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五人目の告白―小林泰三ミステリ傑作選 [小林泰三]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「僕は実はもう一つ情報源を持っている。
つまり、僕自身の知識だ。
この知識によって今までの推理はすべて覆る」
語り≒騙りがもたらす驚愕のラスト
『アリス殺し』の鬼才が技巧を凝らす6編
自分の中には凶悪な人格が眠っている──記憶にない動物殺しや対人トラブルに苦しむ青年は、
ノートを介して「敵対者」との対話を試みるが、忌まわしき存在はついに殺人にまで手を染め……
二重三重のどんでん返しが待ち受ける「獣の記憶」をはじめ、全六編の掌短編を収録。
読む者を巧みに翻弄し、独自のロジック×ゴシック世界へといざなう、
『アリス殺し』の鬼才の真骨頂がここに。解説=田中啓文
小林泰三が亡くなられて、もう4年も経つのかと。
『○○殺し』はぜひ完結させてほしかったです。残念ですね。
本書はミステリ傑作選となってますが、いつもの小林節で、グロとSFがかなり
前面に出ています。
「双生児」は、ミステリ色が強い気がしますが、そもそも真帆の感じる疑問は
双子なら、少しは思ったことがあるのかもしれません。
ある意味では、SF=少し・不思議というSFから、小林ワールドのSFに変化していく
過程が読めます。
「攫われて」が一番きつい作品ですね。世界が一気に反転するんだけど、
そこで待つのは最悪の結末・・・
愁眉をあえて挙げれば「独裁者の掟」。世界は独特なものなのに、
ミステリ的な解決がしっかりしているのが素晴らしい。
これからも小林先生の作品を読み続けていきたいと思います。
「僕は実はもう一つ情報源を持っている。
つまり、僕自身の知識だ。
この知識によって今までの推理はすべて覆る」
語り≒騙りがもたらす驚愕のラスト
『アリス殺し』の鬼才が技巧を凝らす6編
自分の中には凶悪な人格が眠っている──記憶にない動物殺しや対人トラブルに苦しむ青年は、
ノートを介して「敵対者」との対話を試みるが、忌まわしき存在はついに殺人にまで手を染め……
二重三重のどんでん返しが待ち受ける「獣の記憶」をはじめ、全六編の掌短編を収録。
読む者を巧みに翻弄し、独自のロジック×ゴシック世界へといざなう、
『アリス殺し』の鬼才の真骨頂がここに。解説=田中啓文
小林泰三が亡くなられて、もう4年も経つのかと。
『○○殺し』はぜひ完結させてほしかったです。残念ですね。
本書はミステリ傑作選となってますが、いつもの小林節で、グロとSFがかなり
前面に出ています。
「双生児」は、ミステリ色が強い気がしますが、そもそも真帆の感じる疑問は
双子なら、少しは思ったことがあるのかもしれません。
ある意味では、SF=少し・不思議というSFから、小林ワールドのSFに変化していく
過程が読めます。
「攫われて」が一番きつい作品ですね。世界が一気に反転するんだけど、
そこで待つのは最悪の結末・・・
愁眉をあえて挙げれば「独裁者の掟」。世界は独特なものなのに、
ミステリ的な解決がしっかりしているのが素晴らしい。
これからも小林先生の作品を読み続けていきたいと思います。
神無迷路 [ゲーム]
まずはマイニンテンドーストアさんの紹介ページから。
世界と隔絶した地下の研究施設、閉鎖環境での連続殺人。神の気配もない深淵、
迷路のごとく交錯し拡がる平行世界。幻のような幸せへの扉、何処にあるでしょうか。
「人は同時に2つの扉を通り抜けることができるか?」
ジャンルはテキストアドベンチャーですが、サウンドノベルです。
しかも500円という破格の値段にもかかわらず、フルボイス。
が、問題はそこではなく、本作は今年発売30年を迎える「かまいたちの夜」リスペクト
かつオマージュ作品なのですね。
シルエットで描かれる人物、謎の地下研究所に閉じ込められる主人公たち。
そして起こる殺人事件・・・果たして真相は?
とにかく青いシルエットが、「かまいたちの夜」にしか見えません。
思い出補正もありますが、昨今珍しい、本格的なサウンドノベル。
しかし、「かまいたちの夜」と違うのは、本作が究極的には謎解きに主眼を
おいているのではないところでしょうか。SFサスペンスあるいはSFミステリ。
紹介文にある、迷路のように広がる平行世界というのがそれを表現しています。
最初にプレイすると、異常に量子力学とかブラックホールが~宇宙物理学とか、
その辺りの説明が一気になされます。
主人公はゲームを進めていくと、選べなかった選択肢のロックが外れ、
新たなフローチャートに行くことができます。
まあ、こう書くといわゆるサウンドノベルなんです。
ただ、本作は上記の科学や平行世界というのを取り入れたことで、
ある意味、サウンドノベルの核心を突いた作品になのではないかと思いました。
本来、「かまいたちの夜」ならば、ミステリ編の透とスパイ編の透は
透は同じ人物ですが、体験した事や、そもそも世界が違います。
(真理を始めとする登場人物たちは姿形は同じでも、別世界で生きるその人たち)
ところが、この「神無迷路」では、そうした枝分かれした際の記憶が
そのまま次の世界へも引き継がれているため、最終的に全ての世界の物語のエンドに
辿り着くという(説明が合っているか非常に怪しいです)。
ミステリ編の透をクリアし、スパイ編の透をしたとき、その透はミステリ編の
記憶も保持しているため、スパイ編で相当な違和感を感じる筈です。
本作はその違和感(というか作中では特異体質)を逆手に取って、
上手く物語にしているわけです。
だからこそ、最後のエンディングがあるんだろうと思います。
個人的にはなぜ幼馴染みが生きていたのかよくわかりませんでしたが・・・
(元々亡くなって亡かった?)
すでに大きくネタバレしているのであれですが、
「かまいたちの夜」リスペクト&オマージュ作品として、ミステリを期待しては
いけないところが注意ですね。
ただ、価格を考えたら、充分買いだと思います。
世界と隔絶した地下の研究施設、閉鎖環境での連続殺人。神の気配もない深淵、
迷路のごとく交錯し拡がる平行世界。幻のような幸せへの扉、何処にあるでしょうか。
「人は同時に2つの扉を通り抜けることができるか?」
ジャンルはテキストアドベンチャーですが、サウンドノベルです。
しかも500円という破格の値段にもかかわらず、フルボイス。
が、問題はそこではなく、本作は今年発売30年を迎える「かまいたちの夜」リスペクト
かつオマージュ作品なのですね。
シルエットで描かれる人物、謎の地下研究所に閉じ込められる主人公たち。
そして起こる殺人事件・・・果たして真相は?
とにかく青いシルエットが、「かまいたちの夜」にしか見えません。
思い出補正もありますが、昨今珍しい、本格的なサウンドノベル。
しかし、「かまいたちの夜」と違うのは、本作が究極的には謎解きに主眼を
おいているのではないところでしょうか。SFサスペンスあるいはSFミステリ。
紹介文にある、迷路のように広がる平行世界というのがそれを表現しています。
最初にプレイすると、異常に量子力学とかブラックホールが~宇宙物理学とか、
その辺りの説明が一気になされます。
主人公はゲームを進めていくと、選べなかった選択肢のロックが外れ、
新たなフローチャートに行くことができます。
まあ、こう書くといわゆるサウンドノベルなんです。
ただ、本作は上記の科学や平行世界というのを取り入れたことで、
ある意味、サウンドノベルの核心を突いた作品になのではないかと思いました。
本来、「かまいたちの夜」ならば、ミステリ編の透とスパイ編の透は
透は同じ人物ですが、体験した事や、そもそも世界が違います。
(真理を始めとする登場人物たちは姿形は同じでも、別世界で生きるその人たち)
ところが、この「神無迷路」では、そうした枝分かれした際の記憶が
そのまま次の世界へも引き継がれているため、最終的に全ての世界の物語のエンドに
辿り着くという(説明が合っているか非常に怪しいです)。
ミステリ編の透をクリアし、スパイ編の透をしたとき、その透はミステリ編の
記憶も保持しているため、スパイ編で相当な違和感を感じる筈です。
本作はその違和感(というか作中では特異体質)を逆手に取って、
上手く物語にしているわけです。
だからこそ、最後のエンディングがあるんだろうと思います。
個人的にはなぜ幼馴染みが生きていたのかよくわかりませんでしたが・・・
(元々亡くなって亡かった?)
すでに大きくネタバレしているのであれですが、
「かまいたちの夜」リスペクト&オマージュ作品として、ミステリを期待しては
いけないところが注意ですね。
ただ、価格を考えたら、充分買いだと思います。
夜の蔵書家-古本屋探偵の事件簿 [紀田順一郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
本の街・神保町で古本屋を営む須藤の元に、著名な蔵書家から三十年近く前に失踪したある人物を
探して欲しいという依頼が舞い込んだ。その人物の名は森田一郎といい、
闇市の時代に日本の文化復興に尽力するという名目で稀覯書――猥褻文書出版に携わり、
結局は検挙され有罪となったのち、姿を消したという。
左翼劇団の俳優や中国のスパイだったという噂のある謎の男を、
須藤は古書を糸口に探索に乗り出す。ロス・マクドナルドを彷彿とさせる傑作長編。
(『古本屋探偵の事件簿』分冊版)
更新が止まってました。
秋の夜長の読書とはまだまだいかず、いつまで続くこの残暑という。
『古本屋探偵登場』に続く、須藤を主人公としたシリーズ第2弾にして、長編作品。
今回は、古書の捜索ではなく、かつて稀覯書を出版していた人物。
古書を探すのとは違い、人捜し。須藤は本当の探偵となるか?
説明文にある、ロス・マクドナルドといえば、リュウ・アーチャーシリーズですね。
もちろん、サム・スペードやフィリップ・マーロウ等々、多くのハードボイルド探偵
は居ます。リュウはマーロウと並ぶハードボイルド探偵の1人と言えるでしょう。
須藤は活躍作は少ないものの、それに比肩している、と個人的には。
直接的には関係ないものの、デパートの古書店フェアに、なだれ込むマニア達。
「いまごろ良識なんて言っても遅い!」「ノンストップ!」「止めたら殺すぞ」
いやあ、いいですねえ(笑)。良識は持って欲しいけど、他のものでも似たような場面は
当然見るんだけど、当時の古本屋界隈もこんな感じだったんですかねえ。
あと、須藤の実質的な師匠である小高根閑一がいいです。
須藤への警鐘を事あるごとに述べます。「人間を追うということは、本を探すということと違う」
どこまでやる気かね?、と。
森田一郎、水死体で上がったのか、印刷工と一人二役だったのか、様々な情報を
須藤は集めていきます。そして、森田が疑われた偽札事件の謎へも知らず知らずに・・・
最後の結末はあっさりしているので、捉え方は人それぞれかもしれません。
(須藤や小高根閑一による余韻が私は欲しかったかなあという意見)
いよいよ次は『神保町の怪人』。この世界にもっと浸りたい。
本の街・神保町で古本屋を営む須藤の元に、著名な蔵書家から三十年近く前に失踪したある人物を
探して欲しいという依頼が舞い込んだ。その人物の名は森田一郎といい、
闇市の時代に日本の文化復興に尽力するという名目で稀覯書――猥褻文書出版に携わり、
結局は検挙され有罪となったのち、姿を消したという。
左翼劇団の俳優や中国のスパイだったという噂のある謎の男を、
須藤は古書を糸口に探索に乗り出す。ロス・マクドナルドを彷彿とさせる傑作長編。
(『古本屋探偵の事件簿』分冊版)
更新が止まってました。
秋の夜長の読書とはまだまだいかず、いつまで続くこの残暑という。
『古本屋探偵登場』に続く、須藤を主人公としたシリーズ第2弾にして、長編作品。
今回は、古書の捜索ではなく、かつて稀覯書を出版していた人物。
古書を探すのとは違い、人捜し。須藤は本当の探偵となるか?
説明文にある、ロス・マクドナルドといえば、リュウ・アーチャーシリーズですね。
もちろん、サム・スペードやフィリップ・マーロウ等々、多くのハードボイルド探偵
は居ます。リュウはマーロウと並ぶハードボイルド探偵の1人と言えるでしょう。
須藤は活躍作は少ないものの、それに比肩している、と個人的には。
直接的には関係ないものの、デパートの古書店フェアに、なだれ込むマニア達。
「いまごろ良識なんて言っても遅い!」「ノンストップ!」「止めたら殺すぞ」
いやあ、いいですねえ(笑)。良識は持って欲しいけど、他のものでも似たような場面は
当然見るんだけど、当時の古本屋界隈もこんな感じだったんですかねえ。
あと、須藤の実質的な師匠である小高根閑一がいいです。
須藤への警鐘を事あるごとに述べます。「人間を追うということは、本を探すということと違う」
どこまでやる気かね?、と。
森田一郎、水死体で上がったのか、印刷工と一人二役だったのか、様々な情報を
須藤は集めていきます。そして、森田が疑われた偽札事件の謎へも知らず知らずに・・・
最後の結末はあっさりしているので、捉え方は人それぞれかもしれません。
(須藤や小高根閑一による余韻が私は欲しかったかなあという意見)
いよいよ次は『神保町の怪人』。この世界にもっと浸りたい。
遅刻して来た幽霊 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
〈この恨みは、死んでも必ず残る。きっと、化けて出てやる。〉と書き遺して自殺した新入社員。
その後を追うように身を投げた上司。関連のなさそうな連続死の謎を
二人の女子社員が追う――(表題作)
平穏で幸福な未来を願う人々に、ある日突然、殺意が牙をむく。
先の読めない展開とまさかの結末に背筋が凍る傑作短編小説6篇。
事件の真相が明らかになるとき、凍りついた心は涙で溶かされる。
相変わらず、上手いタイトルを付けますよね。赤川次郎先生は。
幽霊が遅刻とはどういう意味なのか。草木も眠る丑三つ時、今で言う午前2時に
出ず、もっと遅く化けて出たのか?とか、タイトルだけで色々興味を惹かれてしまいます。
主人公は徳田実子、しかし探偵役は会社の後輩にあたる水木貞代。
田代という新入社員が会社への怨みを書いた遺書を書いて自殺し、
その後、実子が所属している課の大崎課長まで亡くなる。
そういえば、葬儀で田代によく似た人を見かけたが・・・果たして事件の真相は?
「子供のころ、私のヒーローは、エラリー・クイーンだったんですもの」という
貞代の台詞がよい。死んだ人間が生きていた?立て続けの自殺?
奇妙な謎にクイーンばりの名推理を発揮します。
本書所収作の愁眉は非常に難しい。ミステリ的な面では表題作と「幕間に死す」。
後者は過去の事件を解き明かす名短編で、最後に明かされる真相があまりに哀しい。
『ふたり』などに代表されるSF作品に連なるのが「相似形の明日」
これも非常に哀しい話なのですが、それ以上に不思議な話でもあります。
自分の痛みは自分で引き受ける、晴子の最後の台詞が素晴らしい。
〈この恨みは、死んでも必ず残る。きっと、化けて出てやる。〉と書き遺して自殺した新入社員。
その後を追うように身を投げた上司。関連のなさそうな連続死の謎を
二人の女子社員が追う――(表題作)
平穏で幸福な未来を願う人々に、ある日突然、殺意が牙をむく。
先の読めない展開とまさかの結末に背筋が凍る傑作短編小説6篇。
事件の真相が明らかになるとき、凍りついた心は涙で溶かされる。
相変わらず、上手いタイトルを付けますよね。赤川次郎先生は。
幽霊が遅刻とはどういう意味なのか。草木も眠る丑三つ時、今で言う午前2時に
出ず、もっと遅く化けて出たのか?とか、タイトルだけで色々興味を惹かれてしまいます。
主人公は徳田実子、しかし探偵役は会社の後輩にあたる水木貞代。
田代という新入社員が会社への怨みを書いた遺書を書いて自殺し、
その後、実子が所属している課の大崎課長まで亡くなる。
そういえば、葬儀で田代によく似た人を見かけたが・・・果たして事件の真相は?
「子供のころ、私のヒーローは、エラリー・クイーンだったんですもの」という
貞代の台詞がよい。死んだ人間が生きていた?立て続けの自殺?
奇妙な謎にクイーンばりの名推理を発揮します。
本書所収作の愁眉は非常に難しい。ミステリ的な面では表題作と「幕間に死す」。
後者は過去の事件を解き明かす名短編で、最後に明かされる真相があまりに哀しい。
『ふたり』などに代表されるSF作品に連なるのが「相似形の明日」
これも非常に哀しい話なのですが、それ以上に不思議な話でもあります。
自分の痛みは自分で引き受ける、晴子の最後の台詞が素晴らしい。
#真相をお話しします [結城真一郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
島育ちの仲良し小学生四人組。
あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。
マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。
精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。
日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(解説・村上貴史)
以下、ネタバレありです。
名作揃いです。
SNS、キラキラネーム、マッチングアプリ、リモート、精子提供、Youtubeと、
現在の主要な話題、流行を全ての短編に使用していて、現在のミステリというのが
極めて強く出ています。
その意味での名作揃い。
「惨者面談」は、うーん、あえて私は「キラキラネーム」という区分で
紹介したのですが、それは名前の呼び方が本作での鍵だからです。
(別にキラキラネームは登場しません。むしろそれは「#拡散希望」ですね。)
むしろ、3名のうち、2名がその家と関係ないというところが、
現代的なのかもしれませんね。
「ヤリモク」は、そもそも「ヤリ」とは何かというところを突いた盲点的な作品。
最後に主人公にとっては、悲劇が起こりますが・・・
「パンドラ」は何とも言いようがない作品。
まあ、血液型は普通事前に確認するだろうという感想しかない。
「三角奸計」はリモート飲み会を上手く使った作品。
しかし、「ヤリモク」も「パンドラ」もそうですが、この3作品ともヤバイ人が
登場しますね。
「♯拡散希望」は、人口の少ない島で暮らす、たった4人しか居ない小学生の物語。
これは、いやあ、現実に起きていてもおかしくない話ですね。
でも、彼彼女たちの親は、子どもが大きくなった時、どうバレないように
するつもりだったのだろうか。
とてもじゃないですが、中学生になれば、さすがにわかるでしょう。
(島外に出る機会があれば、当然触れるはず。)
ある意味期間限定で、親たちはやるつもりだったのかもしれませんが、
その前にバレてしまったのか。
しかし、この島を見つけて突撃してきた人を殺害するというのが
もはや常軌を逸してますね。
でもこれも、もうフィクションです、では通らない世の中になっていると思いますが。
島育ちの仲良し小学生四人組。
あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。
マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。
精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。
日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(解説・村上貴史)
以下、ネタバレありです。
名作揃いです。
SNS、キラキラネーム、マッチングアプリ、リモート、精子提供、Youtubeと、
現在の主要な話題、流行を全ての短編に使用していて、現在のミステリというのが
極めて強く出ています。
その意味での名作揃い。
「惨者面談」は、うーん、あえて私は「キラキラネーム」という区分で
紹介したのですが、それは名前の呼び方が本作での鍵だからです。
(別にキラキラネームは登場しません。むしろそれは「#拡散希望」ですね。)
むしろ、3名のうち、2名がその家と関係ないというところが、
現代的なのかもしれませんね。
「ヤリモク」は、そもそも「ヤリ」とは何かというところを突いた盲点的な作品。
最後に主人公にとっては、悲劇が起こりますが・・・
「パンドラ」は何とも言いようがない作品。
まあ、血液型は普通事前に確認するだろうという感想しかない。
「三角奸計」はリモート飲み会を上手く使った作品。
しかし、「ヤリモク」も「パンドラ」もそうですが、この3作品ともヤバイ人が
登場しますね。
「♯拡散希望」は、人口の少ない島で暮らす、たった4人しか居ない小学生の物語。
これは、いやあ、現実に起きていてもおかしくない話ですね。
でも、彼彼女たちの親は、子どもが大きくなった時、どうバレないように
するつもりだったのだろうか。
とてもじゃないですが、中学生になれば、さすがにわかるでしょう。
(島外に出る機会があれば、当然触れるはず。)
ある意味期間限定で、親たちはやるつもりだったのかもしれませんが、
その前にバレてしまったのか。
しかし、この島を見つけて突撃してきた人を殺害するというのが
もはや常軌を逸してますね。
でもこれも、もうフィクションです、では通らない世の中になっていると思いますが。
花嫁、街道を行く [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
彼女はどこへ行った?
事件は日本からドイツへ!
ひょんなことから探偵事務所を開くことになった女子大生・亜由美。
そこへ、行方不明になったツアコンの久美子を探して欲しいと依頼が舞い込む。
手がかりを探し、たどりついたのは、ある国の大使館。久美子を発見するが、
事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はドイツ・ロマンチック街道へ!
表題作ほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。
シリーズも35弾ですか。赤川先生のはどれも長寿シリーズが多いですよね。
最近は大貫警部シリーズの新作が出ないので、かなり残念なのです。
本作も前作と同じく、この表題作は誰が花嫁なのか、よくわからず(笑
たぶん久美子がなるんだろうなという、少々かなりの想像を含みますが、
花嫁シリーズでなく、ノン・シリーズでもおかしくない。
最後の大団円的なところは、いくらなんでもあり得ないだろう!と
(ドイツへ行く過程も含め)思いますが、そこが赤川作品の面白さでもあります。
花嫁シリーズという意味では、「あの夜の花嫁は、今」の方が遥かにシリーズらしい。
しかも最後には2名も花嫁候補も登場しますからね。
ホテルの支配人である柳田が仕事を頼む半田や辻口、柳田はともかく、辻口は
中々面白い。さらに赤川作品の常連的な人物かもしれないベルボーイの大倉佑太も
良いキャラです。
でも大団円でないところ(いい意味で)がさらに面白いですね。
亜由美ももちろん主人公らしく頑張るのですが、本作では佑太としのぶの活躍には
及びません。この二人のちょっとした珍道中もよいのです。
谷川准教授との関係が、もう破局なのかそれとも・・・この辺りはぜひ描いてほしいです。
彼女はどこへ行った?
事件は日本からドイツへ!
ひょんなことから探偵事務所を開くことになった女子大生・亜由美。
そこへ、行方不明になったツアコンの久美子を探して欲しいと依頼が舞い込む。
手がかりを探し、たどりついたのは、ある国の大使館。久美子を発見するが、
事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はドイツ・ロマンチック街道へ!
表題作ほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。
シリーズも35弾ですか。赤川先生のはどれも長寿シリーズが多いですよね。
最近は大貫警部シリーズの新作が出ないので、かなり残念なのです。
本作も前作と同じく、この表題作は誰が花嫁なのか、よくわからず(笑
たぶん久美子がなるんだろうなという、少々かなりの想像を含みますが、
花嫁シリーズでなく、ノン・シリーズでもおかしくない。
最後の大団円的なところは、いくらなんでもあり得ないだろう!と
(ドイツへ行く過程も含め)思いますが、そこが赤川作品の面白さでもあります。
花嫁シリーズという意味では、「あの夜の花嫁は、今」の方が遥かにシリーズらしい。
しかも最後には2名も花嫁候補も登場しますからね。
ホテルの支配人である柳田が仕事を頼む半田や辻口、柳田はともかく、辻口は
中々面白い。さらに赤川作品の常連的な人物かもしれないベルボーイの大倉佑太も
良いキャラです。
でも大団円でないところ(いい意味で)がさらに面白いですね。
亜由美ももちろん主人公らしく頑張るのですが、本作では佑太としのぶの活躍には
及びません。この二人のちょっとした珍道中もよいのです。
谷川准教授との関係が、もう破局なのかそれとも・・・この辺りはぜひ描いてほしいです。
天狗屋敷の殺人 [大神晃]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!
棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。
「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
以下、ややネタバレです。
「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。
「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。
ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?
という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)
横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。
問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。
犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。
次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。
「これだから小説は面白い。」道尾秀介、お墨付き!
棺から消えた当主の遺体、天狗の毒矢、山奥の怪事件に秘められた“ありえない”規格外の“謎”
全ミステリファン瞠目の「新潮ミステリー大賞の隠し玉」
ヤンデレな恋人・翠に、婚約者として無理やり連れていかれた彼女の実家は、
山奥に立つ霊是(りょうぜ)一族の“天狗屋敷”だった。失踪した当主の遺言状開封、
莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。
奇怪な難事件を次々と解き明かすのは、あやしい「何でも屋」さん!?
「いつかまた会えたらいいね」――夏が来るたび思い出す、
あの陰惨な事件と、彼女の涙を。横溝正史へのオマージュに満ちた、ミステリの怪作。
「分からんのか? つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
以下、ややネタバレです。
「分からんのか?つまり、犬神家状態ってわけだよ!」
この台詞に惹かれて購入しました(笑
犬神家状態!それで通じるのがミステリ好きという。
「新潮ミステリー大賞」というのは初めて知りました。
もう10年ですから、そこそこの歴史ですよね。
本書は、2023年の第10回の最終候補(つまり大賞受賞作品ではない)ものを
文庫で刊行されたという、(社内でどういう協議がされたのか不明ですが)
中々すごいですね。
ワトソン役である古賀鳴海の彼女である平澤翠。今度本家にて、遺産相続にかかる
遺言書が開封されるという。鳴海のバイト先である<なんでも屋>樋山忍も、
上記の台詞を発し、適当な理由をつけて同行することに。
遺言書が開封された後に起こる奇怪な殺人事件。
果たして犯人は?
という感じでしょうか(苦笑・すいません)
まず、翠という女性の方が怖い(笑)
鳴海にかつての自分が体験(やったであろうこと)を語るのですが、それがあるとしても、
行動が恐ろしい。最後は幸せな姿を鳴海と忍に見せてくれるのですが、
夫となる方は、やっていけるのかなあ・・・
(事件解決後に、雰囲気が変わった描写はありますが)
横溝正史先生へのオマージュにあふれたとありますが、
それはこの旧家の霊是家と遺言書。トリックは島田荘司御大の奇想天外・大がかりなトリック
へのオマージュだと思います。
ただし、このトリックは犯人の告白を読めば「プロバビリティ-の犯罪」であることが
判明します。ここは結構捻ってるなあと思いました。
問題なのは、このトリックは詳しく説明されているのですが、図がないのが致命的。
2つめの殺人のトリックは、絵図付き解説がないと、かなり難解(というかわからん)。
犯人はほぼ(アリバイは考えずとも)分かると思います。
動機はあれだろうと見当が付くので。
ところがこれも動機という面では、強固かと思いきや、犯人の告白では全然動機も
実は無いというオチ。
(だからこその「プロバビリティーの犯罪」なのですが)。
次は「7人ミサキ連続殺人事件」だそうなので(タイトル的に興味深い・笑)、
こちらも、もし刊行されたら読んで見たいと思います。
楽屋の蟹ー中村雅楽と日常の謎 [戸坂康二]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。
中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。
「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。
「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。
唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。
『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。
中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!
歌舞伎界の名優にして名探偵、中村雅楽が日常の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者による味わい深い名推理の数々。
直木賞受賞作「團十郎切腹事件」はじめ精選の11編を収録。
中村雅楽が挑む数々の日常の謎。日常の謎でも老探偵は飄々と謎を解きます。
「團十郎切腹事件」は歌舞伎役者ならではの謎解きですね。
これは中村雅楽シリーズだからこそ書けた傑作だと思います。
「グリーン車の子供」も同様。中村雅楽ではなく、隣り合わせた少女の芝居が秀逸。
この筋立てを考えた宝来屋もお見事。
解説では、本作で雅樂たちが乗車していた新幹線にまつわる話が登場するのですが、
これはかなり面白い。なるほど、食堂車か。今や懐かしい(というか私も知りませんが)
ですねえ。
「目黒の狂女」も面白い。いわゆる「奇妙な味」というタイプで、
雅樂の謎解きも鮮やかです。
唯一、雅樂が竹野の前で涙をみせた「むかしの弟子」。解説の新保博久さんも
書いているように、中村雅楽シリーズ最終作と言われても、誰もが納得する
作品ではないかと思います。
『等々力座殺人事件』と比して、中村雅楽も竹野も齢を重ねています。
竹野はいつの間にか嘱託社員的な立場に、中村雅楽もかなりの高齢に。
作者自身、第1作で雅楽を高齢にしすぎて・・・と書かれているので
(ポワロと同じような感じですね。)
相当な年齢になっているのでしょうが、そこを竹野の立場変化から
時間の経過を上手く現しています。
中村雅楽全集が手に入らない現在、本シリーズ第3作を望みます!
楽屋の蟹 中村雅楽と日常の謎 (河出文庫) [ 戸板 康二 ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,155 円
神の悪手 [芦沢央]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、
20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。
9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。
今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。
将棋ミステリとは思いませんでした。
全編そうです。そして各編色々共通しています。
しかし、将棋を主軸としつつ、ミステリとしての骨格は充分に素晴らしい。
特に「弱い者」と「ミイラ」は甲乙付けがたい傑作。
前者は震災被災地に、将棋教室のボランティアを行うため訪れた北上八段と石埜女流三段。
北上もかつて「被災者」だった経験を持つ。
北上と対局したある1人の少年は、目を見張るほどの強さを魅せるが、
なぜか最終盤で悪手を指し続ける・・・そこに隠された謎とはなにか?
被災地や被災者を考える上で、将棋という遊びの重要性、そして遙か昔より
言われているプライバシーや性の問題を、こういう形でクローズアップしたのは
今までないのではないでしょうか。初手からとんでもない作品です。
後者は「詰め将棋」の問題を考える一編。園田光晴という少年からの詰め将棋の
問題に悩む常坂と、編集長の金城。この手順では詰まないのに、彼はなぜ
頑なにこの手順を変えないのか。そこに潜む謎とは。
カルト宗教の洗脳による話と、詰め将棋という本来は王将が取られるのに、
現実には実際に取られないという常識を覆す作品。
フェアリー将棋というのは初めて聞きましたね。昔将棋部だったのに(笑
自分たちの常識だけでは捉えられないものが無数あるというのを、将棋で示した傑作でしょう。
珍しいところだと「恩返し」。駒師が主人公の話です。
芦沢先生、相当に将棋を勉強・取材されたんだろうなと思います。
また名短編集が誕生しましたね。
棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、
20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。
9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。
今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。
将棋ミステリとは思いませんでした。
全編そうです。そして各編色々共通しています。
しかし、将棋を主軸としつつ、ミステリとしての骨格は充分に素晴らしい。
特に「弱い者」と「ミイラ」は甲乙付けがたい傑作。
前者は震災被災地に、将棋教室のボランティアを行うため訪れた北上八段と石埜女流三段。
北上もかつて「被災者」だった経験を持つ。
北上と対局したある1人の少年は、目を見張るほどの強さを魅せるが、
なぜか最終盤で悪手を指し続ける・・・そこに隠された謎とはなにか?
被災地や被災者を考える上で、将棋という遊びの重要性、そして遙か昔より
言われているプライバシーや性の問題を、こういう形でクローズアップしたのは
今までないのではないでしょうか。初手からとんでもない作品です。
後者は「詰め将棋」の問題を考える一編。園田光晴という少年からの詰め将棋の
問題に悩む常坂と、編集長の金城。この手順では詰まないのに、彼はなぜ
頑なにこの手順を変えないのか。そこに潜む謎とは。
カルト宗教の洗脳による話と、詰め将棋という本来は王将が取られるのに、
現実には実際に取られないという常識を覆す作品。
フェアリー将棋というのは初めて聞きましたね。昔将棋部だったのに(笑
自分たちの常識だけでは捉えられないものが無数あるというのを、将棋で示した傑作でしょう。
珍しいところだと「恩返し」。駒師が主人公の話です。
芦沢先生、相当に将棋を勉強・取材されたんだろうなと思います。
また名短編集が誕生しましたね。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 649 円
哀愁変奏曲 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
作曲家を夢みる二十五歳の石井栄志。
コンクールでは落選が続き、家にはピアノもないほど貧しかった。
と、そこに届いた本物のピアノ!
送り主である音楽事務所の片岡が訪ねてきて、
歌謡曲の編曲をして欲しいという。
生活のために引き受けた石井は、
人気歌手・進藤あゆみの曲を手がけることになり……(「ささやくピアノ」)。
人生は音楽と共にある。
哀愁漂うホラーサスペンス六篇を収録。
元々は集英社文庫から刊行されていたようで、その後徳間へ。
発売したばかりですが、一気に読んでしまいました。
いわゆる大団円やハッピーエンドとは違う、どの短編も
深い終わり方になっているというのが一番の感想です。
一番ホラー色が強いのは「シンバルの鳴る夜」
これはかなり怖い。
死んだ少年・純男がシンバルをうつ合図を待つ姿が見えた、
谷岡の恐怖はいかばりか。そしてその演奏が伝説として語り継がれていくという、
これ以上ない皮肉。
「イングリッシュホルンの嘆き」はラストが切なすぎる。
「弦の切れる日」だけが、唯一大団円的に終わるので、読んでいてほっとします。
「幻の鼓笛隊」は相当悲しい物語だけれども、こんな杜撰な工事をさせて
自分の見栄だけを重視するなんて、今でもありそうです。
「ささやくピアノ」は、まあ自業自得な面もあるけれど、
怖さと温かさが同居している作品ですね。
「ハープの影は黄昏に」が一番謎な作品かも。ホラーというより、SF。
彼女は若い時の主人公の母や叔母とともに写真に写っているので、
おそらく過去の亡くなっている女性なのだろうくらいしかわかりません。
なぜハーブを弾いているのか、どうして岐子の前に現れたのか(木戸を救うため?)
時間を戻せるのはなぜか。母や叔母とどういう関係なのか。
意図的にそのあたりを記さなかったのだと思います。
その方がSF的というか、赤川さん的です。しかし気になりました(笑
まだまだ多い未読の赤川次郎作品。これからも徳間文庫さん、お願いします!
作曲家を夢みる二十五歳の石井栄志。
コンクールでは落選が続き、家にはピアノもないほど貧しかった。
と、そこに届いた本物のピアノ!
送り主である音楽事務所の片岡が訪ねてきて、
歌謡曲の編曲をして欲しいという。
生活のために引き受けた石井は、
人気歌手・進藤あゆみの曲を手がけることになり……(「ささやくピアノ」)。
人生は音楽と共にある。
哀愁漂うホラーサスペンス六篇を収録。
元々は集英社文庫から刊行されていたようで、その後徳間へ。
発売したばかりですが、一気に読んでしまいました。
いわゆる大団円やハッピーエンドとは違う、どの短編も
深い終わり方になっているというのが一番の感想です。
一番ホラー色が強いのは「シンバルの鳴る夜」
これはかなり怖い。
死んだ少年・純男がシンバルをうつ合図を待つ姿が見えた、
谷岡の恐怖はいかばりか。そしてその演奏が伝説として語り継がれていくという、
これ以上ない皮肉。
「イングリッシュホルンの嘆き」はラストが切なすぎる。
「弦の切れる日」だけが、唯一大団円的に終わるので、読んでいてほっとします。
「幻の鼓笛隊」は相当悲しい物語だけれども、こんな杜撰な工事をさせて
自分の見栄だけを重視するなんて、今でもありそうです。
「ささやくピアノ」は、まあ自業自得な面もあるけれど、
怖さと温かさが同居している作品ですね。
「ハープの影は黄昏に」が一番謎な作品かも。ホラーというより、SF。
彼女は若い時の主人公の母や叔母とともに写真に写っているので、
おそらく過去の亡くなっている女性なのだろうくらいしかわかりません。
なぜハーブを弾いているのか、どうして岐子の前に現れたのか(木戸を救うため?)
時間を戻せるのはなぜか。母や叔母とどういう関係なのか。
意図的にそのあたりを記さなかったのだと思います。
その方がSF的というか、赤川さん的です。しかし気になりました(笑
まだまだ多い未読の赤川次郎作品。これからも徳間文庫さん、お願いします!
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 924 円
天の川の舟乗り-名探偵音野順の事件簿 [北山猛邦]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
引きこもりがちな名探偵、今日もおずおず謎を解く。
怪盗からの犯行予告当日に起こる密室殺人、
湖の巨大生物に殺されたかのような死体……
全4編を収録した、大人気シリーズ第3の事件簿!
金塊を祭る村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。
金塊がなくなると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は
名探偵音野と助手の白瀬に監視を依頼する。
しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……
大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作など4編を収録。
引きこもりがちな名探偵が活躍する、大人気シリーズ第3弾。解説=青柳碧人
若干ネタバレあり。
超久しぶりのシリーズ続編となった、引きこもり探偵・音野順の事件簿。
最初の「人形の村」は、音野が引きこもりであることを、改めて思い出させる(?)
かのような事件。依頼人から話を聞き、事務所でその謎を解きます。
もっとも、これは多重解決モノとも実は捉える事ができて、依頼人である旗野を納得
させるだけの充分な説得力をもった推理とも言えます。
解説の青柳さんが言われるように、全編が「オカルト」なんです。
で一発目がこの作品で、かなりおどろおどろしい村に、髪の伸びる人形・・・
一方で、そもそも旗野は何を経験したのかという、ホワットダニットでもある。
表題作は最終話に繋がる作品であり、収録中最長編。かつ「物理の北山」本領発揮作。
なるほどレールか・・・島田御大のある作品を思い出しました。
また、最終話「マッシー再び」でも、同じように「物理の」が炸裂。
いずれもハウダニットの快作でしょう。
しかし、金塊が偽物だと犯人たちは気付かなかったのか?(笑
「怪盗対音野要」は、順の兄である音野要が活躍する物語。
古城を舞台に、バーンズ城の怪人と対峙します。
こちらも「物理の北山」が炸裂。カーペットのトリックはお見事。
一瞬「金田一少年の事件簿」オペラ座館殺人事件を思い出しましたが、
あのトリックとは違いました。
これを機会に、ぜひシリーズをまた続けてほしい。そしていつの日か、
海外での兄弟揃い踏みが見られるのを期待したいです。
引きこもりがちな名探偵、今日もおずおず謎を解く。
怪盗からの犯行予告当日に起こる密室殺人、
湖の巨大生物に殺されたかのような死体……
全4編を収録した、大人気シリーズ第3の事件簿!
金塊を祭る村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。
金塊がなくなると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は
名探偵音野と助手の白瀬に監視を依頼する。
しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……
大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作など4編を収録。
引きこもりがちな名探偵が活躍する、大人気シリーズ第3弾。解説=青柳碧人
若干ネタバレあり。
超久しぶりのシリーズ続編となった、引きこもり探偵・音野順の事件簿。
最初の「人形の村」は、音野が引きこもりであることを、改めて思い出させる(?)
かのような事件。依頼人から話を聞き、事務所でその謎を解きます。
もっとも、これは多重解決モノとも実は捉える事ができて、依頼人である旗野を納得
させるだけの充分な説得力をもった推理とも言えます。
解説の青柳さんが言われるように、全編が「オカルト」なんです。
で一発目がこの作品で、かなりおどろおどろしい村に、髪の伸びる人形・・・
一方で、そもそも旗野は何を経験したのかという、ホワットダニットでもある。
表題作は最終話に繋がる作品であり、収録中最長編。かつ「物理の北山」本領発揮作。
なるほどレールか・・・島田御大のある作品を思い出しました。
また、最終話「マッシー再び」でも、同じように「物理の」が炸裂。
いずれもハウダニットの快作でしょう。
しかし、金塊が偽物だと犯人たちは気付かなかったのか?(笑
「怪盗対音野要」は、順の兄である音野要が活躍する物語。
古城を舞台に、バーンズ城の怪人と対峙します。
こちらも「物理の北山」が炸裂。カーペットのトリックはお見事。
一瞬「金田一少年の事件簿」オペラ座館殺人事件を思い出しましたが、
あのトリックとは違いました。
これを機会に、ぜひシリーズをまた続けてほしい。そしていつの日か、
海外での兄弟揃い踏みが見られるのを期待したいです。
レイトン・コートの謎 [海外ミステリ]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
バークリーの探偵小説愛がストレートに出た秀作。――法月綸太郎
密室状態の書斎で発見された死体。
拳銃自殺と考えるには何かが不自然で・・・・・・
名探偵ロジャー・シェリンガム初登場!
田舎屋敷レイトン・コートの書斎で、額を撃ち抜かれた主人の死体が発見された。
現場は密室状態で遺書も残されており、警察の見解が自殺に傾くなか、
死体の奇妙な点に注目した作家ロジャー・シェリンガムは殺人説を主張する。
友人アレックを助手として、自信満々で調査に取りかかったが……。
想像力溢れる推理とフェアプレイの実践。英国探偵小説黄金期の巨匠の記念すべき第一作。
序文=アントニイ・バークリー/解説=法月綸太郎
バークリーといえば『毒入りチョコレート事件』が超有名で、多重解決の嚆矢
といっても過言ではありません。
と言いつつも、私は初めてバークリー作品を読むんですが。
とにかくホームズ&ワトソンがそこかしこに登場します。
シェリンガム=ホームズとアレック・ワトソンとしてですが。
執筆された時代を感じます。
シェリンガム、とにかく数々の推理を試みます。
まあ、途中のプリンス事件はかなり面白いのですが、これ、シェリンガムたちを
騙そうとしていたわけではないんだろうと思いますが、これは騙されますなあ。
途中いきなり競馬の1着・2着という記載が出てきて、笑いました。
彼はしゃべりながら思考しつつ、そして正解の推理を辿っていくタイプなのかも。
解説を書かれた法月綸太郎先生のシリーズ探偵・法月綸太郎にかなり近い。
先生も参考にされたんでしょうか。
アレックとの何気ない会話の中に、非常に重要な意味合いがあるというのが
これはもうネタバレなのですが、実に巧妙で上手い。
最初の約束が、最終版の最後の一撃に似た驚きを与えてくれます。
すでに『最上階の殺人』も購入済みなので、こちらも楽しみです。
バークリーの探偵小説愛がストレートに出た秀作。――法月綸太郎
密室状態の書斎で発見された死体。
拳銃自殺と考えるには何かが不自然で・・・・・・
名探偵ロジャー・シェリンガム初登場!
田舎屋敷レイトン・コートの書斎で、額を撃ち抜かれた主人の死体が発見された。
現場は密室状態で遺書も残されており、警察の見解が自殺に傾くなか、
死体の奇妙な点に注目した作家ロジャー・シェリンガムは殺人説を主張する。
友人アレックを助手として、自信満々で調査に取りかかったが……。
想像力溢れる推理とフェアプレイの実践。英国探偵小説黄金期の巨匠の記念すべき第一作。
序文=アントニイ・バークリー/解説=法月綸太郎
バークリーといえば『毒入りチョコレート事件』が超有名で、多重解決の嚆矢
といっても過言ではありません。
と言いつつも、私は初めてバークリー作品を読むんですが。
とにかくホームズ&ワトソンがそこかしこに登場します。
シェリンガム=ホームズとアレック・ワトソンとしてですが。
執筆された時代を感じます。
シェリンガム、とにかく数々の推理を試みます。
まあ、途中のプリンス事件はかなり面白いのですが、これ、シェリンガムたちを
騙そうとしていたわけではないんだろうと思いますが、これは騙されますなあ。
途中いきなり競馬の1着・2着という記載が出てきて、笑いました。
彼はしゃべりながら思考しつつ、そして正解の推理を辿っていくタイプなのかも。
解説を書かれた法月綸太郎先生のシリーズ探偵・法月綸太郎にかなり近い。
先生も参考にされたんでしょうか。
アレックとの何気ない会話の中に、非常に重要な意味合いがあるというのが
これはもうネタバレなのですが、実に巧妙で上手い。
最初の約束が、最終版の最後の一撃に似た驚きを与えてくれます。
すでに『最上階の殺人』も購入済みなので、こちらも楽しみです。
雷神 [道尾秀介]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)
超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。
最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。
彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。
ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。
物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。
犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。
この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。
ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、
娘の夕見から遠出の提案を受ける。新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、
痛ましい記憶を封じ込めた地だった。母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。(解説・香山二三郎)
超が付くほど久しぶりに道尾秀介先生の作品を読みました。
デビュー作『背の眼』に始まる真備庄介シリーズは読んでいたのですが、
ノンシリーズはほとんどでした。
たまたまオススメに出てきて、購入。
最初のミスリードが秀逸。この「勘違い」は主人公はおろか、読者も見抜けないでしょう。
しかも、この「勘違い」から物語が始まるという、何とも天の配剤ともいうべき所業。
彩根のいう、「少しの不運が、殺意を殺人に変えてしまう」という台詞も考えさせられます。
この物語でいう「少しの不運」とは何かを考える幸人ですが、そこに答えは見いだせない。
ミステリ的にみると、羽田上村の殺人事件は警察が少し無能な気がしましたね(笑
村中捜索しないとねえ・・・
犯人が誰なのかは本気でわかりませんでした(汗)
一方で、動機がかなりぼやかしてあるというか、亜沙実と幸人の母親がなぜ亡くなったのか、
最後まで(直接的な)描写はなく、亜沙実に伝えた遺言や父親との最後の会話など、
若干曖昧さが残るところがあるなあと感じました。
物語としては実は結局何も解決しておらず、幸人は夕見とこの謎をずっと抱えていくのと、
幸人は夕見には語れない、最初のミスリードの真実も抱えていくことになり、
それを共有できうる姉の死去で、辛い立場にさらに追い込まれていくのが、なんとも。
犯人の復讐は果たせた(と思っている)ものの、加害者側(とされる)が罪の意識などに
さいなまれることもなく、というのもややモヤモヤが残りますね。
この「神」シリーズ、第3弾のようで、前の2作もそのうち購入しようかと。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 935 円
バスクル新宿 [大崎梢]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
よい日になりますように
会いたい人のもとへ。届けたいもの、伝えたい思い、叶えたい夢を抱えて。
さまざまな人たちが行き交うバスターミナル。そこで起きた事件をきっかけに、
繋がるはずのなかった個々の人生が鮮やかに交わってゆく。
目的地に向かい夜を通してひた走るバスが、
人生の岐路に立つ人々を朝へと運んでゆく連作短編集。
バスが繋いだ”縁”が
バスターミナルで奇跡を起こす
私は以前書店に勤めていたのだけれど、
何か安心して読める本を紹介してほしいという問い合わせを受けたときに、
よく挙げたのが大崎さんの名前だった。
――小出和代(解説より)
しばらく止まってました。
大崎さんの御本も久しぶりです。
「バスタ新宿」を本気で「パスタ新宿」と見間違えていたのを思い出しました(苦笑
「バスクル新宿」という夜行バス・長距離バスのバスターミナルと
そのバス車内で起こる様々な出来事と、「バスクル新宿」に居るある少年をキーとして
繋がる連作短編集。
本作ダントツ愁眉は「チケットの向こうに」
サークルのお金が生駒によって(おそらく)持ち出された。
同じサークルの磯村と益子は、彼がバスに乗り故郷へ行くと考え、「バスクル新宿」
で彼を待ち構えるが・・・
この話、この3人の話かと思いきや、全然違います。
磯村が偶然であった調査会社の柳浦さんとの会話で物語は進行します。
生駒も途中で捕まるものの、ラストの柳浦さんとの会話やあるショッキングな出来事など、
非常に上手く作られてます。
「パーキングエリアの夜は更けて」は、凶悪事件発生か?!と思わせる出来事が
続く、さらに主人公はバスの中。果たして・・・?というサスペンス風な作品。
「疑い出したら切りが無い」というセリフが出てきますが、まさにその通り(笑
でも「トーマ」君を発見したときの紺野莉香は気が気でなかったでしょう。
最終話「君を運ぶ」で、各編に登場していた少年の謎が明かされます。
各編に登場した主人公達もほぼ勢揃いで、ちょっとした大団円ですね。
人生の岐路という点でみると、第1話の「バスターミナルでコーヒーを」が良いですね。
現実に同じバス乗車客がふれ合うようなことはないでしょうけど、これはこれで
良い作品です。
町の書店が減る中、大崎作品の成風堂書店シリーズや井辻くんシリーズは
中々執筆が難しいのかなと、勝手に思ってます。
そう思いつつ、ぜひ新作をお待ちしています!
よい日になりますように
会いたい人のもとへ。届けたいもの、伝えたい思い、叶えたい夢を抱えて。
さまざまな人たちが行き交うバスターミナル。そこで起きた事件をきっかけに、
繋がるはずのなかった個々の人生が鮮やかに交わってゆく。
目的地に向かい夜を通してひた走るバスが、
人生の岐路に立つ人々を朝へと運んでゆく連作短編集。
バスが繋いだ”縁”が
バスターミナルで奇跡を起こす
私は以前書店に勤めていたのだけれど、
何か安心して読める本を紹介してほしいという問い合わせを受けたときに、
よく挙げたのが大崎さんの名前だった。
――小出和代(解説より)
しばらく止まってました。
大崎さんの御本も久しぶりです。
「バスタ新宿」を本気で「パスタ新宿」と見間違えていたのを思い出しました(苦笑
「バスクル新宿」という夜行バス・長距離バスのバスターミナルと
そのバス車内で起こる様々な出来事と、「バスクル新宿」に居るある少年をキーとして
繋がる連作短編集。
本作ダントツ愁眉は「チケットの向こうに」
サークルのお金が生駒によって(おそらく)持ち出された。
同じサークルの磯村と益子は、彼がバスに乗り故郷へ行くと考え、「バスクル新宿」
で彼を待ち構えるが・・・
この話、この3人の話かと思いきや、全然違います。
磯村が偶然であった調査会社の柳浦さんとの会話で物語は進行します。
生駒も途中で捕まるものの、ラストの柳浦さんとの会話やあるショッキングな出来事など、
非常に上手く作られてます。
「パーキングエリアの夜は更けて」は、凶悪事件発生か?!と思わせる出来事が
続く、さらに主人公はバスの中。果たして・・・?というサスペンス風な作品。
「疑い出したら切りが無い」というセリフが出てきますが、まさにその通り(笑
でも「トーマ」君を発見したときの紺野莉香は気が気でなかったでしょう。
最終話「君を運ぶ」で、各編に登場していた少年の謎が明かされます。
各編に登場した主人公達もほぼ勢揃いで、ちょっとした大団円ですね。
人生の岐路という点でみると、第1話の「バスターミナルでコーヒーを」が良いですね。
現実に同じバス乗車客がふれ合うようなことはないでしょうけど、これはこれで
良い作品です。
町の書店が減る中、大崎作品の成風堂書店シリーズや井辻くんシリーズは
中々執筆が難しいのかなと、勝手に思ってます。
そう思いつつ、ぜひ新作をお待ちしています!
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 792 円
一番長いデート [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
デートの途中で恋人が誘拐された大学生の坂口俊一。恋人の池沢友美を助けたければ
ある男を殺すよう脅されるが、実は友美は自分の恋人ではなく友人の恋人!
代役のデートを引き受けたのだ。責任を感じた俊一は誘拐犯から渡された拳銃で
標的の男を撃ち、友美を助け出す。しかし、彼女は再び誘拐されてしまい……。
俊一は無事にデートを終えることができるのか?(表題作「一番長いデート」)
(解説 山前譲)
全3作収録の短編集。
まず、「孤独な週末」から。
これは確かかつてドラマ化されたんじゃないかなと。
継母と正実、紀子と義理の息子。どちらの立場も難しい。
思春期突入の正実くんにすれば、父親を取られたと思うのは当然でしょう。
この義理の母と息子の関係をここまでミステリに昇華させて描きつつ、
最後に紀子が魅せる愛情は素晴らしいの一言。本作愁眉でしょう。
表題作は赤川作品の常連的なもの。なぜか抗争に巻き込まれる一般人。
この主人公、家まで送るんだぞというのを忠実に守っての、
このタイトルというのが面白い。
拳銃の処理も運が良いのか悪いのか・・・(苦笑
見事になーんにも巻き込まれず大団円。これぞ赤川ユーモア・ミステリの神髄。
「殺してからではおそすぎる」、いや全くこのタイトルは物語の内容以前に、
その通りなのですが、このタイトルからどんな話を想像できますか?
非常に短い短編ですが、上手く大団円になっています。
徳間文庫の復刊も途切れずに続けてくれていて、非常にありがたい。
これからも楽しませてください。
デートの途中で恋人が誘拐された大学生の坂口俊一。恋人の池沢友美を助けたければ
ある男を殺すよう脅されるが、実は友美は自分の恋人ではなく友人の恋人!
代役のデートを引き受けたのだ。責任を感じた俊一は誘拐犯から渡された拳銃で
標的の男を撃ち、友美を助け出す。しかし、彼女は再び誘拐されてしまい……。
俊一は無事にデートを終えることができるのか?(表題作「一番長いデート」)
(解説 山前譲)
全3作収録の短編集。
まず、「孤独な週末」から。
これは確かかつてドラマ化されたんじゃないかなと。
継母と正実、紀子と義理の息子。どちらの立場も難しい。
思春期突入の正実くんにすれば、父親を取られたと思うのは当然でしょう。
この義理の母と息子の関係をここまでミステリに昇華させて描きつつ、
最後に紀子が魅せる愛情は素晴らしいの一言。本作愁眉でしょう。
表題作は赤川作品の常連的なもの。なぜか抗争に巻き込まれる一般人。
この主人公、家まで送るんだぞというのを忠実に守っての、
このタイトルというのが面白い。
拳銃の処理も運が良いのか悪いのか・・・(苦笑
見事になーんにも巻き込まれず大団円。これぞ赤川ユーモア・ミステリの神髄。
「殺してからではおそすぎる」、いや全くこのタイトルは物語の内容以前に、
その通りなのですが、このタイトルからどんな話を想像できますか?
非常に短い短編ですが、上手く大団円になっています。
徳間文庫の復刊も途切れずに続けてくれていて、非常にありがたい。
これからも楽しませてください。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 880 円
時空旅行者の砂時計 [方丈貴恵]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
瀕死の妻を救うために約60年前にタイムトラベルした加茂。
妻を救うには彼女の祖先である竜泉家の人々を襲った『死野の惨劇』の真相を解明し、
阻止する必要があるのだという。惨劇が幕を開けた竜泉家の別荘で加茂に立ちはだかるのは、
絵画『キマイラ』に見立てたかのような不可能殺人の数々だった。
果たして竜泉家の一族を呪いから解放できるのか。
今最も注目される本格ミステリの書き手が放つ鮮烈なデビュー作!
第29回鮎川哲也賞受賞作。
確か去年の『このミス』か『本格ミステリ・ベスト10』で
方丈さんの『アミュレット・ホテル』が登場していて、おお、こんな方が居るのかと
その前のシリーズを購入したという経緯です。
SF的要素が強かったからか、避けていたのですが、これがどうして。
家系図に見取り図、そして読者への挑戦と、本格探偵小説、本格ミステリ小説
そのものではないですか。
妻の病を治すには、過去に戻り、彼女の祖先を襲った「死野の惨劇」を阻止する
必要がある。
そのため、主人公は「マイスターホラ」という、いかにも怪しい名前の人物と
砂時計を手にして、過去へタイムトラベルする・・・という設定。
「キマイラ」の絵画とおなじように殺人が起こる中、犯人を突き止められるのか?
SF的な要素は、最後の大仕掛けに使用されていたのが、本作愁眉かなと思います。
誤認トリックなんですが、上手いこと隠しているんですよね。
見立て殺人も中々良いです。
が、リフトのトリックというかあれは上手くいくのかどうかちょっと怪しい。
今ちょうど藤子・F・不二雄先生の『T・Pぼん』も読んでいたりするので、
過去への干渉がどれだけ現在ないし未来に影響を与えるか、というのが
結構気になりました(笑
最後の大団円は、本来的には上記のことからうまくいかないのだけど、
存命者がよく頑張った!といえるでしょう。
瀕死の妻を救うために約60年前にタイムトラベルした加茂。
妻を救うには彼女の祖先である竜泉家の人々を襲った『死野の惨劇』の真相を解明し、
阻止する必要があるのだという。惨劇が幕を開けた竜泉家の別荘で加茂に立ちはだかるのは、
絵画『キマイラ』に見立てたかのような不可能殺人の数々だった。
果たして竜泉家の一族を呪いから解放できるのか。
今最も注目される本格ミステリの書き手が放つ鮮烈なデビュー作!
第29回鮎川哲也賞受賞作。
確か去年の『このミス』か『本格ミステリ・ベスト10』で
方丈さんの『アミュレット・ホテル』が登場していて、おお、こんな方が居るのかと
その前のシリーズを購入したという経緯です。
SF的要素が強かったからか、避けていたのですが、これがどうして。
家系図に見取り図、そして読者への挑戦と、本格探偵小説、本格ミステリ小説
そのものではないですか。
妻の病を治すには、過去に戻り、彼女の祖先を襲った「死野の惨劇」を阻止する
必要がある。
そのため、主人公は「マイスターホラ」という、いかにも怪しい名前の人物と
砂時計を手にして、過去へタイムトラベルする・・・という設定。
「キマイラ」の絵画とおなじように殺人が起こる中、犯人を突き止められるのか?
SF的な要素は、最後の大仕掛けに使用されていたのが、本作愁眉かなと思います。
誤認トリックなんですが、上手いこと隠しているんですよね。
見立て殺人も中々良いです。
が、リフトのトリックというかあれは上手くいくのかどうかちょっと怪しい。
今ちょうど藤子・F・不二雄先生の『T・Pぼん』も読んでいたりするので、
過去への干渉がどれだけ現在ないし未来に影響を与えるか、というのが
結構気になりました(笑
最後の大団円は、本来的には上記のことからうまくいかないのだけど、
存命者がよく頑張った!といえるでしょう。
時空旅行者の砂時計 〈竜泉家の一族〉シリーズ (創元推理文庫)
- 作者: 方丈 貴恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2023/09/28
- メディア: Kindle版
三重露出 [都筑道夫]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「知ってるぞ、お前がヨリコを殺したんだ!」二年前、不可解な死を遂げた沢之内より子が、
架空日本で女忍者が跋扈する荒唐無稽な小説『三重露出』に現れた。これは手のこんだ告発か?
彼女に翻弄された9人の中に真犯人がいる……。
軽妙な作中作+本格ミステリのトリッキーな二重構造。
伝説の超メタ推理小説、マーベル作家・桃桃子(ピーチモモコ)とのコラボカバーで復活!
異色中の異色作というべきか、都筑先生渾身の意欲作というべきか。
日本在住の忍者かぶれのアメリカ人のライアンが、日本の女性ニンジャ集団を
向こうに回して、数々の不可能忍術を破りながら戦う、作中作『三重露出』。
一方、滝口正雄を主人公とする現実パートは、
一人の女性・沢之内より子の死を巡る真相に迫る本格ミステリ。
彼女は本当に自殺だったのか?
とにかくナンセンスニンジャ小説がめちゃめちゃ面白いです。
エログロナンセンス(というかグロはほとんどない)、B級アクション的な楽しさです。
これだけでも充分楽しめます。
現実パートは、この『三重露出』に登場する沢之内より子の死の真相に
滝口と箕浦が、当時のより子の取り巻き(自分たちも含めて)たちから話を聞いていく
流れになっています。
ただし、本パートのラストをどう読むのかで、この作品をどう捉えるかは
変わってくると思います。
個別にみるならば、エレベーターでの焼失トリックなどは実に見事ですが、
このラストは難しい。
解説(謎解き?)の中野康太郎さんの『猫の舌に釘を打て』との対比
から導き出される人物こそが犯人なのか?
あるいはラストに妙な手紙を残した箕浦か?
それとも本人が「殺した」と述べた宇佐見か?
都筑先生はどう考えていたのでしょうかねえ。
あるいはリドルストーリーとして終わりにしたかったのか。
それにしても、この時代に非常に斬新なミステリだよなとつくづく思いました。
法月先生の解説にある、トクマの特選第4弾はあるのか!
「知ってるぞ、お前がヨリコを殺したんだ!」二年前、不可解な死を遂げた沢之内より子が、
架空日本で女忍者が跋扈する荒唐無稽な小説『三重露出』に現れた。これは手のこんだ告発か?
彼女に翻弄された9人の中に真犯人がいる……。
軽妙な作中作+本格ミステリのトリッキーな二重構造。
伝説の超メタ推理小説、マーベル作家・桃桃子(ピーチモモコ)とのコラボカバーで復活!
異色中の異色作というべきか、都筑先生渾身の意欲作というべきか。
日本在住の忍者かぶれのアメリカ人のライアンが、日本の女性ニンジャ集団を
向こうに回して、数々の不可能忍術を破りながら戦う、作中作『三重露出』。
一方、滝口正雄を主人公とする現実パートは、
一人の女性・沢之内より子の死を巡る真相に迫る本格ミステリ。
彼女は本当に自殺だったのか?
とにかくナンセンスニンジャ小説がめちゃめちゃ面白いです。
エログロナンセンス(というかグロはほとんどない)、B級アクション的な楽しさです。
これだけでも充分楽しめます。
現実パートは、この『三重露出』に登場する沢之内より子の死の真相に
滝口と箕浦が、当時のより子の取り巻き(自分たちも含めて)たちから話を聞いていく
流れになっています。
ただし、本パートのラストをどう読むのかで、この作品をどう捉えるかは
変わってくると思います。
個別にみるならば、エレベーターでの焼失トリックなどは実に見事ですが、
このラストは難しい。
解説(謎解き?)の中野康太郎さんの『猫の舌に釘を打て』との対比
から導き出される人物こそが犯人なのか?
あるいはラストに妙な手紙を残した箕浦か?
それとも本人が「殺した」と述べた宇佐見か?
都筑先生はどう考えていたのでしょうかねえ。
あるいはリドルストーリーとして終わりにしたかったのか。
それにしても、この時代に非常に斬新なミステリだよなとつくづく思いました。
法月先生の解説にある、トクマの特選第4弾はあるのか!
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,210 円
殺し屋志願 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
殺し屋を看取った日から、少女の周りで何かが動き出す。傑作長編ミステリ。
朝の満員電車で、男が何者かに刺し殺された。殺害されたのは腕利きの殺し屋・鳴海。
偶然そばに居合わせ、彼の死をみとることになった17歳のみゆきは、
その日を境に奇妙な出来事に巻き込まれていく。「――殺したら?」たった一言を告げる電話と、
みゆきの前に現れた謎の女子高生・佐知子。彼女は継母を憎み、
その死を願って自ら殺し屋に近づいた少女だった――。
2人の少女の不思議な友情と秘密を鋭く描き切る、傑作長編ミステリ。
現在と過去を行き来する形で物語は進みます。
殺し屋の鳴海が佐知子に語る「殺人ってのは、くせになるんだ」という言葉が
本書を象徴していますね。
人間の殺意というものに注目した、いつものユーモア・ミステリとはひと味違う良作。
赤川作品はたまにこういうのがあるんですよね。
ラストも負の連鎖が続く展開を示唆してエンド。
殺し屋なんだけれども、鳴海が異常に好人物に見えるのは、
佐知子やみゆきの母親など、それを超える人が出ているからでしょうか。
とにかく登場人物は非常に少なく、基本は鳴海と佐知子・予史子の過去の出会いと、
みゆき、新谷母子・親子の物語だけで進むのに、徐々に異常な空気になっていくのが
また恐ろしいし、流石赤川次郎。
決してユーモア・ミステリだけではない赤川次郎。
ぜひご一読ください。
殺し屋を看取った日から、少女の周りで何かが動き出す。傑作長編ミステリ。
朝の満員電車で、男が何者かに刺し殺された。殺害されたのは腕利きの殺し屋・鳴海。
偶然そばに居合わせ、彼の死をみとることになった17歳のみゆきは、
その日を境に奇妙な出来事に巻き込まれていく。「――殺したら?」たった一言を告げる電話と、
みゆきの前に現れた謎の女子高生・佐知子。彼女は継母を憎み、
その死を願って自ら殺し屋に近づいた少女だった――。
2人の少女の不思議な友情と秘密を鋭く描き切る、傑作長編ミステリ。
現在と過去を行き来する形で物語は進みます。
殺し屋の鳴海が佐知子に語る「殺人ってのは、くせになるんだ」という言葉が
本書を象徴していますね。
人間の殺意というものに注目した、いつものユーモア・ミステリとはひと味違う良作。
赤川作品はたまにこういうのがあるんですよね。
ラストも負の連鎖が続く展開を示唆してエンド。
殺し屋なんだけれども、鳴海が異常に好人物に見えるのは、
佐知子やみゆきの母親など、それを超える人が出ているからでしょうか。
とにかく登場人物は非常に少なく、基本は鳴海と佐知子・予史子の過去の出会いと、
みゆき、新谷母子・親子の物語だけで進むのに、徐々に異常な空気になっていくのが
また恐ろしいし、流石赤川次郎。
決してユーモア・ミステリだけではない赤川次郎。
ぜひご一読ください。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 858 円
黄土館の殺人 [阿津川辰海]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
土壁の向こうで連続殺人が起きている。
名探偵(ぼく)は、そこにいない。
孤立した館を連続殺人が襲う。
生き残れ、推理せよ。
シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ
☆☆☆
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
そのとき土砂の向こうから女の声がした。
声は、交換殺人を申し入れてきた――。
同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。
葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
火土水風と四元素を扱う館シリーズの第3弾。
火・水と来て、今回は土。
そして、起こるのは日本の自然災害でも非常に多い、地震。
(あとがきで、能登半島地震に阿津川先生が触れられてます。)
大地震により、名探偵と助手は離ればなれに。
そして「黄土館」で起こる連続殺人。
犯人は果たして誰か。
探偵役と助手が離れ離れになるというのは、有栖川有栖先生の『双頭の悪魔』を
思い出しますね。
本書は3部構成で、1部は「名探偵・葛城輝義の冒険」。
シャーロック・ホームズのようなタイトルですが、事件を防ぐのも探偵の役目!
という、中々面白い部になってます。いわゆる倒叙形式。
もちろん、物語全体の中で、上記のような事ではなく、
ある非常に重要な描写-これは最後に探偵が指摘するのですが-が記されています。
(個人的にはこの推理というか指摘が本作愁眉。)
そして本書は、かつて名探偵であった飛鳥井光流の復活も描かれます。
本書のテーマでもある、ミステリにおける名探偵、探偵とは何かを語る上では重要な部です。
火や水、結構辛辣なコメントを書きましたが、本作は個人的には一番楽しめました。
名探偵と助手を離れ離れにした理由や、館に設置された塔の存在、犯人の動機は何なのか。
この辺りが非常に上手くできていたなあと。
第1部では、プロパビリティの犯罪にしれっと触れているのですが、これが実は本書を
貫く犯人の犯罪方法でもあるんですよね。これも上手い。
ただやっぱり自分のことを名探偵と自己紹介したりするのは、中々受け付けないなあ(苦笑
あと水の時に遭遇しているとはいえ、田所と三谷の人が死ぬことに慣れすぎだろう。
まあ、これはミステリのレギュラーメンバーなら、仕方ないのですが(笑
いよいよ次は「風」ですね。風車館の殺人、なんて単純な名称ではないと思いますが、
どう「風」を入れてくるのか、楽しみです。
土壁の向こうで連続殺人が起きている。
名探偵(ぼく)は、そこにいない。
孤立した館を連続殺人が襲う。
生き残れ、推理せよ。
シリーズ累計18万部
若き天才による驚愕必至の「館」ミステリ
☆☆☆
殺人を企む一人の男が、土砂崩れを前に途方にくれた。
復讐相手の住む荒土館が地震で孤立して、犯行が不可能となったからだ。
そのとき土砂の向こうから女の声がした。
声は、交換殺人を申し入れてきた――。
同じころ、大学生になった僕は、旅行先で「名探偵」の葛城と引き離され、
荒土館に滞在することになる。孤高の芸術一家を襲う連続殺人。
葛城はいない。僕は惨劇を生き残れるか。
火土水風と四元素を扱う館シリーズの第3弾。
火・水と来て、今回は土。
そして、起こるのは日本の自然災害でも非常に多い、地震。
(あとがきで、能登半島地震に阿津川先生が触れられてます。)
大地震により、名探偵と助手は離ればなれに。
そして「黄土館」で起こる連続殺人。
犯人は果たして誰か。
探偵役と助手が離れ離れになるというのは、有栖川有栖先生の『双頭の悪魔』を
思い出しますね。
本書は3部構成で、1部は「名探偵・葛城輝義の冒険」。
シャーロック・ホームズのようなタイトルですが、事件を防ぐのも探偵の役目!
という、中々面白い部になってます。いわゆる倒叙形式。
もちろん、物語全体の中で、上記のような事ではなく、
ある非常に重要な描写-これは最後に探偵が指摘するのですが-が記されています。
(個人的にはこの推理というか指摘が本作愁眉。)
そして本書は、かつて名探偵であった飛鳥井光流の復活も描かれます。
本書のテーマでもある、ミステリにおける名探偵、探偵とは何かを語る上では重要な部です。
火や水、結構辛辣なコメントを書きましたが、本作は個人的には一番楽しめました。
名探偵と助手を離れ離れにした理由や、館に設置された塔の存在、犯人の動機は何なのか。
この辺りが非常に上手くできていたなあと。
第1部では、プロパビリティの犯罪にしれっと触れているのですが、これが実は本書を
貫く犯人の犯罪方法でもあるんですよね。これも上手い。
ただやっぱり自分のことを名探偵と自己紹介したりするのは、中々受け付けないなあ(苦笑
あと水の時に遭遇しているとはいえ、田所と三谷の人が死ぬことに慣れすぎだろう。
まあ、これはミステリのレギュラーメンバーなら、仕方ないのですが(笑
いよいよ次は「風」ですね。風車館の殺人、なんて単純な名称ではないと思いますが、
どう「風」を入れてくるのか、楽しみです。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,320 円
等々力座殺人事件-中村雅楽と迷宮舞台 [戸坂康二]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
歌舞伎界の名優・中村雅楽が殺人事件の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者によるミステリ史に名を残す名推理の数々。
精選の8編に加えデビュー作「車引殺人事件」原型版を書籍初収録。
「グリーン車の子供」「団十郎切腹事件」、ミステリを読んでいれば
どこかで必ず目にするタイトルです。
特に前者は、日常の謎の中でも非常に秀逸とされています。
ところが、中々私は読む機会がなく、河出文庫でこのたび2冊復刊となり、
本当に喜ばしい限り。
本書には、主に殺人事件をあつかった作品群が収録されています。
印象に残ったのは、表題作と「臨時停留所」。
後者はホラー要素が少し入った奇談。
前者は結末がもの悲しすぎる作品。雅楽が二度と語らなかったのも頷けます。
「密室の鎧」も、見事な密室トリックですが、
これにしても、「奈落殺人事件」にしても、やはり歌舞伎特有の描写が良いですね。
登場する言葉遣い、業界特有の言葉など、これらは(私もわからないのも多々ですが)
今の若い読者の方へ果たして伝わるのかなあと。
ぜひ伝わって欲しいものです。
作品そのものは非常に素晴らしく、次の日常の謎系を収録した『楽屋の蟹』が
非常に楽しみです。
歌舞伎界の名優・中村雅楽が殺人事件の謎に挑む。
江戸川乱歩に見いだされた著者によるミステリ史に名を残す名推理の数々。
精選の8編に加えデビュー作「車引殺人事件」原型版を書籍初収録。
「グリーン車の子供」「団十郎切腹事件」、ミステリを読んでいれば
どこかで必ず目にするタイトルです。
特に前者は、日常の謎の中でも非常に秀逸とされています。
ところが、中々私は読む機会がなく、河出文庫でこのたび2冊復刊となり、
本当に喜ばしい限り。
本書には、主に殺人事件をあつかった作品群が収録されています。
印象に残ったのは、表題作と「臨時停留所」。
後者はホラー要素が少し入った奇談。
前者は結末がもの悲しすぎる作品。雅楽が二度と語らなかったのも頷けます。
「密室の鎧」も、見事な密室トリックですが、
これにしても、「奈落殺人事件」にしても、やはり歌舞伎特有の描写が良いですね。
登場する言葉遣い、業界特有の言葉など、これらは(私もわからないのも多々ですが)
今の若い読者の方へ果たして伝わるのかなあと。
ぜひ伝わって欲しいものです。
作品そのものは非常に素晴らしく、次の日常の謎系を収録した『楽屋の蟹』が
非常に楽しみです。
七番目の花嫁 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
女子大生探偵が挑むのは、発表会で起こった毒殺事件!
婚約者の前川とカフェを訪れた佐千子の命が狙われた。
偶然、居合わせた女子大生探偵・亜由美の相棒ドン・ファンが、
とっさに気づき事なきを得る。
真相が気になった亜由美は、二人が訪れるウェディングドレスのショーに潜入すると、
毒殺事件が発生する。
なんと殺されたのは、前川の四人いる元妻のうち一人で――。
表題作のほか『帰らざる花嫁』収録。
更新が止まってました。
本書、久しぶりに再読です。
前も書きましたが、元々は角川文庫で刊行されていて、
実業之日本社が文庫を創刊したことから、花嫁シリーズを最初から刊行しているんですね。
表題作はなんといっても「前妻同盟」というある意味パワーワードが強烈。
「赤毛組合」を思い出してしまいました(笑
でも7番目っていうのは、どういう意味なんだろうかと改めて疑問に。
4番目じゃ語呂が悪いからですかね。
(私が数え間違えているのかな。)
「帰らざる花嫁」は、登場人物が恋で完全に常軌を逸しているところが
中々恐ろしい。両親さえ居なければ・・・じゃないだろう。
亜由美や聡子の通っている大学、恐ろしすぎる。
起こる事件は凄惨なものの、亜由美の両親、ドン・ファン、殿永刑事らが
安定の癒やしを与えてくれています。
これがシリーズ長寿の秘訣の1つなんだろうと思います。
女子大生探偵が挑むのは、発表会で起こった毒殺事件!
婚約者の前川とカフェを訪れた佐千子の命が狙われた。
偶然、居合わせた女子大生探偵・亜由美の相棒ドン・ファンが、
とっさに気づき事なきを得る。
真相が気になった亜由美は、二人が訪れるウェディングドレスのショーに潜入すると、
毒殺事件が発生する。
なんと殺されたのは、前川の四人いる元妻のうち一人で――。
表題作のほか『帰らざる花嫁』収録。
更新が止まってました。
本書、久しぶりに再読です。
前も書きましたが、元々は角川文庫で刊行されていて、
実業之日本社が文庫を創刊したことから、花嫁シリーズを最初から刊行しているんですね。
表題作はなんといっても「前妻同盟」というある意味パワーワードが強烈。
「赤毛組合」を思い出してしまいました(笑
でも7番目っていうのは、どういう意味なんだろうかと改めて疑問に。
4番目じゃ語呂が悪いからですかね。
(私が数え間違えているのかな。)
「帰らざる花嫁」は、登場人物が恋で完全に常軌を逸しているところが
中々恐ろしい。両親さえ居なければ・・・じゃないだろう。
亜由美や聡子の通っている大学、恐ろしすぎる。
起こる事件は凄惨なものの、亜由美の両親、ドン・ファン、殿永刑事らが
安定の癒やしを与えてくれています。
これがシリーズ長寿の秘訣の1つなんだろうと思います。
サロメの夢は血の夢 [平石貴樹]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
切断された遺体と、水死体。留められた二枚の絵。
犯人の意図はどこに・・・・・・?
運転手が迎えに行ったら、社長は首だけになっていた。
壁に留められていたのは、呼応するかのような、
ビアズリーの「サロメ」の絵。
遺された家族の思いは複雑に絡み合う。
『潮首岬に郭公の鳴く』で話題の作者が贈る
「内的独白」ミステリー!
山崎千鶴シリーズ第2弾になるのでしょうか。
スタイルは『スノーバウンド@札幌連続殺人』に似てます。
登場人物たちの独白(セリフ)という形式で物語は進みます。
そして、本書は最初の「作者敬白」に、犯人当て小説であることが書かれてます。
「第四章の中ごろまでには真犯人の発見にたどりつく。それまでに全ての手がかりは、
探偵にも読者にも、公平に与えられているはずである。」
これはまさに読者への挑戦状です(笑
でも、私には全くわかりませんでした・・・
土居楯雄と帆奈美、2つの殺人事件が一体どう関係するのか、
警察の言うように、帆奈美の犯行で、彼女が最後に自殺したのか?
独白の中で事件の順番も議論され、別々の犯人説まで出るも・・・
とにかく、珍しくなんとか犯人を当てようと、相当気相を入れて読んだのですが、
この結末は全く予想だにしないもの。
最後まで読んで、改めて犯人の独白を読むと、これがかなり上手くギリギリの
ところで書かれていて、いやあ、流石平石先生。
独白という形式にこだわりすぎたのか、どうでもいい、本当に心の中で思っているような
ことまで書かれているので、そこはかなり鬱陶しい感もあり。
ただ、この独白という形式を取ったのは、探偵役である山崎千鶴の内部を
晒すためというのも、実は目的の1つだったのではないかと勘ぐってしまいました。
この千鶴の独白を読むと、彼女は大丈夫なのかと思ってしまうんですよね・・・
山崎千鶴シリーズは、本書→『スノーバウンド@札幌連続殺人』ときて、
ラスト(?)になるのが、更級ニッキが探偵役で登場する、
『スラム・ダンク・マーダー その他』。
しかし、この最後の書籍はまだ未文庫化。創元推理文庫で是非ともお願いします!
切断された遺体と、水死体。留められた二枚の絵。
犯人の意図はどこに・・・・・・?
運転手が迎えに行ったら、社長は首だけになっていた。
壁に留められていたのは、呼応するかのような、
ビアズリーの「サロメ」の絵。
遺された家族の思いは複雑に絡み合う。
『潮首岬に郭公の鳴く』で話題の作者が贈る
「内的独白」ミステリー!
山崎千鶴シリーズ第2弾になるのでしょうか。
スタイルは『スノーバウンド@札幌連続殺人』に似てます。
登場人物たちの独白(セリフ)という形式で物語は進みます。
そして、本書は最初の「作者敬白」に、犯人当て小説であることが書かれてます。
「第四章の中ごろまでには真犯人の発見にたどりつく。それまでに全ての手がかりは、
探偵にも読者にも、公平に与えられているはずである。」
これはまさに読者への挑戦状です(笑
でも、私には全くわかりませんでした・・・
土居楯雄と帆奈美、2つの殺人事件が一体どう関係するのか、
警察の言うように、帆奈美の犯行で、彼女が最後に自殺したのか?
独白の中で事件の順番も議論され、別々の犯人説まで出るも・・・
とにかく、珍しくなんとか犯人を当てようと、相当気相を入れて読んだのですが、
この結末は全く予想だにしないもの。
最後まで読んで、改めて犯人の独白を読むと、これがかなり上手くギリギリの
ところで書かれていて、いやあ、流石平石先生。
独白という形式にこだわりすぎたのか、どうでもいい、本当に心の中で思っているような
ことまで書かれているので、そこはかなり鬱陶しい感もあり。
ただ、この独白という形式を取ったのは、探偵役である山崎千鶴の内部を
晒すためというのも、実は目的の1つだったのではないかと勘ぐってしまいました。
この千鶴の独白を読むと、彼女は大丈夫なのかと思ってしまうんですよね・・・
山崎千鶴シリーズは、本書→『スノーバウンド@札幌連続殺人』ときて、
ラスト(?)になるのが、更級ニッキが探偵役で登場する、
『スラム・ダンク・マーダー その他』。
しかし、この最後の書籍はまだ未文庫化。創元推理文庫で是非ともお願いします!
福家警部補の考察 [大倉崇裕]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
福家さんには、全部お見通しなのね。
類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官探偵
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズ第5集
パスタを一本つまみ上げ、噛んでみる。まだ少し早い。水洗いしてボウルに入れておいた
レタスに手を伸ばそうとしたとき、金属音と、それに続いて重いものが屋根を転がり
落ちていく音が聞こえた。誠が屋根から落ちたのだ。もう少し待ってくれてもいいじゃないの、
パスタが無駄になっちゃうわ。いつも間が悪いんだから――夫の“事故死”をめぐり、
一見おっとりした妻の中本さゆりと福家警部補が熾烈な心理戦を繰り広げる「上品な魔女」ほか
三編を収録。類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官名探偵の活躍を描き、
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズに成長した〈福家警部補の事件簿〉第五集。
これぞ倒叙ミステリ。どれも素晴らしい短編で良い読書時間を過ごせました。
前回の福家では、少し福家が超人的になっていっているのを不満で書いたと思いますが、
本作では、福家と会話した人物にちょっと変化があるものの、いつもの福家で安心(笑)
コロンボでいう、ヨレヨレのレインコート、ボサボサの髪、ポンコツな車・・・
良い意味でステレオタイプの福家警部補が読めた気がします。
「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」、これは古畑任三郎の「殺人特急」を思い出しました。
もちろん、殺人場所など全然違うのですが、列車内で事件を解くのと、福家のある仕掛けが
見事です。
「安息の場所」は、犯人と探偵がそれぞれ尊敬し合う作品のようになっているのですが、
やはり読み所は最後でしょう。福家は決して生半可な返事はしません。
調べるといえば、とことん調べる。それが最後の3ページに出てきます。
「是枝哲の敗北」、完璧な殺人と思われて居ましたが、自分のいつもの行動から
足が付いてしまいます。それを見破ったのは流石の一言。
しかし、やはり本書の愁眉は「上品な魔女」。とにかく犯人の性格というか、異常性というか、
文章で読むから余計に恐怖を感じますね。
とはいえ、福家は特段変わりなく、犯人をどんどん追い詰めて行きます。
最後の仕掛けも見事。これは映像で視たい。
これからも本シリーズ、ずっと続いてほしいです。
福家さんには、全部お見通しなのね。
類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官探偵
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズ第5集
パスタを一本つまみ上げ、噛んでみる。まだ少し早い。水洗いしてボウルに入れておいた
レタスに手を伸ばそうとしたとき、金属音と、それに続いて重いものが屋根を転がり
落ちていく音が聞こえた。誠が屋根から落ちたのだ。もう少し待ってくれてもいいじゃないの、
パスタが無駄になっちゃうわ。いつも間が悪いんだから――夫の“事故死”をめぐり、
一見おっとりした妻の中本さゆりと福家警部補が熾烈な心理戦を繰り広げる「上品な魔女」ほか
三編を収録。類稀な洞察力を駆使して容疑者たちと対峙する警察官名探偵の活躍を描き、
現代の倒叙ミステリを代表するシリーズに成長した〈福家警部補の事件簿〉第五集。
これぞ倒叙ミステリ。どれも素晴らしい短編で良い読書時間を過ごせました。
前回の福家では、少し福家が超人的になっていっているのを不満で書いたと思いますが、
本作では、福家と会話した人物にちょっと変化があるものの、いつもの福家で安心(笑)
コロンボでいう、ヨレヨレのレインコート、ボサボサの髪、ポンコツな車・・・
良い意味でステレオタイプの福家警部補が読めた気がします。
「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」、これは古畑任三郎の「殺人特急」を思い出しました。
もちろん、殺人場所など全然違うのですが、列車内で事件を解くのと、福家のある仕掛けが
見事です。
「安息の場所」は、犯人と探偵がそれぞれ尊敬し合う作品のようになっているのですが、
やはり読み所は最後でしょう。福家は決して生半可な返事はしません。
調べるといえば、とことん調べる。それが最後の3ページに出てきます。
「是枝哲の敗北」、完璧な殺人と思われて居ましたが、自分のいつもの行動から
足が付いてしまいます。それを見破ったのは流石の一言。
しかし、やはり本書の愁眉は「上品な魔女」。とにかく犯人の性格というか、異常性というか、
文章で読むから余計に恐怖を感じますね。
とはいえ、福家は特段変わりなく、犯人をどんどん追い詰めて行きます。
最後の仕掛けも見事。これは映像で視たい。
これからも本シリーズ、ずっと続いてほしいです。
うらんぼんの夜 [川瀬七緖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
片田舎での暮らしをきらう高校生の奈緒は、東京から越してきた亜矢子と親しくなる。
しかし、それを境に村の空気は一変し、亜矢子の口数も少なくなってしまう。
疑念を抱く奈緒は、密かに彼女の自宅に忍び込もうとするが……。解説・西上心太。
川瀬先生の作品は『女學生奇譚』以来ですね。
こちらも同じノンシリーズ。
本作では、田舎の弊害、旧村の因習とか、そういうモノが描かれますが・・・
村に祀られている地蔵の謎は、やや消化不良かなあと。
ちょっと真相が唐突すぎるし、それまで経緯があまり語られていないので、
やや難しい印象。
この村の地蔵と村の因習、都会から来たよそ者という2つが、上手く組み合わされば
中々面白かったのだと思いますが、いかんせん、都会から来たよそ者が
引っ越してすぐに地蔵に願掛けするという行為をしているので、
余計に話が見えにくくなっている。
よそ者(亜矢子)がこの村の因習を知っていたとは到底思えないので、おそらく偶然なのですが、
彼女たちの引っ越しの目的を達するには極めてちょうど良かったわけで、
その意味で、よそ者と内部落の人が実は協力しているという事実を、
最後まで奈緒は気付かなかった。
ここはかなり面白く読めましたが、亜矢子たちは実は村の因習を知っていた(調べてきた)
のだろうという予測は容易にたつでしょう。
(特に亜矢子の兄と姉が調べている。)
内部落の人も東京へ調べに出ているというのも中々面白く、極めて閉鎖的に描かれている、
いわばステレオタイプ的な田舎なのに、実は相当な調査をしているという、面白い矛盾だなと
思いました。
その割に、奈緒の両親とか、いくらなんでも価値観が古すぎだし、どうなってるんだろうと
いうのもまた矛盾ですかね。
片田舎での暮らしをきらう高校生の奈緒は、東京から越してきた亜矢子と親しくなる。
しかし、それを境に村の空気は一変し、亜矢子の口数も少なくなってしまう。
疑念を抱く奈緒は、密かに彼女の自宅に忍び込もうとするが……。解説・西上心太。
川瀬先生の作品は『女學生奇譚』以来ですね。
こちらも同じノンシリーズ。
本作では、田舎の弊害、旧村の因習とか、そういうモノが描かれますが・・・
村に祀られている地蔵の謎は、やや消化不良かなあと。
ちょっと真相が唐突すぎるし、それまで経緯があまり語られていないので、
やや難しい印象。
この村の地蔵と村の因習、都会から来たよそ者という2つが、上手く組み合わされば
中々面白かったのだと思いますが、いかんせん、都会から来たよそ者が
引っ越してすぐに地蔵に願掛けするという行為をしているので、
余計に話が見えにくくなっている。
よそ者(亜矢子)がこの村の因習を知っていたとは到底思えないので、おそらく偶然なのですが、
彼女たちの引っ越しの目的を達するには極めてちょうど良かったわけで、
その意味で、よそ者と内部落の人が実は協力しているという事実を、
最後まで奈緒は気付かなかった。
ここはかなり面白く読めましたが、亜矢子たちは実は村の因習を知っていた(調べてきた)
のだろうという予測は容易にたつでしょう。
(特に亜矢子の兄と姉が調べている。)
内部落の人も東京へ調べに出ているというのも中々面白く、極めて閉鎖的に描かれている、
いわばステレオタイプ的な田舎なのに、実は相当な調査をしているという、面白い矛盾だなと
思いました。
その割に、奈緒の両親とか、いくらなんでも価値観が古すぎだし、どうなってるんだろうと
いうのもまた矛盾ですかね。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 990 円
網走発遥かなり 完全改訂版 [島田荘司]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
東京郊外の高級住宅が並ぶ丘の上を毎日観察する老人の狙いは何か?
また都心のデパートや地下街に出没するピエロの正体は?
そして江戸川乱歩の古い写真を持つ老女の素顔とは?
現代の東京に表出した奇妙な出来事はやがて四十年前の雪の北海道で
起きた惨事の謎解きに結集する。
著者が周到に企みをほどこした驚異の野心作を改訂完全版として新装復刊、
著者による巻末解説も収録。
2024年春公開予定映画『乱歩の幻影』を収録。
江戸川乱歩の知られざる秘密に迫る「乱歩の幻影」。
島田荘司のリアルな体験から発想された名作がついに映像化!
出演 結城モエ 高橋克典 山口大地 嘉島陸 小貫莉奈 高橋努 加藤雅也(友情出演) 常盤貴子
原作・脚本・音楽 島田荘司
監督・プロデュース 秋山純
島田御大に、こんな傑作があるとは知りませんでした。
連作短編集、あるいは壮大な長編。
1組の「夫婦」が全編においてキーワードになりますが、
最初の「丘の上」は当時のバブル崩壊後という世相を色濃く反映させつつ、
奇妙な行動を取る隣家の老人と、丘の下に住む住民の葛藤と邂逅を描く作品。
ここから果たしてどう連作短編となるのか、まるで想像がつきませんでした。
「化石の街」は、東京の中心に眠る「宝探し」が核となる物語。
やはり奇妙なピエロが登場しますが、最後には主人公がピエロになるというのは
実に皮肉が効いている。
そして、老紳士が登場。主人公の名前は里美。
圧巻は「乱歩の幻影」。島田先生の「完全改訂版に寄せて」に拠ると、
ほとんどノンフィクションとのこと。
主人公の里美へ老婆が「あんたには崩せないよ、壁」という言葉の
なんとおどろおどろしい、恐ろしいことか。
その場面を想像するだけでゾクゾクします。
(種を明かせばなんてことはないのですが、ここはものすごく印象に残りました。)
そして里美(島田先生)がいかに乱歩に惹かれていたのかも、実によくわかる一編。
いや、島田先生だけでなく、「少年探偵団」による明智小五郎、江戸川乱歩は
当時の少年少女の関心を一心に集めていたのでしょう。
過日、別冊太陽で『横溝正史』が発売されたのですが、その1年前に
『江戸川乱歩』が発売しているのです。
これ、2冊続けて読むのがお勧めです。
閑話休題。
最終話が表題作ですが、「完全改訂版に寄せて」によると、本編が一番最初に
書かれた作品とのこと!
初めから連作短編を意識していたわけではないのです。
そして本編は御手洗潔シリーズを彷彿とさせる、実に奇妙な密室・消失事件。
犯人が予想しえなかった事態が、より事件を複雑化しているところも面白い。
1組の「夫婦」の足跡と、(読者にとっては)そこに乱歩の幻影を見つつ、
物語は幕を閉じます。
御手洗潔シリーズを思い起こす「丘の上」の老人や「化石の街」のピエロや老紳士の
奇妙な行動。本格ミステリの「網走発遥かなり」、ノンフィクションかつ江戸川乱歩
の幻影を追う表題作。
いずれをとっても傑作です。
東京郊外の高級住宅が並ぶ丘の上を毎日観察する老人の狙いは何か?
また都心のデパートや地下街に出没するピエロの正体は?
そして江戸川乱歩の古い写真を持つ老女の素顔とは?
現代の東京に表出した奇妙な出来事はやがて四十年前の雪の北海道で
起きた惨事の謎解きに結集する。
著者が周到に企みをほどこした驚異の野心作を改訂完全版として新装復刊、
著者による巻末解説も収録。
2024年春公開予定映画『乱歩の幻影』を収録。
江戸川乱歩の知られざる秘密に迫る「乱歩の幻影」。
島田荘司のリアルな体験から発想された名作がついに映像化!
出演 結城モエ 高橋克典 山口大地 嘉島陸 小貫莉奈 高橋努 加藤雅也(友情出演) 常盤貴子
原作・脚本・音楽 島田荘司
監督・プロデュース 秋山純
島田御大に、こんな傑作があるとは知りませんでした。
連作短編集、あるいは壮大な長編。
1組の「夫婦」が全編においてキーワードになりますが、
最初の「丘の上」は当時のバブル崩壊後という世相を色濃く反映させつつ、
奇妙な行動を取る隣家の老人と、丘の下に住む住民の葛藤と邂逅を描く作品。
ここから果たしてどう連作短編となるのか、まるで想像がつきませんでした。
「化石の街」は、東京の中心に眠る「宝探し」が核となる物語。
やはり奇妙なピエロが登場しますが、最後には主人公がピエロになるというのは
実に皮肉が効いている。
そして、老紳士が登場。主人公の名前は里美。
圧巻は「乱歩の幻影」。島田先生の「完全改訂版に寄せて」に拠ると、
ほとんどノンフィクションとのこと。
主人公の里美へ老婆が「あんたには崩せないよ、壁」という言葉の
なんとおどろおどろしい、恐ろしいことか。
その場面を想像するだけでゾクゾクします。
(種を明かせばなんてことはないのですが、ここはものすごく印象に残りました。)
そして里美(島田先生)がいかに乱歩に惹かれていたのかも、実によくわかる一編。
いや、島田先生だけでなく、「少年探偵団」による明智小五郎、江戸川乱歩は
当時の少年少女の関心を一心に集めていたのでしょう。
過日、別冊太陽で『横溝正史』が発売されたのですが、その1年前に
『江戸川乱歩』が発売しているのです。
これ、2冊続けて読むのがお勧めです。
閑話休題。
最終話が表題作ですが、「完全改訂版に寄せて」によると、本編が一番最初に
書かれた作品とのこと!
初めから連作短編を意識していたわけではないのです。
そして本編は御手洗潔シリーズを彷彿とさせる、実に奇妙な密室・消失事件。
犯人が予想しえなかった事態が、より事件を複雑化しているところも面白い。
1組の「夫婦」の足跡と、(読者にとっては)そこに乱歩の幻影を見つつ、
物語は幕を閉じます。
御手洗潔シリーズを思い起こす「丘の上」の老人や「化石の街」のピエロや老紳士の
奇妙な行動。本格ミステリの「網走発遥かなり」、ノンフィクションかつ江戸川乱歩
の幻影を追う表題作。
いずれをとっても傑作です。
江戸川乱歩: 日本探偵小説の父 (305;305) (別冊太陽)
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2023/02/27
- メディア: ムック
探偵小説の鬼 横溝正史: 謎の骨格にロマンの衣を着せて (313;313) (別冊太陽)
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2024/03/13
- メディア: ムック
あと十五秒で死ぬ [榊林銘]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
撃たれて死ぬまでの十五秒間で、
私は必ず犯人を告発してみせる。
〈十五秒後に死ぬ〉という奇抜な状況設定で起きる
四つの事件。この真相をあなたは見破れるか?
第12回ミステリーズ!新人賞佳作を収録、衝撃のデビュー作品集!
死神から与えられた余命十五秒をどう使えば、「私」は自分を撃った犯人を告発し、
かつ反撃できるのか? 被害者と犯人の一風変わった攻防を描く、
第12回ミステリーズ!新人賞佳作「十五秒」など四編を収録。
〈十五秒後に死ぬ〉というトリッキーな状況設定で起きる四つの事件の真相を、
あなたは見破れるか? 単行本刊行後に反響を呼んだ、第12回ミステリーズ!
新人賞佳作収録のデビュー作品集、待望の文庫化!
タイトルに一番合致する「15秒」が第1作に配されていて、
これはまさに、あと自分に遺された時間は15秒のみ。
それが過ぎれば死んでしまう。その15秒で自分を殺した犯人を他者に伝える手段はあるか?!
案内人として黒マントの猫が登場しますが、ちょっとした狂言回しやコメディリリーフな
感じがありますね。まあ死神なんですけどね。
本作は、どことなくジョジョの奇妙な冒険第3部、DIOの丈太郎の対決を読んでいるような
印象も受けました(笑)まさに時を止める、そして動かすという動作を繰り返しつつ、
主人公がいかに最大限思考を巡らせるか、与えられた15秒でヤツを叩くのみだ!という(笑
で、私は所収作全てがこの15秒に関わるというのを最後まで読んで、ようやく気付きました。
いや、これは凄い。
特に最終話の「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は特殊設定ミステリでありながら、
見事な本格ミステリで、本作愁眉です。
首脱という珍しい体質?を持つ者たちが住む島で起こる殺人事件。
しかも、本作は「首の無い死体」というミステリのお約束に対して、現代ミステリ的な回答
の1つを示したといっても過言ではないと思います。
高校生同士の他愛ない会話、身体能力がどうとか云々が、実は重大な伏線であること、
最後の両角巡査の鬼気迫る首脱による胴体交換。しかもここには本人曰く「鬼の末裔」、
とにかく謎解き含めて、15秒間のみ首脱できるという能力だけに限らず、
非常にレベルの高い本格ミステリだと思いました。
撃たれて死ぬまでの十五秒間で、
私は必ず犯人を告発してみせる。
〈十五秒後に死ぬ〉という奇抜な状況設定で起きる
四つの事件。この真相をあなたは見破れるか?
第12回ミステリーズ!新人賞佳作を収録、衝撃のデビュー作品集!
死神から与えられた余命十五秒をどう使えば、「私」は自分を撃った犯人を告発し、
かつ反撃できるのか? 被害者と犯人の一風変わった攻防を描く、
第12回ミステリーズ!新人賞佳作「十五秒」など四編を収録。
〈十五秒後に死ぬ〉というトリッキーな状況設定で起きる四つの事件の真相を、
あなたは見破れるか? 単行本刊行後に反響を呼んだ、第12回ミステリーズ!
新人賞佳作収録のデビュー作品集、待望の文庫化!
タイトルに一番合致する「15秒」が第1作に配されていて、
これはまさに、あと自分に遺された時間は15秒のみ。
それが過ぎれば死んでしまう。その15秒で自分を殺した犯人を他者に伝える手段はあるか?!
案内人として黒マントの猫が登場しますが、ちょっとした狂言回しやコメディリリーフな
感じがありますね。まあ死神なんですけどね。
本作は、どことなくジョジョの奇妙な冒険第3部、DIOの丈太郎の対決を読んでいるような
印象も受けました(笑)まさに時を止める、そして動かすという動作を繰り返しつつ、
主人公がいかに最大限思考を巡らせるか、与えられた15秒でヤツを叩くのみだ!という(笑
で、私は所収作全てがこの15秒に関わるというのを最後まで読んで、ようやく気付きました。
いや、これは凄い。
特に最終話の「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は特殊設定ミステリでありながら、
見事な本格ミステリで、本作愁眉です。
首脱という珍しい体質?を持つ者たちが住む島で起こる殺人事件。
しかも、本作は「首の無い死体」というミステリのお約束に対して、現代ミステリ的な回答
の1つを示したといっても過言ではないと思います。
高校生同士の他愛ない会話、身体能力がどうとか云々が、実は重大な伏線であること、
最後の両角巡査の鬼気迫る首脱による胴体交換。しかもここには本人曰く「鬼の末裔」、
とにかく謎解き含めて、15秒間のみ首脱できるという能力だけに限らず、
非常にレベルの高い本格ミステリだと思いました。
龍神池の小さな死体 [梶龍雄]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「お前の弟は殺されたのだよ」
死期迫る母の告白を受け、疎開先で亡くなった弟の死の真相を追い大学教授・仲城智一は
千葉の寒村・山蔵を訪ねる。
村一番の旧家妙見家の裏、弟の亡くなった龍神池に赤い槍で突かれた惨殺体が浮かぶ。
龍神の呪いか?座敷牢に封じられた狂人の霊の仕業か?
怒涛の伏線回収に酔い痴れる伝説のパーフェクトミステリ降臨。
〈トクマの特選!〉
イラスト やまがみ彩
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクションの第1弾。
戦前、疎開先で事故で死んだと聞かされていた弟は殺されていた。
母親から死ぬ前の告白を受けて、智一は弟の足跡を辿るが・・・
本作は傑作です。主人公の弟捜しと、研究成果との見事な絡みもさることながら、
全編に伏線が張り巡らされ、それが一気に回収されていく、まさに本格ミステリ。
特に素晴らしいのは、吉爺殺害の誤認トリック。さり気ない描写なのですが、
ここは本当に上手い。
ラスト、というか終幕については確かに賛否両論ありそうですが、
これは梶作品を研究されている方の意見とかもお伺いしたいところですね。
「お前の弟は殺されたのだよ」
死期迫る母の告白を受け、疎開先で亡くなった弟の死の真相を追い大学教授・仲城智一は
千葉の寒村・山蔵を訪ねる。
村一番の旧家妙見家の裏、弟の亡くなった龍神池に赤い槍で突かれた惨殺体が浮かぶ。
龍神の呪いか?座敷牢に封じられた狂人の霊の仕業か?
怒涛の伏線回収に酔い痴れる伝説のパーフェクトミステリ降臨。
〈トクマの特選!〉
イラスト やまがみ彩
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクションの第1弾。
戦前、疎開先で事故で死んだと聞かされていた弟は殺されていた。
母親から死ぬ前の告白を受けて、智一は弟の足跡を辿るが・・・
本作は傑作です。主人公の弟捜しと、研究成果との見事な絡みもさることながら、
全編に伏線が張り巡らされ、それが一気に回収されていく、まさに本格ミステリ。
特に素晴らしいのは、吉爺殺害の誤認トリック。さり気ない描写なのですが、
ここは本当に上手い。
ラスト、というか終幕については確かに賛否両論ありそうですが、
これは梶作品を研究されている方の意見とかもお伺いしたいところですね。
梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション1 龍神池の小さな死体 (徳間文庫 トクマの特選!)
- 作者: 梶龍雄
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2022/04/13
- メディア: Kindle版
多重迷宮の殺人 [長沢樹]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
聖域を穢す者は、必ず殺される。
首都圏を震撼させる連続切り裂き魔事件!
地下施設に閉じ込められた9人。
絶対絶命の状況下で、連続殺人が始まった――
首都圏で発生した、地下建築での連続切り裂き魔事件。犯人も被害者の共通点も不明のまま、
捜査は難航していた。そんな最中、探偵・七ツ森とその助手・風野は、
地下探索サークルを主催する大学生・藤間とともに政治家が遺した別荘を訪れる。
その近辺の地下シェルターを調査中に壁が崩壊、一行は内部に閉じ込められてしまった。
さらに地下でも連続殺人が起き……大学生たちは犯人の手を逃れ、閉鎖空間から脱出できるのか。(『武蔵野アンダーワールド・セブン 多重迷宮』改題・改稿版)
初めて読むと思いきや、『消失グラデーション』の作家さんとは。
ところで、解説にもあるとおり元々の作品とは改題・改稿しているというもので、
東京創元社のページを見ると、登場人物や物語も結構異なっているようですね。
地下遺構という舞台設定は非常に魅力的だと思います。
普通はそこに閉じ込められたらパニックになりそうですが、登場人物たちの
経験からか、パニックは起こらず。
さて、少し先に進んでしまったのですが、本書は最初何か続編なのかと思うような、
いわばかなり色々な設定があるんですよね。
これが中々・・・理解するのが難しいというよりも、読んでいると気恥ずかしくなる(苦笑)
名探偵の登場や助手とか。神子都の過去とか、捜査コンサルタントという職業、
時代設定が1970年代~80年代で、学生運動が大きく影響していて、
地下に潜った彼彼女たちを執拗に探す公安部と刑事部の対立等々・・・
とにかく設定も多すぎる。
地下遺構での殺人事件は、なぜ閉じ込められた状態で行うのか?という動機も、
さらにどうおこなったのかという方法も、かなり物語にのめり込む面白さなのですが、
ラストがかなり消化不足なのと、様々設定したものがほとんど活かせていないのが残念ですね。
様々な地下遺構をめぐる、という感じのシリーズ化も目指せそうなのだけどなあ。
(ラストでそれはもう無いことはわかるのですが)
聖域を穢す者は、必ず殺される。
首都圏を震撼させる連続切り裂き魔事件!
地下施設に閉じ込められた9人。
絶対絶命の状況下で、連続殺人が始まった――
首都圏で発生した、地下建築での連続切り裂き魔事件。犯人も被害者の共通点も不明のまま、
捜査は難航していた。そんな最中、探偵・七ツ森とその助手・風野は、
地下探索サークルを主催する大学生・藤間とともに政治家が遺した別荘を訪れる。
その近辺の地下シェルターを調査中に壁が崩壊、一行は内部に閉じ込められてしまった。
さらに地下でも連続殺人が起き……大学生たちは犯人の手を逃れ、閉鎖空間から脱出できるのか。(『武蔵野アンダーワールド・セブン 多重迷宮』改題・改稿版)
初めて読むと思いきや、『消失グラデーション』の作家さんとは。
ところで、解説にもあるとおり元々の作品とは改題・改稿しているというもので、
東京創元社のページを見ると、登場人物や物語も結構異なっているようですね。
地下遺構という舞台設定は非常に魅力的だと思います。
普通はそこに閉じ込められたらパニックになりそうですが、登場人物たちの
経験からか、パニックは起こらず。
さて、少し先に進んでしまったのですが、本書は最初何か続編なのかと思うような、
いわばかなり色々な設定があるんですよね。
これが中々・・・理解するのが難しいというよりも、読んでいると気恥ずかしくなる(苦笑)
名探偵の登場や助手とか。神子都の過去とか、捜査コンサルタントという職業、
時代設定が1970年代~80年代で、学生運動が大きく影響していて、
地下に潜った彼彼女たちを執拗に探す公安部と刑事部の対立等々・・・
とにかく設定も多すぎる。
地下遺構での殺人事件は、なぜ閉じ込められた状態で行うのか?という動機も、
さらにどうおこなったのかという方法も、かなり物語にのめり込む面白さなのですが、
ラストがかなり消化不足なのと、様々設定したものがほとんど活かせていないのが残念ですね。
様々な地下遺構をめぐる、という感じのシリーズ化も目指せそうなのだけどなあ。
(ラストでそれはもう無いことはわかるのですが)
幽霊たちのエピローグ [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
〈幽霊屋敷を取り壊すのをやめよ。さもないと幽霊の復讐がある〉
大宅令子は警視庁捜査一課のベテラン警部を父に持つ大学生探偵。
家庭教師の生徒である末川ひとみに連れられて「幽霊屋敷」に忍び込んだ。
そこでひとみは殺人を計画する幽霊の話し声を聞いたのだという。
命を狙われているのはひとみの父親ではないか――疑う令子の顔に滴り落ちてきたのは、
なんと真っ赤な血! 見つかったのはひとみの恋人の死体で……。
(表題作「幽霊たちのエピローグ」)
大宅令子が探偵役を務める2編が収録された中編集です。
読んだ記憶がないので、初ですね(笑
解説の山前譲さんも書かれているのですが、
赤川次郎先生と幽霊は非常に親和性が高いのです(笑
タイトルに入っているのも(当然ながら「幽霊」シリーズ)
今ならば、「怪異名所めぐり」シリーズが該当しますね。
実際に幽霊が出てこないのと、出てくるもの合わせるとまた多い。
後者は『怪談人恋坂』『三毛猫ホームズの怪奇現象』『幽霊はテニスがお好き』
もっとたくさんあると思いますが、思い出すのはこのあたり。
さて本書はというと、先に挙げた事例ならば、実際には出てこない前者のグループ。
「幽霊の前半分」、これは双子のことを指しているのかなあと。
最後の最後まで、本当に双子のどちらが亡くなったのかがわからなくするところがよい。
表題作、劇団「幽霊」というのはいいですね。
本作は色々と解かないといけない謎が多すぎて、ちょっと渋滞している印象。
地下道をもう少し活かしてほしかったなあ。
〈幽霊屋敷を取り壊すのをやめよ。さもないと幽霊の復讐がある〉
大宅令子は警視庁捜査一課のベテラン警部を父に持つ大学生探偵。
家庭教師の生徒である末川ひとみに連れられて「幽霊屋敷」に忍び込んだ。
そこでひとみは殺人を計画する幽霊の話し声を聞いたのだという。
命を狙われているのはひとみの父親ではないか――疑う令子の顔に滴り落ちてきたのは、
なんと真っ赤な血! 見つかったのはひとみの恋人の死体で……。
(表題作「幽霊たちのエピローグ」)
大宅令子が探偵役を務める2編が収録された中編集です。
読んだ記憶がないので、初ですね(笑
解説の山前譲さんも書かれているのですが、
赤川次郎先生と幽霊は非常に親和性が高いのです(笑
タイトルに入っているのも(当然ながら「幽霊」シリーズ)
今ならば、「怪異名所めぐり」シリーズが該当しますね。
実際に幽霊が出てこないのと、出てくるもの合わせるとまた多い。
後者は『怪談人恋坂』『三毛猫ホームズの怪奇現象』『幽霊はテニスがお好き』
もっとたくさんあると思いますが、思い出すのはこのあたり。
さて本書はというと、先に挙げた事例ならば、実際には出てこない前者のグループ。
「幽霊の前半分」、これは双子のことを指しているのかなあと。
最後の最後まで、本当に双子のどちらが亡くなったのかがわからなくするところがよい。
表題作、劇団「幽霊」というのはいいですね。
本作は色々と解かないといけない謎が多すぎて、ちょっと渋滞している印象。
地下道をもう少し活かしてほしかったなあ。
不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録 [ゲーム]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
1000回遊べるダンジョンRPGシリーズ最新作
【『不思議のダンジョン』最新作が発売決定!】
長年に渡り多くのファンの皆様に愛されてきた「不思議のダンジョン」シリーズ。
入るたびに構造が異なるダンジョンを、知識と経験、閃きと運を駆使して踏破する―
本シリーズの根源的な面白さはそのままに、新たな要素を加えてさらにやりこみ度も
遊びの幅も広がった『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』が、
Nintendo Switchに登場いたします。
【新要素でさらに楽しい不思議のダンジョン】シレンがなんか大きくなったかと思えば、
巨大なモンスターがダンジョンを徘徊!?何度も挑戦を重ねることで物語が進行し、
不思議のダンジョンをさらに楽しく、より長くプレイできる数々の新要素が用意されています。
久しぶりの、というよりまさか出るとは思わなかったシリーズ最新作。
初代から全部している、一応シレンジャーとしては(笑)当然買いました。
最初のエンディング、というか、不思議のダンジョンはそこからがスタートですが、
それをクリアした後も、結構謎を残しているので、初見の人はそこでは中々
止めない仕様にしているのかと感じました。
あと、道具は初期からかなり良いものが出ます。これは初心者向けなのか。
というか、シレンジャーでも最初のエンディングまで中々厳しい(私だけ?)
今はヤマカガシ峠やら鬼木島をプレイ中。99階ある火口付近のダンジョンはまだ。
持ち込み可ダンジョンからとも思ったのですが、この2つのダンジョンで足止めです(苦笑
○○祭りとか、クロンの挑戦(試練)とか、この辺りのアイデアは素晴らしいですね。
あと今回食べ物も意外と豊富という。
要は、大幅なチェンジはせず、基本路線を守りつつも、そこかしこに新たな試みを
しているのが、良いんですよね。
杖と巻物の領域って、アスカにもあったなあ。
常にアスカを移植して欲しいと思ってます。あれ最初のエンディングの後、
完全に積んだんですよね・・・
というわけで、しばらく離れていた方も、初めての方も、ぜひプレイした欲しいです!
1000回遊べるダンジョンRPGシリーズ最新作
【『不思議のダンジョン』最新作が発売決定!】
長年に渡り多くのファンの皆様に愛されてきた「不思議のダンジョン」シリーズ。
入るたびに構造が異なるダンジョンを、知識と経験、閃きと運を駆使して踏破する―
本シリーズの根源的な面白さはそのままに、新たな要素を加えてさらにやりこみ度も
遊びの幅も広がった『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』が、
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【新要素でさらに楽しい不思議のダンジョン】シレンがなんか大きくなったかと思えば、
巨大なモンスターがダンジョンを徘徊!?何度も挑戦を重ねることで物語が進行し、
不思議のダンジョンをさらに楽しく、より長くプレイできる数々の新要素が用意されています。
久しぶりの、というよりまさか出るとは思わなかったシリーズ最新作。
初代から全部している、一応シレンジャーとしては(笑)当然買いました。
最初のエンディング、というか、不思議のダンジョンはそこからがスタートですが、
それをクリアした後も、結構謎を残しているので、初見の人はそこでは中々
止めない仕様にしているのかと感じました。
あと、道具は初期からかなり良いものが出ます。これは初心者向けなのか。
というか、シレンジャーでも最初のエンディングまで中々厳しい(私だけ?)
今はヤマカガシ峠やら鬼木島をプレイ中。99階ある火口付近のダンジョンはまだ。
持ち込み可ダンジョンからとも思ったのですが、この2つのダンジョンで足止めです(苦笑
○○祭りとか、クロンの挑戦(試練)とか、この辺りのアイデアは素晴らしいですね。
あと今回食べ物も意外と豊富という。
要は、大幅なチェンジはせず、基本路線を守りつつも、そこかしこに新たな試みを
しているのが、良いんですよね。
杖と巻物の領域って、アスカにもあったなあ。
常にアスカを移植して欲しいと思ってます。あれ最初のエンディングの後、
完全に積んだんですよね・・・
というわけで、しばらく離れていた方も、初めての方も、ぜひプレイした欲しいです!
不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録 -Switch
- 出版社/メーカー: スパイク・チュンソフト
- 発売日: 2024/01/25
- メディア: CD-ROM
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 5,867 円
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