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濱地健三郎の幽たる事件簿 [有栖川有栖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
江神二郎、火村英生に続く、異才の名探偵の事件簿、待望の第2弾!
年齢不詳の探偵・濱地健三郎には、鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。
新宿にある彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の
強面刑事も秘かに足を運ぶほどだ。助手の志摩ユリエは、得技を活かして、
探偵が視たモノの特徴を絵に描きとめていく―。郊外で猫と2人暮らしをしていた姉の失踪の謎と、
弟が見た奇妙な光景が意外な形でつながる(「姉は何処」)。資産家が溺死した事件の犯人は、
若き妻か、懐具合が悪い弟か?人間の哀しい性が炙り出される(「浴槽の花婿」)など、
驚きと謀みに満ちた7篇を収録。ミステリの名手が、満を持して生み出した名探偵。
待望のシリーズ、第2弾!
江神二郎、火村英生に続く、というところに違和感を持ってしまいました(苦笑
(作品と関係無く、すいません。)
ソラもいれば、地蔵坊(笑)も居ます。
とはいえ、火村英生シリーズから派生して、こうして探偵役が登場するというのは
これまでには確かに無かったですね。
島田荘司先生の、犬坊里美とか意識してたりとかあるんでしょうか。
本作所収で最もホラーなのは「それは叫ぶ」
ホラー小説はあまり読んだことが無いのですが、基本的には「論理じかげの奇談」でも、
合理的解釈も成り立たないものが、ある意味一番怖いのではないかと思います。
なので、最も恐ろしいのは、こうした正体不明の、濱地のいう「幽霊の屑」ではなかろうか。
解説にもあるように、本作はホラー小説ながら、探偵小説でもあるんですよね。
濱地の持つ不思議な能力のみならず、探偵能力もしっかりと発揮されているんですが、
上記の作品のみは、全くそんなことは無いので、探偵小説として考えた場合、
極めて異質な作品ですが、心霊探偵シリーズとしてみると、ついに来たとも思えます。
「ホームに佇む」もやや似た印象のある作品です。
依頼人の吉竹と、怪奇を結びつける「合理的」理由は無く、彼が「視えた」から。
実際そのくらいの理由なんでしょうね。よく視えても、視線を合わせるなとか
聞いたりします。
そこをいくと、「お家がだんだん遠くなる」「ミステリー研究会の幽霊」は
しっかり探偵小説です。理由もしっかりあり、終わり方もよい。
ミステリー的な要素を一番含んでいるのは「姉は何処」でしょうか。
私一番のオススメです。
姉(の思念)の行動を見て、見事な名推理をみせる濱地と
一番のホラーを体験してしまった助手のユリエ。
最後の1行は中々怖いですよね。
直球の怖さではなく、変化球的怖さなのが「浴槽の花婿」
これは意表を突かれました。
犯人を言い当てるでも無く、アリバイを崩すでもなく、確かに幽霊的なものが
語っていることを濱地は刑事に伝えますが、それだけ。
その後の記述で、読者は犯人がわかるも、あの幽霊的な思念の正体も判明するラストは
「それは叫ぶ」とは全く違う、ゾクゾクする怖さです。
すでに第3弾も刊行されているようで、またまた楽しみですね。
しかし、語呂合わせの良い電話番号って何番だろうか?(笑
江神二郎、火村英生に続く、異才の名探偵の事件簿、待望の第2弾!
年齢不詳の探偵・濱地健三郎には、鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。
新宿にある彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の
強面刑事も秘かに足を運ぶほどだ。助手の志摩ユリエは、得技を活かして、
探偵が視たモノの特徴を絵に描きとめていく―。郊外で猫と2人暮らしをしていた姉の失踪の謎と、
弟が見た奇妙な光景が意外な形でつながる(「姉は何処」)。資産家が溺死した事件の犯人は、
若き妻か、懐具合が悪い弟か?人間の哀しい性が炙り出される(「浴槽の花婿」)など、
驚きと謀みに満ちた7篇を収録。ミステリの名手が、満を持して生み出した名探偵。
待望のシリーズ、第2弾!
江神二郎、火村英生に続く、というところに違和感を持ってしまいました(苦笑
(作品と関係無く、すいません。)
ソラもいれば、地蔵坊(笑)も居ます。
とはいえ、火村英生シリーズから派生して、こうして探偵役が登場するというのは
これまでには確かに無かったですね。
島田荘司先生の、犬坊里美とか意識してたりとかあるんでしょうか。
本作所収で最もホラーなのは「それは叫ぶ」
ホラー小説はあまり読んだことが無いのですが、基本的には「論理じかげの奇談」でも、
合理的解釈も成り立たないものが、ある意味一番怖いのではないかと思います。
なので、最も恐ろしいのは、こうした正体不明の、濱地のいう「幽霊の屑」ではなかろうか。
解説にもあるように、本作はホラー小説ながら、探偵小説でもあるんですよね。
濱地の持つ不思議な能力のみならず、探偵能力もしっかりと発揮されているんですが、
上記の作品のみは、全くそんなことは無いので、探偵小説として考えた場合、
極めて異質な作品ですが、心霊探偵シリーズとしてみると、ついに来たとも思えます。
「ホームに佇む」もやや似た印象のある作品です。
依頼人の吉竹と、怪奇を結びつける「合理的」理由は無く、彼が「視えた」から。
実際そのくらいの理由なんでしょうね。よく視えても、視線を合わせるなとか
聞いたりします。
そこをいくと、「お家がだんだん遠くなる」「ミステリー研究会の幽霊」は
しっかり探偵小説です。理由もしっかりあり、終わり方もよい。
ミステリー的な要素を一番含んでいるのは「姉は何処」でしょうか。
私一番のオススメです。
姉(の思念)の行動を見て、見事な名推理をみせる濱地と
一番のホラーを体験してしまった助手のユリエ。
最後の1行は中々怖いですよね。
直球の怖さではなく、変化球的怖さなのが「浴槽の花婿」
これは意表を突かれました。
犯人を言い当てるでも無く、アリバイを崩すでもなく、確かに幽霊的なものが
語っていることを濱地は刑事に伝えますが、それだけ。
その後の記述で、読者は犯人がわかるも、あの幽霊的な思念の正体も判明するラストは
「それは叫ぶ」とは全く違う、ゾクゾクする怖さです。
すでに第3弾も刊行されているようで、またまた楽しみですね。
しかし、語呂合わせの良い電話番号って何番だろうか?(笑
まほり [高田大介]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。
卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。
上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。
この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村と出身地が近かった裕は、
夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた
昔なじみの飯山香織と出会い、ともにフィールドワークを始めるが、
調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ!
謎が謎を呼ぶ。その解明の鍵は古文書に……?
主人公裕は、膨大な古文書のデータの中から上州に伝わる子間引きの風習や毛利神社や
琴平神社の社名に注目し、資料と格闘する。裕がそこまでするには理由があった。
父が決して語らなかった母親の系譜に関する手がかりを見つけるためでもあったのだ。
大した成果が得られぬまま、やがて夏も終わりに近づくころ、
巣守郷を独自調査していた少年・淳が警察に補導されてしまう。
郷に監禁された少女を救おうとする淳と、裕の母親の出自を探す道が交差する時――。
宮部みゆき、東雅夫、東えりか、杉江松絶賛の、
前代未聞の伝奇ホラーミステリーにして青春ラブストーリー!
感動のラストまで目が離せない、超弩級エンターテインメント。
感動のラストという解説文が付いてますが、本作のミステリ的側面が
一番強かったのが、このいわゆる「最後の一撃」だと思いました。
というのも、ある程度の結末が見えているものの、
それを、言ってみればいわゆる「状況証拠」で固めていく過程が、
本書は続いていきます。
古文書の捜索と解読、そして伝承・口承(こちらは協力得られてませんが)、
歴史学(文献史学)と考古学、そして民俗学、これらの学問手法を用いて、
蛇の目紋と、さらにその先の謎を解いていきます。
私個人は、この謎解きはそれなりに楽しめたのですが、
人を選ぶミステリというか、小説ですねえ。
個人的には解説にあるように、飯山香織とのラブストーリーというのが
一番しっくりくるかもしれません。
二人の関係進展が真相より楽しみでした(笑)
しかし、上州のどこなのか・・・あんなに方言は出ないだろう。
そこがものすごく違和感を感じました。
![まほり 上 (角川文庫) [ 高田 大介 ] まほり 上 (角川文庫) [ 高田 大介 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0491/9784041120491_1_3.jpg?_ex=128x128)
大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。
卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。
上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。
この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村と出身地が近かった裕は、
夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた
昔なじみの飯山香織と出会い、ともにフィールドワークを始めるが、
調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ!
謎が謎を呼ぶ。その解明の鍵は古文書に……?
主人公裕は、膨大な古文書のデータの中から上州に伝わる子間引きの風習や毛利神社や
琴平神社の社名に注目し、資料と格闘する。裕がそこまでするには理由があった。
父が決して語らなかった母親の系譜に関する手がかりを見つけるためでもあったのだ。
大した成果が得られぬまま、やがて夏も終わりに近づくころ、
巣守郷を独自調査していた少年・淳が警察に補導されてしまう。
郷に監禁された少女を救おうとする淳と、裕の母親の出自を探す道が交差する時――。
宮部みゆき、東雅夫、東えりか、杉江松絶賛の、
前代未聞の伝奇ホラーミステリーにして青春ラブストーリー!
感動のラストまで目が離せない、超弩級エンターテインメント。
感動のラストという解説文が付いてますが、本作のミステリ的側面が
一番強かったのが、このいわゆる「最後の一撃」だと思いました。
というのも、ある程度の結末が見えているものの、
それを、言ってみればいわゆる「状況証拠」で固めていく過程が、
本書は続いていきます。
古文書の捜索と解読、そして伝承・口承(こちらは協力得られてませんが)、
歴史学(文献史学)と考古学、そして民俗学、これらの学問手法を用いて、
蛇の目紋と、さらにその先の謎を解いていきます。
私個人は、この謎解きはそれなりに楽しめたのですが、
人を選ぶミステリというか、小説ですねえ。
個人的には解説にあるように、飯山香織とのラブストーリーというのが
一番しっくりくるかもしれません。
二人の関係進展が真相より楽しみでした(笑)
しかし、上州のどこなのか・・・あんなに方言は出ないだろう。
そこがものすごく違和感を感じました。
![まほり 上 (角川文庫) [ 高田 大介 ] まほり 上 (角川文庫) [ 高田 大介 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0491/9784041120491_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 704 円
カルトからの大脱出 [鯨統一郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
教祖V.S.マジシャン!?
カルト宗教に消えた娘を救うため、
信者たちに「本当の奇跡」を見せろ!
保険営業員として働きながら高校生の娘・あすかと二人で楽しく暮らしていた好美。
だがある日、あすかは家を飛び出し、謎のカルト教団〈新しい神のルール〉の中へと消えた。
憔悴する好美に救いの手を差し伸べたのは、保険の顧客であるマジシャンの谺だった。
娘奪還のために谺が用意した奇策とは? 大・逆・転ミステリー!
本書が書き下ろしで、昨年末に刊行されたというのは、
鯨先生の意図がどこにあるのかはわかりませんが、時事的な問題をかなり真正面から
取り上げた作品であるのは、間違いありません。
あすかが入信する動機も、確かに納得できるところはあるものの、
それだけで?!と感じたり、当たり前ではないことを、さも当たり前のように話す
信者やあすかの同級生、好美が驚くのも無理ありません。
最後の大逆転、これいくつか意味がありますよね。
現実問題として、こんな大舞台で教祖たちの嘘を暴くことは、まず難しいと思いますが、
まあ小説だから良いのかなと。
もう1つの「大逆転」はミステリとしての趣向で、ここは純粋に上手い。
ミステリとして本書を見ると、関係者の死などはあからさまに途中で語られているので、
そうした点でのミステリらしさは楽しめない一方で、
この最後のトリックは、お見事だなと。
<スリーバレー>シリーズ、そろそろ出ないでしょうかねえ。
教祖V.S.マジシャン!?
カルト宗教に消えた娘を救うため、
信者たちに「本当の奇跡」を見せろ!
保険営業員として働きながら高校生の娘・あすかと二人で楽しく暮らしていた好美。
だがある日、あすかは家を飛び出し、謎のカルト教団〈新しい神のルール〉の中へと消えた。
憔悴する好美に救いの手を差し伸べたのは、保険の顧客であるマジシャンの谺だった。
娘奪還のために谺が用意した奇策とは? 大・逆・転ミステリー!
本書が書き下ろしで、昨年末に刊行されたというのは、
鯨先生の意図がどこにあるのかはわかりませんが、時事的な問題をかなり真正面から
取り上げた作品であるのは、間違いありません。
あすかが入信する動機も、確かに納得できるところはあるものの、
それだけで?!と感じたり、当たり前ではないことを、さも当たり前のように話す
信者やあすかの同級生、好美が驚くのも無理ありません。
最後の大逆転、これいくつか意味がありますよね。
現実問題として、こんな大舞台で教祖たちの嘘を暴くことは、まず難しいと思いますが、
まあ小説だから良いのかなと。
もう1つの「大逆転」はミステリとしての趣向で、ここは純粋に上手い。
ミステリとして本書を見ると、関係者の死などはあからさまに途中で語られているので、
そうした点でのミステリらしさは楽しめない一方で、
この最後のトリックは、お見事だなと。
<スリーバレー>シリーズ、そろそろ出ないでしょうかねえ。
清里高原殺人別荘 [梶龍雄]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
冬、シーズンオフの別荘地・清里──〝内側から開かない窓〟を設えた奇妙な別荘に、
五人の男女が忍び込んだ。彼らがある連絡を待って四日間潜むその隠れ家には、意外な先客が。
密室での刺殺、毒殺、そして撲殺……相次ぐ死によって狂い始めた歯車。
館に潜む殺人鬼の仕業か? 逆転に次ぐ逆転! 伏線の魔術師・カジタツが巧緻の限りを
尽くした極上の「雪の山荘」ミステリ。待望の初文庫化!
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクションの2として発売された本作。
楽天ブックスのお気に入り的な所に出てきたので、購入してみました。
なんといっても「雪の山荘」に惹かれました。
本作は、よくよく考えてみると、犯人はある意味すぐ目星はつくのですが
(トリックやアリバイはともかく)
5人の男女が一体何の目的で、この別荘に忍び込んだのか、
彼彼女たちは一体何をやってきたのか、
この辺りを謎に包んでいることで(途中明らかになるのですが)
上手く事件の構図を隠しています。
ミステリにおける「雪の山荘」というのは、その山荘になぜか集められ、
次々に殺されていき、最後に探偵役が謎を解く、というのが
まあステレオタイプ的ですが、常道だと思います。
犯人当て、つまりは「フーダニット」なんでしょう。
しかし本書は、この体裁を取る姿勢を見せつつも、
上記書いたように、そもそもこの山荘になぜ彼彼女たちが居るのか、
時折電話してくる沢木なる男は誰なのか、
その辺りに謎があるため、フーダニットでは終わらず、
解説の阿津川辰海さんが書かれているように、ホワットダニットであるというのは
全くその通りで、流石です。
しかも、フーダニット&ホワットダニットいずれも楽しめる作品であり、
かつ第7章では探偵役の謎解きと、ある種のどんでん返しまで仕掛けてあります。
最後の仕掛けは驚きました。こんな結末とは。
ところで、阿津川辰海さんは『本格ミステリ・フラッシュバック』で
梶さんを知ったと書かれているのですが、私も読んだけど覚えてない(苦笑)
しかしこういう作家さんが居た事を知れたのは、非常に良かったです。
これからまた読む楽しみが増えました。
さすが徳間文庫さん、ありがとうございます!

冬、シーズンオフの別荘地・清里──〝内側から開かない窓〟を設えた奇妙な別荘に、
五人の男女が忍び込んだ。彼らがある連絡を待って四日間潜むその隠れ家には、意外な先客が。
密室での刺殺、毒殺、そして撲殺……相次ぐ死によって狂い始めた歯車。
館に潜む殺人鬼の仕業か? 逆転に次ぐ逆転! 伏線の魔術師・カジタツが巧緻の限りを
尽くした極上の「雪の山荘」ミステリ。待望の初文庫化!
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクションの2として発売された本作。
楽天ブックスのお気に入り的な所に出てきたので、購入してみました。
なんといっても「雪の山荘」に惹かれました。
本作は、よくよく考えてみると、犯人はある意味すぐ目星はつくのですが
(トリックやアリバイはともかく)
5人の男女が一体何の目的で、この別荘に忍び込んだのか、
彼彼女たちは一体何をやってきたのか、
この辺りを謎に包んでいることで(途中明らかになるのですが)
上手く事件の構図を隠しています。
ミステリにおける「雪の山荘」というのは、その山荘になぜか集められ、
次々に殺されていき、最後に探偵役が謎を解く、というのが
まあステレオタイプ的ですが、常道だと思います。
犯人当て、つまりは「フーダニット」なんでしょう。
しかし本書は、この体裁を取る姿勢を見せつつも、
上記書いたように、そもそもこの山荘になぜ彼彼女たちが居るのか、
時折電話してくる沢木なる男は誰なのか、
その辺りに謎があるため、フーダニットでは終わらず、
解説の阿津川辰海さんが書かれているように、ホワットダニットであるというのは
全くその通りで、流石です。
しかも、フーダニット&ホワットダニットいずれも楽しめる作品であり、
かつ第7章では探偵役の謎解きと、ある種のどんでん返しまで仕掛けてあります。
最後の仕掛けは驚きました。こんな結末とは。
ところで、阿津川辰海さんは『本格ミステリ・フラッシュバック』で
梶さんを知ったと書かれているのですが、私も読んだけど覚えてない(苦笑)
しかしこういう作家さんが居た事を知れたのは、非常に良かったです。
これからまた読む楽しみが増えました。
さすが徳間文庫さん、ありがとうございます!

梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション2 清里高原殺人別荘 (徳間文庫 トクマの特選!)
- 作者: 梶龍雄
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2023/02/08
- メディア: Kindle版
11文字の檻-青崎有吾短編集成 [青崎有吾]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録
大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、
全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、
人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、
どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、
力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、
著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。
以下、ネタバレ少しあり。
アンソロジーものが多いので、それを知らないと???な短編もいくつか
ありますが、表題作がそれを吹っ飛ばしてくれます。
「your name」は『長短編!どんでん返し』収録の一編。
登場する探偵が良いですね。このトリックというか、謎解きの一撃は、
ワープロ時代から通じるもので、容疑者を動揺させることはまず間違いないです。
「噤ヶ森の硝子屋敷」。著者の解説にもあるように、新本格30周年を記念した
アンソロジーに収録された一編。中村青司を最大限リスペクトした作品で、
本書愁眉かもしれません。墨壺深紅なる奇妙な建築家の創造した数々の奇妙な屋敷。
そこに登場する、薄気味良悪という、本名か?と思わせる名前の探偵。
何でも、探偵組合的なもの、探偵への連絡役や差配を行う仲介屋も登場。
あっという間に謎を解きます(笑
星影龍三みたいだ。
この辺りは、この墨壺深紅の<館>シリーズとしてシリーズ化してほしいですね。
トリックは言われてみれば確かにその通りだという、盲点を上手く突いてます。
「飽くまで」は、東野圭吾さんの傑作『悪意』に通じるものがある、
究極的なホワイダニット作品の1作でしょう。
「11文字の檻」は世界観と、この監獄から逃れる11文字の日本語の2つが
アイロニーというか、真逆であるというところが非常に面白く、かつ
謎解きの過程も一歩一歩の詰め将棋的な面があり楽しめました。
「恋澤姉妹」、百合アンソロジーに収録された一編ですが、
これが一番謎だったかも。主人公の目的はともかく、この姉妹は何なのか?と。
とんでもなく強いのはわかるんですけどね。
青崎先生、そろそろ<館>シリーズ新作もよろしくお願いします!
なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録
大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、
全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、
人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、
どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、
力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、
著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。
以下、ネタバレ少しあり。
アンソロジーものが多いので、それを知らないと???な短編もいくつか
ありますが、表題作がそれを吹っ飛ばしてくれます。
「your name」は『長短編!どんでん返し』収録の一編。
登場する探偵が良いですね。このトリックというか、謎解きの一撃は、
ワープロ時代から通じるもので、容疑者を動揺させることはまず間違いないです。
「噤ヶ森の硝子屋敷」。著者の解説にもあるように、新本格30周年を記念した
アンソロジーに収録された一編。中村青司を最大限リスペクトした作品で、
本書愁眉かもしれません。墨壺深紅なる奇妙な建築家の創造した数々の奇妙な屋敷。
そこに登場する、薄気味良悪という、本名か?と思わせる名前の探偵。
何でも、探偵組合的なもの、探偵への連絡役や差配を行う仲介屋も登場。
あっという間に謎を解きます(笑
星影龍三みたいだ。
この辺りは、この墨壺深紅の<館>シリーズとしてシリーズ化してほしいですね。
トリックは言われてみれば確かにその通りだという、盲点を上手く突いてます。
「飽くまで」は、東野圭吾さんの傑作『悪意』に通じるものがある、
究極的なホワイダニット作品の1作でしょう。
「11文字の檻」は世界観と、この監獄から逃れる11文字の日本語の2つが
アイロニーというか、真逆であるというところが非常に面白く、かつ
謎解きの過程も一歩一歩の詰め将棋的な面があり楽しめました。
「恋澤姉妹」、百合アンソロジーに収録された一編ですが、
これが一番謎だったかも。主人公の目的はともかく、この姉妹は何なのか?と。
とんでもなく強いのはわかるんですけどね。
青崎先生、そろそろ<館>シリーズ新作もよろしくお願いします!
三世代探偵団 生命の旗がはためくとき [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
女子高生の令奈は通学途中、ふと覗き込んだ車中で男が刺殺されているのを発見する。
なぜかその男は、駆け落ちして姿を消した姉・美樹の名前が書かれたメモを持っていた。
姉の身に何かあったのかと心配する令奈。一方で、美樹は駆け落ちした婚約者が
裏組織の息子であることを知ってしまい、口封じのため命を狙われていた。
さらに組織はあることをきっかけに、対立相手と武力闘争を起こそうとしていて……。
天才画家の祖母、マイペースな母と暮らす娘の有里。友人の家族が巻き込まれた抗争に、
三世代が立ち向かう!
相変わらずの赤川節。
裏組織の本気の抗争って結構赤川作品に登場しますよね。
それを暴力や武力で解決しないのが、赤川先生の神髄というか、
赤川作品の根幹の1つなのだろうと。
次々と新たな登場人物が出てきますが、全く混乱しないところも赤川作品ならでは。
ところで三世代の中間・文乃はマイペースと紹介されていますが、
ある意味登場人物の中では数少ない常識人ですよね(笑
常識というか、ある意味人間らしいというか、そういう思いや判断を下していると思います。
私だけのけ者にして!とか私には何も知らせないで!とか、シリーズでそうした発言を
する文乃ですが、これは幸代や娘の有里があまりにぶっ飛んでるから。
何しでかすかわからないので、家族として共有しないとマズイという危機感から、と
私は思いましたが、買いかぶりすぎかも(笑
ラストは大団円とはいかないまでも、落ち着くところに落ち着く結末。
次作は、村上刑事を巡る逆の鞘当ても語られるかも。
女子高生の令奈は通学途中、ふと覗き込んだ車中で男が刺殺されているのを発見する。
なぜかその男は、駆け落ちして姿を消した姉・美樹の名前が書かれたメモを持っていた。
姉の身に何かあったのかと心配する令奈。一方で、美樹は駆け落ちした婚約者が
裏組織の息子であることを知ってしまい、口封じのため命を狙われていた。
さらに組織はあることをきっかけに、対立相手と武力闘争を起こそうとしていて……。
天才画家の祖母、マイペースな母と暮らす娘の有里。友人の家族が巻き込まれた抗争に、
三世代が立ち向かう!
相変わらずの赤川節。
裏組織の本気の抗争って結構赤川作品に登場しますよね。
それを暴力や武力で解決しないのが、赤川先生の神髄というか、
赤川作品の根幹の1つなのだろうと。
次々と新たな登場人物が出てきますが、全く混乱しないところも赤川作品ならでは。
ところで三世代の中間・文乃はマイペースと紹介されていますが、
ある意味登場人物の中では数少ない常識人ですよね(笑
常識というか、ある意味人間らしいというか、そういう思いや判断を下していると思います。
私だけのけ者にして!とか私には何も知らせないで!とか、シリーズでそうした発言を
する文乃ですが、これは幸代や娘の有里があまりにぶっ飛んでるから。
何しでかすかわからないので、家族として共有しないとマズイという危機感から、と
私は思いましたが、買いかぶりすぎかも(笑
ラストは大団円とはいかないまでも、落ち着くところに落ち着く結末。
次作は、村上刑事を巡る逆の鞘当ても語られるかも。
死の黙劇 山沢晴雄セレクション [山沢晴雄]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
月のない夜、華奢な欄干を破り、一台のタクシーが崖下に転落した。
運転手は一命を取り留めたが、乗客の男は即死する。死者は顔いちめんに
包帯を巻きつけていたものの、その下にはなぜか傷ひとつなかった。
さらに死者の所持品からは探偵砧順之介の名刺が発見されたが、
その名刺を死者が所持することは論理上不可能だった――
奇怪な謎が読者を魅了する表題作ほか、書籍未収録の犯人当て短編などを所収。
職業作家の道を選ばず、生涯に亙って緻密極まりない作品を執筆、
巨匠鮎川哲也も畏敬した本格推理作家、山沢晴雄。
その作風を一望できる作品を精選して贈る〈山沢晴雄セレクション〉。
更新がちょっと滞りました。
御無沙汰しております。
本作は、今年刊行された『このミス』か『本格ミステリ』でランクインされていた
作家さんで、聞いたことないなあと思い、購入しました。
これははっきり言って、素晴らしい短編集です。
とにかく読者を騙すというのを嬉々として、書かれているなと感じます。
名探偵・砧順之介が登場する作品が本作には収められますが、
やはり愁眉は「死の黙劇」でしょうか。アリバイトリックに、包帯を巻いた謎の男。
さらには犯人が予想しえない事象まで、とにかく本格要素が詰め込まれています。
砧登場作品ではアリバイ崩しが非常に多いですね。しかも多種多様で実に面白い。
同じようなトリックに感じる、いや実際あるかもですが、そう感じさせないうまさがある。
意味ありげな現場の絵図を登場させ、密室トリックかとミスリード
させる「見えない時間」も素晴らしい。
これも極めて単純なアリバイトリックなんですが、そこを上手く隠しているんですよね。
後半はロッカーの山沢の異名を取る(?)、とにかく色々なロッカーが事件に登場。
よくロッカーだけでこれだけ考えたなと。しかも犯人当て!
「ふしぎな死体」は、密室(ロッカー)、アリバイ、予期せぬ出来事の3つが揃った快作。
私のオススメは「京都発“あさしお7号”」。
このタイトルから、どう考えてもトラベルミステリーだと思います。
だから当然時刻表も登場します。
しかし、一番肝心のアリバイトリック、それを解く鍵が人間のある思い込みなんですよね。
これは驚きました。
あれだけ時刻表を駆使して、見事なトリックを使ったのに、最後の一撃が
思い込みという、なんということだ。
とにかくアリバイトリックにこだわり続けた作者の見事な作品集。
読んで損はありません。

月のない夜、華奢な欄干を破り、一台のタクシーが崖下に転落した。
運転手は一命を取り留めたが、乗客の男は即死する。死者は顔いちめんに
包帯を巻きつけていたものの、その下にはなぜか傷ひとつなかった。
さらに死者の所持品からは探偵砧順之介の名刺が発見されたが、
その名刺を死者が所持することは論理上不可能だった――
奇怪な謎が読者を魅了する表題作ほか、書籍未収録の犯人当て短編などを所収。
職業作家の道を選ばず、生涯に亙って緻密極まりない作品を執筆、
巨匠鮎川哲也も畏敬した本格推理作家、山沢晴雄。
その作風を一望できる作品を精選して贈る〈山沢晴雄セレクション〉。
更新がちょっと滞りました。
御無沙汰しております。
本作は、今年刊行された『このミス』か『本格ミステリ』でランクインされていた
作家さんで、聞いたことないなあと思い、購入しました。
これははっきり言って、素晴らしい短編集です。
とにかく読者を騙すというのを嬉々として、書かれているなと感じます。
名探偵・砧順之介が登場する作品が本作には収められますが、
やはり愁眉は「死の黙劇」でしょうか。アリバイトリックに、包帯を巻いた謎の男。
さらには犯人が予想しえない事象まで、とにかく本格要素が詰め込まれています。
砧登場作品ではアリバイ崩しが非常に多いですね。しかも多種多様で実に面白い。
同じようなトリックに感じる、いや実際あるかもですが、そう感じさせないうまさがある。
意味ありげな現場の絵図を登場させ、密室トリックかとミスリード
させる「見えない時間」も素晴らしい。
これも極めて単純なアリバイトリックなんですが、そこを上手く隠しているんですよね。
後半はロッカーの山沢の異名を取る(?)、とにかく色々なロッカーが事件に登場。
よくロッカーだけでこれだけ考えたなと。しかも犯人当て!
「ふしぎな死体」は、密室(ロッカー)、アリバイ、予期せぬ出来事の3つが揃った快作。
私のオススメは「京都発“あさしお7号”」。
このタイトルから、どう考えてもトラベルミステリーだと思います。
だから当然時刻表も登場します。
しかし、一番肝心のアリバイトリック、それを解く鍵が人間のある思い込みなんですよね。
これは驚きました。
あれだけ時刻表を駆使して、見事なトリックを使ったのに、最後の一撃が
思い込みという、なんということだ。
とにかくアリバイトリックにこだわり続けた作者の見事な作品集。
読んで損はありません。

死の黙劇: 山沢晴雄セレクション (創元推理文庫 M や 8-1)
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2021/07/29
- メディア: 文庫
追憶(recollection)田沢湖からの手紙 [中町信]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
妻は殺された--
封印された呪いの扉を開いて……。
解っていても騙される!
叙述トリックの鬼才が仕掛ける騙しの迷宮にようこそ!
一本の電話が、彼を栄光の頂点から地獄へと突き落とした。
脳外科学会で、最先端技術の論文発表を成功させた大学助教授・堂上富士夫に届いたのは、
妻が田沢湖で溺死したという報せだった。彼女は中学時代に自らが遭遇した奇妙な
密室殺人の真相を追って同窓会に参加していたのだった。現地に飛んだ堂上に対し
口を重く閉ざした関係者たちは、次々に謎の死に見舞われる。
(旧題「田沢湖殺人事件」)
以下、ネタバレがあります。
中町信先生作品は久しぶりです。
かつて創元推理文庫で復刊した『三幕の殺意』、そして光文社文庫で復刊した
『暗闇の殺意』と『偽りの殺意』を拙ブログでも紹介しました。
今回、徳間文庫でかつて刊行された、いわゆる「湖」シリーズの改題し、刊行。
シリーズは「死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 」とありますね。
これ、タイトルに入れるべきなのか微妙に悩みつつ、ひとまずこちらで紹介しました。
ところで、徳間文庫は他にも過去に復刊しているのを今回知りましたので、
こちらも購入したいと思います。
このミステリ、密室、アリバイ崩し、トラベルミステリ、過去の事件を解き明かす、
とにかく本格要素が詰め込まれている、とてもバラエティに富む作品です。
「15年前の12月の事件」、この謎を追ったがために、堂上富士夫の妻・美保は
殺されたのではないか?
冒頭からこの「15年前の12月の事件」がキーワードとして示され、
物語も、この過去の事件を解き明かす過程で、美保の同級生が次々と殺されていきます。
「15年前の12月の事件」とは何なのか?美保が解き明かした真実とは何か?
この謎は(不謹慎ですが)非常に魅力的で、次々と新たな登場人物も出てきますが、
グイグイ物語に惹き込まれます。
しかし、しかし、この事件の謎はなんと物語中盤で解き明かされてしまうのです。
では、一体後半は何が書かれるのか?
元々の本書のタイトルは『田沢湖殺人事件』、今回の改題は『追憶』
これ、完全にミスリードですよね(笑
いや実に上手い。
そして美保が遺していたという手紙、これを読んだ秋庭ちか子の
「信じられないような、恐ろしいこと」という言葉の意味、これ、
上手くミスディレクションされています。
それから谷原卓二が堂上に急に会いに来た場面。何か話があったにも関わらず、
同窓会で撮影したスナップ写真と4枚のフィルムを渡して、早々に電車に乗ってしまう・・・
犯人である人物が一緒に居たから、というのは、なるほど納得できる理由ですが、
ここもかなり上手くミスリードさせています。
叙述トリックとは言えないものの、堂上視点でこの箇所は書かれているので、
この渡したものの重要性を非常に上手く隠しています。
ラストが美保の手紙が終わるのは非常に余韻を残す終わり方で良いのですが・・・
問題は、本作で描かれたもう1つの事件の真の動機。
真犯人にとって、確かに致命的のように思えますが、
美保の病気は、再発とあります。
それは真犯人がどうしても隠さなければならないものだったのかと。
5年前の手術は成功した、しかし病気が再発した。
この点がどうも動機としてどうなんだろうかと、個人的に思いました。
ただ、この病気についてそこまで深く語られていないので、
まあ許容範囲でしょう。
それよりも、このいくつもの本格要素を詰め込み、読者を巧みに騙した本書、
是非とも一読してほしいです。

妻は殺された--
封印された呪いの扉を開いて……。
解っていても騙される!
叙述トリックの鬼才が仕掛ける騙しの迷宮にようこそ!
一本の電話が、彼を栄光の頂点から地獄へと突き落とした。
脳外科学会で、最先端技術の論文発表を成功させた大学助教授・堂上富士夫に届いたのは、
妻が田沢湖で溺死したという報せだった。彼女は中学時代に自らが遭遇した奇妙な
密室殺人の真相を追って同窓会に参加していたのだった。現地に飛んだ堂上に対し
口を重く閉ざした関係者たちは、次々に謎の死に見舞われる。
(旧題「田沢湖殺人事件」)
以下、ネタバレがあります。
中町信先生作品は久しぶりです。
かつて創元推理文庫で復刊した『三幕の殺意』、そして光文社文庫で復刊した
『暗闇の殺意』と『偽りの殺意』を拙ブログでも紹介しました。
今回、徳間文庫でかつて刊行された、いわゆる「湖」シリーズの改題し、刊行。
シリーズは「死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 」とありますね。
これ、タイトルに入れるべきなのか微妙に悩みつつ、ひとまずこちらで紹介しました。
ところで、徳間文庫は他にも過去に復刊しているのを今回知りましたので、
こちらも購入したいと思います。
このミステリ、密室、アリバイ崩し、トラベルミステリ、過去の事件を解き明かす、
とにかく本格要素が詰め込まれている、とてもバラエティに富む作品です。
「15年前の12月の事件」、この謎を追ったがために、堂上富士夫の妻・美保は
殺されたのではないか?
冒頭からこの「15年前の12月の事件」がキーワードとして示され、
物語も、この過去の事件を解き明かす過程で、美保の同級生が次々と殺されていきます。
「15年前の12月の事件」とは何なのか?美保が解き明かした真実とは何か?
この謎は(不謹慎ですが)非常に魅力的で、次々と新たな登場人物も出てきますが、
グイグイ物語に惹き込まれます。
しかし、しかし、この事件の謎はなんと物語中盤で解き明かされてしまうのです。
では、一体後半は何が書かれるのか?
元々の本書のタイトルは『田沢湖殺人事件』、今回の改題は『追憶』
これ、完全にミスリードですよね(笑
いや実に上手い。
そして美保が遺していたという手紙、これを読んだ秋庭ちか子の
「信じられないような、恐ろしいこと」という言葉の意味、これ、
上手くミスディレクションされています。
それから谷原卓二が堂上に急に会いに来た場面。何か話があったにも関わらず、
同窓会で撮影したスナップ写真と4枚のフィルムを渡して、早々に電車に乗ってしまう・・・
犯人である人物が一緒に居たから、というのは、なるほど納得できる理由ですが、
ここもかなり上手くミスリードさせています。
叙述トリックとは言えないものの、堂上視点でこの箇所は書かれているので、
この渡したものの重要性を非常に上手く隠しています。
ラストが美保の手紙が終わるのは非常に余韻を残す終わり方で良いのですが・・・
問題は、本作で描かれたもう1つの事件の真の動機。
真犯人にとって、確かに致命的のように思えますが、
美保の病気は、再発とあります。
それは真犯人がどうしても隠さなければならないものだったのかと。
5年前の手術は成功した、しかし病気が再発した。
この点がどうも動機としてどうなんだろうかと、個人的に思いました。
ただ、この病気についてそこまで深く語られていないので、
まあ許容範囲でしょう。
それよりも、このいくつもの本格要素を詰め込み、読者を巧みに騙した本書、
是非とも一読してほしいです。

死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 追憶(recollection) 田沢湖からの手紙 (徳間文庫)
- 作者: 中町信
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2022/01/12
- メディア: 文庫
Yの悲劇 [海外ミステリ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。
警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。
解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、
ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは?
巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、
オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!
ドルリー・レーン4部作の2作目。
古典的名作とは、いつ読んでも抜群に面白いです。
とはいえ、実は初読という、ミステリファンにあるまじき振る舞いです(汗
古くさい部分ももちろんあります。
しかし、それはこれだけ時代が経っているのだから、仕方ない面があります。
しかしそこはミステリの根幹には関係ありません。
本作は今読んでも、十二分に謎解きを楽しむことができます。
もうありとあらゆる方々が、本作品について語られているし、分析もされているし、
もう私ごときが何かを書くのもおこがましい限りですが・・・
犯人のヒントは、ルイザ・キャンピオンの証言でほぼ全て出そろっています。
しかし、それでも犯人が分からない。すごい構成です。
また、レーンがなぜか推理を拒否する態度を示しつつ、
最後に語る真相と、ある事件の真相があまりに見事すぎて脱帽です。
特に犯人が、想定を超えた行動、「概便の指示」に反した行動を取るという、
レーンにとって驚愕の事態が発生し、かつそれをレーンの推理で知る読者も
、つまり私も驚愕しました。
ここから、物語は全く別の方向に向かっていくのです。
ここはもう凄いの一言でした。
前にも書きましたが、○○の悲劇、アルファベットを使用した等の本歌取りの作品
を読んだ方、原点の古典的傑作をぜひ読んで下さい。
![Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) [ エラリー・クイーン ] Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) [ エラリー・クイーン ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4450/9784488104450_1_3.jpg?_ex=128x128)
ニューヨーク湾に浮かんだ死体は、行方不明だった大富豪ハッター家の当主ヨークのものだった。
警察は自殺と結論づけるが、二ヶ月後、ハッター邸で毒物混入事件が発生。
解決を要請された名優にして名探偵のドルリー・レーンも手をつかねるうち、
ついには屋敷で殺人が……。一族を相次ぎ襲う惨劇の恐るべき真相とは?
巨匠クイーンのレーン四部作屈指の傑作であり、
オールタイムベスト常連の古典名作ミステリが21世紀によみがえる!
ドルリー・レーン4部作の2作目。
古典的名作とは、いつ読んでも抜群に面白いです。
とはいえ、実は初読という、ミステリファンにあるまじき振る舞いです(汗
古くさい部分ももちろんあります。
しかし、それはこれだけ時代が経っているのだから、仕方ない面があります。
しかしそこはミステリの根幹には関係ありません。
本作は今読んでも、十二分に謎解きを楽しむことができます。
もうありとあらゆる方々が、本作品について語られているし、分析もされているし、
もう私ごときが何かを書くのもおこがましい限りですが・・・
犯人のヒントは、ルイザ・キャンピオンの証言でほぼ全て出そろっています。
しかし、それでも犯人が分からない。すごい構成です。
また、レーンがなぜか推理を拒否する態度を示しつつ、
最後に語る真相と、ある事件の真相があまりに見事すぎて脱帽です。
特に犯人が、想定を超えた行動、「概便の指示」に反した行動を取るという、
レーンにとって驚愕の事態が発生し、かつそれをレーンの推理で知る読者も
、つまり私も驚愕しました。
ここから、物語は全く別の方向に向かっていくのです。
ここはもう凄いの一言でした。
前にも書きましたが、○○の悲劇、アルファベットを使用した等の本歌取りの作品
を読んだ方、原点の古典的傑作をぜひ読んで下さい。
![Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) [ エラリー・クイーン ] Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) [ エラリー・クイーン ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4450/9784488104450_1_3.jpg?_ex=128x128)
Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫) [ エラリー・クイーン ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,056 円
逢魔が刻 腕貫探偵リブート [西澤保彦]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
神出鬼没の公務員探偵「腕貫さん」を“だーりん”と呼び慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ。
同級生の小泊瀬海人から「親族が関わった殺人事件を題材にミステリ小説を書いてみたい」
と相談され、大乗り気でストーリー作りに着手。ユリエは腕貫さん顔負けの名推理を披露するが、
行き詰まって相談した腕貫さんから、
ユリエに厳しい駄目出しが…・・・!?(「ユリエの本格ミステリ講座」)
今作ではほかに、鳥遊葵、阿藤江梨子、安達真緒、水谷川刑事etc.……
シリーズ既刊でお馴染みの面々も集結。喪主による殺人、連続不審死、留学生監禁など、
腕貫シリーズのホームタウン櫃洗市で続発する、禍々しくも珍妙な事件の真相は!?
解説の浜崎広江さん(今井書店)も激賞の一作、乞うご期待!
腕貫探偵シリーズの文庫版最新作。
とはいえ、肝心の腕貫さんはほとんど登場しません(笑
櫃洗市を舞台にした別のミステリ短編集と言ってもいいですね。
まあスピンオフですね。『必然という名の偶然』に近いかな。
江戸川コナンの住む米花町が、凄まじい勢いで犯罪が発生する街として、
犯罪者が多すぎる街という風刺がありますが、
この櫃洗市は、探偵が多すぎる街、かもしれません。
腕貫さんを「ダーリン」と慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ、
大富豪探偵の異名を取る(?)月夜見ひろゑ、
櫃洗署の刑事さんも中々に優秀なので、この市で犯罪を起こすのはマヌケでしょう。
表題作は、謎が解けていく過程も面白いですが、やはり最後に明かされる事実は
中々に衝撃です。櫃洗大学に勤める久賀谷先生が推理を巡らせる訳ですが、
この大学、大丈夫か?!と心配してしまいます。
問題作という、私が一番わからなかったのは「マインド・ファック・キラー」
最後まで読んでも分からなかった。
櫃洗との無理矢理くっつけている感もあり、櫃洗市シリーズより、
西澤作品のノンシリーズ短編集収録の方が良かったと思います。
他の方の感想をみると、「最後の一撃」的な事が書かれているのですが、
わかる方、お教えください。
タイトルに「リブート」とあるように、シリーズ再起動、という事なのでしょう。
あとがきで、西澤先生がスマホの扱い方とかかなり苦労されていることを書かれていますが、
長寿シリーズは確かにこの辺りは難しいですよね。
それらを上手く扱うことが可能になれば、おそらく再び腕貫さんは姿を現してくれるでしょう!
神出鬼没の公務員探偵「腕貫さん」を“だーりん”と呼び慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ。
同級生の小泊瀬海人から「親族が関わった殺人事件を題材にミステリ小説を書いてみたい」
と相談され、大乗り気でストーリー作りに着手。ユリエは腕貫さん顔負けの名推理を披露するが、
行き詰まって相談した腕貫さんから、
ユリエに厳しい駄目出しが…・・・!?(「ユリエの本格ミステリ講座」)
今作ではほかに、鳥遊葵、阿藤江梨子、安達真緒、水谷川刑事etc.……
シリーズ既刊でお馴染みの面々も集結。喪主による殺人、連続不審死、留学生監禁など、
腕貫シリーズのホームタウン櫃洗市で続発する、禍々しくも珍妙な事件の真相は!?
解説の浜崎広江さん(今井書店)も激賞の一作、乞うご期待!
腕貫探偵シリーズの文庫版最新作。
とはいえ、肝心の腕貫さんはほとんど登場しません(笑
櫃洗市を舞台にした別のミステリ短編集と言ってもいいですね。
まあスピンオフですね。『必然という名の偶然』に近いかな。
江戸川コナンの住む米花町が、凄まじい勢いで犯罪が発生する街として、
犯罪者が多すぎる街という風刺がありますが、
この櫃洗市は、探偵が多すぎる街、かもしれません。
腕貫さんを「ダーリン」と慕う、美貌の女子大生・住吉ユリエ、
大富豪探偵の異名を取る(?)月夜見ひろゑ、
櫃洗署の刑事さんも中々に優秀なので、この市で犯罪を起こすのはマヌケでしょう。
表題作は、謎が解けていく過程も面白いですが、やはり最後に明かされる事実は
中々に衝撃です。櫃洗大学に勤める久賀谷先生が推理を巡らせる訳ですが、
この大学、大丈夫か?!と心配してしまいます。
問題作という、私が一番わからなかったのは「マインド・ファック・キラー」
最後まで読んでも分からなかった。
櫃洗との無理矢理くっつけている感もあり、櫃洗市シリーズより、
西澤作品のノンシリーズ短編集収録の方が良かったと思います。
他の方の感想をみると、「最後の一撃」的な事が書かれているのですが、
わかる方、お教えください。
タイトルに「リブート」とあるように、シリーズ再起動、という事なのでしょう。
あとがきで、西澤先生がスマホの扱い方とかかなり苦労されていることを書かれていますが、
長寿シリーズは確かにこの辺りは難しいですよね。
それらを上手く扱うことが可能になれば、おそらく再び腕貫さんは姿を現してくれるでしょう!
ハートフル・ラブ [乾くるみ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。
交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、
一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって――
(書き下ろし「数学科の女」)
他に、突然の余命宣告を受けて結婚を決意した夫婦を描く
「夫の余命」(日本推理作家協会賞候補)や、アイドルの握手会をまさかのミステリに仕立てた
「なんて素敵な握手会」など、
どんでん返しの名手の技が冴える珠玉のミステリ7篇収録。
乾くるみ先生の御著書はいつ以来だろうか・・・もしかしたら、
林三兄弟シリーズの『六つの手掛かり』以来では。
表題作の作品はありません。
これはまあ、『このミス』だったか、『本格ミステリ』だったかでも
語られていましたが、出版社と相談の上、決定したとあった気がします。
『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』に続く、という感じなんでしょう。
最初の「夫の余命」はさすが乾先生という、仕掛けが施してあります。
これが最初というのが良い。
「同級生」は少し儚い・悲しい物語。短いながらも読ませます。
一番面白いのは「消費税狂想曲」。これは社会風刺がきいていながら、
しっかりミステリという、何か政府に翻弄される国民で、それが殺人まで・・・(苦笑
なんていう妄想まで膨らませてしまいました。
「九百十七円は高すぎる」は、乾作品では珍しいのでは?
一瞬西澤保彦先生降臨かと思いました(笑
しかし、この金額から何を購入したのかを推理するという、日常の謎ですが、
それだけに留まらず、先に述べたように、そのコンビが西澤作品的という。
「数学科の女」
恐るべき米原さん。そして本編で語られるのは、殺人計画やDNA鑑定への備え
さらには殺人教唆まで、とにかく米原さんは先の先の先まで考え抜いています。
本来であれば、恐るべき話になるのですが、語り手である箕浦の、どこか飄々とした
態度やラストの終わり方などから、そう恐ろしい話には感じられないのです。
そこがまた恐ろしいのかもしれませんが。
林三兄弟の活躍もまた久々に読みたくなりました。
大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。
交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、
一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって――
(書き下ろし「数学科の女」)
他に、突然の余命宣告を受けて結婚を決意した夫婦を描く
「夫の余命」(日本推理作家協会賞候補)や、アイドルの握手会をまさかのミステリに仕立てた
「なんて素敵な握手会」など、
どんでん返しの名手の技が冴える珠玉のミステリ7篇収録。
乾くるみ先生の御著書はいつ以来だろうか・・・もしかしたら、
林三兄弟シリーズの『六つの手掛かり』以来では。
表題作の作品はありません。
これはまあ、『このミス』だったか、『本格ミステリ』だったかでも
語られていましたが、出版社と相談の上、決定したとあった気がします。
『イニシエーション・ラブ』『セカンド・ラブ』に続く、という感じなんでしょう。
最初の「夫の余命」はさすが乾先生という、仕掛けが施してあります。
これが最初というのが良い。
「同級生」は少し儚い・悲しい物語。短いながらも読ませます。
一番面白いのは「消費税狂想曲」。これは社会風刺がきいていながら、
しっかりミステリという、何か政府に翻弄される国民で、それが殺人まで・・・(苦笑
なんていう妄想まで膨らませてしまいました。
「九百十七円は高すぎる」は、乾作品では珍しいのでは?
一瞬西澤保彦先生降臨かと思いました(笑
しかし、この金額から何を購入したのかを推理するという、日常の謎ですが、
それだけに留まらず、先に述べたように、そのコンビが西澤作品的という。
「数学科の女」
恐るべき米原さん。そして本編で語られるのは、殺人計画やDNA鑑定への備え
さらには殺人教唆まで、とにかく米原さんは先の先の先まで考え抜いています。
本来であれば、恐るべき話になるのですが、語り手である箕浦の、どこか飄々とした
態度やラストの終わり方などから、そう恐ろしい話には感じられないのです。
そこがまた恐ろしいのかもしれませんが。
林三兄弟の活躍もまた久々に読みたくなりました。
いつもと違う日 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「あの英秀治郎ですか?」
旅行社の風谷は信じられなかった。
誰もが知っている有名作家が、二十年ぶりに英国から帰国する。
本好きを理由にその世話役を任されたのだ。
風谷は英の大ファンである妻のためにサインをもらうが、
受け取った彼女の反応は予想と全く違っていた。
そして、風谷は同僚から英の本当の帰国理由を聞かされて――。(「私だけの巨匠」)
非日常が日常を覆す五篇のミステリー。
「本日は休校日」と「忘れものの季節」の2編が、ある意味両極端でオススメです。
前者は赤川ワールド全開の作品。
休校日に忘れもの(?)をして取りに行くハメになった(しかも友達のせいで!)河口彩子。
なぜなら、休校日にロッカー等の持ち物検査を教員がするからだ。
しかもその忘れ物は、友人のラブレター。勝手に自分のロッカーに入れられた(笑
ところがなんと学校で死体が!しかも殺人?!
まさに赤川ワールドです。
間一髪で助かった彩子ですが、助けてくれた森山先生の戻ってきた理由が秀逸過ぎますね。
いや犯罪だろうと(苦笑
後者は昨今相当な問題にもなっている、学校の規律や校則に関わる一編。
京子と夕香の関係や、生徒たちが一斉に走る姿は、明るい未来を想像させますが、
その両親や弟は、この校則を守るためとんでもない行動に出ていて、実に極端ですね・・・
子どもの方がよっぽどまともです。
「支払われた少女」は、一見すると非常に良いエンディングを迎え、心も温まる
結末なのですが、ストーカー的でもあるし、祖父はあまりに無謀な賭けをしてるよなあ。
最後の「私だけの巨匠」は、落ち着いた物語だけども、読ませる作品。
それでいて、素晴らしい作品です。
赤川作品は長編も短編も面白い。
![いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/8085/9784198948085_1_3.jpg?_ex=128x128)
「あの英秀治郎ですか?」
旅行社の風谷は信じられなかった。
誰もが知っている有名作家が、二十年ぶりに英国から帰国する。
本好きを理由にその世話役を任されたのだ。
風谷は英の大ファンである妻のためにサインをもらうが、
受け取った彼女の反応は予想と全く違っていた。
そして、風谷は同僚から英の本当の帰国理由を聞かされて――。(「私だけの巨匠」)
非日常が日常を覆す五篇のミステリー。
「本日は休校日」と「忘れものの季節」の2編が、ある意味両極端でオススメです。
前者は赤川ワールド全開の作品。
休校日に忘れもの(?)をして取りに行くハメになった(しかも友達のせいで!)河口彩子。
なぜなら、休校日にロッカー等の持ち物検査を教員がするからだ。
しかもその忘れ物は、友人のラブレター。勝手に自分のロッカーに入れられた(笑
ところがなんと学校で死体が!しかも殺人?!
まさに赤川ワールドです。
間一髪で助かった彩子ですが、助けてくれた森山先生の戻ってきた理由が秀逸過ぎますね。
いや犯罪だろうと(苦笑
後者は昨今相当な問題にもなっている、学校の規律や校則に関わる一編。
京子と夕香の関係や、生徒たちが一斉に走る姿は、明るい未来を想像させますが、
その両親や弟は、この校則を守るためとんでもない行動に出ていて、実に極端ですね・・・
子どもの方がよっぽどまともです。
「支払われた少女」は、一見すると非常に良いエンディングを迎え、心も温まる
結末なのですが、ストーカー的でもあるし、祖父はあまりに無謀な賭けをしてるよなあ。
最後の「私だけの巨匠」は、落ち着いた物語だけども、読ませる作品。
それでいて、素晴らしい作品です。
赤川作品は長編も短編も面白い。
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- 価格: 803 円
逃げこんだ花嫁 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
友人達と旅行で温泉に向かっていた亜由美は、決闘へ向かう男たちと出会う。
その成り行きが気になり、後日、殿永刑事に調べてもらっていた亜由美のもとへ、
十三歳の少女が逃げて来た。
決闘の原因となった抗争に巻き込まれてしまい、
年上の男と無理に結婚させられそうだと言うのだ。
なんと男の年齢は——。
表題作のほか「花嫁学校の始業式」収録。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年一発目は、私のブログでおそらく最も多い赤川次郎先生作品。
花嫁シリーズは、ジョイノベルズ→角川文庫のパターンでしたが、
実業之日本社文庫創刊により、そのまま実業之日本社から文庫も刊行される
ようになりました。
本書は、角川からの逆輸入ですね。
この頃の花嫁シリーズ、勢いありますね。物語がスピーディーなのは
言うまでも無く、登場人物たちの会話や行動のテンポも素晴らしい。
亜由美の両親も相変わらずの凄さを魅せますが(笑
聡子との掛け合いも面白い。
まだ谷川准教授登場前で、そういえば八木刑事っていたなあと思い出しました。
ちなみに表題作より「花嫁学校の始業式」の方が面白いです。
入学したいという変な男と表現される殿永部長刑事や、
妙な服装の八木刑事などが見られます。
表題作はむかーしの地方には本当にありそうですね。
さすがにこれほどの喧嘩は騒乱罪になりそうな気もしますが・・・
また実業之日本社で文庫を集めてしまうかもしれません。
友人達と旅行で温泉に向かっていた亜由美は、決闘へ向かう男たちと出会う。
その成り行きが気になり、後日、殿永刑事に調べてもらっていた亜由美のもとへ、
十三歳の少女が逃げて来た。
決闘の原因となった抗争に巻き込まれてしまい、
年上の男と無理に結婚させられそうだと言うのだ。
なんと男の年齢は——。
表題作のほか「花嫁学校の始業式」収録。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年一発目は、私のブログでおそらく最も多い赤川次郎先生作品。
花嫁シリーズは、ジョイノベルズ→角川文庫のパターンでしたが、
実業之日本社文庫創刊により、そのまま実業之日本社から文庫も刊行される
ようになりました。
本書は、角川からの逆輸入ですね。
この頃の花嫁シリーズ、勢いありますね。物語がスピーディーなのは
言うまでも無く、登場人物たちの会話や行動のテンポも素晴らしい。
亜由美の両親も相変わらずの凄さを魅せますが(笑
聡子との掛け合いも面白い。
まだ谷川准教授登場前で、そういえば八木刑事っていたなあと思い出しました。
ちなみに表題作より「花嫁学校の始業式」の方が面白いです。
入学したいという変な男と表現される殿永部長刑事や、
妙な服装の八木刑事などが見られます。
表題作はむかーしの地方には本当にありそうですね。
さすがにこれほどの喧嘩は騒乱罪になりそうな気もしますが・・・
また実業之日本社で文庫を集めてしまうかもしれません。
ぼくの「このミス」2022 [ミステリ]
今年も最後なので、今年読んだミステリの中で、特にオススメを紹介します。
しかし、今年はあまり読んでないような気がするなあ。
三津田信三『白魔の塔』
読んでいて、思わず唸ってしまった作品。
怪異と現実とが入り交じりつつ進む物語、突如としてとてつもない事態が
起こる、まさに驚愕怒濤の展開。物理波矢多の名推理も楽しめますが、
この構成は圧巻。
![白魔の塔 (文春文庫) [ 三津田 信三 ] 白魔の塔 (文春文庫) [ 三津田 信三 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7654/9784167917654_1_5.jpg?_ex=128x128)
有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』
表題作は、群を抜いて面白い。クリスティの向こうを張った名作。
「密室」の使い方が素晴らしい。
大山誠一郎『記憶の中の誘拐 赤い博物館』
名短編集。緋色冴子は火村英生の女性版かと思うくらい、理詰めの推理。
「夕暮れの屋上で」「連火」、いずれも傑作です。
文庫書き下ろしというのがまた素晴らしい。出版社さん、営業的な面あろうかと
思いますが、文庫書き下ろし、どんどんお願いします。
若竹七海『殺人鬼がもう一人』
逆コージーミステリー。シリーズ続編がぜひ読みたいところ。
ハッピーデー・キラーの事件の顛末は一体どうなったのか?
都筑道夫『猫の舌に釘をうて』『誘拐作戦』
とにかく読めて良かった。購入して損はない作品。
改めて感想は書きません。都筑道夫の読者騙しのテクニックをご堪能あれ。
![猫の舌に釘をうて (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 猫の舌に釘をうて (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7187/9784198947187_1_3.jpg?_ex=128x128)
![誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7668/9784198947668_1_2.jpg?_ex=128x128)
阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』
収録短編いずれも傑作揃い。『録音された誘拐』も楽しみです。
大半がオススメになりそうなので、この辺で(笑
来年も良いミステリが読めますよう。
そして今年も読んで頂いた方、ありがとうございました。
しかし、今年はあまり読んでないような気がするなあ。
三津田信三『白魔の塔』
読んでいて、思わず唸ってしまった作品。
怪異と現実とが入り交じりつつ進む物語、突如としてとてつもない事態が
起こる、まさに驚愕怒濤の展開。物理波矢多の名推理も楽しめますが、
この構成は圧巻。
![白魔の塔 (文春文庫) [ 三津田 信三 ] 白魔の塔 (文春文庫) [ 三津田 信三 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7654/9784167917654_1_5.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,045 円
有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』
表題作は、群を抜いて面白い。クリスティの向こうを張った名作。
「密室」の使い方が素晴らしい。
大山誠一郎『記憶の中の誘拐 赤い博物館』
名短編集。緋色冴子は火村英生の女性版かと思うくらい、理詰めの推理。
「夕暮れの屋上で」「連火」、いずれも傑作です。
文庫書き下ろしというのがまた素晴らしい。出版社さん、営業的な面あろうかと
思いますが、文庫書き下ろし、どんどんお願いします。
若竹七海『殺人鬼がもう一人』
逆コージーミステリー。シリーズ続編がぜひ読みたいところ。
ハッピーデー・キラーの事件の顛末は一体どうなったのか?
都筑道夫『猫の舌に釘をうて』『誘拐作戦』
とにかく読めて良かった。購入して損はない作品。
改めて感想は書きません。都筑道夫の読者騙しのテクニックをご堪能あれ。
![猫の舌に釘をうて (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 猫の舌に釘をうて (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7187/9784198947187_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 825 円
![誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7668/9784198947668_1_2.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
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阿津川辰海『透明人間は密室に潜む』
収録短編いずれも傑作揃い。『録音された誘拐』も楽しみです。
大半がオススメになりそうなので、この辺で(笑
来年も良いミステリが読めますよう。
そして今年も読んで頂いた方、ありがとうございました。
法月綸太郎の消息 [法月綸太郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
名探偵法月綸太郎が
名探偵ホームズ&ポアロの謎に挑む!
綸太郎が挑むのは、ホームズ探偵譚の異色作に隠された作者コナン・ドイルをめぐるトラップ。
ポアロ最後の事件に仕組まれた作者アガサ・クリスティーの企み。そして、
父・法月警視が持ち込む不可解な謎。ロジックを駆使して名探偵が鮮やかに「真実」に迫る、
本格ミステリの純粋かつ新たな魅力に満ちた作品集。
シリーズ30周年記念の最新作、待望の文庫化!
鮮やかで大胆不敵なロジック。珠玉の本格ミステリ作品集!
彼ほど「消息」という言葉がある探偵もいないでしょう。
むろん、紙上の法月綸太郎と、作者である法月綸太郎先生も含めて。
後期クイーン的問題、P≠NP問題等の評論家としても素晴らしい業績を
挙げている一方、その評論的部分と、自身の描く「法月綸太郎」という探偵との
乖離・苦悩が、本当にこの30年に現れています。
『生首に聞いてみろ』刊行時に、「おかえり、法月綸太郎」という帯があったのを
覚えています。
作品を生み出す苦闘が伺える、実に希有なシリーズですね。
本書は30周年祈念の刊行ですが、やはりホームズとポアロという、2大名探偵の
謎に迫る「白面のたてがみ」と「カーテンコール」は圧巻。
特に後者は、ポアロが本当に双子だったのではないか?というのを、
実に上手く、論理的に証明しようとしていて、『カーテン』で亡くなったのは、
アシルだったのかあと思わず思ってしまいました(笑
前者は、コナン・ドイルの心霊への傾倒や、チェスタトンまで登場し、
さながら、氏の評論ミステリのようなものを読んでいるような錯覚に陥ります。
そして、父親である法月警視とのディスカッションから、事件の真相にたどり着く、
「あべこべの遺書」「殺さぬ先の自首」も快作です。
シリーズお馴染みだから失念してましたが、安楽椅子探偵スタイルですね。
解説によれば、いずれの作品も都筑道夫先生の『退職刑事』からの影響大とのこと。
後者は、倫太郎の母親のことが登場するのが感慨深いですね。
しかし、シリーズ初期のレギュラーであった、図書館司書の沢田穂波も
久々に登場してほしいなあ。
名探偵法月綸太郎が
名探偵ホームズ&ポアロの謎に挑む!
綸太郎が挑むのは、ホームズ探偵譚の異色作に隠された作者コナン・ドイルをめぐるトラップ。
ポアロ最後の事件に仕組まれた作者アガサ・クリスティーの企み。そして、
父・法月警視が持ち込む不可解な謎。ロジックを駆使して名探偵が鮮やかに「真実」に迫る、
本格ミステリの純粋かつ新たな魅力に満ちた作品集。
シリーズ30周年記念の最新作、待望の文庫化!
鮮やかで大胆不敵なロジック。珠玉の本格ミステリ作品集!
彼ほど「消息」という言葉がある探偵もいないでしょう。
むろん、紙上の法月綸太郎と、作者である法月綸太郎先生も含めて。
後期クイーン的問題、P≠NP問題等の評論家としても素晴らしい業績を
挙げている一方、その評論的部分と、自身の描く「法月綸太郎」という探偵との
乖離・苦悩が、本当にこの30年に現れています。
『生首に聞いてみろ』刊行時に、「おかえり、法月綸太郎」という帯があったのを
覚えています。
作品を生み出す苦闘が伺える、実に希有なシリーズですね。
本書は30周年祈念の刊行ですが、やはりホームズとポアロという、2大名探偵の
謎に迫る「白面のたてがみ」と「カーテンコール」は圧巻。
特に後者は、ポアロが本当に双子だったのではないか?というのを、
実に上手く、論理的に証明しようとしていて、『カーテン』で亡くなったのは、
アシルだったのかあと思わず思ってしまいました(笑
前者は、コナン・ドイルの心霊への傾倒や、チェスタトンまで登場し、
さながら、氏の評論ミステリのようなものを読んでいるような錯覚に陥ります。
そして、父親である法月警視とのディスカッションから、事件の真相にたどり着く、
「あべこべの遺書」「殺さぬ先の自首」も快作です。
シリーズお馴染みだから失念してましたが、安楽椅子探偵スタイルですね。
解説によれば、いずれの作品も都筑道夫先生の『退職刑事』からの影響大とのこと。
後者は、倫太郎の母親のことが登場するのが感慨深いですね。
しかし、シリーズ初期のレギュラーであった、図書館司書の沢田穂波も
久々に登場してほしいなあ。
誘拐作戦 [都筑道夫]
その女は、小雨に洗われた京葉道路に横たわっていた──
ひき逃げ現場に出くわしたチンピラ四人と医者ひとり。世を拗ねた五人の悪党たちは、
死んだ女そっくりの身代わりを用意し偽誘拐を演出。一方、身代金を惜しむ金満家族に、
駆け出しの知性派探偵が加勢。アドリブ任せに見えた事件は、次第に黒い罠を露呈させ始める。
鬼才都筑道夫がミステリの枠の極限に挑んだ超トリッキーな逸品。
史上初の〈文庫連載小説〉、都筑道夫の幻の雑誌連載長篇「ジェイムズ・ボンドはアメリカ人」併録。
以下、ネタバレあり。
これは傑作です。
よくぞ復刊してくれました。
都筑道夫先生は、推理作家として再デビューし、次々とトリッキーな作品を生み出すのに
全力投球していたのが伺い知れます。
いかに読者を驚かせてやろうか?という思いをひしひしと感じます。
『やぶにらみの時計』→『猫の舌に釘を打て』→『誘拐作戦』と、まさに怒濤のような傑作群。
最初、本書は嘘っぱちではない、本当にあった事件だとしつつ、あんまり、ありのままに
書くと、迷惑する人がいる、だから適当に嘘を交えて、という、もう開始2ページ目で騙し
が来ます(笑)
この記述、ある意味本書の核心を突いてますよね。
適当に嘘を交えるんだ、と。
さらに「第一歩は盗難車で」を読み終わると、なんと書き手は2人いるという、
さらなる騙し。
素人探偵の名前が赤西一朗太から茜一郎とくるくる変わる(笑
仮にも事件を解く役を与えられている探偵の名前が、コロコロ変わるミステリは
出合ったことがありません。
千寿子の死体をバラバラにし、3人でそれを処理させるシーンがあるのですが、
これは本来であればかなりグロテスクなシーンなんだけど、生首をボウリングの玉入れに
入れたなんて、なんという表現だと思います。スリラーを書くと最初に言っていたのに、
かなりのギャグ要素が盛り込まれてます。
ミステリ慣れ、している方は(私もそうなのかもしれませんが)、
かつて、大虎やブタらがかつて女を死なせた事が明らかになる辺りから、
この事件がどうも何かあるなと思ったり、
上記の死体、本当にバラバラなのか?と思ったり。
しかし凝ってますね。2人語りに一人二役。
最後に真相を語る場面も、また凝ってます。本を逆にして読むところとか。
この逆にして読むところは、この小説のある種欠けている視点であるから、
余計に面白い。
玉木刑事が共犯でないことを見事に証明しているんですよね。
そして、この楽屋話から「著者からの一言」までで、本作は2人語りではなく、
ある意味作中作の体裁でもあったというオチが待っています。
ところで、次作の復刊は当然ながら『三重露出』でしょうか?
![誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7668/9784198947668_1_2.jpg?_ex=128x128)
ひき逃げ現場に出くわしたチンピラ四人と医者ひとり。世を拗ねた五人の悪党たちは、
死んだ女そっくりの身代わりを用意し偽誘拐を演出。一方、身代金を惜しむ金満家族に、
駆け出しの知性派探偵が加勢。アドリブ任せに見えた事件は、次第に黒い罠を露呈させ始める。
鬼才都筑道夫がミステリの枠の極限に挑んだ超トリッキーな逸品。
史上初の〈文庫連載小説〉、都筑道夫の幻の雑誌連載長篇「ジェイムズ・ボンドはアメリカ人」併録。
以下、ネタバレあり。
これは傑作です。
よくぞ復刊してくれました。
都筑道夫先生は、推理作家として再デビューし、次々とトリッキーな作品を生み出すのに
全力投球していたのが伺い知れます。
いかに読者を驚かせてやろうか?という思いをひしひしと感じます。
『やぶにらみの時計』→『猫の舌に釘を打て』→『誘拐作戦』と、まさに怒濤のような傑作群。
最初、本書は嘘っぱちではない、本当にあった事件だとしつつ、あんまり、ありのままに
書くと、迷惑する人がいる、だから適当に嘘を交えて、という、もう開始2ページ目で騙し
が来ます(笑)
この記述、ある意味本書の核心を突いてますよね。
適当に嘘を交えるんだ、と。
さらに「第一歩は盗難車で」を読み終わると、なんと書き手は2人いるという、
さらなる騙し。
素人探偵の名前が赤西一朗太から茜一郎とくるくる変わる(笑
仮にも事件を解く役を与えられている探偵の名前が、コロコロ変わるミステリは
出合ったことがありません。
千寿子の死体をバラバラにし、3人でそれを処理させるシーンがあるのですが、
これは本来であればかなりグロテスクなシーンなんだけど、生首をボウリングの玉入れに
入れたなんて、なんという表現だと思います。スリラーを書くと最初に言っていたのに、
かなりのギャグ要素が盛り込まれてます。
ミステリ慣れ、している方は(私もそうなのかもしれませんが)、
かつて、大虎やブタらがかつて女を死なせた事が明らかになる辺りから、
この事件がどうも何かあるなと思ったり、
上記の死体、本当にバラバラなのか?と思ったり。
しかし凝ってますね。2人語りに一人二役。
最後に真相を語る場面も、また凝ってます。本を逆にして読むところとか。
この逆にして読むところは、この小説のある種欠けている視点であるから、
余計に面白い。
玉木刑事が共犯でないことを見事に証明しているんですよね。
そして、この楽屋話から「著者からの一言」までで、本作は2人語りではなく、
ある意味作中作の体裁でもあったというオチが待っています。
ところで、次作の復刊は当然ながら『三重露出』でしょうか?
![誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ] 誘拐作戦 (徳間文庫) [ 都筑道夫 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7668/9784198947668_1_2.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 825 円
LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [music]
毎年この日は、クリスマスにちなんだミステリを紹介してますが、
今年は、ミステリではないですが、本命が発売されましたので、そちらのご紹介。
まずはAmazonさんの紹介ページから。
この冬を一層豊かに過ごすために。必見必聴の一作。
冬を彩る「FRIENDS」シリーズの世界観をステージ上で再現した
コンセプト・ライブの模様を全曲収録!
1992年発表のB'z初のコンセプト・アルバム「FRIENDS」、1996年発表の「FRIENDS Ⅱ」、
そして昨年、25年ぶりに完成した「FRIENDS Ⅲ」
の3作を元に構成され、東京ガーデンシアターで開催したコンセプト・ライブ「B'z presents LIVE FRIENDS」が、この冬、待望のパッケージ化!
3作にわたるFRIENDSシリーズの始まりであり、
Xmasを象徴する「いつかのメリークリスマス」はもちろん、
冬の心象風景に寄り添う「恋じゃなくなる日」や「傷心」「SNOW」、
さらにライブ初披露となった最新作からの「シーズンエンド」など
全21曲を収録した今作は、ストリングスとブラスセクションを加えた
総勢20名のバンドによる多彩な音色が響き、
従来のLIVE-GYMの趣とは異なる煌めきと温かみが溢れた、
静と動が混在するラグジュアリーな空間をも味わえる作品。
また、今作の特典ディスクには、松本孝弘と稲葉浩志へのインタビューを軸に進む
ドキュメントを収録。
リハーサル風景やバンドメンバーの紹介も織り交ぜ、FRIENDSシリーズの
世界観を再現したステージの創作過程を
垣間見ることができる貴重な映像となっている。
2022年35周年イヤーを迎えたB'zを語る上で欠かせないサウンドの側面と、
新たな試みを取り入れた近年の活動を経て
より円熟味を増したライブパフォーマンスを、
これまでにない心地よさとともにじっくりとご堪能ください。
という訳で大夫長い紹介文ですが、
1996年発売の「FRIENDS Ⅱ」は当時リアルタイムで高校生くらいで購入しました。
ミニアルバム、というジャンルでここまで有名なのも珍しいと思います。
またアルバム内の曲で、ある1つのストーリーが構成されているとはっきり明示
しているのも、中々すごいですよね。
やはり「いつかのメリークリスマス」は名曲です。
クリスマス・イヴの今日、ぜひお聞きください。
![LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
![【メーカー特典あり】LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] [Blu-ray] 【メーカー特典あり】LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
![LIVE DVD『B’z presents LIVE FRIENDS』 [3枚組(本編2枚+特典DISC1枚)] LIVE DVD『B’z presents LIVE FRIENDS』 [3枚組(本編2枚+特典DISC1枚)]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
今年は、ミステリではないですが、本命が発売されましたので、そちらのご紹介。
まずはAmazonさんの紹介ページから。
この冬を一層豊かに過ごすために。必見必聴の一作。
冬を彩る「FRIENDS」シリーズの世界観をステージ上で再現した
コンセプト・ライブの模様を全曲収録!
1992年発表のB'z初のコンセプト・アルバム「FRIENDS」、1996年発表の「FRIENDS Ⅱ」、
そして昨年、25年ぶりに完成した「FRIENDS Ⅲ」
の3作を元に構成され、東京ガーデンシアターで開催したコンセプト・ライブ「B'z presents LIVE FRIENDS」が、この冬、待望のパッケージ化!
3作にわたるFRIENDSシリーズの始まりであり、
Xmasを象徴する「いつかのメリークリスマス」はもちろん、
冬の心象風景に寄り添う「恋じゃなくなる日」や「傷心」「SNOW」、
さらにライブ初披露となった最新作からの「シーズンエンド」など
全21曲を収録した今作は、ストリングスとブラスセクションを加えた
総勢20名のバンドによる多彩な音色が響き、
従来のLIVE-GYMの趣とは異なる煌めきと温かみが溢れた、
静と動が混在するラグジュアリーな空間をも味わえる作品。
また、今作の特典ディスクには、松本孝弘と稲葉浩志へのインタビューを軸に進む
ドキュメントを収録。
リハーサル風景やバンドメンバーの紹介も織り交ぜ、FRIENDSシリーズの
世界観を再現したステージの創作過程を
垣間見ることができる貴重な映像となっている。
2022年35周年イヤーを迎えたB'zを語る上で欠かせないサウンドの側面と、
新たな試みを取り入れた近年の活動を経て
より円熟味を増したライブパフォーマンスを、
これまでにない心地よさとともにじっくりとご堪能ください。
という訳で大夫長い紹介文ですが、
1996年発売の「FRIENDS Ⅱ」は当時リアルタイムで高校生くらいで購入しました。
ミニアルバム、というジャンルでここまで有名なのも珍しいと思います。
またアルバム内の曲で、ある1つのストーリーが構成されているとはっきり明示
しているのも、中々すごいですよね。
やはり「いつかのメリークリスマス」は名曲です。
クリスマス・イヴの今日、ぜひお聞きください。
![LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)]
- アーティスト: B'z
- 出版社/メーカー: VERMILLION RECORDS
- 発売日: 2022/12/14
- メディア: Blu-ray
![【メーカー特典あり】LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] [Blu-ray] 【メーカー特典あり】LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
【メーカー特典あり】LIVE Blu-ray『B’z presents LIVE FRIENDS』 [2枚組(本編1枚+特典DISC1枚)] [Blu-ray]
- アーティスト: B'z
- 出版社/メーカー: VERMILLION RECORDS(J)(D)
- 発売日: 2022/12/14
- メディア: Blu-ray
![LIVE DVD『B’z presents LIVE FRIENDS』 [3枚組(本編2枚+特典DISC1枚)] LIVE DVD『B’z presents LIVE FRIENDS』 [3枚組(本編2枚+特典DISC1枚)]](https://m.media-amazon.com/images/I/41FfavN10xL._SL160_.jpg)
LIVE DVD『B’z presents LIVE FRIENDS』 [3枚組(本編2枚+特典DISC1枚)]
- アーティスト: B'z
- 出版社/メーカー: VERMILLION RECORDS
- 発売日: 2022/12/14
- メディア: DVD
2023本格ミステリ・ベスト10 [ミステリ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
新星たちが新たな世界をみせた本格ミステリの一年をオールレビュー! ランキングはもちろん、
映像、コミックにラノベ、評論、ゲームまでを一望。特集は「傑作に描かれた現場図面探索」。
インタビューは柄刀一、そして夕木春央の二本立て!
毎年恒例の2冊目。
しかし、拙ブログではほとんどランキング作品には触れていないのですが(苦笑
やはり『このミス』と結構違うなあと改めて思いました。
「本格」という言葉の重い、違いなんでしょうか。
企画としては『このミス』より面白い。復刊特集、ミステリゲーム、コミック、映像本格・・・
これらを振り返られるのと、おお、こんなのあったのか!というのに出会えます。
柄刀一さんのインタビューは良いですねえ。浅見光彦を探偵役に描くということへの
凄まじいまでのプレッシャー、なんとなく分かる気がします。
でも実に上手く描けていて、もう浅見光彦シリーズ続編を書いてほしいくらいです。
『このミス』でもあったかと思いますが、北山猛邦先生の『月灯館殺人事件』の
早期文庫化を望みます!
![2023本格ミステリ・ベスト10 [ 探偵小説研究会 ] 2023本格ミステリ・ベスト10 [ 探偵小説研究会 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/2408/9784562072408_1_3.jpg?_ex=128x128)
![名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 [ 白井 智之 ] 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 [ 白井 智之 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/5225/9784103535225_1_2.jpg?_ex=128x128)
新星たちが新たな世界をみせた本格ミステリの一年をオールレビュー! ランキングはもちろん、
映像、コミックにラノベ、評論、ゲームまでを一望。特集は「傑作に描かれた現場図面探索」。
インタビューは柄刀一、そして夕木春央の二本立て!
毎年恒例の2冊目。
しかし、拙ブログではほとんどランキング作品には触れていないのですが(苦笑
やはり『このミス』と結構違うなあと改めて思いました。
「本格」という言葉の重い、違いなんでしょうか。
企画としては『このミス』より面白い。復刊特集、ミステリゲーム、コミック、映像本格・・・
これらを振り返られるのと、おお、こんなのあったのか!というのに出会えます。
柄刀一さんのインタビューは良いですねえ。浅見光彦を探偵役に描くということへの
凄まじいまでのプレッシャー、なんとなく分かる気がします。
でも実に上手く描けていて、もう浅見光彦シリーズ続編を書いてほしいくらいです。
『このミス』でもあったかと思いますが、北山猛邦先生の『月灯館殺人事件』の
早期文庫化を望みます!
![2023本格ミステリ・ベスト10 [ 探偵小説研究会 ] 2023本格ミステリ・ベスト10 [ 探偵小説研究会 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/2408/9784562072408_1_3.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 1,100 円
![名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 [ 白井 智之 ] 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 [ 白井 智之 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/5225/9784103535225_1_2.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 2,090 円
殺しへのライン [海外ミステリ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーン
とわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、
チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、
文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、
なぜか右手だけは自由なままで……。傑作『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に並ぶ、
〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!
AXNミステリでは、年明けからアンソニー・ホロヴィッツ特集として、
刑事フォイル、名探偵ポワロのホロヴィッツ脚本作品、カササギ殺人事件の映像化、
マーダー・イン・マインドなどが順次放送予定とのこと。
やはり、カササギ殺人事件の映像化は観てみたい。ホーソーンシリーズは
誰がホーソーンを務めるのかで、色々ありそうですけどね。
閑話休題。
文芸フェスへの参加のため、ホーソーン&ホロヴィッツコンビはチャンネル諸島の
オルダニー島へ向かいます。
そこで島を二分する計画を進めるチャールズ・ル・メジュラーが殺害され・・・
一癖も二癖もあるフェス参加者と島住民。彼彼女の中から、ホーソーンは
犯人を見つけられるのか?
この犯人当てまでホーソーンの推理や物語の進み方、やはりクリスティーですね。
オマージュとして書いているのか、筆致を似させているのか、そこから学んで
似ているのか、そのあたりはよくわかりませんが、基本はその路線。
なぜ右手だけが自由にされていたのかは、そこまでの謎ではなく、
(もちろん犯人の絞り込みと追い詰めるホーソーンの推理は言うまでも無く素晴らしい)
2万ポンドの金や脅迫者の方が見事でしたね。
デレク・アボットとホーソーンの因縁は、本作で一応の終了をみましたが、
とはいえ、この終了、特にアボットの死は不可解で、謎解きもありません。
彼が発したある言葉も、次作以降に繋がる謎ですし・・・
ホーソーンの「謎」は次作で解明されるのでしょうか?

『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーン
とわたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、
チャンネル諸島のオルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、
文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、
なぜか右手だけは自由なままで……。傑作『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に並ぶ、
〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ最新刊!
AXNミステリでは、年明けからアンソニー・ホロヴィッツ特集として、
刑事フォイル、名探偵ポワロのホロヴィッツ脚本作品、カササギ殺人事件の映像化、
マーダー・イン・マインドなどが順次放送予定とのこと。
やはり、カササギ殺人事件の映像化は観てみたい。ホーソーンシリーズは
誰がホーソーンを務めるのかで、色々ありそうですけどね。
閑話休題。
文芸フェスへの参加のため、ホーソーン&ホロヴィッツコンビはチャンネル諸島の
オルダニー島へ向かいます。
そこで島を二分する計画を進めるチャールズ・ル・メジュラーが殺害され・・・
一癖も二癖もあるフェス参加者と島住民。彼彼女の中から、ホーソーンは
犯人を見つけられるのか?
この犯人当てまでホーソーンの推理や物語の進み方、やはりクリスティーですね。
オマージュとして書いているのか、筆致を似させているのか、そこから学んで
似ているのか、そのあたりはよくわかりませんが、基本はその路線。
なぜ右手だけが自由にされていたのかは、そこまでの謎ではなく、
(もちろん犯人の絞り込みと追い詰めるホーソーンの推理は言うまでも無く素晴らしい)
2万ポンドの金や脅迫者の方が見事でしたね。
デレク・アボットとホーソーンの因縁は、本作で一応の終了をみましたが、
とはいえ、この終了、特にアボットの死は不可解で、謎解きもありません。
彼が発したある言葉も、次作以降に繋がる謎ですし・・・
ホーソーンの「謎」は次作で解明されるのでしょうか?

殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2022/09/12
- メディア: Kindle版
このミステリーがすごい!2023年版 [ミステリ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
34年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。
巻頭では『ジョジョの奇妙な冒険』35周年を記念し『岸辺露伴は動かない』を特集。
荒木飛呂彦さんへのインタビューや、作家の伊坂幸太郎さん・辻村深月さん・法月綸太郎さん、
脚本家・加藤敏幸さんが荒木作品を語るエッセイ、脚本家・小林靖子さんへの
メールインタビューを掲載します。
また、西村京太郎さん追悼企画を実施。
有栖川有栖さん・大山誠一郎さん・千街晶之さんに「トラベルミステリー」
「本格ミステリー」「社会派ミステリー」の三つの視点から、作品を紹介してもらいます。
西村さんの担当編集者による座談会も必読です。
各業界人も注目する2022年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、
超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、例年の人気コンテンツも充実の一冊です。
今年もこの季節ですねえ。
いや、しかし今年の『このミス』は異常に目立つ表紙だ(笑
ジョジョ好きでもある私としては、この特集&インタビューは必読でした。
しかも、ジョジョ第9部は、第8部のラストに登場した「ジョセフ・ジョースター」の子孫
が登場するとの由。
実写版「岸部露伴は動かない」も楽しみですが、「ジャンケン小僧」とは・・・
第4部から抜粋になるのでしょうが、どう描くのか。
そして、やってくれましたね。「追悼 西村京太郎Forever」
有栖川さんが「トラベルミステリ」担当なのが良い!
各人が挙げられている作品で、今読むことが出来ない作品もあるので、
座談会の編集者の方々は、復刊をぜひとも。
というか、名探偵4部作などは、中途半端な復刊をしないで、全部すべきだろう。
各出版社とも、営業に多大なる影響を与えたと思うのですけどねえ。
とかなり愚痴です(苦笑
消失ミステリの『消えた乗組員』は未読ですね。今読めるのか・・・?
『ミステリー列車が消えた』も読みたいのですよ。むー・・・
隠し玉、麻耶雄嵩先生の『化石少女再び』がちょっと衝撃。
あれの続編なのか??あの終わり方で?と。
大山誠一郎先生の『仮面幻想曲』は全面改稿に時間がかかっている模様。
楽しみにしております。
辻真先先生、ついに『ピーターパンの殺人』が!復刊か?!楽しみすぎます。
しかも、名犬ルパン最終作の名も!
ランキングもそうなのですが、各作家さんが若いですよね。
自分より年齢が下の方が多いこと多いこと。いや嬉しいことなのでしょう。
しかし、いわゆる『変格』全盛の時代において、『新本格』『本格』も
さらに描いてほしいものです。
34年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。
巻頭では『ジョジョの奇妙な冒険』35周年を記念し『岸辺露伴は動かない』を特集。
荒木飛呂彦さんへのインタビューや、作家の伊坂幸太郎さん・辻村深月さん・法月綸太郎さん、
脚本家・加藤敏幸さんが荒木作品を語るエッセイ、脚本家・小林靖子さんへの
メールインタビューを掲載します。
また、西村京太郎さん追悼企画を実施。
有栖川有栖さん・大山誠一郎さん・千街晶之さんに「トラベルミステリー」
「本格ミステリー」「社会派ミステリー」の三つの視点から、作品を紹介してもらいます。
西村さんの担当編集者による座談会も必読です。
各業界人も注目する2022年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、
超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、例年の人気コンテンツも充実の一冊です。
今年もこの季節ですねえ。
いや、しかし今年の『このミス』は異常に目立つ表紙だ(笑
ジョジョ好きでもある私としては、この特集&インタビューは必読でした。
しかも、ジョジョ第9部は、第8部のラストに登場した「ジョセフ・ジョースター」の子孫
が登場するとの由。
実写版「岸部露伴は動かない」も楽しみですが、「ジャンケン小僧」とは・・・
第4部から抜粋になるのでしょうが、どう描くのか。
そして、やってくれましたね。「追悼 西村京太郎Forever」
有栖川さんが「トラベルミステリ」担当なのが良い!
各人が挙げられている作品で、今読むことが出来ない作品もあるので、
座談会の編集者の方々は、復刊をぜひとも。
というか、名探偵4部作などは、中途半端な復刊をしないで、全部すべきだろう。
各出版社とも、営業に多大なる影響を与えたと思うのですけどねえ。
とかなり愚痴です(苦笑
消失ミステリの『消えた乗組員』は未読ですね。今読めるのか・・・?
『ミステリー列車が消えた』も読みたいのですよ。むー・・・
隠し玉、麻耶雄嵩先生の『化石少女再び』がちょっと衝撃。
あれの続編なのか??あの終わり方で?と。
大山誠一郎先生の『仮面幻想曲』は全面改稿に時間がかかっている模様。
楽しみにしております。
辻真先先生、ついに『ピーターパンの殺人』が!復刊か?!楽しみすぎます。
しかも、名犬ルパン最終作の名も!
ランキングもそうなのですが、各作家さんが若いですよね。
自分より年齢が下の方が多いこと多いこと。いや嬉しいことなのでしょう。
しかし、いわゆる『変格』全盛の時代において、『新本格』『本格』も
さらに描いてほしいものです。
烙印 [大下宇陀児]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
狡猾な犯罪者が企みを傾けた殺人の顚末
自らの罪を蔽うべく男は計画を練る――
探偵小説界の巨匠、文庫傑作選決定版
日本探偵小説草創期に江戸川乱歩や甲賀三郎と並び称された巨匠・大下宇陀児の短篇の精髄を
全二巻に集成した文庫傑作選。本巻では、証書偽造が発覚した青年事業家が破滅を逃れるため
練り上げた周到な殺人計画とその顛末を描いて傑作と名高い表題作をはじめ、
奇抜な毒殺方法を用いた倒叙短篇「爪」、著者最後の短篇となった「螢」まで、
戦後の作品を含む全八篇を収める。
前作がどちらかといえば、探偵小説が筆者の言うような、トリックを用いた短編で構成
されていたような気がします。
対して本書所収作は、「人間が描かれていない」という、筆者の批判を
自らが受け止めた作品集だと感じました。
「決闘街」「情鬼」「凧」「不思議な母」「螢」などは、そういう意識を非常に
感じました。
特に「情鬼」と「蛍」「凧」は傑作。
「決闘街」は、サイコホラーのようなテイストで、ラストもまた謎を残して嫌な余韻が
残りますね。
「烙印」は由比祐吉の独り相撲が少しマヌケな感じもしますが、犯人視点で語られる
ところが見事で、みえない探偵に追い詰められる犯人が上手く描かれています。
さらに、さり気ない記述が伏線になっていたりと、読み応え充分です。
「爪」もやはり犯人視点。これは物理トリックといえるのかどうか微妙なところですが、
最後に明かされる謎解きが面白い。
「危険なる姉妹」。これもサイコホラーのような一編です。姉妹が佐久間を狙わない所が
また捻りがあるのかなと思いつつ読みました。
「情鬼」は、長尾新六の生涯が語られていくのですが、いやあ、ようやく信ずるに足る
愛する人が出来たのに、この結末というのは、あまりに悲しいですね。
ただ、それだけに上で書いたように傑作なのです。
エッセイ「乱歩の脱皮」の中で、探偵小説が主食になり得ないことの、他の一つの原因
として「ある事件について語るけども、人間については何も語らないことであろう」と
述べているのは、慧眼というか、私自身が物知らずなだけなのですが、
当時からこうした論争があったのだな、というのを初めて知りました。
書かれたのが1955年。本当に探偵小説、推理小説の歴史は深いと改めて感じました。
![烙印 (創元推理文庫) [ 大下 宇陀児 ] 烙印 (創元推理文庫) [ 大下 宇陀児 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4226/9784488464226_1_3.jpg?_ex=128x128)
狡猾な犯罪者が企みを傾けた殺人の顚末
自らの罪を蔽うべく男は計画を練る――
探偵小説界の巨匠、文庫傑作選決定版
日本探偵小説草創期に江戸川乱歩や甲賀三郎と並び称された巨匠・大下宇陀児の短篇の精髄を
全二巻に集成した文庫傑作選。本巻では、証書偽造が発覚した青年事業家が破滅を逃れるため
練り上げた周到な殺人計画とその顛末を描いて傑作と名高い表題作をはじめ、
奇抜な毒殺方法を用いた倒叙短篇「爪」、著者最後の短篇となった「螢」まで、
戦後の作品を含む全八篇を収める。
前作がどちらかといえば、探偵小説が筆者の言うような、トリックを用いた短編で構成
されていたような気がします。
対して本書所収作は、「人間が描かれていない」という、筆者の批判を
自らが受け止めた作品集だと感じました。
「決闘街」「情鬼」「凧」「不思議な母」「螢」などは、そういう意識を非常に
感じました。
特に「情鬼」と「蛍」「凧」は傑作。
「決闘街」は、サイコホラーのようなテイストで、ラストもまた謎を残して嫌な余韻が
残りますね。
「烙印」は由比祐吉の独り相撲が少しマヌケな感じもしますが、犯人視点で語られる
ところが見事で、みえない探偵に追い詰められる犯人が上手く描かれています。
さらに、さり気ない記述が伏線になっていたりと、読み応え充分です。
「爪」もやはり犯人視点。これは物理トリックといえるのかどうか微妙なところですが、
最後に明かされる謎解きが面白い。
「危険なる姉妹」。これもサイコホラーのような一編です。姉妹が佐久間を狙わない所が
また捻りがあるのかなと思いつつ読みました。
「情鬼」は、長尾新六の生涯が語られていくのですが、いやあ、ようやく信ずるに足る
愛する人が出来たのに、この結末というのは、あまりに悲しいですね。
ただ、それだけに上で書いたように傑作なのです。
エッセイ「乱歩の脱皮」の中で、探偵小説が主食になり得ないことの、他の一つの原因
として「ある事件について語るけども、人間については何も語らないことであろう」と
述べているのは、慧眼というか、私自身が物知らずなだけなのですが、
当時からこうした論争があったのだな、というのを初めて知りました。
書かれたのが1955年。本当に探偵小説、推理小説の歴史は深いと改めて感じました。
![烙印 (創元推理文庫) [ 大下 宇陀児 ] 烙印 (創元推理文庫) [ 大下 宇陀児 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4226/9784488464226_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 924 円
葬式組曲 [天祢涼]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
20代の女性社長・北条紫苑が率いる「北条葬儀社」。妙な関西弁を喋る餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目すぎる新入社員の新実……癖の強い社員が目立つが、
遺族からは「あの葬儀社は素晴らしい」と抜群の評価を得ている。
なんと、彼らには故人が遺した“謎”を解明する意外な一面があったのだ。
奇妙な遺言を残した父親、火葬を頑なに拒否する遺族、霊安室から忽然と消えた息子――。
謎に充ちた葬儀の果てに、衝撃の結末が待ち受けるミステリー連作短編集。
文春文庫化にあたり全面改稿。
以下、ややネタバレあり。
連作短編集のお手本のような本だと思います。
ただし、最後のどんでん返しをどう捉えるかは、読んだ人次第(笑
どの話も実によく練られていて、甲乙付けがたいものがありますが、
やはり「父の葬式」は群を抜いているかなあ。
主人公の雄二郎がある真相にたどり着くまでの行程も良いし、
それを兄の賢一郎に明かさないのもまた良い。
上手く出来ますねえ。
で、連作短編集ではあるものの、第一話の「父の葬式」は喪主となるこの久石雄二郎。
その雄二郎にまともな感じと評された、北条葬儀社の新美直也が第二話「祖母の葬式」
の主人公(ストーリーテラー)となります。
この話では、餡子&高屋敷が大活躍。葬儀依頼人のウソを見事に暴きます。
ラストは綺麗ですね。
第三話「息子の葬式」は、セレモニアQの職員・副島孔太。
彼の歩んできた人生が語られるとともに、なぜ斎場職員になったのかも
そこで明かされていきます。
ここの記載が、ラストの西野の告白と合わせて、本物語もう一つの読み所です。
死体が消えたという謎に、ひょんなことからセレモニアQに現れた餡子と新美。
餡子の名推理と副島の自信の辛い体験を交えた言葉で、御堂夫婦も救われます。
「妻の葬式」の主人公は、妻・咲を自殺で失った直葬葬儀社を営む荒垣創介。
妻の声(金切り声)が聞こえることから、改めて直葬では無く葬儀を北条葬儀社に
頼みに来るのですが、北条紫苑と咲は幼馴染みという関係でもあります。
この金切り声のトリックを弄した人物を絞り込む餡子の推理はお見事。
それ以外に犯人たり得ないという事実を突きつけます。
そして、これは最後のどんでん返しにも繋がるのですが、
本物語で、咲がQ市で借りたマンションの名義人は、やはり友人の「佐喜」ひろ子のもの。
このさらっと目に入ってくるのですが、ここは本当に上手いですね。
咲と佐喜。
そして最終話は「葬儀社の葬式」。主人公はこれまで泰然自若としていた(と描写される)
北条葬儀社の社長・北条紫苑。彼女のこれまでの葬儀での真の意味がここで明らかになります。
私は、「妻の葬式」の幼馴染みの咲の自殺、というのが、
この最終話で何らかの解決が出されるのかと想像していたのですが、それ以上の破壊力でした。
作者のあとがきにあるように、続編がありそうな雰囲気を匂わせ、最後にひっくり返す。
逆に続編あって良かったと思うのですけどねえ。
本書は新型コロナウイルス感染症で、葬儀が家族葬あるいは直葬というのが増えてきた中、
全面改稿し、再文庫化された作品です。
(改稿前にはもう一つ物語の根幹があったようなのですが、それは非常に気になります。)
確かに新型コロナウイルスの描写(名称こそ出てきませんが)があるのですが、
それが物語に上手く組み込まれているかはやや?でしょうか。
どちらかといえば、元々の『葬式組曲』を再文庫化してもらい、
この新型コロナウイルス感染症下の葬式を題材として『葬式組曲2』とか続編を
出して欲しかったなあ。
確かにこの最後だと北条葬儀社が再び葬儀社としてやっていけるか非常に厳しいと思いますが、
それでも、餡子が言ったように、紫苑ならば出来るのではないか。
天祢先生にはぜひぜひお願いしたいですね。
餡子が語る有名な哲学者たちの言葉が笑います。それへの周囲の反応が一番面白い。
しかし、餡子が最終話で語る、この「哲学者たち」の言葉としてきたのは、
市井の人々の言葉だと彼は言います。
(むろん哲学者たちが言った言葉とは読者は信じてませんでしょうが・笑)
本書の内容とはずれるものの、ここも良かったですね。
名言というか綸言というか、そういうものは別に有名人からだけ発するものではないのです。
![葬式組曲 (文春文庫) [ 天祢 涼 ] 葬式組曲 (文春文庫) [ 天祢 涼 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/9603/9784167919603_1_6.jpg?_ex=128x128)
20代の女性社長・北条紫苑が率いる「北条葬儀社」。妙な関西弁を喋る餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目すぎる新入社員の新実……癖の強い社員が目立つが、
遺族からは「あの葬儀社は素晴らしい」と抜群の評価を得ている。
なんと、彼らには故人が遺した“謎”を解明する意外な一面があったのだ。
奇妙な遺言を残した父親、火葬を頑なに拒否する遺族、霊安室から忽然と消えた息子――。
謎に充ちた葬儀の果てに、衝撃の結末が待ち受けるミステリー連作短編集。
文春文庫化にあたり全面改稿。
以下、ややネタバレあり。
連作短編集のお手本のような本だと思います。
ただし、最後のどんでん返しをどう捉えるかは、読んだ人次第(笑
どの話も実によく練られていて、甲乙付けがたいものがありますが、
やはり「父の葬式」は群を抜いているかなあ。
主人公の雄二郎がある真相にたどり着くまでの行程も良いし、
それを兄の賢一郎に明かさないのもまた良い。
上手く出来ますねえ。
で、連作短編集ではあるものの、第一話の「父の葬式」は喪主となるこの久石雄二郎。
その雄二郎にまともな感じと評された、北条葬儀社の新美直也が第二話「祖母の葬式」
の主人公(ストーリーテラー)となります。
この話では、餡子&高屋敷が大活躍。葬儀依頼人のウソを見事に暴きます。
ラストは綺麗ですね。
第三話「息子の葬式」は、セレモニアQの職員・副島孔太。
彼の歩んできた人生が語られるとともに、なぜ斎場職員になったのかも
そこで明かされていきます。
ここの記載が、ラストの西野の告白と合わせて、本物語もう一つの読み所です。
死体が消えたという謎に、ひょんなことからセレモニアQに現れた餡子と新美。
餡子の名推理と副島の自信の辛い体験を交えた言葉で、御堂夫婦も救われます。
「妻の葬式」の主人公は、妻・咲を自殺で失った直葬葬儀社を営む荒垣創介。
妻の声(金切り声)が聞こえることから、改めて直葬では無く葬儀を北条葬儀社に
頼みに来るのですが、北条紫苑と咲は幼馴染みという関係でもあります。
この金切り声のトリックを弄した人物を絞り込む餡子の推理はお見事。
それ以外に犯人たり得ないという事実を突きつけます。
そして、これは最後のどんでん返しにも繋がるのですが、
本物語で、咲がQ市で借りたマンションの名義人は、やはり友人の「佐喜」ひろ子のもの。
このさらっと目に入ってくるのですが、ここは本当に上手いですね。
咲と佐喜。
そして最終話は「葬儀社の葬式」。主人公はこれまで泰然自若としていた(と描写される)
北条葬儀社の社長・北条紫苑。彼女のこれまでの葬儀での真の意味がここで明らかになります。
私は、「妻の葬式」の幼馴染みの咲の自殺、というのが、
この最終話で何らかの解決が出されるのかと想像していたのですが、それ以上の破壊力でした。
作者のあとがきにあるように、続編がありそうな雰囲気を匂わせ、最後にひっくり返す。
逆に続編あって良かったと思うのですけどねえ。
本書は新型コロナウイルス感染症で、葬儀が家族葬あるいは直葬というのが増えてきた中、
全面改稿し、再文庫化された作品です。
(改稿前にはもう一つ物語の根幹があったようなのですが、それは非常に気になります。)
確かに新型コロナウイルスの描写(名称こそ出てきませんが)があるのですが、
それが物語に上手く組み込まれているかはやや?でしょうか。
どちらかといえば、元々の『葬式組曲』を再文庫化してもらい、
この新型コロナウイルス感染症下の葬式を題材として『葬式組曲2』とか続編を
出して欲しかったなあ。
確かにこの最後だと北条葬儀社が再び葬儀社としてやっていけるか非常に厳しいと思いますが、
それでも、餡子が言ったように、紫苑ならば出来るのではないか。
天祢先生にはぜひぜひお願いしたいですね。
餡子が語る有名な哲学者たちの言葉が笑います。それへの周囲の反応が一番面白い。
しかし、餡子が最終話で語る、この「哲学者たち」の言葉としてきたのは、
市井の人々の言葉だと彼は言います。
(むろん哲学者たちが言った言葉とは読者は信じてませんでしょうが・笑)
本書の内容とはずれるものの、ここも良かったですね。
名言というか綸言というか、そういうものは別に有名人からだけ発するものではないのです。
![葬式組曲 (文春文庫) [ 天祢 涼 ] 葬式組曲 (文春文庫) [ 天祢 涼 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/9603/9784167919603_1_6.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 825 円
仮面ライダーBLACK SUN [ネット]
過日の休日にイッキ観しました。
かつてリアルタイムで、午前10時か10時半からしていたBLACKを観ていた自分としては、
果たしてどうリブートしたのか、結構気になってました。
一番気になっていたのは、確か同級生、同年齢のはずである南光太郎と秋月信彦が
西島秀俊さんと中村倫也さんなのが一番気になってました(笑
箇条書きでいきます。TV版と原作版、Amazon版で使い分けます。
良かった点
・サタンサーベルの役割がかなり明確に描かれた。まあ独自解釈を入れて上手く融合させた。
・TV版における創世王について、Amazon版ではオマージュを含み観つつ、
独自解釈を取り入れた。
・「許さん!」からの「変身」が見れたこと。
・大神官ビシュムのシャドームーンへの取り入り方がより具体的に描かれたこと。
(ただし、ラストを見るとこれもビシュムの策略の1つだったようですが)
・蘇生するのはやっぱりクジラ怪人のエキスが必要。
・最終話OPでTV版OPを再現したこと。
・怪人が異常に若い理由(なぜ西島秀俊さんと中村倫也さんなのか)。
・ルー大柴さんの演技は素晴らしい。堂波真一の悪さが際立ちました。
なんかオマージュやTV版で??だったところの解釈のうまさばかりが上がりましたね(笑
次からはかなり辛口です。
本作は、政治的・社会的問題をかなり明確に描写し、それが物語の核になっています。
怪人差別が中核にあるものの、護流五無闘争などは、かつての学生闘争でしょう。
それ以外でもルー大柴さんと寺田農さん演じる政治家はどこかで見たような人物。
まあ、ルーさんの演技はめちゃくちゃ素晴らしいので、そこは措くとして。
また、一番興ざめしたのは、ラストで怪人差別ではなく、別の差別が描かれたこと。
本質は怪人差別であり、ここで一気に現実社会とリンクしすぎてしまっているのが
個人的には残念過ぎました。
怪人差別まではいかないにしても、原作版でも怪人の悲哀は随所に描かれてきました。
これは仮面ライダー側でもです。Blackだけでなく初代などでも書かれています。
怪人差別を描くなら、最後に堂波らによる大きな事実が明らかになった後、
少しは救いのある要素を入れても良かったと思います。
(差別は簡単に無くならないので、反団体が行動を続けているのはわかりますが)
ラストも、和泉葵が目指すものは何なのか。むろん差別をなくすのは重要ですが、
創世王が居ない今、怪人はその寿命を終え、いずれは居なくなる存在になったのでは
ないのでしょうか。なんかその辺りが全然描かれていないので、よくわからないんですよね。
最後もビシュムたちはどういう目的に切り替えたのか、よくわからない。
単純に疑問なのは、
Blackやシャドームーンのキングストーンは、元々埋め込んであったものを
自らの意思で取り出したんでしょうか。
(怪人は石を体内に埋め込まれる手術を行われると語られているので、
意思で取り出せたりするのだろうか。)
そもそも、キングストーンなどの石も人造物なんですかね。
最後に、本作はそもそも「仮面ライダー」なのでしょうか。
物語上はたぶん言葉は出てこないので。
かつてリアルタイムで、午前10時か10時半からしていたBLACKを観ていた自分としては、
果たしてどうリブートしたのか、結構気になってました。
一番気になっていたのは、確か同級生、同年齢のはずである南光太郎と秋月信彦が
西島秀俊さんと中村倫也さんなのが一番気になってました(笑
箇条書きでいきます。TV版と原作版、Amazon版で使い分けます。
良かった点
・サタンサーベルの役割がかなり明確に描かれた。まあ独自解釈を入れて上手く融合させた。
・TV版における創世王について、Amazon版ではオマージュを含み観つつ、
独自解釈を取り入れた。
・「許さん!」からの「変身」が見れたこと。
・大神官ビシュムのシャドームーンへの取り入り方がより具体的に描かれたこと。
(ただし、ラストを見るとこれもビシュムの策略の1つだったようですが)
・蘇生するのはやっぱりクジラ怪人のエキスが必要。
・最終話OPでTV版OPを再現したこと。
・怪人が異常に若い理由(なぜ西島秀俊さんと中村倫也さんなのか)。
・ルー大柴さんの演技は素晴らしい。堂波真一の悪さが際立ちました。
なんかオマージュやTV版で??だったところの解釈のうまさばかりが上がりましたね(笑
次からはかなり辛口です。
本作は、政治的・社会的問題をかなり明確に描写し、それが物語の核になっています。
怪人差別が中核にあるものの、護流五無闘争などは、かつての学生闘争でしょう。
それ以外でもルー大柴さんと寺田農さん演じる政治家はどこかで見たような人物。
まあ、ルーさんの演技はめちゃくちゃ素晴らしいので、そこは措くとして。
また、一番興ざめしたのは、ラストで怪人差別ではなく、別の差別が描かれたこと。
本質は怪人差別であり、ここで一気に現実社会とリンクしすぎてしまっているのが
個人的には残念過ぎました。
怪人差別まではいかないにしても、原作版でも怪人の悲哀は随所に描かれてきました。
これは仮面ライダー側でもです。Blackだけでなく初代などでも書かれています。
怪人差別を描くなら、最後に堂波らによる大きな事実が明らかになった後、
少しは救いのある要素を入れても良かったと思います。
(差別は簡単に無くならないので、反団体が行動を続けているのはわかりますが)
ラストも、和泉葵が目指すものは何なのか。むろん差別をなくすのは重要ですが、
創世王が居ない今、怪人はその寿命を終え、いずれは居なくなる存在になったのでは
ないのでしょうか。なんかその辺りが全然描かれていないので、よくわからないんですよね。
最後もビシュムたちはどういう目的に切り替えたのか、よくわからない。
単純に疑問なのは、
Blackやシャドームーンのキングストーンは、元々埋め込んであったものを
自らの意思で取り出したんでしょうか。
(怪人は石を体内に埋め込まれる手術を行われると語られているので、
意思で取り出せたりするのだろうか。)
そもそも、キングストーンなどの石も人造物なんですかね。
最後に、本作はそもそも「仮面ライダー」なのでしょうか。
物語上はたぶん言葉は出てこないので。
魔眼の匣の殺人 [今村昌弘]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
その日、神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子を含む9人が、
人里離れた班目機関の元研究施設“魔眼の匣”を訪れた。その主であり、
予言者として恐れられている老女は、来訪者に「あと二日のうちに、この地で4人死ぬ」と告げた。
施設と外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、
閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。
さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。
残り48時間、二人の予言に支配された匣のなかで、葉村と比留子は生き残って謎を解き明かせるか?!
ミステリ界を席捲した『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾。
『屍人荘』は結構辛口で書いた気がしますが、本書は特殊状況下(予言)というものが
厳然と(一応)存在しているというミステリであるにも関わらず、本格ミステリとして
見事な出来映えで、傑作だと思います。
読者への挑戦はないものの、事実上、犯人当てミステリがしっかりと成立しているのがお見事。
なぜ時計が破壊されたのか?この1点を明らかにすることで、犯人が特定できます。
このロジックだけでも本書は読む価値があります。
また、「三つ首トンネルの呪い」というオカルト話が出てくるのですが、この仕掛け
が秀逸で、会話を誤認させる見事なトリックになっています。
なぜクローズド・サークルが殺人事件では作られるのか、というある意味本格ミステリに
ついて回る謎が、実に上手く説明されているのも上手い。
東野圭吾さんの『ある閉ざされた雪の山荘で』のクローズド・サークルの必然性を
思い出しました。
物語の核である予言ですが、一酸化炭素中毒や山崩れ、熊に襲われるなど、
人為的なものでない事が立て続けに起こることで、匣に囚われた人々がある意味狂信してしまう
状態に陥りさせるのも見事です。予言がなければ事件が起こらなかったという
本作の特殊状況下ミステリが体現されているという、本格と特殊状況下ミステリが
非常に上手く融合した作品と思います。
ところでサキミの予言ですが、これはいつ予言されたものなんでしょうかね?
「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」
これは年まで決まっていたのかどうか、よくわかりません。
事前にこの予言を村人に知らせ、後で今月起こるとさらに知らせたのだろうか。
まあ普通に考えれば、年も予言していたのでしょう。
十色の予知は、なんとなく漠然とのイメージを絵で表現するというものでしたが、
サキミのそれは、一体どういう予言なのでしょうか。
比留子や葉村は、十色の予知がどういうものか知った段階ならば、
ではサキミのは?と問い詰めても良いと思いますが・・・
それと匣に居る人々は(犯人含めて)「四人死ぬ」という事に相当な信憑性を
見いだしてますが、神服の言葉では「四人死ぬ」とだけで、それ以上死なないとは限らない、
という(まあ難癖かもしれませんが)それは考えなかったのかとも少し思いました。
最後にさらに比留子は驚異の推理をサキミにぶつけるのですが、
よく長きにわたって凌いできたなあと感心してしまいました。
ところで、また「明智恭介」の名が・・・
いや返す返すも残念すぎるのですが、もしかして大ドンデン返しがあったりするのだろうか。
その日、神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子を含む9人が、
人里離れた班目機関の元研究施設“魔眼の匣”を訪れた。その主であり、
予言者として恐れられている老女は、来訪者に「あと二日のうちに、この地で4人死ぬ」と告げた。
施設と外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、
閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。
さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。
残り48時間、二人の予言に支配された匣のなかで、葉村と比留子は生き残って謎を解き明かせるか?!
ミステリ界を席捲した『屍人荘の殺人』シリーズ第2弾。
『屍人荘』は結構辛口で書いた気がしますが、本書は特殊状況下(予言)というものが
厳然と(一応)存在しているというミステリであるにも関わらず、本格ミステリとして
見事な出来映えで、傑作だと思います。
読者への挑戦はないものの、事実上、犯人当てミステリがしっかりと成立しているのがお見事。
なぜ時計が破壊されたのか?この1点を明らかにすることで、犯人が特定できます。
このロジックだけでも本書は読む価値があります。
また、「三つ首トンネルの呪い」というオカルト話が出てくるのですが、この仕掛け
が秀逸で、会話を誤認させる見事なトリックになっています。
なぜクローズド・サークルが殺人事件では作られるのか、というある意味本格ミステリに
ついて回る謎が、実に上手く説明されているのも上手い。
東野圭吾さんの『ある閉ざされた雪の山荘で』のクローズド・サークルの必然性を
思い出しました。
物語の核である予言ですが、一酸化炭素中毒や山崩れ、熊に襲われるなど、
人為的なものでない事が立て続けに起こることで、匣に囚われた人々がある意味狂信してしまう
状態に陥りさせるのも見事です。予言がなければ事件が起こらなかったという
本作の特殊状況下ミステリが体現されているという、本格と特殊状況下ミステリが
非常に上手く融合した作品と思います。
ところでサキミの予言ですが、これはいつ予言されたものなんでしょうかね?
「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」
これは年まで決まっていたのかどうか、よくわかりません。
事前にこの予言を村人に知らせ、後で今月起こるとさらに知らせたのだろうか。
まあ普通に考えれば、年も予言していたのでしょう。
十色の予知は、なんとなく漠然とのイメージを絵で表現するというものでしたが、
サキミのそれは、一体どういう予言なのでしょうか。
比留子や葉村は、十色の予知がどういうものか知った段階ならば、
ではサキミのは?と問い詰めても良いと思いますが・・・
それと匣に居る人々は(犯人含めて)「四人死ぬ」という事に相当な信憑性を
見いだしてますが、神服の言葉では「四人死ぬ」とだけで、それ以上死なないとは限らない、
という(まあ難癖かもしれませんが)それは考えなかったのかとも少し思いました。
最後にさらに比留子は驚異の推理をサキミにぶつけるのですが、
よく長きにわたって凌いできたなあと感心してしまいました。
ところで、また「明智恭介」の名が・・・
いや返す返すも残念すぎるのですが、もしかして大ドンデン返しがあったりするのだろうか。
殺人の多い料理店 [辻真先]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
盛岡のレストランで宮沢賢治の童話朗読会が開かれた。
取材に赴いた夕刊紙記者・可能克郎は奇妙な出来事に遭遇。
台本に賢治作品の贋物が紛れ込んでいたのだ。
参加者を震撼させた“贋作騒動”は未解決。
ところが二か月後、参加者の一人・倉村が変死する。
朗読会に出演したタレント三木七重と参加メンバーの関係に不審を覚えた克郎は調査を進めるが……。
今年の最初に『夜明け前の殺人』が同じく実業之日本社文庫から復刊されていて、
そちらは購入しなかったのですが、本書は解説にある「可能」の文字で購入しました(笑
辻作品で「可能」といえば、可能キリコ&牧薩次のポテト&スーパーシリーズでしょう。
そして可能克郎は、『仮題・中学殺人事件』で初登場した、キリコの兄。
彼が主人公の作品なんてあったのか!と購入。
解説によると、300冊近い辻作品の中でも、可能克郎は、辻御大が生み出した数多くの
名探偵と顔見知りという、まさに辻ワールドの橋渡し役のようです。
彼の足跡を追えば、辻作品の大半を網羅できるという、偉大な人物。
しかし、彼はホームズ役でもワトソン役でもないというのがまた面白いところ。
本書の中で、克郎は、自らがホームズとワトソン両役になり、事件の解決に挑むのですが・・・
良いところまではいきつつも、最後は幸運に助けられて命は助かったという始末に。
しかし彼がこのように登場する作品は数多くあるようで、解説で触れられている
作品群は、ぜひとも復刊してほしいですね。
本書は宮沢賢治尽くしです。章タイトルから、登場人物まで。
宮澤賢治についてほとんど知らない私でも、時折引用される童話など、楽しめました。
事件のトリックが、牧薩次の書いた本からというのは、中々洒落が効いてます。
さらなる辻作品の復刊が続くことを願いつつ。
盛岡のレストランで宮沢賢治の童話朗読会が開かれた。
取材に赴いた夕刊紙記者・可能克郎は奇妙な出来事に遭遇。
台本に賢治作品の贋物が紛れ込んでいたのだ。
参加者を震撼させた“贋作騒動”は未解決。
ところが二か月後、参加者の一人・倉村が変死する。
朗読会に出演したタレント三木七重と参加メンバーの関係に不審を覚えた克郎は調査を進めるが……。
今年の最初に『夜明け前の殺人』が同じく実業之日本社文庫から復刊されていて、
そちらは購入しなかったのですが、本書は解説にある「可能」の文字で購入しました(笑
辻作品で「可能」といえば、可能キリコ&牧薩次のポテト&スーパーシリーズでしょう。
そして可能克郎は、『仮題・中学殺人事件』で初登場した、キリコの兄。
彼が主人公の作品なんてあったのか!と購入。
解説によると、300冊近い辻作品の中でも、可能克郎は、辻御大が生み出した数多くの
名探偵と顔見知りという、まさに辻ワールドの橋渡し役のようです。
彼の足跡を追えば、辻作品の大半を網羅できるという、偉大な人物。
しかし、彼はホームズ役でもワトソン役でもないというのがまた面白いところ。
本書の中で、克郎は、自らがホームズとワトソン両役になり、事件の解決に挑むのですが・・・
良いところまではいきつつも、最後は幸運に助けられて命は助かったという始末に。
しかし彼がこのように登場する作品は数多くあるようで、解説で触れられている
作品群は、ぜひとも復刊してほしいですね。
本書は宮沢賢治尽くしです。章タイトルから、登場人物まで。
宮澤賢治についてほとんど知らない私でも、時折引用される童話など、楽しめました。
事件のトリックが、牧薩次の書いた本からというのは、中々洒落が効いてます。
さらなる辻作品の復刊が続くことを願いつつ。
素直な狂気 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「受け取っていただけますか?」
お金を返そうと「あいつ」が追いかけてくる!
最終電車が迫っている。
会社員の松山は財布をなくした青年に電車賃を手渡した。
「これはあげるんだよ」
「いえ、きっとお返ししますから」
青年は言葉通り、松山の家を訪ねて金を返そうとする。
しかし、妻の沙織は人違いだという。先々週の金曜日、N駅にいたはずはないと。
松山の完全犯罪が崩れ始める……。
(「素直な狂気」)
誰もが秘める狂気を鮮烈に描き出したミステリー。
なんか勘違いしており、長編だと思っていたら短編集でした。
元々は角川文庫で発売されていたとありますが、購入した記憶がないので、おそらく初読。
全編どれも面白いですが、表題作「素直な狂気」と「ラブレター」は構図が
やや似ていますね。しかも結末も全然違うけれども、主人公の想いはそこまで違わないの
だろうなと感じました。
ただし表題作の場合、お金を貸した鈴木なる人物は本当に存在していたのか?
(ちなみに表紙も主人公の松山と鈴木が描かれています。)
というホラーな要素も含んでいます。
もちろん借りたお金を苦労してでも返しに来るのは素晴らしいことなのですが、
彼が固執した理由があまり述べられてなく、かなり不気味です。
ラストも松山が彼の幻影を見ているように、存在そのものが?ですね。
(ただし奥さんや娘さんも会っているので、しかも刑事も。実在はしているのかなあ。)
最後の幻影的なものは、松山が生み出した自分の辛さを解消してくれた存在みたいな
ものでしょうか。
ちなみに、ホラー的要素ではなく、完全ホラーなのは「わらの男」と「皆勤賞の朝」
前者は時枝のやりたいことは一体何なのか?まるで不明。
後者はこの学校の校長も相当悪いですね。昔ながらの根性論。
母親と正人を狂わせた張本人です。
しかし、正人への同級生やその姉の仕打ちから考えると、
正人やその母親がこの6年間で何かをしてきたのだろうとは推測できますが。
(電車での行為はもしかしたら正人の母親がかつてした行為なのでは?)
「拾った悲鳴」は親子が助かる話で、主人公大活躍。ほっとします。
「インテリア」は、なんというかちょっとした喜劇を見ているようですね。
いや実にうまい。背景を描かず、この母子関係を想像させるようになっているのも。
徳間文庫さん、これからもよろしくお願いします!
![素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7903/9784198947903_1_3.jpg?_ex=128x128)
「受け取っていただけますか?」
お金を返そうと「あいつ」が追いかけてくる!
最終電車が迫っている。
会社員の松山は財布をなくした青年に電車賃を手渡した。
「これはあげるんだよ」
「いえ、きっとお返ししますから」
青年は言葉通り、松山の家を訪ねて金を返そうとする。
しかし、妻の沙織は人違いだという。先々週の金曜日、N駅にいたはずはないと。
松山の完全犯罪が崩れ始める……。
(「素直な狂気」)
誰もが秘める狂気を鮮烈に描き出したミステリー。
なんか勘違いしており、長編だと思っていたら短編集でした。
元々は角川文庫で発売されていたとありますが、購入した記憶がないので、おそらく初読。
全編どれも面白いですが、表題作「素直な狂気」と「ラブレター」は構図が
やや似ていますね。しかも結末も全然違うけれども、主人公の想いはそこまで違わないの
だろうなと感じました。
ただし表題作の場合、お金を貸した鈴木なる人物は本当に存在していたのか?
(ちなみに表紙も主人公の松山と鈴木が描かれています。)
というホラーな要素も含んでいます。
もちろん借りたお金を苦労してでも返しに来るのは素晴らしいことなのですが、
彼が固執した理由があまり述べられてなく、かなり不気味です。
ラストも松山が彼の幻影を見ているように、存在そのものが?ですね。
(ただし奥さんや娘さんも会っているので、しかも刑事も。実在はしているのかなあ。)
最後の幻影的なものは、松山が生み出した自分の辛さを解消してくれた存在みたいな
ものでしょうか。
ちなみに、ホラー的要素ではなく、完全ホラーなのは「わらの男」と「皆勤賞の朝」
前者は時枝のやりたいことは一体何なのか?まるで不明。
後者はこの学校の校長も相当悪いですね。昔ながらの根性論。
母親と正人を狂わせた張本人です。
しかし、正人への同級生やその姉の仕打ちから考えると、
正人やその母親がこの6年間で何かをしてきたのだろうとは推測できますが。
(電車での行為はもしかしたら正人の母親がかつてした行為なのでは?)
「拾った悲鳴」は親子が助かる話で、主人公大活躍。ほっとします。
「インテリア」は、なんというかちょっとした喜劇を見ているようですね。
いや実にうまい。背景を描かず、この母子関係を想像させるようになっているのも。
徳間文庫さん、これからもよろしくお願いします!
![素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7903/9784198947903_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 814 円
探偵は友人ではない [川澄浩平]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
わたし、海砂真史(うみすなまふみ)の幼馴染み・鳥飼歩(とりかいあゆむ)はなぜか
中学校に通っておらず、頭は切れるが自由気儘な性格で、素直じゃない。
でも、奇妙な謎に遭遇して困ったわたしがお菓子を持って訪ねていくと、
話を聞くだけで解決してくれた。彼は変人だけど、頼りになる名探偵なのだ。
歩の元に次々と新たな謎――洋菓子店の暗号クイズや美術室での奇妙な出来事――を
持ち込む日々のなかで、ふと思う。依頼人と探偵として繋がっているわたしたちは、友人とは言えない。だけど、わたしは謎がなくても歩に会いたいし、友人以上に大切に思っているのに……。
札幌を舞台に贈る、青春ミステリ第2弾!
日常の謎&青春ミステリの第2弾。
本作では、真史と歩の仲、そして歩の友人・鹿取の妹である彩香の登場で、
青春小説にぐっと寄った印象です。
特に彩香の出した謎(「第二話 正解にはほど遠い」)は、明らかに歩への好意を、
歩にしかわからない方法で示すという、彼にとって実に実に、答えにくい難問が示されます。
タイトルの問題は、「第四話 for you」で一応の解決をみるものの、
この最終話、話の中で出された謎が1つ残ったまま終わるという、中々面白い作品になってます。
歩の行動の謎は、この話だけ探偵役となる真史が解き明かすも、
そもそも真史が歩へ相談した謎は、そのまま。ラストでわかったから教えるというセリフが
出てきますが、真実は語られず。
さらに本書では「第三話 作者不詳」も、柳先生の沖縄の謎は実は解き明かされていない。
この話、学園モノとしてよく出来ているなあと思ったのですが、柳先生自体の謎は不明のまま。
「第一話 ロール・プレイ」が個人的にはあまりわからなかったなあ。
いや、自分の理解度が足りてないのだと思いますが。
全体を通して、前作が真史とその親友達との話で、そこに歩が介在していたものが、
本作では親友達は登場するものの、真史と歩、そして新キャラ・彩香の関係
とはいえ、彩香の思う関係と真史の思う関係はまるで違うという、そこの面白さもあります。
さて第3弾は如何なる方向に向かうのか、楽しみです。
わたし、海砂真史(うみすなまふみ)の幼馴染み・鳥飼歩(とりかいあゆむ)はなぜか
中学校に通っておらず、頭は切れるが自由気儘な性格で、素直じゃない。
でも、奇妙な謎に遭遇して困ったわたしがお菓子を持って訪ねていくと、
話を聞くだけで解決してくれた。彼は変人だけど、頼りになる名探偵なのだ。
歩の元に次々と新たな謎――洋菓子店の暗号クイズや美術室での奇妙な出来事――を
持ち込む日々のなかで、ふと思う。依頼人と探偵として繋がっているわたしたちは、友人とは言えない。だけど、わたしは謎がなくても歩に会いたいし、友人以上に大切に思っているのに……。
札幌を舞台に贈る、青春ミステリ第2弾!
日常の謎&青春ミステリの第2弾。
本作では、真史と歩の仲、そして歩の友人・鹿取の妹である彩香の登場で、
青春小説にぐっと寄った印象です。
特に彩香の出した謎(「第二話 正解にはほど遠い」)は、明らかに歩への好意を、
歩にしかわからない方法で示すという、彼にとって実に実に、答えにくい難問が示されます。
タイトルの問題は、「第四話 for you」で一応の解決をみるものの、
この最終話、話の中で出された謎が1つ残ったまま終わるという、中々面白い作品になってます。
歩の行動の謎は、この話だけ探偵役となる真史が解き明かすも、
そもそも真史が歩へ相談した謎は、そのまま。ラストでわかったから教えるというセリフが
出てきますが、真実は語られず。
さらに本書では「第三話 作者不詳」も、柳先生の沖縄の謎は実は解き明かされていない。
この話、学園モノとしてよく出来ているなあと思ったのですが、柳先生自体の謎は不明のまま。
「第一話 ロール・プレイ」が個人的にはあまりわからなかったなあ。
いや、自分の理解度が足りてないのだと思いますが。
全体を通して、前作が真史とその親友達との話で、そこに歩が介在していたものが、
本作では親友達は登場するものの、真史と歩、そして新キャラ・彩香の関係
とはいえ、彩香の思う関係と真史の思う関係はまるで違うという、そこの面白さもあります。
さて第3弾は如何なる方向に向かうのか、楽しみです。
Iの悲劇 [米澤穂信]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
Iターンプロジェクト担当公務員が直面するのは、
過疎地のリアルと、風変わりな「謎」――。
無人になって6年が過ぎた山間の集落・簑石を
再生させるプロジェクトが、市長の肝いりで始動した。
市役所の「甦り課」で移住者たちの支援を担当することになった万願寺だが、
課長の西野も新人の観山もやる気なし。
しかも、公募で集まってきた定住希望者たちは、
次々とトラブルに見舞われ、
一人また一人と簑石を去って行き……。
直木賞作家・米澤穂信がおくる極上のミステリ悲喜劇。
本書は小説であり、フィクションです。
しかし、本書のテーマとなっているIターンは現実に各自治体が
積極的に行っていることなんだろうと思います。
そして、それが上手くいっているのか、どうか。
本書で描かれる簑石と似たような状況、再び無人地になるようなところばかり
なのではないか、と想像してしまいました。
本書ラストである人物が
「集落が無人になるなら、これは夢のような出来事だよ。その地域への支出をほぼすべて
停められるんだからね。」
このセリフは、これからの日本社会を現しているのだろうと。
これからの日本は人口減社会になっていきます。
行政インフラ・生活インフラをどう維持していくのかが死活問題になります。
そして現在過疎地と行政から指定されている箇所は、次々と本作の簑石のように
無人地になっていく可能性が高いでしょう。
そのような状況になっていく時、この南はかま市と同じようにIターンをやるのか、
それとも、都市に人々を集中させるのか。
インフラ・予算をどう活かすのか、真剣に考える時期はもう来ているのではないか、と。
暗澹たる気分になりますね・・・
小説なのに、極めてリアルな現実を突きつけられている、そんな小説なのです。
それが一番出ているのが「第五章 深い沼」。
この話、事件は起こりません。
簑石の状況を市長へ報告と、簑石の除雪問題のみ。
しかし、彼とその弟との電話越しの論争は読ませますね・・・
「棄民だ」と万願寺は言います。
日本社会でそれにはならないでしょうが、これからどうなるのか・・・
そんな現代の問題とは離れて、ミステリ小説の側面を。
主人公である万願寺の詳しい報告書を読んで、西野課長が安楽椅子探偵ばりの
推理を魅せる第1話。これはそういうコンビものかとふと思いました。
万願寺は学生気分が抜けないとみる観山(後に認識を少し改めますが)は、
どこか掴めない人間だなという印象。
しかし、この二人が・・・というのが仕掛けの1つ。
ただ、ご本人たちも認めているように「白い仏」はやりすぎですねえ。
一瞬、ご本尊を移動させた事によるものかと信じそうでした。
それ以外は実に上手い(移住者の方には失礼ですが)。
上手く種を蒔いています。西野課長より観山さんの方がさりげなく実に上手い。
さすが米澤先生で、上手く仕掛けを隠しています。
しかし本書の続編は難しいだろうなあ。
ところで、『○○の悲劇』というタイトルですが、当然ながら
これはドルリー・レーン4部作『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』
からの本歌取りなのは言わずもがな、だと思います。
しかし、当然分からない人も居るんだろうと。
なので、この作品を手に取った方には、是非とも古典的傑作を手にとって貰いたいですね。
最近『Yの悲劇』も創元推理文庫から再び刊行されましたので。
(購入済みです)
![Iの悲劇 (文春文庫) [ 米澤 穂信 ] Iの悲劇 (文春文庫) [ 米澤 穂信 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/9313/9784167919313_1_6.jpg?_ex=128x128)
Iターンプロジェクト担当公務員が直面するのは、
過疎地のリアルと、風変わりな「謎」――。
無人になって6年が過ぎた山間の集落・簑石を
再生させるプロジェクトが、市長の肝いりで始動した。
市役所の「甦り課」で移住者たちの支援を担当することになった万願寺だが、
課長の西野も新人の観山もやる気なし。
しかも、公募で集まってきた定住希望者たちは、
次々とトラブルに見舞われ、
一人また一人と簑石を去って行き……。
直木賞作家・米澤穂信がおくる極上のミステリ悲喜劇。
本書は小説であり、フィクションです。
しかし、本書のテーマとなっているIターンは現実に各自治体が
積極的に行っていることなんだろうと思います。
そして、それが上手くいっているのか、どうか。
本書で描かれる簑石と似たような状況、再び無人地になるようなところばかり
なのではないか、と想像してしまいました。
本書ラストである人物が
「集落が無人になるなら、これは夢のような出来事だよ。その地域への支出をほぼすべて
停められるんだからね。」
このセリフは、これからの日本社会を現しているのだろうと。
これからの日本は人口減社会になっていきます。
行政インフラ・生活インフラをどう維持していくのかが死活問題になります。
そして現在過疎地と行政から指定されている箇所は、次々と本作の簑石のように
無人地になっていく可能性が高いでしょう。
そのような状況になっていく時、この南はかま市と同じようにIターンをやるのか、
それとも、都市に人々を集中させるのか。
インフラ・予算をどう活かすのか、真剣に考える時期はもう来ているのではないか、と。
暗澹たる気分になりますね・・・
小説なのに、極めてリアルな現実を突きつけられている、そんな小説なのです。
それが一番出ているのが「第五章 深い沼」。
この話、事件は起こりません。
簑石の状況を市長へ報告と、簑石の除雪問題のみ。
しかし、彼とその弟との電話越しの論争は読ませますね・・・
「棄民だ」と万願寺は言います。
日本社会でそれにはならないでしょうが、これからどうなるのか・・・
そんな現代の問題とは離れて、ミステリ小説の側面を。
主人公である万願寺の詳しい報告書を読んで、西野課長が安楽椅子探偵ばりの
推理を魅せる第1話。これはそういうコンビものかとふと思いました。
万願寺は学生気分が抜けないとみる観山(後に認識を少し改めますが)は、
どこか掴めない人間だなという印象。
しかし、この二人が・・・というのが仕掛けの1つ。
ただ、ご本人たちも認めているように「白い仏」はやりすぎですねえ。
一瞬、ご本尊を移動させた事によるものかと信じそうでした。
それ以外は実に上手い(移住者の方には失礼ですが)。
上手く種を蒔いています。西野課長より観山さんの方がさりげなく実に上手い。
さすが米澤先生で、上手く仕掛けを隠しています。
しかし本書の続編は難しいだろうなあ。
ところで、『○○の悲劇』というタイトルですが、当然ながら
これはドルリー・レーン4部作『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』
からの本歌取りなのは言わずもがな、だと思います。
しかし、当然分からない人も居るんだろうと。
なので、この作品を手に取った方には、是非とも古典的傑作を手にとって貰いたいですね。
最近『Yの悲劇』も創元推理文庫から再び刊行されましたので。
(購入済みです)
![Iの悲劇 (文春文庫) [ 米澤 穂信 ] Iの悲劇 (文春文庫) [ 米澤 穂信 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/9313/9784167919313_1_6.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 836 円
透明人間は密室に潜む [阿津川辰海]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
透明人間が事件を起こしたら?
アイドルオタクが裁判員裁判に直面したら?
犯行現場の音を細かく聞いてみたら?
ミステリイベント中のクルーズ船で参加者の拉致監禁事件が起こったら?
阿津川辰海の傑作短編集がついに文庫化。
波に乗る著者が放つ高密度の本格ミステリ!読めばファン確定。驚嘆必至、必読の一冊!
「名探偵とは」という名探偵論を展開した「紅蓮館」「蒼海館」。
個人的に後者については、拙ブログでも色々批判しましたが、
本短編集は傑作です。
どの作品にも、2つの仕掛けが施されていて、
特に表題作と「盗聴された殺人」の2作品は、甲乙付けがたい、傑作だと思います。
前者は、特殊状況下における殺人という設定ですが、これが実はそこまで特殊でない、
というのが面白い。
最初に人の透明人間病について説明があり、現在それの薬や治療法が開発されている
という状況。
内藤彩子は、この透明人間病の特効薬を開発中の人物を殺しにいくという、
倒叙ミステリですね。
とにかく透明人間だからといっても、物質を持てばそれが浮いている状態になり、
何かが飛び散れば、それも浮いているように見えてしまう。
つまり、透明だからといって、殺人やら窃盗やらが簡単にできる訳がない。
本作で描かれる透明人間病は、そういうもののようです。
透明人間が密室のどこに隠れたのか??これは案外とすぐわかるのではないかと
思います。
しかし、そこからが本作の真骨頂。なぜ「彩子」が特効薬開発者の川路教授を殺害しなければ
ならなかったのか、この謎が見事です。
ところで、参考文献に引かれている「ジョジョ」は、透明の赤ちゃんですかね。
後者、「盗聴された殺人」も、特殊能力を持つ人物と探偵とのコンビが挑む事件。
異常なまでに聴力が良い山口美々香と、探偵事務所所長の大野糺が主人公。
これも特殊能力が活かされつつも、実は犯人当て小説、読者への挑戦状になっている
ところが大仕掛けであり、読み応え抜群でした。
このコンビ、『録音された誘拐』という長編に登場しているとのことで、
こちらも楽しみです。
「六人の熱狂する日本人」はオチは読めるものの、これは現実にあり得る話だなと(笑
あり得るというのは、選ばれた裁判員全員が、同じアイドルのファンであるということで、
6人で1つの事件から、これまでまるで違う真相(?)を探り出すのはまあ、ないでしょう(笑
この作品の凄いところは、アイドルオタク・ファンのそれぞれの行動が、事件の真相に
迫っていく作りになっているところ。何を聞かされているのかという判事と判事補を
尻目に、別の真相が浮かび上がってくるエキセントリックな過程は、ある意味凄い。
「第13号船室からの脱出」。これもまたオチが見えているものの、
脱出ゲームで出される謎解きについては、極めてレベルが高く、どんでん返しも
面白く読めました。
ただなんというか、メイン登場人物3人がちょっとなあという。個人的に好きになれなかった。
帯に記された○○で何位!とかは完全スルーですが、
これだけ別視点から、高度なミステリを集めた短編集は中々ないでしょう。
ぜひ一読をお勧めします。
透明人間が事件を起こしたら?
アイドルオタクが裁判員裁判に直面したら?
犯行現場の音を細かく聞いてみたら?
ミステリイベント中のクルーズ船で参加者の拉致監禁事件が起こったら?
阿津川辰海の傑作短編集がついに文庫化。
波に乗る著者が放つ高密度の本格ミステリ!読めばファン確定。驚嘆必至、必読の一冊!
「名探偵とは」という名探偵論を展開した「紅蓮館」「蒼海館」。
個人的に後者については、拙ブログでも色々批判しましたが、
本短編集は傑作です。
どの作品にも、2つの仕掛けが施されていて、
特に表題作と「盗聴された殺人」の2作品は、甲乙付けがたい、傑作だと思います。
前者は、特殊状況下における殺人という設定ですが、これが実はそこまで特殊でない、
というのが面白い。
最初に人の透明人間病について説明があり、現在それの薬や治療法が開発されている
という状況。
内藤彩子は、この透明人間病の特効薬を開発中の人物を殺しにいくという、
倒叙ミステリですね。
とにかく透明人間だからといっても、物質を持てばそれが浮いている状態になり、
何かが飛び散れば、それも浮いているように見えてしまう。
つまり、透明だからといって、殺人やら窃盗やらが簡単にできる訳がない。
本作で描かれる透明人間病は、そういうもののようです。
透明人間が密室のどこに隠れたのか??これは案外とすぐわかるのではないかと
思います。
しかし、そこからが本作の真骨頂。なぜ「彩子」が特効薬開発者の川路教授を殺害しなければ
ならなかったのか、この謎が見事です。
ところで、参考文献に引かれている「ジョジョ」は、透明の赤ちゃんですかね。
後者、「盗聴された殺人」も、特殊能力を持つ人物と探偵とのコンビが挑む事件。
異常なまでに聴力が良い山口美々香と、探偵事務所所長の大野糺が主人公。
これも特殊能力が活かされつつも、実は犯人当て小説、読者への挑戦状になっている
ところが大仕掛けであり、読み応え抜群でした。
このコンビ、『録音された誘拐』という長編に登場しているとのことで、
こちらも楽しみです。
「六人の熱狂する日本人」はオチは読めるものの、これは現実にあり得る話だなと(笑
あり得るというのは、選ばれた裁判員全員が、同じアイドルのファンであるということで、
6人で1つの事件から、これまでまるで違う真相(?)を探り出すのはまあ、ないでしょう(笑
この作品の凄いところは、アイドルオタク・ファンのそれぞれの行動が、事件の真相に
迫っていく作りになっているところ。何を聞かされているのかという判事と判事補を
尻目に、別の真相が浮かび上がってくるエキセントリックな過程は、ある意味凄い。
「第13号船室からの脱出」。これもまたオチが見えているものの、
脱出ゲームで出される謎解きについては、極めてレベルが高く、どんでん返しも
面白く読めました。
ただなんというか、メイン登場人物3人がちょっとなあという。個人的に好きになれなかった。
帯に記された○○で何位!とかは完全スルーですが、
これだけ別視点から、高度なミステリを集めた短編集は中々ないでしょう。
ぜひ一読をお勧めします。
新シャーロック・ホームズの冒険 [シャーロック・ホームズ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
今度はトリオで謎解き!?
知念実希人さん絶賛!
「誰もが愛した名探偵が霧のロンドンに戻ってきた!
二人の活躍を堪能できる喜びに打ち震えた」
世界中で愛されるシャーロック・ホームズシリーズに新たなパスティーシュ作品が登場!
小説家の創作ノートから本物の殺人事件が生まれ。ホームズが難事件に挑む!
初老の男が服毒による変死を遂げたと新聞で報じられた朝、三十代前半の女性が
ベイカー街221Bへホームズを訪ねてくる。彼女はアビゲイル・ムーンと名乗り、
ダミアン・コリンボーンなる男性の筆名で探偵小説を書いている。
コリンボーンといえば、相棒ワトスンの本棚にも作品が置いてあるほどの売れっ子作家だ。
依頼の内容は、「真犯人に被害者と犯行の手口を盗まれた、自分の無実を証明してほしい」。
彼女は次作に向けてストーリーの構想を練っているところだったが、
昨日ヴォクスホール公園で死んだ男は、被害者として自分が選んだ人物だった。
なぜ変死事件は起きたのか?ホームズとワトスンは調査に乗り出すが……。
新たなホームズパスティーシュが登場しました。
本シリーズ、すでに新作2作は刊行予定とのこと。これは楽しみです。
ホームズを探偵役とした作品群については、これまでも若干私見を書いてきましたが、
本作は、コナン・ドイル財団公認の『絹の家』や『芸術家の血』『眠らぬ亡霊』、
これらの作品よりも遙かにホームズ探偵譚で、本当に楽しめました。
ホームズを探偵とする以上、やはり事件も「聖典」に近い作風・筆致になるのが
妥当なのではないか、と個人的に思います。
もう古典的名作になってしまっているかもしれませんが、
ジューン トムスンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』から始まるパスティーシュ
は素晴らしかったです。また新たにホームズとワトソンの冒険が読めるとは、と。
先に挙げた3作品は、事件の内容やホームズの過去に迫る手法が、私としては
それは違うのではないか、と思っています。ミステリとして優れているかどうかはともかく、
ホームズ冒険譚としては違うだろうと。
今回、この作品、何の事前情報もなく読んだのですが、見事にホームズ冒険譚だなと。
長編『ボスコム渓谷の惨劇』を彷彿とさせる後半などは見事です。
前半はホームズの捜査とワトソンの捜査(?)で読ませつつ、
ホームズ伝記作家の地位を脅かされるアビゲイル・ムーンとの対決(?)もそこかしこに。
とはいえ、後者はワトソンの杞憂でしかなく、訳者あとがきや解説で述べられているよう、
アビゲイル・ムーンの苦悩は、当時の女性の地位を考えるという意味で、興味深かったです。
ヴィクトリア朝の女性がどう生きていくのか、中々考えさせられます。
「聖典」にも優れた女性が数多く登場しますが(ヴァイオレット嬢とか)、
彼女たちが就いている職業は、確かに女性のみというものなのでしょう。
アビゲイル・ムーンはある種果敢にそこに挑戦しようとした、とも読めますが、
彼女の物語からの退場は悲しい場面でした。
事件の謎は、被害者がどう毒を飲まされたのか、そして彼の持っていたメモは何か、の2点。
とにかくホームズ探偵術で解かれていく事件の真相をただただ楽しんでほしいです。
ただ1点。このタイトルはそれ以上に訳しようがなかったのですかね。
原題は何だったか・・・
![新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 駒月 雅子 ] 新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 駒月 雅子 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/5878/9784041125878_1_2.jpg?_ex=128x128)
今度はトリオで謎解き!?
知念実希人さん絶賛!
「誰もが愛した名探偵が霧のロンドンに戻ってきた!
二人の活躍を堪能できる喜びに打ち震えた」
世界中で愛されるシャーロック・ホームズシリーズに新たなパスティーシュ作品が登場!
小説家の創作ノートから本物の殺人事件が生まれ。ホームズが難事件に挑む!
初老の男が服毒による変死を遂げたと新聞で報じられた朝、三十代前半の女性が
ベイカー街221Bへホームズを訪ねてくる。彼女はアビゲイル・ムーンと名乗り、
ダミアン・コリンボーンなる男性の筆名で探偵小説を書いている。
コリンボーンといえば、相棒ワトスンの本棚にも作品が置いてあるほどの売れっ子作家だ。
依頼の内容は、「真犯人に被害者と犯行の手口を盗まれた、自分の無実を証明してほしい」。
彼女は次作に向けてストーリーの構想を練っているところだったが、
昨日ヴォクスホール公園で死んだ男は、被害者として自分が選んだ人物だった。
なぜ変死事件は起きたのか?ホームズとワトスンは調査に乗り出すが……。
新たなホームズパスティーシュが登場しました。
本シリーズ、すでに新作2作は刊行予定とのこと。これは楽しみです。
ホームズを探偵役とした作品群については、これまでも若干私見を書いてきましたが、
本作は、コナン・ドイル財団公認の『絹の家』や『芸術家の血』『眠らぬ亡霊』、
これらの作品よりも遙かにホームズ探偵譚で、本当に楽しめました。
ホームズを探偵とする以上、やはり事件も「聖典」に近い作風・筆致になるのが
妥当なのではないか、と個人的に思います。
もう古典的名作になってしまっているかもしれませんが、
ジューン トムスンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』から始まるパスティーシュ
は素晴らしかったです。また新たにホームズとワトソンの冒険が読めるとは、と。
先に挙げた3作品は、事件の内容やホームズの過去に迫る手法が、私としては
それは違うのではないか、と思っています。ミステリとして優れているかどうかはともかく、
ホームズ冒険譚としては違うだろうと。
今回、この作品、何の事前情報もなく読んだのですが、見事にホームズ冒険譚だなと。
長編『ボスコム渓谷の惨劇』を彷彿とさせる後半などは見事です。
前半はホームズの捜査とワトソンの捜査(?)で読ませつつ、
ホームズ伝記作家の地位を脅かされるアビゲイル・ムーンとの対決(?)もそこかしこに。
とはいえ、後者はワトソンの杞憂でしかなく、訳者あとがきや解説で述べられているよう、
アビゲイル・ムーンの苦悩は、当時の女性の地位を考えるという意味で、興味深かったです。
ヴィクトリア朝の女性がどう生きていくのか、中々考えさせられます。
「聖典」にも優れた女性が数多く登場しますが(ヴァイオレット嬢とか)、
彼女たちが就いている職業は、確かに女性のみというものなのでしょう。
アビゲイル・ムーンはある種果敢にそこに挑戦しようとした、とも読めますが、
彼女の物語からの退場は悲しい場面でした。
事件の謎は、被害者がどう毒を飲まされたのか、そして彼の持っていたメモは何か、の2点。
とにかくホームズ探偵術で解かれていく事件の真相をただただ楽しんでほしいです。
ただ1点。このタイトルはそれ以上に訳しようがなかったのですかね。
原題は何だったか・・・
![新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 駒月 雅子 ] 新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 駒月 雅子 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/5878/9784041125878_1_2.jpg?_ex=128x128)
新シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 駒月 雅子 ]
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