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平成古書奇談 [ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

初書籍化となる鬼才・横田順彌による古書ミステリ。主人公の馬場浩一が
馴染みの古書店で出会う古書をきっかけに本にまつわる謎に巻き込まれる。

フリーライターをしながら作家を志す25歳の馬場浩一は、街の古書店、野沢書店に出入りしている。店主の野沢勝利と娘の玲子と懇意にしながら、趣味や仕事、執筆の資料として出会う古書を通じて
不思議な事件や謎にぶつかる。古書マニアの著者が知る業界の事情を巧みに盛り込み、
SF、ホラー、ファンタジーを横断する連作集。平成の隠れた古書ミステリが初書籍化。
日下三蔵氏による編者解説も併録。

SFと古書に人生を捧げた著書によるSF、ホラー、ファンタジー、青春を
横断する職人芸ともいうべき傑作を発掘!!!
SF界の異端児が残した古書ミステリ、初の書籍化
作家は肉体が滅んでも、作品が読まれ続ける限り、
世の中から消えることはない 編者 日下三蔵


久しぶりの更新です。そして初めての作家さんです。
解説に惹かれて購入しました。
これは面白かった。カテゴリをミステリにしてますが、解説にあるとおり、
内容的にはそれだけに留まらず!

主人公・馬場浩一、作家志望のフリーライター、野沢書店の店主・野沢勝利とその娘・玲子。
この3人がどちらかというと狂言回しになり、それぞれの古本にまつわる
奇談が語られていく物語です。
以下、ネタバレあり。






本シリーズが執筆されたのが、2000年代初頭、その頃の古本屋業界や
社会風俗も描かれており、その点も興味深く。
しかし、古本屋業界は、この頃よりさらに厳しくなってますよね。
私もむかーしは古書店を歩いたりしましたが、日本の古本屋での購入が増え、
昨今は書店にすら出向かないようになりました。

古本屋・本屋に行けば、目当てでない本にも巡り会うことができて、
楽しいんですけどね。効率重視になってしまいました。

閑話休題。
本書は最終回含め全9話構成。
「第一話 あやめ日記」から、すでにSF全開です。
ひょっとしたら、野沢玲子には腹違いの兄妹が居るかもしれない、というとんでもない
事が明らかになりそうでいて、かつ、なぜか日記が更新されていく。
後者は恐怖でした。ホラーに近いと感じました。
本来ならば、この話を広げていくため調査していくのですが、主人公たち3人は
調査せず、読了となります。
この終わり方がまた良いのですけどね。調べて果たして良い方向になるのだろうかという
野沢店主の考えもあろうとは思いますが、作風でもあるのでしょうか。

「第二話 総長の伝記」、これは唯一と言って良いくらい解決編まで執筆されてます。
いや、もっともその解決編が真実なのかどうか、それも疑わしい終わり方で締めくくられて
いるのがまた素晴らしいのですが。

「第三話 挟まれた写真」はホラーミステリでしょうか。全編含めて、
本話は一番謎だらけのお話になっています。
なぜ悪夢を見るのか、挟まれた写真は一体何なのか、写真を取りに来た老婦人は
誰なのか・・・全てが不明のまま終幕します。

「第四話 サングラスの男」、これはある意味どんでん返し作品ですね。
透視や超能力に関する古本やその歴史が語られ、そのマニア、いや研究している方から
本を売りたいとの連絡が来て・・・標題が全てを物語っていますね。

「第五話 おふくろの味」、これもホラーですが、グロさでは本書一番ですが、
同情してしまう面もあるなあ・・・
結局、神崎の恋人の母親の要求は単に別れさせるためなのか、本当に求める「おふくろの味」
があるのかわからずじまい。個人的には前者のような気がしましたが。

「第六話 老登山家の蔵書」、登山家が蔵書を整理したいと申し出たことから、
引き受けにいく野沢と(アルバイト的立場の)馬場。
ところが、その後で「妻」からの意見でいくつかの古書は売れなくなったと
申し出があり・・・その本の全て「雪女」や幻想小説だったという。
これもホラーですね。付き合いが長いのに、一度も奥さんの顔を見たことがない野沢店主。
ある意味一番的を得た推理をする娘の玲子。
真相はそのさらに先をいくものなのかもしれません。

「第七話 消えた『霧隠才蔵』」。これが一番古書店らしいミステリかと思います。
消えた古書のタイトルもまた良いじゃないですか。確かに消えそうと言う(笑
野沢店主の隠された力(?)が充分に発揮された1作。

「第八話 ふたつの不運」。落としてしまった本を、全く違う路線なのに、
玲子が拾う。そんな偶然あるのだろうか?また馬場の書いた作品が戦争賛歌と取られ
落ち込み・・・、本作は、運不運について書いた1作。一方で野沢家と馬場の親密さが
さらに増す作品でもあります。

「最終回 大逆転!!」。ここで言う大逆転とは、馬場が売れっ子作家になったとか、
そういう意味ではありません。物語が反転するというか、まあこれまでの話が
実は作中作品であり、本作を出版社に持参し、掲載が決定するということが
最後に書かれています。
これを書いたのが果たして馬場なのか。そしてこれまで書かれていた事柄は
全てフィクションなのか、脚色なのか、その辺りの謎も残して読了です。

1話が手軽に読め、それでいて面白い。よい作品でした。


平成古書奇談 (ちくま文庫)

平成古書奇談 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2022/07/09
  • メディア: 文庫






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三世代探偵団 枯れた花のワルツ [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

天才画家の祖母、生活力皆無な母と暮らす女子高生の有里。祖母が壁画を手がけた病院で、
有里は大女優・沢柳布子に出会う。彼女の映画撮影に関わるうち、3人はまたもや事件に
巻き込まれ――。ユーモアミステリ第二弾。


2作同時刊行されたのに、2作目が遅くなってしまいました。

前作は有里、幸代、文乃のキャラクター確認がメインで、かつそれなりに深刻な事件も発生。
しかし、本作はもちろん殺人事件が起こり、深刻な事件も起こります。
ただ、それ以上に、有里と幸代の活躍とキャラの確立が目立った作品だなと思いました。

また有里と、そして有里自体もどういう思いなのかよくわからない村上刑事のファンクラブ
が設立されます(笑)。当の村上刑事はまるで気付いていませんが、好意を寄せてくる女性
が幾人も・・・なんてうらやましいんだ。
有里は、なんとなくその女性たちにムッとするものの、彼女にもボーイフレンドが
ついに登場します。

かつての大女優・沢柳布子が、再び主役を務める「影の円舞曲」の撮影過程で起こる
それぞれの事件。天本幸代は布子の側に付き、彼女に降りかかる災いを見事に守って
いきます。今回、絵を描いているシーンはほとんどなかった(おそらく)のですが、
最後にある人物を描いた絵が登場するので、どっかで書いてたのかなあ。
しかし、前作と同じく、画家としてではなく、彼女の鋭い洞察力は本作では
さらに磨きがかかっています。

一方、三世代探偵団と銘打っているのですが、文乃はどこか仲間ハズレ感が
本作では強かったですねえ。
ある人物(しかも妻子持ち!)に恋してしまう場面があるのですが、出番は
ある意味そこだけ。
彼女がメインを張る作品は、今後登場すると期待したいですね。

ところで本作はしっかり時系列が描かれていて、次々作は「影の演舞曲」プレミア上映が
舞台とのこと。
赤川作品で時間が過ぎていくのは、中々珍しく(杉原爽香シリーズは別)
シリーズとしてどこまで描いていくのかも気になりますね。


三世代探偵団 枯れた花のワルツ (角川文庫)

三世代探偵団 枯れた花のワルツ (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版






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ドアを開けたら [大崎梢]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

マンションで発見した独居老人の死の謎に
中年男と高校生のコンビが挑む、心温まるミステリー。

鶴川佑作は動揺を隠せなかった。引っ越しの準備をする佑作がマンションの同じ階に暮らす串本を訪ねると、彼はこと切れていたのだ。来客対応中だったらしい。老齢ながら彼は友人だった。通報もせず逃げ出す佑作。だが、その様子を高校生の佐々木紘人に撮影され、部屋に戻れと脅迫される。翌朝、動画の消去を条件に佑作は紘人と再訪するが――今度は遺体が消えていた!


鶴川さんと佐々木くんの出会い方はなんとも不穏ですし、さらに死体が消える、
さらには怪しげな宗教団体まで登場、そして串本の隠された本性まで明らかに?!

この二人の間、打ち解けてからの関係は何とも表現しがたいのですが、
二人で謎を解いていきつつ、二人それぞれの生き方までが変化していきます。

一方、最初から終盤までは上記書いたさらに深い謎にいくかと思いきや・・・
謎そのものと、串本さんの悲しい過去はあるのですが、
串本さんが果たせなかった事を、鶴川&佐々木コンビが見事に引き継いで、
ラストも素晴らしい終わり方です。
このラストまでの道程こそ、本書タイトルの示したかったものなのでしょう。

コロナ禍だからこそ、こうしたミステリーで心を和ませたいものです。


ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

ドアを開けたら(祥伝社文庫 お23-2)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2022/04/15
  • メディア: 文庫






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アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 [大倉崇裕]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

有力政治家の三男が殺害された。現場で飼われていたアロワナは、
十年前にシンガポールの実業家のもとから盗まれた個体だと判明。
窓際警部補・須藤友三、生き物オタクの巡査・薄圭子のコンビは、
密輸ブローカーに焦点を絞り調査を開始する。タカやランが関わる事件も同時収録。
痛快アニマル・ミステリー!


本作はこれまでのいきもの係とは少し趣向が異なり、
今のところの文庫唯一の長編『蜂に惹かれた容疑者』に登場した、
新興宗教団体『ギヤマンの鐘』といきもの係との壮絶なる戦いが繰り広げられます。

しかも、それだけに留まらず、これまたこれまでにない趣向、
つまり「タカを愛した容疑者」では、なんと薄巡査が容疑者扱いに!
さらに初めて植物が登場する「ランを愛した容疑者」。いきもの係は、
正式には<動植物管理係>、そう、植物の世話もするのです!

いくつかの変化球を織り交ぜつつ、さらには大倉先生の別シリーズから、
福家警部補まで登場するという、豪華な内容になっています。

最初の「タカを愛した容疑者」。久しぶりに読んだからなのか、薄巡査の
とめどないボケについて行けませんでした(苦笑)。
それくらいわかるだろ!と怒髪天になりそうでした。

しかし、本作の中でこの作品は、いわば「顔のない死体」という、ミステリのある種の作法を
実に上手く使っているところが秀逸。所収作の中では、個人的にはミステリとしての
完成度は一番高いと思います。

表題作は、薄巡査がスーパー警察官であるということが明らかになるという(笑
福家警部補も以前のブログで書きましたが、スーパーウーマン化していくようで、
どうもそこまでしなくてもなあというのが、私の中にはあります。

ところで、解説でも書かれていますが、表題作の続編的位置づけになる作品は、
福家警部補シリーズで描かれているとのこと。いやこれを読むのは相当先になりそうだ。
しかも、「ギヤマンの鐘」は<問題物件>シリーズにも登場するということで、
いやいやこれまた困ったなと。読むシリーズが増えてしまう・・・


アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/04/15
  • メディア: 文庫







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花嫁は三度ベルを鳴らす [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

実業家の片瀬は、妻の靖代とその妹の早紀と東欧を旅していた。
途中、靖代が体調を崩して亡くなってしまう。
異国だったが仕方なく現地に埋葬するが、
そこには、棺の中から鳴らせるように墓標の十字架にベルを取り付ける奇妙な風習があった。
鳴るはずのないベルが鳴り響くとき女子大生・亜由美は事件に巻き込まれていく!
人気シリーズ第33弾。


赤川次郎先生作品が続きました。
花嫁シリーズも長い!33作目とは。
現在は35作目(『花嫁、街道を行く』)まで刊行されています。

通常と変わらず、本書にも2作が収録。
表題作は後回しにして、まずは「花嫁は滝にのぼる」から。

近年の赤川作品だなあというのが感想。
大きな権力に立ち向かっていく、それを亜由美とドン・ファンらが助けるという。
それと本作での花嫁は誰なのかなあと。
宇佐見しのぶ?これは騙しのためだから、実際はせずで、やはり高野良子ですかね。


さて表題作ですが、久しぶりに谷川准教授が登場します。
本作、かなり楽しめます。
亜由美一行はいきなりルーマニアへ行きますし、母である清美も大活躍します。

黒幕自体はすぐわかるのですが、亜由美たちをルーマニアまで行かせた人物は
一体誰なのか?谷川というのが仄めかされ、さらに諸岡早紀のことを
「ずっと前から好きだった」という衝撃の証言まで・・・
いやいや亜由美にとっては、重大なる謎が残りましたね。
これ、次作以降で描かれるのでしょうか?気になります。

それにしても、赤川先生作品は、ページをめくる手を止めさせないなあ。

ちなみに、多くの赤川作品を読んできましたが、実は双葉文庫刊行作品には
手を出していないのです(笑
あれも多いんですよねえ。あれに手を出すと、相当数読むものが増えてくる。
さてどうしたものか。


花嫁は三度ベルを鳴らす (実業之日本社文庫)

花嫁は三度ベルを鳴らす (実業之日本社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/06/03
  • メディア: 文庫






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渡辺宙明先生、ありがとうございました [アニメ]

先ほど、作曲家の渡辺宙明先生の訃報を知りました。
私にとっては、なんといっても宇宙刑事シリーズ。
「チェイス!ギャバン」のあの素晴らしい入りは忘れられません。

ゲームで「スーパーロボット大戦」をプレイし始め、
大半の曲が先生作曲ということを知り、驚きました。
「マジンカイザー」は今でもあのオリジナル版が一番だと思っています。

アニメ・特撮界において、偉大なる金字塔を打ち立てた、
いやそんな表現では済まない、本当に素晴らしい音楽を我々に届けてくださいました。
ご冥福をお祈りします。


宇宙刑事シリーズ ソングコレクション~FOR NEXT GENERATION~

宇宙刑事シリーズ ソングコレクション~FOR NEXT GENERATION~

  • アーティスト: V.A.
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: CD



渡辺宙明卒寿記念 CHUMEI 90 SONGS

渡辺宙明卒寿記念 CHUMEI 90 SONGS

  • アーティスト: V.A.
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2015/07/22
  • メディア: CD



渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015

渡辺宙明コレクション CHUMEI RARE TREASURES 1957-2015

  • アーティスト: 渡辺宙明
  • 出版社/メーカー: SOUNDTRACK PUB
  • 発売日: 2015/12/25
  • メディア: CD



スーパー戦隊+宇宙刑事 渡辺宙明 ベスト ミュージックファイル

スーパー戦隊+宇宙刑事 渡辺宙明 ベスト ミュージックファイル

  • アーティスト: 渡辺宙明
  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2012/02/22
  • メディア: CD



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名探偵はひとりぼっち [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「彼女が不治の病であと半年の命なんだ」。高校一年の酒井健一が見栄を張ってついた噓は、
クラスメイトから同情され、ついにはカンパ金まで渡されることに。
架空の彼女と待ち合わせた上野駅へ向かった健一だが、そこに、いるはずもない恋人が現れた!?
さらに健一をコインロッカーへ促した彼女は「逃げようなんて思わないで」と拳銃を突き付けてきた!
同い年コンビが事件に挑む青春ミステリ。

こんな中短編集があったとはなあ。知りませんでした・・・
元々は角川文庫からだったみたいなので、あの青表紙の時に出てたのだろうか。


表題作は、なんというか嘘から出た実に近い話なのですが、主人公の酒井健一が
あまりに面白すぎる。途中出てくるヤクザの白井も中々良いキャラしていて、いいですね。

偽札をめぐる抗争に巻き込まれた健一。しかし倉原みどりという拳銃をぶっ放す同級生とも
知り合い、さらに殴り込みにまで連れていかれる始末という、まさに踏んだり蹴ったり
なのですが、みどりが可愛いからなのか、彼の正義感、いや名探偵としての気概でもあるのか、
自ら進んで危険な道に入ります。

赤川作品だと、この場合の主人公は女性で、それに倉原みどり、というのが
想像できますが、男性は珍しいですね。
最後はものすごくあっさり終わるのですが、ちょっと健一にとっては切なすぎるかなあと。


表題作が実は名探偵と入っているのにはかなり違和感がありました。
内容がヤクザの抗争ですからね。謎を解く、とかそういう話でもないし、
そもそも酒井健一はそこまで頭が良いとは思えない(笑)

一方で、短編である「学生時代」の和也は、名探偵なんですよねえ。
この話、トリックというか、仕組みは良く出来ていて、教員による覗きという、
今現在も問題になっている、教員の性犯罪を取り上げていて、決して古いと思えないです。
ラスト、タイトルと上手くリンクさせるのですが、こちらもあっさりした終わり方です。
和也と勇樹、ほとんどプライベートも高校すら書かれないのですが、この2人で
シリーズ化しても良かったのではないか。

「ぼくと私とあなたと君と」。こちらも高校生が主人公ですが、殺人事件が起こります。
これもあっさりです。女装がよくばれなかったなあという感想(笑)


名探偵はひとりぼっち (徳間文庫 あ 1-118)

名探偵はひとりぼっち (徳間文庫 あ 1-118)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/06/08
  • メディア: 文庫



名探偵はひとりぼっち (角川文庫)

名探偵はひとりぼっち (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: Kindle版










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僕らの課外授業 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

中学3年生といえば、何にでも興味があり、何でもやりたいし、
早く大人にもなりたい本当に難しい年頃だ。大和田倫子はその問題の中学3年生。
厳格な家庭に育った彼女は、両親への反発から、酒に溺れ、男に夢中になり、
あげくのはてオートバイで自殺した。だが一ヶ月後、東京駅に彼女の幽霊が……。
自称“世が世ならお姫様”の容子と女性にはめっぽう甘い友也の中3コンビが、
醜い大人達の悪事に挑戦状をたたきつけた!! ユーモア・ミステリーの傑作。
他にオリジナル3作品収録。

Amazonさんには徳間文庫版がないので、角川文庫版の解説となります。
私自身は、角川文庫版を遙か昔に購入し、一度読んでいるのですが、
徳間文庫で復刊したので、改めて購入しました。

表題作は、やはり今読んでもかなりおもしろい。ジュブナイル小説として
青い鳥文庫あたりから刊行しても良いくらいです。
死んだはずの人間、東京駅の謎。殺人事件・・・とにかくワクワクドキドキ感満載です。


大友克洋先生の『SOS東京大探検隊』も思い出します。
あちらは確か丸の内駅でしたが、まあほぼ近距離ですね。

「何でも屋は大忙し」と「夢の行列」は、悲しい結末です。
特に前者は主人公(勢)が愉快な仲間達的なところがあるので、余計に
この結末は悲しいものがあります。
後者は最後に若い2人の新たな恋?が始まりそうで、まだ救いがありますが。

「ラブ・バード・ウォッチング」は鳥を見るつもりが、ついつい他人の家をみて
しまったことから始まる物語。こういうのは男性が女性の部屋という設定かと
思いきや、そこは赤川先生。逆パターンです。

最近更新が滞りがちですが、またぼちぼちあげていこうと思います。


僕らの課外授業 (徳間文庫)

僕らの課外授業 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/04/14
  • メディア: 文庫







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殺人鬼がもう一人 [若竹七海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。二十年ほど前に連続殺人事件があったきりの
のどかな町だが、二週間前の放火殺人以来、不穏な気配が。そんななか、町いちばんの
名家の当主・箕作ハツエがひったくりにあった。辛夷ヶ丘警察署生活安全課の砂井三琴は
相棒と共に捜査に向かうが……。悪人ばかりの町を舞台にした毒気たっぷりの連作ミステリー!


逆コージーミステリー。日本での本家本元・若竹七海先生による作品です。
6作品の連作短編集となります。以下、ややネタバレ。






この辛夷ヶ丘署には、何らかの問題がある警察官が、いわば配流されてくる流刑地
のような所みたいですが、少なくとも、ほぼ主人公を務める砂井三琴と相棒である
田中盛は、刑事としては極めて優秀です。

「ゴブリンシャークの目」では、この二人が、真相を看破します。
この1話、表題作である「殺人鬼がもう一人」と極めて密接な関係にあるのですが、
一体、どちらの人物が「もう一人」なんでしょうか?

「丘の上の死神」は、所収昨の中で一番きな臭いというか、壮絶なる権力争いが描かれます。
市長選と殺人事件と、そこにそれぞれの陣営につく警察という、阿鼻叫喚。

単なる嫌味と無能でしかなかった五十嵐係長と荒川課長の暴走が凄まじすぎます。
三琴と遊里子の化かし合い的な「取引」は、中々読ませます。
双方の思惑というか利害が一致しているので、すんなりと決まりますが。

「黒い袖」は解説でも書かれているように、ワンクッション的な物語なんでしょう。
真相よりも、主人公を務める原竹緒の正体を実に上手く隠していて、お見事です。
まあ、真相を解く鍵でもあるのですが、

「きれいごとじゃない」。本書所収作では、一番やるせない、救いのない結末ですね。
主人公を務めるのは、向原理穂、<向原清掃サービス>の専務で、
強盗計画があることを警察から知らされ、砂井三琴巡査長が清掃員に化けて
各家を見回っている、というのが前提。
実は<向原清掃サービス>にもちょっとした隠された秘密(というか犯罪ですが)が
あり、それを三琴に見抜かれているようで、反省したり。
一方で、三琴が悪事を働くのではないか、と理穂が疑ったりと、とにかく本筋だけでなく、
相変わらず様々な出来事が降りかかります。
そこに来て、最後の一撃があまりに強烈なので、まるで救いがない。
本筋や他諸々の事案が上手く丸く収まったのに、最後にこれが来るとは予想外。

「葬儀の裏で」は、オリエント急行殺人事件のような話ですね。
壮大なるネタバレです。
ただし、そこには辛夷ヶ丘の土地にまつわるある話なども加わるので、
あくまで辛夷ヶ丘を舞台とした事件というのは、変わりがありません。

最終話「殺人鬼がもう一人」。三琴の壮絶なる戦いと裏取引が垣間見える作品ですが(苦笑)、
ローズマリーこと、蒲原マリの苦労は壮絶なものです。弟の誠治の治療費のために、
危ない橋を渡る仕事をやらねばならず、そして彼女自身もある疾患を抱えているようで・・・

ここに来て、作品紹介の20年前の連続殺人事件が急遽メインに登場し、
<ハッピーデー・キラー>の正体が明かされるのですが、
ラストで、蒲原マリと砂井三琴、彼女たちの会話で物語は終了しますが、
これどういう解釈するのがよいのか、非常に悩みました。
三琴はマリを利用しようとして、わざとこんな会話をしているのか、
いまいち意図が掴めず。20年前から続く連続殺人事件は、果たして真の解決をみたのかは
語られません。
続編とかありそうですが、というかぜひ続編を。


殺人鬼がもう一人 (光文社文庫)

殺人鬼がもう一人 (光文社文庫)

  • 作者: 若竹七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/04/12
  • メディア: 文庫







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フェティッシュ [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。


触れられると仮死状態に陥るという特異体質をもつ美少年・クルミ。
葬儀巡りをする老人、潔癖症の看護師、息子を亡くした母親etc.
さまざまな事情を抱えた者たちがクルミに魅了され、
その体に触れた結果、無残な姿で死に果ててしまう。
連続殺人犯の正体と目的は……? 妖しくも美しいサスペンス・ミステリー。

以下、ネタバレあり。






コスミック文庫、初めて買いました。
西澤先生の作品が結構出ていて、どういう繋がりからなのか、とかどうでも
いいことが気になりました。

本書、説明文ではサスペンス・ミステリーとなってますが、
そもそもミステリなのだろうか。
西澤保彦節は全開なのは間違いありません。それは保証します(笑

とにかく登場する人物たちが個性的というか、いや性癖は人それぞれなので
そこは致し方ないと思いますが、変わりすぎな人もいて、志自岐幸夫は完全に
クルミの登場で崩壊します。

事件を追う刑事である長嶺尚樹にも、ある性癖があります。
しかし、彼は事件の核心に迫り、犯人に制裁を加えた唯一の人物でもあります。
だた、クルミに真実を伝えることが出来なかったのが、心残りだろうなあ。

犯人の目的は、クルミの妄想を既成事実化して、やってる、という理解不能すぎる
理由で、大量殺人を繰り返します。
いや、これももしかしたら本書で語られる性癖の1つとして書かれているのかもしれません。

被害者たちの中で印象的なのは、やはり<聖餐>を割り当てられた澤村智津香でしょう。
彼女の人生が語れるとともに(これが相当に凄惨すぎます)、彼女の最期が
かなり衝撃でしたね。

しかし救われない物語ですね。クルミはもちろんですが、登場人物たちも。
ただ澤村や他に殺された人たちは、果たしてどうだったのか。自ら救われたと
感じていた人も居たかもしれません。

クルミにとっては絶望的な日々が続くのかもしれませんが、真実を知らせる人物が
登場してほしいなあ。


フェティッシュ (コスミック文庫)

フェティッシュ (コスミック文庫)

  • 作者: 西澤保彦
  • 出版社/メーカー: コスミック出版
  • 発売日: 2022/04/29
  • メディア: Kindle版







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少年検閲官 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印
が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、
クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。
書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。
本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。



『オルゴーリェンヌ』が文庫化されたので、シリーズを読み始めようと
購入した1冊。

あくまで私個人のこれまでの嗜好として、メルヘンというか、特殊世界というか、
異世界というか、そうした場所を舞台としたミステリは避けていました。
北山先生の作品は『『アリス・ミラー城』殺人事件』が初で、
その後引きこもり探偵シリーズを読み始め、『猫柳十一玄』を読み・・・と
きたところで、以前書いた講談社文庫の2冊や、本シリーズなどは
意図的に避けていた、という感じです。

が、ここにきて色々と幅を広げるという意味でトライしているという。

本作は、書物がない、禁止されている世界、焚書が当たり前、
人類には政府の大本営発表的なラジオから発信される情報しかないという、
ディストピア的な世界で、描かれる殺人事件を、検閲官が解き明かすというストーリーです。

なので、本書を読んでいく際には、事件の謎だけでなく、この世界観、世界の種々の
謎(まあ設定でしょうか)も合わせて考えていく、知っていく必要があるので、
中々読み応えがありました。

犯人の動機は極めてこの世界の中においては極めて単純ですが、
それを実行すると、これほどまでに残酷になるのか、というのが最初の感想。
物語の中では平然と語られていますが、想像を絶しますね。
それを平然と聞いていられる関係者も凄かったな。
この辺りが、この世界に住む人々の特殊性なのかもしれません。

ミステリそのものは、かなり練り込まれていて、
最初で描かれた小屋が消えるトリックや、少女が「復活」する話。
そして事件の中心的トリックたる湖での犯人消失。また、家に赤い印を付ける意味。
これらの謎が見事に論理的に解き明かされていくのは流石の一言。

また、この世界観から、犯人が探偵と呼称され、事件を解決するのが検閲官というのも
面白いですね。クリスが物語中で苦しむのも理解できる。
しかし、なぜこの街の人々は、この犯人を「探偵」と名付けたのか?
その辺りはよく分かりませんでした。

また、「ガジェット」という、本作世界観では欠かせなそうなシロモノが
出てくるのですが、いまいち重要性がわからなかったなあ。
「首切り」のガジェットというのがあって、それを持っていた、だから
犯人は首切りを行っていた?訳ではないですよね。
(私の読み込みがまるで足りてないのかもしれません、すいません。)

物語全体としては、ミステリとしては非常に面白いものの、
作者が創ったこの世界観をそれに充分に活かせているかはかなり疑問。
焚書や書物のない世界、もミステリだけない訳ではなく、他の本もないですしね。
それと、探偵は謎を解く存在なのだ、というクリスの思いも、本世界観だけでは
中々説明しにくい。実際に書物を知っている人たちも大勢まだいるようですし。

とはいいつつ、次もそのうち読み始めよう。


少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: Kindle版







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御手洗潔のメロディ [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。
無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在する時、見えない線が光り始める。
御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか、大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」
など、名探偵の過去と現在をつなぐ4つの傑作短編を収録。


短編集第3弾。
前作、前々作とはかなり趣向が変わっています。
どちらかというと、『御手洗潔と進々堂珈琲』シリーズにやや近い短編集でしょうか。

「ボストン幽霊絵画事件」は、今までの奇人・変人ぶりから、天才への道程を
描く先駆け的なものでしょうか。だからといって事件の謎は非常におもしろい。


とはいえ、やはり「IgE」は群を抜いています。奇人・変人ぶりは健在で、
まるで繋がりの見えない2つの事件、これを見事に看破する御手洗の大活躍が
素晴らしい。そして、このタイトルの付け方がまた秀逸です。

ノンミステリ2編が含まれますが、この「IgE」を目当てに購入しても、
まったく損はありません。
作品、普通に読んでもまず解けません(笑)いや、普通じゃなくても解けないか。
便器が何度も壊される、などという謎から、壮大な大事件への繋ぎは
素晴らしいの一言に尽きます。

御手洗短編集、「挨拶」から「メロディ」まで今もまだ文庫で新品を購入
することができるというのは本当に有り難い。
他の長編作品もお願いできませんかねえ、講談社様。


御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版







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午後の脅迫者 新装版 [西村京太郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

警察官が手を染めた犯罪のからくりは、想定外の結末にいたる。私立探偵が夢みた成功報酬の三千万円は、いったい誰の手にわたるのか? 妻は会社を経営する夫の素行調査を探偵社に依頼した。夫は探偵にしっぽをつかまれるが、逆に妻に「男」を作ってくれれば三千万円を出すという。成功直前のある夜、探偵の眼の前でフラッシュが光って……。トリックの妙を示した秀作ぞろいの作品集。

数多くの著作を遺された西村京太郎先生。
私もこのブログでいくつか紹介させていただきましたが、まだまだ傑作・秀作は
埋もれているようです。

先生の作品は長編が多いので、短編集というのは中々珍しいのではないでしょうか。

所収作愁眉は「職業婦人」。これはダントツに面白い。
むろん、これが書かれた時代と、時代背景。そもそもこのタイトルからしてもう?の方
も多いと思いますが、今のこの時代にこれを読むと、またまるで違う味わいも出てきますね。
一方、動機、ハウダニットを追及したミステリとしても、一級品ではないかと思います。


「二一・〇〇に殺せ」は、このタイトルが秀逸。本編で出てきますが、なぜ午後9時では
なく、このように表現したのか。そこから推理を組み立てる展開が面白いです。

「美談崩れ」は特ダネを追う、ある地方記者の物語。
どういう結末に落ち着くのか、高木が到達したある結論は、読者からすると、
おおよそ予想がつくものなのですが、そこで終わらないところが本作の狙いでしょうか。

「柴田巡査の奇妙なアルバイト」は現代社会で実際に行われていそうな、
ドキュメンタリーかと思う話です。
ラストの切れ味はは本書所収作で一番かと。

西村作品はトラベルミステリーだけにあらず。
皆さんもぜひ色々手にとってもらいたいです。


午後の脅迫者 新装版 (講談社文庫)

午後の脅迫者 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/03/15
  • メディア: 文庫







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記憶の中の誘拐 赤い博物館 [大山誠一郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

緋色冴子シリーズ第二弾。文庫オリジナルで登場!
赤い博物館こと犯罪資料館に勤める緋色冴子が、過去の事件の遺留品や資料を元に、
未解決事件に挑むシリーズ第二弾。

本書第一弾のブログ記事は2018年。ということは4年ぶりの新作ということです。
以下、ネタバレあり。
第一弾はコチラ





前作は安楽椅子探偵でもありましたが、本作ではすべて緋色警視が資料館から
外出するというのが特徴です。

「夕暮れの屋上で」。「先輩、もうすぐお別れですね。」という言葉の意味を
どう捉えるのか。本作はこの1点が極めて秀逸です。
卒業式間近という時期、「先輩」「お別れ」という言葉。
こうした状況と言葉から、ある種の必然ともいえる思い込みを見事に覆した作品です。

「連火」。犯人はなぜ放火するのか。放火された家の共通点とはなにか?
これが本作最大の謎です。
この真相は、いわゆる隠れ事故物件、というより事故土地でしょうか。
そんなオカルト的な話にありそうですが、本作で上手いのは、
「またあの人に会えなかった」という犯人と思われる人物が残した言葉の意味でしょう。
これも前作と似ていて、「あの人」とは誰なのか、というのが、
緋色の、完璧にまでに論理づけられた絞り込みにより、判明するところがお見事。

「死を十で割る」。犯人はなぜ被害者をバラバラにしたのか。そこにある必然性、
しかも、どうバラバラにしたのか、つまり単なるバラバラ殺人ではなく、
どこをどのようにバラバラに切断したのか、から推理を組み立てていくという傑作です。

犯人自体はなんとなく(むろん緋色の論理立てた推理から導くのではなく)予想できる
のですが、上記のバラバラから、死後硬直の時間、72時間から96時間以内に被害者が
死んだことを知らしめたい人物、特殊な姿勢が犯人と結びついている、この3点から
犯人を指摘します。
特に、2番目の条件が実に慧眼で、思わず唸ってしまいました。
個人的には本作愁眉。

「孤独な容疑者」。本作は、緋色の推理はともかく、果たして犯人がここまで
上手く逃げおおせられるか、というのがやや疑問でしたね。

「記憶の中の誘拐」。最後に緋色がいう、2003年に時効が成立しているというところ。
殺人罪ですが、時効が撤廃されているが、時効なのかと、どうでもいいところが
気になりました(笑)
wikiによると、「「人を死亡させた罪であって(法定刑の最高が)死刑に当たる罪」
については公訴時効が廃止」とあるので、それに該当しない、という事なんでしょうか。

全編にわたっていえることですが、緋色の推理は火村英生の詰め将棋の如き推理を
彷彿とさせますね。決して突拍子もない所からの出発点ではない。1つ1つの論理を
綿密に組み立てていき、彼彼女しか犯人たり得ない、と結論づける。

とはいえ、彼女がずっと資料館に留まっている謎は未だ解明されず。
次作に期待です。


赤い博物館 (文春文庫)

赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 誠一郎, 大山
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 文庫



記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/01/04
  • メディア: Kindle版










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予言の島 [澤村伊智]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。
二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という――。

天宮淳は、幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」
という意味不明な理由でキャンセルされていた。
そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは、悲劇の序章に過ぎなかった……。

すべての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。
再読率100%の傑作ホラーミステリ!

久しぶりの更新です。少し止まってました。
以下、ネタバレあり。







色々なところで見かけたり、なぜかオススメに出てきたりしたので、購入しました。
全く関係ありませんが、かつて角川文庫で発売されていた赤川次郎『長い夜』が
その後ホラー文庫で発売されたなあと。いや、角川ホラー文庫はあまり読んだことが
ないので、相当久しぶり、というか、下手すると初読かもしれませんね。

閉ざされた島と、有名な霊能者による予言、怪しい島民たち・・・
ホラーというより、ミステリ要素を十二分に兼ね備えてます。



メイントリックは、叙述トリックで、これが実にうまく使われています。
語り手の三人称、一人称の使い分けもかなり上手い。
しかし、ヒントも上手く散りばめているという、これはもうミステリ小説でしょう。

ただこのトリックは、そこまで隠せるか?と単純に思いました。
何も知らない島で出遭った人々が、なぜ指摘しない?(笑)
それを言ったらアンフェアかもしれませんね。しかしホラー文庫に入った理由は、
おそらくサイコホラーという意味なのだろうと、個人的には理解しました。

それよりもこの島の真実というか、隠してきた事の方が、なるほどと思いました。
島民全員で騙してきて、デメリットよりメリットが大きいと判断している訳です。
これはこれで中々恐怖です。
しかし、現実でもこれはあり得ることだろうなあ。

ちなみに澤村さん繋がりで、コミック版の『ぼぎわんが、来る』も読了後に
購入してしまいました。こっちは全く「ぼぎわん」が理解できませんでした。

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交差点に眠る [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「娘に渡して」と、偶然出会った女から写真を託された梓悠季。
だがヤクザの殺し合いで、その女は悠季の目の前で射殺された。
命拾いした悠季は十三年後、人気ファッションデザイナーになった。が、
またしてもショーの前夜、射殺現場に遭遇してしまう。
二つの事件に見え隠れするヤクザの正体、
そして渡された写真の意味とは?
正義感の強い悠季は真実を暴くため事件の真相を探る!


相変わらず、タイトルが上手い。物理的な「交差点」と、出会いと別れがある
という意味の「交差点」という。途中で解説が少し出てきます。

ヤクザの抗争がメインのお話で、赤川作品常連の強いヒロインが活躍しますが、
ちょっと意外な犯人でしたね。ややビックリ。
悠季が過去に体験した、ヤクザの殺し合いとその前の追われる男女の性交が、
彼女の運命を大きく変えたのは事実で、彼女がそれを本当に心の糧のような
ものにしているのなだと、読んでいる中で思いました。

そしてヒロインが強いだけでなく、その母も強かった(笑
どちらかが抜けているか、天然かというパターンが多いのですが、
命が狙われる恐れがある!→世界一周旅行に行こう、という思考が素晴らしい。
最後に明かされますが、母親からのメールで、事件が解けたようなものですし。

それにしてもジェットコースター的展開なのは、いつものことかもしれませんが、
流石の一言。
ヒロインに良い彼氏(候補)が現れなかったなあ、悠季も残念でしょうね(笑


交差点に眠る (徳間文庫)

交差点に眠る (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/01/12
  • メディア: 文庫






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論理仕掛けの奇談-有栖川有栖解説集 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

一生に一度は読みたいミステリがここに。ファン必携のミステリ・ガイド!

クリスティー、クイーンなど、海外の古典的名作から、松本清張、綾辻行人、皆川博子、
今村昌弘など日本のミステリまで……。新しい才能への目配りを常に忘れない、
本格ミステリのプロフェッショナルが愛をこめて執筆した、国内外の名作に寄せた解説集!
優れたミステリ・ブックガイドとしても最適の1冊。単行本刊行後に新たに執筆した解説3本と、
杉江松恋との読書対談も加えた文庫増補版。

このタイトルは、泡坂妻夫『毒薬の輪舞』に付けられたタイトルです。
泡坂先生は「探偵小説とは探偵小説の技法を使って作られている小説」であり、
「その技法というのは、読者に奇談を納得させるための一つの技術である」と書いており、
有栖川先生は、「ここでいう探偵小説とは本格ミステリのこと」で、と追記した上で、
本格ミステリとは<論理仕掛けの奇談>なのだ、と。
有栖川先生は、辞書にない怪しげな日本語と言いますが、これほど的確な言葉は
ないでしょう。
『死者の輪舞』と同じ探偵役にもかかわらず、これほどまるで違う作品を編み出し、
かつ、この『毒薬の輪舞』の、見事なまでの伏線の張り方、手がかりの残し方、
それが泡坂作品群では佳作であると評されている、ある意味贅沢ですよね。

本書タイトルにこれをもってきたのは、有栖川先生にとって思い入れが相当強かった
のでしょうかね。

しかし和製クイーンである有栖川有栖を思うと、やはりエラリー・クイーン&バーナビー・ロス
の2作は外せませんね。
『Xの悲劇』と『ローマ帽子の謎』の解説は流石、同書は「これぞ不朽の名作」と冠されています。

個人的に、読みたいと思ったのは吉村達也先生の『[会社を休みましょう]殺人事件』。
同書のです・ます調に合わせて、解説も同じになっているのですが、
これが書かれた時代背景も合わせ、復刊した時代背景も合わせ、気になりましたねえ。

紹介されている作品はジャンル含め多種多様。解説を読んで、実際にその本を
読むというのも、本選びとして良いのでは。


論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

論理仕掛けの奇談 有栖川有栖解説集 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/03/23
  • メディア: 文庫







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アルファベット荘事件 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

巨大なアルファベットのオブジェが散在する屋敷『アルファベット荘』。
岩手県の美術商が所有するその屋敷には、オブジェの他に『創生の箱』と呼ばれる
関わったものは死に至るという箱もあった。雪が舞う12月のある日、
そこで開かれるパーティに10人の個性的な面々が集う。
しかし主催者は現れず、不穏な空気が漂う中、
夜が明けると『創生の箱』に詰められた死体が現れて――。
売れない役者、変人にして小劇団の看板女優、そして何も持たない探偵が、
奇妙な屋敷の幻想的な事件を解き明かす! 
当代きってのトリックメーカー・北山猛邦の、長らく入手困難だった初期長編が待望の復刊!


以下、ややネタバレ。




元々デビューが「城」シリーズであった北山先生。
大きな意味で「館」シリーズに連なる作品群ですが、本書はそれに見事に合致する
作品という印象を受けました。
東京創元社さんの復刊は流石です。


『創生の箱』のトリックはさておき(笑)、巨大なアルファベットのオブジェが何らかの
トリックに用いられているのは誰しも読んでいて、気付くはずです。

物理トリックとして、箱に死体を運ぶことが出来たのは誰か?=犯人である、という推理は
非常に鋭く見事。
ただ、箱そのものがどういう物なのか、これも絵入りで説明してほしかったなあ。
あとアルファベットの上を移動する、というのが結構事前にしていたとしても、
犯人としては、ヒヤヒヤだったろうなと。

さて、本作は本書のみでシリーズ化もしていないのですが、
それゆえに、より謎が深まる点も多いなと想いました。

単なる謎解き役=探偵役としての機能しか果たさない、と「あとがき」で北山先生も
言われている「ディ」。だからこそこの通称なのですが、
彼の記憶がなぜ無いのかとか、シリーズ化して掘り下げて欲しかったなあ。

プロローグで語られる少女と少年の話。登場人物でこの二人は誰なのか?というのも
楽しみの1つなのですが、
最後に、成長した少女が「不可能犯罪を必要としている人がいるの」という言葉は、
明らかに「ディ」との何らかの繋がりを示唆するものなので、余計に気になりました。

オーパーツ専門の探偵・春井もなかなかの曲者で、再登場してもらいたい。
というか、このオーパーツを鍵として、このシリーズ化をぜひ!


アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/10/12
  • メディア: 文庫






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ランチ探偵 彼女は謎に恋をする [水生大海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

すべての構図が、見えました――
美味しい謎を、いただきます!

ランチ合コンにいそしむ阿久津麗子と謎には目がない天野ゆいかの迷コンビには、
コロナ禍のなかでも新たな出会いが待っていた。学校の廊下に置かれていたお稲荷さん、
百貨店に届いた不穏な脅迫メール、キッチンカーへの嫌がらせ…
合コン相手が持ち込む謎に目を輝かせ推理するゆいかに、麗子は天を仰ぎ…。
恋の行方も気になる本格グルメミステリー。


以下、少しネタバレ。



このシリーズの最新作が、この「コロナ禍」で読むことが出来るとは思いませんでした。
しかも、内容もしっかりとコロナ禍を踏まえているという(書き下ろしもあるのです!)
さすが水生先生。


コロナ禍だろうが、なんだろうが、イイ男を見つけたいというパワーは誰にも
負けない阿久津麗子、充分なコロナ対策をし、ステイホームをしっかり続けるも、
謎には眼が無い天野ゆいか。
本書では、阿久津麗子はどちらかというと、男よりも美味しい食事が主目的に
なっているように思いましたが・・・


第1話の「お稲荷さん、いまは消え」は、コロナ禍前のお話。
この謎の答えは、試みとしては非常に素晴らしいけれども、
確かに食中毒とかアレルギーとか、そういったことを考えると難しいですね。
彼の言う、当時がいつなのかはわかりませんが、こうした試みをした校長は
すごいなあと思います。

そして2話以降が、コロナ禍でのお話になります。
とくにリモート飲み会やオンライン合コンというのが登場し、「ずっとお家で暮らしてる」
では、このオンラインならではのトリックが登場します。
特にこの3話は、それ以外にも麗子の合コンに対する立ち位置が若干変わっていることも
特筆に値しますね(笑)

「同じ空間で同じものを食べて、あれが美味しいとかこっちが美味しいとか、そういう話を
するのも合コンの楽しみのひとなわけ。盛り上がりたいの。」(179頁)

これは麗子の立ち位置変更発言に読めて、一方でコロナ禍で集まれなくなった人たちの
一種の叫びでもあるのでしょう。

4話もオンラインならではのお話。というか、3話と4話は実は合コンではないという。
3話は二人ともオンライン飲み会であるとわかっているので良いのですが、
4話は、ゆいかの謎解きにより判明するという、ちょっと男たちがずるいですね。

しかし、本トリックや犯人も、コロナ禍という特殊状況下であるから生じてしまった、
悲しい話ではありますね。ラストでうまく解決できそうなのが救いです。

第5話は個人的には本作愁眉。永田&久野の行動を看破するゆいかの謎解きだけでなく、
久野のその先の想いまで見通したところ、そしてラストの爽快感がイイですね。
「誰かと出会うって楽しいことなんだって。」(324頁)という麗子のセリフがまた良い。

ランチ合コンが当たり前のようにできる日常が早く戻り、
麗子にも幸せが訪れることを祈りつつ。


ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

  • 作者: 水生 大海
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/02/04
  • メディア: 文庫







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シャーロック・ホームズたちの新冒険 [田中啓文]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ベーカー街で出会わなかったホームズとワトスンの“最初の事件”、
手塚治虫の原稿紛失を巡るトキワ荘での騒動、死後自分を殺した犯人を推理する明智小五郎、
正岡子規が推理する松尾芭蕉の死の真相、〈黒後家蜘蛛の会〉に持ち込まれたアシモフが
クラークにしたためたとされる手紙の謎……。推理小説の名探偵から実在する歴審の偉人まで、
誰もが知る著名人たちの知られざる探偵行全5編を収録した、オマージュミステリ短編集第二弾!


以下、ややネタバレあり。




ブログを見たところ、どうも第1弾「冒険」は購入していないようですねえ。
うーん、記憶が定かで無い。


正直どれも面白いのですが、やはり背景や元ネタを知らないと、このシリーズは
当然ながら楽しめません。
私、恥ずかしながら<黒後家蜘蛛の会>は未読だったので、そちらを読んでから
再読したいと思います・・・

「トキワ荘事件」、この話で一番気になったのは『イナゴ身重く横たわる』なる書物。
解説の北原尚彦さんが触れていますが、なるほど、そういう使い方なのかと。


「二人の明智」、名探偵・明智小五郎と明智光秀が共演する豪華作品。
明智が殺害されるという、ショッキングな出来事から始まりますが、
メインは明智光秀の謀反と、そこから始まる壮大なる仮説!
当然ながら、そこにはダジャレが上手く取り入れられています(笑
それも[附記]にまで!
「明智光秀」がなぜ謀反を起こしたのか?この謎を解くよう、明智光秀から依頼された
明智小五郎のダジャレ(失礼!)連想はお見事。小栗栖村まで出てくるとは・・・
驚きですね。

「二〇〇一年問題」、「ロボット三原則」と「HAL団治」が笑いました。
いや、前者は笑うところではないのですが、アシモフが提唱した原則で、
これが物語上、鍵を握るという、誰もが知っていたのに、この話の中で
誰もそれに気付かなかったのかという、メンバーのマヌケさが良いですね。

後者はもうダジャレを超えて、素晴らしい想像力です。

「旅に病んで」。この話は正岡子規と高浜虚子の物語なのですが、
正岡子規が松尾芭蕉の弟子である服部土芳の書いた書状を見つけたといい、
そこから、松尾芭蕉の暗殺、彼の正体、遺した句等々、壮大な話に繋がっていきます。

松尾芭蕉が隠密であるとか、忍者であるとかいう説は昔から有名だったと思いますが、
本書はこれを逆手に取っていて、実はその真逆だったという新説を披露しています。
これは正直言って驚きました。説得力もしっかりしていて、上記作品群の中では、
一番面白かったです。
あと圧巻は257~258頁の箇所で、「夢のまた夢」「聚楽第」と、さらに虚子が
推理を進めて、正岡子規が示そうとした仮説を補うところがいいですね。
が、それら全てをひっくるめての258頁が、やはり一番。
他作品群と異なり、全て悪戯だったとしたのは、田中さんなりの何か配慮があったのかなあ。

「ホームズ転生」。ホームズとワトソンが同居生活しなかったという、別の時間軸の物語。
いやあ、これは読んでいて結構きつかったなあ。ホームズ好きとしては、
こんなホームズ、見たくないという。
ラストでこの夢を見ているのがホームズというのも、中々捻りが効いていて、
ホームズ自身も、ワトソンと同居していなければ名探偵にはならなかった、という
深層心理があったことを示唆していますね。
決してワトソン=ストーリーテラーではない、という。

解説は先にも書きましたが北原尚彦さんが書かれています。ぜひホームズパスティーシュ
の第2弾、お願いします!




シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/29
  • メディア: 文庫






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三世代探偵団 次の扉に潜む死神 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

天才画家の祖母と、生活力皆無でマイペースな母と暮らす女子高生の天本有里。
彼女が出演した舞台で、母の代役の女優が何者かに殺された。
有里の目の前で倒れた被害者が最後に口にしたのは、母の名前だった。
彼女の身に何が起きたのか。事件を追ううちに、3人の周囲に次第に不穏な影が忍び寄り……?
個性豊かな女三世代が贈るユーモアミステリ開幕!


2017年、赤川次郎先生が、『キネマの天使』と同じく初めた新シリーズ。
御年69歳(70歳)で新たなシリーズを始めるという、すごい試みです。

主人公は高校生の天本有里、ですが、探偵役は祖母の幸代なのでしょう。
年の功(失礼!)といってはあれですが、彼女は物語の中である程度の事態を
見通している感があります。

相変わらず場面転換が激しいですが、それ以上に物語に惹き込まれます。
有里の目の前で起きた殺人事件。有里が通う学園の事務員である三田洋子の弟・三田広士
の元に突然現れた女性・アケミ。洋子の上司が原口恒子が抱える何らかの秘密・・・
殺人事件にどう絡んでいくのか、想像が付きません。

様々な人物の思惑と、その後ろで何かを企む組織が見え隠れする中で、
物語は続いていきます。

個人的にはラストの犯人というか、組織というか、このあたりはもっと明確に記す、
具体的に書いて貰いたかったですね。何が学園を含め起こっていたのか。
実のところよくわかりません。

ただし、赤川先生の狙いは当然結末にあるのではないのだろうというのは、
これまでの作品からも想像が付きます。

本書の副題「次の扉に潜む死神」は、人が歩んでいく上で、その都度その都度
何が潜んでいるかわからない、どうその人が変わるかわからない、という意味を
含んでいるのであろうと勝手に想像しました。

大人しそうな三隅研一や、裏の顔役をしていた永田、そして三田洋子等々・・・
多くの人たちがまるで違う人物かのように変貌、変化していく様が描かれています。

しかし、三毛猫ホームズシリーズしかり、本シリーズでも祖母の幸代がグリップ(?)
しつつ、文乃や有里は彼彼女たちの変貌に影響を受けながらも、前に進み
事件を解決に導いていくのもまた事実。

人間ちょっとしたことで、道を踏み外したり、変わったりしてしまうけれども、
彼女たち三世代のような人が近くに居れば、どんだけ安心だろうかと思ってしまいますね。

赤川先生の作品群の主人公はそんな優しい人たちばかりなのが素晴らしい点なのですが。

本シリーズ、すでに3作品刊行され、4作目もという話のようです。
1・2作は同時刊行されましたので、また近いうちに。


三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版







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西村京太郎先生、お疲れ様でした。 [西村京太郎]

91歳まで現役を続けこらえた先生にまずは敬意を表したいと思います。

世間的に見れば、トラベルミステリーという分野を開拓した、
まさに第一人者、そして2時間ドラマには欠かせないシリーズ原作者といえるでしょう。

一方で、このトラベルミステリーの大ヒットのおかげで、各出版社が
ミステリ(本格、新本格なども含め)という分野に財源を回せるようになったのではないか
とも思っているのです。

ミステリファンならば、やはり初期の「天使の傷痕」「四つの終止符」
そしてスパイミステリの傑作「D機関情報」、
さらには青春ミステリ「おれたちはブルースしか歌わない」

そしてそして、なんと言っても「そして誰もいなくなった」に真正面から挑んだ
作品である「殺しの双曲線」。
パロディであって見事な本格ミステリである、名探偵4部作。

実は島も多いのです、「伊豆七島殺人事件」「幻奇島」「南神威島」
拙ブログでも色々とご紹介させて頂きました。
(「神話列車殺人事件」や「鬼女面殺人事件」も素晴らしい。)

そしてそして、やはり「消失モノ」は忘れてはいけません。
十津川警部が活躍する「消えたタンカー」、左文字進登場の「消えた巨人軍」
「ミステリー列車が消えた」、「華麗なる誘拐」「盗まれた都市」等々・・・
挙げればキリがありませんね。

「寝台特急殺人事件」、「終着駅殺人事件」、これらも名作です。
事件現場を作り出してしまう「七人の証人」は十津川警部シリーズでも異色の傑作。

昨年まで自筆原稿で入稿されていたとのこと。
大往生の御年齢ではもちろんありますが、まだまだお元気で執筆して頂きたかった
のもまた事実。

先生、多種多様な作品を生み出して頂き、ありがとうございました。合掌。



四つの終止符 (講談社文庫)

四つの終止符 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: Kindle版



新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Kindle版



新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版



おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: Kindle版



華麗なる誘拐 (河出文庫)

華麗なる誘拐 (河出文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/07/04
  • メディア: 文庫



左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/01/31
  • メディア: Kindle版



ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/05
  • メディア: Kindle版



神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2012/11/02
  • メディア: 文庫



新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/07/12
  • メディア: 文庫



終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/10/08
  • メディア: 文庫



七人の証人 新装版 (講談社文庫)

七人の証人 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/06/15
  • メディア: 文庫



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怪異筆録者 [太田忠司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

売れない怪奇小説家・津久田舞々(本名)は、ある日小さな田舎町からの依頼を受けて、
その町の郷土史を執筆することになる。だが、到着したその日の夜に、
彼は謎の幽霊(?)の封印を解いてしまう。「しっかり妾に仕えろよ。さもなくばお前を呪い殺す」
――現れたのはまだ幼い少女だった。ふりかかる受難を躱しつつ、
紳士的な祟り神から生意気なお狐さまなど、
異界のものたちに遭遇してゆく舞々の運命やいかに。


太田忠司先生の作品はなんと初読。狩野俊介じゃないのか!と言われそうですが、
東京創元社のHPを見ていて、気になったので購入しました。

ミステリともホラーとも内容的には言いがたく(分類としてはホラーでしょうが)、
つかみ所の無い、中々に表現しづらいものですが、楽しめました。

後半が、世界を救う!的なライトノベルというか、そういう方向だったのは
個人的にあまり好みで無かったので、前半の非日常における話の方が好きです。

各話の初めに、必ずといっていいほど、編集者の明神が夢の中に登場し、
舞々先生を罵倒したり、意味不明な言語を並び立てたりするところは面白い。
現実でもやられてそう。

個人的には「津久田舞々は夜汽車に乗る」が愁眉。
汽車内の老人との会話が絶妙です。平然と乗っている英丹がシュール過ぎる。
それと車掌の正体も以外過ぎましたね。

方喰鐵山が作った結界が、舞々の前に現れた様々な神なのでしょうが、
彼彼女(?)たちは、あくまで鐵山が旅の途中で救ってきて、古賀音につれてきた神々
なのでしょうね。
元々居たのが、旧き神で、これはまあ怨霊的な神様なんでしょうかね。
御霊信仰ではないですが、敬うことで、逆にそこに留まらせる。
まあこの話では、世界を滅ぼす方向に行ってしまうのですが。

元々居た土着神と別のところから来た神という意味では、明治以降の各地の勧請とか
思い起こさせますが、まるっきり話とは関係ないのでこのへんで(笑

この珍しい名前の舞々先生とともに、肩肘張らず、ゆったりと読める小説です。


怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/30
  • メディア: 文庫






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名探偵誕生 [似鳥鶏]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

僕は、名探偵になる。世界一大切な人のために――
切なくて、愛おしい青春本格ミステリ!

小学4年だった僕は、となり町の幽霊団地へささやかな冒険に出た。
その冒険に不穏な影が差したとき助けてくれたのが、近所に住む名探偵の「お姉ちゃん」だった。
彼女のとなりで成長していく日々のなかで、日本中を騒がせることになるあの事件が起きる――。
ミステリとしての精緻さと、青春小説としての瑞々しさが高純度で美しく結晶した傑作。



本書は星川少年の成長物語であるとともに、初恋の人をずっと想い続けているという、
青春小説ともいえるでしょう。隣に住む千歳お姉ちゃんとともにある意味歩んでいく人生。

第5話構成ですが、私の愁眉は第2話「恋するドトール」。
星川少年がもらったラブレターから、この驚異的な謎に行き着くのはすごいの一言。
一方で、このトリックを成り立たせた犯人の恐ろしい執念も感じますね・・・

第4話・第5話は本作で殺人事件が描かれ、さらに少年にとっては千歳お姉ちゃんの彼氏が
登場するという、衝撃の回でもあります。
そして新たな名探偵が登場する回でもあります。
第4話はこれまで通り、頼りっぱなしだった千歳が探偵役を務め、
第5話は、星川少年が名探偵として「誕生」します。

トリックでいえば本話のトリックはかなり見事です。ただし犯人とそれをかばった
お姉ちゃんの彼氏の対応がちょっとなあ・・・。
ラストも、個人的にはそのまま二人が結婚で良かった気もしましたね。


名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/12/03
  • メディア: Kindle版







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あいにくの雨で [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。
殺されたのは、発見者の高校生・祐今(うこん)の父親だった。8年前に同じ塔で、
離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、
親友の烏兎(うと)と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、
町では次の悲劇が起こり――。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。


以下、少しネタバレあり。



巽昌章さんの解説が、この作品の麻耶作品群内での位置づけ等々、
非常に良くまとめられていますので、ぜひそちらもあわせて。

メルカトル鮎で周囲を騒然とさせるデビューをし、そのシリーズを重ねてきた
講談社で、本書が刊行されたというのは、同時代的に考えると、千街晶之さんの
言葉も頷けるところがありますね。

私が本書を読了した後に感じたのは、『隻眼の少女』に似た印象を受けました。
それと、登場するメインキャラクターの名前が、相変わらず麻耶先生らしいという(笑)
あれ、なんて読むんだっけ?と何度も確認してしまいました。

本書は一応青春本格ミステリとあるのですが、
塔で起きた一連の事件の謎と、生徒会での不正を追うスパイ活動の2つで
主に構成されています。
後者の活動は、青春ミステリと銘打つミステリの中でほとんど見られない話で、
結構珍しいと思いつつ、実際、もう少しこちらをメインにしても良かったのでは
ないかという思いもあります。

前者は,私は赤川次郎先生で慣れすぎているのか、高校生が名探偵役として活躍するのが
当たり前になってしまっているので(笑)、そこまで驚きませんが、
鳥兎と獅子丸が探偵役として活動していいきます。
むろん、後者もこの二人がスパイ役です。

しかし、ミステリの部分については、最初の冒頭で塔からの脱出トリックが読者に
早々に明かされ、その後はそれに至る経緯が書かれていくのが本書の特徴でしょう。

つまり、なぜ犯人が塔でこのような犯罪を行ってきたのかを、読者が読み解いて
いくというのが、本書の謎解きになるのだろうと思います。

とはいえ、この結末は予想できそうで、予想出来なかった、な・・・
反抗期がこちらの想定や予想を遙かに超えたと考えるべきかと思いましたが。

それまでの事件の謎を解き明かすという行動はそもそも何だったのかいう
疑問も当然出てきますし、ラストも果たしてこの後どうなるのか、余韻を残す
終幕となっているのも気になります。

なんとも評価というか、感想が難しい作品でした。


あいにくの雨で (集英社文庫)

あいにくの雨で (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: Kindle版







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白魔の塔 [三津田信三]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『黒面の狐』で連続怪死事件を解決し、炭鉱を後にした物理が「復興の現場」として
次に選んだ職場は「灯台」。戦中は軍事設備としての側面もあり、海運の要である灯台を
献身的に支える灯台守という仕事にやりがいを見出した物理だが、新たな赴任先である
轟ケ埼灯台にいわくいいがたい不穏なものを感じる。案の定、灯台に至る道から怪異に遭い、
「立ち寄るな」と警告されていた山中の一軒家に迷い込んでしまった。
そして、ようやく辿りついた灯台で物理を待ち受けていたものは――。

そこそこネタバレあり。




物理波矢多シリーズ第2弾。
前作『黒面の狐
を読んだのがおおよそ2年前なので、波矢多に出会うのも久しぶりです。

前作が、三津田先生が得意とする、ホラーや怪奇が全面に出されておらず、
かなり本格ミステリだったのに対して、本作はまるで違いました。
正直、読んでいて良い意味で愕然としてしまいました。傑作です。

3部構成で描かれる物語ですが、なんと第1部は轟ケ埼灯台までようやく到着する所
までしか描かれていません。白衣の森は、迷いの森レベルではなく、
不思議のダンジョンレベルの道程ですね(笑)

それはやや冗談としても、この1部で語られる白子村、白神様、白屋、白もんこ、
これらのキーワードや波矢多が体験した不可思議な出来事は、そっくりそのまま
2部の入佐加灯台長が体験し語られる物語とそっくりそのままなのです。

なんという構成なのかと驚いてしまいました。すでに怪異的な現象は
描かれているとしても、果たしてこの物語は何を描こうとしているのか。
白子村や白神様、そして憑物筋の家と思われる白屋、白もんこと呼ばれる化け物。
これらの謎を波矢多が解き明かすのか?とぼんやり考えていたのですが、
まるでそんな気配はない。そもそも舞台はほとんど灯台です。

3部、ここは波矢多の真骨頂でもあり、物語が一気呵成、怒濤の展開を見せ始めます。
まずかつて横山教官から聞いた、アイリーン・モア島の灯台の事件。
この謎の事件に1つの合理的解釈を波矢多が示します。

この解釈、さらっと書かれているのですが、「日記」という誰かの筆記体の内容を
どう捉えるのかということを1つの見事な推理だなと。
綾辻行人先生の『黒猫館の殺人』もこの『手記』を元に大がかりなトリックが仕組まれています。

さらに自分が出遭った白もんこにも合理的解釈を示します。
この解釈、なるほどと思いつつも、彼がそこまでやるのかなあという疑問。

そもそもの前提として、白子村の人々は白衣の森に入ることに恐懽している
のにも関わらず、ここまで堂々(?)とした振る舞いが取れるのか?
いや、そもそもその前提が間違いなのか。波矢多の弁当箱に入れられていた
白屋に泊まるな、という警告は、彼が入れたのか?
彼が入れたとすれば、実は波矢多の解釈と一致するところも多いのですが、
なんとも解答は示されず。

入佐加灯台長へ突きつけた、1つのある事実は確かに驚きました。
「路子」の推理は秀逸。「白」が多いと波矢多が考えていたの描写がありましたが、
それがここに通じてくるのかと思いました。

しかし問題はその後なのです。3部が「五里霧中」というタイトルを付けられているのは
この後があるからでしょう。417頁からの展開は全く予想出来ません。

2部の入佐加灯台長の体験談はともかく、1部最後の轟ケ埼灯台到着と灯台長夫妻との出会い、
ここからが全て狂っているのです。
そもそも入佐加灯台長と路子、そして灯台守の浜地はどこへ消えたのか?
そしてなぜ消える必要があったのか?
全くその点は語られません。余計に恐ろしく、波矢多が記憶を失うのも無理は無いでしょう。
白い巨人が迫ってくるという波矢多の悩みは、彼の推理がある種正しいことを示して
いるのですが、この轟ケ埼灯台に波矢多が着いた時から起こっていた事象は、
一体何なのか。
彼が海上から灯台へ向かっている時に見た、白い人=浜地or入佐加だったんでしょうか?
ここを怪奇(灯台にある怪奇の1つ)として残されてしまうというのは、
本書の性格から納得できる部分はあるものの、ここにも波矢多の合理的解釈を
どうにか付けてもらいたかったなあ。まあこれは高望み過ぎるのでしょうけど。

前作とは全くベクトルの違うシリーズですが、私にとってはここ最近読んだ中では
紛う事なき傑作でした。



白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 文庫







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やぶにらみの時計 [都筑道夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昨日までの『きみ』はもう居ない。
恋人、友人、知人に否定された男の奇妙な自分探しの迷宮。

「あんた、どなた?」妻、友人、そして知人、これまで親しくしていた人が〝きみ〟の存在を否定し、
逆に見も知らぬ人が会社社長〈雨宮毅〉だと決めつける──
この不条理で不気味な状況は一体何なんだ!真の自分を求め大都市・東京を駆けずり回る、
孤独な〝自分探し〟の果てには、更に深い絶望が待っていた……。
都筑道夫の推理初長篇となったトリッキーサスペンス。
幻の連載長篇『アダムと七人のイヴ』第一話も特別収録。

「トクマの特選!」として復刊した都筑道夫先生の最初の1冊。
すでに『猫の舌に釘を打て』も刊行されています。

トクマの特選!、とは復刊レーベルであり、
Z世代に読んでほしい名作」としてミステリやSFのほか、一般小説、エッセイ、
ノンフィクションなども刊行される。、とのこと。

こうした試みはうれしい限りですね。
笹沢左保先生の作品群もすでに刊行されていますし。
徳間文庫の購入がどんどん増えそうです。

ところで都筑道夫先生作品は、河出書房さんや筑摩さんからも次々と復刊されており、
ちょっとしたムーヴメントのような感じにここ数年なっています。
この勢いにのって、物部太郎も出てほしいなあ。
(ちなみに電子書籍版は出てます。)

さて、本書は都筑さんの初長編作品とのこと。
この辺りの話は、解説で法月綸太郎先生が非常に詳しく書かれているので、
ぜひそちらをじっくり読んでください。

私の中ではかつて創元推理文庫で復刊した「退職刑事」がやはり浮かびますね。
全て購入しました。今調べてみたら、なんと元々は徳間書店刊行とは・・・
いや、ぜひともトクマの特選!で再び!!

話が色々と飛んでしまいました。
本書、タイトルは当然聞いたことがあるのですが、初読です。
そもそも「やぶにらみ」という言葉、最近では馴染みが薄いのではないでしょうか。

『日本国語大辞典』によると、
「藪睨』:①物を観るとき、両眼の視線が平行しないで、一眼が他方を向く状態の俗称。斜視。
     ②言動・思考などが見当違いなこと。

明らかにこの小説では②の意味を指しています。
しかし、このタイトル、秀逸だなあと感じました。

そしてやはり文体、「きみ」という二人称で描かれる全編。
(これも詳しくは解説を)

自分が生きてきた世界が一瞬にして変わってしまうという、
衝撃的な朝から始まる物語。
自分は浜崎誠治だと思っていたが、実は違うのか・・・?という所まで
追い詰められていく「きみ」
特に255頁は、そう思い込んでいるということを、<殺し屋>こと鈴置の猫の話から
引用して、かなり哲学的な考えまで及んでいるところが印象的です。

ところで、猫についてはかなり残酷な描写も出てくるので、
その点は閲読注意ですが、先ほど挙げた『猫の舌に釘を』もタイトルだけみると、
かなり残酷というか目を背けたくなるタイトルです。
都筑先生は何か猫に独特な観点があったのかなあ、とふと考えてしまいました。

狂言回しというか、名探偵役?で登場する猪俣がかなり良い味出してます。
このまま彼が一気に謎を解くのかと思っていたのですが、結構情けない状態になるところも
ちょっとおもしろい。
むしろ、たまたま一緒にいた、女性・千沙子の方が最後は活躍するという・・・(笑

本書の最大の問題点と私が思うのは、やはりラストなんだろうと思います。
自分を他人に仕立てたのは誰か、そうしなければならないのはなぜか。
これらを追って浜崎は1日中奮闘しますが、最後の犯人の独白というか、
それが実のところよくわからないんですよね。

しかもかなりあっさりしてます。
むしろラストの浜崎の感想(279頁)の方がより読ませます。

都筑さんなりの推理作家としての<再スタート>の作品として試行錯誤した
結果なのだろうか。他の作品や評論含め、色々と読んでみないとわからないのかも
しれませんね。


やぶにらみの時計 (徳間文庫)

やぶにらみの時計 (徳間文庫)

  • 作者: 都筑道夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/11/09
  • メディア: 文庫







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アリスの国の殺人 [辻真先]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

コミック雑誌創刊に向けて鬼編集長にしごかれる編集者の綿畑克二。ある日、
行きつけのスナック「蟻巣」で眠りこけ、夢の中で美少女アリスと出会う。
そして彼女との結婚式のさなか、チェシャ猫殺害の容疑者として追われるはめになった。
目が醒めると、現実世界では鬼編集長が殺害されており、ここでも殺人の嫌疑をかけられてしまう。
二つの世界で無実を証すために事件の真相を追うことになった。
日本推理作家協会賞受賞の長篇ミステリー。


以下、ネタバレあり。





相当前から気になっていて、徳間も、双葉社もいずれも絶版?で全然読むことが叶わなかった
作品でした。今回、徳間文庫さんから念願の復刊ということで、早速に購入。

アリスの世界(夢?)と現実世界を行き来する主人公・綿畑克二。
彼が最後に行き着く先はどこなのか・・・?

ともかく、アリスの世界が不条理極まりない世界です。
アリスはともかく、ニャロメやヒゲオヤジ(伴俊作)、さらには鉄人28号まで
登場します。しかも、鉄人28号はこの世界で起きたチェシャ猫が<密室>で殺されている
という事件を解く、最大のキーにもなります。

とにかくレベルの高い言葉遊びが凄い。辻真先御大はこれは執筆していて、
気持ち良かったのだろうなあ。
章タイトルの反射(鏡)表現、しりとりで進む文章、証人から白兎への近似語遊び、
挙げればきりがありません。

それでいて、この夢の世界の殺人事件が実に凝っている。密室を逆手に取ったトリックや、
『仮題・中学殺人事件』の意外な犯人に通じる、犯人を裁く法廷の裁判長が犯人という。
御大のこだわりが見えますね。

現実の世界では『深夜の博覧会』で(私にとってはなじみ深い) 那珂一兵が登場。
こちらの事件はアリバイ崩しがメインとなりますが、そもそも事件の大前提を覆す
『蟻巣』の面々の活躍(?)。明野編集長の執念とも言える思いが彼彼女を
動かしたのでしょう。

しかし、結局こちらの事件の最後はどうなったのだろうか。
最後を飾る章は夢の国の話で、301頁の「これじゃおわらない!」は何を指すのでしょうか・・・
続編にあたる『ピーター・パンの殺人』に続くということなのでしょうか。

ここまで遊びを盛り込んで、それでいて夢と現実いずれの事件も見事な作品。
合わない方も居られるかもしれませんが、復刊したことでぜひ手にとってほしいものです。


アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 辻真先
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/07/08
  • メディア: 文庫







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こうして誰もいなくなった [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

仮想通貨で成功した若き大富豪に招待された10名の男女が、
"海賊島"で巻き込まれる不気味な連続殺人事件――クリスティの名作を大胆に再解釈した表題作
をはじめ、書店店長の名推理が痛快な「本と謎の日々」、肥大化した男の欲望と
巨大生物の暴挙に恐怖する「怪獣の夢」、遊び心に満ちたタイポグラフィが楽しい「線路の国のアリス」など多彩な14篇を収録。ジャンルを超越した物語世界の魅力を堪能できる、唯一無二の作品集!


ちょっと更新が空いてしまいました。
昨年発売された、有栖川有栖先生のノンシリーズ短編集。
少しネタバレ。






「線路の国のアリス」。実はこの本の前に読んでいたのが『アリスの国の殺人』で
なんという偶然!と思いました。
P.35のお遊びなど、まさに「不思議の国のアリス」でも、そして『アリスの国の殺人』でも
あり、「アリス」を舞台に、様々な異なるミステリが描かれていて、いやいや驚きました。
それだけに小林泰三さんの逝去が悔やまれてなりません。
最後、夢から醒め、現実世界に戻ったかのようなアリス、そこにはエキシャ猫と
白ウサギが・・・アリスは再び追いかけますが、果たしてこれはまだ夢の中なのか、
それとも「鏡の国」へ今度は向かうのか。少し余韻を残した終わり方もまた良いです。

「劇的な幕切れ」。これ短編ながら見事なミステリ。サスペンス、ホラーでも
あるのかもしれませんが、主人公のラストをどう考えるか?というのもあるのですが、
<パープル>というある種の趣味というか、そういうものを持つ人も当然ながら
居るのでしょうね。

「未来人F」は江戸川乱歩が生んだ「少年探偵団」シリーズのパスティーシュ。
解説だと、パロディとしてますが、やはりパスティーシュの方がしっくりくる気がします。
それは表題作も同じこと。

パロディとパスティーシュの違いは、確か『シャーロック・ホームズに愛を込めて』か
ジューン・トムソンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』の解説か、
何か書いてあったと記憶してます。

閑話休題。
この「少年探偵団」はいわゆる「通俗小説」になるのでしょうが、
有栖川さんがあとがきで書かれているように、小学生が夢中で読むのはよくわかります。
明智小五郎の登場のかっこよさも良いし、二十面相との対決も良い。
ただし、本作は最後にメタ要素があるのが少し捻ってますね。
(だからこそ、パロディと評したのかもしれません。)

「本と謎の日々」は大崎梢先生を読んでいるかのような錯覚を受けましたが、
それもそのはず。あとがきで書かれていますが、本作は『大崎梢リクエスト!本屋さんの
アンソロジー』所収作品。シリーズ化してもよい作品!

さて表題作「こうして誰もいなくなった」
いやあ、さすが有栖川先生。最後の「密室殺人」は見事の一言。
密室の中に死体を入れるという逆転の構図。『そして誰もいなくなった』パスティーシュ
としても第一級の作品ではないでしょうか。

それとやはり探偵役には触れない訳にはいきません。響・フェデリコ・航。
名探偵。<怪奇八十面相事件>を解き明かした、警察にも知られる人物。
ポワロをさらに奇抜にした感じにしたかの、星影龍三を私は思い出しました(笑
何で勝手にミドルネームを入れているんだwww
そして、なぜ事件が起きている事を知ったのだ?!
いいですねえ。彼の事件簿を作品にしてほしい。


解説では『殺しの双曲線』、『獄門島』、『パノラマ島奇談』といった作品への
オマージュも指摘していますが、なるほどと思いました。

『そして誰もいなくなった』の偉大さはもはや語るまでもありませんが、
『殺しの双曲線』に影響を受けて書いた、というパスティーシュも
あるかもしれませんね。



こうして誰もいなくなった (角川文庫)

こうして誰もいなくなった (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/11/20
  • メディア: Kindle版







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御手洗潔のダンス [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。

またまた間隔が空いてしまいました。


『挨拶』に続く第2弾。
こちらも良作揃いです。

「山高帽のイカロス」は、犯人にとっても予想外な事が起き、
まさに被害者が「浮遊した」「飛行した」とした思えない状況に。

より面白いのは「舞踏病」。
自宅の2階の下宿人が、どうやら「狐つき」らしい・・・
そんな奇妙な謎を持ってこられて、うごかないはずがない!

本作では、御手洗の医療に関する考えなども伺う事ができ、
後々の天才御手洗潔(この時点で天才ですが)の片鱗を垣間見ることが出来ます。

トリックの面白さならば「ある騎士の物語」。かつて藤原宰太郎さんの、
『世界の名探偵50人』とその続編を読んだことがあるのですが、
そこにバッチリと、この事件のトリックがネタバレされてました(苦笑
当時はまだ小学生くらいで、御手洗シリーズを読んでいませんでしたので、
余り気にしませんでしたが、改めて読んで見て、ああ、そういえばと思い出しました。

エキセントリックな言動とともに、極めて不可思議、奇妙な事件を解き明かすのが、
やはり御手洗潔だなあと、改めて思いました。
落ち着いた御手洗より、やはり好きですね。




御手洗潔のダンス (講談社文庫)

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版








世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 文庫




続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1993/12/01
  • メディア: 文庫



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