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あいにくの雨で [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。
殺されたのは、発見者の高校生・祐今(うこん)の父親だった。8年前に同じ塔で、
離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、
親友の烏兎(うと)と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、
町では次の悲劇が起こり――。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。


以下、少しネタバレあり。



巽昌章さんの解説が、この作品の麻耶作品群内での位置づけ等々、
非常に良くまとめられていますので、ぜひそちらもあわせて。

メルカトル鮎で周囲を騒然とさせるデビューをし、そのシリーズを重ねてきた
講談社で、本書が刊行されたというのは、同時代的に考えると、千街晶之さんの
言葉も頷けるところがありますね。

私が本書を読了した後に感じたのは、『隻眼の少女』に似た印象を受けました。
それと、登場するメインキャラクターの名前が、相変わらず麻耶先生らしいという(笑)
あれ、なんて読むんだっけ?と何度も確認してしまいました。

本書は一応青春本格ミステリとあるのですが、
塔で起きた一連の事件の謎と、生徒会での不正を追うスパイ活動の2つで
主に構成されています。
後者の活動は、青春ミステリと銘打つミステリの中でほとんど見られない話で、
結構珍しいと思いつつ、実際、もう少しこちらをメインにしても良かったのでは
ないかという思いもあります。

前者は,私は赤川次郎先生で慣れすぎているのか、高校生が名探偵役として活躍するのが
当たり前になってしまっているので(笑)、そこまで驚きませんが、
鳥兎と獅子丸が探偵役として活動していいきます。
むろん、後者もこの二人がスパイ役です。

しかし、ミステリの部分については、最初の冒頭で塔からの脱出トリックが読者に
早々に明かされ、その後はそれに至る経緯が書かれていくのが本書の特徴でしょう。

つまり、なぜ犯人が塔でこのような犯罪を行ってきたのかを、読者が読み解いて
いくというのが、本書の謎解きになるのだろうと思います。

とはいえ、この結末は予想できそうで、予想出来なかった、な・・・
反抗期がこちらの想定や予想を遙かに超えたと考えるべきかと思いましたが。

それまでの事件の謎を解き明かすという行動はそもそも何だったのかいう
疑問も当然出てきますし、ラストも果たしてこの後どうなるのか、余韻を残す
終幕となっているのも気になります。

なんとも評価というか、感想が難しい作品でした。


あいにくの雨で (集英社文庫)

あいにくの雨で (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: Kindle版







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友達以上探偵未満 [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

三重県立伊賀野高校の放送部に所属する伊賀ももと上野あおは大のミステリ好き。
ある日、部活動で訪れた伊賀の里ミステリーツアーで事件に巻き込まれる。
探偵に憧れる二人はこれ幸いと、ももの直感力とあおの論理力を活かし
事件を解決していくが…?(「伊賀の里殺人事件」)。
見立て殺人?お堀幽霊の謎?合宿中にも殺人事件…。勝てばホームズ。負ければワトソン。
この世界に名探偵は二人も、いらない。女子高生探偵・ももとあおの
絶対に負けられない推理勝負、開幕!


「伊賀の里殺人事件」、これ記憶にあります。
BSプレミアムで放送してました。ちょっと観た気がしますが、
それをノベライズし、さらに2作を加えたものなんですね。

TVの推理クイズというと、マジカル頭脳パワーでそういう問題があったらしいですが、
私が見始めた頃にはもう終了してましたね。

上岡龍太郎さんが司会の特番で、有名作家さんたちがシナリオライターとして
参加していて、様々な事件の謎を解く、というのを何度か観た記憶があります。
これは面白かった。

閑話休題。

本書は上記の内容からもわかるように、読者(視聴者)への挑戦状が挟み込まれています。
有栖川有栖先生の初期昨でもありましたが(解説が有栖川先生なのは人選が素晴らし過ぎます)、
私も有栖川先生同様、謎を解くより真相が早く知りたかったので飛ばしました(苦笑)

「伊賀の里」はコスチュームに何らかのトリックがあることは想像がつくのですが、
そこにさらに捻りを加えてくるのが麻耶先生。『貴族探偵』を彷彿とさせます。

「夢うつつ殺人事件」も犯人が逆手に取った事件です。所収作では個人的オススメ。
なにせ容疑者も少ない、しかも男性も少ない中で、ですからね。
見立て殺人かと思いきや・・・これまた最後のところであっと驚く仕掛けが施されています。

最終話の「夏の合宿殺人事件」はももとあお、二人の心情、特にあおの心情というかももへの
思いみたいなものが描かれていて、事件とはまた別に楽しめますね。
ワトソン役を欲するあおですが、ももの時折(失礼!)魅せる閃きに感心し、
世界は探偵と群衆とワトソン役の3分割でなく、自分とももと群衆とワトソン役の4分割の様相を
呈し始めている、とその心境の変化がうかがえます。

ももの兄であり、刑事の空からの情報も事件解決への重要なものなので、
難しいかもしれませんが、雪の山荘や、絶海の孤島で起きる殺人事件という、
極めて探偵役が輝く長編作品で、本シリーズを描いてもらいたいなと感じました。


友達以上探偵未満 (角川文庫)

友達以上探偵未満 (角川文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: Kindle版



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あぶない叔父さん [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

寺の離れで「なんでも屋」を営む俺の叔父さん。家族には疎まれているが、
高校生の俺は、そんな叔父さんが大好きだった。鬱々とした霧に覆われた町で、
次々と発生する奇妙な殺人。事件の謎を持ちかけると、優しい叔父さんは、
鮮やかな推理で真相を解き明かしてくれる――。精緻な論理と伏線の裏に秘された、
あまりにも予想外な「犯人」に驚愕する。ミステリ史上に妖しく光り輝く圧倒的傑作。

久しぶりの更新です。ちょっとさぼっていました。

表紙の風貌や第1話の、主人公・斯峨優斗の「叔父さん」への描写から、
まず間違いなくあの名探偵を想起するでしょう。
しかし、表題作の「あぶない」とは一体どういう意味なのか?
以下ややネタバレ。


小さな田舎町、16年間何の変化もない、そして刺激もないという霧ヶ町に
超弩級の刺激をもたらしているのが、他ならぬ叔父さんであることが本書最大の
面白さではないでしょうか。

特に第1話「失くした御守」は、何度読んでもまず真相に到達することは不可能で、
それが雄斗のひょんな発見から、叔父さんが申し訳なさそうに「真相」を語るという。
ただこの事件の謎と真相が明かされた時の、読者と雄斗・叔父さんの衝撃の「落差」が
あまりに皮肉が効いているのです。

簡単にいえば、実は一連の事件は叔父さんがその原因を作り出している、
これでも控えめで、つまりは叔父さんが犯人なのですね(笑

しかしそこは麻耶先生。「貴族探偵」で魅せた華麗な変化球も当然ながら存在します。
それが第3話「最後の海」。
優斗からまた叔父さんが犯人なのではないかと指摘され(笑)、それを頑強に否定し、
こともあろうに、関係者、そして警察の前で見事な推理を披露し、真相を見抜きます。
それはまさに金田一耕助に他なりません。
というか知っていたのなら、早く話した方が良いのでは・・・という感想も(苦笑

ただし例外はこの一編のみで、他は全て叔父さん絡み。
しかし、真相聞かされても優斗は叔父さんを告発することなく、
なんだ、そうだったのか~という、大団円的な終わり方なのです。

しかし第三者からみれば、この霧ヶ町は小さな田舎町にも拘わらず、
殺人事件が数件にわたり未解決のままという、非常に恐ろしい町なのですが、
そこは一切触れないという、これもまた本作のある種の狂気なのかもしれません。

全てを見通していた神様や、推理はしないが真相は見抜く貴族探偵に
ある意味通じるところはありますが、本作が仮に続編を出すとしたら、
どのような物語が紡がれるのか、非常に興味深く、ぜひ読みたい。

叔父さんの「犯行」が白日の下にさらされることはあるのかどうか。
一方で優斗と真紀、明美との関係も気になるところです。



あぶない叔父さん (新潮文庫)

あぶない叔父さん (新潮文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫



あぶない叔父さん

あぶない叔父さん

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Kindle版



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化石少女 [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

学園の一角に建つ壁には日暮れると生徒たちの影が映った。そしてある宵、壁は映し出した、
恐ろしい場面を……。京都の名門高校に次々起こる凶悪事件。
古生物部の部長にして化石オタクのまりあが、たった一人の男子部員をお供に繰り出す、
奇天烈な推理の数々とは?

久しぶりの更新です。
本書も読んだのは2ヶ月くらい前ですね。
摩耶さんの作品ということで期待して読みました。

本書最大の特徴は古生物部の部長・神舞まりあが披露する推理が本当に正しいのか?
ということが全く証明されないままに物語が進行することでしょう。
というのも、まりあが信じ込んでいる「生徒会役員が犯人」という大前提があるため、
生徒会役員が犯人という前提の推理を構築しているためでしょう。

もしまりあの推理をワトソン役である桑原彰が証明しようとすると、
生徒会役員が犯人という大前提が崩れる可能性があるため、これはできないのでしょう。

最終話「赤と黒」では、生徒会役員が犯人ではないという大前提を崩すために、
彰がとある行動にですのですが、これは予測できませんでした。

ただ、不満な点もあります。
生徒会との確執は部の存続というものがあるものの、生徒会役員が犯人である
合理的理由はそもそも何なのか?というのがよくわからないのです。
各事件にて生徒会役員はそれぞれが動機を持つのでしょうが、そこが
うまく説明出来ていないのではないかと感じました。

ラストを読む限りでは続編はなさそうですが、さてどうなりますか。


化石少女 (徳間文庫)

化石少女 (徳間文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/11/02
  • メディア: 文庫



化石少女 (徳間文庫)

化石少女 (徳間文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/11/02
  • メディア: Kindle版



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さよなら神様 [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。
神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。
衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。
他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。

神様シリーズ第2弾。
本作の特徴は、最初にその事件の犯人が示されることでしょう。
どんなにその人物に強固なアリバイがあったり、動機がみつからなくても、
神様の言う事に「嘘」はないということが大前提である以上、
逆算でどうすればその人物が犯人なのかを考察していくこととなります。

一方そうしたパターンの中で本書で一番強烈だったのは「バレンタイン昔語り」
そもそもその神様が犯人として挙げた人物は物語に登場すらしていないのです。
そしてさらに本作では被害者に対しても強烈なサプライズを持ってきています。
こうした展開は、神様の言う事は絶対であるという、本作の大前提があるからこそ
生まれる衝撃であり、傑作です。

貴族探偵といい、本書といい摩耶先生の作品には毎回驚かされっぱなしですが、
先生の新作にまた期待したいです。


さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/07/06
  • メディア: 文庫



さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/07/06
  • メディア: Kindle版



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貴族探偵対女探偵 [麻耶雄嵩]

Amazonさんの紹介ページから。

新米探偵・愛香は、親友の別荘で発生した殺人事件の現場で「貴族探偵」と遭遇。
地道に捜査をする愛香などどこ吹く風で、
貴族探偵は執事やメイドら使用人たちに推理を披露させる。
愛香は探偵としての誇りをかけて、全てにおいて型破りの貴族探偵に果敢に挑む!
事件を解決できるのは、果たしてどちらか。精緻なトリックとどんでん返しに満ちた
5編を収録したディテクティブ・ミステリの傑作。

前作『貴族探偵』は推理をしない「探偵」かつ貴族という
ぶっ飛んだ設定で驚かされました。
一方、前作所収昨「こうもり」は1つのトリックを最大限にまで高めたミステリの傑作。

では本作は?どうも貴族探偵にライバル?が登場したようです。
名は高徳愛香、ある有名な探偵の弟子で、師匠死去後、一人で
探偵業を営む新人探偵。
彼女の行く所、貴族探偵あり。

「白きを見れば」
親友の平野紗知に「たまには骨休めを」と言われ、
別荘「ガスコン荘」に招かれた愛香。しかしそこで殺人が・・・

「色に出でにけり」
以前師匠の助手だった頃に出会った事件の関係者である玉村依子から
依頼を受け、事件現場へ向かう愛香。しかしそこには貴族探偵が・・・

本作は連作短編集という体裁を取っています。
最大の特徴は貴族探偵の使用人と愛香の「推理合戦」でしょう。
つまりは「多重解決」。
1つの事件に対して、2つの推理。
いずれかは間違っているorいずれも正しい。
読む側はさほど深く考えなくても、書く側はこれは実に難しいでしょう(苦笑)


以下ネタバレあり。


上記2編は「アリバイ崩し」がメイン。
「白き~」は降雪の時間、コートのボタン、シャッター、これらから
愛香は推理を組み立てますが・・・
「シャッターに残った痕」の愛香の推理はかなり強引で、
読んでいて?と思いましたが、
一方貴族探偵の執事の「傘」というのも、実はそこまで説得力はないのでは?
傘なら手に持たなくてもなんとかなりますよね。
しかしまあ、全否定するのもかなり難しいかな。

本作はこの犯行計画を作ったのが、
被害者自身であるという所が秀逸。
それにより、事件自体の見方ががらっと変わります。
殺害した犯人は誰か?だけを推理していては、誤った推理になる
可能性もあるという、良いお手本。

「色に~」は、絞殺と自殺でタオルの色がなぜ違うのかが、最大の謎解き。
料理人の推理は実に説得的です。
しかし本作の最大愁眉は動機でしょう。
なぜ手帳が盗まれたのか。ここに最大の仕掛けがあります。
ああ、依子の最後の告白も楽しいです(笑

「むべ山風を」
とある大学の内部データ盗難事件を解決した愛香。
その後、「光るキノコ」を栽培中の韮山瞳准教授の部屋を訪れると、
そこには貴族探偵が!そして院生が殺害され・・・

現場に残されていた紅茶を飲んだ跡と、カップの色から
推理を組み立てていく愛香。
しかし、本人も即認めているように完全にケアレスミス。
珍しく貴族探偵の言うことがまともでした(笑

本作は、現場の工作をしたのは誰なのかという点
に力点が置かれている作品ともいえます。
その意味では、「白きを見れば」と共通する点あり。
「光るキノコ」はあまり関係無かったのだろうか。

書き下ろし「なほあまりある」
貴族探偵が、自らの使用人たちを呼べない場所で
殺人事件が起こった場合、果たしてどうするのか?

本作はこれまでの愛香と貴族探偵の物語の総決算的作品。
つまり、これまでのミスを愛香がうまく活かし、また貴族探偵の
性格も忘れてしまっていれば、事件は解決できなかったでしょう。

花瓶のバラと部屋の入れ替えは秀逸。
最初の疑問は貴族探偵が愛香を雇ったという、つまり
自分の使用人的な立場で使ったわけですね。

しかし、これは貴族探偵にしては
大きな博打に出ている感は否めません。
これまで愛香はことごとく推理を失敗してきたのに、
なぜ彼女で大丈夫だと確信したのか。

もしかしたら、これまでの事件で、彼女が成長していることを
見抜いたのか?まあここはわかりませんね(苦笑

さて本作でもやはりありました。「こうもり」にあたる作品が。
「弊もとりあえず」
願い事を叶えてくれる「いづな様」に会うためとある旅館を訪れる
愛香と紗知。そこにはまた貴族探偵が・・・
別館で起きた殺人事件。愛香の推理は妥当なように思えましたが・・・

これも二度読みましたが、むちゃくちゃ難しい(苦笑
つまり、最初に挨拶した際に女性だった赤川和美が、
被害者では男性になっているんですよね。地の文にそう書かれている訳です。

そして、愛香の推理で「あなたが田名部さんを殺したんですね」という
セリフが出てきます。ここはセリフです。
つまり、地の文のとセリフでは愛香の認識が全く違う、
という事は、地の文は読者だけがわかる情報で、
愛香らの認識はセリフの方、という事でしょう。

読者をひっかける叙述トリックは最近よく見かけますが、
この「弊もとりあえず」は解決に至る全ての情報を明らかに
しているとみせかけて、その実、小説内の人物たちにトリックを
仕掛けているため、読者もそれに引っかかってしまう、とでもいいましょうか(苦笑
私見でいえば、究極の叙述トリック。

いわゆる「どんでん返し」が流行りの昨今のミステリ界(あくまで私見ですが)
ただ、どうも最後だけ、そこだけ強調してくる作品や
帯のあおりに興ざめしていたんですよね・・・
しかし、この「弊もとりあえず」は、
最初から情報を正確に示しているにも関わらず、
これだけの驚きを与えてくれるとは。見事です。

しかし、続編は出るのかなあ・・・
なんか出し尽くした感はあります。

大家博子さんの解説も必読。
ワトソン役と百人一首の考察は素晴らしいの一言。



貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/09/16
  • メディア: 文庫



貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/30
  • メディア: Kindle版



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神様ゲーム [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。
町が騒然とするなか謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を瞬時に言い当てる。
鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。
そして、鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか?

最近「さよなら神様」と、神様シリーズ続編が発表されましたが、
それにあわせての文庫化になるのかな。

探偵役が「神様」という、まさに完全無欠、全てを知っているという
設定がまず飛び抜けてます。
主人公の芳雄はそれはあくまで「神様」鈴木君のゲームだろうと
解釈しますが、猫殺しの犯人もずばり的中。
なぜ鈴木くんが彼が犯人であることを知っているのか不思議に思い、
頭を巡らせますが、今度は親友の英樹が死体で発見され・・・

本作は「神降市」や「常世市」など神にまつわる地名が使われている
所もおもしろいです。そうした雰囲気を出しつつも、小学生のアニメやゲームの会話や、
秘密基地など、日常を淡々と描いているという、ある種のギャップも良い。

本作最大の衝撃は、やはりラストでしょう。
結局英樹を殺害した犯人(共犯者)は誰であったのか?
芳雄の推理はほぼ当たっていたかに見えたのですが、このラストは
さすがに予想できませんでした。

これにはいくつか考察がすでになされているようですが、
真実は不明なままです。
本当に本当に真相は知りたいですが、これは難しい。

それと「神様」鈴木くんの存在。
彼の言う天誅は本当に彼が起こした事なのか、はたまた偶然なのか。
しかし後者だとすれば、どうして彼は犯人を知っていたのか。

猫殺しの犯人について、芳雄はその名前を聞きますが、
英樹殺人の共犯者については、天誅を下してほしいと言うのみで、
誰なのかまで問い詰めていません。
これは、彼自身が推理によって誰であるかを特定していたからですが、
見方によっては、そもそもミチルが亡くなったのも天誅なのではなく、
単なる事故、かもしれませんし、ミチル自身が犯人ではなかったかも
しれない可能性もあるのかなあとふと思いました。

まあTシャツのレア度やあの秘密基地を知っている者という限定を
考えれば、大筋では芳雄の推理は間違っていないと思いますが・・・
麻耶さんの事ですから、実はもう一つくらい語られない真相が
あるのではと邪知してしまいます(笑

続編も早く文庫化してほしい。


神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 文庫



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貴族探偵 [麻耶雄嵩]

「彼らは私の所有物である以上、
推理などというくだらないことは、
彼らにやらせておけばいいのです。」

自らを「貴族探偵」と呼び、
非常に頭の切れる執事とメイドがいて、
さらには運転手、ボディガード。
やんごとない身分の御方とだけしかわからず。
安楽椅子探偵ならぬ、まさに貴族探偵、ついに文庫で登場。

本作品は貴族探偵という「探偵」が自らの
所有物である執事やメイドに事件を解決させる、
というなんとも奇妙な物語。
以下、ややネタバレになりますので、未読の方は注意。




一方で、所収作の事件はどれもこれでもかと
読者をうならせてくれるでしょう。

ウィーンの森の物語、ではもう古典的ともいえる
糸のトリックを用いた密室を作り上げるという手の内を
読者に見せつつも、それをむしろミスリードとして
用い、さらに最後の解決編では、合鍵を持っている、
持っていないのさらに先まで進めた論理が見事です。

トリッチ・トラッチ・ポルカでは
切断した人体を用いたアリバイトリック。
ただ、このトリックはその時間にアリバイのない者が
犯人である、という、容疑者を絞った上でではなく、
アリバイを絞る事で犯人を浮かび上がらせているところが
おもしろい。

加速度円舞曲では唯一物語の中に図が挿入されます。
なぜ富士の岩が落ちてきたのか?
それが事件の謎を解き明かす最大の鍵なのです。

春の声、では貴族探偵の正体を知る桜川という人物が
登場し、少しは彼の正体が・・・と期待したが駄目でした(笑
明かされる真相はありえるのか?と思いましたが、
それ以上に、主人公の皐月と貴族探偵の会話に
僕は注目しました。
事件にはノータッチですが、彼は皐月との会話で
それなりの推理や考えを述べているのです。
まあこれを推理とは言えないのかもしれませんが・・・
(つまり上流階級に身を置く者にとっては当たり前ではないか)

さて、本書最大の問題作というか、僕は3度読みなおした(笑
あまりに見事だと感じたのが「こうもり」
これはもう読んでもらうしかありません。
使われているトリックは単純なものなのですが、
小説という媒体を非常にうまく使っています。
このトリックをここまで昇華させたのは素晴らしいの一言に尽きる。
そしてラストに明かされるのがまた衝撃の事実です。

続編も早く文庫化してほしいけれど、まあ先は長そうですね。



貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫



貴族探偵対女探偵

貴族探偵対女探偵

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 単行本



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隻眼の少女 [麻耶雄嵩]

山深き寒村、村の奇妙な因習、
跡継ぎとなるべき少女たちが首を切られ殺される。

名探偵と言われた母の名を継ぐ「御陵みかげ」と
自殺しようと村を訪れた種田静馬の二人は、
ともに連続殺人事件に挑み解決するも、
18年後、再び同じ惨劇が・・・

横溝正史的な世界観、親子三代にわたる探偵の物語。
良い意味でミステリの王道的設定をひっくり返している作品だと思います。

タイトルに意外にも深い意味があったというのもまた驚きでしたね。


隻眼の少女 (文春文庫)

隻眼の少女 (文春文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/03/08
  • メディア: 文庫



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