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折鶴 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ作家、紋章上絵師、奇術師。
この一冊で著者の三つの顔がすべて楽しめる――末國善己(解説より)
4つの衝撃の結末を描く、ミステリの技巧を凝らした
第16回泉鏡花文学賞受賞作
生誕90年記念出版第2弾

新内節を語れる友禅差しの模様師・脇田は、旅先で三味線弾きの芸妓・彩子と出会う。
脇田は彼女に惹かれるが、彩子と、酒と女で身を持ちくずした彼女の師匠の名新内語りが、
以前ある殺人事件に巻き込まれたことを知る、「忍火山恋唄」。
縫箔の職人・田毎は、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、
デパートの館内放送で呼び出されるという奇妙な出来事に見舞われていた。
そんな折、パーティで元恋人の鶴子と再会するが。
ふたりの再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編。
職人の世界を背景に、流麗な筆致で描く恋愛小説と、
巧みな構成が光る本格ミステリを融合した名短編集。第16回泉鏡花文学賞受賞作。

またまた久しぶりの更新となりました。

『泡坂妻夫引退公演』で初めて読んだ、「紋章上絵師」シリーズの系譜、というか
大元的な作品を読んだ気がします。
いわゆる、ステレオタイプ的になりますが、江戸・東京の職人たちを扱っていて、
まず最初読んだだけでは、専門用語が理解できないのですが(苦笑)、
それも大量販売や機械製作の煽りを受けて・・・というのは共通しています。

最初に登場する「忍火山恋唄」は、三味線による唄いを取り上げていて、
これもまたテーマとしては極めて渋い。
ただこれを上手く掘り起こしつつ、最初に主人公が聞いた「幽霊話」を
見事にミステリに仕立てていく技巧はさすが。
しかし、本編はこれに留まらないのです。
上記で書いた、いわば時代の変化と関係させているのか、主人公の推理に
対して、全く違う真実を提示する。
最後の主人公と彩子の会話は何とも言えないものがあります。
事件の謎と今の境遇のようなものを重ね合わせた感。
解説の末國さんは「新内の名人が活躍できなくなる時代の変化が、そのまま素人探偵の
活躍を許さない散文的な状況と重ねられており」と評してますが、言い得て妙でしょう。

表題作「折鶴」も、時代の変遷を描いた名作。そこに自分の名前を騙る人物が
そこかしこに登場するというミステリを加えた作品。
「少し前までは、腕に職を付ける・・・それが見事にひっくり返った」と
主人公が思う場面がありますが、まさにその通り。
本編は悲しい終わり方をするのですが、それ異常に、染め物とか着物とかに関係する
業界の、工業化の煽りの話が身につまされました。

亜愛一郎や奇術とは違った側面の泡坂妻夫作品。ぜひご一読を。



折鶴 (創元推理文庫)

折鶴 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/05/11
  • メディア: 文庫






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コースケ

みなさま、いつも御訪問&nice!ありがとうございます。
by コースケ (2024-02-04 18:01) 

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