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殺し屋志願 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

殺し屋を看取った日から、少女の周りで何かが動き出す。傑作長編ミステリ。

朝の満員電車で、男が何者かに刺し殺された。殺害されたのは腕利きの殺し屋・鳴海。
偶然そばに居合わせ、彼の死をみとることになった17歳のみゆきは、
その日を境に奇妙な出来事に巻き込まれていく。「――殺したら?」たった一言を告げる電話と、
みゆきの前に現れた謎の女子高生・佐知子。彼女は継母を憎み、
その死を願って自ら殺し屋に近づいた少女だった――。
2人の少女の不思議な友情と秘密を鋭く描き切る、傑作長編ミステリ。

現在と過去を行き来する形で物語は進みます。
殺し屋の鳴海が佐知子に語る「殺人ってのは、くせになるんだ」という言葉が
本書を象徴していますね。

人間の殺意というものに注目した、いつものユーモア・ミステリとはひと味違う良作。
赤川作品はたまにこういうのがあるんですよね。
ラストも負の連鎖が続く展開を示唆してエンド。

殺し屋なんだけれども、鳴海が異常に好人物に見えるのは、
佐知子やみゆきの母親など、それを超える人が出ているからでしょうか。
とにかく登場人物は非常に少なく、基本は鳴海と佐知子・予史子の過去の出会いと、
みゆき、新谷母子・親子の物語だけで進むのに、徐々に異常な空気になっていくのが
また恐ろしいし、流石赤川次郎。

決してユーモア・ミステリだけではない赤川次郎。
ぜひご一読ください。


殺し屋志願 (角川文庫)

殺し屋志願 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/12/22
  • メディア: Kindle版






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黄土館の殺人 [阿津川辰海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

土壁の向こうで連続殺人が起きている。
名探偵(ぼく)は、そこにいない。

孤立した館を連続殺人が襲う。
生き残れ、推理せよ。

シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ

☆☆☆
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
そのとき土砂の向こうから女の声がした。

声は、交換殺人を申し入れてきた――。

同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。

葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。

火土水風と四元素を扱う館シリーズの第3弾。
火・水と来て、今回は土。
そして、起こるのは日本の自然災害でも非常に多い、地震。
(あとがきで、能登半島地震に阿津川先生が触れられてます。)

大地震により、名探偵と助手は離ればなれに。
そして「黄土館」で起こる連続殺人。
犯人は果たして誰か。

探偵役と助手が離れ離れになるというのは、有栖川有栖先生の『双頭の悪魔』を
思い出しますね。
本書は3部構成で、1部は「名探偵・葛城輝義の冒険」。
シャーロック・ホームズのようなタイトルですが、事件を防ぐのも探偵の役目!
という、中々面白い部になってます。いわゆる倒叙形式。
もちろん、物語全体の中で、上記のような事ではなく、
ある非常に重要な描写-これは最後に探偵が指摘するのですが-が記されています。
(個人的にはこの推理というか指摘が本作愁眉。)

そして本書は、かつて名探偵であった飛鳥井光流の復活も描かれます。
本書のテーマでもある、ミステリにおける名探偵、探偵とは何かを語る上では重要な部です。

火や水、結構辛辣なコメントを書きましたが、本作は個人的には一番楽しめました。
名探偵と助手を離れ離れにした理由や、館に設置された塔の存在、犯人の動機は何なのか。
この辺りが非常に上手くできていたなあと。

第1部では、プロパビリティの犯罪にしれっと触れているのですが、これが実は本書を
貫く犯人の犯罪方法でもあるんですよね。これも上手い。

ただやっぱり自分のことを名探偵と自己紹介したりするのは、中々受け付けないなあ(苦笑
あと水の時に遭遇しているとはいえ、田所と三谷の人が死ぬことに慣れすぎだろう。
まあ、これはミステリのレギュラーメンバーなら、仕方ないのですが(笑

いよいよ次は「風」ですね。風車館の殺人、なんて単純な名称ではないと思いますが、
どう「風」を入れてくるのか、楽しみです。


黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

黄土館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ)

  • 作者: 阿津川辰海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/02/15
  • メディア: Kindle版






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等々力座殺人事件-中村雅楽と迷宮舞台 [戸坂康二]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

歌舞伎界の名優・中村雅楽が殺人事件の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者によるミステリ史に名を残す名推理の数々。
精選の8編に加えデビュー作「車引殺人事件」原型版を書籍初収録。


「グリーン車の子供」「団十郎切腹事件」、ミステリを読んでいれば
どこかで必ず目にするタイトルです。
特に前者は、日常の謎の中でも非常に秀逸とされています。
ところが、中々私は読む機会がなく、河出文庫でこのたび2冊復刊となり、
本当に喜ばしい限り。

本書には、主に殺人事件をあつかった作品群が収録されています。
印象に残ったのは、表題作と「臨時停留所」。
後者はホラー要素が少し入った奇談。
前者は結末がもの悲しすぎる作品。雅楽が二度と語らなかったのも頷けます。

「密室の鎧」も、見事な密室トリックですが、
これにしても、「奈落殺人事件」にしても、やはり歌舞伎特有の描写が良いですね。
登場する言葉遣い、業界特有の言葉など、これらは(私もわからないのも多々ですが)
今の若い読者の方へ果たして伝わるのかなあと。
ぜひ伝わって欲しいものです。

作品そのものは非常に素晴らしく、次の日常の謎系を収録した『楽屋の蟹』が
非常に楽しみです。


等々力座殺人事件: 中村雅楽と迷宮舞台 (河出文庫)

等々力座殺人事件: 中村雅楽と迷宮舞台 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2023/12/06
  • メディア: 文庫






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七番目の花嫁 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

女子大生探偵が挑むのは、発表会で起こった毒殺事件!
婚約者の前川とカフェを訪れた佐千子の命が狙われた。
偶然、居合わせた女子大生探偵・亜由美の相棒ドン・ファンが、
とっさに気づき事なきを得る。
真相が気になった亜由美は、二人が訪れるウェディングドレスのショーに潜入すると、
毒殺事件が発生する。
なんと殺されたのは、前川の四人いる元妻のうち一人で――。
表題作のほか『帰らざる花嫁』収録。

更新が止まってました。
本書、久しぶりに再読です。
前も書きましたが、元々は角川文庫で刊行されていて、
実業之日本社が文庫を創刊したことから、花嫁シリーズを最初から刊行しているんですね。

表題作はなんといっても「前妻同盟」というある意味パワーワードが強烈。
「赤毛組合」を思い出してしまいました(笑

でも7番目っていうのは、どういう意味なんだろうかと改めて疑問に。
4番目じゃ語呂が悪いからですかね。
(私が数え間違えているのかな。)


「帰らざる花嫁」は、登場人物が恋で完全に常軌を逸しているところが
中々恐ろしい。両親さえ居なければ・・・じゃないだろう。
亜由美や聡子の通っている大学、恐ろしすぎる。

起こる事件は凄惨なものの、亜由美の両親、ドン・ファン、殿永刑事らが
安定の癒やしを与えてくれています。
これがシリーズ長寿の秘訣の1つなんだろうと思います。


七番目の花嫁 (実業之日本社文庫)

七番目の花嫁 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/12/08
  • メディア: 文庫






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