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折鶴 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ作家、紋章上絵師、奇術師。
この一冊で著者の三つの顔がすべて楽しめる――末國善己(解説より)
4つの衝撃の結末を描く、ミステリの技巧を凝らした
第16回泉鏡花文学賞受賞作
生誕90年記念出版第2弾

新内節を語れる友禅差しの模様師・脇田は、旅先で三味線弾きの芸妓・彩子と出会う。
脇田は彼女に惹かれるが、彩子と、酒と女で身を持ちくずした彼女の師匠の名新内語りが、
以前ある殺人事件に巻き込まれたことを知る、「忍火山恋唄」。
縫箔の職人・田毎は、自分の名前を騙る人物が温泉宿に宿泊し、
デパートの館内放送で呼び出されるという奇妙な出来事に見舞われていた。
そんな折、パーティで元恋人の鶴子と再会するが。
ふたりの再会が悲劇に繋がる「折鶴」など全4編。
職人の世界を背景に、流麗な筆致で描く恋愛小説と、
巧みな構成が光る本格ミステリを融合した名短編集。第16回泉鏡花文学賞受賞作。

またまた久しぶりの更新となりました。

『泡坂妻夫引退公演』で初めて読んだ、「紋章上絵師」シリーズの系譜、というか
大元的な作品を読んだ気がします。
いわゆる、ステレオタイプ的になりますが、江戸・東京の職人たちを扱っていて、
まず最初読んだだけでは、専門用語が理解できないのですが(苦笑)、
それも大量販売や機械製作の煽りを受けて・・・というのは共通しています。

最初に登場する「忍火山恋唄」は、三味線による唄いを取り上げていて、
これもまたテーマとしては極めて渋い。
ただこれを上手く掘り起こしつつ、最初に主人公が聞いた「幽霊話」を
見事にミステリに仕立てていく技巧はさすが。
しかし、本編はこれに留まらないのです。
上記で書いた、いわば時代の変化と関係させているのか、主人公の推理に
対して、全く違う真実を提示する。
最後の主人公と彩子の会話は何とも言えないものがあります。
事件の謎と今の境遇のようなものを重ね合わせた感。
解説の末國さんは「新内の名人が活躍できなくなる時代の変化が、そのまま素人探偵の
活躍を許さない散文的な状況と重ねられており」と評してますが、言い得て妙でしょう。

表題作「折鶴」も、時代の変遷を描いた名作。そこに自分の名前を騙る人物が
そこかしこに登場するというミステリを加えた作品。
「少し前までは、腕に職を付ける・・・それが見事にひっくり返った」と
主人公が思う場面がありますが、まさにその通り。
本編は悲しい終わり方をするのですが、それ異常に、染め物とか着物とかに関係する
業界の、工業化の煽りの話が身につまされました。

亜愛一郎や奇術とは違った側面の泡坂妻夫作品。ぜひご一読を。



折鶴 (創元推理文庫)

折鶴 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/05/11
  • メディア: 文庫






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ダイヤル7をまわす時 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

【生誕90年記念出版第1弾】
泡坂ワールドのすべてを愉しみ、
愛することができたのは、
この本に出会えたからだ――櫻田智也(解説より)
読めば必ず騙される!
名品『煙の殺意』に匹敵する短編集

戸根市で対立する暴力団・北浦組と大門組は、事あるごとにいがみ合っていた。
そんなある日、北浦組の組長が殺害された。しかも殺害現場で、
犯人が電話を使った痕跡が見つかる。犯人はなぜすぐに立ち去らなかったのか、
どこに電話を掛けたのか? 
「読者への挑戦」付きの、正統派犯人当て「ダイヤル7」。船上で起きた殺人事件。
犯人はなぜ死体をトランプで装飾したのか? 
トランプの名品〈ピーコック〉をめぐる謎を描く「芍薬に孔雀」など7編。
貴方は必ず騙される! 
奇術師としても名高い著者が贈る、ミステリの楽しみに満ちた傑作短編集。

泡坂妻夫先生の本書と、櫻田智也先生の『蝉かえる』が同時文庫発売とは、
明らかに東京創元社さんは狙ってますね。
なお、『蝉かえる』はまだ未読。まずは御大のお手本をと(笑

ここ数年、都筑道夫先生作品と同様、泡坂妻夫先生の作品も数多くが復刊され、
嬉しい限りです。
創元推理文庫を中心に、河出文庫からも刊行されました。
しかし、まだまだ作品は多くあり、本書も当然ながら未読でした。

タイトルの「ダイヤル7」は、先生作品では珍しい犯人当て小説!
当然のことながら、わかりませんでした(苦笑

今の若い世代が読んでも、まずわからない「ダイヤル」式の電話ですが、
鑑識の意地の捜査で、触れているダイヤルがわかり、そして、なぜ
犯人が殺人を犯した後に電話をしなければならなかったのか?ここに全ての謎が
詰まっています。
ところで、本作はある場で聴衆がいる前で、塚谷さんの依頼で、長く警察に勤めていた
久能なる人物が語る内容になっています。
ここは犯人当てとは直接的に関係ないものの、ラストまで行くと決して犯人当てだけでは
終わらない結末となっています。

「芍薬と孔雀」は、奇術師の顔を持つ御大ならではの作品です。
そしてトランプが事件の鍵を握るのも流石。
しかもこの作品。謎の解けていく過程が見事で、本書所収内で一番かと思います。

「飛んでくる声」は「意外な結末」の好編。
さらには「意外な探偵」も登場します。

「可愛い動機」、動機がものすごいところから来てますが、
今の世の中では珍しくないかもしれないと思ってしまうところが怖いですね・・・

「金津の切符」はコレクター同士の諍いを描く物語。
倒叙形式で書かれていて、箱夫の心情がそれなりにわかるだけに、すこし辛い作品ですね。
しかし刑事のラストの謎解きは、刑事コロンボのラストのような驚きがあります。

さて本作の中で私のオススメは「広重好み」です。
この作品は、亜愛一郎シリーズの「DL2号機事件」を、個人的には彷彿とさせました。
殺人や盗みなどの犯罪は一切描かれないものの、このタイトルの意味と結末は
泡坂先生にしか書けないのではないか。

「青泉さん」は、彼によって周囲の人生が変わる物語。
殺人が起きてはいますが、そこが主眼ではなく、「青泉さん」の生き方が主眼です。


ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/02/20
  • メディア: 文庫






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奇術探偵曾我佳城全集 下 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

美貌の奇術師にして名探偵・曾我佳城が解決する事件の数々。花火大会の夜の射殺事件で容疑者の
鉄壁のアリバイを崩していく「花火と銃声」。雪に囲まれた温泉宿で起きた、
“足跡のない殺人”の謎を解く「ミダス王の奇跡」。佳城の夢を形にした奇術博物館で悲劇が起こる、
最終話「魔術城落成」など11編を収録。奇術師の顔を持った著者だからこそ描けた、
傑作シリーズをご覧あれ。

以下、ややネタバレ。




上巻から時間が空いてしまいましたが、下巻も粒ぞろいです。
平然とした文章が逆に恐怖でもあり、ホワイダニットの快作でもある「ジグザグ」
事件そのものは凄惨なのですが、ラストに救いがありました。

タイトルからはおぞましさを感じる「だるまさんがころした」も、
ラストで見事な解決を魅せる話。
何のためにこんな怪文書が出回るのか?

説明では足跡の無い殺人を解く、としかありませんが、この曾我佳城全集で
キーポイントとなるのが「ミダス王の奇跡」です。
この作品、見事な叙述トリックです。しかも登場人物がさらっと間違えることで
実にうまくそのトリックが隠されています。
これが最終話の伏線となるというのだから、実に見事です。

「真珠夫人」はどこか亜愛一郎を思わせる作品に私は感じました。
希有なアクシデントで失った真珠をなぜかたくなに受け取らなかったのか。
その謎が、なんとなくそう思わせました。

最終話「魔術城落成」は佳城のラストとしては非常に悲しい物語なのですが、
これまでの作品にちりばめた伏線を全て回収し、こういうラストしかなかった、
そう思わせる作品でもあります。



奇術探偵 曾我佳城全集 下 (創元推理文庫)

奇術探偵 曾我佳城全集 下 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: 文庫



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奇術探偵曾我佳城全集 上 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

若くして引退した、美貌の奇術師・曾我佳城。普段は物静かな彼女は、
不可思議な事件に遭遇した途端、奇術の種明かしをするかのごとく、鮮やかに謎を解く名探偵となる。
殺人事件の被害者が死の間際、天井にトランプを貼りつけた理由を解き明かす「天井のとらんぷ」。
本物の銃を使用する奇術中、弾丸が掏り替えられた事件の謎を追う「消える銃弾」など、
珠玉の11編を収録する。

講談社文庫から刊行されていた『曾我佳城全集』を底本にしつつ、
発表順に再編集したのが創元推理文庫版となります。
以下、ややネタバレ。





これまで数多くの作品で泡坂ワールドを堪能してきましたが、
奇術師である御大の真骨頂ともいうべき作品が本作なのかもしれません。

最初の「天井のトランプ」から、その魅力は存分に発揮されます。
レギュラーキャラクターとなる竹梨警部も登場。
カードマジックという、奇術の基本から入るのも良いですね。

次作「シンブルの味」は奇術大会を見る団体が突然登場し、
あれ佳城は・・・?と思いきや、「大岡佳子(おおおかよしこ)」がなんと曾我佳城!
考えてもみれば、すでに彼女は引退しているわけで、本名を名乗っているという
のは不思議でもなんでもないのです。しかし、私はこの名前の問題こそが、下巻に続く
壮大なトリックの足がかりでもあるのです。これが実にうまい。

戯曲風の文体で描かれる「白いハンカチーフ」も印象的。
テレビの生放送内での事件解決で、最後も番組終了で締めくくるという、
テレビやマスコミの風刺ともいえるラスト見物。

もう一人のレギュラーキャラクター、いや佳城の弟子となる串目匡一が初登場する
「消える銃弾」、銃弾のトリックも見事なのですが、もの悲しい結末なんですよね。

「シンブルの味」に通じるものもある「石になった人形」。
昔の見世物小屋的なことを想像したりもしましたが、ここでは佳城のこれまでとは
違った一面を竹梨警部が発見してしまう所が一番の衝撃でしょうか。

ラスト「剣の舞」はこれまたもの悲しい物語。
「わたしには悲劇でした」と平然と話す佳城が印象的です。

佳城と串目匡一の魔術城への道程は下巻へと続きます。


奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

奇術探偵 曾我佳城全集 上 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: 文庫



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泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

緻密な伏線と論理展開の妙、愛すべきキャラクターなどで読者を魅了する、
ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。著者の生前、単行本に収録されなかった
短編小説などを収めた作品集を、二分冊にした文庫化でお届けする。
絡繰篇は、大胆不敵な盗賊・隼小僧の正体を追う「大奥の七不思議」ほか、
江戸の雲見番番頭・亜智一郎が活躍する時代ミステリシリーズ、
五節句の紋を誂えた着物にこめられた想いを読み解く「五節句」ほか、紋章上絵師たちのシリーズ、
背中に見事な彫物を持つと評判の美女を巡る「荼吉尼天」といったノンシリーズなど、17編を収めた。



なんといっても本作は雲見番頭の亜智一郎シリーズ続編が読めるのが大きいです。
時は幕末、内憂外患、さらには尊王攘夷吹き荒れる中でも、そんな世の中の動向には
我関せず、亜たちは変わらず雲見を続け、将軍側衆・鈴木阿波守正團の指示を受け、
様々な依頼をこなしていきます。

「吉備津の釜」は、御庭番御用を務める二人が、長州藩への調査で行方不明になったという、
いよいよ幕末の激動に智一郎たちが巻き込まれる?!と思いきや・・・
なんという脱力!これこそ智一郎シリーズかつ泡坂作品。

「大奥の七不思議」は私のオススメ。
干物をくわえて出て行った狸(阿波守)、そしてラストに阿波守が言う台詞。
狸が化けた姿だったのか、それとも本当の阿波守だったのか。
いや、台詞を考えれば後者なんですが、そうだとするとあまりに行動が奇妙過ぎる(笑

ホラー小説である「母神像」や、奇妙な味わいを感じる「荼吉尼天」もオススメです。
紋章上絵師のシリーズは<手妻篇>の奇術シリーズ的な位置付けでしょうか。

しかしもう新作が読めないのが本当に残念です。
絶版や入手困難な作品がまた復刊することを望みます。


泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 絡繰篇 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: Kindle版



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泡坂妻夫引退公演 手妻篇 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。その最後の贈り物である作品集を、
二分冊にした文庫化でお届けする。
手妻篇は、辛辣な料理評論家を巡る事件の謎を解く「カルダモンの匂い」ほか、
ヨーガの達人にして謎の名探偵・ヨギ ガンジーが活躍するミステリシリーズ、
酔象将棋の名人戦が行われた宿で殺人が起こる、単行本刊行後に発見され初書籍化となる「酔象秘曲」、マジシャン同士の心の機微を描く「ジャンピング ダイヤ」ほか、
マジックショップ・機巧堂を舞台にした奇術もの、
住人が次々と死んだマンションの一室で交霊会を行い、
真実を暴く戯曲「交霊会の夜」など13編を収録。

ずいぶん前に「引退公演」は読了していたのですが、アップが遅くなりました。

本書にはなんといってもヨギ ガンジーシリーズ短編が久しぶりに読めることが大きい。
ただ『ヨギ ガンジーの妖術』収録のものと少し異なり、
「カルモダンの呪い」「未確認歩行原人」いずれも、より「日常の謎」が強く出ているかなと
感じました。
それだけに未完に終わった「ヨギ ガンジー、最後の妖術」が残念でなりません。

本書所収白眉は「酔象秘曲」という、かつてあった「酔象」という駒を使った
将棋をめぐる殺人事件。
少し艶っぽい描写、またトリックありと、楽しめる作品となっています。

またわずか4ページの「絶滅」は星新一のショート・ショートを彷彿とさせる快作。
「聖なる河」も短編ながらも最後にどんでん返しが待っている良作です。

「交霊会の夜」はぜひ戯曲を小説として描いて欲しかったなあ。
かつてクリスティのポワロもので戯曲「ブラック・コーヒー」を
別の作者が小説として刊行した事がありますが、これを小説化してくれる方が
居ればなあ。

近日中に「絡繰篇」もアップ予定です。


泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/11
  • メディア: 文庫



泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

泡坂妻夫引退公演 手妻篇 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: Kindle版



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毒薬の輪舞 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

鳴らないはずの病院の鐘楼の音が聞こえたとき事件が起きた―夢遊病者、自称億万長者、狂信者、
誰も見たことがない特別室の入院患者など、怪しい人物が集う精神科病院で続発する毒物混入事件。
そして遂に犠牲者が…犯人は、使用された毒物は?
病棟に潜入した海方と小湊は事件を解決できるか?海方シリーズ第2弾!

前作とは打って変わって、ある種、閉ざされた孤島での事件のようです。
というより、そもそも事件が起こっているのかどうかすら、
読み進めていっても、ほとんどわからない状態に陥ります。

これは別に悪い意味ではなく、良い意味でなのです。
解説の有栖川先生は、迷路にでも迷い込んだと本書を評しますが、
まさに正鵠を得ています。

入院患者たちのそれぞれの行動、精神病院に隠された謎。
これらは全て、物語の枝葉のようにみえ、実のところ物語の核心なのです。

本当に終盤になり、ある事故(事件?)が起き、
それを含め、舞台となった精神病院でのあらゆる謎が、
一気に収斂され、明かされていく様は、見事というほかありません。
有栖川先生が言う、論理仕掛けの奇談、言い得て妙です。

第1作目とは、作風そのものが全く違いますが、それでも
シリーズものとして読めてしまう、海方と小湊コンビも相変わらずです。
こんな作品があったとは・・・傑作です。


ところで前作と同様、カバーが遠藤憲一さんになっているのですが、
これは海方警部補がドラマ化したら、遠藤憲一さんが適任という
意味なのでしょうか。それは謎として残りました。


毒薬の輪舞 (河出文庫)

毒薬の輪舞 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/04/05
  • メディア: 文庫



毒薬の輪舞 (講談社文庫)

毒薬の輪舞 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1993/09/15
  • メディア: Kindle版



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しあわせの書-迷探偵ヨギガンジーの心霊術 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体“惟霊講会”。
超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、
布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。
41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、
実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。
マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、
どうか未読の方には明かさないでください。

このところ泡坂作品の復刊、そして文庫化は素晴らしいものがありますね。
『泡坂妻夫引退公演』に続き、『曾我佳城全集』も創元推理文庫で
再文庫化されるとの情報もあり、うれしい限り。

そこで前回に続き、ヨギガンジーシリーズを一気読み。
本作は『ヨギガンジーの妖術』で弟子となった不動丸、そして途中から突然合流した
美保子の3名で旅を続けていて、『妖術』を読んでいた方がより楽しめるかも。

『しあわせの書』なる本は何が、しあわせ、なのか。
なぜ死亡したとされる人々が「惟霊講会」に居るのか。

様々な謎が断食中のガンジーの推理から一気に語られる
中盤から終盤にかけての盛り上がりは圧巻。
迷探偵とありますが、いやいや御謙遜を、名探偵ですよ。

ただし、確かにマヌケな面もあるのは否定しません(笑
しかし、しあわせの書の意味が個人的にはツボでしたね、なるほどと(笑



ところで本書にはもうひとつ、筆者ならではのある驚異の「仕掛け」が施されて
いるのですが、それを書くのはナンセンスでしょう。
この「仕掛け」はぜひ皆さんお読み頂いて、筆者の凄さを味わってください。




しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/07/31
  • メディア: 文庫



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ヨギ・ガンジーの妖術 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名(酩?迷?)探偵ヨギ ガンジー登場!ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、
ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、
謎の男ヨギ ガンジー。心霊術、念力術、予言術、枯木術、読心術、分身術、そして遠隔殺人術…。
頭にターバンを巻き、長い白衣を着た正体不明の名探偵が、超常現象としか思えない
不思議な事件の謎に挑む!

泡坂御大作品の復刊と、『引退公演』の文庫刊行が近く
とてつもなく有名だけど、未読のヨギ・ガンジーシリーズを購入しました。
なお、長編2編も購入済みです。
以下、少しネタバレ。



オススメは「王たちの恵み<心霊術>」と「釈尊と悪魔<読心術>」の2編。

前者は募金箱から「誰が」寄付金を盗んだのか?という謎が、
ガンジーにより180度逆転するという傑作。
最初の登場作品なのに、泥棒に間違われているガンジーも面白いです。

後者はガンジーの謎解きもさることながら、霧丸の役者ぶりが良い。
しかし、ガンジーと不動丸のコンビは確かに劇団に向いてそうですね。

それにしてもガンジーは各方面で先生と呼ばれながら、実際に神秘的な力を
持っていないというのを、その人たちも知っているというのが中々に面白い。
ところで名探偵→迷探偵→酩探偵とその表記の変化は当然見逃せません。
私としては、もっと短編で「名探偵」のガンジーの活躍が読みたかったですね。



ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術 (新潮文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/01/27
  • メディア: 文庫



ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Kindle版



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死者の輪舞 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大観衆に湧く競馬レースの最中、男が刺殺された。偶然居合わせた警視庁特犯課の
新米刑事・小湊進介はベテラン刑事・海方惣稔とともに捜査を開始。
鮮やかな手口からすぐに容疑者の名前が挙がるが、この殺人を皮切りに容疑者が
次から次へと殺されていく殺人リレーがはじまり…果たして真犯人が仕組んだ謎を、
二人は解けるのか?

久しぶりの更新です。
昨年、河出書房が泡坂妻夫作品を3作(「花嫁のさけび」「妖盗S79号」「迷蝶の島」)
が復刊されましたが、なんとそれに続く泡坂作品復刊です。

本書は全く知りませんでした。そして長編。しかも刑事が探偵訳を務める作品とは。

海方の名台詞(?)の「これにてお終い、目出度く千秋楽、ちょんちょんだ」は
本書で何度も何度も登場します(笑

海方はこの殺人が連続殺人、リレー殺人であることに少し気付きながら、
早く解決させたい(捜査が面倒くさいから・笑)ため、上記台詞を多用しているんでしょうねえ。

ただし、立田一圓の「宝くじに当たる以上の確率の」死去は、海方にとっては
自らの考えに疑念を持ったのかもしれませんが。いや、面倒だっただけか(笑

被害者の繋がりに勝畑病院が関係しているのは想像できるのですが、
立田の殺人と、最後のあるどんでん返しがお見事。
ただし、海方と小湊は情けないなあ・・・

次作の『毒薬の輪舞』も4月に発売予定!楽しみです。


死者の輪舞 (河出文庫)

死者の輪舞 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: 文庫



死者の輪舞 (講談社文庫)

死者の輪舞 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: Kindle版



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奇跡の男 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

バスの転落事故で一人だけ生き残った男が、今度は袋くじの特賞に大当たり。
そんな強運、あり!?(奇跡の男) 小さな飲み屋「糀屋」の客が死に、
なぜか警察に被害者の香典が送られてきて……(狐の香典)。“卯の花健康法”や“健脳法”など、
珍妙なことばかり思いつくナチ先生が殺された。雪に残された足跡が唯一の手掛かり?
(ナチ式健脳法)など、ユーモラスで奇想天外な極上ミステリ短編集。

泡坂妻夫復刊第4弾。全て未読作品。楽しいひとときです。
表題作「奇跡の男」は御大デビュー作「DL2号機事件」を彷彿とさせる快作。
鉱山を掘るという小ネタが最後まで引っ張られるのがかなりおもしろい。

「ナチ式健脳法」は雪の足跡トリックをある驚愕の謎解きで解決する怪作。

本作オススメは「狐の香典」。この作品、起きた事件の真相そのものより、
密造酒(笑)を作る店の主人・五兵衛のある種の計画。
これは今の世の中にかなり当てはまることで、見事に皮肉が効いています。

未読の方、ぜひともご一読あれ。


奇跡の男 (徳間文庫)

奇跡の男 (徳間文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/05/02
  • メディア: 文庫



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迷蝶の島 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

太平洋を航海するヨットの上から落とされた女と、絶海の孤島に吊るされていた男。
一体、誰が誰を殺したのか?そもそもこれは、夢か現実か?男の手記、関係者の証言などで、
次々と明かされていく三角関係に陥った男女の愛憎と、奇妙で不可解な事件の、驚くべき真相とは!?

少し間隔が空いてしまいました。
河出文庫泡坂妻夫復刊第3弾は良質なサスペンス。
メインの登場人物はわずかに3名。
山菅達夫の手記、捜査官・関係者の証言、そしてトキコの告白という3章構成。

個人的に、達夫の「勘違い」はどう考えても気の毒ですが、
本人も認めている通り、それなら最初に訂正すべきだった。

メインの登場人物は3名と書きましたが、ほとんど達夫とトキコの物語ですね。
両者がそれぞれ仕掛けたトリックで、両者とも亡くなります。
達夫の死の謎は蓋を開けてみれば、ああーと思うものですが、
これは極めて難しい。
一方のトキコの死は完全に予想を超えていたものでした。

ところで、河出文庫泡坂妻夫復刊が終わり、今度は徳間文庫から復刊が。
うれしいことです。



迷蝶の島 (河出文庫)

迷蝶の島 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/03/03
  • メディア: 文庫



迷蝶の島 (河出文庫)

迷蝶の島 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/03/06
  • メディア: Kindle版



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妖盗S79号 [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神出鬼没の怪盗S79号!指輪に名画、名刀に化石まで、古今東西のお宝を、
奇想天外な手口で次々と盗み出す。そんな中、世間では、連続猟奇殺人事件も発生中で、大混乱!
果たして、警視庁のS79号専従捜査班は怪盗の正体とその真の目的を暴くことができるのか?
ユーモラスで見事なトリックが光る傑作、待望の復刊!

河出文庫泡坂妻夫復刊第2弾。
正体不明・神出鬼没、そして大胆不敵、警視庁のファイル名から名付けられたその名前。
かつての怪人二十面相やルパンを彷彿とさせます。

しかし本書の主人公は専従捜査班の東郷警部、その部下・二宮刑事。
特に東郷警部はS79号逮捕の執念から、突飛な行動や奇想天外な妄想?を
抱くなど、なんとなくダメな刑事の雰囲気を漂わせます。
一方でその部下の二宮刑事はそんな東郷を刺激することなく、過ごす毎日。
しかし、プライベートでは身内の不幸が続き、税金に追われる日々・・・
なんだかマヌケな刑事たちが、怪盗を追う、12編の物語、のようにみえますが・・・

すでに第1話「ルビーは火」で犯人らしき人物が名前を名乗って登場しているのですが、
一方でその後の話を読んでいくと、S79号=??と、まあここは伏せますが、
ある一つの推測は皆さん浮かぶのではないでしょうか。

オススメは「庚申丸異聞」と「檜毛寺の観音像」

先ほどマヌケな刑事と書きましたが、実のところ東郷警部は優れた名刑事であると
前言撤回します。
これまでどちらかというと、S79号がどうやって盗んだのか?が謎の中心でしたが、
本作はそれと全く異なるところが実に面白い。そして東郷警部はよくここまで
真相に辿り着いたという、ある種の感動さえ覚えました(笑
まあ、詰めが甘かったのは事実なのですけど(苦笑

後者は芸術家の田甲里黒墨が素晴らしく良い味を出しています。
というよりも、本作はお手伝いのつるも相当に図々しく、というか神経が図太く、
さすがの東郷&二宮もあきれかえる始末です。

最終話「東郷警視の花道」では、本書全編にわたって登場してきたある壮大な事件を
東郷と二宮の手により解決し、最後はS79号含め大団円というフィナーレ。
御大らしいまとめ方。

それにしても二宮刑事は気の毒を通り越して、哀れです。
突然豹変したのにも納得ですが、最終話で2階級昇進を果たし、本当によかった。

最後は「迷蝶の島」。現在読書中です。




妖盗S79号 (河出文庫)

妖盗S79号 (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/01/05
  • メディア: 文庫



妖盗S79号 (河出文庫)

妖盗S79号 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Kindle版



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花嫁のさけび [泡坂妻夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

映画界のスター・北岡早馬と再婚し、幸せの絶頂にいた伊津子だったが、北岡家の面々は数ヶ月前謎の死を遂げた先妻・貴緒のことが忘れられず、屋敷にも彼女の存在がいまだに色濃く残っていた。そんなある夜、伊津子を歓迎する宴の最中に悲劇が起こる。そして新たな死体が…。傑作ミステリ遂に復刊!

更新が滞ってました。このところ業務繁多すぎ・・・



本作はある種、完璧な叙述トリックです。これは脱帽です。
伊津子の一人称視点に見せかけて、実は三人称の視点なのです。
これはすごい。
泡坂妻夫、ここにあり。
亜愛一郎シリーズは当然として、私は『妖女のねむり』がこれまでのベストだったのですが、
いやいや、まだまだ傑作揃いです。

ところでやはり探偵役は山遊さんでした。『喜劇悲喜劇』パターンとでもいうか、
少し変わった人が探偵役なのも、泡坂妻夫。
いや、普通は変わった人だからこそ、探偵あるいは探偵役なのですがね(笑


花嫁のさけび (河出文庫)

花嫁のさけび (河出文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/11/07
  • メディア: 文庫



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煙の殺意 [泡坂妻夫]

長らく絶版となっていた泡坂先生の短編集が先頃
3版が出され、購入しました。

本書は、どの短編も見事な出来映えで、非常に驚きました。
どれも色々な趣向で楽しませてくれるのはさすが。

解説等でも触れられている本作愁眉と言われる「椛山訪雪図」も
そのラストが鮮やかですが、
僕は敢えて推したいのは「紳士の園」。
亜愛一郎シリーズを思わせる作品で、
多武の山公園に起きた「とある変化」を見逃さず、
とんでもない事が起きると看破した近衛さんには敬意を表したい。
ただし、スワン鍋は非常にマズイ(笑

完璧な犯罪と思われたが、ある「意外」な所からそれが崩壊してしまう
「歯と胴」もオススメです。

東京創元社の本書紹介ページでは、
故北森鴻さんが「これまでもこれからも、僕の短編ミステリの大切なお手本です」と
推薦文を寄せています。
まさにその通りで、その凝った趣向をぜひご堪能ください。


煙の殺意 (創元推理文庫)

煙の殺意 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫



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妖女のねむり [泡坂妻夫]

大学生の柱田真一は、廃品回収のバイトで
「樋口一葉」の書と思われる反故紙を手に入れる。

その真偽を確かめるため、彼は諏訪へ旅立つのだが、
そこで不思議な女性、麻芸に出会う。
麻芸は「わたしたちは前世で恋人同士だった。そして
私があなたを殺してしまったのだ」と彼に告白する。
不思議に思いつつも、どこか彼女に既視感を憶えた彼は、
彼女と結ばれる・・・
そして彼らの前世である西原牧湖と平吹貢一郎の足跡を
辿るのだが・・・

本書帯には「幻想的な物語」とあり、
確かに前半部分は輪廻転生や過去世など、
ミステリとは一線を画した話のように思います。

が、しかしです。これこそが奇才・泡坂妻夫が
仕掛けた大胆なトリックに他ならないのです。

彼女がなぜ西原牧湖の記憶を宿しているのか?
柱田真一の既視感の正体とは?
そして「一葉」の反故をめぐる事件と前世の事件との関連性とは?
最後の最後に、全ての伏線が明らかにされるとき、僕は驚愕しました(苦笑

全てを解き明かす名探偵、意外な所で登場しますのでご注意を(笑

ただ、物語全体を通して、「輪廻転生」は一つのテーマです。
このような悲劇を招いたのもこれが原因だったといえるのではないでしょうか。

最後に柱田がみたのは、一体誰だったのか。

亜愛一郎シリーズとはひと味違う、泡坂ミステリを
ぜひご堪能あれ。


妖女のねむり (創元推理文庫)

妖女のねむり (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫



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湖底のまつり [泡坂妻夫]

本作は本当に泡坂妻夫が書いたのかと
思うような作品でした。
もちろん良い意味で。

「乱れからくり」や亜愛一郎シリーズとは
全く異質の、そして一線を画した、
フランスミステリ風、とでも言えばいいのでしょうか。
官能的な表現も多くみられ、
その点からも上記作品とは全く異なります。

傷心の旅に出た香島紀子は、山間の村「千字村」
で増水した川に流されてしまう、
しかし居合わせた村の青年、埴田晃二に助けられ、
その夜二人は結ばれる。
翌日晃二の姿は消えていた。
村祭で賑わう神社で、紀子は晃二がひと月前に
殺されたと知らされる。
それでは昨日逢った「晃二」は誰なのか?

第一章だけ読むと、
閉鎖された村による隠蔽、それを紀子が
明らかにしていくのかと勝手に思いましたが、
全く違った(苦笑

章立てが各登場人物の名前を冠している
ところがおもしろい。
この章立てにより、我々は同じ情景を何度も読まされているかの
ような錯覚に囚われるのですが、実は
そこに大きなトリックが隠されています。

ある程度ミステリを読んだ方ならば、
「晃二」の正体は途中でわかるかもしれません。
NやPといったイニシャルも。
(イニシャルが分かると言うよりも、とある女性の日記の
記述からおおよそ検討がつきます。)

しかし、本作ではその謎を明らかにする探偵も、
その描写もありません。
婚約を申し込んだ館崎刑事だって、
わかってないでしょう。

さらに最後の描写、
紀子と「晃二」が再び出会う場面。
二人はどうなったのか。
それは我々の想像に任されているのでしょうか。
もしかしたら、再び同じあやまちが繰り返される
可能性を秘めて、物語は幕を閉じます。

来月は「妖女のねむり」が出るそうで、
また楽しみです。




湖底のまつり (創元推理文庫)

湖底のまつり (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/06
  • メディア: 文庫



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喜劇悲喜劇 [泡坂妻夫]

泡坂妻夫さんが逝去されて早1年です。
こうして氏の作品が復刊されていくことで、
やはり惜しい、という感情に囚われます。
もちろん復刊はうれしいことで、
さすが東京創元社さん、と賞賛モノなのですが。

さて本作はとにかく回文にこだわり、
かつ舞台はマジックショー。
主人公は奇術師というまさに泡坂ワールドの真骨頂。

主人公の奇術師楓七郎は毎日飲んだくれの日常。
そこに舞い込んだのは<右近丸>という船上での
長期にわたるマジックショーへの仕事の依頼。
そして真という美しい助手とともにその船に向かいますが・・・

そこで出くわしたのは回文の名を持つ多くの芸人たち。
そしてその名を持つ人たちが次々と殺害され・・・
しかもそれらの死体を平然と隠しのける座長の床間亭馬琴。
回文殺人、犯人の目的は何なのか?

とにかく回文がハンパじゃない。
単なる名前の回文からローマ字変換回文、
各章のタイトルまでも回文・・・
これを作るのは相当苦労だったと思います。

しかも事件は次々と起こるのに、
楓は酔っぱらってばかり・・・(笑
そう、探偵役は別にいるのです。

そして馬琴からとある衝撃の話を聞いてから、
ようやくこの事件の本質が見えてくることになります。
被害者のつながり、犯人の正体・・・

動機がわかった段階で、ある程度犯人の目星はつきます(笑
が、本作はそうした犯人当てよりも、やっぱり回文に尽きる気がしますねえ。
それと奇抜なトリック。
奇術というか思わず「え~そんなこと出来るのか?」と思った
トリックがありました(笑

これからも氏の著作の復刊を願います。



喜劇悲奇劇 (創元推理文庫)

喜劇悲奇劇 (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/01/20
  • メディア: 文庫



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乱れからくり [泡坂妻夫]

亜愛一郎シリーズで有名な泡坂さんですが、それだけではありません。
日本推理作家協会賞受賞作の本作は作者の持ち味が十分に発揮されています。

女流探偵とその新米助手は玩具会社の部長、馬割朋浩の妻真棹の素行調査を依頼される。
しかし馬割夫妻が海外へ向かう途中、隕石に当たり朋浩は命を落としてしまう。

その後、彼ら一族が暮らす「ねじ屋敷」で次々に殺人事件が発生。
奇妙なからくり屋敷と巨大迷路。そしてからくり人形・・・
一体、誰が犯人なのか?

個人的にはこの作品の主人公である新米助手の勝くんがイイですねえ。
感情で行動するこの大胆さ。見習いたい(笑

クライマックスは意外や意外、な展開です。
亜愛一郎だけしか読まれてない方はぜひ。

乱れからくり (創元推理文庫)

乱れからくり (創元推理文庫)

  • 作者: 泡坂 妻夫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1993/09
  • メディア: 文庫


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亜愛一郎シリーズ [泡坂妻夫]

これは必読であると思われる三部作。
キャラは後の水乃サトルや浅見光彦につながるような、二枚目だけど、三枚目。
もっともっと読みたいのに残念ながら、完結してます。
先祖が活躍する亜智一郎シリーズはありますけどね。

私のお薦めは「DL2号機事件」「ホロボの神」「病人に刃物」「歯痛の思い出」
一応三冊ある中すべてから選びました。
どれも秀作であると思います。短編集なので、長編は、という方でも
楽しめます。

創元推理文庫から復刊し、どれも手に入ります。おすすめです。


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