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白の恐怖 [鮎川哲也]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

軽井沢の豪奢な別荘「白樺荘」に、莫大な遺産を相続することになった四人の男女が集まった。
だが、生憎の悪天候で雪が降りしきり、別荘は外とは連絡が取れない孤立状態になっていた。
そこで、一人、また一人と殺人鬼の毒牙にかかって相続人が死んでいく…。
本格推理の巨匠が描いた密室殺人。発表から六十年近い年月を経て、初めて文庫化される幻の長編!

以下、少しネタバレがあります。



事件の内容はともかく・・・星影龍三は全くブレません(笑
これこそ、私が見たかった星影龍三だ。
しかも本人はわずか数ページにしか登場せず、一言も言葉を発さず。
それでいて、相変わらず態度がやたらでかく、嫌みな感じがするという(笑
そして「りら荘」同様、佐々弁護士の手記のみから事件の真相を看破するという
神業も見せてくれます。これぞ星影龍三の真骨頂ではないでしょうか。
もっともその推理をしゃべるのは田所警部なのですが(笑



雪の閉ざされた山荘というテーマに真正面から挑んだ御大の作品。
手記という体裁を取っているからか、佐々弁護士の人間観察が面白いです。
なので「白樺荘」へ着く前までの方が好きかもしれません。
ただこの事件の前置きともいえる箇所にも、もちろん事件解決の大きな
ヒントが隠されているのですが。

本書最大の難点は、このトリックがこの短期間で成り立ち得るのかどうか、でしょう。
篠崎ベルタと丸茂助手を殺害した時点で、犯人にとってかなり危ない状況には違いないのです。
(山荘にラジオのみというのが幸運?)
そして山荘に大雪で閉じ込められる、というのも偶然の産物に過ぎず、
もし大雪が降らなければ即座に見破られていたことでしょう。
この点は犯行をどのように行うつもりだったのか?という事も関係してきます。

また、わざわざ一カ所に集めずとも、相続人の連絡が来た時点で、
そこへ出向き、各人を殺害する方が、犯人にとっては遙かにリスクが低いのです。
解決編のところで、この危ない状況を回避する手立てを、ずいぶん前からしていたことが
述べられるのですが、この点を完璧に行っていれば、このトリックは成就したんですけどね。

あとがきにもありますが、改稿された未完の長編「白樺荘事件」は
遺産相続人探しが交代されているようですが、それ以外で、鮎川先生はどこをどう変えようと
していのか、それが読めないのは残念ではあります。
探偵役は星影龍三続投は間違いないと思いますが(笑




白の恐怖 (光文社文庫)

白の恐怖 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/08/08
  • メディア: 文庫



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翳ある墓標 [鮎川哲也]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

トップ屋集団「メトロ取材グループ」の杉田兼助は、同僚の高森映子とともに
銀座のキャバレーで取材をするが、協力した映子の友人のホステスが屍体となって発見された。
警察の自殺判定に納得がいかない映子は独自に調べ始めるが、彼女も殺害されてしまう―。
本格ミステリ界巨匠の異色作品。
読み継がれるミステリファン必読の短編「達也が嗤う」を特別収録。

鮎川御大の作品は光文社文庫から出ている「完璧な犯罪」「アリバイ崩し」などの
ベストミステリー短編集、さらには「朱の絶筆」や創元推理文庫で復刊した
「りら荘事件」(後に角川文庫でも発売)などの星影龍三シリーズをこれまで読んで来ました。

本書はノン・シリーズものではありますが、今月8日、あの幻の名作「白の恐怖」が
やはり光文社文庫から発売されたのを機に、同時購入しました。
以下、ややネタバレあり。



ノン・シリーズものですが、個人的には快作です。
いくつものアリバイトリックと、鬼貫警部のアリバイ崩しを彷彿とさせる構成。
そのアリバイ崩しもアンフェアでなく、論理的思考で説かれていくある種の美しさ。

個人的に好きなのは、途中の謎の転換です(という表現で良いか微妙ですが)。
元々、映子は友人であるホステスのひふみの自殺に納得できず、他殺の疑いを持って
事件の取材(捜査)を始めますが、その映子が殺害され、「探偵役」が同僚の杉田へ
バトンタッチされます。

映子も杉田もひふみの恋人に行き当たり、彼女の死の真相を聞かされます。
ところが、ここで物語は終わらないのです。
映子はその先に何を見つけたのか?そしてなぜ彼女が殺されたのか?
ひふみ殺害の犯人から、映子殺害の犯人へと謎が引き継がれるのです。
(大きな意味ではひふみの殺害犯と映子殺害犯は同一ではありますが、あえてここは独自解釈)

本書は異色作、通俗小説とありますが、そんなことはありません。
読者へは謎を解く鍵は全て示され、多重のアリバイトリックなど、まさに本格推理。

あえて難点をいえば、犯人が明らかになるところでしょうか。
ここがあまりにもあっけなかった。突然の終幕といった感じでしょうか。
真犯人、というのが良いのかわかりませんが、やや蛇足だったような気もします。

ところで、御大のあとがきでは、ある事情によりプロットを大幅に変更することになった、
とあるのですが、これはどういう事情だったんでしょうか。
そして元々はどんなプロットだったのかとても気になりました。

もう一つの収録作「達也が嗤う」は犯人当て小説。
元々は日本探偵作家クラブの例会で朗読された作品で、後に小説化したもの。

本作についてはもはや語るまでもなく傑作です。
この短編の中に、これでもかと謎とそのヒントを詰め込み、あくまでもフェアに
事件を解決できるという素晴らしさ。
その表題作までヒントが隠されているというこだわりはさすが本格の鬼。

余談ですが、犯人よりもある人物が男だという事の方が難しいと思います(笑

次は「白の恐怖」を読みます!



翳ある墓標 (光文社文庫)

翳ある墓標 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫



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アリバイ崩しーベストミステリー短編集ー [鮎川哲也]

鮎川哲也さんのノン・シリーズ短編集。
新聞社の記者が鉄壁のアリバイを崩しにかかる「北の女」、そして「下着泥棒」

この2つの作品は非常に対照的で、
探偵役がアリバイを崩しているのですが、後者は後味悪し。

「霧の湖」がオススメ。
ちょっと前に話題になった源泉掛け流し、偽温泉の話題を思い出しました。
しかしこの作品での探偵役が一番好きだなあ。
よくまあこのトリックを見破ったと。


アリバイ崩し―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

アリバイ崩し―ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/05/12
  • メディア: 文庫



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謎解きの醍醐味ーベストミステリー短編集ー [鮎川哲也]

鮎川哲也さんのノン・シリーズ短編集。
探偵役となる人物たちが事件の謎を見事に解く、ミステリーの醍醐味が
詰まった一冊、と裏表紙には書かれていますが、
確かに謎は解くのですが、どの短編もそれだけでは終わらない所がポイントです。

オススメは「矛盾する足跡」と「塗りつぶされたページ」
前者は共同購入した別荘で起きる殺人事件。
探偵役は推理小説家。
殺人が起こるまでの描写がおもしろく、その描写があるからこそ、
探偵役が輝きます。

後者は妻を殺された夫が探偵役。
貿易商に勤務していたと思っていた妻が実はゆすりをやって稼いでいた
事を突き止めた夫は、殺された理由が妻の遺した日記、
「塗りつぶされたページ」にある事まで突き止めるが・・・
殺された妻の謎が徐々に明らかになっていく所が好きですね。

鮎川さんのは星影龍三シリーズが好きなのですが、
ノン・シリーズ短編も実におもしろい。
今後もまた購入したいです。


謎解きの醍醐味: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

謎解きの醍醐味: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/10/12
  • メディア: 文庫



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完璧な犯罪 [鮎川哲也]

鮎川哲也さんのノン・シリーズは初。
「完璧な犯罪」を目指した犯人たちの視点からの物語。
倒叙ミステリというものです。

タイトルの完璧な犯罪は収録短編集を読むと
皮肉にしか聞こえません。
どの作品も「本格と呼ばれる推理小説」を膨大に読んで、
そこからアリバイトリックをひねり出します。
しかし、予想だにしない所から自ら墓穴を掘ることになってしまう
のです。
オススメは「わらべはみたり」、これは惜しかった。
ほぼ見事なトリックかと思いましたが、
本当に意外な所から犯罪が発覚してしまいます。

鮎川先生の短編集、まだまだありますので、
これからも読んでいきたいと思います。


完璧な犯罪: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

完璧な犯罪: ベストミステリー短編集 (光文社文庫)

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/05/14
  • メディア: 文庫



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消えた奇術師 [鮎川哲也]

お知らせしたように、星影龍三シリーズです(笑
今回は「密室」に限りなくこだわった作品集ですねえ。

「赤い密室」はお見事な出来映え!なのですが、
本格ミステリマニアや読み慣れた方であれば、このトリックはある程度
見抜けるのではないかなあと思いました。
ただ、単なる「アノ」トリックは見抜けても、この計画を立てた犯人の複数の伏線があったからこそ
このトリックが成り立っているわけですね。

個人的には「白い密室」が好きです。
全く不可能なような感じがしつつ、実はかなりあっさりしてました。

「密室」といってはいますが、いわゆる凝ったトリックというのは出てこない、そんな気がしました。
言ってみれば、盲点をつく、あるいは心理的トリック、そういうのを用いた「密室」トリック
が散りばめられた短編集ですね。

消えた奇術師  星影龍三シリーズ

消えた奇術師 星影龍三シリーズ

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/04/12
  • メディア: 文庫


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悪魔はここに [鮎川哲也]

光文社文庫から出ている鮎川哲也コレクション、星影龍三シリーズ。
ぼくはついつい失念していて、このシリーズ、四月にも出てたんじゃないですか!
ガーンですよ(>_<) なので、そちらのほうはそのうち書くと思います。 オススメは「薔薇荘殺人事件」 この作品、最大のトリックは叙述トリックです。しかも最もおもしろいのは「作者からの挑戦状」 この作品を最後まで読むと何のことかわかるのですが、やられました(笑 この作品には推理作家の「鮎川さん」が登場します(笑 どの作品でも扱いがトンデモナイことになってます。 友人の星影にもバカにされ、格好いい「鮎川さん」を期待します!

悪魔はここに

悪魔はここに

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 文庫


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朱の絶筆 [鮎川哲也]

鮎川哲也コレクションとして光文社文庫から刊行されました。
僕自身は鮎川さんは二冊目、そして待望の星影龍三シリーズです。

元々短編だったモノを大幅に増やして長編に。
ただトリックや犯人は変わってないようです。

篠崎豪輔というベストセラー作家が暮らす軽井沢の別荘に集まった人々。
その集まった人々は誰もが篠崎を殺す動機を持っていた。
そんな中起こる殺人事件、そしてそれは連続殺人へ・・・
はたして犯人は誰なのか?名探偵星影龍三が見事なまでに解明します。

各人が持つ「動機」の部分が書き足された第一部としてあります。
これだけでもかなりの分量ですが、この序章とも言える第一部のおかげで
第二部への殺人事件へスムーズに入っていけました。

星影龍三は短編版では姿をみせますが、なんと長編版ではその場にすらいません(笑
事件資料を見て、謎解き前に簡単な質問をするだけ。やっつけ仕事のように謎を解きます(笑
傲慢というのか、事件そのものに興味がないのか、彼はすごいなあ。

そしてこの小説は犯人当て小説となっていて、読者への挑戦が途中で入ります。
前も書きましたが、そういうのは大の苦手なので(苦笑)この物語全体を楽しみましたが^^;

「りら荘」はすでに創元から出てますが、改めて光文社のコレクションに入るのかもしれま
せんねえ。
星影龍三シリーズは本書が初のコレクションですので(それまでは鬼貫警部のみ)
次の発売が楽しみです!

朱の絶筆  星影龍三シリーズ

朱の絶筆 星影龍三シリーズ

  • 作者: 鮎川 哲也
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/02/08
  • メディア: 文庫


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りら荘事件 [鮎川哲也]

創元推理文庫から此度出ました。
読みたくて仕方なかったので、とてもうれしかったです。
以下ネタバレです。

僕は内容は全く知らなかったので、「名探偵」が初めからその場に存在せず、
安楽椅子探偵的なものであることがちょっと驚きでした。
殺人現場にはトランプが落ちている、そして殺害方法がそれぞれ違う、
などはまさに現在の本格ミステリにも通じるところがあるんじゃないか、
と勝手ながら思いました。
特にトランプを置いていくことで殺害順をミスリードする心理トリックは見事です。
色覚異常、というものがこのミステリの大きなポイントでもありますが、
さほど違和感は感じませんでした。犯人によるやはりミスリードさせる発言
があったりしたので、意外とすんなり受け入れられました。

驚き、というかあまり他のものに見られないのは「名探偵」のリレーでしょうか。
最初の「名探偵」が本当にそうであったかはわかりませんが、
ちょっとシリーズ探偵にしては性格が悪すぎるとは思いました。
倉知淳さんの「星降り山荘」の「探偵役」をちょっと思い出しました。

星影シリーズはまだたくさんあるのか分からないのですが、
是非とも再び文庫化していってもらいたいものです。


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