本書のタイトルが、中を読むと実に皮肉が効いていて、
これまで勤めてきた「スパイ」的な仕事(実際は単なる情報収集のみ)より、
国が無くなり、その仕事を失業してからの方が、スパイの仕事をしているんですよね。
スパイというより007に近いくらい。
しかも他人がユリをそのように見ている(特殊諜報部員)というのもまた皮肉です。

自分の夫が重大な秘密を握っているものの、直接に夫婦でその話は語られない所や、
最後に登場する黒幕がある超意外な人物だったりと、意表を突くドンデン返しもあり、
一気読み、間違いなしです。

そして確実に怪しいユリの相方(?)を勤めることになる河本くんが
怪しいだけで、何の関係もないけども、ものすごく度胸が据わっている人物だったり。
一国の隠し財産を巡る、凄惨な争いが描かれるのですが、その凄惨さを覆い隠す
ユーモアを実ニうまく織り交ぜています。さすが赤川先生。

最後のある超意外な人物の所は、物語を離れ、日本がスパイ天国を言われている皮肉にも
読めましたが、さすがにこれは深読みでしょうね。


スパイ失業 (角川文庫)

スパイ失業 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 文庫



スパイ失業 (角川文庫)

スパイ失業 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: Kindle版



スパイ失業 (ハルキ文庫)

スパイ失業 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2000/12/01
  • メディア: 文庫



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明日に手紙を [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

製品に欠陥のある洗濯機が原因で、女性が感電死する。製造元のK電機工業は欠陥を知りながら
それを認めず、世間から非難を浴びる。そんな悪い状況から抜け出したいK電機工業の成瀬は、
被害者家族の平田夫婦や不買運動をしている人々の絆を壊すため、
捏造した手紙を出す計画を提案する。その計画は思惑通りに進んでいくかに思われたが…。

良くも悪くも、一族経営に近いK電機工業、社長は後半部分でまともな対応に出るのですが、
息子が酷すぎる。社長の対応だけではおそらくもう会社の建て直しは無理でしょうね・・・

K電機ばかりを攻めるマスコミや、被害者家族、不買運動を続ける人々を
混乱させる目的で書かれた手紙。
それがK電機への不買ではなく、平田家の現実のものとなるというのは
手紙を出した成瀬夫人やこれを画策した武藤副社長も予想だにしなかったでしょう。

一方、現代社会で手紙、というのはせいぜい年賀状で残っているくらいでしょうか。
それすらも、LINEやe-mailで事足りる世の中になりました。
しかし、手紙の持つ<不気味さ>はLINEやe-mailでは表現できないでしょう。
今の時代でも、突然自分の所へ、奇妙な手紙が届いたら・・・
本作はそんな手紙の持つ異様さ、不気味さも表していると感じました。


明日に手紙を (実業之日本社文庫)

明日に手紙を (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: 文庫



明日に手紙を (中公文庫)

明日に手紙を (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/04/01
  • メディア: Kindle版



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幽霊から愛をこめて [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

高校一年の大宅令子は、編入先の全寮制山水学園へ向かっていた。同行する父は警視庁捜査一課の警部。道中、昨夜起きた殺人事件の話を知る。なんと学園の女子生徒が寮へ戻るところを殺されたという。
直前まで被害者と一緒にいた同級生は「白い幽霊をみた」と話していた。
事件に首を突っ込みたくなるタチの令子は、真相を探り始める。
一方、東京のNデパートでもよく似た殺人事件が発生する!

連続で赤川次郎御大。これも昨年読了済み。

いつもの女子高生主人公が事件を解決するユーモアミステリとはちょっと違います。
舞台は山間の全寮制山水学園だけでなく、東京でも似たような事件が起こり、
さらには主人公が3か月以上も行方不明になるという、大事件に。
ラスト、主人公へは伝えられない、ある非常に辛い真実が明かされるのですが、
令子は気付きそうですね。

単なる殺人事件に留まらず、なぜ殺人事件が起こり、令子にそっくりの人物までが目撃されるなど、
山水学園やその背後にある団体の真の目的はかなり驚きました。
赤川先生の作品で、幽霊とタイトルが付くと、だいたい本物の幽霊が登場したりするのですが、
それでもユーモアミステリなんですよね。
しかし、本作はそうではなく、なんというかカルトかつ普通に現在でも起こる可能性が
あるのではないかと感じました。


幽霊から愛をこめて (徳間文庫)

幽霊から愛をこめて (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/11/02
  • メディア: 文庫



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ローレライは口笛で [赤川次郎]

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

新年一発目は昨年読了本から。
まずはAmazonさんの紹介ページから。

ナース仲間の久江、和子、千寿の三人は、休暇を取ってヨーロッパへ。ライン川の遊覧船で、
初老の紳士が具合を悪くした。彼を助けた千寿は、お礼にチェスの駒が付いたキーホルダーをもらう。
その紳士が行方不明になっている大学教授だと知った彼女は、帰国後、研究室に連絡をするが…。
口笛が奏でるローレライ。美しいメロディが、彼女たちを殺人事件へと誘う!

場面展開がめまぐるしい。そして本作はダブル・ヒロイン。
犯人はすぐにわかります。しかしそんなことは赤川次郎作品には関係ありません。

ローレライの音色、そして口笛、この辺りは恐怖を感じますね。
最後の場面はまさか自首のために警察へ行く二人とは到底思えず、
デート中の二人にしかみえない描写なのは、赤川次郎先生らしい作品。

ローレライそのものは、殺し屋の好きな曲だったのかなあ。
その辺りはたしか描かれていないんですよね。

一点いえば、この病院には入院したくない(笑


ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/11/08
  • メディア: 文庫



ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

ローレライは口笛で 新装版 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/11/20
  • メディア: Kindle版



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悪の華 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

団地に住む一人の主婦が射殺された―。彼女の葬儀の日、7年ぶりに顔を合わせた“悪い仲間”たち。
現在は会社社長、ピアニスト、主婦とそれぞれの生活を送っている。その平和を脅かすように、
過去に仲間の1人を殺したあいつが帰って来たのだ!!一方、会社社長の背後に忍び寄る、
刑事と女性警察官の影。1人、また1人と仲間があいつの手で殺されてゆく…
最後に残るのは一体誰!?悪の悲しさと儚い友情を描いた傑作サスペンス。


まさに息をもつかせないジェットコースターのような、赤川作品らしい展開。
平凡な主婦(と思われた)谷沢佳子が拳銃で殺される冒頭のシーンは個人的には
物語に惹き込まれました。

神崎や迫田、綾子らが過去にどんな「悪」をしていたのかはっきりとは描かれません。
しかし、現在の生活はまともでも、物語の端々に出てくる、彼らの行動。
それは、たとえ、<ノラ>の出現がその引き金になったとしても、「悪」そのもの。

一方でそんな神崎に、警察官でありながらそれを裏切り、上司とまで撃ち合いをする
永峰静江という女性は、神崎のことが好きだからこその行動だったのでしょうか。

彼が生きているのは、多くの人の死の上にあることはまちがいありません。
神崎は最後まで生き残りますが、彼にとってそれは幸せだったのかどうか。



悪の華 (角川文庫)

悪の華 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



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本日は悲劇なり [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

早朝の教室で女子高生が原因不明の自殺をした。レポーターとして事件の取材をしていた白木は、
少女の死を喜ぶ級友や嘘の発表をする学校に興味を抱き、自殺の原因を探り始める。
調査を進めるうちに、何者かの妨害を受けながらも、少女の遺書を教師が隠したという噂を知る。
真相究明のため遺書を探し出そうとする白木だったが…。少女の自殺の裏に隠された真相とは。
驚愕の結末の表題作他1編収録。

表題作はマスコミの各報道への極めて皮肉のこもった作品。
スクープを見つけるために手段を選ばない白木の行動は自業自得でしょうが、
女子高生の「遺書」をどうすべきだったかは、今なら学校の対応が問われる気もします。

「1/2の我が家」は社宅の妻が自治会長に、会社の夫が課長に、それぞれの生活に
転機が訪れた所から始まる物語。
表題作より最後は救われる話ですが、このラストが赤川先生らしい。



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



本日は悲劇なり (角川文庫)

本日は悲劇なり (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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恐怖の報酬 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

こんなはずじゃなかったのに――。平和な日常が反転する傑作短編集。

大切な来客の駐車場を確保しそこなった昭子。年下の課長から毎日嫌がらせを受ける定年間際の柳井。
公園でガラの悪い男たちに絡まれ、一緒にいた彼氏に置いていかれた友子。
アイドルと共に強盗の人質になった銀行員・明美。
窮地に陥った4人はそれぞれ差しのべられた救いの手を取ろうとするが……。
信じていた日常に裏切られた人間の、もろさとしたたかさを容赦なく描き出す、傑作短編集。

ホラー文庫らしい作品群です。
その中でも救いがある話は第3話「最後の願い」
ラストも最後にまた娘に会えて、会田もうれしかったのではないでしょうか。
もちろん、危害を加えようとしたことは後悔しているかもしれませんが。

第1話は主人公の昭子がプラスマイナスゼロと言っているように、
良いこともあれば悪いこともある、で終わらないところがすごい。
何かと頼りにしてきた三橋とのドライブから、一気に別の物語になったかのようです。
しかもラストは昭子までもがその世界に慣れているところが怖い。

「使い走り」は寺岡の自業自得な話の気もするのですが、
星野貞代が柳井が亡くなった直後に自殺していたという衝撃の事実と、
それが明らかになっても、課の誰もが感動して受け容れたという事実、
さすがに背筋が寒くなりました。感動的にも捉えられるし、恐怖とも捉えられる、
なんとも言いがたいラストです。

一番後味が悪いのは最終話「人質の歌」
とにかく救われる人は誰一人いません。
そして、強盗人質事件にかこつけて悪巧みをする輩たち。
途中、強盗犯とは違う殺人犯が登場するという、犯人のバトンタッチが行われるのは、
極限状態だからなのかと思いきや、実は最後でまた明かされる意外な真相。
とにかく誰一人として救われない物語です。


恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



恐怖の報酬 (角川文庫)

恐怖の報酬 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



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今日の別れに [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

押しに弱く、彼氏の坂西と別れられず困っていた歩美。今日こそはと坂西に会いに行く途中で、
憧れの先輩・南田からデートの誘いの電話が入った。有頂天になった歩美が
その勢いで坂西を強く拒むと、傷ついた坂西は車の前に飛び出しはねられてしまう。
南田とのデートの時間が迫っていた歩美は罪悪感を覚えながらも坂西を見捨て立ち去るが、
そのことが思わぬ形で歩美の人生を歪めていく…。表題作他2編収録。

元々角川ホラー文庫で刊行されていたので、ホラー色がかなり強い作品です。
その中で唯一、赤川作品の少年少女の冒険譚とも言えるのが「角に建った家」
この話で一番気の毒だったのは、家が建った土地の地主でしょう。
いきなり絵に閉じ込められます(苦笑

表題作は主人公の歩美の行動から、家族やその周囲までが不幸に見舞われる話。
坂西や三田智子の恨みの深さは理解できますが、最後に坂西(と智子?)が見せた
優しさが少し救われます。
しかし妹が亡くなった直後の歩美の行動は確かにちょっと・・・

「あなた」は過去に犯罪を犯して逃げた「故郷」に、別人別名として
そして成功者として戻ってきた「町田国男」の物語。

表題作と違い、貞子は「町田」(増田)を恨んではいません。
しかし、増田自身、最後に自らに終止符を打ち、かつ改めて貞子と一緒に旅立つのです。

ラストはかなり意味深な終わり方です。
しかし、良子もひとみも真実を知ることは無いでしょう、それが救いです。



今日の別れに (角川文庫)

今日の別れに (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



今日の別れに (角川文庫)

今日の別れに (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



今日の別れに (角川ホラー文庫)

今日の別れに (角川ホラー文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/01/10
  • メディア: 文庫



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自殺行き往復切符 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

19歳の女子大生・真鍋今日子は、恋人木村の甘い囁きを頼りに、心中をほのめかす書き置きを残し、
失踪した。翌日、今日子のハンドバッグと靴だけが海辺の崖で発見された。
警察の急報を受けた両親が現場へ向かったが…。その後、海岸で発見された今日子らしき女性は、
記憶を失っていた。一方、木村は新たに知り合った金持婦人を殺し、金と宝石を奪う。
そして次々と起こる殺人事件…。天才詐欺師が企む罠。ピカレスク・ロマン。

殺人犯かつ女性を生まれながら虜にし、詐欺を働く「木村久夫」「池上照夫」の物語。
また彼に魅了された女性たちの物語でもあります。

大宮司美沙の行動力には驚きますが、それ以上に彼女の父親・大宮司泰治がかなり
強烈な人物です。
娘のためなら、正義も道徳も関係無い、それこそ殺人まで犯すという、しかも
巨大な権力を持っているという。どう見ても悪役なのですが、どこかそう思えない所も
あるのがまた不思議。
そして、物語の最初に「彼」に騙された真鍋今日子の父・真鍋圭介も実は
最後の最後で大宮司と似た顔を見せます。
波子(今日子)の共同殺人をあらゆる手を使って無罪にするという、圭介の態度は
大宮司の姿に重なるのです。

ラスト、果たして美沙は「彼」に逢えたのか。物語はその結末を描かず終幕します。

他にもいくつか気になる謎を残しつつだったので、ちょっと気になりました。
真鍋の被書で極めて有能な金田はどうして警視庁捜査一課を辞めたのか。
大沢の妹の亜矢子と婚約解消したのはなぜか。
(再会したとたん、恋人関係に戻るので、余計に気になりました。)

「彼」はなぜ子どもにとても優しく、家族について語るとき、別人になるのか。
この辺りはあえて謎として残したという気もしますが、どうでしょうか。

それにしても、最後まで「彼」の本名は明らかにならず、主人公の名前すら
わからないという極めて希有な物語でした。


自殺行き往復切符 (角川文庫)

自殺行き往復切符 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 文庫



自殺行き往復切符 (角川文庫)

自殺行き往復切符 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: Kindle版



自殺行き往復切符 (角川文庫 (6050))

自殺行き往復切符 (角川文庫 (6050))

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1985/04
  • メディア: 文庫



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冒険入りタイム・カプセル [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「三十年。タイム・カプセル。―そして、殺人」父の栄一郎が始めた三題噺。
再婚相手の光代とハネムーンの途中、三十年前に埋めたタイム・カプセルを掘り出すため
高校に立ち寄るらしい。同行を命じられた一人娘の倫子は「殺人」というお題に戸惑う。
そこへ「三十年前のことで話をしたい」という電話が。
さらに一緒にタイム・カプセルを埋めた同級生が父娘の目前で刺され…。

赤川次郎の王道作品でありながら、主人公の倫子よりも、
父親の栄一郎(含めた同級生と当時の教師)の青春物語かなあと感じました。

30年前に生徒だけでなく教師からも絶大な人気があった高津智子先生が殺害される。
彼女を殺した犯人は誰なのか。
タイムカプセルには何が埋められているのか?

栄一郎たちの前に現れた、彼の同級生・石山の娘「を名乗る」石山秀代、
倫子の新しい母親となった羽佐間(小泉)光江など、
倫子の周囲も一筋縄ではいかない人ばかり。

ラストで一気に大団円に持っていくのも、さすが赤川先生。
最初に書いた、栄一郎の青春物語というのは、実際のところ、
彼がタイムカプセルから殺人まで、ほぼ全ての謎を知っていたからという面も大きいです。

謎めいた女性である中山久仁子をもう少し活かして欲しかったなあという印象と、
大団円ではあるのですが、その反面、かなりの駆け足になってしまったかなとも思います。

今月は角川文庫で多くの赤川次郎作品が復刊しましたので、そちらも随時
更新していきます。


冒険入りタイム・カプセル (徳間文庫)

冒険入りタイム・カプセル (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/09/07
  • メディア: 文庫



冒険入りタイム・カプセル (角川文庫)

冒険入りタイム・カプセル (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2001/09/14
  • メディア: Kindle版



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行き止まりの殺意 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

祐子の母は、父を裏切って家出をした。それを苦にして、父は自殺してしまう。
一緒に暮らしていた祖母も病死。たった一人取り残された祐子は、母への憎しみを募らせ、
それはやがて殺意に!凶器を携え、母の住むアパートへと向かうが…。(表題作)
他に、オフィスを舞台にした「消えた会議室」、ホラーの秀作「犬」など、
サスペンスあふれる傑作を揃えた短編集。

表題作は主人公の祐子が母親を殺しに行く途中で出会う、一組の夫婦が良いです。
奥さんとの会話、そしてラストに描かれるナイフの描写、
祐子が思いとどまった思い止まった大きな要因ではないでしょうか。

「真夜中の電話」は怒濤の展開かつスピーディなコメディのようなお話。
コメディなどというと、主人公の由紀子に怒られそうですが・・・
見舞われる災難はとても恐ろしいのですが、どこか抜けているんですよねえ。

「あの人は今・・・」は良い人しか出てこない作品。
ラストがまた素晴らしい。

右へ行ったらどうなるか、左へ行ったらどうなるか、人生生きていれば
そういう選択は多いかもしれませんが、「わかれ道」の主人公が選んだ
その選択は過激そのものです(笑
『三毛猫ホームズの安息日』でも片山晴美が「人違い」だかでとんでもない事に
巻き込まれますが、本作も同様。違うのは主人公・美也子の性格が一変したことでしょうか。

「犬」と「旧友」はともに犬がメインのホラー作品。
とはいえ、前者は確かになぜ犬が生きていたかはホラーですが、同情を禁じ得ません。
後者は完全なホラー。ラストもまた悲惨です。

最もミステリ色が強いのが最終作「消えた会議室」
主人公の明子はまさに赤川作品の王道主人公。
ちょっと頼りなそうな雰囲気のササニシキではなく佐々木警部、ではなく警部補は
実のところかなり優秀です。
存在しないはずの<第七会議室>やこの「七」という数字の読みの特殊性を
見事に活かした快作です。

ところで来月の角川文庫は異常に赤川次郎作品が復刊されるのですが、
何かあるのだろうか?


行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/07/11
  • メディア: 文庫



行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 新装版 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: Kindle版



行き止まりの殺意 (光文社文庫)

行き止まりの殺意 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1988/04
  • メディア: 文庫



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別れ、のち晴れ [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

最近、父親の様子がおかしいと高校生の宏枝はあやしんでいた。
別れた母と年に一度「離婚記念日」と称して会っているのだが、その日が近いからなのか? 
それとも仕事のトラブル? 宏枝は顔色を読むことにかけては天才なのだ。
一方、弟の朋哉も母親が落ち込んでいると連絡してきた。調べてみる必要がある? 
子たちは親を想い、親は子を想う。家族の再生を描く珠玉のホームドラマ!


殺人事件は起こりません。そして登場人物に一人も悪人は居ません。
それでもちょっとした日常、誰にでも起こりうることを、
こうして物語にできるのはさすが赤川御大。

強いて言えば、宏枝と朋哉が実に逞しいことでしょうか。
「子子家庭」シリーズまではいきませんが、本作のこの二人も負けてません。

そして彼らは江梨や市川との「出会い」を通じて、大人だけが持つ葛藤や苦しさを
学んでいきます。

徳間文庫にはこれからも復刊を望みます!


別れ、のち晴れ (徳間文庫 あ 1-100)

別れ、のち晴れ (徳間文庫 あ 1-100)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: 文庫



別れ、のち晴れ (徳間文庫)

別れ、のち晴れ (徳間文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: Kindle版



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演じられた花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子大生・塚川亜由美と親友の聡子は休日に演劇を楽しんでいた。切ない物語に涙を流していると、
カーテンコールで主演俳優がヒロインの佐々木伸子にプロポーズ!会場は沸き立つが、
幸せそうな二人の背後には、ある女の冷たい眼差しが―。
さらに、伸子の元には謎の脅迫状が送られて!?
大人気ユーモアミステリー。(「花嫁は時を旅する」併録)

花嫁シリーズも現在刊行されているまででなんと31作。
息の長いシリーズとなりました。

本書では表題作より「花嫁は時を旅する」がオススメ。
土砂崩れで亡くなった松井夫婦が実は大きな事件を鍵を握っているのですが、
この夫婦、物語では一切登場しません。
しかしながら、関係者や犯人の話を聞いていくと、
実に奇妙で興味深い(といっては失礼かも)夫婦です。
むしろ彼らはどういう生活をしていたのか逆に気になってしまう・・・

そして本書両編にいえるのは、亜由美以上の活躍を魅せるのが
愛犬のドン・ファン。
赤川作品の中でも三毛猫ホームズの次に大活躍かつ主役を食うレギュラーメンバーです。

殿長部長刑事、相当に優秀なんだから、そろそろ警部補昇進とかどうでしょうかね?



演じられた花嫁 (実業之日本社文庫)

演じられた花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/06/06
  • メディア: 文庫



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霧の夜にご用心 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

“霧の夜の殺人“こそがサラリーマン平田正也の求める「理想的な殺人」。
会議中、社員の小浜一美に悪態をついた顧問桜田に、平田は怒りを覚えた。殺してやる!
酔っ払った桜田を待ち伏せしていたが、何者かに桜田は殺されてしまう。
そして翌日、一美が行方不明に!さらに犯人らしき人物から謎の電話が平田へかかるようになり……。
切り裂きジャックになり損ねた男の近くで起こる連続殺人事件。

また久しぶりの更新になってしまいました。やれやれ・・・

最後まで読むと、ひたすら小浜一美が可哀想だったなあと思います。
登場人物の中では救われなさ過ぎる。

しかし相変わらず設定が面白い。
主人公の平田正也はなぜか「切り裂きジャック」に憧れていて、
殺人を「ジャック」と同じ状況下で犯そうと熱望しているところから物語は始まります。

途中から登場する大場妙子の行動力はまさに赤川作品の女性主人公そのもの。
平田も彼女に押されっぱなしですが、物語が進むにつれ、「切り裂きジャック」から
勇敢な男へと成長していくのがまた良いです。
そして途中は妙な三角関係、いやハーレム状態になるところがうらやましい。

犯人はだいたい想像が付くのではないかと思います。
というより、犯人がある事実を電話で伝えたことが、平田自身も気付いたように
決定的証拠ですしね。

しかしまだまだたくさん未読作品が多そうです。
徳間文庫の赤川作品復刊には今後も期待したいですね。


霧の夜にご用心 (徳間文庫)

霧の夜にご用心 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/05/02
  • メディア: 文庫



霧の夜にご用心 (角川文庫)

霧の夜にご用心 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2000/12/08
  • メディア: Kindle版



霧の夜にご用心 (中公文庫)

霧の夜にご用心 (中公文庫)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1995/04/01
  • メディア: Kindle版



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偶像崇拝殺人事件 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人気絶頂アイドルグループのコンサート会場で女子高生が刺殺された。
被害者の手には、メンバーの携帯番号が。事件を担当することになった大貫警部だが…?(表題作)
空気を読まず、直感で捜査。無理を通せば道理が引っ込む!?
破天荒すぎる大貫が周囲を翻弄する、大人気ユーモアミステリーシリーズ最新刊!

数あるシリーズの中でも、最も破天荒な性格(本人はそう思っていませんが)を
しているのが本シリーズの大貫警部でしょう。

最近はその破天荒ぶりが少しなりを潜めているのが残念ですが・・・

「偶像崇拝殺人事件」はAKBをモデルにしたお話ですが、
箱崎捜査一課長が意外にもファンだったことが明らかにされます。

大貫警部は昔からマスコミを使うのがやたらに上手いなあと思うんですよね。
本作でも「殺人未遂殺人事件」で何度も過激発言を繰り返します。
「東西南北殺人事件」や「一触即発殺人事件」でも実に上手いのです。
いや、単なる出たがりなのかもしれませんが(笑)

主役であるにもかかわらず、実は「殺人事件」という舞台から一歩引いた所に
警部自身居るのではないかと最近の作品では感じます。
少し時間を進ませて、井上刑事と直子の結婚式を描いてほしいですねえ。


偶像崇拝殺人事件 (講談社文庫)

偶像崇拝殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 文庫



偶像崇拝殺人事件 (講談社文庫)

偶像崇拝殺人事件 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: Kindle版



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三毛猫ホームズの回り舞台 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

“劇団Z”の観劇に赴いた片山兄妹とホームズ。終演後、主宰の土方らと食事をしていたところ、
アイドルの安東マリエが「土方は先が長くない」という噂話を耳にしたことを知る。
そのマリエの父・拓郎が夜の街で知り合った女子中学生の死に始まる殺意の連鎖。
得体の知れぬ犯人は誰だ?大人気シリーズ、堂々の第50弾!
短編「三毛猫はジャスミンの香りがお好き」を特別収録。

複数の人間の視点を上手く描写し、それを最後に極めて上手く収斂させるのは
赤川次郎先生以上の方は居ないのではないでしょうか。
今回もまさに舞台のようにめまぐるしく物語は進みます。

ここ最近のシリーズ(といってもいつからかと言えないのですが)では、
ホームズは探偵というよりも、全てを初めから見通している印象を受けますね。
昔から、各人の重大な決断を下す時とかに、影響を与えたりしてましたが、
最近は何か起きることから、結末まで全てお見通し感が非常に強い気がします。

片山や晴美、そして石津、久々に登場した栗原捜査一課長も相変わらず変わらぬ
優しさを持っているのは、変わらぬ良さです。そして事件を
大団円にもっていくことができるのは、彼らが居るからこそでしょう。
(課長が未だに絵画に興味を持っていることに衝撃を受けましたが・笑)

惜しむらくは、初期から中期の(「狂死曲」「怪談」「騎士道」「駈落ち」etc)
ストーリー的なワクワク感が薄れてきているなあと感じます。
人間の持つ「狂気」のようなものを描いた「正誤表」「四捨五入」。
本格ミステリの「推理」や幻想的な面も含む「黄昏ホテル」「騎士道」「びっくり箱」
まさにホラーの「怪談」「降霊騒動」
長編なのにレギュラーメンバーが違う事件を追うという異例の長編「安息日」

書けばきりがありませんのでこの辺で。

初期や中期のような作品をまたぜひ拝読したいです。


三毛猫ホームズの回り舞台 (光文社文庫)

三毛猫ホームズの回り舞台 (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/02/08
  • メディア: 文庫



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哀しい殺し屋の歌 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

毎夜酒場で泥酔する「元・殺し屋」が目を覚ましたのは、捨てたはずの実の娘の屋敷だった。
戸惑いつつも再会を喜ぶ男だが、別れた妻は既に病で亡くなり、
娘はなんと夫を殺されて若き未亡人になっていた。
さらに、男の元へ謎の少年から殺人の依頼が舞い込んでくる。
一連の事件の裏にはかつての仲間の影が――!?

表題作ほか「パパは放火魔」を収録。
国民的大作家がおくる、ユーモア×ハードボイルド×ミステリー!

今年ももう終わりですが、駆け込みアップ。
実業之日本社から刊行され、角川文庫で発売された本書が
装いも新たに実業之日本社文庫から復刊です。

殺し屋というのが普通に出てくる所が実に赤川先生らしい作品。
かつて凄腕の殺し屋だった、という現在進行形で無いところも良いですね。

本編ではお手伝いのハナ子が個人的にMVP。
杉山が襲撃されても「まるで『ゴッドファーザー』だわ!」と驚くだけ(笑
肝が据わってるお手伝いです。

もう一編の「パパは放火魔」は女子中学生の冒険物語。
解説にもありますが、『家族カタログ』を思い出します。

来年も先生のご活躍を祈念します。


哀しい殺し屋の歌 (実業之日本社文庫)

哀しい殺し屋の歌 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2017/12/05
  • メディア: 文庫



哀しい殺し屋の歌 (角川文庫)

哀しい殺し屋の歌 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2001/07/13
  • メディア: Kindle版



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