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孔雀屋敷 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

エラリー・クイーンや江戸川乱歩が認めた傑作など、
巨匠の逸品6編を収める必読の短編集!
全収録作品新訳・初訳

一夜のうちに発生した三人の変死事件。不可解な事態の真相が鮮やかに明かされる「三人の死体」。
奇妙な味わいが忘れがたい「鉄のパイナップル」。
不思議な能力を持つ孤独な教師の体験を描く表題作。
そして〈クイーンの定員〉に選ばれた幻の「フライング・スコッツマン号での冒険」など、
『赤毛のレドメイン家』で名高い巨匠の傑作六編を収める、いずれも初訳・新訳の短編集! 
解説=戸川安宣

タイトルに惹かれて購入しました。

表題作は、主人公であるジェーンの奇妙な能力から、
かつてデヴォンに存在していた「孔雀屋敷」で起きた、奇妙な事件が
フラッシュバックするところから始まります。
色々な噂が流れつつも、ジェーンの見た光景こそが真実なのか。
グッドイナフ将軍との問答で物語は進みますが・・・

これは最後の予期せぬ形で真相が明らかになるのが見事で、
読者は、ジェーンの見た光景の青年=将軍であると、薄々は感づいているものの、
それがジェーンの前に明らかになる事実がお見事。

「鉄のパイナップル」。これは奇妙すぎる作品ですね。
あることに固執してしまうジョン・ノイ。それが極限まで行ってしまったことにより、
あろうことか、窃盗と殺人まで犯してしまうという。
ところが、この被害者がある事件の逃亡者であることが判明するというオチ。
今ならば、何らかの病名や障害の名称が付くのかなと、今日的な考えをしてしまいましたが、
一方で、鉄のパイナップルとはどういう飾りなのかなあ・・・

「ステパン・トロフィミッチ」は消えた凶器の先駆的作品でもあるのではないでしょうか。
彼の生涯は非常に過酷ですが、そこへ上手くミステリを混ぜているのが秀逸です。

「三人の死体」は、いやあ、デュヴィーンの推理が余りにも素晴らしいですねえ。
ヘンリーの気持ちは、分からないでもないところが、このミステリの肝でもあると
思いました。
横溝正史先生の『本陣殺人事件』に少し通じるものがありますね。
かつて『世界推理短編傑作集 3』に収録され(そのときは三死人)、
拙ブログでも取り上げていますが、そのときはハウダニットに焦点を当てたと
評していますね・・。昔過ぎて覚えてない。

海外の古典的傑作は、東京創元社様と早川書房様、そして国書刊行会様などが
復刊してくれてますが、やはり文庫が読みやすい。


孔雀屋敷: フィルポッツ傑作短編集 (創元推理文庫)

孔雀屋敷: フィルポッツ傑作短編集 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/11/30
  • メディア: 文庫






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ママは何でも知っている [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。
ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。
ママは"簡単な質問"をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件を
いともたやすく解決してしまう。用いるのは世間一般の常識、人間心理を見抜く目、
豊富な人生経験のみ。安楽椅子探偵ものの最高峰と称される〈ブロンクスのママ〉シリーズ、
傑作短篇8篇を収録。


楽天かAmazonであなたへのオススメで突然出てきたので、思わず購入しました。
藤原宰太郎さんの『世界の名探偵50人』でしか知らなかったんですよね(苦笑)
個人的には「安楽椅子探偵」の代表ともいえる探偵と思ってます。

日本の「安楽椅子探偵」の代表・「退職刑事」は、やはりこのママシリーズを
参考にしているんだろうなあ。
ただ、本作は妻のシャーリーとママとの嫌味の応酬合戦がものすごく面白いです(笑
これは必読だと思います。
それと、ママの親戚の多いこと。それも問題がある人ばかり!!

一見、ママの親戚のよく分からない話で、「それが事件と何の関係が?」と
デイビットの発言させ、実は事件の真相に辿り着くための道程であるという、
お約束かつ王道を歩みつつ、どの事件も唸らせるものばかりで、
素晴らしい短編集でした。

続編もぜひ購入したいと思います。




ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ママは何でも知っている (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/06/15
  • メディア: Kindle版






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Yの悲劇 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。
警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。
解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、
ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは? 
巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、
オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!


ドルリー・レーン4部作の2作目。
古典的名作とは、いつ読んでも抜群に面白いです。
とはいえ、実は初読という、ミステリファンにあるまじき振る舞いです(汗

古くさい部分ももちろんあります。
しかし、それはこれだけ時代が経っているのだから、仕方ない面があります。
しかしそこはミステリの根幹には関係ありません。
本作は今読んでも、十二分に謎解きを楽しむことができます。

もうありとあらゆる方々が、本作品について語られているし、分析もされているし、
もう私ごときが何かを書くのもおこがましい限りですが・・・

犯人のヒントは、ルイザ・キャンピオンの証言でほぼ全て出そろっています。
しかし、それでも犯人が分からない。すごい構成です。

また、レーンがなぜか推理を拒否する態度を示しつつ、
最後に語る真相と、ある事件の真相があまりに見事すぎて脱帽です。

特に犯人が、想定を超えた行動、「概便の指示」に反した行動を取るという、
レーンにとって驚愕の事態が発生し、かつそれをレーンの推理で知る読者も
、つまり私も驚愕しました。
ここから、物語は全く別の方向に向かっていくのです。
ここはもう凄いの一言でした。

前にも書きましたが、○○の悲劇、アルファベットを使用した等の本歌取りの作品
を読んだ方、原点の古典的傑作をぜひ読んで下さい。


Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫 Mク 1-2)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/08/19
  • メディア: 文庫






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殺しへのライン [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーン
とわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、
チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、
文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、
なぜか右手だけは自由なままで……。傑作『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に並ぶ、
〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!


AXNミステリでは、年明けからアンソニー・ホロヴィッツ特集として、
刑事フォイル、名探偵ポワロのホロヴィッツ脚本作品、カササギ殺人事件の映像化、
マーダー・イン・マインドなどが順次放送予定とのこと。
やはり、カササギ殺人事件の映像化は観てみたい。ホーソーンシリーズは
誰がホーソーンを務めるのかで、色々ありそうですけどね。

閑話休題。
文芸フェスへの参加のため、ホーソーン&ホロヴィッツコンビはチャンネル諸島の
オルダニー島へ向かいます。
そこで島を二分する計画を進めるチャールズ・ル・メジュラーが殺害され・・・
一癖も二癖もあるフェス参加者と島住民。彼彼女の中から、ホーソーンは
犯人を見つけられるのか?

この犯人当てまでホーソーンの推理や物語の進み方、やはりクリスティーですね。
オマージュとして書いているのか、筆致を似させているのか、そこから学んで
似ているのか、そのあたりはよくわかりませんが、基本はその路線。

なぜ右手だけが自由にされていたのかは、そこまでの謎ではなく、
(もちろん犯人の絞り込みと追い詰めるホーソーンの推理は言うまでも無く素晴らしい)
2万ポンドの金や脅迫者の方が見事でしたね。

デレク・アボットとホーソーンの因縁は、本作で一応の終了をみましたが、
とはいえ、この終了、特にアボットの死は不可解で、謎解きもありません。
彼が発したある言葉も、次作以降に繋がる謎ですし・・・

ホーソーンの「謎」は次作で解明されるのでしょうか?


殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/09/12
  • メディア: Kindle版






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ヨルガオ殺人事件 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

カササギ殺人事件』から2年。クレタ島でホテルを経営する元編集者のわたしを、
英国から裕福な夫妻が訪ねてくる。彼らが所有するホテルで8年前に起きた
殺人事件の真相をある本で見つけた──そう連絡してきた直後に娘が失踪したというのだ。
その本とは名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』。それは、
かつてわたしが編集したミステリだった……。
巨匠クリスティへの完璧なオマージュ作品×英国のホテルで起きた殺人事件!
『カササギ殺人事件』の続編にして、至高の犯人当てミステリ!

“すぐ目の前にあって──わたしをまっすぐ見つめかえしていたの"
名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、
ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。
『愚行の代償』の舞台は1953年のイギリスの村、事件は一世を風靡した女優の殺人。
誰もが怪しい事件に挑むアティカス・ピュントが明かす、驚きの真実とは……。
ピースが次々と組み合わさり、意外な真相が浮かびあがる──
そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、ミステリ界のトップランナーによる傑作!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
と、もう1月も半ばを過ぎてしまいました。
越年し過日読了したのが、この『ヨルガオ殺人事件』
以下、ややネタバレ。




いや、ずいぶんと読了まで時間がかかってしまいました。
決してつまらなかったとか、そういう訳ではなく、なんでしょうか。
1つ言えるのは、海外ミステリは登場人物を何度も見返すのが多くなり(苦笑)
今回の場合、作中作もあるため時間がかかってしまったのかなあ。

『カササギ殺人事件』の続編で、名探偵アティカス・ピュント、再び。
そして作家アラン・コンウェイの元編集者であるスーザン・ライランドも当然ながら
再び登場します。


前作は作中作が断然面白かったのですが、今回はどちらも楽しめました。
それにしても、ピュントの「名探偵、みんな集めてさてといい」の場面は、
本当にエルキュール・ポワロを彷彿とさせますね。
前作は病に冒されて、かなり衰弱していたので、本作のピュントはまるで別人です。
ホームズのように、犯罪に関する本まで書いているとは・・・。
なんというか、ポワロっぽくないので、やや鼻につきますね(笑

ところで話は少し脱線しますが、過日AXNミステリで
「アガサ・クリスティー ポワロ&マープルとともに歩んだ100年」を観ました。
ここにホロヴィッツ氏も登場していて、おお、こういうルックスなのかと。
ちなみにヘイスティングス大尉役のヒュー・フレイザー氏、
ジャップ主任警部役のフィリップ・ジャクソン氏も出ていて、かなり楽しめました。

閑話休題。
本作は事件の、というかスーの事件関与の仕方が中々面白く、
しかも、最終的にその関与のきっかけに全ての謎を明らかにする鍵が
あったというのが実にお見事。
「この本の最初のページを読んで確信した」というセシリーの言葉。
これが本当に全てを物語っていたという、非常に練られた構成だったと感じました。

また、ピュントと同様、スーは本事件の関係者のあらゆるものを暴いていき、
最後に真犯人を名指しし、その犯行を明らかにするところ、つまり「みんな集めて」
の場面もこれまた読み応え十分。その活躍はピュント以上でしょう。

個人的にはその前の<荒地の家>での、マーティン・ウィリアムズへの名推理が
一番好きですね。フクロウの石像を落としたのは藪蛇以外の何物でも無い。

ただ、こちらの事件はセシリーが異常に相性であるとか、占いであるとかを
信じるという(これを看破したスーも見事)性格が災いしたのはわかるのですが、
本人は夫の事を愛していたのでしょうかねえ。というか浮気しているし。
まあ、本当に好きな人とは結婚出来なかった可能性はありますが。

事件を依頼してきたトレハーン夫妻も、最後の謎解きやスーへの手紙など、
自分たちで依頼してきてその態度はないだろう、とやや憤慨しました。
真実が決して依頼人にとって幸せなものかどうかなど、解るはずはないのに。
まあ、手紙では反省していたので許しますが(笑

ピュントの事件は最終作を読んでいるだけに、そもそも登場人物に違和感を感じてしまい、
なんとなく怪しいなというのがあったので、メインよりも少し驚きは劣りましたね。
最初の事件は、索条痕が2つあるというのが極めて大きなヒントで、
あとは真犯人は誰なのかというところ。
2番目の事件は、正直なところあまりその風景、イメージが浮かびませんでした。
(私の想像力不足ですね。)
しかしピュントはこの事件はただ働きですね。

本シリーズ、最後を読む限りではこれで完結のような気がするのですが、
アティカス・ピュント・シリーズだけを執筆して刊行してほしいなあ。
まだまだタイトルだけ登場して、語られていない事件が多いですし。



ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版



ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版










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災厄の町 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

結婚式直前に失踪したジムが、突如ライツヴィルの町に房ってきた。
三年の間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと無事に式を挙げ、
ようやく幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、
ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つける。そこには妻の死を知らせる文面が…
旧家に起きた奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは?
本格ミステリの巨匠が新境地に挑んだ代表作を最新訳で贈る。

以下、ネタバレがあります。




はっきりと覚えていないのですが、『十日間の不思議』の新訳版というのが
Amazonさんのオススメか何かで出てきたんですよね。
で、よくよく見てみると、架空の町・ライツヴィルを舞台とした、シリーズとのこと。
それだったら、それを最初から読まないとと思い、購入しました。
ちなみに、初めて電子書籍でミステリを購入しました。
本書と『フォックス家の殺人』、いずれも過日のプライムデーの関係で、
Kindle版がかなり安くなっていたので。
そして『十日間の不思議』は新訳文庫版で購入。


このライツヴィルという、町がいいですね。良い意味でも悪い意味でも。
前半のライト家への接し方と、後半のそれのギャップがすごすぎます。
金田一耕助シリーズと少し似た感じがありますが(旧家が舞台)、
いかにも地方や田舎に多い、噂話、すぐに広まるゴシップ等々・・・

エラリイは何が気に入ったんでしょうかね?小説を書くのに打ってつけだったのか?
そうだとすると、それは環境の問題なのか、ライツヴィルに住む人々の問題なのか、
どちらなんでしょう。
しかも偽名で滞在します。


そして本作で描かれる事件、解決までが非常に長い!
ライト家を取り巻く人間模様が精緻に描かれていきますが、事件という程の事が
起こるのはずっと後。そう、ジム・ハイトがライツヴィルに戻ってきてから
進行していきます。この発生までも結構長いですね。

やはり陪審員裁判のところが、私は個人的に一番好きです。
特にエラリイが本名を明かし、そしてあの衝撃的な証言。
一方で、この段階では未だエラリイにも真犯人は不明だということも、
この証言から明確なんですよね。

エラリイが真実に気づくのは、本当にちょっとした、3通の手紙が出てきた場所から。
しかし、この真相は凄まじい。
ジムがライツヴィルに帰ってきた後、ほぼ即座にノーラは結婚していますが、
それだけ燃え上がっていたにもかかわらず、3通の手紙から、
彼女も真相に気づいたのでしょう。

そしてジムもそれを受け入れ、頑なに口を閉ざしています。
ノーラの最期があまりに壮絶なので、エラリイもこの真相は
パットとブラッドフォードだけにしか伝えていません。
真相が分かってよかったのかどうか、それすら悩む事件です。

いやあ、私なんか言うのもおこがましいのですが、これは傑作です。


災厄の町〔新訳版〕

災厄の町〔新訳版〕

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: Kindle版










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その裁きは死 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

実直さが評判の弁護士が殺害された。裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。
現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。
わたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、
奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて―。絶賛を博した『メインテーマは殺人』に続く、
驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。

本書は昨年の積ん読本でした。
ホロヴィッツ作品は、ホーソーンシリーズより、ピュントの方が好きだなあというのを
前作の時に書いたような記憶があります。
なんか読む機会を中々本書は得られず(?)、今年も上半期が終わるかという頃に読了。
以下、ネタバレあり。






前作ほどホーソーンの嫌味な場面は描かれてません(笑)
一方、担当するグランショー警部とミルズ刑事がトンデモなく不快です(笑)
ラストにこの二人が大恥をかくところが無かったのが非常に残念!

本書において謎を解くための大きな手がかりは実は2つ(個人的感想です)。
1つは普通に読んでいればわかる、被害者リチャードが遺した「もう遅いのに」という言葉。
この言葉は何を意味するのか、それがわかると真犯人に直結します。

もう1つは、最後のホーソーンの謎解きを読まなければ気づきませんでした。
ホーソーンの過去を探るために描かれたと考えられた読書会の場面。
そしてさらりと出る「絹の家」という本。
つまり、シャーロック・ホームズが本物語に隠された手がかりなんですね。
あくまで個人的な分析なので、全くの的外れかもしれませんが、
これは中々上手く潜り込ませたなーと言うのと、ある意味パスティーシュ的な意味合いも
含まれているのだと思います。

アンノとアダムズが隠していた極秘収入は、作家家業のリアルを描いているようでしたね。


その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版







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刑事コロンボの帰還 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

【 コロンボ生誕60周年記念 】
いまなお名作と語り継がれる「 刑事コロンボ 」。
2020年は、『 殺人処方箋 』の原点となったレビンソン&リンクによる
ドラマ"Enough Rope"が放送され、初めて「コロンボという名の刑事」
がテレビに登場して60周年のアニバーサリーイヤー
(さらに2021年はシリーズ放送開始50周年)にあたります。
本『 刑事コロンボの帰還 』においては、作家・山口雅也氏の製作総指揮として、
研究のみならず著名作家による短編作品や新訳作品など創作を数多く掲載しています。


Amazonさんの商品紹介を載せておいて大変恐縮なのですが、
楽天お買い物マラソンで購入した商品(苦笑)
いや、こんなのが出ていたのかと。知りませんでした。

しかも発売元は、刑事コロンボのノベライズを刊行してきた二見書房!
いよいよ本命が登場かと。

ただし内容的には『刑事コロンボ完全捜査ブック』に軍配でしょうか。
作品解説は読み比べできるかと思いますが、
トリビュート小説編をどう捉えるか、で本書の評価が変わってくるのだろうと思います。

私としては(まだ全て読み終わってませんが)こうした試みは良いと思いますが。
(例えば『金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 』なども非常におもしろく読みました。)
ちょっと頁数を取り過ぎかなと思います。
特にノベライズ版を出していたという強みみたいなものを入れてもらいたかったなあ。
(無いものねだりかもしれませんが)

トリビュート小説を書かれている大倉崇裕さんが作品解説してもらいたかったですね、

ところで本作はあくまで旧シリーズのみを対象とし、
私がリアルタイムで観ていた「新刑事コロンボ」は対象外です。
『完全捜査記録』が全シリーズを網羅していたのにたいし、この点も不満です。

確かに新シリーズは旧シリーズに比べ、作品の出来が良くない、というのは
あるのですが、やはり全作網羅すべきでしょう。
(よく読むと、『刑事コロンボの帰還2』で解説予定とありますが、それはちょっと
フェアじゃないような気もしますね。)

とかなり辛口に言いつつも、『帰還2』が出たら購入してしまいそうです(笑)


刑事コロンボの帰還

刑事コロンボの帰還

  • 出版社/メーカー: 二見書房
  • 発売日: 2020/10/26
  • メディア: 単行本



刑事コロンボ完全捜査ブック

刑事コロンボ完全捜査ブック

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 単行本



刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX [Blu-ray]

刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • 発売日: 2011/12/02
  • メディア: Blu-ray



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エラリー・クイーンの新冒険 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人里離れた荒野に建つ巨大な屋敷が、一夜にして忽然と消失するという不可解極まる謎と
名探偵エラリーによる解明を鮮烈に描き、クイーンの中短編でも随一の傑作と評される
名品「神の灯」を巻頭に掲げた、巨匠の第二短編集。そのほかにも野球、競馬、ボクシング、
アメリカンフットボールが題材のスポーツ連作など、これぞ本格ミステリ!
と読者をうならせる逸品ぞろいの全9編収録。

またまた久しぶりの更新です。
以下、少しネタバレ。





横井司さんの「あとがき」をみると、『冒険』と『新冒険』の成り立ちや収録作品の
紹介があるのですが、この『新冒険』、確かに分が悪いですね。



ただ、やはり最初の「神の灯」が素晴らしい。傑作の一言に尽きます。
本書はこの作品で成り立っていると言っても過言ではありません。

ソーン弁護士による、クイーンへ助けを求めるところの描写は鬼気迫るものですし、
その後の屋敷焼失という超特大の謎。
ただ、本書をよく読むと、この前振にあるトリックが(しかも本物語の真の核心トリック)
個人的には強烈でした。
それでいて、謎を解くパズルピースは物語の中にしっかりと埋め込まれている。
最後の、クイーンの極めて合理的で論理的な推理がまたお見事。

「がらんどう竜の冒険」も見逃せない、いや読み逃せない作品です。
無くなった、たった1つのドアストッパーから、一気に推理を組み立てるエラリーのかっこよさ。
いやすごい。受付伝票から何を読み取れたのか。オススメです。

スポーツシリーズはやはり野球の「人間が犬を嚙む」がオススメ。
クイーン警視とヴェリー部長刑事、そしてエラリーの三者三様の野球談義と、
ほぼ同時並行で事件の謎も解いていくという、かなりカオスな作品でもあります。

それにしても「神の灯」はすごい。必読です。



エラリー・クイーンの新冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

エラリー・クイーンの新冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/07/22
  • メディア: 文庫



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エラリー・クイーンの冒険 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

犯罪学の講師になったエラリーが、学生たちと推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」、
サーカスの美姫殺しを扱った「首吊りアクロバットの冒険」、
切れ味鋭いダイイングメッセージもの「ガラスの丸天井付き時計の冒険」、
『不思議の国のアリス』の登場人物に扮した人々が集う屋敷での
異様な出来事「いかれたお茶会の冒険」など、
名探偵の謎解きを満喫できる全11編の傑作が並ぶ巨匠クイーンの第一短編集。
初刊時の序文を収録した完全版。

またまた久しぶりの更新です。
ところで、実はエラリー・クイーンの著書も初読です(汗)

元々の原題が僕には分からないのでなんとも言えないのですが、
収録作品が全て「冒険」で統一されているのが、なんか良いです。

また、法月綸太郎さんを先に読んでいたので、どうしてもエラリーが綸太郎で
想像してしまいます(苦笑)
とはいえ、エラリー・クイーンは常に自信満々。本書所収のどの事件においても、
この姿勢は全く崩さないところがまた良いですね。

オススメ、非常に難しい。「見えない恋人の冒険」「チークのたばこ入れの冒険」
「双頭の犬の冒険」・・・ここに挙げただけでなく、どれも粒そろいの作品です。
意外性を突いてきている「ひげのある女の冒険」。
「ガラスの丸天井付時計の冒険」はダイイング・メッセージものの快作ですが、
それ以上に犯人が自滅した誕生日プレゼントのメッセージがお見事。
彼しか犯人たり得ないという、素晴らしい証拠品。

最初の「アフリカ旅商人の冒険」は多重解決ものですが、
ここからすでに、極めて緻密な論理を組み立てて、犯人を指摘するエラリーの姿が描かれます。

「首吊りアクロバットの冒険」は、なぜわざわざロープを凶器に選んだのか?がポイント。
この謎を丁寧に解き明かしていきます。

この作品でエラリーは「火を見るよりも明らかだったんですよ」と父親との会話で話しますが、
基本、エラリーにとって全ての事件はこれに該当しているのではないかと思わせるほど、
所収作品での、彼の推理は素晴らしい。
続編の新冒険も楽しみです。



エラリー・クイーンの冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

エラリー・クイーンの冒険【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: 文庫



エラリー・クイーンの冒険 (創元推理文庫 104-15)

エラリー・クイーンの冒険 (創元推理文庫 104-15)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/09/12
  • メディア: 文庫



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あなたは誰? [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「ウィロウ・スプリングには行くな」匿名の電話の警告を無視して、
フリーダは婚約者の実家へ向かったが、到着早々、何者かが彼女の部屋を荒らす事件が起きる。
不穏な空気の中、隣人の上院議員邸で開かれたパーティーでついに殺人事件が…。
検事局顧問の精神科医ウィリング博士は、一連の事件にはポルターガイストの行動の
特徴が見られると指摘する。本格ミステリの巨匠マクロイの初期傑作。

またちょっと間隔が空いてしまいました。
以下、ややネタバレ。






原題は「どちらさまですか?」という、電話を受けた際に言う言葉だそうです。
この原題・邦題が表す意味こそ、本作で描かれる事件の核心を見事に突いているのですが、
それは、この核心が明らかにされない限り、まずわかりません。

そして、異常なまでに容疑者が少ないのも、マクロイの特徴です。
フレイはなぜ脅迫されているのか?なぜウィンチェスターが殺害されたのか?
マキシム・ルボルなる、謎の人物の正体は?
ウィンチェスターが狡猾な恐喝犯であることが明らかになっても、事件の全体像は
まるで見えません。まさに霧の中。

しかし、本事件に隠された、上記の核心をウィリング博士が指摘することで、
漠然とではありますが、その核心(「副人格」)が何らかの動機を持っているんだろう、
という所まではわかりますが、ところが私にはその先はとても行き着かず。

容疑者の描かれ方もこれまた上手くて、それぞれが自分らしく生きているかといえば、
そうではない。どこかやりたくはないけれども、やっているという、意志に反した
行動を取る者や、自分の感情を抑えつけている者等々・・・
核心をウィリング博士が明らかにすると、誰もがもしかしたら自分ではないか?
と疑い出すのです(第十章 誰も眠れない)。

副人格、つまり多重人格が本書のテーマなのですが、それを本格ミステリに
用いるというのは、謎解きをメインとする小説ではアンフェアではないのか?
という意見もあるのではないかと思います。
ところが、本書はこの多重人格を扱いつつも、事件の真相そのものは
大どんでん返しといっても過言ではありません。
フレイが受けた脅迫、ウィンチェスターの殺害、これらが一気に反転し、
物語は終幕を迎えます。
かなり悲しい結末なのですが、一つだけ、アーチ-とエリスが幸せになるのが
救いでしょうか。
この反転も見事ですが、犯人の決め手となるある事実をウィリング博士が
看破するのですが、これが秀逸。それだけでも傑作といっていいでしょう。

ところで、アーチ-とウィリング博士は親しく、そして敬語も特に使わず
会話をしているのですが、同じくらいの年齢なんでしょうかね。
今までウィリング博士シリーズを読んできましたが、
「新弁護士ペリーメイスン」のレイモンド・バーを勝手に投影していました(苦笑)。
まだ初期の作品なので、結構若い頃なのかなあ。


あなたは誰? (ちくま文庫)

あなたは誰? (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/09/09
  • メディア: 文庫



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メインテーマは殺人 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、
自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で
知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。
自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!
7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!

書き手であり、一人称の「わたし」を使い、物語を進めるのが、作者の分身(?)
ともいうべき、ホロヴィッツ。探偵役はホーソーンという元刑事。
関係性は非常に微妙ながらも、ホームズ&ワトソン型のシリーズとして
中々面白く読みました。

資産家の老婦人であるダイアナ・クーパーがなぜ殺されたのか、
そしてその事件を本にまとめようという依頼を突然持ちかけられたのがホロヴィッツ。

第一章を見せて、全てに駄目だしをくらい、憤然とするホロヴィッツですが、
次第もホーソーンを先んじようとする試みが出てきたり。

スピルバーグとの会話の最中に、突然ホーソンが割り込んでくる場面は
現実的ではないにしろ、物語上でも、ホーソーンの人格を疑ってしまいましたね。
そこまで変人として描かれているわけではないので、余計にホーソーンの振るまい
だけでなく、この場面そのものが奇妙に感じました。

ところで、現実の事件の捜査とともに、その捜査過程などの本も執筆しているという
設定が、実は事件解決のヒントでもあるというのが、本作最大のアイディアではないでしょうか。

ホーソーンに指摘された「事実だけをきっちり書きしるし」というのも、
物語終盤でようやくその意味がわかるんですよね。

息子であるダミアン・クーパーが殺害されたことで、私自身も、途中ホロヴィッツが
披露した推理と同じ事を思いましたが、あっさりホーソーンに袖にされました(笑)。
このあたりは、完全に作者のミスリードに嵌まったなと思います。

なお、解説を読むと、本作はシリーズ物第1作のようです。
つまり、ホーソーン&ホロヴィッツは今後何作にもわたりコンビを組むわけですね。

その点を加味すると、本作で触れられたホーソーン個人のことなどは、
今後のシリーズに期待でしょうか。


メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫



メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集5 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、一九六〇年の初版以来版を重ね現在に至る『世界短編傑作集』
を全面リニューアル! 最終巻となる本巻にはアリンガム「ボーダーライン事件」をはじめ、
ベントリー「好打」、コリアー「クリスマスに帰る」、アイリッシュ「爪」、
パトリック「ある殺人者の肖像」、ヘクト「十五人の殺人者たち」、ブラウン「危険な連中」、
スタウト「証拠のかわりに」など珠玉の名作を収録!


以下、ややネタバレあり。


本書がついに最終刊。
アリンガムの名探偵アルバート・キャンピオンシリーズは初読。
何年か前に短編集が刊行され、あれが結構気になっていました。
本作『ボーダーライン事件』は読んで字の如く、トリックもまさにボーダーラインという
中々に面白いです。
似たようなのが「踊る大捜査線」でもあった気がしますが、あれはものすごく意図的ですが(笑
短編集、欲しくなりました。

ベントリーの『好打』は、大胆なトリックを用いた先例とでも言うのでしょうか。
物語上ですでに振られていますが、僕も単に落雷と思ってました(笑

『爪』はおおよその予想がつくものの、このラストの余韻含め、
後世のミステリに与えた影響は大きいのではないでしょうか。
完全な解決ではないものの、真実を読者にそれとなく告げていて、それでいて
物語の登場人物は真実に行き着いたか不明であるという、簡単そうで
難しい表現だと思います。

『十五人の殺人者たち』は謎に包まれている、とある会合での出来事。
現在はこんなことすら行われず、隠蔽に走るというのはなんとも情けない話です・・・。

『危険な連中』は本書では個人的に一番オススメ。
ミステリというよりサスペンスなのですが、登場人物の、ある意味ムダな(笑)心理戦が
素晴らしい。そしてラストの締め方も皮肉が効いていて、実に面白いです。

「妖魔の森の家」はカーター・ディクスンによるHM卿の事件簿ですが、
恥ずかしながら、こちらも初読。ディスクンそのものを初読なのですね。
この事件は、かつて起きた少女の消失トリックの謎を解き明かすのが卿の役目
なのですが、現実におきた少女の「消失」をも解き明かすところはさすが。
しかし、この明かされた真相はタイトルに相応しい内容だと思います。

完結は寂しいものの、改めて現在の作家さんたちによる傑作短編集の
刊行を願いたいですね。



世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集5【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 文庫



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世界推理短編傑作集4 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、一九六〇年初版で以来版を重ね現在に至る『世界短編傑作集』
を全面リニューアル!第四巻にはコッブ「信・望・愛」、ノックス「密室の行者」、
バーク「オッターモール氏の手」、ハメット「スペードという男」、ダンセイニ「二壜のソース」、
ウォルポール「銀の仮面」、セイヤーズ「疑惑」、クイーン「いかれたお茶会の冒険」、
ベイリー「黄色いなめくじ」の一九三〇年代以降の名作九編を収録!


以下ややネタバレ。




本書所収で最も有名なのは「二壜のソース」ではないでしょうか。
ラストの1行が持つ恐ろしい意味が読者に衝撃を与えます。

個人的に最も恐ろしいと感じたのは「銀の仮面」。
これ、推理短編なんでしょうか。
ホラー小説に感じました。そして極めて後味も悪い作品です。
藤子不二雄Aの『魔太郎がくる』にも似たような話がありますが、
これはその先駆けなんでしょうね。
相手の善意を逆手に取っているのが、さらにたちが悪いですけど。
(というか、初めからそこを狙っていたとも読めますけど)

これに最初之「オッターモール氏の手」も推理小説というよりも、
サイコサスペンスに近い印象を持ちました。

クイーンの「いかれたお茶会の冒険」は傑作ですね。
単純な謎を、名探偵自身が「奇妙な味」に実は仕立てているという、
かなり面白い趣向です。
徹頭徹尾、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』を意識して書かれてているのも
良いのです。特に「鏡」からクイーンがヒントを得るところが個人的には秀逸。

「密室の行者」は、密室内に、食べ物や飲み物があったにもかかわらず、
餓死するという、極めて不可思議な謎が魅力的です。
トリックはよく上手くいったなあと思いますが、これに気付いた探偵を褒めるべきでしょう。



世界推理短編傑作集4【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集4【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/02/12
  • メディア: 文庫



世界短編傑作集 4 (創元推理文庫 100-4)

世界短編傑作集 4 (創元推理文庫 100-4)

  • 作者: E.ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1961/04/07
  • メディア: 文庫



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世界推理短編傑作集3 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

珠玉の推理短編を年代順に集成し、1960年初版で以来版を重ね現在に至る
『世界短編傑作集』を全面リニューアル!!第3巻にはフィルポッツ「三死人」、
クリスティ「夜鶯荘」、ワイルド「堕天使の冒険」、ユーステス「茶の葉」、
ウイン「キプロスの蜂」、ロバーツ「イギリス製濾過器」、ヘミングウェイ「殺人者」、
コール夫妻「窓のふくろう」、レドマン「完全犯罪」、バークリー「偶然の審判」
の1920年代の作品10編を収録した。

以下、ネタバレあり。





馬鹿馬鹿しい一言かもしれませんが、本当にどれも傑作です。
「三死人」は、動機、いわばハウダニットに焦点をあてた傑作。
名探偵デュヴィーンはあくまで三人の性格のみを知った上での推理、と付け加えますが、
これがまた実に見事な推理。

クリスティの「夜鶯荘」も初読。
知り合ってすぐに結婚した男女。
夫のちょっとした言動や、ひょんなことから知る夫の嘘、そして鍵のかかった引き出しに
入っていた新聞記事から、夫が自分を殺そうとしているのでは?と疑心暗鬼に陥り、
それから反抗していくまでが一気に語られます。
ラストまで読むと、怖いのは夫なのか妻なのか中々わからなくなる作品。
夫も意外と小心者なのではないかとちょっと思ってしまった(笑

「茶の葉」はもう言わずもがな、ミステリ好きなら即気付くトリックでしょう。
しかし、茶の葉がどう関係するのかと、法廷で真実を暴くという場面が良い。

「窓のふくろう」は密室を扱った殺人事件なのですが、
実の所犯人はもうあからさまなのです。
ただし、この表題が一番ミステリアスというか、中々凝っているなあと感じます。

「完全犯罪」は「推理小説で終わる推理小説」と評された作品。
名探偵=名犯人という構図をそのままミステリとした稀な作品。
あ、しかし名探偵ではないからこそ、この犯罪が生まれたというのは
また皮肉です。

すでに4巻も刊行されました。こちらも楽しみです。



世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集3【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: 文庫



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カササギ殺人事件 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

名探偵アティカス・ピュント・シリーズ最新刊『カササギ殺人事件』の原稿を読み進めた
編集者のわたしは激怒する。こんなに腹立たしいことってある??著者は何を考えているの?
著者に連絡がとれずに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想だにしない事態だった――。
クラシカルな犯人当てミステリと英国の出版業界ミステリが交錯し、とてつもない仕掛けが炸裂する!
夢中になって読むこと間違いなし、これぞミステリの面白さの原点!

1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。
鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、
あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。
消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。
現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた
完璧なるオマージュ作品!

作中作である「カササギ殺人事件」は実に見事な作品です。
名探偵アティカス・ピュントはホームズでも、ポワロでもない、別のタイプの名探偵ですが、
サクスビー・オン・エイヴォンという片田舎、准男爵が住むパイ屋敷、
開発計画が進む村の森・ディングル・デル、噂好きの家政婦の死etc・・・
これでもかと、確かにクリスティへのオマージュに満ちあふれています。
そしてこれがまたおもしろい。
ピュントは村の人々それぞれに話を聞き、そしてその話を聞く一方で
住民たちの顔もまた見えてくるのです。
牧師夫婦の行動、老医師の遺した言葉、追放された准男爵の妹。
登場する人物なにやら謎めいていて、それでいて魅力的なのです。

ポワロでもない、と書きましたが、実のところ捜査方法や着眼点などは結構似ている
気がしました。
下巻のかなり後になり、ようやくピュントから真相が語られるのですが、
家政婦の残した日記の真の意味や、暖炉の燃え滓と手紙、この2つが事件の真相を明らかにする
決定的なものであることをピュントが見抜く所は思わず唸りました。

この作中作「カササギ殺人事件」は、確かにこれは昨年度No.1というのは頷けます。
元々作者であるアンソニー・ホロヴィッツ作品は、シャーロック・ホームズの正当な続編で
ある『絹の家』を読んだ経験がありますが、あれはホームズものにする必然性は
感じませんでしたね。ミステリとしての出来云々よりホームズ譚かどうか、が
かなりウエイトを占めていたので、あまり好きではありませんでした。

しかし、本書は作中作で言えば、非常に楽しめました。
一方で、本作で描かれるまさに現代の事件、つまりカササギ殺人事件を書いたアラン・コンウェイ
の死に隠された真相は、うーんという感じ。
アランがピュントシリーズに隠したメッセージそのものは、中々面白いとは思います。
余談ですが、日本語だとネットでしか見ない言葉なのですけど、原文は何なんでしょう?

しかし、アランを殺した犯人の動機がそこにあったとしても、ちょっと納得できないかなあ。
しかも、真相が明るみにでても犯人を庇うような言動があったというのもどうかと。

このメッセージが出たところで、そこまで売上に影響が出るのだろうかと?でしたが、
結果的に物語内でも、ほとんど影響しなかったと語られているので、何のための
殺人だったのかと。
しかし、ある意味、物語上の殺人事件と、現実で起こる殺人事件の落差を描いている、
とも読めるので、そう考えるとそこまで悪くないかもしれないですね。

本書には数多くのオマージュ、パスティーシュがふんだんに盛り込まれているようなので、
それらを知っている方は、さらに楽しめるのではないかと思います。
いずれにせよ、アラン著の「カササギ殺人事件」はオススメです(笑


カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: 文庫



カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: Kindle版



カササギ殺人事件 下 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 下 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/28
  • メディア: Kindle版



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世界推理短編傑作集 2 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。
本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全5巻に収録し、
併せて19世紀半ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。
本巻には、“奇妙な味”の短編「放心家組合」をはじめ、英米以外の作家であるグロラー、
ルブランの作品などを収録した。


以下ややネタバレ。



本作最大の個人的オススメはルブランの「赤い絹の肩かけ」
これまた恥ずかしながら、ルブランのルパンシリーズは小学生の頃に読んだ記憶があるくらいで、
実質初読と言ってよいです。
ルパンが怪盗だけでなく、名探偵としても活躍する本編は見事の一言。
推理の過程はあのシャーロック・ホームズを彷彿とさせますし、
そして、なぜ彼がこんな推理をガニマール警部へしたのかという最大の謎が
最後に明かされますが、これこそ怪盗ルパンの面目躍如ではないでしょうか。
短編集を読みたくなりました。

奇妙な味に区分されている「放心家組合」は良く出来た作品ではあると思います。
最初依頼されていた事件ではなく、全く別の犯罪を暴き出すという筋立てはかなりおもしろい。
そして、邦題の「放心家」というのがどこに登場するのか、
これが実に皮肉が効いていて絶妙。何を、放心しているのか。実にうまい。
そしてこんなところに目を付ける集団も頭が良い。

とはいえ、最後は事実上名探偵は敗北してしまうのが個人的には残念でしたね。
むろん名探偵短編集ではないので、必ずしも探偵が勝利するわけではないのですが、
2の一発目がこれというのがうまい構成なのか、個人的にひっかかりました。

科学者探偵の代表格たるゾーンダイク博士が、まさにその科学を駆使する
「オスカー・ブロズキー事件」は、これもあまり受け付けなかったですね。

比較するのも相当失礼なのですが、
サスペンスドラマとかで刑事の勘で捜査する部長刑事と、It(PC)を駆使するバディコンビという
ステレオタイプ的なドラマがかなーりありましたが、
ここまで科学を強調されると、ITをやたら強調しまくるこのドラマを思い出してしまいました。

ブラウン神父の「奇妙な足音」はもはや何も言うまでもなく、ブラウンものの中でも
1、2を争う傑作ではないでしょうか。

今月は3が刊行されます。その前にカササギ殺人事件かな?


世界推理短編傑作集2【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集2【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫



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世界推理短編傑作集 1 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

欧米では、世界の短編推理小説の傑作集を編纂する試みが、しばしば行われている。
本書はそれらの傑作集の中から、編者の愛読する珠玉の名作を厳選して全五巻に収録し、
併せて19世紀否ばから1950年代に至るまでの短編推理小説の歴史的展望を読者に提供する。
本巻には推理小説の祖といわれるポオから、ドイルを経て20世紀初頭のフットレルまでを収め、
最初期の半世紀を俯瞰する。

そもそも旧版を未読(絶版?)というミステリ好きなのに申し訳ありません。
新版では誰もが知るポオの「盗まれた手紙」とドイルの「赤毛組合」が新たに収録されています。
新潮文庫などでポオの作品は復刊していますし、ドイルはどの出版社でも読めますが、
確かに解説の「画竜点睛を欠く」というのは一理ある。
ミステリをあまり読んだことのない人が本書を手に取るとはあまり思えませんが、
そういう人たちにはこの2作品は良いかもしれません。

江戸川乱歩は奇妙な味に重きを置く作品として「赤毛組合」を挙げていますが、
(謎の構成に重きを置くには「唇のねじれた男」)
まさに正鵠を得るとやはり感じます。このトリック(というか設定でしょうか)は
実に見事だし、読者を物語に一気に惹き込みます。

収録作では、隅の老人が活躍する「ダブリン事件」、<思考機械>の異名を持つ
ヴァン・ドゥーゼン教授の本格密室推理「十三独房の問題」
キャサリン・グレーンの「医師とその妻と時計」が印象に残りました。

隅の老人は恥ずかしながら初読ですが、ずいぶん饒舌だなあという第一印象(笑
ある会話から犯人を導き出すのですが、言われてみれば!と感心しました。
しかし、老人は裁判を傍聴に行っているんですよね。
これは安楽椅子探偵になるのかとちょっと思いました。

「十三独房の問題」はあまりにも見事すぎる作品。
完全密室を思考機械のドゥーゼン教授がいかに脱出するのか。読み応え充分です。

「医師とその妻と時計」はハウダニットの先駆的作品ではないでしょうか。
盲目の医師、そしてその妻の感情が非常に繊細かつ詳細に描かれており、
登場人物は少ないながらも、物語に惹き込まれました。

第2巻もそろそろ読み始めます。



世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

世界推理短編傑作集1【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 文庫



世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

  • 作者: ウイルキー・コリンズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1960/07/24
  • メディア: 文庫



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悪意の夜 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

夫を事故で喪ったアリスは、亡夫の書斎でミス・ラッシュという知らない女性の名が
書かれた封筒を見つける。そこへ息子のマルコムが、美女を伴い帰宅した。
美女の名前はラッシュ……女性が去ったのち、封筒も消えていた。彼女は何者で、
息子に近づいた目的、夫の死との関連は? アリスの疑惑と緊張が深まるなか、ついに殺人が……。
迫真のサスペンスにして名探偵による謎解きミステリでもある、ウィリング博士もの最後の未訳長編。

マクロイという作家は序盤の叙述で、読者を物語に惹き込むのが抜群に上手いと思います。
本書も、夫が遺した封筒、書かれていた女性の名前、息子のガールフレンド、
そして「彼女は私の娘ではない」というミス・ラッシュの父親の発言等々・・・
主人公のアリスがパニックになるのは必然ですね。

この辺りは前回読んだ「牧神の影」にプロットが似ています。
序盤の展開、容疑者の少なさ、夫(伯父)が最後にしていた仕事・・・

ただし、「牧神」と違うのは、ウィリング博士が登場するのと、物語の終幕でしょうか。
個人的にはもう少しミス・ラッシュには見せ場を与えて欲しかったなと思います。
その辺りの話が夫の手記(封筒に入っていた書類)で明らかにされますが、
もう少し彼女に語らせても良かったなあと。

ウィリング博士の最後のセリフ「それでいいのです」が印象的でした。




悪意の夜 (創元推理文庫)

悪意の夜 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/08/22
  • メディア: 文庫



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逃げる幻 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

家出を繰り返す少年が、開けた荒野の真ん中から消えた―
ハイランド地方を訪れたダンバー大尉が聞かされたのは、そんな不可解な話だった。
その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。
そして二日後、少年の家庭教師が殺される―スコットランドを舞台に、
名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。

ついに創元推理文庫のウィリング博士シリーズにも手を出しました(笑
先月に『悪意の夜』が出たので、それ以前に刊行されたものをと思い、まずは本書を。

少年の消失、そしてその後起こる殺人事件の密室。これらは実のところ
そこまで大きな問題ではありません。

本書のすごさは、少年がなぜ家出を繰り返すのか?途中明かされるダンバー大尉の真の目的。
本書が書かれた第二次世界大戦直後という戦争の傷跡と極めて深く関連させ、
それでいて、実は最初から叙述の中に犯人を当てられる要素をちりばめていること。

そしてそれを隠すかのように、舞台とされたスコットランドのハイランド地方に伝わる
様々な言い伝え。これが実にミスリードに繋がっていて、かつ物語のおどろおどろしさを
醸し出す絶好の舞台となっています。

ウィリング博士は本当に本当に終盤にしか登場しません。
それでいて、読者へのヒントをダンバーに話す形で一つ一つ丁寧に看破していくのは圧巻。
ただし、登場が遅いためか、ウィリング博士シリーズにしなくても良かった気もするという。

『悪意の夜』も楽しみです。


逃げる幻 (創元推理文庫)

逃げる幻 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 文庫



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牧神の影 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。
死因は心臓発作とされたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐は、伯父が軍のために戦地用暗号
を開発していたと言う。その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲で
次々に怪しい出来事が…。暗号の謎とサスペンスが融合したマクロイ円熟期の傑作。

ヘレン・マクロイ、久しぶりです。
なんといってもちくま文庫からの刊行でしか、今のところ読んでいないので・・・
(そのうち創元推理文庫も読み始めるかもしれませんが)
「二人のウィリング」に続く2作目になります。

本作は原題が「Panic」なのですが、これを「牧神の影」と邦訳したのはお見事。
主人公のアリスンが、山深い、人里離れたコテージで過ごす描写と相俟って、
物語に読み手をどんどん引きずり込みます。

本書は暗号小説としては一級品ですが、この暗号を解読しようと試みた読者は
どのくらいいるでしょうか(苦笑
一方で、アリスンに忍び寄る人物は、当初は暗号が目的かと思われるのですが、
途中から、伯父の死=他殺という事を隠すために近づいているという、
物語当初から見えていた事実が、物語途中でアリスンの眼前に現れるというのも
とてもおもしろかったです。

そして暗号を説く謎が番犬にもならないというアルゴスの存在も非常に大きい。
訳者あとがきにもありますが、実はアルゴス、番犬の役割をこなしてます。
この記述が実に巧妙なため、犯人の存在をうまくごまかしているのです。

ベイジル・ウィリング博士は登場しませんが、充分楽しめる傑作。オススメです。


牧神の影 (ちくま文庫)

牧神の影 (ちくま文庫)

  • 作者: ヘレン マクロイ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/06/08
  • メディア: 文庫



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二人のウィリング [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ある夜、自宅近くのたばこ屋でウィリングが見かけた男は、
「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗ると、タクシーで走り去った。
驚いたウィリングは男の後を追ってパーティー開催中の家に乗り込むが、
その目の前で殺人事件が…。
被害者は死に際に「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残していた。
発端の意外性と謎解きの興味、サスペンス横溢の本格ミステリ。

超がつくほど久しぶりに初めての作家さんの著書を手に取りました。
とはいえ、超がつくほど有名な方ですが。

ヘレン・マクロイ氏は「幽霊の2/3」をかつて読んでみようかと
思ったことがありますが、それっきりとなってました。
ちくま文庫から本書が発売されていて、ふと手に取り購入しました。

本書は導入部分にかなり惹かれました。
「発端の意外性」、言い得て妙。

自分と同じ名前を名乗る男。彼はいったい何者で、
どこに行くのか?ウィリング博士は彼の後を追うことに・・・

突然自らに訪れた不思議な出来事から、
博士は華やかなパーティーと殺人事件に遭遇することに。

集まりに参加していた人々に、それぞれ事情を聞きにまわる
博士。彼彼女が抱えているモノは何か。
パーティーの真の目的とは何か。
被害者の「鳴く鳥がいなかった」の言葉の意味とは・・・

最後のウィリング博士の「パーティー会場」への訪問で
ついに被害者の言葉の意味が明らかとなり、
そこには華やかなパーティーとの対極にあるような陰惨さ。
ここの対比も鮮やかです。

犯人のトリックは実はかなり単純なものなのですが、
これがパーティーの中で、実に巧妙に行われており、
まず気付かない(笑

しかし、この犯行動機(つまりはパーティーの意味)は
予想外の真相で、驚きました。
登場人物、というか容疑者は物語序盤と変わらず。
犯人はなんとなく予想はつくものの、この犯行動機と
パーティーの意味は予想できませんでした。

魅力的な導入から、徐々に明らかになる容疑者たちの背景。
パーティーに隠された謎、予想外の真相と、
ミステリとしての魅力をしっかり詰め込んだ作品。
オススメです。


二人のウィリング (ちくま文庫)

二人のウィリング (ちくま文庫)

  • 作者: ヘレン マクロイ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 文庫



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名探偵ポワロ「カーテン-ポワロ最後の事件-」 [海外ミステリ]

NHKの紹介ページから。

【アガサ・クリスティー原作の人気シリーズ 25年の時を経ていよいよ最終回!】
ポワロ最後の事件。その舞台は、ポワロ最初の事件が起きた「スタイルズ荘」だった。

ポワロは親友ヘイスティングス大尉をスタイルズ荘に呼び出す。
ここは、かつて二人が初めて一緒に解決した殺人事件の舞台になった屋敷だが、
現在はゲストハウスになっている。ヘイスティングスは再会したポワロのやつれた車椅子姿に驚く。
ポワロは「ここが再び殺人現場になるが標的は不明だ」とヘイスティングスに告げ、
屋敷に潜む殺人犯を捕えるパートナーとして、動けない自分の代わりに情報収集をしてほしいと頼む。

クリスティのポワロものは全て原作を読んで来ていましたが、
(元々は戯曲で出され、後に別の作家さんによって小説として出された「ブラックコーヒー」も)
「カーテン」だけは未読です。
あえて未読でした。名探偵が亡くなるというのはどうにも受け入れがたかった、
というのがあるんですよね。
ホームズや金田一、彼らの最後は決して「死」ではないけれども、
ポワロは本当に死んでしまう、というのがどうにも・・・

なので今回映像で観たのが始めてになります。
相変わらず大尉には手厳しいポワロがたくさん登場したなあ(笑
最後の手紙でも堂々巡りの推理とまで言われるとは・・・(苦笑
ヘイスティングス大尉も相変わらず抜けているというか、
ポワロが「飲み物を」と言った時の「結構です」→「私がです!」に
笑ってしまった。
そしてまさか大尉が殺人を(偶然にも)起こしていたとは・・・

本作を通して思った事は、
犯罪を犯した者、特に殺人を絶対に許さないポワロは、
犯人を絶対に見逃さない訳ですが、
こういう「心理的殺人教唆」、裁きたくても裁けない人間というのは、
名探偵にとって、実は最大の敵なのかもしれません。

本作でポワロは常に神に祈ります。
それは最後に自身が下した行為を裁いてもらうために。
最後の場面で、彼を殺すことで、彼に殺される多くの人を救うことができたのではないか、
という台詞が出てきますが(うろ覚えです)、
やはり「オリエント急行の殺人」で彼が最後に下した行為と密接に
関係があるのでしょう。
「オリエント~」のラストは、間違いなく「カーテン」を見据えていたと思いますが、
どうなのだろうか。

ポワロは最後病死とされていますが、薬をとらずに
十字架を取った、とも言えるんですよねえ。
彼なりの罪の償い、とも言える場面でした。

「犯人」とポワロのやりとりですが、
この「犯人」が実に狡猾というか嫌な奴だったなあ・・・

後は付け髭に驚きました(笑

25年間という長きにわたって、同じ俳優さん、そして吹き替えも
同じ声優さんでラストを迎えたのは、本当に素晴らしい事で、
感謝に堪えません。
スーシェさん、熊倉さん、ありがとうございました。
NHKにも感謝しよう(笑

でもやっぱり終わってしまったのは悲しいですね。
後、ニューシーズンDVDのボックス化を是非!!


カーテン(クリスティー文庫)

カーテン(クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/10/07
  • メディア: 文庫



カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/11/18
  • メディア: 文庫



カーテン (クリスティー文庫)

カーテン (クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/10/07
  • メディア: Kindle版



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



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名探偵ポワロ「ヘラクレスの難業」 [海外ミステリ]

引退を考えたポワロは、
最後に自身の名前「エルキュール」にちなんだヘラクレスの12の
難業に挑む事に。

それぞれがヘラクレスの難業にちなんだタイトルが付されていますが、
独立した短編です。

その12ある短編の1つをドラマ化するのではなく、
あくまで「ヘラクレスの冒険」として12ある短編を1つのドラマにする、
というのが本作になるんだろう、と勝手にですが予想をしていました。

メインをはったのは「スチュムバロスの鳥」「エルマントスのイノシシ」
後者に出てきた殺人鬼マラスコーを物語の主軸に添えています。

そこにケルベロスやヒュポリュテの帯もきちんと登場します。

ポワロが引退を決意する序章部分を、うまく事件とからめ、
彼自身が再び探偵として立ち直る物語に「アルカディアの鹿」を導入しています。
物語は非常に悲しい結末に終わりますが、
この「アルカディアの鹿」で登場する男女が再び巡り会えた事が唯一の救い
だったかなと思います。

ロサコフ伯爵夫人の「娘」がこんな形で登場するとは。
「ビッグ・フォー」原作で伯爵夫人への切り札であった娘の存在が
こうした結末を迎えるとは意外でした。

物語の最中、ポワロは「灰色の脳細胞」を復活させ、
事件を解決しますが、マラスコーからは「うぬぼれたヘラクレス」と言われ、
背を向けるのではなく、前を向き逃げない事も「彼」に宣言します。
何となくこの辺りは「カーテン」に繋がる感じがしましたが、どうなんだろうか。

伯爵夫人との別れも辛いものでした。
ポワロと夫人の別れのシーンも「カーテン」をどうも意識してしまいます。

さて来週で最終回。いよいよですか。



ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: 文庫



ヘラクレスの冒険 (クリスティー文庫)

ヘラクレスの冒険 (クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: Kindle版



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



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名探偵ポワロ「死者のあやまち」 [海外ミステリ]

NHKのホームページから。

ポワロは旧友の推理作家オリヴァ夫人に呼び出され、田舎の豪邸ナス屋敷に到着する。
1年前に屋敷を購入したスタッブス卿が翌日に祭りを開催することになっており、
地元の人たちも招待されているという。祭りで行う殺人推理ゲームのシナリオを書いたオリヴァは、
嫌な予感がするとポワロに告げる。ゲームで被害者を演じるのは地元の少女マーリーン。
しかし祭り当日、オリヴァの不安が的中し、マーリーンが本当に殺されてしまう!

今回は原作の内容はまず措くとして、
最初のポワロが車でナスの館に向かう途中、相乗りになる外国人に
見せた表情や、うっそうとした森の中をめんどくさそうに進むポワロ、
赤ちゃんの人形をまさか当ててしまい、持たずには居られないがなんともいえない
評定のポワロなど、このTVシリーズの見所でもあるポワロのこうした面が
久しぶりに見る事ができて、よかった。

襲われた時の練習をするオリヴァ夫人(笑
迷惑きわまりないですね。

物語はマーデル老人の「フォリアット家は不滅」という発言が全て。
最後にポワロも述べますが、老人が実のところ全て見抜いていた訳です。

一人二役のトリックはさすがだなあと。
最初にポワロと相乗りしてきた「外国人の女性」やスタップス卿のちょっとした演技から
見事に騙されてしまっていました。

類似、というのが適切かどうかわかりませんが、ファイナルシーズン第1作の
「象は忘れない」なんかもこれに近いトリックのような。

最後ポワロは犯人たちに自ら罪を償う事をあえて選択させています。
う~ん、ポワロらしからぬ感じです。原作はどうだったかな。

来週はついに「ヘラクレスの難業」
原作は「ヘラクレスの冒険」ですが、どの話になるのかなあ。


死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫



死者のあやまち (クリスティー文庫)

死者のあやまち (クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/30
  • メディア: Kindle版



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



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名探偵ポワロ「ビッグ・フォー」 [海外ミステリ]

NHKの紹介ページから。

ジャップ警視監からヘイスティングス大尉とミス・レモンのもとにポワロ死去の知らせが届く。
その死の裏には、「ビッグ・フォー」と呼ばれる国際的秘密結社の存在があった。
4週間前。新聞記者タイソーのもとにビッグ・フォーの活動を警告する匿名文書がたびたび届いていた。
そんなある夜、ポワロが出席した平和党のパーティーで、
党の代表ライランドとロシアのチェスの王者サヴァロノフが対戦。だが開始直後、王者が急死する。

原作の「ビッグ4」とは大きく改変されてましたねえ。
原作はポワロとヘイスティングスがこの大組織がある事を要人に伝えに
言っても、相手にされず、二人だけの闘いを強いられるのですが、
映像はその「虚言」を逆手に取ったものであり、逆に楽しめました。

原作は冒険小説で、なぜこれをポワロで?と作品的評価は低いと言われていますが、
映像はそれをうまくポワロの物語として、かつ原作も実にうまく残したと思いました。

本来であれば、マダム・オリヴィエはナンバー3だし、エイブ・ライランドがナンバー2
名前だけ登場していたリー・チャン・イェンがナンバー1
「二重のてがかり」登場のロサコフ伯爵夫人も出て、彼女が重要な鍵を握るのですが、
本作では、ダレルの恋人であるモンローがその役割になってましたね。

ヘイスティングスは原作でもポワロが爆死した事を受けて、一人でも捜査すると
息巻いて、アジトに乗り込んでいくし、ポワロの兄であるアシルも登場し、
彼がその存在を信じていた事が解決に大きく貢献する、と記憶してます。

映像でも年はとりましたが、相変わらず熱いヘイスティングス大尉だったので、
その点は素晴らしかったけど、全く手掛かりなしで、どこに飛び出していったのだろうか(笑
最後の再会がまたファンには嬉しいですね。
もう引退してカボチャを作るまでの台詞もほしかった所ですが(笑


ビッグ4 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ビッグ4 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/03/16
  • メディア: 文庫



ビッグ4 (クリスティー文庫)

ビッグ4 (クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/03/16
  • メディア: Kindle版



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名探偵ポワロ「象は忘れない」 [海外ミステリ]

デヴィッド・スーシェさんが足かけ25年近くかけて
ほぼ全ての原作を消化し、完結を迎えた「名探偵ポワロ」
そのファイナルシーズンがついに日本でも放送開始!

本日は「象は忘れない」
ポワロ役は熊倉一雄さん、オリヴァ夫人は山本陽子さん、
素晴らしい。最後まで熊倉さん、そしてオリヴァ夫人も山本陽子さんで
の吹き替えで本当に良かった。

本作は「回想の殺人」になりますね。
象は忘れないとはイギリスの諺のようです。
今回初めて知りました(汗

ポワロの事件とオリヴァ夫人の「象」から聞き出し始めた事件とが
見事に結びついて、遙か昔の事件と、今の事件をポワロが見事に
解き明かしていきます。

ポワロとオリヴァ夫人の最後のシーンが印象的。
「でも、わたしたちは人間ですからね、ありがたいことに、人間は忘れることが
できるんですよ」
双子の話が次の「ビッグ4」に繋がり、
最後の台詞はなんとなく「カーテン」への布石に感じました。


象は忘れない (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

象は忘れない (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫



象は忘れない

象は忘れない

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/30
  • メディア: Kindle版



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名探偵ポワロ「オリエント急行の殺人」 [海外ミステリ]

新作ポワロ第4夜。
まずはNHKの紹介ページから。

パレスチナで事件を解決したポワロはイギリスに戻るためオリエント急行に乗車。
終点のカレーまで3日の長旅だ。列車には国籍も階級もさまざまな人々が乗っていた。
アメリカの富豪ラチェットにその秘書と執事、ギリシャ人医師、ロシアの公爵夫人とメイド、
ハンガリーの外交官夫妻、女性宣教師…。2日目の夕方、
ポワロはラチェットから殺されるかもしれないと保護を頼まれるが断る。
だが翌朝、そのラチェットが刺殺死体で見つかる。
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/agatha/poirot_04.html

最初の事件の解決の、中尉の自殺とポワロへの同僚の
発言が、全てだったんだろうなと感じました。

なんか後味の悪いエンディングでした。
乗客もポワロもどちらも納得はしていないという。
そして妥協でもない。
小説はそんな事はなかったと記憶してますが・・・

なんだかポワロの苦悩と葛藤ばかりに目がいって
しまいますね。
前3作と違い、ユーモラスな場面は全くありませんし。

ただ、小説は間違いなくおもしろいと思います。
禁じ手と言われる事も多々あるようですが、
僕はそうは思いません。
クローズド・サークル内での
見事なトリックだと思います。

さてしばらくは新作放送はないのかな。
(実際制作されてない?)
残された作品は
「ヘラクレスの冒険」「死者のあやまち」「ビッグ4」
「象は忘れない」、そして「カーテン」。
ちなみに戯曲、後小説化された「ブラック・コーヒー」もあったり。

「ヘラクレス」はどうするんだろう?
1編のみ映像化ですかねえ。

個人的に一番の期待は「ビッグ4」
これポワロものでは完全に異色ですが、
冒険活劇って感じで、ひさしぶりのポワロ&ヘイスティングスが
観られるのではと期待。
さらにはミス・レモンやジャップ警部も。
もっとももう少しスーシェさんが若い時に
映像化してほしかったですが・・・

元々の「名探偵ポワロ」のコンセプトに
みられたポワロ・ヘイスティングス・ジャップ警部(+ミス・レモン)
という原作では出ていないが、登場するというドラマ化
を期待してるんですけどねえ。


オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: 文庫



オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/04/05
  • メディア: 文庫



オリエント急行の殺人 (創元推理文庫)

オリエント急行の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: アガサ クリスティ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 文庫



オリエント急行殺人事件 (新潮文庫 ク 3-4)

オリエント急行殺人事件 (新潮文庫 ク 3-4)

  • 作者: アガサ・クリスティ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1960/08
  • メディア: 文庫



オリエント急行殺人事件 [英語版ルビ訳付] 講談社ルビー・ブックス

オリエント急行殺人事件 [英語版ルビ訳付] 講談社ルビー・ブックス

  • 作者: アガサ クリスティ
  • 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
  • 発売日: 2000/04/07
  • メディア: 新書



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 4

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 4

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



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名探偵ポワロ「ハローウィン・パーティー」 [海外ミステリ]

第3夜。
まずはAmazonさんの紹介ページから。

推理作家のオリヴァ夫人を迎えたハロウィーン・パーティで、
少女が突然、殺人の現場を目撃したことがあると言いだした。
パーティの後、その少女はリンゴ食い競争用のバケツに首を突っこんで死んでいるのが発見された!
童話的な世界で起こったおぞましい殺人の謎を追い、現実から過去へと遡るポアロの推理とは。

少女の言った「殺人」とはどの出来事を指すのか?
ポワロによって過去の死亡事件のどれが少女の言っていた事件なのか?
過去と現実を見事にリンクさせるポワロの推理が光ります。

花瓶を落とした意味が結構秀逸だよなあと。
二重に意味があったという。

クリスティ後期の作品ですが、良作ではないかなと改めて思いました。

しかしやはり吹き替えは熊倉さん、オリヴァ夫人は山本陽子さんが
やっぱり合うなあと感じました。

明日はいよいよですね。


ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/11
  • メディア: 文庫



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名探偵ポワロ「複数の時計」 [海外ミステリ]

ポワロ新作第2夜。
まずはAmazonさんの紹介ページから。

秘書・タイプ引受所から派遣されたタイピストのシェイラは、依頼人の家に向かった。
無数に時計が置いてある奇妙な部屋で待っていると、まもなく柱時計が三時を告げた。
その時、シェイラは恐ろしいものを発見した。ソファの横に男性の惨殺体が横たわっていたのだ…
死体を囲むあまたの時計の謎に、ポアロが挑む。

ポワロの今回のワトソン役はイギリス海軍大尉でありながら
MI6に所属するコリン・ラム。
彼は良い味出してましたねえ。
ヘイスティングスほどマヌケな(失礼!)一面はありませんでしたが、
恋・事件・盗まれた機密文書、これらに挟まれて
途中まではよかったものの、ドジも踏んでます。
また彼の行動によって失ってしまった恋人の回想。
あれもよかったです。
もう二度と、同じ過ちは繰り返さないという台詞も。

原作ではポワロは安楽椅子探偵で、
ほとんどがコリン大尉の捜査です。
しかしテレビ版ではそうではなく、自ら話を聞きに行き、
現場を見て、積極的に捜査に動きます。
そこには小説で感じるポワロの老いはありません。

ポワロが猫屋敷に行った時の表情、
アイスを渡された時の表情、
ああいうのが本当に観ていて楽しい。
スーシェさんの演技が光ります。

そして自慢も相変わらずでした。
最初のオリヴァ夫人の演劇のシーンやとある小説家の作品へのコメントとか。
(結果的にこの芝居のシーンが事件解決に一役買うのですが)

ところで、「複数の時計」というタイトルですが、
時計はそこまで重要な鍵でもないんじゃないかなあと。

それと第二の殺人はどう考えも警察の責任だよなあ。
あの警部は謹慎ものだ。

明日は「ハロウィーン・パーティー」です!


複数の時計 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

複数の時計 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/11
  • メディア: 文庫



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 4

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 4

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



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