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少年検閲官 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印
が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、
クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。
書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。
本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。



『オルゴーリェンヌ』が文庫化されたので、シリーズを読み始めようと
購入した1冊。

あくまで私個人のこれまでの嗜好として、メルヘンというか、特殊世界というか、
異世界というか、そうした場所を舞台としたミステリは避けていました。
北山先生の作品は『『アリス・ミラー城』殺人事件』が初で、
その後引きこもり探偵シリーズを読み始め、『猫柳十一玄』を読み・・・と
きたところで、以前書いた講談社文庫の2冊や、本シリーズなどは
意図的に避けていた、という感じです。

が、ここにきて色々と幅を広げるという意味でトライしているという。

本作は、書物がない、禁止されている世界、焚書が当たり前、
人類には政府の大本営発表的なラジオから発信される情報しかないという、
ディストピア的な世界で、描かれる殺人事件を、検閲官が解き明かすというストーリーです。

なので、本書を読んでいく際には、事件の謎だけでなく、この世界観、世界の種々の
謎(まあ設定でしょうか)も合わせて考えていく、知っていく必要があるので、
中々読み応えがありました。

犯人の動機は極めてこの世界の中においては極めて単純ですが、
それを実行すると、これほどまでに残酷になるのか、というのが最初の感想。
物語の中では平然と語られていますが、想像を絶しますね。
それを平然と聞いていられる関係者も凄かったな。
この辺りが、この世界に住む人々の特殊性なのかもしれません。

ミステリそのものは、かなり練り込まれていて、
最初で描かれた小屋が消えるトリックや、少女が「復活」する話。
そして事件の中心的トリックたる湖での犯人消失。また、家に赤い印を付ける意味。
これらの謎が見事に論理的に解き明かされていくのは流石の一言。

また、この世界観から、犯人が探偵と呼称され、事件を解決するのが検閲官というのも
面白いですね。クリスが物語中で苦しむのも理解できる。
しかし、なぜこの街の人々は、この犯人を「探偵」と名付けたのか?
その辺りはよく分かりませんでした。

また、「ガジェット」という、本作世界観では欠かせなそうなシロモノが
出てくるのですが、いまいち重要性がわからなかったなあ。
「首切り」のガジェットというのがあって、それを持っていた、だから
犯人は首切りを行っていた?訳ではないですよね。
(私の読み込みがまるで足りてないのかもしれません、すいません。)

物語全体としては、ミステリとしては非常に面白いものの、
作者が創ったこの世界観をそれに充分に活かせているかはかなり疑問。
焚書や書物のない世界、もミステリだけない訳ではなく、他の本もないですしね。
それと、探偵は謎を解く存在なのだ、というクリスの思いも、本世界観だけでは
中々説明しにくい。実際に書物を知っている人たちも大勢まだいるようですし。

とはいいつつ、次もそのうち読み始めよう。


少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: Kindle版







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御手洗潔のメロディ [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。
無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在する時、見えない線が光り始める。
御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか、大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」
など、名探偵の過去と現在をつなぐ4つの傑作短編を収録。


短編集第3弾。
前作、前々作とはかなり趣向が変わっています。
どちらかというと、『御手洗潔と進々堂珈琲』シリーズにやや近い短編集でしょうか。

「ボストン幽霊絵画事件」は、今までの奇人・変人ぶりから、天才への道程を
描く先駆け的なものでしょうか。だからといって事件の謎は非常におもしろい。


とはいえ、やはり「IgE」は群を抜いています。奇人・変人ぶりは健在で、
まるで繋がりの見えない2つの事件、これを見事に看破する御手洗の大活躍が
素晴らしい。そして、このタイトルの付け方がまた秀逸です。

ノンミステリ2編が含まれますが、この「IgE」を目当てに購入しても、
まったく損はありません。
作品、普通に読んでもまず解けません(笑)いや、普通じゃなくても解けないか。
便器が何度も壊される、などという謎から、壮大な大事件への繋ぎは
素晴らしいの一言に尽きます。

御手洗短編集、「挨拶」から「メロディ」まで今もまだ文庫で新品を購入
することができるというのは本当に有り難い。
他の長編作品もお願いできませんかねえ、講談社様。


御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版







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午後の脅迫者 新装版 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

警察官が手を染めた犯罪のからくりは、想定外の結末にいたる。私立探偵が夢みた成功報酬の三千万円は、いったい誰の手にわたるのか? 妻は会社を経営する夫の素行調査を探偵社に依頼した。夫は探偵にしっぽをつかまれるが、逆に妻に「男」を作ってくれれば三千万円を出すという。成功直前のある夜、探偵の眼の前でフラッシュが光って……。トリックの妙を示した秀作ぞろいの作品集。

数多くの著作を遺された西村京太郎先生。
私もこのブログでいくつか紹介させていただきましたが、まだまだ傑作・秀作は
埋もれているようです。

先生の作品は長編が多いので、短編集というのは中々珍しいのではないでしょうか。

所収作愁眉は「職業婦人」。これはダントツに面白い。
むろん、これが書かれた時代と、時代背景。そもそもこのタイトルからしてもう?の方
も多いと思いますが、今のこの時代にこれを読むと、またまるで違う味わいも出てきますね。
一方、動機、ハウダニットを追及したミステリとしても、一級品ではないかと思います。


「二一・〇〇に殺せ」は、このタイトルが秀逸。本編で出てきますが、なぜ午後9時では
なく、このように表現したのか。そこから推理を組み立てる展開が面白いです。

「美談崩れ」は特ダネを追う、ある地方記者の物語。
どういう結末に落ち着くのか、高木が到達したある結論は、読者からすると、
おおよそ予想がつくものなのですが、そこで終わらないところが本作の狙いでしょうか。

「柴田巡査の奇妙なアルバイト」は現代社会で実際に行われていそうな、
ドキュメンタリーかと思う話です。
ラストの切れ味はは本書所収作で一番かと。

西村作品はトラベルミステリーだけにあらず。
皆さんもぜひ色々手にとってもらいたいです。


午後の脅迫者 新装版 (講談社文庫)

午後の脅迫者 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/03/15
  • メディア: 文庫







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記憶の中の誘拐 赤い博物館 [大山誠一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

緋色冴子シリーズ第二弾。文庫オリジナルで登場!
赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、
未解決事件に挑むシリーズ第二弾。

本書第一弾のブログ記事は2018年。ということは4年ぶりの新作ということです。
以下、ネタバレあり。
第一弾はコチラ





前作は安楽椅子探偵でもありましたが、本作ではすべて緋色警視が資料館から
外出するというのが特徴です。

「夕暮れの屋上で」。「先輩、もうすぐお別れですね。」という言葉の意味を
どう捉えるのか。本作はこの1点が極めて秀逸です。
卒業式間近という時期、「先輩」「お別れ」という言葉。
こうした状況と言葉から、ある種の必然ともいえる思い込みを見事に覆した作品です。

「連火」。犯人はなぜ放火するのか。放火された家の共通点とはなにか?
これが本作最大の謎です。
この真相は、いわゆる隠れ事故物件、というより事故土地でしょうか。
そんなオカルト的な話にありそうですが、本作で上手いのは、
「またあの人に会えなかった」という犯人と思われる人物が残した言葉の意味でしょう。
これも前作と似ていて、「あの人」とは誰なのか、というのが、
緋色の、完璧にまでに論理づけられた絞り込みにより、判明するところがお見事。

「死を十で割る」。犯人はなぜ被害者をバラバラにしたのか。そこにある必然性、
しかも、どうバラバラにしたのか、つまり単なるバラバラ殺人ではなく、
どこをどのようにバラバラに切断したのか、から推理を組み立てていくという傑作です。

犯人自体はなんとなく(むろん緋色の論理立てた推理から導くのではなく)予想できる
のですが、上記のバラバラから、死後硬直の時間、72時間から96時間以内に被害者が
死んだことを知らしめたい人物、特殊な姿勢が犯人と結びついている、この3点から
犯人を指摘します。
特に、2番目の条件が実に慧眼で、思わず唸ってしまいました。
個人的には本作愁眉。

「孤独な容疑者」。本作は、緋色の推理はともかく、果たして犯人がここまで
上手く逃げおおせられるか、というのがやや疑問でしたね。

「記憶の中の誘拐」。最後に緋色がいう、2003年に時効が成立しているというところ。
殺人罪ですが、時効が撤廃されているが、時効なのかと、どうでもいいところが
気になりました(笑)
wikiによると、「「人を死亡させた罪であって(法定刑の最高が)死刑に当たる罪」
については公訴時効が廃止」とあるので、それに該当しない、という事なんでしょうか。

全編にわたっていえることですが、緋色の推理は火村英生の詰め将棋の如き推理を
彷彿とさせますね。決して突拍子もない所からの出発点ではない。1つ1つの論理を
綿密に組み立てていき、彼彼女しか犯人たり得ない、と結論づける。

とはいえ、彼女がずっと資料館に留まっている謎は未だ解明されず。
次作に期待です。


赤い博物館 (文春文庫)

赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 誠一郎, 大山
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 文庫



記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/01/04
  • メディア: Kindle版










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予言の島 [澤村伊智]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。
二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という――。

天宮淳は、幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」
という意味不明な理由でキャンセルされていた。
そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは、悲劇の序章に過ぎなかった……。

すべての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。
再読率100%の傑作ホラーミステリ!

久しぶりの更新です。少し止まってました。
以下、ネタバレあり。







色々なところで見かけたり、なぜかオススメに出てきたりしたので、購入しました。
全く関係ありませんが、かつて角川文庫で発売されていた赤川次郎『長い夜』が
その後ホラー文庫で発売されたなあと。いや、角川ホラー文庫はあまり読んだことが
ないので、相当久しぶり、というか、下手すると初読かもしれませんね。

閉ざされた島と、有名な霊能者による予言、怪しい島民たち・・・
ホラーというより、ミステリ要素を十二分に兼ね備えてます。



メイントリックは、叙述トリックで、これが実にうまく使われています。
語り手の三人称、一人称の使い分けもかなり上手い。
しかし、ヒントも上手く散りばめているという、これはもうミステリ小説でしょう。

ただこのトリックは、そこまで隠せるか?と単純に思いました。
何も知らない島で出遭った人々が、なぜ指摘しない?(笑)
それを言ったらアンフェアかもしれませんね。しかしホラー文庫に入った理由は、
おそらくサイコホラーという意味なのだろうと、個人的には理解しました。

それよりもこの島の真実というか、隠してきた事の方が、なるほどと思いました。
島民全員で騙してきて、デメリットよりメリットが大きいと判断している訳です。
これはこれで中々恐怖です。
しかし、現実でもこれはあり得ることだろうなあ。

ちなみに澤村さん繋がりで、コミック版の『ぼぎわんが、来る』も読了後に
購入してしまいました。こっちは全く「ぼぎわん」が理解できませんでした。

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交差点に眠る [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「娘に渡して」と、偶然出会った女から写真を託された梓悠季。
だがヤクザの殺し合いで、その女は悠季の目の前で射殺された。
命拾いした悠季は十三年後、人気ファッションデザイナーになった。が、
またしてもショーの前夜、射殺現場に遭遇してしまう。
二つの事件に見え隠れするヤクザの正体、
そして渡された写真の意味とは?
正義感の強い悠季は真実を暴くため事件の真相を探る!


相変わらず、タイトルが上手い。物理的な「交差点」と、出会いと別れがある
という意味の「交差点」という。途中で解説が少し出てきます。

ヤクザの抗争がメインのお話で、赤川作品常連の強いヒロインが活躍しますが、
ちょっと意外な犯人でしたね。ややビックリ。
悠季が過去に体験した、ヤクザの殺し合いとその前の追われる男女の性交が、
彼女の運命を大きく変えたのは事実で、彼女がそれを本当に心の糧のような
ものにしているのなだと、読んでいる中で思いました。

そしてヒロインが強いだけでなく、その母も強かった(笑
どちらかが抜けているか、天然かというパターンが多いのですが、
命が狙われる恐れがある!→世界一周旅行に行こう、という思考が素晴らしい。
最後に明かされますが、母親からのメールで、事件が解けたようなものですし。

それにしてもジェットコースター的展開なのは、いつものことかもしれませんが、
流石の一言。
ヒロインに良い彼氏(候補)が現れなかったなあ、悠季も残念でしょうね(笑


交差点に眠る (徳間文庫)

交差点に眠る (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/01/12
  • メディア: 文庫






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論理仕掛けの奇談-有栖川有栖解説集 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

一生に一度は読みたいミステリがここに。ファン必携のミステリ・ガイド!

クリスティー、クイーンなど、海外の古典的名作から、松本清張、綾辻行人、皆川博子、
今村昌弘など日本のミステリまで……。新しい才能への目配りを常に忘れない、
本格ミステリのプロフェッショナルが愛をこめて執筆した、国内外の名作に寄せた解説集!
優れたミステリ・ブックガイドとしても最適の1冊。単行本刊行後に新たに執筆した解説3本と、
杉江松恋との読書対談も加えた文庫増補版。

このタイトルは、泡坂妻夫『毒薬の輪舞』に付けられたタイトルです。
泡坂先生は「探偵小説とは探偵小説の技法を使って作られている小説」であり、
「その技法というのは、読者に奇談を納得させるための一つの技術である」と書いており、
有栖川先生は、「ここでいう探偵小説とは本格ミステリのこと」で、と追記した上で、
本格ミステリとは<論理仕掛けの奇談>なのだ、と。
有栖川先生は、辞書にない怪しげな日本語と言いますが、これほど的確な言葉は
ないでしょう。
『死者の輪舞』と同じ探偵役にもかかわらず、これほどまるで違う作品を編み出し、
かつ、この『毒薬の輪舞』の、見事なまでの伏線の張り方、手がかりの残し方、
それが泡坂作品群では佳作であると評されている、ある意味贅沢ですよね。

本書タイトルにこれをもってきたのは、有栖川先生にとって思い入れが相当強かった
のでしょうかね。

しかし和製クイーンである有栖川有栖を思うと、やはりエラリー・クイーン&バーナビー・ロス
の2作は外せませんね。
『Xの悲劇』と『ローマ帽子の謎』の解説は流石、同書は「これぞ不朽の名作」と冠されています。

個人的に、読みたいと思ったのは吉村達也先生の『[会社を休みましょう]殺人事件』。
同書のです・ます調に合わせて、解説も同じになっているのですが、
これが書かれた時代背景も合わせ、復刊した時代背景も合わせ、気になりましたねえ。

紹介されている作品はジャンル含め多種多様。解説を読んで、実際にその本を
読むというのも、本選びとして良いのでは。


論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/03/23
  • メディア: 文庫







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アルファベット荘事件 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

巨大なアルファベットのオブジェが散在する屋敷『アルファベット荘』。
岩手県の美術商が所有するその屋敷には、オブジェの他に『創生の箱』と呼ばれる
関わったものは死に至るという箱もあった。雪が舞う12月のある日、
そこで開かれるパーティに10人の個性的な面々が集う。
しかし主催者は現れず、不穏な空気が漂う中、
夜が明けると『創生の箱』に詰められた死体が現れて――。
売れない役者、変人にして小劇団の看板女優、そして何も持たない探偵が、
奇妙な屋敷の幻想的な事件を解き明かす! 
当代きってのトリックメーカー・北山猛邦の、長らく入手困難だった初期長編が待望の復刊!


以下、ややネタバレ。




元々デビューが「城」シリーズであった北山先生。
大きな意味で「館」シリーズに連なる作品群ですが、本書はそれに見事に合致する
作品という印象を受けました。
東京創元社さんの復刊は流石です。


『創生の箱』のトリックはさておき(笑)、巨大なアルファベットのオブジェが何らかの
トリックに用いられているのは誰しも読んでいて、気付くはずです。

物理トリックとして、箱に死体を運ぶことが出来たのは誰か?=犯人である、という推理は
非常に鋭く見事。
ただ、箱そのものがどういう物なのか、これも絵入りで説明してほしかったなあ。
あとアルファベットの上を移動する、というのが結構事前にしていたとしても、
犯人としては、ヒヤヒヤだったろうなと。

さて、本作は本書のみでシリーズ化もしていないのですが、
それゆえに、より謎が深まる点も多いなと想いました。

単なる謎解き役=探偵役としての機能しか果たさない、と「あとがき」で北山先生も
言われている「ディ」。だからこそこの通称なのですが、
彼の記憶がなぜ無いのかとか、シリーズ化して掘り下げて欲しかったなあ。

プロローグで語られる少女と少年の話。登場人物でこの二人は誰なのか?というのも
楽しみの1つなのですが、
最後に、成長した少女が「不可能犯罪を必要としている人がいるの」という言葉は、
明らかに「ディ」との何らかの繋がりを示唆するものなので、余計に気になりました。

オーパーツ専門の探偵・春井もなかなかの曲者で、再登場してもらいたい。
というか、このオーパーツを鍵として、このシリーズ化をぜひ!


アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/10/12
  • メディア: 文庫






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ランチ探偵 彼女は謎に恋をする [水生大海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

すべての構図が、見えました――
美味しい謎を、いただきます!

ランチ合コンにいそしむ阿久津麗子と謎には目がない天野ゆいかの迷コンビには、
コロナ禍のなかでも新たな出会いが待っていた。学校の廊下に置かれていたお稲荷さん、
百貨店に届いた不穏な脅迫メール、キッチンカーへの嫌がらせ…
合コン相手が持ち込む謎に目を輝かせ推理するゆいかに、麗子は天を仰ぎ…。
恋の行方も気になる本格グルメミステリー。


以下、少しネタバレ。



このシリーズの最新作が、この「コロナ禍」で読むことが出来るとは思いませんでした。
しかも、内容もしっかりとコロナ禍を踏まえているという(書き下ろしもあるのです!)
さすが水生先生。


コロナ禍だろうが、なんだろうが、イイ男を見つけたいというパワーは誰にも
負けない阿久津麗子、充分なコロナ対策をし、ステイホームをしっかり続けるも、
謎には眼が無い天野ゆいか。
本書では、阿久津麗子はどちらかというと、男よりも美味しい食事が主目的に
なっているように思いましたが・・・


第1話の「お稲荷さん、いまは消え」は、コロナ禍前のお話。
この謎の答えは、試みとしては非常に素晴らしいけれども、
確かに食中毒とかアレルギーとか、そういったことを考えると難しいですね。
彼の言う、当時がいつなのかはわかりませんが、こうした試みをした校長は
すごいなあと思います。

そして2話以降が、コロナ禍でのお話になります。
とくにリモート飲み会やオンライン合コンというのが登場し、「ずっとお家で暮らしてる」
では、このオンラインならではのトリックが登場します。
特にこの3話は、それ以外にも麗子の合コンに対する立ち位置が若干変わっていることも
特筆に値しますね(笑)

「同じ空間で同じものを食べて、あれが美味しいとかこっちが美味しいとか、そういう話を
するのも合コンの楽しみのひとなわけ。盛り上がりたいの。」(179頁)

これは麗子の立ち位置変更発言に読めて、一方でコロナ禍で集まれなくなった人たちの
一種の叫びでもあるのでしょう。

4話もオンラインならではのお話。というか、3話と4話は実は合コンではないという。
3話は二人ともオンライン飲み会であるとわかっているので良いのですが、
4話は、ゆいかの謎解きにより判明するという、ちょっと男たちがずるいですね。

しかし、本トリックや犯人も、コロナ禍という特殊状況下であるから生じてしまった、
悲しい話ではありますね。ラストでうまく解決できそうなのが救いです。

第5話は個人的には本作愁眉。永田&久野の行動を看破するゆいかの謎解きだけでなく、
久野のその先の想いまで見通したところ、そしてラストの爽快感がイイですね。
「誰かと出会うって楽しいことなんだって。」(324頁)という麗子のセリフがまた良い。

ランチ合コンが当たり前のようにできる日常が早く戻り、
麗子にも幸せが訪れることを祈りつつ。


ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

  • 作者: 水生 大海
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/02/04
  • メディア: 文庫







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シャーロック・ホームズたちの新冒険 [田中啓文]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ベーカー街で出会わなかったホームズとワトスンの“最初の事件”、
手塚治虫の原稿紛失を巡るトキワ荘での騒動、死後自分を殺した犯人を推理する明智小五郎、
正岡子規が推理する松尾芭蕉の死の真相、〈黒後家蜘蛛の会〉に持ち込まれたアシモフが
クラークにしたためたとされる手紙の謎……。推理小説の名探偵から実在する歴審の偉人まで、
誰もが知る著名人たちの知られざる探偵行全5編を収録した、オマージュミステリ短編集第二弾!


以下、ややネタバレあり。




ブログを見たところ、どうも第1弾「冒険」は購入していないようですねえ。
うーん、記憶が定かで無い。


正直どれも面白いのですが、やはり背景や元ネタを知らないと、このシリーズは
当然ながら楽しめません。
私、恥ずかしながら<黒後家蜘蛛の会>は未読だったので、そちらを読んでから
再読したいと思います・・・

「トキワ荘事件」、この話で一番気になったのは『イナゴ身重く横たわる』なる書物。
解説の北原尚彦さんが触れていますが、なるほど、そういう使い方なのかと。


「二人の明智」、名探偵・明智小五郎と明智光秀が共演する豪華作品。
明智が殺害されるという、ショッキングな出来事から始まりますが、
メインは明智光秀の謀反と、そこから始まる壮大なる仮説!
当然ながら、そこにはダジャレが上手く取り入れられています(笑
それも[附記]にまで!
「明智光秀」がなぜ謀反を起こしたのか?この謎を解くよう、明智光秀から依頼された
明智小五郎のダジャレ(失礼!)連想はお見事。小栗栖村まで出てくるとは・・・
驚きですね。

「二〇〇一年問題」、「ロボット三原則」と「HAL団治」が笑いました。
いや、前者は笑うところではないのですが、アシモフが提唱した原則で、
これが物語上、鍵を握るという、誰もが知っていたのに、この話の中で
誰もそれに気付かなかったのかという、メンバーのマヌケさが良いですね。

後者はもうダジャレを超えて、素晴らしい想像力です。

「旅に病んで」。この話は正岡子規と高浜虚子の物語なのですが、
正岡子規が松尾芭蕉の弟子である服部土芳の書いた書状を見つけたといい、
そこから、松尾芭蕉の暗殺、彼の正体、遺した句等々、壮大な話に繋がっていきます。

松尾芭蕉が隠密であるとか、忍者であるとかいう説は昔から有名だったと思いますが、
本書はこれを逆手に取っていて、実はその真逆だったという新説を披露しています。
これは正直言って驚きました。説得力もしっかりしていて、上記作品群の中では、
一番面白かったです。
あと圧巻は257~258頁の箇所で、「夢のまた夢」「聚楽第」と、さらに虚子が
推理を進めて、正岡子規が示そうとした仮説を補うところがいいですね。
が、それら全てをひっくるめての258頁が、やはり一番。
他作品群と異なり、全て悪戯だったとしたのは、田中さんなりの何か配慮があったのかなあ。

「ホームズ転生」。ホームズとワトソンが同居生活しなかったという、別の時間軸の物語。
いやあ、これは読んでいて結構きつかったなあ。ホームズ好きとしては、
こんなホームズ、見たくないという。
ラストでこの夢を見ているのがホームズというのも、中々捻りが効いていて、
ホームズ自身も、ワトソンと同居していなければ名探偵にはならなかった、という
深層心理があったことを示唆していますね。
決してワトソン=ストーリーテラーではない、という。

解説は先にも書きましたが北原尚彦さんが書かれています。ぜひホームズパスティーシュ
の第2弾、お願いします!




シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/29
  • メディア: 文庫






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三世代探偵団 次の扉に潜む死神 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

天才画家の祖母と、生活力皆無でマイペースな母と暮らす女子高生の天本有里。
彼女が出演した舞台で、母の代役の女優が何者かに殺された。
有里の目の前で倒れた被害者が最後に口にしたのは、母の名前だった。
彼女の身に何が起きたのか。事件を追ううちに、3人の周囲に次第に不穏な影が忍び寄り……?
個性豊かな女三世代が贈るユーモアミステリ開幕!


2017年、赤川次郎先生が、『キネマの天使』と同じく初めた新シリーズ。
御年69歳(70歳)で新たなシリーズを始めるという、すごい試みです。

主人公は高校生の天本有里、ですが、探偵役は祖母の幸代なのでしょう。
年の功(失礼!)といってはあれですが、彼女は物語の中である程度の事態を
見通している感があります。

相変わらず場面転換が激しいですが、それ以上に物語に惹き込まれます。
有里の目の前で起きた殺人事件。有里が通う学園の事務員である三田洋子の弟・三田広士
の元に突然現れた女性・アケミ。洋子の上司が原口恒子が抱える何らかの秘密・・・
殺人事件にどう絡んでいくのか、想像が付きません。

様々な人物の思惑と、その後ろで何かを企む組織が見え隠れする中で、
物語は続いていきます。

個人的にはラストの犯人というか、組織というか、このあたりはもっと明確に記す、
具体的に書いて貰いたかったですね。何が学園を含め起こっていたのか。
実のところよくわかりません。

ただし、赤川先生の狙いは当然結末にあるのではないのだろうというのは、
これまでの作品からも想像が付きます。

本書の副題「次の扉に潜む死神」は、人が歩んでいく上で、その都度その都度
何が潜んでいるかわからない、どうその人が変わるかわからない、という意味を
含んでいるのであろうと勝手に想像しました。

大人しそうな三隅研一や、裏の顔役をしていた永田、そして三田洋子等々・・・
多くの人たちがまるで違う人物かのように変貌、変化していく様が描かれています。

しかし、三毛猫ホームズシリーズしかり、本シリーズでも祖母の幸代がグリップ(?)
しつつ、文乃や有里は彼彼女たちの変貌に影響を受けながらも、前に進み
事件を解決に導いていくのもまた事実。

人間ちょっとしたことで、道を踏み外したり、変わったりしてしまうけれども、
彼女たち三世代のような人が近くに居れば、どんだけ安心だろうかと思ってしまいますね。

赤川先生の作品群の主人公はそんな優しい人たちばかりなのが素晴らしい点なのですが。

本シリーズ、すでに3作品刊行され、4作目もという話のようです。
1・2作は同時刊行されましたので、また近いうちに。


三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版







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西村京太郎先生、お疲れ様でした。 [西村京太郎]

91歳まで現役を続けこらえた先生にまずは敬意を表したいと思います。

世間的に見れば、トラベルミステリーという分野を開拓した、
まさに第一人者、そして2時間ドラマには欠かせないシリーズ原作者といえるでしょう。

一方で、このトラベルミステリーの大ヒットのおかげで、各出版社が
ミステリ(本格、新本格なども含め)という分野に財源を回せるようになったのではないか
とも思っているのです。

ミステリファンならば、やはり初期の「天使の傷痕」「四つの終止符」
そしてスパイミステリの傑作「D機関情報」、
さらには青春ミステリ「おれたちはブルースしか歌わない」

そしてそして、なんと言っても「そして誰もいなくなった」に真正面から挑んだ
作品である「殺しの双曲線」。
パロディであって見事な本格ミステリである、名探偵4部作。

実は島も多いのです、「伊豆七島殺人事件」「幻奇島」「南神威島」
拙ブログでも色々とご紹介させて頂きました。
(「神話列車殺人事件」や「鬼女面殺人事件」も素晴らしい。)

そしてそして、やはり「消失モノ」は忘れてはいけません。
十津川警部が活躍する「消えたタンカー」、左文字進登場の「消えた巨人軍」
「ミステリー列車が消えた」、「華麗なる誘拐」「盗まれた都市」等々・・・
挙げればキリがありませんね。

「寝台特急殺人事件」、「終着駅殺人事件」、これらも名作です。
事件現場を作り出してしまう「七人の証人」は十津川警部シリーズでも異色の傑作。

昨年まで自筆原稿で入稿されていたとのこと。
大往生の御年齢ではもちろんありますが、まだまだお元気で執筆して頂きたかった
のもまた事実。

先生、多種多様な作品を生み出して頂き、ありがとうございました。合掌。



四つの終止符 (講談社文庫)

四つの終止符 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: Kindle版



新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Kindle版



新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版



おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: Kindle版



華麗なる誘拐 (河出文庫)

華麗なる誘拐 (河出文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/07/04
  • メディア: 文庫



左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/01/31
  • メディア: Kindle版



ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/05
  • メディア: Kindle版



神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2012/11/02
  • メディア: 文庫



新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/07/12
  • メディア: 文庫



終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/10/08
  • メディア: 文庫



七人の証人 新装版 (講談社文庫)

七人の証人 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/06/15
  • メディア: 文庫



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怪異筆録者 [太田忠司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

売れない怪奇小説家・津久田舞々(本名)は、ある日小さな田舎町からの依頼を受けて、
その町の郷土史を執筆することになる。だが、到着したその日の夜に、
彼は謎の幽霊(?)の封印を解いてしまう。「しっかり妾に仕えろよ。さもなくばお前を呪い殺す」
――現れたのはまだ幼い少女だった。ふりかかる受難を躱しつつ、
紳士的な祟り神から生意気なお狐さまなど、
異界のものたちに遭遇してゆく舞々の運命やいかに。


太田忠司先生の作品はなんと初読。狩野俊介じゃないのか!と言われそうですが、
東京創元社のHPを見ていて、気になったので購入しました。

ミステリともホラーとも内容的には言いがたく(分類としてはホラーでしょうが)、
つかみ所の無い、中々に表現しづらいものですが、楽しめました。

後半が、世界を救う!的なライトノベルというか、そういう方向だったのは
個人的にあまり好みで無かったので、前半の非日常における話の方が好きです。

各話の初めに、必ずといっていいほど、編集者の明神が夢の中に登場し、
舞々先生を罵倒したり、意味不明な言語を並び立てたりするところは面白い。
現実でもやられてそう。

個人的には「津久田舞々は夜汽車に乗る」が愁眉。
汽車内の老人との会話が絶妙です。平然と乗っている英丹がシュール過ぎる。
それと車掌の正体も以外過ぎましたね。

方喰鐵山が作った結界が、舞々の前に現れた様々な神なのでしょうが、
彼彼女(?)たちは、あくまで鐵山が旅の途中で救ってきて、古賀音につれてきた神々
なのでしょうね。
元々居たのが、旧き神で、これはまあ怨霊的な神様なんでしょうかね。
御霊信仰ではないですが、敬うことで、逆にそこに留まらせる。
まあこの話では、世界を滅ぼす方向に行ってしまうのですが。

元々居た土着神と別のところから来た神という意味では、明治以降の各地の勧請とか
思い起こさせますが、まるっきり話とは関係ないのでこのへんで(笑

この珍しい名前の舞々先生とともに、肩肘張らず、ゆったりと読める小説です。


怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/30
  • メディア: 文庫






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名探偵誕生 [似鳥鶏]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

僕は、名探偵になる。世界一大切な人のために――
切なくて、愛おしい青春本格ミステリ!

小学4年だった僕は、となり町の幽霊団地へささやかな冒険に出た。
その冒険に不穏な影が差したとき助けてくれたのが、近所に住む名探偵の「お姉ちゃん」だった。
彼女のとなりで成長していく日々のなかで、日本中を騒がせることになるあの事件が起きる――。
ミステリとしての精緻さと、青春小説としての瑞々しさが高純度で美しく結晶した傑作。



本書は星川少年の成長物語であるとともに、初恋の人をずっと想い続けているという、
青春小説ともいえるでしょう。隣に住む千歳お姉ちゃんとともにある意味歩んでいく人生。

第5話構成ですが、私の愁眉は第2話「恋するドトール」。
星川少年がもらったラブレターから、この驚異的な謎に行き着くのはすごいの一言。
一方で、このトリックを成り立たせた犯人の恐ろしい執念も感じますね・・・

第4話・第5話は本作で殺人事件が描かれ、さらに少年にとっては千歳お姉ちゃんの彼氏が
登場するという、衝撃の回でもあります。
そして新たな名探偵が登場する回でもあります。
第4話はこれまで通り、頼りっぱなしだった千歳が探偵役を務め、
第5話は、星川少年が名探偵として「誕生」します。

トリックでいえば本話のトリックはかなり見事です。ただし犯人とそれをかばった
お姉ちゃんの彼氏の対応がちょっとなあ・・・。
ラストも、個人的にはそのまま二人が結婚で良かった気もしましたね。


名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/12/03
  • メディア: Kindle版







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あいにくの雨で [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。
殺されたのは、発見者の高校生・祐今(うこん)の父親だった。8年前に同じ塔で、
離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、
親友の烏兎(うと)と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、
町では次の悲劇が起こり――。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。


以下、少しネタバレあり。



巽昌章さんの解説が、この作品の麻耶作品群内での位置づけ等々、
非常に良くまとめられていますので、ぜひそちらもあわせて。

メルカトル鮎で周囲を騒然とさせるデビューをし、そのシリーズを重ねてきた
講談社で、本書が刊行されたというのは、同時代的に考えると、千街晶之さんの
言葉も頷けるところがありますね。

私が本書を読了した後に感じたのは、『隻眼の少女』に似た印象を受けました。
それと、登場するメインキャラクターの名前が、相変わらず麻耶先生らしいという(笑)
あれ、なんて読むんだっけ?と何度も確認してしまいました。

本書は一応青春本格ミステリとあるのですが、
塔で起きた一連の事件の謎と、生徒会での不正を追うスパイ活動の2つで
主に構成されています。
後者の活動は、青春ミステリと銘打つミステリの中でほとんど見られない話で、
結構珍しいと思いつつ、実際、もう少しこちらをメインにしても良かったのでは
ないかという思いもあります。

前者は,私は赤川次郎先生で慣れすぎているのか、高校生が名探偵役として活躍するのが
当たり前になってしまっているので(笑)、そこまで驚きませんが、
鳥兎と獅子丸が探偵役として活動していいきます。
むろん、後者もこの二人がスパイ役です。

しかし、ミステリの部分については、最初の冒頭で塔からの脱出トリックが読者に
早々に明かされ、その後はそれに至る経緯が書かれていくのが本書の特徴でしょう。

つまり、なぜ犯人が塔でこのような犯罪を行ってきたのかを、読者が読み解いて
いくというのが、本書の謎解きになるのだろうと思います。

とはいえ、この結末は予想できそうで、予想出来なかった、な・・・
反抗期がこちらの想定や予想を遙かに超えたと考えるべきかと思いましたが。

それまでの事件の謎を解き明かすという行動はそもそも何だったのかいう
疑問も当然出てきますし、ラストも果たしてこの後どうなるのか、余韻を残す
終幕となっているのも気になります。

なんとも評価というか、感想が難しい作品でした。


あいにくの雨で (集英社文庫)

あいにくの雨で (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: Kindle版







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白魔の塔 [三津田信三]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『黒面の狐』で連続怪死事件を解決し、炭鉱を後にした物理が「復興の現場」として
次に選んだ職場は「灯台」。戦中は軍事設備としての側面もあり、海運の要である灯台を
献身的に支える灯台守という仕事にやりがいを見出した物理だが、新たな赴任先である
轟ケ埼灯台にいわくいいがたい不穏なものを感じる。案の定、灯台に至る道から怪異に遭い、
「立ち寄るな」と警告されていた山中の一軒家に迷い込んでしまった。
そして、ようやく辿りついた灯台で物理を待ち受けていたものは――。

そこそこネタバレあり。




物理波矢多シリーズ第2弾。
前作『黒面の狐
を読んだのがおおよそ2年前なので、波矢多に出会うのも久しぶりです。

前作が、三津田先生が得意とする、ホラーや怪奇が全面に出されておらず、
かなり本格ミステリだったのに対して、本作はまるで違いました。
正直、読んでいて良い意味で愕然としてしまいました。傑作です。

3部構成で描かれる物語ですが、なんと第1部は轟ケ埼灯台までようやく到着する所
までしか描かれていません。白衣の森は、迷いの森レベルではなく、
不思議のダンジョンレベルの道程ですね(笑)

それはやや冗談としても、この1部で語られる白子村、白神様、白屋、白もんこ、
これらのキーワードや波矢多が体験した不可思議な出来事は、そっくりそのまま
2部の入佐加灯台長が体験し語られる物語とそっくりそのままなのです。

なんという構成なのかと驚いてしまいました。すでに怪異的な現象は
描かれているとしても、果たしてこの物語は何を描こうとしているのか。
白子村や白神様、そして憑物筋の家と思われる白屋、白もんこと呼ばれる化け物。
これらの謎を波矢多が解き明かすのか?とぼんやり考えていたのですが、
まるでそんな気配はない。そもそも舞台はほとんど灯台です。

3部、ここは波矢多の真骨頂でもあり、物語が一気呵成、怒濤の展開を見せ始めます。
まずかつて横山教官から聞いた、アイリーン・モア島の灯台の事件。
この謎の事件に1つの合理的解釈を波矢多が示します。

この解釈、さらっと書かれているのですが、「日記」という誰かの筆記体の内容を
どう捉えるのかということを1つの見事な推理だなと。
綾辻行人先生の『黒猫館の殺人』もこの『手記』を元に大がかりなトリックが仕組まれています。

さらに自分が出遭った白もんこにも合理的解釈を示します。
この解釈、なるほどと思いつつも、彼がそこまでやるのかなあという疑問。

そもそもの前提として、白子村の人々は白衣の森に入ることに恐懽している
のにも関わらず、ここまで堂々(?)とした振る舞いが取れるのか?
いや、そもそもその前提が間違いなのか。波矢多の弁当箱に入れられていた
白屋に泊まるな、という警告は、彼が入れたのか?
彼が入れたとすれば、実は波矢多の解釈と一致するところも多いのですが、
なんとも解答は示されず。

入佐加灯台長へ突きつけた、1つのある事実は確かに驚きました。
「路子」の推理は秀逸。「白」が多いと波矢多が考えていたの描写がありましたが、
それがここに通じてくるのかと思いました。

しかし問題はその後なのです。3部が「五里霧中」というタイトルを付けられているのは
この後があるからでしょう。417頁からの展開は全く予想出来ません。

2部の入佐加灯台長の体験談はともかく、1部最後の轟ケ埼灯台到着と灯台長夫妻との出会い、
ここからが全て狂っているのです。
そもそも入佐加灯台長と路子、そして灯台守の浜地はどこへ消えたのか?
そしてなぜ消える必要があったのか?
全くその点は語られません。余計に恐ろしく、波矢多が記憶を失うのも無理は無いでしょう。
白い巨人が迫ってくるという波矢多の悩みは、彼の推理がある種正しいことを示して
いるのですが、この轟ケ埼灯台に波矢多が着いた時から起こっていた事象は、
一体何なのか。
彼が海上から灯台へ向かっている時に見た、白い人=浜地or入佐加だったんでしょうか?
ここを怪奇(灯台にある怪奇の1つ)として残されてしまうというのは、
本書の性格から納得できる部分はあるものの、ここにも波矢多の合理的解釈を
どうにか付けてもらいたかったなあ。まあこれは高望み過ぎるのでしょうけど。

前作とは全くベクトルの違うシリーズですが、私にとってはここ最近読んだ中では
紛う事なき傑作でした。



白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 文庫







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やぶにらみの時計 [都筑道夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昨日までの『きみ』はもう居ない。
恋人、友人、知人に否定された男の奇妙な自分探しの迷宮。

「あんた、どなた?」妻、友人、そして知人、これまで親しくしていた人が〝きみ〟の存在を否定し、
逆に見も知らぬ人が会社社長〈雨宮毅〉だと決めつける──
この不条理で不気味な状況は一体何なんだ!真の自分を求め大都市・東京を駆けずり回る、
孤独な〝自分探し〟の果てには、更に深い絶望が待っていた……。
都筑道夫の推理初長篇となったトリッキーサスペンス。
幻の連載長篇『アダムと七人のイヴ』第一話も特別収録。

「トクマの特選!」として復刊した都筑道夫先生の最初の1冊。
すでに『猫の舌に釘を打て』も刊行されています。

トクマの特選!、とは復刊レーベルであり、
Z世代に読んでほしい名作」としてミステリやSFのほか、一般小説、エッセイ、
ノンフィクションなども刊行される。、とのこと。

こうした試みはうれしい限りですね。
笹沢左保先生の作品群もすでに刊行されていますし。
徳間文庫の購入がどんどん増えそうです。

ところで都筑道夫先生作品は、河出書房さんや筑摩さんからも次々と復刊されており、
ちょっとしたムーヴメントのような感じにここ数年なっています。
この勢いにのって、物部太郎も出てほしいなあ。
(ちなみに電子書籍版は出てます。)

さて、本書は都筑さんの初長編作品とのこと。
この辺りの話は、解説で法月綸太郎先生が非常に詳しく書かれているので、
ぜひそちらをじっくり読んでください。

私の中ではかつて創元推理文庫で復刊した「退職刑事」がやはり浮かびますね。
全て購入しました。今調べてみたら、なんと元々は徳間書店刊行とは・・・
いや、ぜひともトクマの特選!で再び!!

話が色々と飛んでしまいました。
本書、タイトルは当然聞いたことがあるのですが、初読です。
そもそも「やぶにらみ」という言葉、最近では馴染みが薄いのではないでしょうか。

『日本国語大辞典』によると、
「藪睨』:①物を観るとき、両眼の視線が平行しないで、一眼が他方を向く状態の俗称。斜視。
     ②言動・思考などが見当違いなこと。

明らかにこの小説では②の意味を指しています。
しかし、このタイトル、秀逸だなあと感じました。

そしてやはり文体、「きみ」という二人称で描かれる全編。
(これも詳しくは解説を)

自分が生きてきた世界が一瞬にして変わってしまうという、
衝撃的な朝から始まる物語。
自分は浜崎誠治だと思っていたが、実は違うのか・・・?という所まで
追い詰められていく「きみ」
特に255頁は、そう思い込んでいるということを、<殺し屋>こと鈴置の猫の話から
引用して、かなり哲学的な考えまで及んでいるところが印象的です。

ところで、猫についてはかなり残酷な描写も出てくるので、
その点は閲読注意ですが、先ほど挙げた『猫の舌に釘を』もタイトルだけみると、
かなり残酷というか目を背けたくなるタイトルです。
都筑先生は何か猫に独特な観点があったのかなあ、とふと考えてしまいました。

狂言回しというか、名探偵役?で登場する猪俣がかなり良い味出してます。
このまま彼が一気に謎を解くのかと思っていたのですが、結構情けない状態になるところも
ちょっとおもしろい。
むしろ、たまたま一緒にいた、女性・千沙子の方が最後は活躍するという・・・(笑

本書の最大の問題点と私が思うのは、やはりラストなんだろうと思います。
自分を他人に仕立てたのは誰か、そうしなければならないのはなぜか。
これらを追って浜崎は1日中奮闘しますが、最後の犯人の独白というか、
それが実のところよくわからないんですよね。

しかもかなりあっさりしてます。
むしろラストの浜崎の感想(279頁)の方がより読ませます。

都筑さんなりの推理作家としての<再スタート>の作品として試行錯誤した
結果なのだろうか。他の作品や評論含め、色々と読んでみないとわからないのかも
しれませんね。


やぶにらみの時計 (徳間文庫)

やぶにらみの時計 (徳間文庫)

  • 作者: 都筑道夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/11/09
  • メディア: 文庫







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アリスの国の殺人 [辻真先]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

コミック雑誌創刊に向けて鬼編集長にしごかれる編集者の綿畑克二。ある日、
行きつけのスナック「蟻巣」で眠りこけ、夢の中で美少女アリスと出会う。
そして彼女との結婚式のさなか、チェシャ猫殺害の容疑者として追われるはめになった。
目が醒めると、現実世界では鬼編集長が殺害されており、ここでも殺人の嫌疑をかけられてしまう。
二つの世界で無実を証すために事件の真相を追うことになった。
日本推理作家協会賞受賞の長篇ミステリー。


以下、ネタバレあり。





相当前から気になっていて、徳間も、双葉社もいずれも絶版?で全然読むことが叶わなかった
作品でした。今回、徳間文庫さんから念願の復刊ということで、早速に購入。

アリスの世界(夢?)と現実世界を行き来する主人公・綿畑克二。
彼が最後に行き着く先はどこなのか・・・?

ともかく、アリスの世界が不条理極まりない世界です。
アリスはともかく、ニャロメやヒゲオヤジ(伴俊作)、さらには鉄人28号まで
登場します。しかも、鉄人28号はこの世界で起きたチェシャ猫が<密室>で殺されている
という事件を解く、最大のキーにもなります。

とにかくレベルの高い言葉遊びが凄い。辻真先御大はこれは執筆していて、
気持ち良かったのだろうなあ。
章タイトルの反射(鏡)表現、しりとりで進む文章、証人から白兎への近似語遊び、
挙げればきりがありません。

それでいて、この夢の世界の殺人事件が実に凝っている。密室を逆手に取ったトリックや、
『仮題・中学殺人事件』の意外な犯人に通じる、犯人を裁く法廷の裁判長が犯人という。
御大のこだわりが見えますね。

現実の世界では『深夜の博覧会』で(私にとってはなじみ深い) 那珂一兵が登場。
こちらの事件はアリバイ崩しがメインとなりますが、そもそも事件の大前提を覆す
『蟻巣』の面々の活躍(?)。明野編集長の執念とも言える思いが彼彼女を
動かしたのでしょう。

しかし、結局こちらの事件の最後はどうなったのだろうか。
最後を飾る章は夢の国の話で、301頁の「これじゃおわらない!」は何を指すのでしょうか・・・
続編にあたる『ピーター・パンの殺人』に続くということなのでしょうか。

ここまで遊びを盛り込んで、それでいて夢と現実いずれの事件も見事な作品。
合わない方も居られるかもしれませんが、復刊したことでぜひ手にとってほしいものです。


アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 辻真先
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/07/08
  • メディア: 文庫







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こうして誰もいなくなった [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

仮想通貨で成功した若き大富豪に招待された10名の男女が、
"海賊島"で巻き込まれる不気味な連続殺人事件――クリスティの名作を大胆に再解釈した表題作
をはじめ、書店店長の名推理が痛快な「本と謎の日々」、肥大化した男の欲望と
巨大生物の暴挙に恐怖する「怪獣の夢」、遊び心に満ちたタイポグラフィが楽しい「線路の国のアリス」など多彩な14篇を収録。ジャンルを超越した物語世界の魅力を堪能できる、唯一無二の作品集!


ちょっと更新が空いてしまいました。
昨年発売された、有栖川有栖先生のノンシリーズ短編集。
少しネタバレ。






「線路の国のアリス」。実はこの本の前に読んでいたのが『アリスの国の殺人』で
なんという偶然!と思いました。
P.35のお遊びなど、まさに「不思議の国のアリス」でも、そして『アリスの国の殺人』でも
あり、「アリス」を舞台に、様々な異なるミステリが描かれていて、いやいや驚きました。
それだけに小林泰三さんの逝去が悔やまれてなりません。
最後、夢から醒め、現実世界に戻ったかのようなアリス、そこにはエキシャ猫と
白ウサギが・・・アリスは再び追いかけますが、果たしてこれはまだ夢の中なのか、
それとも「鏡の国」へ今度は向かうのか。少し余韻を残した終わり方もまた良いです。

「劇的な幕切れ」。これ短編ながら見事なミステリ。サスペンス、ホラーでも
あるのかもしれませんが、主人公のラストをどう考えるか?というのもあるのですが、
<パープル>というある種の趣味というか、そういうものを持つ人も当然ながら
居るのでしょうね。

「未来人F」は江戸川乱歩が生んだ「少年探偵団」シリーズのパスティーシュ。
解説だと、パロディとしてますが、やはりパスティーシュの方がしっくりくる気がします。
それは表題作も同じこと。

パロディとパスティーシュの違いは、確か『シャーロック・ホームズに愛を込めて』か
ジューン・トムソンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』の解説か、
何か書いてあったと記憶してます。

閑話休題。
この「少年探偵団」はいわゆる「通俗小説」になるのでしょうが、
有栖川さんがあとがきで書かれているように、小学生が夢中で読むのはよくわかります。
明智小五郎の登場のかっこよさも良いし、二十面相との対決も良い。
ただし、本作は最後にメタ要素があるのが少し捻ってますね。
(だからこそ、パロディと評したのかもしれません。)

「本と謎の日々」は大崎梢先生を読んでいるかのような錯覚を受けましたが、
それもそのはず。あとがきで書かれていますが、本作は『大崎梢リクエスト!本屋さんの
アンソロジー』所収作品。シリーズ化してもよい作品!

さて表題作「こうして誰もいなくなった」
いやあ、さすが有栖川先生。最後の「密室殺人」は見事の一言。
密室の中に死体を入れるという逆転の構図。『そして誰もいなくなった』パスティーシュ
としても第一級の作品ではないでしょうか。

それとやはり探偵役には触れない訳にはいきません。響・フェデリコ・航。
名探偵。<怪奇八十面相事件>を解き明かした、警察にも知られる人物。
ポワロをさらに奇抜にした感じにしたかの、星影龍三を私は思い出しました(笑
何で勝手にミドルネームを入れているんだwww
そして、なぜ事件が起きている事を知ったのだ?!
いいですねえ。彼の事件簿を作品にしてほしい。


解説では『殺しの双曲線』、『獄門島』、『パノラマ島奇談』といった作品への
オマージュも指摘していますが、なるほどと思いました。

『そして誰もいなくなった』の偉大さはもはや語るまでもありませんが、
『殺しの双曲線』に影響を受けて書いた、というパスティーシュも
あるかもしれませんね。



こうして誰もいなくなった (角川文庫)

こうして誰もいなくなった (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/11/20
  • メディア: Kindle版







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御手洗潔のダンス [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。

またまた間隔が空いてしまいました。


『挨拶』に続く第2弾。
こちらも良作揃いです。

「山高帽のイカロス」は、犯人にとっても予想外な事が起き、
まさに被害者が「浮遊した」「飛行した」とした思えない状況に。

より面白いのは「舞踏病」。
自宅の2階の下宿人が、どうやら「狐つき」らしい・・・
そんな奇妙な謎を持ってこられて、うごかないはずがない!

本作では、御手洗の医療に関する考えなども伺う事ができ、
後々の天才御手洗潔(この時点で天才ですが)の片鱗を垣間見ることが出来ます。

トリックの面白さならば「ある騎士の物語」。かつて藤原宰太郎さんの、
『世界の名探偵50人』とその続編を読んだことがあるのですが、
そこにバッチリと、この事件のトリックがネタバレされてました(苦笑
当時はまだ小学生くらいで、御手洗シリーズを読んでいませんでしたので、
余り気にしませんでしたが、改めて読んで見て、ああ、そういえばと思い出しました。

エキセントリックな言動とともに、極めて不可思議、奇妙な事件を解き明かすのが、
やはり御手洗潔だなあと、改めて思いました。
落ち着いた御手洗より、やはり好きですね。




御手洗潔のダンス (講談社文庫)

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版








世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 文庫




続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1993/12/01
  • メディア: 文庫



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金閣寺は燃えているか?-文豪たちの怪しい宴 [鯨統一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学教授の曽根原は、ふと気づくとバー〈スリーバレー〉の前に足が向いている。
女性バーテンダー・ミサキの魅力なのか、文学談義のせいなのかは分からない。
ある晩、ミサキが質問を繰り出したのは、川端康成の『雪国』についてだった。
『雪国』はミステリでなはいか、というミサキの疑問に、途中から入店してきた宮田が
珍妙な回答を話し始めて……。
さらに、田山花袋『蒲団』、梶尾基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』と
日本文学界の名作の新解釈で贈る、鯨統一郎最新作。



前作よりも楽しめました。
日本文学界の重鎮・曽根原が良い味を出してます。
『邪馬台国はどこですか?』に続く早乙女&宮田シリーズも、
いつの間にか主人公は<スリーバレー>に足が向いてましたが、
曽根原の場合、美人バーテンダーのミサキのことが気になり始めて、
ついつい足が向いてしまうのですかねえ。
必ず出会う宮田のことを4話通して馬鹿にしているという、認識をまるで変えていない
という一貫性も面白いですが。

田山花袋の『蒲団』の解釈は中々斬新だなと思いました。
ネタバレになるので書きませんが、現在の小説界の一大ジャンルの原点、
いや田山花袋をその原点と書いているんですよね。

ただやはり本作愁眉は、第四話『金閣寺』でしょう。
三島由紀夫という人物へも迫りつつ、本書の「金閣寺」とは何を指しているのか?
宮田の解釈に唸らされました。

ところで、最終話に登場したすごい美人というのは、もちろん早乙女静香ですよね?
宮田との関係はどうなったんだろうか。


金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)

  • 作者: 鯨 統一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/11
  • メディア: 文庫







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ヨルガオ殺人事件 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

カササギ殺人事件』から2年。クレタ島でホテルを経営する元編集者のわたしを、
英国から裕福な夫妻が訪ねてくる。彼らが所有するホテルで8年前に起きた
殺人事件の真相をある本で見つけた──そう連絡してきた直後に娘が失踪したというのだ。
その本とは名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』。それは、
かつてわたしが編集したミステリだった……。
巨匠クリスティへの完璧なオマージュ作品×英国のホテルで起きた殺人事件!
『カササギ殺人事件』の続編にして、至高の犯人当てミステリ!

“すぐ目の前にあって──わたしをまっすぐ見つめかえしていたの"
名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、
ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。
『愚行の代償』の舞台は1953年のイギリスの村、事件は一世を風靡した女優の殺人。
誰もが怪しい事件に挑むアティカス・ピュントが明かす、驚きの真実とは……。
ピースが次々と組み合わさり、意外な真相が浮かびあがる──
そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、ミステリ界のトップランナーによる傑作!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
と、もう1月も半ばを過ぎてしまいました。
越年し過日読了したのが、この『ヨルガオ殺人事件』
以下、ややネタバレ。




いや、ずいぶんと読了まで時間がかかってしまいました。
決してつまらなかったとか、そういう訳ではなく、なんでしょうか。
1つ言えるのは、海外ミステリは登場人物を何度も見返すのが多くなり(苦笑)
今回の場合、作中作もあるため時間がかかってしまったのかなあ。

『カササギ殺人事件』の続編で、名探偵アティカス・ピュント、再び。
そして作家アラン・コンウェイの元編集者であるスーザン・ライランドも当然ながら
再び登場します。


前作は作中作が断然面白かったのですが、今回はどちらも楽しめました。
それにしても、ピュントの「名探偵、みんな集めてさてといい」の場面は、
本当にエルキュール・ポワロを彷彿とさせますね。
前作は病に冒されて、かなり衰弱していたので、本作のピュントはまるで別人です。
ホームズのように、犯罪に関する本まで書いているとは・・・。
なんというか、ポワロっぽくないので、やや鼻につきますね(笑

ところで話は少し脱線しますが、過日AXNミステリで
「アガサ・クリスティー ポワロ&マープルとともに歩んだ100年」を観ました。
ここにホロヴィッツ氏も登場していて、おお、こういうルックスなのかと。
ちなみにヘイスティングス大尉役のヒュー・フレイザー氏、
ジャップ主任警部役のフィリップ・ジャクソン氏も出ていて、かなり楽しめました。

閑話休題。
本作は事件の、というかスーの事件関与の仕方が中々面白く、
しかも、最終的にその関与のきっかけに全ての謎を明らかにする鍵が
あったというのが実にお見事。
「この本の最初のページを読んで確信した」というセシリーの言葉。
これが本当に全てを物語っていたという、非常に練られた構成だったと感じました。

また、ピュントと同様、スーは本事件の関係者のあらゆるものを暴いていき、
最後に真犯人を名指しし、その犯行を明らかにするところ、つまり「みんな集めて」
の場面もこれまた読み応え十分。その活躍はピュント以上でしょう。

個人的にはその前の<荒地の家>での、マーティン・ウィリアムズへの名推理が
一番好きですね。フクロウの石像を落としたのは藪蛇以外の何物でも無い。

ただ、こちらの事件はセシリーが異常に相性であるとか、占いであるとかを
信じるという(これを看破したスーも見事)性格が災いしたのはわかるのですが、
本人は夫の事を愛していたのでしょうかねえ。というか浮気しているし。
まあ、本当に好きな人とは結婚出来なかった可能性はありますが。

事件を依頼してきたトレハーン夫妻も、最後の謎解きやスーへの手紙など、
自分たちで依頼してきてその態度はないだろう、とやや憤慨しました。
真実が決して依頼人にとって幸せなものかどうかなど、解るはずはないのに。
まあ、手紙では反省していたので許しますが(笑

ピュントの事件は最終作を読んでいるだけに、そもそも登場人物に違和感を感じてしまい、
なんとなく怪しいなというのがあったので、メインよりも少し驚きは劣りましたね。
最初の事件は、索条痕が2つあるというのが極めて大きなヒントで、
あとは真犯人は誰なのかというところ。
2番目の事件は、正直なところあまりその風景、イメージが浮かびませんでした。
(私の想像力不足ですね。)
しかしピュントはこの事件はただ働きですね。

本シリーズ、最後を読む限りではこれで完結のような気がするのですが、
アティカス・ピュント・シリーズだけを執筆して刊行してほしいなあ。
まだまだタイトルだけ登場して、語られていない事件が多いですし。



ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版



ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版










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ぼくの「このミス」2021 [ミステリ]

もう今年にミステリ記事を上げるのは不可能そうなので、
毎年恒例のこの記事で年末を締めくくりたいと思います。

北山猛邦『密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿』
これが文庫化してくれたからこそ、シリーズが復活してくれた。
本当にかなりの時間、待ちました。
引きこもり探偵の本領発揮。


密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿 (創元推理文庫)

密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿 (創元推理文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: Kindle版



歌野晶午『誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート』
シリーズ第3弾にして、光文社から角川への移籍?になるのでしょうか。
本作も文庫化したことで、シリーズ続編が望めそうという希望をこめて。


誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 文庫



似鳥鶏『卒業したら教室で』
市立高校シリーズ最新作にして、ひょっとしたら最終作になってしまうのではないかと
思わせる作品。伊神さんの、真の意味での退場と、柳瀬さんの卒業という、2つを
含んだ物語。
作中の時が流れていくことは、シリーズとの別れも意味する訳で、寂しいのですが、
果たしてどうなるのかなあ・・・


卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/11
  • メディア: Kindle版



米澤穂信『本と鍵の季節』
青春シリーズとして挙げられてますが、古典部や小市民と比すれば、その内容は
相当に異なる作品で、それでいて非常に面白かったです。
続編も出るようなので、楽しみです。


本と鍵の季節 (集英社文庫)

本と鍵の季節 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/01
  • メディア: Kindle版



北山猛邦『さかさま少女のためのピアノソナタ』
北山作品2作目!いやあ、ノンシリーズとスルーしていた自分がバカでした。
前作?含め買って良かった。


さかさま少女のためのピアノソナタ (講談社文庫)

さかさま少女のためのピアノソナタ (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/07/15
  • メディア: 文庫



岸田るり子『味なしクッキー』
岸田作品数多くあれど、その真骨頂は短編にありとみた。
ミステリ、ホラー、サスペンス、人間の嫌な部分を描いた本短編集、
ぜひ手にとってもらいたいです。


味なしクッキー (徳間文庫)

味なしクッキー (徳間文庫)

  • 作者: 岸田るり子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/12/08
  • メディア: 文庫





今年の下半期に出たのは、ほとんどまだ積ん読状態という、なんともいえない
年となりました。
来年も良いミステリに出会いたいものです。

皆さん良い年をお迎えください。
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B'z「いつかのメリークリスマス」(『FRIENDS III』) [music]

毎年クリスマスには、それにまつわるミステリを紹介していましたが、
ここに来て、私の勉強(読書)不足から、ついにネタ切れしました。

そこで、グッドタイミングで発売されたこともあり、音楽をご紹介。
ファンならば当然知っているB'zの「いつかのメリークリスマス」

元々はミニアルバム『FRIENDS』に収録されていた楽曲ですが、
『B'z The Best Treasure』や『Love & B'z』にも収録されました。

1996年リリースのミニアルバム『FRIENDS II』から、なんと25年ぶりに
発売されたのが、この『FRIENDS III』。いや、驚きました。
このライブ、行きたかったです。
『FRIENDS』の「恋じゃなくなる日」とか『II』の「きみをつれて」とか、
名曲揃いです。

「III」は個人的に上記のようにかなり好きな曲、というのは聴いていてそこまで
ないのですが、それでもこのコンセプトで楽曲を構成し聴けるのはうれしいですね。

「いつかのメリークリスマス」は、DVDでMVとして新録されています。
異常に椅子がある場所での撮影だなと不思議に思っていたのですが、
そういや椅子を買ったんだった(歌詞)とど忘れしていました(汗)

クリスマス・イヴの今夜、ぜひ聴いてみてください。


「FRIENDS III」 (初回限定盤) (CD+DVD)

「FRIENDS III」 (初回限定盤) (CD+DVD)

  • アーティスト: B'z
  • 出版社/メーカー: バーミリオンレコード
  • 発売日: 2021/12/08
  • メディア: CD



【店舗特典あり・初回生産分】FRIENDS III [初回限定盤・CD+DVD] + マスクケース 付き

【店舗特典あり・初回生産分】FRIENDS III [初回限定盤・CD+DVD] + マスクケース 付き

  • アーティスト: B’z
  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
  • メディア: CD









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味なしクッキー [岸田るり子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「あなたの秘密を知っています」と、パリの自宅に押しかけてきた女。
別れを決意して、彼のために「最後の晩餐」の支度をする女。
高校時代に自殺した友人の夢を見た女。友人は夢の中で「殺された」と言った。
それが気になり、真相を知ろうとする女。
不倫相手にクッキーを焼く女。
ロングセラーの『天使の眠り』や『Fの悲劇』
『白椿ななぜ散った』などで人気の著者が描く、“わるい女たち"。
「パリの壁」「決して忘れられない夜」「愚かな決断」「父親はだれ?」
「生命の電話」「味なしクッキー」の六作を収録した短篇集を初文庫化!




解説の大矢博子さんではないですが、「やっと文庫としてこの短編集をお届けできる」。
これに尽きます。文庫化まで10年、長い!
それだけこの短編集、読んで損はありません。

まず最初の「パリの壁」からすごい。
なぜ女性はある男性をパリまで追ってきたのか。
最初は名前しかわからない、そして一気に明らかになっていく物語の核心。

「決して忘れられない夜」は、閲読注意ですね。
なんとなく想像できるのですが、したくない結末と、主人公が恐ろしい。

倒叙ミステリである「愚かな決断」。これはある意味小説だからこそ
完璧なミスリードと言えるかもしれません。
それと、田中弘一は完全犯罪を目指そうとしていたのに、電話に出るという、
余りにお粗末すぎる犯人ですね。
騙しの仕掛けは見事ですが、犯人がマヌケ過ぎる。

「父親はだれ?」が本作白眉かと。過去に自殺した同級生が突如目の前に現れる。
そして彼女は妊娠していた。また、主人公自身も新たな命を授かっていて・・・

過去の自殺した事件を解き明かそうとする七菜代。元担任であった夫が父親なのか?
疑心暗鬼に駆られながらも、当時のクラスメート達と再会していき・・・
最後の結末は圧巻。そして彼女のマウスの実験もこれがまた、なんというか、
いやー上手いですね。

表題作「味なしクッキー」は、若年性認知症を患う妻・雪江と夫の物語。
夫の視点と妻の視点で描かれる物語は、認知症という病を考えさせられつつも、
なぜ夫が妻を殺害したのかが語られていく過程、さらには妻の最後の告白の「仕掛け」が
見事な作品。

人間心理を嫌というほど、そして突き詰めていけないところを突いて作品集ですね。
だが、面白い。




味なしクッキー (徳間文庫)

味なしクッキー (徳間文庫)

  • 作者: 岸田るり子
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/12/08
  • メディア: 文庫







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御手洗潔の挨拶 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。
しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。
男は殺されるために謎の移動をしたのか?
奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた4つの事件に名探偵・御手洗潔が挑む短編集第1弾。


長編に続いて、短編集も再読を始めました。
こちらは新装版などは出ていないので、「挨拶」「ダンス」「メロディ」と
改めて購入しました。
というか、昔読んだのはブックオフで購入していたようで、どうせなら新品を買おうと
思いまして。ブックオフで購入したのはブックオフに売りました(笑


本書所収作で、何を愁眉と挙げれば良いのか、はっきり言って非常に難しい。

エキセントリックな御手洗という点でいえば、「疾走する死者」でしょう。
チック・コリアのライブがあるから事件を解決して、警察から解放されるという(笑
ギターの凄まじい腕前も魅せられるし、また語り手が石岡くんではないので、
その点からも面白いのですよね。御手洗潔の風貌や雰囲気、行動などなど、
相変わらず何なんだ、この人は?という。

石岡語り手で御手洗の脅威の推理力を見せ付けられる「ギリシャの犬」。
この作品は、タコ焼き屋に残されていた紙きれ。これが圧巻です。
そして、最後にタコ焼き屋が無くなった理由をも解き明かす御手洗の名推理。

ワトソンのような語り口で始まる「数字錠」。
この語り口調で始まるのならば、よほど奇妙な事件なのだろうと思うのですが・・・
この作品、御手洗の優しさというか、性格の一面が非常に出てますよね。
これを短編集第1作の最初に持ってくるというのが、素晴らしい。

で、私が一番好きなのは「紫電改研究保存会」。
いや、これは何度も読みました。これも第三者視点からの語りで、
関根という人物が体験した非常に奇妙な体験。
この謎を解き明かすのが同じバーに居た、御手洗潔。

関根が尾崎善吉の話の代金ではした金をくれてやる、というのと、
御手洗の名刺をみて大笑いするところが最高です。

何度読んでもやはり面白い。


御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版






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2022本格ミステリ・ベスト10 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

新時代を予感させる激動のランキングをはじめ、「探してでも読む価値あり」傑作短編大紹介!!
インタビューは『屍人荘の殺人』今村昌弘、そして『六人の嘘つきな大学生』
で話題をさらった浅倉秋成と、今年も充実の一年間を総括!


Amazonさんの紹介がかなり長いので、最初だけです。

こちらも第1位は『黒牢城』。いや、米澤穂信先生、圧巻ですね。

2位に『蒼海館の殺人』。私がきちんと読めていないのか、マイノリティなのか、
どちらのランキングでも高いなあ。

『このミス』でも出ていたのですが、『六人の嘘つきな大学生』と『孤島の来訪者』は
かなり気になります。たぶん文庫化したら買います。

特集記事では「本格短編ガイド」がやはり面白い。
「復刊ミステリ2021」も、いやあ結構買ってるなあというのがありますね。
なんというか、結構最近の新装版より、掘り出し物、絶版状態をぜひともお願いしたいですね。

「新作近況会」は『このミス』の「私の隠し球」とかぶるのが多いのですが、
(同じ作家さんが書いているので、当たり前で)
愛川晶先生の欄に、『天使が開けた密室』完結編の文字が!!
『教え子殺し 倉西美波最後の事件』(原書房)、なんと刊行されているとのこと。
これは買いでしょう。創元推理文庫で来ないかなあ。

後気になったのは鯨統一郎先生のところ。「隠し球」と違うのですよ。
101冊目の本が出た後、作風を変える、とあるのです。これも気になる。

東川篤哉先生の欄では、ついに『館島』の続編『仕掛島』の名前が!!これも買い。

まだまだ読みたくなる本ばかり。来年も楽しみです。


2022本格ミステリ・ベスト10

2022本格ミステリ・ベスト10

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2021/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)






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このミステリーがすごい!2022年版 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

33年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。

巻頭には、2021年最も注目された作家のひとりである加藤シゲアキさんへのインタビューを収録。
ほかにも、
・米澤穂信さん作家生活20周年記念インタビュー&陸秋槎さんとの特別対談
・令和の館ミステリーの書き手
(今村昌弘さん・岡崎琢磨さん・斜線堂有紀さん・知念実希人さん・方丈貴恵さん)が集う座談会
・声優・斉藤壮馬さんと作家・青崎有吾さんの同世代対談
・読書会「闇の自己啓発会」の江永泉さん、木澤佐登志さんによる
「闇のブックガイド ミステリー編」

など、2021年のミステリーを振り返る企画が盛りだくさん。

各業界人も注目する2021年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、
超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、例年の人気コンテンツも充実の一冊です。


今年は『2022本格ミステリベスト10』と分けて書きます。
毎年恒例ですね。

米澤穂信先生のインタビュー、いいですね。お顔も初めて拝見しました。
『黒牢城』かあ。歴史ミステリは読んだことがないのですが、
まずは『折れた竜骨』からチャレンジかなあ。

ランキングでは、新進気鋭の方々が多いですね。どうも今年はミステリ豊作の年らしいです。
以前書きましたが、『蒼海館の殺人』、ランキング第5位。うーん、なんとも言えない。
ところで、このシリーズ、4部作のようなので、残り2作も刊行されたら読みます。

22位以下の挙げられている作品も含めて見てみると、皆川博子・辻真先御大が
見事にランクインしているのが凄すぎる。いやもうこれは本当にすごい。

「私の隠し球」
綾辻先生は館シリーズ完結をぜひ!有栖川有栖先生はソラシリーズをぜひ!
大山誠一郎先生の来年度の作品(文庫化)、挙げられているものは全て購入予定です。
『仮面幻想曲』が復刊はうれしいニュースです!読みたかったんですよね。

二階堂黎人先生の水乃サトルシリーズ最新作『白魔卿の秘密』はかなり気になる。
というか早く読みたい(笑

今回特集が組まれた「闇のブックガイド」、かなり面白い。満足しました。
来年度も良いミステリが出ますよう、祈念します。


このミステリーがすごい! 2022年版

このミステリーがすごい! 2022年版

  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2021/12/03
  • メディア: Kindle版






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medium[メディウム] 霊媒探偵 城塚翡翠 [相沢沙呼]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。
心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。
証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。
だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!

★第20回本格ミステリ大賞受賞
★このミステリーがすごい!1位
★本格ミステリ・ベスト10 1位
★SRの会ミステリベスト10 1位
★2019年ベストブック

さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補!

以下、完全なるネタバレあり。










上記のように、本書は、数々の受賞歴があり、『このミス2020』も
再読してみました。

個人的な感想として、本書がそこまで評価されたのがやはり疑問。
単行本版では帯に「全てが伏線」という言葉があったようですが、
文庫版の帯では「彼女は、なにを視ていたのだろう・・・」に変更されています。

「全てが伏線」という言葉はそもそも何を指すのかいまいちわかりませんが、
泣き女の殺人、水鏡荘の殺人、女子高生連続絞殺事件、これら3つの事件に、
城塚翡翠がそれぞれ仕掛けた罠の事を指しているんでしょうかね。

インタールードで、連続殺人事件の犯人の名前が明らかにされていること、
最終話が「vsエリミネーター」であることから、香月&翡翠コンビが
この殺人鬼と対決するのがラストにあるのは、すぐにわかります。

少し話はそれますが、私が一番受け付けなかったのは、史郎と翡翠の関係でしょうか。
甘ったるい会話が続いたり、香月の翡翠への思いとか(まあ、これは2つ意味があるのですが)
ラブロマンスなんですよね。見え見えの。もちろんそれが作者の仕掛けたトリックでも
あるのですけど。翡翠曰く「かりそめのロマンス」というやつです。

最終話において、翡翠が魅せる各事件の推理は、いわば多重解決モノと言ってしまって
よいのか、実に微妙です。
というのも、香月の推理で、各事件とも犯人は間違いなく捕まっています。
A地点からD地点にいくのに、
香月がA→B→Dと辿ったのに対し、翡翠はA→C→Dと、その道筋を変えている、
そんな感じでしょうか。
行き着く先は同じですが、1つの事件に複数の推理が成り立つというものです。
これ自体は相当すごいです。泣き女のアイスコーヒーの氷は秀逸。
女子高生のは少し事前調査がありましたからね。
水鏡荘は完全に罠を仕掛けてます。しかも鐘場刑事もグルです。

最後に翡翠が言うように、自分を襲わせるためにある意味それに沿った行動をしてきた、
そして自分は探偵なのだ、と。
ということは、警察は香月史郎が連続殺人事件の犯人ではないか?と疑っていたという
ことなのでしょうか。
それとも、翡翠が香月と事件を解決していく過程で、その疑いを持ち、警察へ話したのか。
どうもこの辺りが釈然としないのですよね。

エピローグで、香月が翡翠のようやく見つかったワトソン役に云々の話に、
翡翠の反応はなんとも微妙なところですが、本当に単なるかりそめのロマンスだったのか、
というところにもやや疑問が残るところはラストの余韻としては良かったかと。

個人的に、霊媒をいかに論理的、合理的に解釈できるかに力を削いだ香月は
紛れもなく名探偵だったと思いますが、どうでしょう。


medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

  • 作者: 相沢沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/09/15
  • メディア: Kindle版







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沈黙のパレード [東野圭吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

2022年公開 映画化決定!
――福山雅治主演 湯川・内海・草薙がスクリーンに帰ってくる

2018年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第1位

待望の文庫化!
シリーズ累計1,450万部突破!


静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、3年前に東京で失踪した若い女性の遺体が見つかった。
逮捕されたのは、23年前の少女殺害事件で草薙が逮捕し、無罪となった男。
だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。町のパレード当日、その男が殺された――

容疑者は女性を愛した普通の人々。彼らの“沈黙”に、天才物理学者・湯川が挑む!

ガリレオvs.善良な市民たち

“容疑者X”はひとりじゃない。

以下、ややネタバレあり。





なんだか相当久しぶりにガリレオシリーズを読みました。

草薙が係長、警部にまで昇進していてビックリ。もうそんな年齢なのか、と。
ガリレオこと湯川も、助教授→准教授→教授とは。
教授はスポンサー探しだ、という皮肉は、現実を見事に現しているセリフですね。


これも映画化するのですか・・・
年齢がそれなりいったガリレオならば、佐野史郎さんにしてほしいなあ。

本書を読んでいて、やや判然としないのは、蓮沼寛一にかけられた容疑。
23年前の事件と3年前の事件、どちらも彼の犯行なのか?

前者はそれを匂わせる発言を聞いたのは増村。しかし決定的証拠はない。
後者も湯川の推理により、状況証拠として極めてクロに近そうであるものの、
こちらも決定的とはいえない。

いずれの事件もかなり「疑わしきは罰せず」を貫徹していると言えば
それまでですが、しかし、どちらの事件も計画性があったとはあまり思えず
(特に後者)
警察が有力な物的証拠を見つけられなかったのかと不思議に思ってしまいました。

戸島の思いついたトリックや過程はかなり見事で、しかもフェイクまで用意する
という。
それを解き明かす湯川は流石の一言です。

しかし、その後のさらに真相を突いた湯川の推理には少し疑問があります。
まず、なぜ蓮沼が血の付いた制服を処分しなかったのか。
23年前の成功例があるとはいえ、それなりの物的証拠。
彼はまた23年前のように、損害賠償を請求しようとして、自分を起訴まで持ち込める
証拠を自ら取って置いたのか。どうも釈然としないんですよね。

湯川の推理はバレッタに血液が付いていなかったというところから、
さらに違う真相を解き明かそうとするのですが、ここは良いのです。
しかし、その前段、戸島の計画の裏で行っていた人物たちにどうして
疑いを向けることが出来たのか?
(読み込みが足りないのか、すいません)

しかし、久しぶりのシリーズでイッキ読みしてしまいました。
物語に惹き込む力量はさすがです。


沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)

沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/09/01
  • メディア: 文庫







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