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ハートフル・ラブ [乾くるみ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。
交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、
一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって――
(書き下ろし「数学科の女」)

他に、突然の余命宣告を受けて結婚を決意した夫婦を描く
「夫の余命」(日本推理作家協会賞候補)や、アイドルの握手会をまさかのミステリに仕立てた
「なんて素敵な握手会」など、
どんでん返しの名手の技が冴える珠玉のミステリ7篇収録。


乾くるみ先生の御著書はいつ以来だろうか・・・もしかしたら、
林三兄弟シリーズの『六つの手掛かり』以来では。

表題作の作品はありません。
これはまあ、『このミス』だったか、『本格ミステリ』だったかでも
語られていましたが、出版社と相談の上、決定したとあった気がします。
『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』に続く、という感じなんでしょう。


最初の「夫の余命」はさすが乾先生という、仕掛けが施してあります。
これが最初というのが良い。
「同級生」は少し儚い・悲しい物語。短いながらも読ませます。
一番面白いのは「消費税狂想曲」。これは社会風刺がきいていながら、
しっかりミステリという、何か政府に翻弄される国民で、それが殺人まで・・・(苦笑
なんていう妄想まで膨らませてしまいました。

「九百十七円は高すぎる」は、乾作品では珍しいのでは?
一瞬西澤保彦先生降臨かと思いました(笑
しかし、この金額から何を購入したのかを推理するという、日常の謎ですが、
それだけに留まらず、先に述べたように、そのコンビが西澤作品的という。

「数学科の女」
恐るべき米原さん。そして本編で語られるのは、殺人計画やDNA鑑定への備え
さらには殺人教唆まで、とにかく米原さんは先の先の先まで考え抜いています。
本来であれば、恐るべき話になるのですが、語り手である箕浦の、どこか飄々とした
態度やラストの終わり方などから、そう恐ろしい話には感じられないのです。
そこがまた恐ろしいのかもしれませんが。

林三兄弟の活躍もまた久々に読みたくなりました。


ハートフル・ラブ (文春文庫)

ハートフル・ラブ (文春文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/12/06
  • メディア: Kindle版






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六つの手掛り [乾くるみ]

完璧なまでのロジック。
シャーロック・ホームズの名言
「ぼくは以前からひとつの信条を持っています。
完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、
いかにありそうにないことでも、事実に間違いないということです。」
これを思い出しました。

個人的に近いなと思ったのは火村英生の詰め将棋のような推理。
特に顕著なのは「スイス時計の謎」ですね。
本書の探偵役・林茶父はまさに論理・そして上記ホームズの
言を地で行く探偵にほかなりません。

どの事件も、本当にいわば誰が犯人なのか?
に重点が最大限置かれ、他の動機etcはほとんど語られず
物語は幕を閉じます。それがまた印象に残ります。

やや例外を言えば、林茶父の過去が語られる「五つのプレゼント」
どこか茶父が寂しそうに感じます。

しかし「女か虎か」が出てきたり、いやあ、楽しめました。
一巻の終わりは、完全にダジャレ。
いや上手くは出来てますけど。



六つの手掛り (双葉文庫)

六つの手掛り (双葉文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2012/03/15
  • メディア: 文庫



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林真紅郎と五つの謎 [乾くるみ]

乾さんの作品は初読。

林家の四男・真紅郎が遭遇する「五つの謎」
「シンクロする・・・シンクロする・・・」が彼が真相を見抜く時の呪文(?)です。

どの謎も魅力的な謎ばかりで、オススメを挙げるのが非常に難しい!
彼自身の境遇とも重なり、最後は実は謎が残る「陽炎のように」

自分自身が作成した暗号を間違えて解き明かしたのに、
それが逆に功を奏す「過去から来た暗号」
これは内容もそうですが、このタイトルが秀逸。

最近では「六つの手掛かり」で林家の三男・茶父が活躍するようで、
これからもまだまだ楽しませてくれそうです。




林真紅郎と五つの謎 (光文社文庫)

林真紅郎と五つの謎 (光文社文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/10
  • メディア: 文庫



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