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medium[メディウム] 霊媒探偵 城塚翡翠 [相沢沙呼]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。
心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。
証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。
だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!

★第20回本格ミステリ大賞受賞
★このミステリーがすごい!1位
★本格ミステリ・ベスト10 1位
★SRの会ミステリベスト10 1位
★2019年ベストブック

さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補!

以下、完全なるネタバレあり。










上記のように、本書は、数々の受賞歴があり、『このミス2020』も
再読してみました。

個人的な感想として、本書がそこまで評価されたのがやはり疑問。
単行本版では帯に「全てが伏線」という言葉があったようですが、
文庫版の帯では「彼女は、なにを視ていたのだろう・・・」に変更されています。

「全てが伏線」という言葉はそもそも何を指すのかいまいちわかりませんが、
泣き女の殺人、水鏡荘の殺人、女子高生連続絞殺事件、これら3つの事件に、
城塚翡翠がそれぞれ仕掛けた罠の事を指しているんでしょうかね。

インタールードで、連続殺人事件の犯人の名前が明らかにされていること、
最終話が「vsエリミネーター」であることから、香月&翡翠コンビが
この殺人鬼と対決するのがラストにあるのは、すぐにわかります。

少し話はそれますが、私が一番受け付けなかったのは、史郎と翡翠の関係でしょうか。
甘ったるい会話が続いたり、香月の翡翠への思いとか(まあ、これは2つ意味があるのですが)
ラブロマンスなんですよね。見え見えの。もちろんそれが作者の仕掛けたトリックでも
あるのですけど。翡翠曰く「かりそめのロマンス」というやつです。

最終話において、翡翠が魅せる各事件の推理は、いわば多重解決モノと言ってしまって
よいのか、実に微妙です。
というのも、香月の推理で、各事件とも犯人は間違いなく捕まっています。
A地点からD地点にいくのに、
香月がA→B→Dと辿ったのに対し、翡翠はA→C→Dと、その道筋を変えている、
そんな感じでしょうか。
行き着く先は同じですが、1つの事件に複数の推理が成り立つというものです。
これ自体は相当すごいです。泣き女のアイスコーヒーの氷は秀逸。
女子高生のは少し事前調査がありましたからね。
水鏡荘は完全に罠を仕掛けてます。しかも鐘場刑事もグルです。

最後に翡翠が言うように、自分を襲わせるためにある意味それに沿った行動をしてきた、
そして自分は探偵なのだ、と。
ということは、警察は香月史郎が連続殺人事件の犯人ではないか?と疑っていたという
ことなのでしょうか。
それとも、翡翠が香月と事件を解決していく過程で、その疑いを持ち、警察へ話したのか。
どうもこの辺りが釈然としないのですよね。

エピローグで、香月が翡翠のようやく見つかったワトソン役に云々の話に、
翡翠の反応はなんとも微妙なところですが、本当に単なるかりそめのロマンスだったのか、
というところにもやや疑問が残るところはラストの余韻としては良かったかと。

個人的に、霊媒をいかに論理的、合理的に解釈できるかに力を削いだ香月は
紛れもなく名探偵だったと思いますが、どうでしょう。


medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

  • 作者: 相沢沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/09/15
  • メディア: Kindle版







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