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収穫祭 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

1982年夏。嵐で橋が流れ孤立した首尾木村で大量殺人が発生。
被害者十四名のうち十一人が喉を鎌で掻き切られていた。
生き残りはブキ、カンチ、マユちゃんの中学生三人と教諭一人。
多くの謎を残しつつも警察は犯行後に逃走し事故死した外国人を犯人と断定。
九年後、ある記者が事件を再取材するや、またも猟奇殺人が起こる。凶器は、鎌だった。

事件後、村や母の記憶を失ったブキは、東京の大学院を中退して帰郷し高校で英語を教えていた。
そこで起こった同僚の殺害。凶器は鎌。同一犯による連続殺人の再開か、模倣犯か?
母のポルノ写真から、ブキが記憶を取り戻し欲望を暴走させた時、
カンチ、マユちゃんと運命が再び交錯、事件から二十五年後、全貌を現す!殺人絵巻の暗黒の果て―



以下、ややネタバレ。
上下巻分冊でもものすごいボリュームの長編です。全5部構成。
とにかく唐突に始まる大量の猟奇殺人の第一部。豪雨で橋が崩れ落ち、逃げ場を失う
3人の中学生、伊吹省路、小久保繭子、空知貫太。
犯人は誰なのかを恐怖の中突き止めようとする中、
伊吹の想像上の欲望(性的欲望)が生々しく描かれるのが特徴。
伊吹がみせた繭子への性的暴行未遂に、繭子がなんら反応を示さなかったのが、
本作の真実を垣間見せた一場面なのかもしれません。

第二部は繭子の章。事件から9年を経て、第一部で犯人とされていたマイケル・ウッドワーズ
の父親が、息子が本当に犯人だったのかの再調査が始まります。
最初に接触があったのが繭子。
ただこの第二部。繭子自身は第二部最初から事件の記憶欠落と改変に陥っており、
徐々に本当の記憶を取り戻していくというストーリーになっています。

繭子の特殊な性癖が明らかになるところが事件解決の鍵でもあるのですが、
結末があまりにも突飛すぎるので、唖然としました。なんだこのラストは・・・
一体次にどう繋がるのか想像つかない終わり方です。
一方、第一部にも登場した彼彼女らの中学校の教師であった川嶋浩一郎が
真犯人として浮上しますが、彼自身は最期まで否定。
伊吹への性的暴行や、繭子への未遂含め、彼は相当悪なんですが、では犯人は?

実は犯人はもうこの段階で消去法的にわかるようですが、私にはさっぱりでした(汗)
で、第二部はあまりに唖然とするラストでもあり、第四部での事件にも繋がっていくのです。

第三部は、伊吹省路が主人公。伊吹もやはり記憶の欠落と改変に陥ってますが、
母親の従兄弟が彼の前に現れたことにより、彼の時間も再び動き出します。
再び起こる鎌による放火連続殺人。模倣犯なのか、それとも首尾木村での犯人の仕業なのか?
このあたりの謎も加わり、さらに伊吹は自分の知らなかった母親と祖母の顔を知ることに。

繭子もそうなのですが、伊吹も元々少し特殊な性癖をもっていたのでしょう。
そうした場面も度々描かれます。しかし、彼の推理は実に見事で、当時母と祖母が何を
していたのか、さらには模倣犯の正体も突き止め、二人で繭子へのメッセージを
ネットへ書くところで第三部完。
というか、ここまでわかっていて、どうして真犯人の狙いにまで行き着かなかったかは甚だ疑問
なのですが、それは省路の、彼女のへの募る想いが眼を曇らせてしまったのかもしれません。

第四部は、真犯人による、本当に殺したい人を殺す話。
この部は壮絶です。自分の子であるとか、そんなものはお構いなし。
第二部で覚醒(真の目的を思い出した)彼女が、真の標的を殺すのですが、
それまでの準備があまりにも周到というか、ここまで時間をかけるのかという凄さ。

第五部は、表題作の意味の回収と、彼女がこんな事件を起こしてしまった動機を
垣間見ることができる部。
正直、このタイトル回収はともかくとして、動機の部分というか、
村の嫌な部分がもう少し見えても良かったのではと思います。

それと、最期は三人が再び出会う、が良かったかなあと。それがバッドエンドであろうとも。


収穫祭〈上〉 (幻冬舎文庫)

収穫祭〈上〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 文庫



収穫祭〈下〉 (幻冬舎文庫)

収穫祭〈下〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 文庫



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聯愁殺 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者、梢絵を囲んで推理集団“恋謎会”の面々が集まった。
四年前、彼女はなぜ襲われたのか。犯人は今どこにいるのか。ミステリ作家や元刑事などのメンバーが、さまざまな推理を繰り広げるが…。ロジックの名手がつきつける衝撃の本格ミステリ、初の文庫化。

以下、ややネタバレ。



多重解決ものの様相を裏表紙解説文などでは感じられ、特に本書では、
推理集団「恋謎会」の存在が特筆される存在でしょう。

ところが、、、です。
確かに本書の大半はこの「恋謎会」のメンバーの推理が占めているのですが、
彼彼女らの推理が微妙なラインをいくんですよねえ、これが。
それは良い意味でも悪い意味でも微妙なんです(笑
被害者の繋がりなど絶妙なヒント(というか調査)を報告する人とかも居て、
なるほどと思わせつつも、実際の事件の解決には至らず。

本書はいわゆる「どんでん返し」の作品なのでしょうが、
確かにこのラストはさすが西澤保彦先生と思わせるものがあります。
しかし、上記「恋謎会」とこのラストを結びつけるのがちょっと弱すぎるのではないかと
感じました。最後に推理を披露する人物は、確かに「恋謎会」でのディスカッションを
聞いて、真相に到達するのですが、もっと繋がりを持たせてほしかったなあと。

ラストは新たなミッシングリンクに基づき殺人を行っていく犯人の決意が語られる
のですが、ここは動機というホワイダニットを考える上でとても興味深かったですね。


聯愁殺 (中公文庫)

聯愁殺 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/09/22
  • メディア: 文庫



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帰ってきた腕貫探偵 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

街角に突如現れる「櫃洗市一般苦情係」の職員、通称・腕貫探偵。
その日彼のもとにやって来たのは一週間ほど前に亡くなったという女性の霊。
彼女はベストセラー作家・越沼霞巳と名乗るが、その作家は50年前に亡くなっているはずだ。
ならば50年前に死んだのは、いったい誰だったのか―?大人気・腕貫探偵シリーズ最新刊、
待望の文庫化。

以下、ややネタバレ。






お帰りなさい、腕貫さん。
余りにも久しぶりですが、腕貫さんの風貌はしっかり覚えてましたが、
レギュラーキャラクターは氷見刑事以外忘れていました(笑
住吉ユリエ、どんなキャラだったっけという感じで、大変失礼しました。

「指輪もの騙り」のみ、ユリエの名推理が光り、腕貫さんは登場しません。
ただ、この事件もかなり複雑で、「なぜわざわざ指輪を取りに戻ったのか?」という
謎から、加害者(犯人)・被害者・共犯者、これらが違う意味で入り乱れており、
快作です。

私の一番のオススメは「氷結のメロディ」。
事件そのものは、実のところそこまで複雑ではありません。
しかし、鳥遊葵の語る話からは不可思議で、恐ろしく、一体この謎を
腕貫さんはどう合理的な説明を付けるのか、その謎解きが素晴らしいのです。
改めて、このシリーズの面白さを再認識しました。

「追憶」はなんと幽霊からの相談を受けるという設定ですが、
この幽霊という設定が、事件の謎を解く大きな鍵となっていて、
単なる幽霊の登場や、死者からも相談を受ける腕貫という、最初の驚きを
与えるだけでないところがおおきなポイント。

すでに次巻も刊行されているようで、こちらも文庫化が楽しみです。


帰ってきた腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

帰ってきた腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 文庫



帰ってきた腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

帰ってきた腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: Kindle版



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回想のぬいぐるみ警部 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

殺人現場に遺されていた、パンダの特大ぬいぐるみ入りの段ボール箱。
被害者とは別人の名前で伝票も用意されており、集荷直前に襲われたらしい。
音無美紀警部は、なぜ購入店で直接配送を頼まなかったのか、をヒントに捜査を進めると
被害者の意外な人間関係と真相が明らかになる――。
ますます冴える推理と美貌で周囲や事件関係者を驚かせる音無警部と、その部下たちの活躍を描く全5編。一方で、音無のぬいぐるみへの偏愛ぶりが周囲にも知られ始め……。
強烈キャラクターも加わりパワーアップした、ユーモア推理第3弾。

前作では音無警部の「ぬいぐるみ」好きを知る桂島刑事がワトソン役だった印象が
強いのですが、本書ではその側面はかなり後退し(というか、桂島刑事があまり出てこず)、
警部を「小説上の名探偵」と持ち上げている(実際そうですが・笑)江角刑事。
そして警部に恋する則竹佐智枝刑事。
この二人がメインを張る(ただし探偵役ではないところがおもしろい)2編も収録。

特に、則竹刑事主人公の「離背という名の家畜」は彼女の同級生・材瀬理恵が
偶然にも事件に巻き込まれていた?お話なのですが、
ラストは描かれず、彼女が果たしてこの後どう行動したのか、とても
興味が惹かれます。
にしても、実の母親の殺人事件が意外なところで結びつくというのは、
西澤先生はさすがに上手い。
名前がやたら難しいのに、なぜすんなり読めたのかの伏線もきいてます。

ところで、本書では江角も則竹も音無警部がぬいぐるみ好きであることに
どうも気付いている感じですね(いや、前からそうだったのか?)。
であるからこそ、桂島刑事登場の必然性が薄れたか。

そして筆者も「あとがき」で書いていますが、恐れていたもう一人の名探偵
が登場しました。
前作に登場した階堂美月その人。なんと5編中2編で探偵役を!
「腕貫探偵」シリーズと同様、もう一人名探偵が生まれるかもしれません。


回想のぬいぐるみ警部 (創元推理文庫)

回想のぬいぐるみ警部 (創元推理文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: 文庫



回想のぬいぐるみ警部 (創元推理文庫)

回想のぬいぐるみ警部 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: Kindle版



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探偵が腕貫を外すときー腕貫探偵、巡回中ー [西澤保彦]

まずはアマゾンさんの紹介ページから。

毎年、同日同刻に鳩の死骸と人の死に直面する配送員の運命は?
被害者の夫は、なぜ殺人の罪を被ったのか?
契約中の駐車場が、なぜ不特定多数のドライバーに無断駐車される?
公務員探偵“腕貫さん”が、市民が持ち込む事件の謎を鮮やかに解く。
そしてグルメ仲間である女子大生・ユリエのピンチには…。
単行本未収録1編を加えた文庫特別版。

腕貫を外すとき、とタイトルに入っていて、
どこか本気を出すのか的な感じを受けていたのですが、
単にオフの時に相談を受けるというだけで(笑

異色作は「セカンド・プラン」
腕貫さんは葬儀場とあることから、おそらくは「秘密」相談の真っ最中。
ユリエの何気ない一言から、氷見刑事が一気に謎を解き明かします。
腕貫さん不在の時でも、櫃洗市には有能な警察が出てきて良かった。

シリーズお馴染みの作品としては「贖いの顔」と「秘密」。
特に後者は真相がわかる人物が存命していない状況下、
腕貫さんの推理で、市民の抱えた悩みを解決する。

腕貫さんの語った推理が当たっているかどうかはともかく、
主人公・佐浦の悩みは解決されたようですし、ある意味本シリーズの
王道作品ではないでしょうか。

愁眉は「いきちがい」、タイトルが全てと言ってもいいくらいの作品。
このあと待ち受ける展開まで記載されているのもまたおもしろい。

次作も待ち遠しい。


探偵が腕貫を外すとき (実業之日本社文庫 に 2-8)

探偵が腕貫を外すとき (実業之日本社文庫 に 2-8)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/06/03
  • メディア: 文庫



探偵が腕貫を外すとき 【電子特別版】 腕貫探偵

探偵が腕貫を外すとき 【電子特別版】 腕貫探偵

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: Kindle版



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ぬいぐるみ警部の帰還 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。


殺人現場にぽつんと遺されたぬいぐるみ。そのぬいぐるみは、いったい何を語る? 
イケメン警部・音無美紀の密かな楽しみは、ぬいぐるみを愛でること。
遺されたぬいぐるみから優れた洞察力で、事件解決の手がかりを発見する――。
そして、男勝りの言動の一方で音無にぞっこんの則竹女史。さらに実はミステリおたくの江角刑事や、
若手の桂島刑事など、個性派キャラクターが脇を固める連作短編集。
「お弁当ぐるぐる」(『赤い糸の呻き』所収)で初登場した、
音無&則竹コンビが遭遇した不可能犯罪の数々。
〈ぬいぐるみ警部〉シリーズ、記念すべき第1弾。

「赤い糸の呻き」に収録された「お弁当ぐるぐる」は、音無警部デビュー作
ですが、それが書かれたのは2003年。それから10年して、本作が生まれました。
元々シリーズものとして執筆するつもりではなかったようですが、
10年の時を経て、続編が描かれるというのは結構すごい事だなあと。

本書収録作品は、音無警部やその部下たちの活躍もそうですが、
事件そのものがどれも実に異色な事件ばかり。

背景の構造は非常に似ているものの、
その結末はかなり異なる「類似の伝言」と「誘拐の裏手」。
前者は平和達樹は自らの希望を叶えましたが、
それによって彼女を不幸にすることまでは考えつかなかったものか。

後者は丘岬富美子のある意味では運が悪すぎたと言える「運の良さ」
が招いてしまった悲劇。

「レイディ・イン・ブラック」は被害者を巡る人間関係や彼の抱えていた
悩みが明らかになっていきますが、犯人はまさに意外な人物。

すでに今月には続編も刊行される予定です。
ますます警部とその部下たちの活躍が楽しみです。


ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)

ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/05/11
  • メディア: 文庫



ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)

ぬいぐるみ警部の帰還 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: Kindle版



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小説家森奈津子の華麗なる事件簿 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

百合からSFまで幅広いジャンルで活躍する美人作家・森奈津子。
彼女の周りで事件が多発する。無人島で男性が殺された?
宇宙人にすけべな依頼をする男の運命は?
亡くなった少女との再会を願う女性の本心とは…。
どんな“不思議”にも動じない奈津子が驚くべき推理を披露!
読めば誰もが過激でエレガントな彼女に夢中になる、笑撃の傑作ミステリー!

純粋にミステリだと感じたのは、「なつこ、孤島に囚われ」
結末も結構ひねりがきいていておもしろいです。

本作品集はどのように読めばよいのか、を考えるのが
一番のミステリなのではないかと思いました(笑
西澤さんの「あとがき」含め、収録作品はメタ的要素や
作者の願望が色濃く出ているのか・・などなど。
深くその点を考えていけばかなり魅力ある作品集になりそうですが、
普通に読むと、表題にある「事件簿」とは乖離しているので、
肩すかしをくらう人が多数ではないでしょうか。

宇宙人と名乗るシロクマのぬいぐるみが最も謎だ。


小説家 森奈津子の華麗なる事件簿 (実業之日本社文庫)

小説家 森奈津子の華麗なる事件簿 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2015/04/04
  • メディア: 文庫



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幻視時代 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

撮影時点の四年前に亡くなっていた同級生が写りこんだ古い写真。
これは心霊写真か、それとも…?同じ文芸部から美少女高校生作家として
鮮烈なデビューを飾った彼女の、突然の怪死には、何が隠されていたのか。
二十二年後に集まった部員たちによる怒涛の推理合戦が、いま始まる!

写真に写りこんだ4年前に亡くなった同級生。
彼女は何かを伝えるために、あの世からやってきたのか?!
矢渡利悠人と生浦蔵之介の二人はその写真を視て愕然とする・・・

各章に「幽」と言う文字が入っていたり、
オカルト的な展開をほのめかす「プロローグ」等、
ミステリなのか?と思いがちですが・・・実は、という作品(笑

22年前、18年前、そして現在と時間軸が移動しつつ、物語は
進んでいきます。

ラストの3人による謎解きが見事。仮説に仮説を提示し、
推敲し、反論され・・・と推理に推理を重ねて、
真実に近づこうとしていきます。
この謎解きの過程が実に丁寧かつとても魅力的な展開で、
さすが西澤先生。

ただ写真の少女の正体への仮説はやや弱い気もしますが、
読んで損はしない作品。


幻視時代 (中公文庫)

幻視時代 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/09/20
  • メディア: 文庫



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赤い糸の呻き [西澤保彦]

西澤保彦さんのノン・シリーズ短編集。

『パズラー』や『動機、そして沈黙』とノン・シリーズはこれまで読んできていて、
東京創元社からついにか!となんだか少し興奮して購入した記憶があります。


「お弁当ぐるぐる」はぬいぐるみ警部シリーズの一編。
というよりも、本作からこのシリーズが生まれた事になるのでしょうか。
ミステリですが、登場人物たちが明らかに殺人事件より別の事を考えていて(笑)
そこがおもしろい。

「墓標の庭」は都筑道夫先生に捧げるオマージュ第2弾。
みごとな物部太郎が描かれていて、本当に素晴らしい。
事件の謎もとても巧妙で、楽しめました。

「赤い糸の呻き」はホラーな要素も含んでいて、
ラストで物語そのものが反転するんですね。
事件そのものと、この物語と2つの話が楽しめます。

本書所収作はどれもオススメなのですが、「対の住処」をあえて推したい。
ラストは謎を残したままですが、この事件はとても常人では解決できんだろうなあというのと、
主人公のコンビが良いです。
シリーズ化を望みたい。
最初に主人公がある既視感に襲われる場面があるのですが、
これが実は事件の(おそらく)真相に大きな役割を果たしているという
所がまた見事で、さらにその先で語られる真相がまた怖さがあるんですね。
表題作もひねりが効いていて、それでいて物語ともろに関係してくるので、
西澤さんてすごいなあと思いました(苦笑



赤い糸の呻き (創元推理文庫)

赤い糸の呻き (創元推理文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/21
  • メディア: 文庫



赤い糸の呻き

赤い糸の呻き

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/21
  • メディア: Kindle版



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必然という名の偶然 [西澤保彦]

櫃洗市市民サーヴィス課に勤務する<腕貫>さん。
彼は「残業中」ラストにてどうも出張なのか、休暇なのか、
不在にする旨の発言をしています。

それを受けての「モラトリアムシアター」であり、
本書になるわけです。

「エスケープ・ブライダル」は筒井康隆氏の「富豪刑事」(しかもTV版)
へのオマージュな作品。
大富豪探偵月夜見ひろゑが活躍するシリーズ。
しかし、動機がトンでもない話ではあるよなあ・・・
本作はそのまま後日談的な最終話「エスケープ・リユニオン」

作品全てが魅力的で、「奇妙な味」を持っていますが、
「偸盗の家」なんかは叙述トリックかと思いきや・・・ですし、
本書表題作「必然という名の偶然」はまさにタイトル通りの作品。
物事とは見る視点を変えると、180度中身が変わるお手本のような作品です。

さてこれだけ櫃洗市で次々と事件が起こってしまうとなると、
大富豪探偵月夜見ひろえが居るとはいえ、持て余してしまうでしょう。
そろそろ腕貫さん、出張から帰ってきてもらいたいものです。


必然という名の偶然 (実業之日本社文庫)

必然という名の偶然 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 文庫



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パズラー 謎と論理のエンタテイメント [西澤保彦]

西澤保彦さん再び。
本作オススメは「贋作「退職刑事」でしょう。
都筑さんの作品を読んでいるかのような錯覚にとらわれました。
起承転結、あまりに見事に出来ています。

「蓮華の花」は亡くなったと聞かされていた同級生
が実は生きていたという不可思議なお話。
なぜ主人公は彼女が亡くなったと思っていたのか?
その謎が明らかになる時、悲しくもありどこか幻想的でもあります。

全6編、どれも多彩でとてもおもしろいです!


パズラー 謎と論理のエンタテインメント (集英社文庫)

パズラー 謎と論理のエンタテインメント (集英社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/09/20
  • メディア: 文庫



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動機、そして沈黙 [西澤保彦]

西澤保彦さんのノン・シリーズ短編集第2弾。
「腕貫探偵」の作風とはまた違った西澤さんが楽しめます。

時効直前となった「平成の切り裂きジャック」事件、
定年目前の刑事がふと妻と戯れに推論を重ねていくうちに、
とある恐ろしい推論が導き出される・・表題作「動機、そして沈黙」

表題作は安楽椅子探偵モノに近いですが、
真相は結局わからず、この刑事にとっては一生嫌な思いを
持ち続けていくことになるんでしょうねえ・・・

「未開封」「九のつく歳」は妄執に括ってよいのかなあ。
特に後者はどこからどこまでが現実なのか、判別が難しい。
主人公のストーカーが結果的には事件を暴き出すという皮肉。

読了後、「パズラー」も購入しました。
こちらもそのうち掲載予定。



動機、そして沈黙

動機、そして沈黙

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/07
  • メディア: 単行本



動機、そして沈黙 (中公文庫)

動機、そして沈黙 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫



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腕貫探偵、残業中 [西澤保彦]

業務時間外でも、市民の皆様からの訴えに
耳を傾け、適切な助言を行う「腕貫」さん。
そして意外にもとてもグルメなのです。
時間外勤務の「腕貫」さんの活躍がみられる
シリーズ第2弾。

「青い空が落ちる」はかなり異色だと個人的には思いました。
シリーズ異色というよりも、本編の主人公が異色。
こういう考えをする人も居るのかという驚きですね。

「流血ロミオ」は・・・なんとも言えない結末。
真実を明らかにする事が必要かどうか。
この男子にものすごく同情しちゃうなあ・・・

「人生、いろいろ」は自業自得とざまぁな展開(笑
そして「腕貫」さんは出張のため登場しません(笑
すべて主人公が「腕貫」さんの自称彼女(?)からの一言で
推理を組み立てます。

さてつらつらと書いてきましたが、
本作愁眉はダントツで「体験の後」
あの短い時間で全てを見抜いた「腕貫」さんはさすがすぎる。
前作に登場した氷見刑事も再登場(この後も登場します)
結末はハッピーエンドに近いものですが、
「腕貫」さんの最後の言葉は自虐なのか皮肉なのか?!(笑
こんな公務員ならば近くに居てほしいです。


腕貫探偵、残業中 (実業之日本社文庫)

腕貫探偵、残業中 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫



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腕貫探偵 [西澤保彦]

西澤保彦さんの著書は初めて。
裏表紙の内容紹介を読んで購入を決めました。
が、これは正解だった。楽しめました。

市役所の1スペース、病院の一角、はては警察署まで・・・
次のような張り紙があり、一人の男が座っている。

市民サーヴィス課臨時出張所
櫃洗市のみなさまへ
日頃のご意見・ご要望、なんでもお聞かせください
個人的なお悩みもお気軽にどうぞ
                           櫃洗市一般苦情係

相談者はみんな不審がるものの、いつの間にか
悩みを相談してしまう。
そして腕貫さんがその謎へヒントを出す。
安楽椅子探偵なんですが、やはり存在が不気味で、
なんだか「隅の老人」を思い出しました。
腕貫さんへ相談されるのはいわば「奇妙な謎」
これを腕貫さんがいかに合理的に、推理していくか、そこが
一番の読み所です。

登場人物でハッピーエンドを迎える二人が居たのが良かったなあと。
それと、これは個人的にすげえなあと思ったのですが、
第1話の主人公・蘇甲純也は名探偵の素質あり(笑
腕貫さんは「診察券が自室にあったかどうかがポイント」と言う、
一見?なアドバイスをするのですが、
そこから蘇甲くんは一気に事件を組み立てて、刑事に推理を披露します。
第1話にして、腕貫さんに引けを取らない探偵が登場するとはと思いました(笑

しかしこの腕貫さん、存在はしてるんだよねえ・・・
感情は一切感じられないので、実に不気味な存在です。
ただ、解説を読むとなんと続編があるそうで、これは楽しみです。
早く文庫化してくれ~

というわけで、本年は本紹介はこれがおそらく最後です。
明日は「ぼくのこのミス2011」を書く予定です(笑


腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

腕貫探偵 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2011/12/03
  • メディア: 文庫



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