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サロメの夢は血の夢 [平石貴樹]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

切断された遺体と、水死体。留められた二枚の絵。
犯人の意図はどこに・・・・・・?

運転手が迎えに行ったら、社長は首だけになっていた。
壁に留められていたのは、呼応するかのような、
ビアズリーの「サロメ」の絵。
遺された家族の思いは複雑に絡み合う。
『潮首岬に郭公の鳴く』で話題の作者が贈る
「内的独白」ミステリー!



山崎千鶴シリーズ第2弾になるのでしょうか。
スタイルは『スノーバウンド@札幌連続殺人』に似てます。
登場人物たちの独白(セリフ)という形式で物語は進みます。

そして、本書は最初の「作者敬白」に、犯人当て小説であることが書かれてます。
「第四章の中ごろまでには真犯人の発見にたどりつく。それまでに全ての手がかりは、
探偵にも読者にも、公平に与えられているはずである。」
これはまさに読者への挑戦状です(笑
でも、私には全くわかりませんでした・・・

土居楯雄と帆奈美、2つの殺人事件が一体どう関係するのか、
警察の言うように、帆奈美の犯行で、彼女が最後に自殺したのか?
独白の中で事件の順番も議論され、別々の犯人説まで出るも・・・

とにかく、珍しくなんとか犯人を当てようと、相当気相を入れて読んだのですが、
この結末は全く予想だにしないもの。
最後まで読んで、改めて犯人の独白を読むと、これがかなり上手くギリギリの
ところで書かれていて、いやあ、流石平石先生。

独白という形式にこだわりすぎたのか、どうでもいい、本当に心の中で思っているような
ことまで書かれているので、そこはかなり鬱陶しい感もあり。

ただ、この独白という形式を取ったのは、探偵役である山崎千鶴の内部を
晒すためというのも、実は目的の1つだったのではないかと勘ぐってしまいました。
この千鶴の独白を読むと、彼女は大丈夫なのかと思ってしまうんですよね・・・

山崎千鶴シリーズは、本書→『スノーバウンド@札幌連続殺人』ときて、
ラスト(?)になるのが、更級ニッキが探偵役で登場する、
『スラム・ダンク・マーダー その他』。
しかし、この最後の書籍はまだ未文庫化。創元推理文庫で是非ともお願いします!


サロメの夢は血の夢 (光文社文庫 ひ 21-1)

サロメの夢は血の夢 (光文社文庫 ひ 21-1)

  • 作者: 平石貴樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/07/08
  • メディア: 文庫






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福家警部補の考察 [大倉崇裕]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

福家さんには、全部お見通しなのね。

類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官探偵
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズ第5集

パスタを一本つまみ上げ、噛んでみる。まだ少し早い。水洗いしてボウルに入れておいた
レタスに手を伸ばそうとしたとき、金属音と、それに続いて重いものが屋根を転がり
落ちていく音が聞こえた。誠が屋根から落ちたのだ。もう少し待ってくれてもいいじゃないの、
パスタが無駄になっちゃうわ。いつも間が悪いんだから――夫の“事故死”をめぐり、
一見おっとりした妻の中本さゆりと福家警部補が熾烈な心理戦を繰り広げる「上品な魔女」ほか
三編を収録。類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官名探偵の活躍を描き、
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズに成長した〈福家警部補の事件簿〉第五集。


これぞ倒叙ミステリ。どれも素晴らしい短編で良い読書時間を過ごせました。
前回の福家では、少し福家が超人的になっていっているのを不満で書いたと思いますが、
本作では、福家と会話した人物にちょっと変化があるものの、いつもの福家で安心(笑)

コロンボでいう、ヨレヨレのレインコート、ボサボサの髪、ポンコツな車・・・
良い意味でステレオタイプの福家警部補が読めた気がします。

「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」、これは古畑任三郎の「殺人特急」を思い出しました。
もちろん、殺人場所など全然違うのですが、列車内で事件を解くのと、福家のある仕掛けが
見事です。

「安息の場所」は、犯人と探偵がそれぞれ尊敬し合う作品のようになっているのですが、
やはり読み所は最後でしょう。福家は決して生半可な返事はしません。
調べるといえば、とことん調べる。それが最後の3ページに出てきます。

「是枝哲の敗北」、完璧な殺人と思われて居ましたが、自分のいつもの行動から
足が付いてしまいます。それを見破ったのは流石の一言。

しかし、やはり本書の愁眉は「上品な魔女」。とにかく犯人の性格というか、異常性というか、
文章で読むから余計に恐怖を感じますね。
とはいえ、福家は特段変わりなく、犯人をどんどん追い詰めて行きます。
最後の仕掛けも見事。これは映像で視たい。

これからも本シリーズ、ずっと続いてほしいです。


福家警部補の考察 福家警部補シリーズ (創元推理文庫)

福家警部補の考察 福家警部補シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/12/11
  • メディア: Kindle版






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