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濱地健三郎の幽たる事件簿 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

江神二郎、火村英生に続く、異才の名探偵の事件簿、待望の第2弾!

年齢不詳の探偵・濱地健三郎には、鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。
新宿にある彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の
強面刑事も秘かに足を運ぶほどだ。助手の志摩ユリエは、得技を活かして、
探偵が視たモノの特徴を絵に描きとめていく―。郊外で猫と2人暮らしをしていた姉の失踪の謎と、
弟が見た奇妙な光景が意外な形でつながる(「姉は何処」)。資産家が溺死した事件の犯人は、
若き妻か、懐具合が悪い弟か?人間の哀しい性が炙り出される(「浴槽の花婿」)など、
驚きと謀みに満ちた7篇を収録。ミステリの名手が、満を持して生み出した名探偵。
待望のシリーズ、第2弾!


江神二郎、火村英生に続く、というところに違和感を持ってしまいました(苦笑
(作品と関係無く、すいません。)
ソラもいれば、地蔵坊(笑)も居ます。

とはいえ、火村英生シリーズから派生して、こうして探偵役が登場するというのは
これまでには確かに無かったですね。
島田荘司先生の、犬坊里美とか意識してたりとかあるんでしょうか。

本作所収で最もホラーなのは「それは叫ぶ」
ホラー小説はあまり読んだことが無いのですが、基本的には「論理じかげの奇談」でも、
合理的解釈も成り立たないものが、ある意味一番怖いのではないかと思います。
なので、最も恐ろしいのは、こうした正体不明の、濱地のいう「幽霊の屑」ではなかろうか。

解説にもあるように、本作はホラー小説ながら、探偵小説でもあるんですよね。
濱地の持つ不思議な能力のみならず、探偵能力もしっかりと発揮されているんですが、
上記の作品のみは、全くそんなことは無いので、探偵小説として考えた場合、
極めて異質な作品ですが、心霊探偵シリーズとしてみると、ついに来たとも思えます。

「ホームに佇む」もやや似た印象のある作品です。
依頼人の吉竹と、怪奇を結びつける「合理的」理由は無く、彼が「視えた」から。
実際そのくらいの理由なんでしょうね。よく視えても、視線を合わせるなとか
聞いたりします。

そこをいくと、「お家がだんだん遠くなる」「ミステリー研究会の幽霊」は
しっかり探偵小説です。理由もしっかりあり、終わり方もよい。

ミステリー的な要素を一番含んでいるのは「姉は何処」でしょうか。
私一番のオススメです。
姉(の思念)の行動を見て、見事な名推理をみせる濱地と
一番のホラーを体験してしまった助手のユリエ。
最後の1行は中々怖いですよね。

直球の怖さではなく、変化球的怖さなのが「浴槽の花婿」
これは意表を突かれました。
犯人を言い当てるでも無く、アリバイを崩すでもなく、確かに幽霊的なものが
語っていることを濱地は刑事に伝えますが、それだけ。
その後の記述で、読者は犯人がわかるも、あの幽霊的な思念の正体も判明するラストは
「それは叫ぶ」とは全く違う、ゾクゾクする怖さです。

すでに第3弾も刊行されているようで、またまた楽しみですね。
しかし、語呂合わせの良い電話番号って何番だろうか?(笑


濱地健三郎の幽たる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の幽たる事件簿 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/01/24
  • メディア: 文庫






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論理仕掛けの奇談-有栖川有栖解説集 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

一生に一度は読みたいミステリがここに。ファン必携のミステリ・ガイド!

クリスティー、クイーンなど、海外の古典的名作から、松本清張、綾辻行人、皆川博子、
今村昌弘など日本のミステリまで……。新しい才能への目配りを常に忘れない、
本格ミステリのプロフェッショナルが愛をこめて執筆した、国内外の名作に寄せた解説集!
優れたミステリ・ブックガイドとしても最適の1冊。単行本刊行後に新たに執筆した解説3本と、
杉江松恋との読書対談も加えた文庫増補版。

このタイトルは、泡坂妻夫『毒薬の輪舞』に付けられたタイトルです。
泡坂先生は「探偵小説とは探偵小説の技法を使って作られている小説」であり、
「その技法というのは、読者に奇談を納得させるための一つの技術である」と書いており、
有栖川先生は、「ここでいう探偵小説とは本格ミステリのこと」で、と追記した上で、
本格ミステリとは<論理仕掛けの奇談>なのだ、と。
有栖川先生は、辞書にない怪しげな日本語と言いますが、これほど的確な言葉は
ないでしょう。
『死者の輪舞』と同じ探偵役にもかかわらず、これほどまるで違う作品を編み出し、
かつ、この『毒薬の輪舞』の、見事なまでの伏線の張り方、手がかりの残し方、
それが泡坂作品群では佳作であると評されている、ある意味贅沢ですよね。

本書タイトルにこれをもってきたのは、有栖川先生にとって思い入れが相当強かった
のでしょうかね。

しかし和製クイーンである有栖川有栖を思うと、やはりエラリー・クイーン&バーナビー・ロス
の2作は外せませんね。
『Xの悲劇』と『ローマ帽子の謎』の解説は流石、同書は「これぞ不朽の名作」と冠されています。

個人的に、読みたいと思ったのは吉村達也先生の『[会社を休みましょう]殺人事件』。
同書のです・ます調に合わせて、解説も同じになっているのですが、
これが書かれた時代背景も合わせ、復刊した時代背景も合わせ、気になりましたねえ。

紹介されている作品はジャンル含め多種多様。解説を読んで、実際にその本を
読むというのも、本選びとして良いのでは。


論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/03/23
  • メディア: 文庫







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こうして誰もいなくなった [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

仮想通貨で成功した若き大富豪に招待された10名の男女が、
"海賊島"で巻き込まれる不気味な連続殺人事件――クリスティの名作を大胆に再解釈した表題作
をはじめ、書店店長の名推理が痛快な「本と謎の日々」、肥大化した男の欲望と
巨大生物の暴挙に恐怖する「怪獣の夢」、遊び心に満ちたタイポグラフィが楽しい「線路の国のアリス」など多彩な14篇を収録。ジャンルを超越した物語世界の魅力を堪能できる、唯一無二の作品集!


ちょっと更新が空いてしまいました。
昨年発売された、有栖川有栖先生のノンシリーズ短編集。
少しネタバレ。






「線路の国のアリス」。実はこの本の前に読んでいたのが『アリスの国の殺人』で
なんという偶然!と思いました。
P.35のお遊びなど、まさに「不思議の国のアリス」でも、そして『アリスの国の殺人』でも
あり、「アリス」を舞台に、様々な異なるミステリが描かれていて、いやいや驚きました。
それだけに小林泰三さんの逝去が悔やまれてなりません。
最後、夢から醒め、現実世界に戻ったかのようなアリス、そこにはエキシャ猫と
白ウサギが・・・アリスは再び追いかけますが、果たしてこれはまだ夢の中なのか、
それとも「鏡の国」へ今度は向かうのか。少し余韻を残した終わり方もまた良いです。

「劇的な幕切れ」。これ短編ながら見事なミステリ。サスペンス、ホラーでも
あるのかもしれませんが、主人公のラストをどう考えるか?というのもあるのですが、
<パープル>というある種の趣味というか、そういうものを持つ人も当然ながら
居るのでしょうね。

「未来人F」は江戸川乱歩が生んだ「少年探偵団」シリーズのパスティーシュ。
解説だと、パロディとしてますが、やはりパスティーシュの方がしっくりくる気がします。
それは表題作も同じこと。

パロディとパスティーシュの違いは、確か『シャーロック・ホームズに愛を込めて』か
ジューン・トムソンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』の解説か、
何か書いてあったと記憶してます。

閑話休題。
この「少年探偵団」はいわゆる「通俗小説」になるのでしょうが、
有栖川さんがあとがきで書かれているように、小学生が夢中で読むのはよくわかります。
明智小五郎の登場のかっこよさも良いし、二十面相との対決も良い。
ただし、本作は最後にメタ要素があるのが少し捻ってますね。
(だからこそ、パロディと評したのかもしれません。)

「本と謎の日々」は大崎梢先生を読んでいるかのような錯覚を受けましたが、
それもそのはず。あとがきで書かれていますが、本作は『大崎梢リクエスト!本屋さんの
アンソロジー』所収作品。シリーズ化してもよい作品!

さて表題作「こうして誰もいなくなった」
いやあ、さすが有栖川先生。最後の「密室殺人」は見事の一言。
密室の中に死体を入れるという逆転の構図。『そして誰もいなくなった』パスティーシュ
としても第一級の作品ではないでしょうか。

それとやはり探偵役には触れない訳にはいきません。響・フェデリコ・航。
名探偵。<怪奇八十面相事件>を解き明かした、警察にも知られる人物。
ポワロをさらに奇抜にした感じにしたかの、星影龍三を私は思い出しました(笑
何で勝手にミドルネームを入れているんだwww
そして、なぜ事件が起きている事を知ったのだ?!
いいですねえ。彼の事件簿を作品にしてほしい。


解説では『殺しの双曲線』、『獄門島』、『パノラマ島奇談』といった作品への
オマージュも指摘していますが、なるほどと思いました。

『そして誰もいなくなった』の偉大さはもはや語るまでもありませんが、
『殺しの双曲線』に影響を受けて書いた、というパスティーシュも
あるかもしれませんね。



こうして誰もいなくなった (角川文庫)

こうして誰もいなくなった (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/11/20
  • メディア: Kindle版







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カナダ金貨の謎 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。
倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、
思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。
〈国名シリーズ〉第10弾。

新本格第1世代であり、今も新本格の旗手として走り続けている有栖川有栖先生。
国名シリーズもついに第10弾とは。読者としても感慨深いものがあります。

思えば初めて読んだのは『スウェーデン館の謎』だったと思います。
これ、長編なんですよね。国名では『マレー鉄道』『インド倶楽部』と、現時点では
3作のみで、中々珍しい作品から読み始めたなあと今更ながら思います。

表題作は、有栖川先生も仰るように、国名シリーズ初の「倒叙もの」(半倒叙)に
なっています。
火村シリーズの倒叙は、犯人が追い詰められていく心理描写が良いのですが、
本作の太刀川は、これまで以上に災難、いや自業自得ですが、そんな状態でしたね。
作家アリスがカナダ金貨に意味を見いだそうとするのが、推理作家らしさが出ていて、
とても面白く、一方で、真相は全く別のところにあるというのもさすがです。

いつも火村の推理は詰め将棋のよう、と表現を私はしていますが、「カナダ金貨」でも
火村からではないにせよ、アリスの口から犯人をいかに絞り込んだかが語られます。
流石の推理。1つ1つの事実を明らかにして、それら全てが当てはまるのは誰か。
相変わらず見事だなと思います。

個人的には「トロッコの行方」が白眉。
容疑者は相変わらず少なく、アリバイもほぼみな完璧。
従来であれば、ここから火村がいかにアリバイを崩していくのかが丹念に描かれますが、
本作は違います。唐突にスパッと、犯人を(婉曲的ではありますが)指摘します。

どうして火村は犯人がわかったのかなあ・・・書かれている動機はなるほどと言える
のですが、動機があるから、だけでは当然火村は指摘しないはず。
(解る方いらしたらご教示ください。私が読めてない、読み飛ばしているのかも・汗)

「あるトリックの蹉跌」は火村とアリスの出会いを描いた作品ですが、
願わくば、そのときアリスが書いていた小説も、次作あたりにぜひ収録を。

有栖川有栖先生、そろそろ<ソラ>シリーズ、お願いします!


カナダ金貨の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

カナダ金貨の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/08/12
  • メディア: Kindle版










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インド倶楽部の謎 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

生まれてから死ぬまで、運命のすべてが記されているという「アガスティアの葉」。
神戸で私的に行われたリーディングセッションに参加した“インド倶楽部”のメンバーが
相次いで殺される。前世の記憶を共有するという仲間の予言された死。
臨床犯罪学者・火村英生が論理の糸を手繰る“国名シリーズ”第9弾。

またまた久しぶりの更新です。
読書の秋!なんて書いてますが、以外と読めてないです・・・

そして久しぶりの国名シリーズ。エラリー・クイーンの短編集を読んだ後に、
日本のエラリー作品を読むという、贅沢な日常ではあります。

全く余談ですが、本書を勝手に短編集と思い込んでました(苦笑)
(あとがきで有栖川先生も仰っておられますが、火村&作家アリスシリーズは短編多し)
国名だと、『スウェーデン館の謎』と『マレー鉄道の謎』だけではないでしょうか。
なので、「第一章 神秘が語られる」を短編タイトルと勘違いしてました(汗)

しかし相変わらず容疑者が少ない!『狩人の悪夢』よりも多いですが、
作家アリス先生が命名した「インド倶楽部」メンバー複数名のみ。

アガスティアの葉、聖者アガスティアが全ての人々の運命を記したとされる葉で
「インド倶楽部」メンバー3名を占うナーディー・リーダーのラジーブ氏。
これがまた胡散臭い印象で、泡坂妻夫先生のヨギ・ガンジーを想像してしまいました(失礼!)

花蓮が聞いた父と母、間原郷太(マハラジャ)と妻・洋子の占い後の会話が
何かしらの事件を惹起させ、ラジーブ氏の代理人的立場であった出戸氏の死体が
発見されます。

23年前に起きた、間原郷太の前妻・寛子の事故死と、それを調べに行く野上部長刑事。
(全く余談ですが、土砂崩れによる死というのから、『後鳥羽伝説殺人事件』を思い出しました。)

読んでいる誰もがここに出戸氏と坊津氏殺害の動機があるものと思うのですが、
そこは有栖川先生。
動機という面から事件を解きほぐすのではない、これは『狩人の悪夢』でも火村が
披露した、詰め将棋のような推理ですが、本作でもこれは健在。
火村は、誰が二人を殺害できる、「犯人である条件を具えた唯一の人物」が
誰なのかを突き詰めていき、真犯人の逮捕(自白?)に到達します。
動機から辿っていくのではない。あらゆる可能性を排除していき、残った人物が犯人であるという
火村のまさに論理的推理の真骨頂です。

一方で、本作では単なる導入的なものとしか(私は少なくとも)思っていた「前世」という
「インド倶楽部」のメンバーを繋ぐ靱帯が、極めて重要な意味を持っていたというのが
個人的には本書最大の読ませどころと感じました。

ところで、本書では作家アリス先生が、これまでの火村の活躍の事件名を
勝手に命名していることを暴露していますが、メタ的な要素にも感じ、中々おもしろいですね。
しかも、これが事件を解く鍵にもしてしまうのは、さすが。

『カナダ金貨』の文庫化が待ち遠しいです。ソラシリーズもぜひ!


インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

インド倶楽部の謎 国名シリーズ (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/09/15
  • メディア: Kindle版



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濱地健三郎の霊なる事件簿 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

探偵・濱地健三郎には鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。彼の事務所には、
奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の刑事も秘かに足を運ぶほどだ。
ホラー作家のもとを夜ごと訪れる幽霊の目的とは?殺人事件の被疑者が同時刻に
複数の場所にいたのは、トリックか生霊か?生者の嘘を見破り、死者の声なき声に耳を傾ける
心霊探偵が、驚くべき謎を解き明かす。ミステリと怪異の融合が絶妙な、新シリーズ!

有栖川有栖先生には、
臨床犯罪学者であり、犯罪をフィールドワークとする火村英生。
英都大学推理小説研究会(EMC)の部長であり、4回も留年を繰り返す江神二郎。
南北に分断され、探偵行為が禁止された日本で、母の消息を追いつつ、事件を解明する空閑純。

この3人がシリーズ探偵を務めてきましたが、ここに4人目の探偵が登場しました。
それが心霊探偵を自称する濱地健三郎です。

あとがきで詳しく書かれているのですが、
事件の依頼人が階段を上って探偵の事務所へやってくる、ベーカー街221Bへ。
シャーロック・ホームズは依頼人が来るのを窓から眺めている・・・
そんな、まさに探偵たる探偵が本作の濱地健三郎。

ところが彼が扱うのは本格ミステリの対極にある怪奇・心霊など超常現象にまつわる事件。
(この点は詳しくは解説で書かれてます。)
しかも、警視庁捜査一課の刑事までも相談に訪れるという、これまた名探偵らしさも持ちます。
実に有栖川先生らしい感じもあります。

上記に書いたように、怪奇・心霊など超常現象を扱うとはいえ、
結構本格テイストも入ってます。
第1話「見知らぬ女」は、夫に憑いている女性の調査を頼む妻の話ですが、
このラストは第1話でこれとは驚きました。

本書の中で最も恐ろしいのは最終話「不安な寄り道」
この話はまさに怪奇。廃寺で起こっていたのは一体何であったのか。
濱地が以前に受けた依頼にも俄然興味がわきました。

積み重なった衝突やギスギス感から、このような行為に及んだと思うのですが、
さらにそこを深く知りたくなった「霧氷館の亡霊」
昂太くんには実際には視えていたのか、それとも「彼女」の配慮で、
誰かわからないようしていたのか、その辺りも気になりました。
この事件解決はかなり痛快で、最後に昂輔がランプスタンドを贈ったのは
本当の真相を濱地は彼にだけ話したからなのでしょうか?

心霊としてもミステリとしても一捻りが見事に効いている「分身とアリバイ」
そんな小説じゃあるまいし、というトリックを用いているのですが(笑
このトリックを非常にうまく活かした作品です。

いやどの作品もおもしろい。心霊的なら「寄り道」が愁眉。
ミステリとしては「分身とアリバイ」が愁眉かなあ。

すでに第2作目も発売されるということで、こちらも楽しみです。
有栖川先生、ソラシリーズもお願いします!


濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: 文庫



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狩人の悪夢 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「俺が撃つのは、人間だけだ」
臨床犯罪学者・火村英生と、相棒のミステリ作家、アリスが、
悪夢のような事件の謎を解き明かす!

人気ホラー小説家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、
京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。
そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。
しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、
白布施のアシスタントが住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、
右手首のない女性の死体が発見されて……。

以下ややネタバレです。







作家アリス&臨床犯罪学者・火村英生シリーズ文庫版最新作。
これまで国名シリーズも含めて、このシリーズ全て読んでいますが、
本作はシリーズ最高傑作ではないかと、個人的に感じました。

本シリーズの核は、ど派手なトリックや、どんでん返し、意外な犯人等々・・・
いまよく帯やポップで見る宣伝文句ではありません。
本当に綿密に組まれたロジック。そして火村英生の詰め将棋のような推理。
派手さはありません。しかし、推理小説として極めて完成度が高い。

本作では、被害者の右手首と左手首が切断されるという、極めて奇妙な謎が
提示されますが、火村に言わせれば、それも「散らかっているだけ」
そしてもうひとつ、火村の言をあげれば、
「動機については無視して考えました。これは私のいつものやり方です。」
と、解説の宮部みゆきさんも引かれている一言。

そう、あくまで火村は誰がこの事件を起こすことができたのか、
それを絞り込んでいくフィールドワークを丹念に行っていくのです。

今回も先ほど挙げた切られた手首や、最初の被害者沖田頼子が探していたものとは何か。
亡くなった渡瀬信也を巡る人間関係等々・・・いくつもの興味深い謎が提示されますが、
物語の核心はそれらではない(もちろん核心にせまるピースではあります)。

上記は僕が火村が犯人を名指しした推理の過程を読んで思ったことなのですが、
この過程はかなり驚きました。
犯人の絞り込み、実に極めてシンプルなのです。それは読者へも提示されていたのですね。
それだけに驚きが増しました。

しかるにそれだけでなく、犯人を追い詰める役が火村からアリスへ変わった所も驚き。
これまでのシリーズでは無かったのでは?(あったらすいません。)
これは犯人との関係性もあったのかもしれませんが、久しぶりに事件に二人で
取り組むというのも理由の一つだったのかも。

そしてこの推理を犯人に突きつけた時、物的証拠は一つも無いという事実もまた驚き。
状況証拠と推理で火村は犯人を追い詰めるつもりだったのです。
火村にとっては当然なのかもしれません。なぜならあらゆる状況を考えて、
この人物しか犯人たり得ないと結論付けていたから。

事件発生までがおよそ100ページ。解決編が始まるのが384ページから。
およそ300ページ弱、火村のフィールドワークが続き、
その結果、推理はおおよそ50ページ程。
一体この流れから、どんな事件が起こるのか。
そしてこんな容疑者が少なく、五里霧中のような事件を火村はどう解くのか。
それを考えれば一気読み確実のミステリです。



狩人の悪夢 (角川文庫)

狩人の悪夢 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版



狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: Kindle版



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切り裂きジャックを待ちながら [有栖川有栖]

毎年度、この時期にはクリスマスにまつわるミステリを紹介しています。
が、そろそろネタ切れ感が強い。
海外ミステリまで含め、そこまで多くない(はずはない)?
単に僕が知らないだけでしょうか・・・

そこで今年は有栖川有栖先生の国名シリーズ第5弾『ペルシャ猫の謎』収録の一編から。

かつて有栖川有栖の小説を舞台化したいと誘いを受けていた<屋根裏の散歩舎>の劇団員
からある相談を受ける。
それはの看板女優、鴻野摩利看板女優が誘拐され、12月24日までに身代金を振り込んで欲しい
というビデオメッセージが届けられたというものだった。
現実なのか狂言なのか、ゲネプロが行われる中、彼女の変わり果てた死体が発見される・・・

本作は動機という面では理解できないorできる、賛否両論ありそうです。
しかし、切り裂きジャックを題名に持ってきたことが、この動機と強く関連を持たせて
いるのではないかと勝手に思いました。
アリバイトリックは短時間で行ったにしてはかなり見事です。
あとは火村の登場と解決場面がかっこいい。

ところで本作含め、特に表題作「ペルシャ猫の謎」は火村シリーズの中でも異色作。
いや、この結末は中々書けません。
所収昨では「わらう月」と森下刑事が主役の「赤い帽子」が個人的オススメかつ快作。

それではすてきなクリスマス・イブ&クリスマスをお過ごしください。


ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/14
  • メディア: 文庫



ペルシャ猫の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)

ペルシャ猫の謎 〈国名シリーズ〉 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06/14
  • メディア: Kindle版



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鍵の掛かった男 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

中之島のホテルで梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺と断定。だが同ホテルが定宿の作家・影浦浪子は疑問を持った。彼はスイートに5年住み周囲に愛され2億円預金があった。影浦は死の謎の解明を推理作家の有栖川有栖と友人の火村英生に依頼。が調査は難航。彼の人生は闇で鍵の掛かった状態だった。
梨田とは誰か? 他殺なら犯人は? 驚愕の悲劇的結末!

火村英生シリーズ文庫版最新作にして、最大の異色作。
まず探偵役である火村が物語の終盤までメインで登場しないという異例さ。
そしてこれまでワトソン役として火村をサポート(?)してきたアリスが
事実上、探偵役を務めています。

さらにこれまでのシリーズでは、殺人事件が起きる、あるいは疑わしいという所から
始まるのが特徴でしたが、本作は「自殺とは考えられない」という作家・影浦浪子の依頼から、
全てがスタートしています。

一方、梨田稔というか「鍵の掛かった男」の鍵が開いた瞬間から、
彼を殺した人物は果たして誰なのか?というさらなる難問が降りかかります。
アリスの聞き込みから、ホテル関係者、宿泊客の人柄、抱えている事等々、
それらを読者は知った上で、この謎に衝突するのです。
正直なところ、犯人は相当意外です。
ここもこれまでのシリーズと一線を画していると感じました。
読者にこの犯人を指摘するのはおそらく無理なので、
いわば「読者への挑戦状」は挟めないのではないかと思います。
(実際に影浦にそれらしい謎かけをしていますが、読んでいてわかった人、いたのかなあ。)

一方、影浦が奇しくも指摘するもう一人の「鍵の掛かった男」=火村英生。
解説では、火村の鍵が開くときこそ、本シリーズの終焉ではないかと述べられていますが、
有栖川先生が、本シリーズをどう終幕させるのかは、確かに気になるところ。

本作がこれまでと異色であることから、違和感を持つ方もいるかもしれません。
しかし、本作によりシリーズにさらなる幅ができたのではないかと私は感じました。


鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫



鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: Kindle版



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江神二郎の洞察 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

英都大学に入学したばかりの一九八八年四月、すれ違いざまにぶつかって落ちた一冊―中井英夫『虚無への供物』。この本と、江神部長との出会いが僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった。アリス最初の事件「瑠璃荘事件」など、昭和から平成へという時代の転換期である一年の出来事を描いた九編を収録。ファン必携の“江神二郎シリーズ”短編集。

学生アリスが江神先輩と初めて出会うエピソードから、
マリア登場までを描く、まさに連作短編集。

シリーズ第1作『月光ゲーム』がアリスや望月、織田の中で相当な出来事(当然ですが)
として捉えられている様が実によくわかり、本書を読んだ後、改めて『月光ゲーム』を
再読したい思いに駆られました。

オススメは「瑠璃荘事件」
江神先輩の推理は見事です。ただ、アリスや織田も感心はしているものの、
いわゆるミステリに登場する名探偵とは全然・・・と感じているようです。
しかしこれが、『月光ゲーム』で一変するわけです。
アリスが発した一言、「名探偵も他人を信じることができる」。名言です。

マリアにも結局この『月光ゲーム』での出来事を話したアリス。
それが決め手なのかわかりませんが、マリアはEMCに入部します。
そして、彼女の入部こそが第2作『孤島パズル』に繋がります。


江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: 文庫



江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

江神二郎の洞察 <江神シリーズ> (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/29
  • メディア: Kindle版



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怪しい店 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、
敬意を持ってこう呼ぶ。「臨床犯罪学者」と。骨董品店“骨董 あわしま”で、
店主の左衛門が殺された。生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。
ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、
美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、火村と有栖の名コンビが解き明かす。
火村英生シリーズ、珠玉の作品集が登場。

「古物の魔」での推理の場面
 「私の辻褄合わせは決定的な証拠にまっすぐつながっている。凶器を調べられたら
 終了するからです。」
その前半部の「ロジカルな推理で大団円となるドラマを期待していましたか?」も強烈な一撃。

「ショーウィンドウを砕く」
火村もの短編集には必ず一編は「刑事コロンボ」モノ(倒叙形式)が収められていますが、
本作ではこれが該当。

火村とアリスが夕狩を罠にはめた箇所はすぐにわかります。
本編も最後のシーン。
「―愉良が鍵を落としたと騒いだ日のうちに、やってしまえばよかったのさ。結構が一日
 遅かったな。幻聴が耳の奥で響いた。火村英生の声で。」
おそらく火村が実際に言っていてもおかしくない。

表題作はアリスがかつて見たことのあるまさに「怪しい店」の話。
本作姉妹編?にもあたる「暗い宿」でもアリスが急病で助けられた「暗い宿」が
舞台の作品がありましたので、ともにアリス繋がりが表題作なわけです。

本作は火村の推理より、アリスと小町刑事が事件の反省会を行う喫茶店の
シーンが印象的。

ほんわか系が「潮騒理髪店」。これも短編集には必須の話
(殺人が起こらないということです。)

火村シリーズは抜群の安定感と安心感が相変わらずすごい。
そして最初に述べた、時折見せる火村の「狂気」的な部分も魅力の一つです。

ところで、シャングリラ十字団との対決って描かれるんでしょうかね。
ドラマ版ではそれがメインだったと耳にしたのですが・・・
まあでも<怪人vs名探偵>という構図は、火村シリーズには合わないな・・・



怪しい店 (角川文庫)

怪しい店 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫



怪しい店<「火村英生」シリーズ> (角川文庫)

怪しい店<「火村英生」シリーズ> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: Kindle版



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幻坂 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

雨の坂道で出会い、恋におちるも、自意識のために、
愛する女を死に追いやってしまった作家の苦悩が哀切な「愛染坂」。
坂に棲みついている猫たちの写真を撮るために訪れた女子高生が、
その夜から金縛りと奇妙な悪夢に悩まされる「口縄坂」。
大坂で頓死した松尾芭蕉の最期を怪談に昇華した「枯野」など9篇を収録。
大阪の町にある「天王寺七坂」を舞台に、その地の歴史とさまざまな人間模様を艶のある筆致で描く。

大阪にある「天王寺七坂」を舞台にした、作品集。
同じ角川では「赤い月、廃駅の上に」が怪奇短編集ですが、
今回はそれに「坂」というテーマを設けています。

怪談としては「口縄坂」がかなり不気味。
火村&作家アリスシリーズで、ネコの登場は多いものの、本編での
ネコは何が目的なのか、全く不明で、ラストも突然訪れます。

心霊探偵濱地健三郎が登場する「源聖寺坂」と「天神坂」。
前者はミステリとホラーの融合。後者は、なんと言えばいいのか、
探偵が犯人に自首を勧めるというか、濱地の「捜査」方法なのでしょうか。
出て来る<割烹 安居>が雰囲気抜群なんですよね。だが実は・・・

この濱地探偵、全く違うのは分かっているのですが、
都筑道夫氏の雪崩連太郎をちょっとイメージしてしまった。

東京にもたくさんの坂がありますけど、
こういうミステリは無いのだろうなあ。
一度、この七坂を訪れてみたくなりました。


幻坂 (角川文庫)

幻坂 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫



幻坂 (角川文庫)

幻坂 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2016/01/25
  • メディア: Kindle版



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菩提樹荘の殺人 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

アポロンのように美しい少年、と噂される連続通り魔事件の容疑者。
お笑い芸人志望の若者達の悲劇。大学生時代の火村英生の秀逸な推理、
そしてアンチエイジングのカリスマ殺人事件。「若さ」を持て余す者、
「若さ」を羨望する者達の恩讐に振り回されつつ
謎に立ち向かう火村とアリスを描く、美しい本格推理四篇!

「アポロンのナイフ」と「雛人形を笑え」の二編は、
事件の謎よりも、アリスと関係者との出会いが印象的です。

特に前者は、通り魔連続殺人犯、通称<アポロン>と
アリスが実は出会ったいたシーン。
実際事件そのものと<アポロン>とは直接関係はなかったものの、
アリスとの亀の話やラストのフラミンゴの所はとても印象に残りました。

全編にわたって記述があったかは忘れましたが、
火村がネクタイをゆるめる描写、
「ふだんルーズに締めているネクタイをさらに緩める」という描写も
同じく好きです。

「探偵、青の時代」はラストの火村の行動を推理するアリスが良い。

「菩提樹荘の殺人」は、最後火村の「詰将棋」的な推理が炸裂。
池からカバンを引き上げる時間だけに注目していただけではなく、
容疑者の容姿にも当然目を向けないといけないのに、まさに盲点ですね。

臨床犯罪心理学者火村英生と作家アリスの活躍はまだまだ続く。
シャングリラ十字団との戦いも、いつか描かれると良いですねえ。


菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/01/04
  • メディア: 文庫



菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/01/10
  • メディア: Kindle版



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論理爆弾 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

すべての探偵行為を禁止する法律が成立した日本で、探偵を目指す17歳の空閑純は、
失踪した母親が消息を絶った九州の深影村を訪れる。
そこで母の手がかりを見つけた矢先に隣村でテロが起き、村に通じるトンネルが破壊される。
孤立した村で連続殺人事件が発生し、純は探偵として恐るべき狂気と対峙する!
「探偵ソラ」シリーズ第三作。

空閑純は失踪した母親の消息を求め、平家の落人伝説が残る、
九州の山中にある深影村を訪れます。
ところが、隣村で日ノ本共和国の陸軍特殊工作部隊、通称<火熊>によるテロ
が発生。村への出入り口が山崩れで塞がれ、深影村は「密室」となってしまいます。

登場人物や、純が村に着いた途端に奇妙な老婆に「ここから出ていけ!」と一喝される
シーン(しかも老婆は拝み屋!)、さらに落人伝説がある村・・・
まさに金田一耕助「八つ墓村」そのまんまです。というかこれはオマージュでしょう。
さらには「密室」状態となってしまい、なんとその村で殺人事件が発生するという、
探偵役が必然かのような条件が整ってしまいます。

事件の謎を解いてほしい、という依頼ではなく、
友淵家に盗聴器をしかけたのは誰か?そして、母親が村で会っていた
友淵隆一の死の真相を明らかにしてほしいという依頼を、探偵<ソラ>として
受けた純は、深影村での連続殺人も何かつながりがあるかもしれないと捜査に乗り出すが・・・

「闇の喇叭」で同級生だったガンジスや景以子との電脳での音楽を通じた交流に
ほっこりします。彼らもまた純を想っていると。

物語の最初に語られる、コンピュータ・ウイルス<桜吹雪>が実は大きく事件の謎解明に
関与していたのが実にお見事。
そして、最大の面白さは、私的探偵行為が禁じられた世界で、
探偵の存在意義そのものを完全否定した点でしょうか(少なくとも私にはそう感じました。)

探偵「ソラ」が独り立ちするのははたしてやってくるのか?!



論理爆弾 (講談社文庫)

論理爆弾 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 文庫



論理爆弾 (講談社文庫)

論理爆弾 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: Kindle版



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高原のフーダニット [有栖川有栖]

臨床犯罪心理学者の火村英生と作家アリスが
活躍する有栖川さんの看板シリーズ。
文庫で久しぶりの登場ですね。

ただし、これまでのシリーズと違って
本作所収の短編はかなり「ひねり」が効いています。

「オノコロ島ラブソディ」はバカミスだと思う(笑
アリバイ崩しが焦点ですが、このトリックは思いつかないなあ。
確かに嘘は付いていない。

「ミステリ夢十夜」
「夢十夜」のミステリ版ですが、これもかなり奇抜。
味に関する何らかの障害を持つ面々が登場する一編が印象的。

表題作「高原のフーダニット」
あとがきで有栖川さん自身も述べられているように、
本書で唯一の<ストレートな本格ミステリ>。
まさに詰め将棋のような、火村の推理が冴えますが、
その結末はこれまでのシリーズとはひと味違います。
作家アリスがその心情を推理しますが、果たしてそれが正しいのかどうかは
不明なままです。

そろそろ今年読んだものをまた思い起こす作業に入ります(笑


高原のフーダニット (徳間文庫)

高原のフーダニット (徳間文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫



高原のフーダニット 徳間文庫

高原のフーダニット 徳間文庫

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/11/15
  • メディア: Kindle版



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真夜中の探偵 [有栖川有栖]

有栖川有栖さんの新シリーズ第2弾。
先頃第3弾も発売され、これからが楽しみなシリーズでもあります。
まずはAmazonさんの紹介ページから。

数年前に失踪した母親の行方がつかめぬまま、17歳の空閑純は大阪で独り暮らしを始める。
探偵行為の科で逮捕された父親との面会が許されない状況下、
思いがけない人物に声を掛けられたことをきっかけに、純は探偵への道を歩きだす。
木箱に入った元探偵の溺死体が発見され、純は「水の棺」の謎に挑戦する。

このシリーズはどうしても扱われる事件よりも、
空閑純の人生がどうなってしまうのかに注目してしまう・・・(苦笑

本作ではついに彼女の母親らしき人物が登場します。
そして母親はどうやら日ノ本共和国に居るらしい。
母親が追っていた事件は、中央警察や日ノ本共和国もやっきになって
探しているナニカがあるようです。
ブラキストン・コンフィデンシャル、この言葉は何を意味しているのか?

分断促進連盟なる者たちも登場しますが、彼らもまた次作に登場するのだろうか。

私には希望しかない、と最後に語る純ですが、
次はどんな事件に巻き込まれるのか。


真夜中の探偵 (講談社文庫)

真夜中の探偵 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫



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闇の喇叭 [有栖川有栖]

Amazonさんの紹介ページから。

私的探偵行為を禁止する法律が成立した平世21年の日本―。
女子高校生の空閑純は、名探偵だった両親に育てられたが、
母親はある事件を調査中、行方不明になる。
母の故郷に父と移住し母の帰りを待つ純だったが、
そこで発見された他殺死体が父娘を事件に巻き込む。
探偵の存在意識を問う新シリーズ開幕!

第二次世界大戦の結末が、微妙に変化した事により、
北海道が日本とは別の国となり、それにともない、
Amazonさん解説にあるように、「私的探偵行為」も禁止されている、
という流れです。
他にも外来語などを過度に使うのは禁止とされていて、
全く違う日本に住む人たちの物語です。

有栖川有栖さん、第三のシリーズ探偵である空閑純は、
名探偵だった両親に育てられたものの、母親はある事件の調査中に
行方をくらましてしまいます。そして、父親とともに、少しでも母親の情報が
集まると信じて、母の故郷に移り住むことに。

本書は中盤にかけてまでは、上記述べた現実とは違う日本の状況や、
空閑やその友人有吉景以子、小嶋由之ら三人の日常生活や
ちょっとした日常の謎がメイン。
その間に、彼女たちが住む多岐野で殺人事件が起こり、
北からのスパイも疑われる事から、中央警察の人間がやってきたり・・・と
物語自体は進展していきます。

そして終盤に、ついに純と父親は多岐野での殺人事件の解明に乗り出します。
そこにはある罠があるとは全く知らないまま・・・
事件は見事解決しますが、その結果<調律師>である父親は逮捕される事に。

殺人事件の謎もかなり練り上がっていて、あっと驚くものなのですが、
空閑純の方にどうしても気を取られ、このあと彼女はどうなるんだろうか
という事ばかり気になってしまいました(苦笑

それは本月刊行の「真夜中の探偵」で多少は明らかになるのでしょうか?


闇の喇叭 (講談社文庫)

闇の喇叭 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/15
  • メディア: 文庫



闇の喇叭

闇の喇叭

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/09/14
  • メディア: Kindle版



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虹果て村の秘密 [有栖川有栖]

<かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド>
本書はこの叢書の一冊。
新本格の第一人者・有栖川先生による物語です。

将来は推理作家になりたい上月秀介と、
刑事になりたい二宮優希、本書はこの二人の物語です。

事件の真相は、思いも寄らぬ所にあって、これにはびっくりした。
殺人現場の密室、アリバイ、そしてミステリには定番の「絵図」
実にうまく繋がっていて、当然ですが大人も楽しめます。

ところで、優希の母親である二宮ミサトの言葉が良いですねえ。
有栖川先生自身がこれから作家を目指そうとしている
読者へ語っているかのようです。

登場人物でもう一人際だって良いのは島谷良明。
郷土史家ですが、宇宙人を信じていて妙な格好をしている陶芸家。
なぜ妙なふりをしているのかに個人的に気に入りました(苦笑

しかし文庫化まで10年か・・・長いなあ。
詳しく覚えてないですが、本叢書が創刊された時は
ハードカバーでの発売だったような。
ジュブナイルも対象とするのであれば、単行本販売より、
ノベルズ等、より手に入りやすい価格が良かったような気がします。
(勘違いでしたらごめんなさい。)


虹果て村の秘密 (講談社文庫)

虹果て村の秘密 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫



虹果て村の秘密 (講談社ノベルス)

虹果て村の秘密 (講談社ノベルス)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/07
  • メディア: 新書



虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/10/26
  • メディア: 単行本



虹果て村の秘密 (講談社ノベルス)

虹果て村の秘密 (講談社ノベルス)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/06
  • メディア: Kindle版



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長い廊下がある家 [有栖川有栖]

限界集落を調べていた火村ゼミの学生が
偶然「幽霊の出る家」に迷い込んでしまう。
そこで三人の男女と出会う。
そして殺人事件が・・・
犯罪が行われたのは「長い廊下」の先にある西側の家と
東側の家を繋げる廊下中央の扉、しかも鍵のかかった西側で。
容疑者には絶対のアリバイ、トリックに火村が挑む。

私個人の感想ですが、有栖川有栖さんは、
質量ともに抜群の安定感を誇る、新ミステリ界の第一人者と言っても
良いと思います。

本書も抜群の安定感。
表題作はある「発想の転換」によって真相を看破する火村の
推理が見事。
意外にも作家アリスのある発想がきっかけに(苦笑

そして本書では作家アリスと火村個人がそれぞれ活躍(?)する
作品が登場。
「天空の眼」ではアリスが火村抜きで推理を展開。
インターネットによりいかに世の中が便利になったのかを
意外なところで見せつけられる一編でもあります。
(アリスがネットで「あるモノ」を使うんですよね。)

そして「ロジカル・デスゲーム」。
かつて火村の命が危なかった作品といえば「201号室の災厄」以来
だと思いますが、本作はまさに「デスゲーム」
コップ3つの中に一人の致死量である青酸カリを入れ、
それを犯人と火村が飲み合う。
一度だけ変更がきく、という心理をゆさぶるルールもあり、
本当に火村絶体絶命の危機とも言うべき作品です。
しかし、火村・犯人双方を殺さない方法を瞬時に思いついた
火村にはさすがとしか言いようがありません。

有栖川ファンならずとも、本格ファンなら必読の一冊でしょう。
オススメです。


長い廊下がある家 (光文社文庫)

長い廊下がある家 (光文社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫



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赤い月、廃駅の上に [有栖川有栖]

有栖川さん初の怪談集、しかも鉄道怪談。

怪談といっても、お決まりなお話は一編もありません。
表題作が最もそれに近いですが、
よくわからない異形の者たちが登場するという点だけかも。

オススメは「密林の奥へ」
これが一番怖かった。未開の地ではないんでしょうが、
全く土地勘もない、地図でもわからないような土地、しかも病に。
帰れるかどうかもわからない、とてつもなく不安ですよね。

「シグナルの宵」はグラスの指紋とか双子の兄とかで、
類似作品を読んだ記憶があるんですが、都筑さんだったか星さんだったか・・・う~ん。

「最果ての鉄橋」は笑った。
みんな知らないのだから、確かにあり得る展開だよなあ(笑


赤い月、廃駅の上に (角川文庫)

赤い月、廃駅の上に (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫



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妃は船を沈める [有栖川有栖]

臨床犯罪学者の火村英生と作家アリスのシリーズ。
本作は非常にめずらしく、あとがきがなくて、はしがきがあります。

タイトルにしてやられたという感じですね。
「猿の左手」については、あきらかに挑戦的な「妃」が
印象的です。
「解けるものなら、解いてみなさい」ともとれる態度。
これに挑戦する火村。
まさに犯人対探偵という感じでした。

ところで、「猿の手」についての火村の解釈(有栖川さんの解釈に近いらしい)
ですが、その解釈だと、なぜ急に「息子」が居なくなったのか、いまいちわからない。
両親の会話を聞いたからなのか?謎です。

後半の「残酷な揺り籠」は火村シリーズの真骨頂発揮。
窓がなぜ割られていたのか?この一点から火村は一気に
推理を構成します。
派手なトリック、アリバイ証明もない。
しかし読み応えは十分。

それにしても「妃」の変わり様はさすがに火村も驚いたのではないかなあ。

余談ですが、
第一部では火村助教授ですが、第二部では准教授に。
細かいことが気になるもので(笑


妃は船を沈める (光文社文庫)

妃は船を沈める (光文社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 文庫



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火村英生に捧げる犯罪 [有栖川有栖]

臨床犯罪学者・火村英生&作家アリスが活躍する
短編集。

どの作品も犯人が火村に圧倒されるという印象です(笑
特に表題作「火村英生に捧げる犯罪」はそう。
本当に犯人側はひどい。
作品がひどいのではなく、とてもじゃないが、
捧げる犯罪などではない(苦笑

かつて火村に挑んだ者は多くいましたが、
ここまでマヌケなのはいなかったよなあ。

オススメは「鸚鵡返し」と「あるいは四風荘殺人事件」
前者はオウムを使ったトリックで、犯人がまんまと
そのオウムにしてやられるというまさに「鸚鵡返し」

後者は社会派推理小説の重鎮・里中泰成が遺した
全く作風の違う、つまりは本格ミステリの小説の結末を
推理するという、火村だけでなく、読者に対しての犯人当て小説。
作中作もあり、かなり楽しめました。

この作品集は10頁ほどの短編がいくつも収録
されているのが特色の1つですが、
そのどれもが見事な出来で、それもオススメです。

久しぶりの有栖川さん、堪能させて頂きました。


火村英生に捧げる犯罪 (文春文庫)

火村英生に捧げる犯罪 (文春文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫



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ジュリエットの悲鳴 [有栖川有栖]

『壁抜け男の謎』で有栖川さんの
ノン・シリーズの面白さも知ってしまったため、
それより前に出たノン・シリーズ短編集を購入しました。

オーソドックスかもしれませんが、
好きな作品は「落とし穴」「裏切る眼」「危険な席」

「落とし穴」は完全犯罪の誤算、という
まさによくあるパターン(苦笑
そうそう計画通りに事は進みません。

「裏切る眼」はホラー要素も含みます。
殺人を犯す事、殺意を抱く事、それを
実行する事で、決して幸せが訪れる訳では
ないのですねえ。

今月にはまた有栖川さんの作品が文庫化
されるようです。楽しみだ。


ジュリエットの悲鳴 (角川文庫)

ジュリエットの悲鳴 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 文庫



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壁抜け男の謎 [有栖川有栖]

有栖川さんの最近10年のノン・シリーズを
集めた短編集。

僕は、短編集が好きなのですが、
あとがきを読むと、短編集はあまり人気がないのだとか。
長編だとどうしても先を先をでずっと読み続けてしまう
傾向があるので、その点短編は1編が終わったら寝る、
みたいなのができますから、良いのですけどね。

オススメは「下り「あさかぜ」」「ガラスの檻の殺人」「ミタテサツジン」
の3編。

「ガラスの檻~」は犯人当て小説でして、
消えた凶器の謎の解明。
見えていて、見えていないもの、ポーの「盗まれた手紙」
じゃないですが、まさにそんな感じです。

「ミタテサツジン」は金田一耕助オマージュですが、
内容は主人公にとっては悲しいお話。

「下り「あさかぜ」」は、いやこれはおもしろい。
まず登場人物ですよね。見事なるパロディ。
そして登場する時刻表、ここにトリックが?!
しかし犯人はこれで騙し通せると思ったのだろうか(苦笑

火村英生や江神二郎と違う、もう1つの有栖川ワールド
をぜひご堪能あれ。


壁抜け男の謎 (角川文庫)

壁抜け男の謎 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/04/23
  • メディア: 文庫



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女王国の城 [有栖川有栖]

満を持して(苦笑
第8回本格ミステリ大賞、このミステリーがすごい!2008年版第3位、
2008年本格ミステリベストテン第1位など
多くのランキングで称賛された作品。
そして15年振りの江神二郎と英都大学推理研究会の帰還!

以下はAmazonさんの紹介ページから(クライムクラブのです。)
舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。
大学に顔を見せない部長を案じて、
推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。
室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。
様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、
そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。
“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、
思いがけず殺人事件に直面。
外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は、
決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。

誰もが待っていた江神シリーズ。
そして舞台は新興宗教の本拠地。
ワクワクしない訳がない!
なおネタバレも含みますのでご注意を。


密室トリック、そして凶器をいかにして持ち込んだのか?
これが最大の謎ですが、
江神はこれを現在の世界だけでとらえることなく、
過去の世界をも考えて、見事に論破します。
今はみんな大人だが、かつては子どもだったという、
江神の言葉と、15年前の不可思議な事件をも
一挙に解明する江神の推理はさすがとしか言いようがありません。

個人的には、さらにその先。
なぜ教団は警察を呼ぶことを拒み続けていたのか?
この謎を、人が警察を接触したがらない事情、という観点から
看破した、自分たちが置かれているこの<城>の異常事態をも
見抜いた事が素晴らしい。

江神の推理の最中、ギャラリーたちは遠慮することなく
次々疑問を江神にぶつけます。
これはなんか腹が立ちましたが(笑
動揺することなく、1つ1つを丁寧に説明した江神さんはさすが(笑

犯人を指摘し、その犯人に動機を語らせる時の
江神は、まさにかつて自分たち家族が<予言>
によって引き裂かれてしまったつらい過去を
重ね合わせていたのでしょうか。

そして最後に明かされる江神が神倉を訪れた本当の理由。
この出会いにより、彼への<予言>に変化が現れる
のでしょうか。

上下巻に分冊されていますが、そんな長さを感じさせない。
有栖川有栖さんの存在こそが、現在の新本格ないし本格ミステリは
安心できるとさえ思わせる作品。
未読の方は、ぜひ読んでみて下さい。

次作は短編集との事。とても楽しみです。

女王国の城 上 (創元推理文庫)

女王国の城 上 (創元推理文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/01/26
  • メディア: 文庫



女王国の城 下 (創元推理文庫)

女王国の城 下 (創元推理文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/01/27
  • メディア: 文庫



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46番目の密室 [有栖川有栖]

クリスマス・イヴなんですよねえ。
毎年この日にはそれにちなんだミステリを紹介していた気がするのです(笑
とはいえ、それもそろそろ限界に近づきつつあるのですが・・・(苦笑

さて、本書は言わずと知れた作家アリスと臨床犯罪学者の火村英生のシリーズです。
が、本書がなぜクリスマスと関連しているのか、
それは本書内での事件が12月24日に起きている、まさにクリスマス・イヴの殺人だからです。

45の密室トリックを発表した推理小説の大家・眞壁聖一。
彼は「日本のディクスン・カー」の称号を得るほど、まさに「密室の巨匠」だった。
そして今年のクリスマス・イヴ。例年のように彼のもとへ作家仲間や編集者たちが
集まり、クリスマスパーティーを開く。
そこで彼は「密室は後一回だけだ」と衝撃の発言をする。
そしてその日に、彼は殺害された・・・雪に閉ざされた山荘の中の密室で・・・
密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿で。
彼は自分が考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?

舞台設定だけでもワクワクしてくる作品です。
作品そのものも充分楽しめますが、
眞壁の言葉を借りて、おそらくは有栖川さんの推理小説論も読むことが出来ます。
なんといっても作家アリス&火村英生の第1弾。
クリスマス・イヴの今日、手に取ってみてはいかがでしょうか。


46番目の密室 (講談社文庫)

46番目の密室 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/03/07
  • メディア: 文庫



新装版 46番目の密室 (講談社文庫)

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫



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ダリの繭 [有栖川有栖]

講談社文庫から出ている「国名」シリーズとは
別の火村・アリスコンビが楽しめる角川文庫シリーズ(シリーズ?

国名はどちらかといえば、
火村の非常に堅い、「詰め将棋」の推理が展開されるのに対し、
角川のシリーズでは、奇妙な謎が強調されているような
気がします。「海のある奈良~」や「暗い宿」などは、
タイトルにすでに謎が込められている、そんな感じです。

以下は本作の紹介文。
幻想を愛し、奇行で知られた
シュール、リアリズムの巨人―サルバドール・ダリ。
宝飾デザインも手掛けた、
この天才の心酔者で知られる
宝石チェーン社長が神戸の別邸で殺された。
現代の繭とも言うべき
フロートカプセルの中で発見されたその死体は、
彼のトレードマークであったダリ髭がない。
そして他にも多くの不可解な点が…。
事件解決に立ち上った推理作家・有栖川有栖と犯罪社会学者・火村英生が
難解なダイイングメッセージに挑む。

なぜ髭がなくなっていたのか?「繭」の中で死んでいた意味とは?
不可思議な謎に挑む二人。
国名シリーズとはひと味違う、二人の活躍、ぜひ読んでみて下さい。

ところで、「繭」の中で死んでいたというのを読んで、
ポアロもの短編で、櫃の中で死んでいた作品があったなと
思い出しました(苦笑
調べてみるとおそらく「バグダッド大櫃の謎」だろうと。
これが後に「スペイン櫃の秘密」になったようですねえ。
改めて読んでみよう。


ダリの繭 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

ダリの繭 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1993/12
  • メディア: 文庫



黄色いアイリス (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

黄色いアイリス (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/06/14
  • メディア: 文庫



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乱鴉の島 [有栖川有栖]

火村英生シリーズ4年ぶりの長編。
そして舞台は絶海の孤島・・・
期待せずにはいられない作品、ついに文庫化です。

犯罪社会学を専攻し、事件現場へもフィールドワークと称し、
警察の捜査を手伝い事件を解決する、
彼の名は火村英生。
英都大学社会学部の准教授である。

下宿先のばあちゃんから、少しは骨休めしなさいと
言われ、友人の推理作家有栖川有栖とともにやってきたのは
無数の鴉が飛ぶ島、烏島に間違って上陸してしまう。

そこで彼らを待ち受けていたのは
高名な老詩人と彼の別荘に集まる、老詩人を慕う人々。
しかしどことなく違和感を感じた火村とアリス。
彼らはこの何もない島に、何のために集まっているのか?

そして起こる連続殺人。
電話線は切断され、外部との連絡もとれなくなった・・・
犯人は誰なのか、そしてその目的とは?
火村が烏島に潜む「魔」に挑む。


本作は良い意味で、我々の期待を裏切ります。
まずこの舞台設定から、
<孤立した館>ミステリを当然想像すると思いますが、
実はそうしたミステリでは全くないのです。

館に集う人々が抱える謎、あるいは闇と、
殺人事件、これの連関性は全くありません。
もちろん、そのきっかけは当然とある人物がその集いの
中にいたからこそ起きた、と言えるので、
完全にないとは言い切れませんが。

物語のクライマックスは火村のまさに、
堅実で、堅い、詰め将棋のような推理に大幅な
頁が割かれます。
ここは読み応え十分。
事件としては非常にありふれた事件、としながらも
この集いを含め、奇妙な事件と表現した火村。
この集いの真の目的も火村は見事な推理を魅せます。

個人的には電話線が切断された理由。
これが素晴らしいと感じました。
孤島モノなどでは嵐で電話線が切断されるとかが
その理由に本当によく挙がりますが、
今回、なぜ電話線が切断されたかはまさに合理的な理由
だったと思います。

あとがきにて有栖川さんが書かれてますが、
いつか、火村シリーズで、嵐の山荘モノを読める日が
来るのも期待したいです。


乱鴉の島 (新潮文庫)

乱鴉の島 (新潮文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫



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海のある奈良に死す [有栖川有栖]

過日に放送されたドラマ「相棒」を観ていて、
この小説を思い出しました。

作家有栖川有栖の友人、赤星は
「行ってくる。『海のある奈良』へ」と言い残し、
その翌日死体で発見される。
アリスは彼の死の謎を、火村とともに追い、
「海のある奈良」を突き止めようと奔走するのだが・・・

旅情ミステリ、という範疇で括られたりしてたり、
あまり評価が高くなかったりと
人によって色々な評価があるかと思います。
僕個人は楽しめました。

いわゆる「国名」シリーズとはちょっと違った
二人の活躍、とでも言うのでしょうか。

さて冒頭の相棒の話ですが・・・
ネタバレになりますので、お気をつけを。


本作には「サブリミナル効果」がトリックに
用いられているのです。

ただこれはあくまで過大なサブリミナルであって、
実際にはそこまでは難しいというのが
現在の見解(?)になるのでしょうが。
「相棒」でもその点は語られていました。

かつて「世にも奇妙な物語」にて東幹久さん主演の
「サブリミナル」という短編がありました。
あれも非常に大きな影響が出ると過信される
演出でした。
(が、あれはメディアを利用した世論誘導と取るとかなり
恐怖を感じますね。)


サブリミナルだけでなく、「海のある奈良」とはどこなのか?
タイトルで惹かれた方、ぜひご一読を。


海のある奈良に死す (角川文庫)

海のある奈良に死す (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 文庫



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有栖川有栖の密室大図鑑 [有栖川有栖]

この文庫本はどこへいっても売って無くて、
新潮社でも絶版なんですかねえ・・・
しかしどうしても読みたかったので、古本で購入。

密室を扱い、且つそのトリックが見事だと有栖川さんが
思ったものをピックアップして紹介。
海外・国内でわかれ、ネタバレを可能な限りしていないので、
そのミステリを読んでいない方も安心して読めます。

やはり僕としては国内ミステリに目がいくわけで・・・
亜愛一郎が活躍する三部作中の一編「ホロボの神」
作家法月綸太郎の意外な密室「緑の扉は危険」

世界の名だたる名探偵が謎解きに挑む「名探偵が多すぎる」
西村京太郎の超傑作の4部作なのに、
なぜ最初の「名探偵なんか怖くない」しか復刊しないのか・・・
まったく腹立たしい。

密室というトリックはもはや古い、なんていう見方もありますが、
古くて新しい、そしていつの時代もミステリファンを惹き付ける、
そんな魅力が「密室」にはある気がします。


亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/08
  • メディア: 文庫



法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)

法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)

  • 作者: 法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 文庫



名探偵が多すぎる (講談社文庫 に 1-5)

名探偵が多すぎる (講談社文庫 に 1-5)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1980/05
  • メディア: 文庫



有栖川有栖の密室大図鑑

有栖川有栖の密室大図鑑

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 現代書林
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本



密室キングダム (光文社文庫)

密室キングダム (光文社文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/01/13
  • メディア: 文庫



本陣殺人事件 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

本陣殺人事件 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

  • 作者: 横溝 正史
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1973/04
  • メディア: 文庫



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