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ママは何でも知っている [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。
ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。
ママは"簡単な質問"をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件を
いともたやすく解決してしまう。用いるのは世間一般の常識、人間心理を見抜く目、
豊富な人生経験のみ。安楽椅子探偵ものの最高峰と称される〈ブロンクスのママ〉シリーズ、
傑作短篇8篇を収録。


楽天かAmazonであなたへのオススメで突然出てきたので、思わず購入しました。
藤原宰太郎さんの『世界の名探偵50人』でしか知らなかったんですよね(苦笑)
個人的には「安楽椅子探偵」の代表ともいえる探偵と思ってます。

日本の「安楽椅子探偵」の代表・「退職刑事」は、やはりこのママシリーズを
参考にしているんだろうなあ。
ただ、本作は妻のシャーリーとママとの嫌味の応酬合戦がものすごく面白いです(笑
これは必読だと思います。
それと、ママの親戚の多いこと。それも問題がある人ばかり!!

一見、ママの親戚のよく分からない話で、「それが事件と何の関係が?」と
デイビットの発言させ、実は事件の真相に辿り着くための道程であるという、
お約束かつ王道を歩みつつ、どの事件も唸らせるものばかりで、
素晴らしい短編集でした。

続編もぜひ購入したいと思います。




ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/06/15
  • メディア: Kindle版






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月下美人を待つ庭で-猫丸先輩の妄言 [倉知淳]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

先輩がいると、この世は不可思議で、たまらなく面白い。

巧みな話術のうちに意外な結論に辿り着く
謎解きの醍醐味あふれる五編を収録

名探偵・猫丸先輩の、気ままなる生活と推理。

電光看板の底に貼り付けられた不規則なアルファベットの文字列、
亡き母が残した庭にかわるがわる訪れる悪気なさそうな侵入者たち――
風変わりな名前の“先輩”は日頃ふらふらしては、愉快なことには猫のごとき目聡さで首をつっこむ。
そして、どうにも理屈の通らない謎も、彼の饒舌にかかれば、
ああだこうだと話すうちにあっという間に解き明かされていくから不思議だ。
さて、名探偵・猫丸先輩の推理は如何に。


猫丸先輩が還ってきた!
「推測」「空論」ときて、ついに「妄言」となってしまいました(笑
しかし、それでも猫丸先輩のおしゃべりは止まらない。

後輩の八木沢も登場し、相変わらずやり込められるのは、シリーズ当初からのお約束。

「ねこちゃんパズル」はこれぞ猫丸シリーズを彷彿とさせる一編。
それが最初に配してあるのは流石の一言。
本作の中で、猫丸は大きく2つの推理を披露しますが、その2つ、果たして
どちらが正しく、どちらが間違っているのか。
いや、そもそもいずれも違うかもしれない。
『五十円玉二十枚の謎』の時から、実はそこまで進歩していないのが猫丸先輩でしょうね。
この話、どうとでも取れるというのが実に上手く、それこそが猫丸シリーズの神髄なのでしょう。

「恐怖の一枚」は、場所が心霊雑誌系のアルバイトだからか、
猫丸が怖がらせるために、恐るべき推理をわざと組み立てたと、相当穿った見方を(笑
とはいえ、本作では表題作につぐ2位の秀作かと。
一見平凡な写真から、物語を一気に恐怖に包んでいく過程は流石の一言。

「ついているきみへ」。犬を一時的に攫った理由は見事の一言。言われてみれば・・・です。
この猫丸は、以前のシリーズにもある、キューピッド役をしようとしているのかも。

「海の勇者」。
この話の猫丸の推理は、全て嘘なのですが、この嘘、確かに何のために付いたのか。
バイトリーダーたる尚洋にお灸を据えるためだったのか?
それとも、大雨の中、身動きがさほど取れないので、暇つぶしなのか。
謎すぎる行動も、猫丸先輩の魅力です。

表題作「月下美人を待つ庭で」
綺麗なタイトルです。そんな庭に突如侵入者が次々現れるという奇怪な出来事に、
猫丸が理路整然とした推理を突きつける。本作愁眉。
相変わらず突拍子もない事例を持ち出すのですが(ここでは鳥居)、
それが上手い例えなので、唸るしかない。

猫丸シリーズは、短編が続いてますが、シリーズ唯一の長編『過ぎゆく風はみどり色』
だけなので、そろそろ長編が読みたいですね。
この長編、珍しく猫丸先輩がシリアスになるのですよ。
とはいえ、長短編問わず、これからもシリーズが続くことを祈念します。


月下美人を待つ庭で:猫丸先輩の妄言 (創元推理文庫)

月下美人を待つ庭で:猫丸先輩の妄言 (創元推理文庫)

  • 作者: 倉知 淳
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/03/20
  • メディア: 文庫






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死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#2 告発(accusation) 十和田湖・夏の日の悲劇 [中町信]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

死を見つめる〝赤い麦わら帽子の女〟は誰か?
この真相は、誰にも読めない!

読みすぎ注意:中町信はあなたの安眠を奪います

死を見つめる〝赤い麦わら帽子の女〟は誰か?
この真相は、誰にも読めない!
真夏の十和田湖で起きたボートの横転事故を皮切りに、次々に連続する死のドミノ倒し。
背景に深く関わる疑惑の四人の人妻たちも、飛行機墜落事故で記憶喪失の生存者一名を残し
三名が死亡。
偶然の連鎖か?それとも連続殺人か?事件の真相を記す死者からの告発の手紙が、
遺された夫たちを疑心暗鬼の闇に突き落とす。
叙述ミステリの魔術師が放つ究極の騙し絵パズル。

鹿角圀唯が主人公かつ刑事ということで、捜査と自分の妻の死の真相を探ります。
それにしても、1作目の「追憶」(田沢湖)とは違う、別の捻りが効いています。
さすが中町信先生。

容疑者がそんなに居ないにも拘わらず、十和田湖で起きたボート転落事故という1つの
事件が、妻の死に繋がっているというその筋は最後の最後まで変わりません。
しかし、この事件の「構図」とも言うのが、最後の最後に大きく変わるところが
めちゃくちゃ素晴らしかった。
序盤から、そこかしこに実はそれらしきヒントを散りばめつつ、
あくまで事件の発端は「十和田湖の転落事故」という、読者への思い込み(ミスリード)
も実に良く出来てます。

三部作、最後も楽しみにしています。








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マザーコンプレックス [水生大海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

地下鉄の”ある事件”を機に母性が暴走する

蜂須賀恵理子は、悲嘆に暮れている。自慢の息子が痴漢行為を咎められ、
逃げようとして地下鉄に轢かれ、死んだのだ。冤罪だと信じる恵理子は、
亡き息子のSNSにのめり込み、事件の真相を探ろうと奔走する。
夏川美夏は、激怒している。高校生の娘が電車内で痴漢を捕まえたが、
被害には長い間遭っていたというのだ。美しい娘には芸能界で活躍してほしい。
週刊誌記者に身辺を嗅ぎ回られ、美夏は苛立つ。
高奈琴絵は、幸せの絶頂から突き落とされる。不妊治療の末、
ようやく待望の子供を妊娠した矢先、夫が痴漢をして逮捕されたのだ。
琴絵を責める義母に、逆ギレする夫。離婚がちらつくが、一人で子供を育てる自信がなく
琴絵は途方に暮れる。
地下鉄で起きたある事件を発端に、歪み、崩壊していく三つの家族。
そして、新たな悲劇が起こる――
暴走する母性の先に衝撃の結末が待ち受ける、ドメスティック・スリラーの新たなる傑作!


このタイトルと、このリード文から、一体どういう事件が起こるのか、
正直なところ、まるで想像が付きませんでした。

蜂須賀恵理子の暴走がメインに話が進むのかと思ってましたが、そうはならず、
特に第1部と第2部で、物語がずいぶんガラリと変化しますね。

夏川紗季が自殺したかと思われましたが、これが殺人だとわかり、
物語は一気に殺人事件の犯人捜しへ。
高奈琴絵が主人公なんだなとこの辺りから思い始めますが、
この殺人事件の真相はそこまで意外ではなく、
また、蜂須賀恵理子のSNSを使った行動も、最後に自業自得になり・・・

やはりラストの、夏川美夏と「週間茶話」の編集者・槙野泉美との会話が圧巻。
ここで、本当の本書の主人公が美夏だったんだと。
槙野の本当の目的も、実は別の所にあったというのも、流石の一言。

それにしても、高奈篤志は屑だな。


マザー/コンプレックス (小学館文庫)

マザー/コンプレックス (小学館文庫)

  • 作者: 水生大海
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/06/06
  • メディア: Kindle版









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霧にたたずむ花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子大生探偵は、失恋しても事件解決? 狙われた恋敵を救え!
霧の中、家路を辿っていた仲間朋代は不穏な気配を感じて逃げようとする。
もうダメだと思った瞬間、偶然居合わせた女子大生・亜由美の恋人、谷山によって助けられる。
それをきっかけに二人は急接近し、なんと結婚することに。失恋した亜由美は傷を癒そうと旅に出るが、そこでトラブルに巻き込まれ――。表題作のほか「カリスマ花嫁の誇り」収録。


花嫁シリーズ文庫版最新作です。
本書は、というか、赤川先生の作品は上手い具合に大団円になるのが
多いですが、本作はかなり異色だと思います。

まず表題作で、亜由美の恋人である谷川准教授がなんと結婚する。それも亜由美以外と。
亜由美が傷心旅行に行く・・・という始まりです。
確かに、前のシリーズで2人の仲が微妙な感じだったので、それの答えが本作で
描かれたということなんでしょうね。
最後に寄りが戻りそうな感じですが・・
亜由美の台詞「時間が必要ね。私もよ。」、次にどう繋がるのか・・・
しかし、谷山准教授、結構酷いヤツですね。
吊り橋効果的なところはあるにせよ、なぜいきなり結婚にまで・・・謎すぎる。

さて、谷山と亜由美の話はまあ良いのですが、本書はもう1作の「カリスマ花嫁の誇り」
が、これまでの花嫁シリーズ中でも、最大の怪作ではないかと個人的には思います。

亜由美を名探偵と見込んで(?)ひっぱりこんだ大橋あかりは、
自分の夫である刈谷三郎のケータイメールに
「刈谷弘士の誕生日のパーティは、あなたの愛する女性の血で染まるだろう」という
殺人予告とも取れるメールがあったから。
まあ普通は警察に言う案件かと思いますが、そこは赤川作品。

ところがです。
この話。大橋あかりは刈谷弘士の二男である北原と(三郎と別れて)結婚することになり、
三郎の兄の克彦が、結構トンデモないヤツで、まあ彼が一連の犯人だったのですが、
どうみても、計画殺人ではなく、衝動的なもの。
父親の弘士もとんでもないことをしでかしますが、こっちは最後に大団円に。

克彦が犯した犯罪で、女性が亡くなりますが、三郎のメールと
どういう関係があるのか、さっぱり分からず。
しかも、本作では亜由美や殿永もほとんど活躍せず、犯人が自白。
そんなこんなで大橋あかりは北原と結婚宣言。

もう何が何だかわかりませんでした。
1つだけ考えられるのは、大橋あかりが全て仕組んだ、ということ。
でもそんな描写は無いんですけど、結果的には彼女が一番得をしてるんですよね。
謎だらけです。



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赤い部屋異聞 [法月綸太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

作家・法月綸太郎が、偏愛する東西の名作九篇に捧ぐ、オマージュ連作短編集

日常に退屈した者が集い、世に秘められた珍奇な話や猟奇譚を披露する「赤い部屋」。
新会員のT氏は、これまで九十九人の命を奪ったという恐るべき〈殺人遊戯〉について語りはじめる……。江戸川乱歩の名作短篇「赤い部屋」に捧げる表題作ほか、
著者が敬愛する作品へのオマージュだけを集めた、ミステリファンにはたまらない全九篇。

またまた更新が遅く・・・すいません。

本書は法月先生が、様々な媒体に発表した短編を集めた、ノンシリーズもの。
とはいえ、解説にあるとおり、名作のオマージュ揃いになっています。

やはり表題作と「だまし舟」がミステリとホラーの2つの点で秀逸。
前者は後日談がある意味恐ろしいというか、これが真実なのだろうと。
この赤い部屋に集まる人々の欲求は、そこまで来てしまったという。

後者は都筑道夫先生の「阿蘭陀すてれん」への、完璧なオマージュ。
いや何が恐ろしいって、これとにかく何もかもわからずじまいの作品で、
それがさらなる恐怖を引き立てるんですよね。
汐見が『だまし舟』を薦めつつも、また奪い返そうとしたのはなぜなのか。
なぜ先が読めなくなるのか。
遺体の側に落ちていた半分の本は綺麗な状態だった。
自分の理解が及ばないと、本当に恐ろしいのだと感じました。
改めて「阿蘭陀すてれん」を再読したくなりました。

動物好きには「まよい猫」。
これ、ラストがまた上手くて、愛猫が居なくなり、ひどいノイローゼ状態から
こうなったのか、それとも実はラストが真実なのか・・・・

言いしれぬ恐怖が余韻となるのは「続・夢判断」
法月先生は夢オチとラストを書いてますが、これは結構怖い。
俳優の演技力テストというところまで看破した主人公ですが、その先は果たして・・・

新本格と名探偵をある意味テーマにしたのが「迷探偵誕生」
悪魔と契約し、絶対誤りのない名探偵になる。しかし推理が外れた場合は魂を奪われる、
一見悪魔にメリットがあるのかと思う話ですが、
平行世界において無数の自分が誤った推理により、悪魔に多くの魂が奪われていたという
なんとも現代的な仕組みだなと、感心してしまいました(笑
悪魔も今までのやり方じゃあダメだということで、色々と悪魔だけに悪知恵が働くなと。




赤い部屋異聞 (角川文庫)

赤い部屋異聞 (角川文庫)

  • 作者: 法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/05/23
  • メディア: Kindle版






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スノーバウンド@札幌連続殺人 [平石貴樹]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

札幌の街中でナンパされ、誘拐された久美子の「目の前」で、誘拐犯である浩平が殺された。
その犯人も見つからないうちに、久美子の父親が殺されるという第二の事件が起きてしまう。
旅行に来て、事件に関わった弁護士・山崎千鶴は、当事者たちに話を聞いていくのだが――。
関係者たちが自身の言葉で事件をノートに記す、という形で進む、驚愕の本格ミステリ!

またまた久しぶりの更新。
それにしても酷暑どころではありませんね。外が危険。
エアコン効かせて、読書か睡眠、そしてゲームが安全です。

以下、ネタバレあり。





という訳で久しぶりの平石先生。松谷警部3部作以来でしょうか。
本書は解説によると、「山崎千鶴三部作」の1作のようで、
すでにもう1冊は文庫化済み。こちらはそのうち購入します!

本書は事件関係者の「手記」。しかも1人の独白ではなく、リレー形式による
手記という、中々珍しい形式を取っています。
この「手記」という形式は、虚実入り乱れであるということを、読者は当然ながら
それを前提に読まなければなりません。
また本書では「付記 NO.1-里緒」が、事実上の読者への挑戦状となっています。

動機については、被害者のダイイング・メッセージから推測でき、
おそらくはそれがあるからこそ、山崎千鶴は犯人を明かさなかったのでしょう。
一方で、「手記」という体裁をとった、それを逆手に取ったのが、
犯人が複数人というところでしょうか。
しかも、1人は「手記」の語り手には登場しないのです。

さらに、もう1つ。
私はこのトリックは泡坂妻夫御大のヨギ・ガンジーで仕掛けられた壮大なトリック。
それに近いトリックには驚きました。
平石先生がこういうトリックを使うとは思わなかった。

「手記 NO.3」では千鶴の悲しい結末が語られるのですが、それを読むためには、
3部作のラストを飾る、『スラムダンク・マーダーその他』をぜひとも復刊をお願いします。


スノーバウンド@札幌連続殺人 (光文社文庫 ひ 21-3)

スノーバウンド@札幌連続殺人 (光文社文庫 ひ 21-3)

  • 作者: 平石貴樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/02/14
  • メディア: 文庫






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めざめ [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

陰惨な事件に巻き込まれ両親を失った11歳の美沙は心に深い傷を負う。
命を落としたはずの母・美知代は病院で意識を取り戻すが、
その体は14歳の中学生・修のものだった!
6年後、修はようやく探しあてた美沙の様子に衝撃を受ける。
固く閉ざした娘の心にぬくもりを取り戻すことはできるのか?
親子の絆と再生を描く感動の長編小説。

またまた久しぶりの更新です。

赤川次郎作品は、こういう非常にシリアスというか、大半救われない中で、
一筋の光明を見いだす物語が、結構あります。
解説でも語られていますが『怪談人恋坂』は、リアルタイムで読んだ覚えが
ありますが、あれは姉が自殺、幽霊として出てくるも、衝撃の告白と、
今でも覚えています。

昨今の幼児・児童虐待、放置子、ネグレクト、さらには毒親と、
親子の関係は相当脆くなっている状況なのではないかと思います。
本作では、美智代が修の身体を借りてまで、娘を見守りたいという
執念で、さらに転生後も執念を出し、自分の娘の心の壁を取り外そうという
母親の愛を感じます。

赤川先生の作品は、全くの他人なのに、非常に優しい人たちが数多く登場します。
三毛猫ホームズのホームズ、片山刑事兄妹、石津刑事、
花嫁シリーズの塚川亜由美とドン・ファン、両親。
彼彼女たちのような優しさを持った人たちと、
本作品における美智代のような存在が、
陰惨な物語でも、読んでいる私たちをどこかほっとさせているのだろうと思います。


めざめ (中公文庫 あ 10-17)

めざめ (中公文庫 あ 10-17)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/03/23
  • メディア: 文庫






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Y駅発深夜バス [青木知己]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

運行しているはずのない深夜バスに乗って、
彼は摩訶不思議な光景に遭遇した――
あの手この手で謎解きのおもしろさを描いた〈ミステリ・ショーケース〉
手間暇かけた五つの短編ミステリを御賞味ください。

運行しているはずのない深夜バスに乗って、彼は摩訶不思議な光景に遭遇した――
奇妙な謎解きとその鮮やかな解決を描く表題作、
読者への挑戦状を付したストレートな犯人当て「ミッシング・リング」、
女子中学生の淡い恋と不安を描く「猫矢来」、怪奇小説と謎解きを融合させた傑作「九人病」、
自慢のアリバイ・トリックを用意して殺人を実行したミステリ作家の涙ぐましい奮闘劇「特急富士」。あの手この手で謎解きの面白さを提供する、著者渾身の〈ミステリ・ショーケース〉。


初めて読む作家さんです。
常にこのブログでは褒めてばかりじゃないかと思われそうですが、
いずれも作風が違う、ミステリの質が違う、
これだけ毛色の違う傑作短編集は久しぶりに読みました。
(いつも言ってるかも・・・)

表題作はホラーミステリ。主人公の坂本が乗った深夜バスは本当に運行していたのか?
後半に怒濤の展開が待っていますが、本作で最も怖いのは、パーキングエリアでの
坂本の体験が、一切説明されていないこと。そのため本作はホラーと言って過言で
ないのではと感じました。

「猫矢来」。論理のアクロバットの傑作。とにかく不気味な行動をする隣人と、
主人公の里奈が学校でいじめに巻き込まれそうになっていくこと。
この2つから、果たしてどう物語が展開するのかと思いましたが、
後半の展開は全く予想だにしないものです。
一方で、いじめという社会問題、加害者及びその家族を取り上げているという点では
他作品と一線を画している印象。

「ミッシング・リング」。読者へ正面から挑む犯人当て小説。
しっかり「読者への挑戦」が幕間に挟まれます。そして描かれる館の平面図。
次々と連続殺人が起こるのを想像してしまった自分が恥ずかしい(苦笑)
アリバイ崩しという、ミステリの初歩の初歩で、見事に読ませる作品。

「九人病」。突然民俗学ミステリが登場で、これまた驚き。
現代社会でそんな病があるのか?と疑いたくもなる話ですが、
1つの怪談として作中では話されながら、
ネタバレ後の、(ある意味必然の)結末までが、1つの怪談として成り立っていますね。


「特急富士」。トラベルミステリーも登場かと、作者の懐の深さに驚きましたが、
さらにこの作品は、犯人の視点で描かれる、いわば刑事コロンボ方式。倒叙ミステリ。

犯人の二人とも、アリバイのために丹念に計画したトリックより、
被害者から託されたものでジエンドとなるのが、終わり方として実に痛快。
コロンボの「二枚のドガの絵」のようなラストです。

どれをオススメとするか、非常に悩みましたが、この時期の暑さを踏まえると、
表題作と「九人病」。後者は感想でも書いたように、怪談を読んでいるような
気分になりました。



ミステリとしての白眉は、やはり「猫矢来」。

Twitterを拝見すると、兼業作家さんのようですね。
これだけ良質なミステリを楽しめて、満足です。
次の作品も期待です。


Y駅発深夜バス (創元推理文庫)

Y駅発深夜バス (創元推理文庫)

  • 作者: 青木 知己
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/05/19
  • メディア: Kindle版






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リア王密室に死す [梶龍雄]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

7人のエリート学生の友情を引き裂く毒注射の
密室+焼かれたノートの謎
話題の〝龍神池の小さな死体〟と対になるもうひとつの逆転劇

「リア王が変なんだ!中で倒れてる!」京都観光案内のアルバイトから帰宅した
旧制三高学生・木津武志は、〝リア王〟こと伊場富三が、蔵を転用した完全なる密室で
毒殺されているのを発見する。下宿の同居人であり、恋のライバルでもある武志は第一容疑者に-。
絶妙の伏線マジック+戦後の青春をリリカルに描いた
〝カジタツ〟ファン絶賛の名作復刊。


またまた久しぶりの更新になってしまいました。
この梶龍雄作品は、<青春迷路ミステリコレクション>と<驚愕ミステリ大発掘コレクション>
の2系統で<トクマの特選!>から刊行されています。

前回が後者の作品でしたので、今回は前者の作品を読みました。
まず最初に、この2つの分け方を見ると、いかにも現在の新本格ミステリが後者のように
感じますが、全く違います。
本書『リア王密室に死す』は、タイトルに「密室」があることからも、
そして、その驚くべき構成からも、紛れもなく新本格・本格のミステリです。

そこに、旧制高校生(今のまあ大学生)の生活、青春群像、そして淡い恋。
これらが実に上手く融合し、傑作を生み出しています。

本書は大きく前篇と後篇に分けられ、
前者は「ボン」こと木津武志が、「リア王」こと伊場富三を殺害した容疑が
掛けられ、その窮地を救い出すところから始まります。
登場人物全てにニックネームが付いているのが、いかにも当時の大学生ぽいなあと。
解説の大山誠一郎さんは、このニックネームについて『十角館の殺人』を挙げています。

ボンのアリバイを確認するところから始まり、それと同事に物語も始まります。
大山誠一郎さんの解説が全てなので、もはや書き足すことはないのですが(苦笑)
本当に絶妙な伏線が張られていて、感嘆します。
リア王が東京大空襲により火事がトラウマ、非常に苦手であるというのが
寮が火災になったときに語られますが、
なにせ物語の舞台は戦後すぐ。戦争の悲惨さを語れるような状況では当然ありません。
むろん、ヤミ市も出てきます。
この伏線が実に上手く隠されていて、最後の密室の謎に結びついていくのです。

前篇の「ナ・チ・コ」がまたボンとナチコのなんというか、微妙な関係から親密な関係、
さらにライバルだったリア王との会話とか・・・とにかくここはミステリを読んでいるのか?
という錯覚に陥りました。

そして驚きはこの「ナ・チ・コ」終了後、後篇のスタートです。
「昔の人たち」と題され始まる後篇は、なんと30数年後の現在が舞台です。
そこに驚くべき探偵役が登場します。
事件の謎を解いていく過程だけでなく、この後篇ではどうやっても過ぎ去ってしまった時間を
元に戻すことはできない、そんな無力感に襲われます。
ボンだけでなく、ナチコやカミソリ、バールト、マーゲン、カラバン、有馬夫人・・・
彼彼女たちにとっての「時」の重さを痛感する結末になっているのも非常に印象的でした。

また、後篇にも大学生が登場するのですが、これがこの旧制高校生との対比が実に面白くて、
梶さんもその辺りは狙って、あえて書かれた当時の大学生を登場させたんだろうなと。

物理トリックである密室は、今でも十分に通用する見事なトリックで、
かつ、カミソリが前篇で看破する謎解きも、(確かに不十分な点は感じるものの)
後篇の事情を読んだ上で考えるならば、あれ以上の謎解きはないでしょう。

事件の謎と解いた探偵役と、30数年にわたり、自身がある種苦しんできた事件の謎が
解けたボンこと武志の対比もまた感慨深いです。
探偵役には告げず、ボンはある行動に出るのですが、ここでもボンにとっては
辛い思い出になったのではないでしょうか。

いや、素晴らしい作品でした。徳間文庫さん、ありがとうございました。


梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション1 リア王密室に死す 〈新装版〉 (徳間文庫)

梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション1 リア王密室に死す 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 梶 龍雄
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/09/08
  • メディア: 文庫






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ダイヤル7をまわす時 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

【生誕90年記念出版第1弾】
泡坂ワールドのすべてを愉しみ、
愛することができたのは、
この本に出会えたからだ――櫻田智也(解説より)
読めば必ず騙される!
名品『煙の殺意』に匹敵する短編集

戸根市で対立する暴力団・北浦組と大門組は、事あるごとにいがみ合っていた。
そんなある日、北浦組の組長が殺害された。しかも殺害現場で、
犯人が電話を使った痕跡が見つかる。犯人はなぜすぐに立ち去らなかったのか、
どこに電話を掛けたのか? 
「読者への挑戦」付きの、正統派犯人当て「ダイヤル7」。船上で起きた殺人事件。
犯人はなぜ死体をトランプで装飾したのか? 
トランプの名品〈ピーコック〉をめぐる謎を描く「芍薬に孔雀」など7編。
貴方は必ず騙される! 
奇術師としても名高い著者が贈る、ミステリの楽しみに満ちた傑作短編集。

泡坂妻夫先生の本書と、櫻田智也先生の『蝉かえる』が同時文庫発売とは、
明らかに東京創元社さんは狙ってますね。
なお、『蝉かえる』はまだ未読。まずは御大のお手本をと(笑

ここ数年、都筑道夫先生作品と同様、泡坂妻夫先生の作品も数多くが復刊され、
嬉しい限りです。
創元推理文庫を中心に、河出文庫からも刊行されました。
しかし、まだまだ作品は多くあり、本書も当然ながら未読でした。

タイトルの「ダイヤル7」は、先生作品では珍しい犯人当て小説!
当然のことながら、わかりませんでした(苦笑

今の若い世代が読んでも、まずわからない「ダイヤル」式の電話ですが、
鑑識の意地の捜査で、触れているダイヤルがわかり、そして、なぜ
犯人が殺人を犯した後に電話をしなければならなかったのか?ここに全ての謎が
詰まっています。
ところで、本作はある場で聴衆がいる前で、塚谷さんの依頼で、長く警察に勤めていた
久能なる人物が語る内容になっています。
ここは犯人当てとは直接的に関係ないものの、ラストまで行くと決して犯人当てだけでは
終わらない結末となっています。

「芍薬と孔雀」は、奇術師の顔を持つ御大ならではの作品です。
そしてトランプが事件の鍵を握るのも流石。
しかもこの作品。謎の解けていく過程が見事で、本書所収内で一番かと思います。

「飛んでくる声」は「意外な結末」の好編。
さらには「意外な探偵」も登場します。

「可愛い動機」、動機がものすごいところから来てますが、
今の世の中では珍しくないかもしれないと思ってしまうところが怖いですね・・・

「金津の切符」はコレクター同士の諍いを描く物語。
倒叙形式で書かれていて、箱夫の心情がそれなりにわかるだけに、すこし辛い作品ですね。
しかし刑事のラストの謎解きは、刑事コロンボのラストのような驚きがあります。

さて本作の中で私のオススメは「広重好み」です。
この作品は、亜愛一郎シリーズの「DL2号機事件」を、個人的には彷彿とさせました。
殺人や盗みなどの犯罪は一切描かれないものの、このタイトルの意味と結末は
泡坂先生にしか書けないのではないか。

「青泉さん」は、彼によって周囲の人生が変わる物語。
殺人が起きてはいますが、そこが主眼ではなく、「青泉さん」の生き方が主眼です。


ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/02/20
  • メディア: 文庫






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欺瞞の殺意 [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

このミス、本ミスW受賞の注目作。往復書簡で真相に迫る、本格ミステリー

昭和41年。地方の資産家楡家の当主がゴルフ中に心筋梗塞64才で逝去。
親族しかいない法要が屋敷で執り行われるがそこで殺人事件が起こる。
長女と孫(早死にした長男の子)がヒ素で死んだのだ。調査を進めると、
殺された長女の婿養子の弁護士のポケットから、ヒ素をいれたチョコレートの紙片が発見された。
「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです――。」

無実にもかかわらず「自白」して無期懲役となったその弁護士は、
事件関係者と「往復書簡」を交わすことに。
「毒入りチョコレート」の真犯人をめぐる推理合戦は往復書簡の中で繰り広げられ――、
やがて思わぬ方向へ「真相」が導いていく――。
「このミステリーがすごい!」2021年版 国内編(宝島社)と
「2021年本格ミステリベスト10」国内ランキング(原書房)で堂々7位のW受賞作品。
A.バークリーの『毒入りチョコレート事件』をオマージュとした本格ミステリ長編。

以下、ネタバレあり。








更新が止まっていました。
Switchのゼルダをしていて、読書が二の次に・・・(苦笑)

意図した訳ではないのですが、なんと2作連続で、多重解決ミステリとなりました。
その大半が治重と橙子による書簡ですが、彼彼女との40年以上前の自身の思いを吐露
する手紙から、楡家の殺人事件へ迫っていく過程。そして治重と橙子による推理合戦と、
息を飲む展開が続きます。

関係者がほとんど亡くなっている状況、かつ誰が毒を治重の背広のポケットに入れたのか?
この非常に限られた状況下で、この二人、どこまで推理力を巡らせるのか!!

特に澤子犯人説は驚愕の説でした。自らの命を賭けてまでやるのかという。
そして、治重がこの書簡に仕掛けたもう1つのトリックがあまりに見事です。

一方、楡家の殺人事件は、本当に橙子が起こしたことなのかどうか。
ここは個人的には少し謎として残りました。
本人が否定していない、そして動機もある意味単純で愛するが故に・・・という。
しかし、澤子=犯人というのが、あまりにしっくり来るんですよね。

過去の事件をどこまで明らかに出来るのかという、現実社会でも難しい謎を
弁護士としての顔を持つ作者ならばこそ、フィクション上でもそれを活かしつつ、
あまりに見事な心理戦を読ませてもらえました。


欺瞞の殺意 (角川文庫)

欺瞞の殺意 (角川文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/02/24
  • メディア: 文庫






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名探偵のはらわた [白井智之]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

史上最強の名探偵VS.史上最凶の殺人鬼たち! シリーズ新刊『名探偵のいけにえ』が
「2023本格ミステリ・ベスト10」ぶっちぎりの1位獲得! 怒濤の多重解決・どんでん返しに陶酔する
全ミステリファン必読の圧倒的傑作!!
「亘くん、きみは真実を語るべきだ」農薬コーラ毒殺魔、局部切断女、そして恐怖の三十人殺し! 
昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵からよみがえり、現代日本で殺戮の限りを尽くす。
空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか? 
「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、
緻密なロジックによる美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。(解説・若林踏)

久しぶりの更新です。

白井さんの作品は初めて読みます。
解説にあるように、スプラッター的要素が強そうな(タイトル)だなあと(笑)
今まで手に取ってきませんでした。
しかし本書は、解説を読んだところそこまででもないようなので、試しに購入。

コミックやラノベなどで、星の数ほどある特殊設定ミステリですが、
その本質は、紛れもなく超一級の本格ミステリです。
連作ミステリではありますが、このタイトルの伏線も良いですね。
「神咒寺事件」でみせる、原田亘の推理から始まり、
最終話「津ヶ山事件」で魅せる、はらわたの推理。
ここで「名探偵のはらわた」が誕生するわけです。

特殊設定と書きましたが、最初の「神咒寺事件」だけは、特殊設定下ではなく、
純粋に新本格の謎解きになっていて、やはり一番好きです。
はらわたが名探偵になる際、助手を務めていた浦野灸の言葉を思い出すのがよい。
古城倫道ではないのです(笑)

そのため、第1話で浦野探偵が退場するのは非常に残念でした。
その後の特殊設定ミステリのためには退場してもらうしかなかったとは思いますが、
彼とはらわたコンビの活躍をもっと読みたかったですね。

たぶんそういう考えを持ってしまうと言う事は、特殊設定ミステリがあまり私は
好きではないんだろうな(苦笑

本作では<追儺>、節分とかで鬼を払う行事ですね、これの逆<召儺>というのが
行われたことで、かつて猟奇的あるいは大量殺人を犯した犯人達が
現世に甦る、という特殊設定が登場します。

この設定を最大限活かしているのは「毒入りコーラ事件」でしょう。
本作はある種の密室トリックで、犯人がどう事件現場を出たのかを、
この特殊設定を用いて行っています。
これは純粋になるほどと唸りました。

本書はいずれも多重解決という構成になっています。
さらっと書いてますが、これはかなり緻密かつ見事な伏線の張り方です。
最終話の多重解決は圧巻そのもの。
遙か昔に書かれた手記から、手掛かりを見つけ出すはらわたもすごいですが、
この推理合戦ともいうべきところは本書でも最大の読み場ではないでしょうか。

『名探偵のいけにえ』も早く手に取りたいですね。


名探偵のはらわた(新潮文庫)

名探偵のはらわた(新潮文庫)

  • 作者: 白井智之
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/02/25
  • メディア: Kindle版






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二の悲劇 新装版 [法月綸太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

主人公は、「きみ」。二人称で描かれる失楽園の秘密とは! 
名探偵を最も翻弄した幻惑と苦悩の連続殺人! 
逆転に次ぐ逆転。驚愕の超絶技巧ミステリ! 

「きみ」は京都四条河原町の雑踏で突然に名前を呼ばれる。思いもかけぬ再会に惹かれ合う二人。
すべては、東京世田谷で「彼女」が殺されて暗転した――。死体から見つかった、
たった一本の小さな鍵。「長さ90センチ相当」のキーホルダーから、
作家探偵法月綸太郎はひとつの推理を導いた。だがそれは、
果てしなき迷宮(ラビリンス)への入口にすぎなかった……。奇蹟の超絶ミステリ再臨!


この『二の悲劇』から、『生首に聞いてみろ』まで、法月綸太郎長編はしばらくの間
消息が途絶えることになります。
あとがきを読むと、極度のスランプと法月先生が書かれているように、
そのような形跡も見られるので、本書執筆かそれ以前くらいから、本格ミステリという
難題にぶち当たってしまった感が伺えますね。

個人的感想にもちろん過ぎないのですが、本書と『生首に聞いてみろ』、
類似点結構あるなあと。
ある意味では何度も推理を重ねていくという倫太郎の姿はシリーズお馴染みなのかも
しれませんが、像の首が切断された理由を巡り二転三転する物語と、遺体は誰なのか、
日記には何が書かれていたのかという2点である意味謎が交錯していくのは、
どことなく似ている感じを受けます。
というか、本書は遺体は誰なのか、なぜ遺体は鍵を飲み込んでいたのか、鍵は何の鍵なのか、
日記には何が書かれていたのか、日記に隠された謎とは何か・・・と
ある種矢継ぎ早に謎が登場するんですが、いずれも緊密な繋がりがあることから、
違う謎を倫太郎が解いている感じを受けないんですよねえ。

逆を言えば、それだけ振り回されているとも言えるのかも(笑
倫太郎が推理を竜胆にぶつける場面がありますが、あの段階で彼に与えられた持ち駒では
おそらく最大級の推理なんだろうと。
だからこそそれが違う、となったとき、さらに混迷が深まるのです、が・・・

本書は、いわゆる「ノックスの十戒」に若干引っかかるものがあります。
当時どのように書評や評価されていたのかはわかりませんが、ラストの謎解きは
それに直結するでしょう。
「きみ」という二人称を最初の章で使用することで、ある意味これを仄めかしたとも
取れなくはないですが、どう考えたものか。

私は、この最後の謎解きより、本書は清原奈津実、葛見百合子、二宮良明、
この3人(竜胆、三木も多少プラス)のすれ違いの物語なんだろうと思います。
このすれ違いの描写というか、これはさすがの一言で、実に読ませます。
犯人が誰なのか、ということよりも、このすれ違いと謎解きの過程に
惹かれました。

しばらくの沈黙を経る直前の長編。このところ法月作品も多くが新装版として
登場してますので、ぜひシリーズ全編を読んで欲しいですね。

ところであとがきで出てくる「リレー小説が」、創元推理文庫から出た「吹雪の山荘」とは。
書き始めから、ものすごい時間がかかって出たんですね(苦笑
これも驚きました。


二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)

  • 作者: 法月綸太郎
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/10/13
  • メディア: 文庫






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死への招待状 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

西村京太郎の描く渋い探偵が味わえる、秀逸の短編集。

私立探偵・松尾のところに、ある男の将来性を調べて欲しいと依頼があった。将来はバラ色……
と調査を終えようとした途端、事態は思わぬ方向へ。
表題作ほか、危険な男・秋葉京介の活躍も読める短編集。

十津川警部と左文字進が、御大の代表的なシリーズ探偵かもしれませんが、
佐々木丈太郎や本書に登場する秋葉京介も、御大が生み出したシリーズ探偵です。
本書は秋葉京介シリーズと、1編しか登場しないも探偵を務める者達の短編集です。

表題作が一番面白いかなあと思います。後味はかなり悪いですが。
こういう「依頼」は意外と多いのでは無いかと。自分を客観的に見つめるために。
まあ母親の過保護が異常なのもあって、あまりにも不運すぎる最期です。

「血の挑戦」も読ませる中編です。日本の探偵の「特色」的なものを述べながら、
クライマックスではそれとは真逆のやりとりが繰り広げられるのは、良いですね。

かつて御大のノンシリーズ長編で傑作・秀作ものはだいたい(入手可能なものは)
読んだと思いますが、今度は短編も集めたいと思います。


死への招待状 (角川文庫)

死への招待状 (角川文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: Kindle版






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遺品博物館 [太田忠司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

あなたの「遺品」収蔵します。死者の物語を宿した品々と引き換えに
学芸員がもたらすのは、救済か破局か――熟練の技巧が冴え渡る、
死者と生者を繋ぐ八つの物語。

地元の名士である老医師からいがみ合う遺族への最後の贈り物、
過去に起きた殺人の記憶を秘めた細工箱、十歳で命を落とした少年が最後に遺した宝物……
老若男女問わず、「死」の後には必ず「遺品」が遺される。そして生前の名声に関係なく、
死者が蓄えた物語が込められた遺品を収蔵するのが「遺品博物館」である。
学芸員の吉田・T・吉夫が遺品と引き替えに残された者たちにもたらすのは、安寧か崩壊か――
熟練の技巧で抉り出す、死者と生者を繋ぐ八つの謎物語。


太田先生の『奇談蒐集家』を思い出しました。
学芸員の吉田・T・吉夫、いかにも怪しげな印象でした(笑)
しかし本作は、『奇談蒐集家』にあったSF、怪談的要素はほとんどなく、
ほぼミステリ短編集といって過言ではありません。
というか、イヤミス多めかも。

「川の様子を見に行く」は、よくニュース等で見かける言葉であり、
ネット掲示板などではネタ的に使われますね。
この話、中々過去からの根が深い話なんですが、やはりラストが秀逸過ぎます。
自ら足を滑らせて、川に落ちてしまうという、吉田の言葉も嫌味十分。

「ふたりの秘密のために」「不器用なダンスを踊ろう」この2編は
幸せな結末というか、少しほっこりする物語。
後者の吉田の「謎解き」が素晴らしく、またミステリ的には校正という点から
故人の考えを推理しているところが面白い。

この間に挟まれている「燃やしても過去は消えない」が中々にどす黒さがある
話なので、余計にこの2編が目立つんですよね。
「燃やしても」は故人の本当の正体とその性格を利用する、2つの話が書かれていて、
吉田の最後のセリフが強烈な嫌味で、ある意味最後の一撃です。

「何かを集めずにはいられない」は『奇談蒐集家』に似た印象を受けました。
本作はコレクターがメインのお話で、様々な(ここが重要)コレクターが登場します。
登場人物は、実は誰もが浅ましい(笑
レトロな玩具を求めに来た須山たち。「ハイエナ」と呼ばれてます(笑
遺品の寄贈者の話を聞いて自分の記憶の棚に収める、吉田・T・吉夫。
まあ彼は、その記憶を何かに利用しようと思っているようではないので、浅ましいからは
除外ですね。
人間の感情を集める太刀川。彼は『奇談蒐集家』の恵美酒に近いかもしれません。

「大切なものは人それぞれ」。これまでも吉田の推理は出てきましたが、
本作の吉田の推理も冴えに冴えています。
始まりから、この作品でどんでん返しがあるのかと思いましたが、そんなことはなく(笑
しかし密室の謎やイミテーションの指輪に交換した動機など、見事に解明します。

しかし、遺品博物館はどこが運営主体なんでしょうね。
本作は続編も望めると思うので、もし可能なら、博物館そのものへの謎に
迫ってもらいたいですね。



遺品博物館 (創元推理文庫)

遺品博物館 (創元推理文庫)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/02/27
  • メディア: Kindle版






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雪密室 新装版  [法月綸太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

雪と鍵。
二重の密室状態から、犯人が消えた。

父は警視、息子は作家。
法月親子は密室殺人のトリックを解き明かせるか?

雪の山荘へ招かれた法月警視。客人が揃った夜、招待主の美女の死体が離れで発見される。
部屋は施錠され、雪の上には発見者の足跡だけ。不可能状況から自殺で処理しようとする
地元警察に対し、殺人を疑う法月警視は、綸太郎とともに密室トリックの解明に挑む。
大人気「法月綸太郎」シリーズ、始まりの一作。


法月綸太郎シリーズの第1作。初読です。
これまで読んで来たシリーズ作品、いずれの型にも当てはまらない、
これが法月綸太郎シリーズか??と思わせる、まさに第1作目らしい作品ではないでしょうか。

とにかく法月警視の息子への信頼感が高すぎる(笑
あいつならば、この不可能状況を打破できるはずだ。あいつが来るまでなんとか
時間を稼がねばならん。警視はこの一心で考えつくありとあらゆる手段を尽くします。
(特に最後の無謀な告白はすごい!)

倫太郎の推理に迷いはなく、貞雄警視も彼に全幅の信頼を寄せている。
いや法月綸太郎シリーズでこんな作品が読めるとは思いませんでした。
(もっとも警視はなんだかんだ言いながら、息子を信じているのはシリーズ変わりませんね)

トリックも、明かされてみるとな~んだ、と思ってしまうかもしれませんが、
やはり、最初の警視への誤認トリックが秀逸。
しかし突発的な殺人にもかかわらず、よくまあここまで上手くトリックを構築したなと
犯人側にやや脱帽します。

悩む法月綸太郎しか知らない方は、ぜひ本作をオススメします。


雪密室 新装版 (講談社文庫)

雪密室 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 法月綸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/02/15
  • メディア: Kindle版






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沈黙の目撃者 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

“特殊設定”ミステリーの快作!

死体×ビアマグ=謎!?

「だから西澤保彦の小説がもたらす怖ろしさは、
じっと噛みしめる価値がある」
                 ――霜月 蒼氏 解説より

なぜここに、ビールのロング缶とビアマグが置いてあるんだ?
世話になった先輩の絞殺死体を前にして、彼は首をひねる。
先輩はたしか、下戸だったはずなのに――。

ビールグラス、マグカップ、タンブラー。
見慣れぬコップを見つければ、不思議な事件のはじまりはじまり……。

ミステリー界の鬼才が贈る、予測不能の衝撃展開!!
以下、ややネタバレ。




西澤節全開の作品です。
特殊設定、読みにくい名前、そして性描写と性的嗜好。
これらが全て詰まってます。

表題作は、本書における特殊設定の説明の物語であり、
かつ見事なまでの論理のアクロバットが楽しめる傑作。
事件の真相の一端が明らかになるのが、数十年後というのも、本作の
特殊設定を受けていますね。
それと、性的嗜好もしっかり描写されており、この表題作で
西澤作品全部入りみたいなものかもしれません。

「まちがえられなかった男」は、ホワットダニットであり、フーダニットでもある作品。
会話の中にある重大なヒントが素晴らしい。金田一耕助のあの作品を思い出しました。

「リアル・ドール」は性的嗜好全開の作品。
これ映像を想像すると恐ろしいですね。
「彼女の眼に触れるまで」
これも同様。登場人物全員狂ってます(笑
こちらの方がミステリの要素がかなり入っているのですが、
それでも彼彼女たちの心境や動機は、流石に理解するのは難しい。

「ハイ・テンション」
これも論理のアクロバットが仕掛けられた作品。
なぜ憑依していた人間が、次々と殺されているのか?
二人だけのサインでありながら、それが他人にとってはまるで違う意味を
持ってしまったという。
性的嗜好の描写はあるものの、こちらは少しもの悲しくも、ラストは綺麗な終わり方
かなあと思います。

西澤作品は『夢魔の牢獄』を最近購入しまして、こちらも楽しみですね。


沈黙の目撃者 (徳間文庫)

沈黙の目撃者 (徳間文庫)

  • 作者: 西澤保彦
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/01/12
  • メディア: 文庫






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友が消えた夏 終わらない探偵物語 [門前典之]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

断崖絶壁の館に並んだ首なし白骨死体!
「まさか!」のつるべ打ちに驚愕必至
三冊分のトリックが詰めこまれた奇想の本格推理!

一級建築士で探偵の蜘蛛手啓司は、相棒の宮村達也からある事件の記録を渡される。
名門大学演劇部の劇団員たちが、夏合宿中、一夜にして首なし白骨死体と化した衝撃的な事件。
その詳細な記録が、連続窃盗犯の所持品から見つかったのだ。犯人と目された人物の死体も発見され、事件は一応の決着を見ていたのだが――。
本格界の鬼才が剛腕から放つ前代未聞のトリック!

新年度でバタバタし、初めての更新が遅くなりなってしまいました。
今回は新年度ということもあり、初めて読む作家さん。
オススメに出てきて、解説を読んでこれは!ということで即購入。

門前さんの作品では、初めての文庫作品ぽいですが、
登場するキャラは、これまでの作品にも登場しているのかなあ。
蜘蛛手啓司、この作品だけでは奇天烈とまではいきませんが、変わってますなあ。

事件の詳細な記録を読んで、その事件を解き明かすという、しかも
この詳細記録は手記ではなく、録音を起こしたもの。
しかし、ここにあるトリックが隠されているんですね。
これ絶妙というか、だいたい手記だとかにはそういうものはあるだろうと想像しますが、
語り手を務める人物の、それぞれの呼び名に注目するというのが上手い。
そして、その先にあるこの録音された記録の正確性から、さらに先を見据えての推理は
お見事としか言いようがありません。

閉じ込められた館の内部図や事件現場の図、いやあ、見ているだけで
門前さん本格大好きなんだろうなと、事件の事をほっぽり出して思ってました(笑

物理的トリックよりも、やはり鶴扇閣の事件とタクシー拉致事件、そしてイントルード
での老女殺害事件、この3つがどう関係してくるのか?が一番の読み所。
ここはあえて触れませんが、この動機は納得しそうで、でもそういう実行はできないなあ。
本人の言う病気が本当なのかがまず疑わしいですが、本人がそう思っている以上、
このリセットは繰り返される訳です。
そして、ラストに現在の危機を解決するため、蜘蛛手が立ち上がるのですが、ここでエンド。

まだ文庫化していない、鮎川哲也賞最終候補作や受賞作、いずれも早く読みたいですね。
待ち遠しい。


友が消えた夏~終わらない探偵物語~ (光文社文庫)

友が消えた夏~終わらない探偵物語~ (光文社文庫)

  • 作者: 門前 典之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/02/14
  • メディア: Kindle版






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濱地健三郎の幽たる事件簿 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

江神二郎、火村英生に続く、異才の名探偵の事件簿、待望の第2弾!

年齢不詳の探偵・濱地健三郎には、鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。
新宿にある彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の
強面刑事も秘かに足を運ぶほどだ。助手の志摩ユリエは、得技を活かして、
探偵が視たモノの特徴を絵に描きとめていく―。郊外で猫と2人暮らしをしていた姉の失踪の謎と、
弟が見た奇妙な光景が意外な形でつながる(「姉は何処」)。資産家が溺死した事件の犯人は、
若き妻か、懐具合が悪い弟か?人間の哀しい性が炙り出される(「浴槽の花婿」)など、
驚きと謀みに満ちた7篇を収録。ミステリの名手が、満を持して生み出した名探偵。
待望のシリーズ、第2弾!


江神二郎、火村英生に続く、というところに違和感を持ってしまいました(苦笑
(作品と関係無く、すいません。)
ソラもいれば、地蔵坊(笑)も居ます。

とはいえ、火村英生シリーズから派生して、こうして探偵役が登場するというのは
これまでには確かに無かったですね。
島田荘司先生の、犬坊里美とか意識してたりとかあるんでしょうか。

本作所収で最もホラーなのは「それは叫ぶ」
ホラー小説はあまり読んだことが無いのですが、基本的には「論理じかげの奇談」でも、
合理的解釈も成り立たないものが、ある意味一番怖いのではないかと思います。
なので、最も恐ろしいのは、こうした正体不明の、濱地のいう「幽霊の屑」ではなかろうか。

解説にもあるように、本作はホラー小説ながら、探偵小説でもあるんですよね。
濱地の持つ不思議な能力のみならず、探偵能力もしっかりと発揮されているんですが、
上記の作品のみは、全くそんなことは無いので、探偵小説として考えた場合、
極めて異質な作品ですが、心霊探偵シリーズとしてみると、ついに来たとも思えます。

「ホームに佇む」もやや似た印象のある作品です。
依頼人の吉竹と、怪奇を結びつける「合理的」理由は無く、彼が「視えた」から。
実際そのくらいの理由なんでしょうね。よく視えても、視線を合わせるなとか
聞いたりします。

そこをいくと、「お家がだんだん遠くなる」「ミステリー研究会の幽霊」は
しっかり探偵小説です。理由もしっかりあり、終わり方もよい。

ミステリー的な要素を一番含んでいるのは「姉は何処」でしょうか。
私一番のオススメです。
姉(の思念)の行動を見て、見事な名推理をみせる濱地と
一番のホラーを体験してしまった助手のユリエ。
最後の1行は中々怖いですよね。

直球の怖さではなく、変化球的怖さなのが「浴槽の花婿」
これは意表を突かれました。
犯人を言い当てるでも無く、アリバイを崩すでもなく、確かに幽霊的なものが
語っていることを濱地は刑事に伝えますが、それだけ。
その後の記述で、読者は犯人がわかるも、あの幽霊的な思念の正体も判明するラストは
「それは叫ぶ」とは全く違う、ゾクゾクする怖さです。

すでに第3弾も刊行されているようで、またまた楽しみですね。
しかし、語呂合わせの良い電話番号って何番だろうか?(笑


濱地健三郎の幽たる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の幽たる事件簿 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/01/24
  • メディア: 文庫






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まほり [高田大介]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。
卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。
上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。
この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村と出身地が近かった裕は、
夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた
昔なじみの飯山香織と出会い、ともにフィールドワークを始めるが、
調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ! 
謎が謎を呼ぶ。その解明の鍵は古文書に……?


主人公裕は、膨大な古文書のデータの中から上州に伝わる子間引きの風習や毛利神社や
琴平神社の社名に注目し、資料と格闘する。裕がそこまでするには理由があった。
父が決して語らなかった母親の系譜に関する手がかりを見つけるためでもあったのだ。
大した成果が得られぬまま、やがて夏も終わりに近づくころ、
巣守郷を独自調査していた少年・淳が警察に補導されてしまう。
郷に監禁された少女を救おうとする淳と、裕の母親の出自を探す道が交差する時――。
宮部みゆき、東雅夫、東えりか、杉江松絶賛の、
前代未聞の伝奇ホラーミステリーにして青春ラブストーリー! 
感動のラストまで目が離せない、超弩級エンターテインメント。


感動のラストという解説文が付いてますが、本作のミステリ的側面が
一番強かったのが、このいわゆる「最後の一撃」だと思いました。

というのも、ある程度の結末が見えているものの、
それを、言ってみればいわゆる「状況証拠」で固めていく過程が、
本書は続いていきます。

古文書の捜索と解読、そして伝承・口承(こちらは協力得られてませんが)、
歴史学(文献史学)と考古学、そして民俗学、これらの学問手法を用いて、
蛇の目紋と、さらにその先の謎を解いていきます。
私個人は、この謎解きはそれなりに楽しめたのですが、
人を選ぶミステリというか、小説ですねえ。

個人的には解説にあるように、飯山香織とのラブストーリーというのが
一番しっくりくるかもしれません。
二人の関係進展が真相より楽しみでした(笑)
しかし、上州のどこなのか・・・あんなに方言は出ないだろう。
そこがものすごく違和感を感じました。



まほり 上 (角川文庫)

まほり 上 (角川文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: Kindle版



まほり 下 (角川文庫)

まほり 下 (角川文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: Kindle版









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カルトからの大脱出 [鯨統一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

教祖V.S.マジシャン!?
カルト宗教に消えた娘を救うため、
信者たちに「本当の奇跡」を見せろ!

保険営業員として働きながら高校生の娘・あすかと二人で楽しく暮らしていた好美。
だがある日、あすかは家を飛び出し、謎のカルト教団〈新しい神のルール〉の中へと消えた。
憔悴する好美に救いの手を差し伸べたのは、保険の顧客であるマジシャンの谺だった。
娘奪還のために谺が用意した奇策とは? 大・逆・転ミステリー!


本書が書き下ろしで、昨年末に刊行されたというのは、
鯨先生の意図がどこにあるのかはわかりませんが、時事的な問題をかなり真正面から
取り上げた作品であるのは、間違いありません。

あすかが入信する動機も、確かに納得できるところはあるものの、
それだけで?!と感じたり、当たり前ではないことを、さも当たり前のように話す
信者やあすかの同級生、好美が驚くのも無理ありません。

最後の大逆転、これいくつか意味がありますよね。
現実問題として、こんな大舞台で教祖たちの嘘を暴くことは、まず難しいと思いますが、
まあ小説だから良いのかなと。
もう1つの「大逆転」はミステリとしての趣向で、ここは純粋に上手い。
ミステリとして本書を見ると、関係者の死などはあからさまに途中で語られているので、
そうした点でのミステリらしさは楽しめない一方で、
この最後のトリックは、お見事だなと。

<スリーバレー>シリーズ、そろそろ出ないでしょうかねえ。



カルトからの大脱出 (中公文庫)

カルトからの大脱出 (中公文庫)

  • 作者: 鯨統一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/12/21
  • メディア: Kindle版






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清里高原殺人別荘 [梶龍雄]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

冬、シーズンオフの別荘地・清里──〝内側から開かない窓〟を設えた奇妙な別荘に、
五人の男女が忍び込んだ。彼らがある連絡を待って四日間潜むその隠れ家には、意外な先客が。
密室での刺殺、毒殺、そして撲殺……相次ぐ死によって狂い始めた歯車。
館に潜む殺人鬼の仕業か? 逆転に次ぐ逆転! 伏線の魔術師・カジタツが巧緻の限りを
尽くした極上の「雪の山荘」ミステリ。待望の初文庫化!

梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクションの2として発売された本作。
楽天ブックスのお気に入り的な所に出てきたので、購入してみました。
なんといっても「雪の山荘」に惹かれました。

本作は、よくよく考えてみると、犯人はある意味すぐ目星はつくのですが
(トリックやアリバイはともかく)
5人の男女が一体何の目的で、この別荘に忍び込んだのか、
彼彼女たちは一体何をやってきたのか、
この辺りを謎に包んでいることで(途中明らかになるのですが)
上手く事件の構図を隠しています。

ミステリにおける「雪の山荘」というのは、その山荘になぜか集められ、
次々に殺されていき、最後に探偵役が謎を解く、というのが
まあステレオタイプ的ですが、常道だと思います。
犯人当て、つまりは「フーダニット」なんでしょう。

しかし本書は、この体裁を取る姿勢を見せつつも、
上記書いたように、そもそもこの山荘になぜ彼彼女たちが居るのか、
時折電話してくる沢木なる男は誰なのか、
その辺りに謎があるため、フーダニットでは終わらず、
解説の阿津川辰海さんが書かれているように、ホワットダニットであるというのは
全くその通りで、流石です。

しかも、フーダニット&ホワットダニットいずれも楽しめる作品であり、
かつ第7章では探偵役の謎解きと、ある種のどんでん返しまで仕掛けてあります。
最後の仕掛けは驚きました。こんな結末とは。

ところで、阿津川辰海さんは『本格ミステリ・フラッシュバック』で
梶さんを知ったと書かれているのですが、私も読んだけど覚えてない(苦笑)
しかしこういう作家さんが居た事を知れたのは、非常に良かったです。
これからまた読む楽しみが増えました。
さすが徳間文庫さん、ありがとうございます!


梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション2 清里高原殺人別荘 (徳間文庫 トクマの特選!)

梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション2 清里高原殺人別荘 (徳間文庫 トクマの特選!)

  • 作者: 梶龍雄
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/02/08
  • メディア: Kindle版






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11文字の檻-青崎有吾短編集成 [青崎有吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録

大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、
全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、
人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、
どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、
力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、
著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。

以下、ネタバレ少しあり。





アンソロジーものが多いので、それを知らないと???な短編もいくつか
ありますが、表題作がそれを吹っ飛ばしてくれます。

「your name」は『長短編!どんでん返し』収録の一編。
登場する探偵が良いですね。このトリックというか、謎解きの一撃は、
ワープロ時代から通じるもので、容疑者を動揺させることはまず間違いないです。

「噤ヶ森の硝子屋敷」。著者の解説にもあるように、新本格30周年を記念した
アンソロジーに収録された一編。中村青司を最大限リスペクトした作品で、
本書愁眉かもしれません。墨壺深紅なる奇妙な建築家の創造した数々の奇妙な屋敷。
そこに登場する、薄気味良悪という、本名か?と思わせる名前の探偵。
何でも、探偵組合的なもの、探偵への連絡役や差配を行う仲介屋も登場。
あっという間に謎を解きます(笑
星影龍三みたいだ。

この辺りは、この墨壺深紅の<館>シリーズとしてシリーズ化してほしいですね。
トリックは言われてみれば確かにその通りだという、盲点を上手く突いてます。

「飽くまで」は、東野圭吾さんの傑作『悪意』に通じるものがある、
究極的なホワイダニット作品の1作でしょう。

「11文字の檻」は世界観と、この監獄から逃れる11文字の日本語の2つが
アイロニーというか、真逆であるというところが非常に面白く、かつ
謎解きの過程も一歩一歩の詰め将棋的な面があり楽しめました。

「恋澤姉妹」、百合アンソロジーに収録された一編ですが、
これが一番謎だったかも。主人公の目的はともかく、この姉妹は何なのか?と。
とんでもなく強いのはわかるんですけどね。

青崎先生、そろそろ<館>シリーズ新作もよろしくお願いします!



11文字の檻 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫)

11文字の檻 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/12/12
  • メディア: Kindle版






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三世代探偵団 生命の旗がはためくとき [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子高生の令奈は通学途中、ふと覗き込んだ車中で男が刺殺されているのを発見する。
なぜかその男は、駆け落ちして姿を消した姉・美樹の名前が書かれたメモを持っていた。
姉の身に何かあったのかと心配する令奈。一方で、美樹は駆け落ちした婚約者が
裏組織の息子であることを知ってしまい、口封じのため命を狙われていた。
さらに組織はあることをきっかけに、対立相手と武力闘争を起こそうとしていて……。
天才画家の祖母、マイペースな母と暮らす娘の有里。友人の家族が巻き込まれた抗争に、
三世代が立ち向かう!

相変わらずの赤川節。
裏組織の本気の抗争って結構赤川作品に登場しますよね。
それを暴力や武力で解決しないのが、赤川先生の神髄というか、
赤川作品の根幹の1つなのだろうと。

次々と新たな登場人物が出てきますが、全く混乱しないところも赤川作品ならでは。
ところで三世代の中間・文乃はマイペースと紹介されていますが、
ある意味登場人物の中では数少ない常識人ですよね(笑
常識というか、ある意味人間らしいというか、そういう思いや判断を下していると思います。
私だけのけ者にして!とか私には何も知らせないで!とか、シリーズでそうした発言を
する文乃ですが、これは幸代や娘の有里があまりにぶっ飛んでるから。
何しでかすかわからないので、家族として共有しないとマズイという危機感から、と
私は思いましたが、買いかぶりすぎかも(笑

ラストは大団円とはいかないまでも、落ち着くところに落ち着く結末。
次作は、村上刑事を巡る逆の鞘当ても語られるかも。


三世代探偵団 生命の旗がはためくとき (角川文庫)

三世代探偵団 生命の旗がはためくとき (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/09/21
  • メディア: 文庫






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死の黙劇 山沢晴雄セレクション [山沢晴雄]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

月のない夜、華奢な欄干を破り、一台のタクシーが崖下に転落した。
運転手は一命を取り留めたが、乗客の男は即死する。死者は顔いちめんに
包帯を巻きつけていたものの、その下にはなぜか傷ひとつなかった。
さらに死者の所持品からは探偵砧順之介の名刺が発見されたが、
その名刺を死者が所持することは論理上不可能だった――
奇怪な謎が読者を魅了する表題作ほか、書籍未収録の犯人当て短編などを所収。
職業作家の道を選ばず、生涯に亙って緻密極まりない作品を執筆、
巨匠鮎川哲也も畏敬した本格推理作家、山沢晴雄。
その作風を一望できる作品を精選して贈る〈山沢晴雄セレクション〉。

更新がちょっと滞りました。
御無沙汰しております。

本作は、今年刊行された『このミス』か『本格ミステリ』でランクインされていた
作家さんで、聞いたことないなあと思い、購入しました。
これははっきり言って、素晴らしい短編集です。
とにかく読者を騙すというのを嬉々として、書かれているなと感じます。

名探偵・砧順之介が登場する作品が本作には収められますが、
やはり愁眉は「死の黙劇」でしょうか。アリバイトリックに、包帯を巻いた謎の男。
さらには犯人が予想しえない事象まで、とにかく本格要素が詰め込まれています。

砧登場作品ではアリバイ崩しが非常に多いですね。しかも多種多様で実に面白い。
同じようなトリックに感じる、いや実際あるかもですが、そう感じさせないうまさがある。

意味ありげな現場の絵図を登場させ、密室トリックかとミスリード
させる「見えない時間」も素晴らしい。
これも極めて単純なアリバイトリックなんですが、そこを上手く隠しているんですよね。

後半はロッカーの山沢の異名を取る(?)、とにかく色々なロッカーが事件に登場。
よくロッカーだけでこれだけ考えたなと。しかも犯人当て!
「ふしぎな死体」は、密室(ロッカー)、アリバイ、予期せぬ出来事の3つが揃った快作。

私のオススメは「京都発“あさしお7号”」。
このタイトルから、どう考えてもトラベルミステリーだと思います。
だから当然時刻表も登場します。
しかし、一番肝心のアリバイトリック、それを解く鍵が人間のある思い込みなんですよね。
これは驚きました。
あれだけ時刻表を駆使して、見事なトリックを使ったのに、最後の一撃が
思い込みという、なんということだ。

とにかくアリバイトリックにこだわり続けた作者の見事な作品集。
読んで損はありません。


死の黙劇: 山沢晴雄セレクション (創元推理文庫 M や 8-1)

死の黙劇: 山沢晴雄セレクション (創元推理文庫 M や 8-1)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/07/29
  • メディア: 文庫






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追憶(recollection)田沢湖からの手紙 [中町信]

まずはAmazonさんの紹介ページから。


妻は殺された--
封印された呪いの扉を開いて……。

解っていても騙される!
叙述トリックの鬼才が仕掛ける騙しの迷宮にようこそ!

一本の電話が、彼を栄光の頂点から地獄へと突き落とした。
脳外科学会で、最先端技術の論文発表を成功させた大学助教授・堂上富士夫に届いたのは、
妻が田沢湖で溺死したという報せだった。彼女は中学時代に自らが遭遇した奇妙な
密室殺人の真相を追って同窓会に参加していたのだった。現地に飛んだ堂上に対し
口を重く閉ざした関係者たちは、次々に謎の死に見舞われる。
(旧題「田沢湖殺人事件」)

以下、ネタバレがあります。






中町信先生作品は久しぶりです。
かつて創元推理文庫で復刊した『三幕の殺意』、そして光文社文庫で復刊した
『暗闇の殺意』と『偽りの殺意』を拙ブログでも紹介しました。

今回、徳間文庫でかつて刊行された、いわゆる「湖」シリーズの改題し、刊行。
シリーズは「死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 」とありますね。
これ、タイトルに入れるべきなのか微妙に悩みつつ、ひとまずこちらで紹介しました。

ところで、徳間文庫は他にも過去に復刊しているのを今回知りましたので、
こちらも購入したいと思います。

このミステリ、密室、アリバイ崩し、トラベルミステリ、過去の事件を解き明かす、
とにかく本格要素が詰め込まれている、とてもバラエティに富む作品です。

「15年前の12月の事件」、この謎を追ったがために、堂上富士夫の妻・美保は
殺されたのではないか?
冒頭からこの「15年前の12月の事件」がキーワードとして示され、
物語も、この過去の事件を解き明かす過程で、美保の同級生が次々と殺されていきます。
「15年前の12月の事件」とは何なのか?美保が解き明かした真実とは何か?

この謎は(不謹慎ですが)非常に魅力的で、次々と新たな登場人物も出てきますが、
グイグイ物語に惹き込まれます。
しかし、しかし、この事件の謎はなんと物語中盤で解き明かされてしまうのです。
では、一体後半は何が書かれるのか?
元々の本書のタイトルは『田沢湖殺人事件』、今回の改題は『追憶』
これ、完全にミスリードですよね(笑
いや実に上手い。

そして美保が遺していたという手紙、これを読んだ秋庭ちか子の
「信じられないような、恐ろしいこと」という言葉の意味、これ、
上手くミスディレクションされています。

それから谷原卓二が堂上に急に会いに来た場面。何か話があったにも関わらず、
同窓会で撮影したスナップ写真と4枚のフィルムを渡して、早々に電車に乗ってしまう・・・
犯人である人物が一緒に居たから、というのは、なるほど納得できる理由ですが、
ここもかなり上手くミスリードさせています。
叙述トリックとは言えないものの、堂上視点でこの箇所は書かれているので、
この渡したものの重要性を非常に上手く隠しています。

ラストが美保の手紙が終わるのは非常に余韻を残す終わり方で良いのですが・・・
問題は、本作で描かれたもう1つの事件の真の動機。

真犯人にとって、確かに致命的のように思えますが、
美保の病気は、再発とあります。
それは真犯人がどうしても隠さなければならないものだったのかと。
5年前の手術は成功した、しかし病気が再発した。
この点がどうも動機としてどうなんだろうかと、個人的に思いました。

ただ、この病気についてそこまで深く語られていないので、
まあ許容範囲でしょう。

それよりも、このいくつもの本格要素を詰め込み、読者を巧みに騙した本書、
是非とも一読してほしいです。


死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 追憶(recollection) 田沢湖からの手紙 (徳間文庫)

死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 追憶(recollection) 田沢湖からの手紙 (徳間文庫)

  • 作者: 中町信
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/01/12
  • メディア: 文庫






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Yの悲劇 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。
警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。
解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、
ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは? 
巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、
オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!


ドルリー・レーン4部作の2作目。
古典的名作とは、いつ読んでも抜群に面白いです。
とはいえ、実は初読という、ミステリファンにあるまじき振る舞いです(汗

古くさい部分ももちろんあります。
しかし、それはこれだけ時代が経っているのだから、仕方ない面があります。
しかしそこはミステリの根幹には関係ありません。
本作は今読んでも、十二分に謎解きを楽しむことができます。

もうありとあらゆる方々が、本作品について語られているし、分析もされているし、
もう私ごときが何かを書くのもおこがましい限りですが・・・

犯人のヒントは、ルイザ・キャンピオンの証言でほぼ全て出そろっています。
しかし、それでも犯人が分からない。すごい構成です。

また、レーンがなぜか推理を拒否する態度を示しつつ、
最後に語る真相と、ある事件の真相があまりに見事すぎて脱帽です。

特に犯人が、想定を超えた行動、「概便の指示」に反した行動を取るという、
レーンにとって驚愕の事態が発生し、かつそれをレーンの推理で知る読者も
、つまり私も驚愕しました。
ここから、物語は全く別の方向に向かっていくのです。
ここはもう凄いの一言でした。

前にも書きましたが、○○の悲劇、アルファベットを使用した等の本歌取りの作品
を読んだ方、原点の古典的傑作をぜひ読んで下さい。


Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/08/19
  • メディア: 文庫






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逢魔が刻 腕貫探偵リブート [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神出鬼没の公務員探偵「腕貫さん」を“だーりん”と呼び慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ。
同級生の小泊瀬海人から「親族が関わった殺人事件を題材にミステリ小説を書いてみたい」
と相談され、大乗り気でストーリー作りに着手。ユリエは腕貫さん顔負けの名推理を披露するが、
行き詰まって相談した腕貫さんから、
ユリエに厳しい駄目出しが…・・・!?(「ユリエの本格ミステリ講座」)

今作ではほかに、鳥遊葵、阿藤江梨子、安達真緒、水谷川刑事etc.……
シリーズ既刊でお馴染みの面々も集結。喪主による殺人、連続不審死、留学生監禁など、
腕貫シリーズのホームタウン櫃洗市で続発する、禍々しくも珍妙な事件の真相は!?
解説の浜崎広江さん(今井書店)も激賞の一作、乞うご期待!


腕貫探偵シリーズの文庫版最新作。
とはいえ、肝心の腕貫さんはほとんど登場しません(笑
櫃洗市を舞台にした別のミステリ短編集と言ってもいいですね。
まあスピンオフですね。『必然という名の偶然』に近いかな。

江戸川コナンの住む米花町が、凄まじい勢いで犯罪が発生する街として、
犯罪者が多すぎる街という風刺がありますが、
この櫃洗市は、探偵が多すぎる街、かもしれません。
腕貫さんを「ダーリン」と慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ、
大富豪探偵の異名を取る(?)月夜見ひろゑ、
櫃洗署の刑事さんも中々に優秀なので、この市で犯罪を起こすのはマヌケでしょう。

表題作は、謎が解けていく過程も面白いですが、やはり最後に明かされる事実は
中々に衝撃です。櫃洗大学に勤める久賀谷先生が推理を巡らせる訳ですが、
この大学、大丈夫か?!と心配してしまいます。

問題作という、私が一番わからなかったのは「マインド・ファック・キラー」
最後まで読んでも分からなかった。
櫃洗との無理矢理くっつけている感もあり、櫃洗市シリーズより、
西澤作品のノンシリーズ短編集収録の方が良かったと思います。
他の方の感想をみると、「最後の一撃」的な事が書かれているのですが、
わかる方、お教えください。

タイトルに「リブート」とあるように、シリーズ再起動、という事なのでしょう。
あとがきで、西澤先生がスマホの扱い方とかかなり苦労されていることを書かれていますが、
長寿シリーズは確かにこの辺りは難しいですよね。
それらを上手く扱うことが可能になれば、おそらく再び腕貫さんは姿を現してくれるでしょう!


逢魔が刻 腕貫探偵リブート (実業之日本社文庫)

逢魔が刻 腕貫探偵リブート (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/12/08
  • メディア: 文庫






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ハートフル・ラブ [乾くるみ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。
交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、
一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって――
(書き下ろし「数学科の女」)

他に、突然の余命宣告を受けて結婚を決意した夫婦を描く
「夫の余命」(日本推理作家協会賞候補)や、アイドルの握手会をまさかのミステリに仕立てた
「なんて素敵な握手会」など、
どんでん返しの名手の技が冴える珠玉のミステリ7篇収録。


乾くるみ先生の御著書はいつ以来だろうか・・・もしかしたら、
林三兄弟シリーズの『六つの手掛かり』以来では。

表題作の作品はありません。
これはまあ、『このミス』だったか、『本格ミステリ』だったかでも
語られていましたが、出版社と相談の上、決定したとあった気がします。
『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』に続く、という感じなんでしょう。


最初の「夫の余命」はさすが乾先生という、仕掛けが施してあります。
これが最初というのが良い。
「同級生」は少し儚い・悲しい物語。短いながらも読ませます。
一番面白いのは「消費税狂想曲」。これは社会風刺がきいていながら、
しっかりミステリという、何か政府に翻弄される国民で、それが殺人まで・・・(苦笑
なんていう妄想まで膨らませてしまいました。

「九百十七円は高すぎる」は、乾作品では珍しいのでは?
一瞬西澤保彦先生降臨かと思いました(笑
しかし、この金額から何を購入したのかを推理するという、日常の謎ですが、
それだけに留まらず、先に述べたように、そのコンビが西澤作品的という。

「数学科の女」
恐るべき米原さん。そして本編で語られるのは、殺人計画やDNA鑑定への備え
さらには殺人教唆まで、とにかく米原さんは先の先の先まで考え抜いています。
本来であれば、恐るべき話になるのですが、語り手である箕浦の、どこか飄々とした
態度やラストの終わり方などから、そう恐ろしい話には感じられないのです。
そこがまた恐ろしいのかもしれませんが。

林三兄弟の活躍もまた久々に読みたくなりました。


ハートフル・ラブ (文春文庫)

ハートフル・ラブ (文春文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/12/06
  • メディア: Kindle版






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