11文字の檻-青崎有吾短編集成 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録
大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、
全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、
人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、
どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、
力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、
著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。
以下、ネタバレ少しあり。
アンソロジーものが多いので、それを知らないと???な短編もいくつか
ありますが、表題作がそれを吹っ飛ばしてくれます。
「your name」は『長短編!どんでん返し』収録の一編。
登場する探偵が良いですね。このトリックというか、謎解きの一撃は、
ワープロ時代から通じるもので、容疑者を動揺させることはまず間違いないです。
「噤ヶ森の硝子屋敷」。著者の解説にもあるように、新本格30周年を記念した
アンソロジーに収録された一編。中村青司を最大限リスペクトした作品で、
本書愁眉かもしれません。墨壺深紅なる奇妙な建築家の創造した数々の奇妙な屋敷。
そこに登場する、薄気味良悪という、本名か?と思わせる名前の探偵。
何でも、探偵組合的なもの、探偵への連絡役や差配を行う仲介屋も登場。
あっという間に謎を解きます(笑
星影龍三みたいだ。
この辺りは、この墨壺深紅の<館>シリーズとしてシリーズ化してほしいですね。
トリックは言われてみれば確かにその通りだという、盲点を上手く突いてます。
「飽くまで」は、東野圭吾さんの傑作『悪意』に通じるものがある、
究極的なホワイダニット作品の1作でしょう。
「11文字の檻」は世界観と、この監獄から逃れる11文字の日本語の2つが
アイロニーというか、真逆であるというところが非常に面白く、かつ
謎解きの過程も一歩一歩の詰め将棋的な面があり楽しめました。
「恋澤姉妹」、百合アンソロジーに収録された一編ですが、
これが一番謎だったかも。主人公の目的はともかく、この姉妹は何なのか?と。
とんでもなく強いのはわかるんですけどね。
青崎先生、そろそろ<館>シリーズ新作もよろしくお願いします!
なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録
大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、
全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、
人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、
どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、
力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、
著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。
以下、ネタバレ少しあり。
アンソロジーものが多いので、それを知らないと???な短編もいくつか
ありますが、表題作がそれを吹っ飛ばしてくれます。
「your name」は『長短編!どんでん返し』収録の一編。
登場する探偵が良いですね。このトリックというか、謎解きの一撃は、
ワープロ時代から通じるもので、容疑者を動揺させることはまず間違いないです。
「噤ヶ森の硝子屋敷」。著者の解説にもあるように、新本格30周年を記念した
アンソロジーに収録された一編。中村青司を最大限リスペクトした作品で、
本書愁眉かもしれません。墨壺深紅なる奇妙な建築家の創造した数々の奇妙な屋敷。
そこに登場する、薄気味良悪という、本名か?と思わせる名前の探偵。
何でも、探偵組合的なもの、探偵への連絡役や差配を行う仲介屋も登場。
あっという間に謎を解きます(笑
星影龍三みたいだ。
この辺りは、この墨壺深紅の<館>シリーズとしてシリーズ化してほしいですね。
トリックは言われてみれば確かにその通りだという、盲点を上手く突いてます。
「飽くまで」は、東野圭吾さんの傑作『悪意』に通じるものがある、
究極的なホワイダニット作品の1作でしょう。
「11文字の檻」は世界観と、この監獄から逃れる11文字の日本語の2つが
アイロニーというか、真逆であるというところが非常に面白く、かつ
謎解きの過程も一歩一歩の詰め将棋的な面があり楽しめました。
「恋澤姉妹」、百合アンソロジーに収録された一編ですが、
これが一番謎だったかも。主人公の目的はともかく、この姉妹は何なのか?と。
とんでもなく強いのはわかるんですけどね。
青崎先生、そろそろ<館>シリーズ新作もよろしくお願いします!
早朝始発の殺風景 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
青春は、気まずさでできた密室だ。今、最注目の若手ミステリー作家が贈る珠玉の短編集。
始発の電車で遭遇したのは普段あまり話さない女子。
二人は互いに早起きの理由を探り始め……(表題作)。
部活の引退日、男同士で観覧車に乗り込んだ先輩と後輩。
後輩には何か目的があるようだが(「夢の国には観覧車がない」)。
不器用な高校生たちの関係が小さな謎と会話を通じて少しずつ変わってゆく。
ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイムで進行する五つの青春密室劇。
登場人物総出演、読んでのお楽しみのエピローグ付き。
青春小説かつ「日常の謎」(ただし全てではない)を、実に上手く描いた短編集。
筆者の「館」シリーズとはまた味わいが違い、大変楽しめました。
まずこのタイトルをみて、「殺風景」が登場人物の苗字とは思わないでしょう。
意外な所に仕込んできたなあと。
オススメは難しいところですが、「メロンソーダ・ファクトリー」。
主人公の「私」こと真田と、詩子は付き合いが非常に長いにもかかわらず・・・
というのが青春小説として、頭一歩リードしました。
ノギちゃんは名探偵になれる素質充分です。
「夢の国には観覧車がない」は、次点。いやあ、これは現代だからこそ、というか、
こうした小説が平然と書かれることを望みます。
解説でも触れているとおり、「葛城」の性別をわざと伏せているのが秀逸。
伊鳥がこの計画を実行するのにかけた苦労が報われてよかった。
「三月四日、午後二時半の密室」は、同じクラスだけどほとんど接点の無い二人のお話。
一番青春小説らしいですが、隠された謎が私にもわかったので(笑)惜しい。
だけど、素晴らしい高校生活の最後ですね。
「捨て猫と兄妹喧嘩」。個人的に、猫をその場所で共同で世話するのが無しな作品。
猫好きにはちょっと受け付けなかったなあと。
「エピローグ」では各作品に登場した人たちの、その後が描かれ、
基本みんなハッピーエンドなんだけども・・・
問題というか、やはり表題作だけは実は少し異質だろうと思います。
エピローグでも、殺風景と加藤木、両方とも名前を知らないという所で終幕ですが、
この「早朝始発の殺風景」、殺風景は親友の復讐を果たし、それを加藤木が手伝って
いるんですよね(手伝っているのは「エピローグ」で描かれます)。
少し寄り道すると、加藤木がなぜ始発電車に乗っていたのかは、映像部が行おうとしている
違法行為に荷担したくないから、なんですよね。
でも「エピローグ」では、手伝っていることが明確に描かれ、まあクラスメートの事だから
なんでしょうが、そこも大きく異なってるなあと。
他の物語と違い、この話だけは殺風景と加藤木は大丈夫なのか?
という心配をしてしまう&二人はこのまま口を閉ざしたままなのか?という。
やはりこの物語は異質なんですよね。
しかし、この短編集の中から連作短編主人公となれそうなのは、殺風景と加藤木かなあ(笑)
青春は、気まずさでできた密室だ。今、最注目の若手ミステリー作家が贈る珠玉の短編集。
始発の電車で遭遇したのは普段あまり話さない女子。
二人は互いに早起きの理由を探り始め……(表題作)。
部活の引退日、男同士で観覧車に乗り込んだ先輩と後輩。
後輩には何か目的があるようだが(「夢の国には観覧車がない」)。
不器用な高校生たちの関係が小さな謎と会話を通じて少しずつ変わってゆく。
ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイムで進行する五つの青春密室劇。
登場人物総出演、読んでのお楽しみのエピローグ付き。
青春小説かつ「日常の謎」(ただし全てではない)を、実に上手く描いた短編集。
筆者の「館」シリーズとはまた味わいが違い、大変楽しめました。
まずこのタイトルをみて、「殺風景」が登場人物の苗字とは思わないでしょう。
意外な所に仕込んできたなあと。
オススメは難しいところですが、「メロンソーダ・ファクトリー」。
主人公の「私」こと真田と、詩子は付き合いが非常に長いにもかかわらず・・・
というのが青春小説として、頭一歩リードしました。
ノギちゃんは名探偵になれる素質充分です。
「夢の国には観覧車がない」は、次点。いやあ、これは現代だからこそ、というか、
こうした小説が平然と書かれることを望みます。
解説でも触れているとおり、「葛城」の性別をわざと伏せているのが秀逸。
伊鳥がこの計画を実行するのにかけた苦労が報われてよかった。
「三月四日、午後二時半の密室」は、同じクラスだけどほとんど接点の無い二人のお話。
一番青春小説らしいですが、隠された謎が私にもわかったので(笑)惜しい。
だけど、素晴らしい高校生活の最後ですね。
「捨て猫と兄妹喧嘩」。個人的に、猫をその場所で共同で世話するのが無しな作品。
猫好きにはちょっと受け付けなかったなあと。
「エピローグ」では各作品に登場した人たちの、その後が描かれ、
基本みんなハッピーエンドなんだけども・・・
問題というか、やはり表題作だけは実は少し異質だろうと思います。
エピローグでも、殺風景と加藤木、両方とも名前を知らないという所で終幕ですが、
この「早朝始発の殺風景」、殺風景は親友の復讐を果たし、それを加藤木が手伝って
いるんですよね(手伝っているのは「エピローグ」で描かれます)。
少し寄り道すると、加藤木がなぜ始発電車に乗っていたのかは、映像部が行おうとしている
違法行為に荷担したくないから、なんですよね。
でも「エピローグ」では、手伝っていることが明確に描かれ、まあクラスメートの事だから
なんでしょうが、そこも大きく異なってるなあと。
他の物語と違い、この話だけは殺風景と加藤木は大丈夫なのか?
という心配をしてしまう&二人はこのまま口を閉ざしたままなのか?という。
やはりこの物語は異質なんですよね。
しかし、この短編集の中から連作短編主人公となれそうなのは、殺風景と加藤木かなあ(笑)
図書館の殺人 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
九月の朝、風ヶ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は常連利用者の男子大学生。
閉館中の館内に忍び込み、山田風太郎の『人間臨終図巻』で何者かに撲殺されたらしい。
現場にはなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた!
警察に呼び出された裏染天馬は独自の捜査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。
一方、風ヶ丘高校では期末テストにまつわる騒動が勃発。袴田柚乃たちは事件とテストの二つに
振り回されることになり……。
ロジカルな推理と、巧みなプロットで読者を魅了する〈裏染天馬シリーズ〉第4弾。
青崎さんの<館>シリーズ第4弾。
ダイイングメッセージなど意味がないと断言する天馬。
その言葉の裏には、相変わらず極めて合理的かつ精緻な推理が構築されており、
かつ、犯人である条件を一つずつ、まさに理詰めで構築していく様はお見事。
犯人は今までのシリーズの中でもかなり意外な感じでした。
ただし、天馬の推理は相変わらずですが、今回いきなり警察は天馬を招集したのは
情けない。いやもう物語の都合上なのかもしれませんけど。
柚乃との「仲」も別に双方ともに何も思っていない(?)ので、どうにかなるわけでも
ないのでしょうけど、微妙な感じがもどかしい気もします。
また柚乃が天馬の過去に迫っていきますが、この話はそこまで掘り下げる必要が
あるのだろうかと思います。まだ高校生だしなあ・・・
偏屈な探偵、というのを創り上げた時点で、中々本格+青春ミステリとはいかないものの、
重心を過去よりも柚乃との関係に置いてほしいと思うのは私だけでしょうか。
次の<館>はどこになるのでしょうか?
そろそろ閉ざされた館や孤島の館が登場するのを少し期待しています。
九月の朝、風ヶ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は常連利用者の男子大学生。
閉館中の館内に忍び込み、山田風太郎の『人間臨終図巻』で何者かに撲殺されたらしい。
現場にはなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた!
警察に呼び出された裏染天馬は独自の捜査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。
一方、風ヶ丘高校では期末テストにまつわる騒動が勃発。袴田柚乃たちは事件とテストの二つに
振り回されることになり……。
ロジカルな推理と、巧みなプロットで読者を魅了する〈裏染天馬シリーズ〉第4弾。
青崎さんの<館>シリーズ第4弾。
ダイイングメッセージなど意味がないと断言する天馬。
その言葉の裏には、相変わらず極めて合理的かつ精緻な推理が構築されており、
かつ、犯人である条件を一つずつ、まさに理詰めで構築していく様はお見事。
犯人は今までのシリーズの中でもかなり意外な感じでした。
ただし、天馬の推理は相変わらずですが、今回いきなり警察は天馬を招集したのは
情けない。いやもう物語の都合上なのかもしれませんけど。
柚乃との「仲」も別に双方ともに何も思っていない(?)ので、どうにかなるわけでも
ないのでしょうけど、微妙な感じがもどかしい気もします。
また柚乃が天馬の過去に迫っていきますが、この話はそこまで掘り下げる必要が
あるのだろうかと思います。まだ高校生だしなあ・・・
偏屈な探偵、というのを創り上げた時点で、中々本格+青春ミステリとはいかないものの、
重心を過去よりも柚乃との関係に置いてほしいと思うのは私だけでしょうか。
次の<館>はどこになるのでしょうか?
そろそろ閉ざされた館や孤島の館が登場するのを少し期待しています。
風ヶ丘五十円玉祭りの謎 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
夏祭りにやって来た、裏染天馬と袴田柚乃たち風ヶ丘高の面々。たこ焼き、かき氷、水ヨーヨー、どの屋台で買い物しても、お釣りが五十円玉ばかりだったのはなぜ?学食や教室、放課後や夏休みを舞台に、不思議に満ちた学園生活と裏染兄妹の鮮やかな推理を描く全五編。『体育館の殺人』『水族館の殺人』に続き、“若き平成のエラリー・クイーン”が贈るシリーズ第三弾は、連作短編集。
『体育館』と『水族館』、そして未文庫化の『図書館の殺人』直前までの
主人公たちの「日常の謎」を描く短編集。
表題作はもちろん『競作五十円玉二十枚の謎』のオマージュ。
ただし本家と違い、謎は比較的早くわかるかもしれません。
それよりラストの方が面白い。
あとは「おまけ」が気になりました。父親を嫌い家を出ている天馬ですが、
一応「会話」(という名の「推理」)はするようです。
裏染家の「謎」については『図書館の殺人』で少しは語られるのでしょうか。
夏祭りにやって来た、裏染天馬と袴田柚乃たち風ヶ丘高の面々。たこ焼き、かき氷、水ヨーヨー、どの屋台で買い物しても、お釣りが五十円玉ばかりだったのはなぜ?学食や教室、放課後や夏休みを舞台に、不思議に満ちた学園生活と裏染兄妹の鮮やかな推理を描く全五編。『体育館の殺人』『水族館の殺人』に続き、“若き平成のエラリー・クイーン”が贈るシリーズ第三弾は、連作短編集。
『体育館』と『水族館』、そして未文庫化の『図書館の殺人』直前までの
主人公たちの「日常の謎」を描く短編集。
表題作はもちろん『競作五十円玉二十枚の謎』のオマージュ。
ただし本家と違い、謎は比較的早くわかるかもしれません。
それよりラストの方が面白い。
あとは「おまけ」が気になりました。父親を嫌い家を出ている天馬ですが、
一応「会話」(という名の「推理」)はするようです。
裏染家の「謎」については『図書館の殺人』で少しは語られるのでしょうか。
水族館の殺人 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
夏休み真っ直中の8月4日、風ヶ丘高校新聞部の面々は、
取材先の丸美水族館で驚愕のシーンを目撃。サメが飼育員の男性に食いついている!
警察の捜査で浮かんだ容疑者は11人、しかもそれぞれに強固なアリバイが。
袴田刑事は、しかたなく妹の柚乃に連絡を取った。あの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。
“若き平成のエラリー・クイーン”が、今度はアリバイ崩しに挑戦。
11人の容疑者の、アリバイ崩し、その1点に尽きる作品。
事件に至る過程や動機、犯人の心理描写など一切なし。
それが逆に良いのですけど。
前作が「一本の傘」が中心に事件の真相を描いていったのに対し、
今作はそれが「掃除用のモップ」でしょうか。
このモップ、最後まで引っ張ります。
2作目にして、学校外に出たのは意外でしたが、
意外な反面、裏染を探偵役として出馬させるのはやや無理があったかなと。
密室トリックは図挿入が欲しかったですね。
イメージしにくい部分もありました。
一番疑問だったのは、わざわざ風が丘高校の取材が入っている日に
なぜ犯行を行ったのか。
もちろん、やってくる新聞部員がまさか現場保存や現場写真をあれだけ
しっかり撮るなんて、予想出来ませんが(笑)、
それでも部外者が居ない方が良かったのではないか?
このトリックを用いるのに、この日・この時間という縛りがおそらくないはずで、
そこがちょっと納得いかなかったかな。
ミステリの内容的には「体育館」に軍配がありそうですが、
シリーズものとしてみれば。裏染がなぜ学校に住んでいるのかとか、
袴田妹(柚乃)と、客観的にみると、良い関係にも見えたりと、
他の部分で楽しませてくれました。
学校に住むのは無いにしても、そして殺人事件に巻き込まれるのも
無いにして、こんな高校生活はうらやましい(笑)
夏休み真っ直中の8月4日、風ヶ丘高校新聞部の面々は、
取材先の丸美水族館で驚愕のシーンを目撃。サメが飼育員の男性に食いついている!
警察の捜査で浮かんだ容疑者は11人、しかもそれぞれに強固なアリバイが。
袴田刑事は、しかたなく妹の柚乃に連絡を取った。あの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。
“若き平成のエラリー・クイーン”が、今度はアリバイ崩しに挑戦。
11人の容疑者の、アリバイ崩し、その1点に尽きる作品。
事件に至る過程や動機、犯人の心理描写など一切なし。
それが逆に良いのですけど。
前作が「一本の傘」が中心に事件の真相を描いていったのに対し、
今作はそれが「掃除用のモップ」でしょうか。
このモップ、最後まで引っ張ります。
2作目にして、学校外に出たのは意外でしたが、
意外な反面、裏染を探偵役として出馬させるのはやや無理があったかなと。
密室トリックは図挿入が欲しかったですね。
イメージしにくい部分もありました。
一番疑問だったのは、わざわざ風が丘高校の取材が入っている日に
なぜ犯行を行ったのか。
もちろん、やってくる新聞部員がまさか現場保存や現場写真をあれだけ
しっかり撮るなんて、予想出来ませんが(笑)、
それでも部外者が居ない方が良かったのではないか?
このトリックを用いるのに、この日・この時間という縛りがおそらくないはずで、
そこがちょっと納得いかなかったかな。
ミステリの内容的には「体育館」に軍配がありそうですが、
シリーズものとしてみれば。裏染がなぜ学校に住んでいるのかとか、
袴田妹(柚乃)と、客観的にみると、良い関係にも見えたりと、
他の部分で楽しませてくれました。
学校に住むのは無いにしても、そして殺人事件に巻き込まれるのも
無いにして、こんな高校生活はうらやましい(笑)
体育館の殺人 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。
密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。
卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。
アニメオタクの駄目人間に―。
“平成のエラリー・クイーン”が、大幅改稿で読者に贈る、第22回鮎川哲也賞受賞作。待望の文庫化。
作者の青崎有吾さん、ものすごく若くてびっくりしました。
エラリー・クイーンで思い出すのは、国名シリーズの有栖川さんや法月さんですが、
それに続く作家さんになりますねえ。
ただこれは宣伝用の謳い文句だろうから、あまりそこに惹かれるのは良くない事ですけど。
また他ブログの方々の記事を拝見していてなるほどと思ったのですが、
確かにこのタイトルには「館」がはいっているなあと。
そういう意味では綾辻さんの館シリーズにも通じる所はありますね。
物語は非常にオーソドックス、起承転結、そして今のミステリにはあまりみられない
読者への挑戦も挿入してあります。
探偵役・裏染天馬は、アニメオタクで(物語内も随所にネタが散りばめられています)
なぜか学校に住んでいる、駄目人間という設定。変人タイプでしょうか。
彼の大きな推理としては、前半の卓球部部長佐川奈緒への容疑を晴らす謎解き、
そしてまさに真犯人を指摘する謎解きの2つ。
個人的には前半の方が好きです。極めて論理的、理詰めの謎解きです。
後半の犯人当てについては、メイントリックである密室からの脱出が
果たしてうまくいくのかどうかがやや疑問。
ただ体育館に置かれた傘やデッキのリモコンなどの推理は、
(前者はやや荒い点もありますが)、読んでいて「あっ!」と思わせる見事な推理でした。
物語は彼とワトソン役(違うかも?)・向坂香織、
そして依頼人の袴田柚乃、そして警察による捜査と推理で大半が進みます。
学校を舞台としながらも、この辺りも全く教師なども介入せず、
平然と警察と交渉したりしますし、やや違和感がありました。
ただ物語は全体としては中だるみも個人的にはなく、起承転結で
極めて真っ向勝負の本格ミステリで楽しめました。
次作もまた「館」のようですので、文庫化が楽しみです。
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。
密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。
卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。
アニメオタクの駄目人間に―。
“平成のエラリー・クイーン”が、大幅改稿で読者に贈る、第22回鮎川哲也賞受賞作。待望の文庫化。
作者の青崎有吾さん、ものすごく若くてびっくりしました。
エラリー・クイーンで思い出すのは、国名シリーズの有栖川さんや法月さんですが、
それに続く作家さんになりますねえ。
ただこれは宣伝用の謳い文句だろうから、あまりそこに惹かれるのは良くない事ですけど。
また他ブログの方々の記事を拝見していてなるほどと思ったのですが、
確かにこのタイトルには「館」がはいっているなあと。
そういう意味では綾辻さんの館シリーズにも通じる所はありますね。
物語は非常にオーソドックス、起承転結、そして今のミステリにはあまりみられない
読者への挑戦も挿入してあります。
探偵役・裏染天馬は、アニメオタクで(物語内も随所にネタが散りばめられています)
なぜか学校に住んでいる、駄目人間という設定。変人タイプでしょうか。
彼の大きな推理としては、前半の卓球部部長佐川奈緒への容疑を晴らす謎解き、
そしてまさに真犯人を指摘する謎解きの2つ。
個人的には前半の方が好きです。極めて論理的、理詰めの謎解きです。
後半の犯人当てについては、メイントリックである密室からの脱出が
果たしてうまくいくのかどうかがやや疑問。
ただ体育館に置かれた傘やデッキのリモコンなどの推理は、
(前者はやや荒い点もありますが)、読んでいて「あっ!」と思わせる見事な推理でした。
物語は彼とワトソン役(違うかも?)・向坂香織、
そして依頼人の袴田柚乃、そして警察による捜査と推理で大半が進みます。
学校を舞台としながらも、この辺りも全く教師なども介入せず、
平然と警察と交渉したりしますし、やや違和感がありました。
ただ物語は全体としては中だるみも個人的にはなく、起承転結で
極めて真っ向勝負の本格ミステリで楽しめました。
次作もまた「館」のようですので、文庫化が楽しみです。