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欺瞞の殺意 [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

このミス、本ミスW受賞の注目作。往復書簡で真相に迫る、本格ミステリー

昭和41年。地方の資産家楡家の当主がゴルフ中に心筋梗塞64才で逝去。
親族しかいない法要が屋敷で執り行われるがそこで殺人事件が起こる。
長女と孫(早死にした長男の子)がヒ素で死んだのだ。調査を進めると、
殺された長女の婿養子の弁護士のポケットから、ヒ素をいれたチョコレートの紙片が発見された。
「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです――。」

無実にもかかわらず「自白」して無期懲役となったその弁護士は、
事件関係者と「往復書簡」を交わすことに。
「毒入りチョコレート」の真犯人をめぐる推理合戦は往復書簡の中で繰り広げられ――、
やがて思わぬ方向へ「真相」が導いていく――。
「このミステリーがすごい!」2021年版 国内編(宝島社)と
「2021年本格ミステリベスト10」国内ランキング(原書房)で堂々7位のW受賞作品。
A.バークリーの『毒入りチョコレート事件』をオマージュとした本格ミステリ長編。

以下、ネタバレあり。








更新が止まっていました。
Switchのゼルダをしていて、読書が二の次に・・・(苦笑)

意図した訳ではないのですが、なんと2作連続で、多重解決ミステリとなりました。
その大半が治重と橙子による書簡ですが、彼彼女との40年以上前の自身の思いを吐露
する手紙から、楡家の殺人事件へ迫っていく過程。そして治重と橙子による推理合戦と、
息を飲む展開が続きます。

関係者がほとんど亡くなっている状況、かつ誰が毒を治重の背広のポケットに入れたのか?
この非常に限られた状況下で、この二人、どこまで推理力を巡らせるのか!!

特に澤子犯人説は驚愕の説でした。自らの命を賭けてまでやるのかという。
そして、治重がこの書簡に仕掛けたもう1つのトリックがあまりに見事です。

一方、楡家の殺人事件は、本当に橙子が起こしたことなのかどうか。
ここは個人的には少し謎として残りました。
本人が否定していない、そして動機もある意味単純で愛するが故に・・・という。
しかし、澤子=犯人というのが、あまりにしっくり来るんですよね。

過去の事件をどこまで明らかに出来るのかという、現実社会でも難しい謎を
弁護士としての顔を持つ作者ならばこそ、フィクション上でもそれを活かしつつ、
あまりに見事な心理戦を読ませてもらえました。


欺瞞の殺意 (角川文庫)

欺瞞の殺意 (角川文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2023/02/24
  • メディア: 文庫






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衣更月家の一族 [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

別居中の妻の潜伏先を察知した男が、応対に出た姉のほうを撲殺――110番通報の時点では単純な事件と思われた。だが犯人が直接目撃されていないうえ、被害者の夫には別の家庭があった。
強欲と憤怒に目がくらんだ人間たちが堕ちていく凄まじい罪の地獄。
因業に満ちた世界を描ききった傑作ミステリー!

またまた久しぶりの更新です。
前作の『鬼畜の家』からだいぶ経ってしまいましたが、深木さんの第2長編。
以下、ややネタバレ。



一見すると何の関係もない3つの「家」で起きた事件ですが、
プロローグで語られる「衣更月家」の顛末があることから、
廣田家、楠原家、鷹尾家それぞれの殺人に、この「衣更月家」が関係してくるのは
間違いない、読者へそう思わせるためのプロローグな訳です。

どんな因縁があるのだろうか・・・と(勝手に思い込み)僕は読んでいたのですが、
この結末はかなり予想外でした。
特に廣田家の殺人の犯人、かなりの切れ者で実に巧妙です。
楠原家、鷹尾家より、やはりこの廣田家の殺人の見方が
探偵榊原の推理で見方が全く変わってしまうところが素晴らしい。

あと、個人的には前作の『鬼畜の家』もそうなんですが、
家の何らかの因縁なのかというのを醸し出しておきながら、
真相はまるで違うところが良いのですよね。
むろん全く家が関係無いわけではありません。
(今回も動機は相続問題ですから。)

榊原が登場する作品はまだあるようなので、そちらも購入したいと思います。


衣更月家の一族 (講談社文庫)

衣更月家の一族 (講談社文庫)

  • 作者: 深木章子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/02/12
  • メディア: Kindle版



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鬼畜の家 [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

我が家の鬼畜は、母でした―保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。巧妙な殺人計画、
殺人教唆、資産収奪…唯一生き残った末娘の口から、信じがたい「鬼畜の家」の実態が明らかにされる。人間の恐るべき欲望、驚愕の真相!第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、
衝撃のデビュー作。

以下、ややネタバレ。





このところ深木さんのご著書を読むことが増えたので、
デビュー作から購入してみました。

本書は、元警察勤めの探偵が、北川家の生き残りの娘からの依頼により、
北川家関係者からの証言を集めていく、という構成。
生き残りの娘との会話以外では、探偵(榊原)は登場せず、
関係者の証言のみで大半が構成されているという、中々珍しい小説です。

というか、この構成そのものが大きなトリックでもあるんですよね。
個人的にこのトリックが最も秀逸。木の葉は森に隠せ、まさにこの言の通り。

タイトルの意味するもの、物語の最初と最後で大きく異なるのが印象的。
母親の郁江の最初の境遇などはひどいなあと思いますが、
その後の彼女の行動はまさに非道。
妹の養子縁組先の事件が一番衝撃を受けたなあ・・・

亜矢名と由紀名の、あのトリック。実際に上手くいくのかどうか、
そこがちょっと気になりました。

このタイトルで購入を躊躇っている方もおられるかもしれませんが、
ミステリ好きなら、ぜひ購入をお勧めします。


鬼畜の家 榊原シリーズ (講談社文庫)

鬼畜の家 榊原シリーズ (講談社文庫)

  • 作者: 深木章子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: Kindle版



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消人屋敷の殺人 [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

明治初頭、日影一族の棟梁の隠居所だった武家屋敷が官憲に包囲されたが、一族は忽然と姿を消した。
奇怪な伝承に彩られ、断崖絶壁の岬の突端に建つこの館を人は「消人屋敷」と呼ぶ。
ここに隠遁する覆面作家を訪ねた女性編集者が失踪、三ヵ月後、謎の招待状で五人の関係者が集まった。嵐で巨大な密室となり、また不可解な人間消失が起こる。
読者を挑発する本格ミステリ長篇、驚愕の結末!

ちょっと日にちが空いてしまいました。
『猫には推理がよく似合う』以来の、深木章子先生の作品です。
タイトルに惹かれて購入。
以下、ややネタバレあり。



屋敷の名称にまつわる日影一族の伝説は、そんなに大した話ではなく(失礼!)
まあ、そうだよね、という位でしょう。
それよりも、もう一つの「消人」の意味の方が面白いですね。
単に当主がサディストだったのか、それとも空を目指したのか・・・
新城の推理が正しければ、後者になりますが、果たして?

肝心の屋敷で起こった殺人事件ですが、ここは叙述トリックで、
うまく騙しをいれてます。
しかし、最後に新城誠が、新城篤史と幸田淳也のある関係を真っ向から否定した場面が
あるのですが、そうすると、暗闇の屋敷の一間で、
二人で過ごした場面がどうもしっくりこないんですよね・・・
これも結局謎のまま。ただし、誠の否定は篤史が消人屋敷に住む前の篤史、の認識なので、
彼らの生活がどうであったかは、実は物語に描かれた場面から想像するしかないのですが。

これを読んで、講談社文庫の深木章子先生の作品も購入してみました。


消人屋敷の殺人 (新潮文庫 み 64-1)

消人屋敷の殺人 (新潮文庫 み 64-1)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: 文庫



消人屋敷の殺人

消人屋敷の殺人

  • 作者: 章子, 深木
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: 単行本



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猫には推理がよく似合う [深木章子]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

とある弁護士事務所に勤める花織は、先生に寄せられる依頼を盗み聞きしては、
“おしゃべりする猫”のスコティと噂話に花を咲かせていた。ある日、
愛らしく気高くちょっと生意気なスコティが、推理合戦を仕掛けてくる。
「もしいま先生が殺されて、金庫の中身が盗まれたら、犯人は誰だと思う?」。
金庫に入っているのは、5カラットのダイヤ、資産家の遺言書、失踪人の詫び状、
12通の不渡り手形。怪しい依頼人たちを容疑者に、
あれこれと妄想を膨らますふたり(1人と1匹)だったが、なぜか事件が本当に起きてしまい―。
現実の事件と、謎解きに興じる“しゃべる猫”の真実は?ミステリ界注目の気鋭による、
猫愛あふれる本格推理。

以下、ややネタバレ




猫による猫のための猫推理小説(笑
いやいや、それはちょっと違いますが・・・
猫とミステリについては我孫子先生の解説に詳しいですが、やはり三毛猫ホームズ。
そして仁木悦子先生の『猫は知っていた」『赤い猫』などが僕は思い浮かびました。
(動物繋がりでいえば迷犬ルパンも。)

しかし本作に登場するのは、ずばり猫が推理する。人間の言葉を話す猫<スコティ>
が登場するのです。
このスコティが考えた「猫密室」は全く解けなかった・・・(苦笑

物語は半ば引退した弁護士・田沼清吉弁護士事務所に来る依頼人とその依頼内容等を巡る
飼い猫スコティ、そして事務員・椿花織との会話が主を占めます。
(時折、上記の「猫密室」のようなスコティからの挑戦状あり)

物語の本当に終盤まで、事件らしいことは何も起こりません。

ただ、この会話では<見立て殺人>や<密室殺人>といった、
推理小説の定番的な要素についてスコティが何がおもしろいのか?と
花織に議論をふっかけるパートがあるのですが、これはミステリ好きには
中々に面白い・興味深い掛け合いです。

そしてその瞬間は唐突に訪れます、スコティと花織の推理合戦中に。
想像で話していた事件が、現実の事件へと。

物語が一気に反転するところがあまりに唐突感があり、驚きますが、
その後の(ある種)怒濤の展開が素晴らしく、後半一気に読んでしまいました。


本書大部分が実は叙述トリックが仕掛けられていることや、
依頼人たちが全員容疑者たる物語の構成や、
猫がそこそも喋るという本書の大前提を、最後に崩しながらも、
ラストでその崩した大前提の余韻を残すかのような終わり方。
とても面白かったです。
ミステリ好きだけでなく、猫好きな方にもオススメです。




猫には推理がよく似合う (角川文庫)

猫には推理がよく似合う (角川文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 文庫



猫には推理がよく似合う (角川文庫)

猫には推理がよく似合う (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: Kindle版



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