三世代探偵団 生命の旗がはためくとき [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
女子高生の令奈は通学途中、ふと覗き込んだ車中で男が刺殺されているのを発見する。
なぜかその男は、駆け落ちして姿を消した姉・美樹の名前が書かれたメモを持っていた。
姉の身に何かあったのかと心配する令奈。一方で、美樹は駆け落ちした婚約者が
裏組織の息子であることを知ってしまい、口封じのため命を狙われていた。
さらに組織はあることをきっかけに、対立相手と武力闘争を起こそうとしていて……。
天才画家の祖母、マイペースな母と暮らす娘の有里。友人の家族が巻き込まれた抗争に、
三世代が立ち向かう!
相変わらずの赤川節。
裏組織の本気の抗争って結構赤川作品に登場しますよね。
それを暴力や武力で解決しないのが、赤川先生の神髄というか、
赤川作品の根幹の1つなのだろうと。
次々と新たな登場人物が出てきますが、全く混乱しないところも赤川作品ならでは。
ところで三世代の中間・文乃はマイペースと紹介されていますが、
ある意味登場人物の中では数少ない常識人ですよね(笑
常識というか、ある意味人間らしいというか、そういう思いや判断を下していると思います。
私だけのけ者にして!とか私には何も知らせないで!とか、シリーズでそうした発言を
する文乃ですが、これは幸代や娘の有里があまりにぶっ飛んでるから。
何しでかすかわからないので、家族として共有しないとマズイという危機感から、と
私は思いましたが、買いかぶりすぎかも(笑
ラストは大団円とはいかないまでも、落ち着くところに落ち着く結末。
次作は、村上刑事を巡る逆の鞘当ても語られるかも。
女子高生の令奈は通学途中、ふと覗き込んだ車中で男が刺殺されているのを発見する。
なぜかその男は、駆け落ちして姿を消した姉・美樹の名前が書かれたメモを持っていた。
姉の身に何かあったのかと心配する令奈。一方で、美樹は駆け落ちした婚約者が
裏組織の息子であることを知ってしまい、口封じのため命を狙われていた。
さらに組織はあることをきっかけに、対立相手と武力闘争を起こそうとしていて……。
天才画家の祖母、マイペースな母と暮らす娘の有里。友人の家族が巻き込まれた抗争に、
三世代が立ち向かう!
相変わらずの赤川節。
裏組織の本気の抗争って結構赤川作品に登場しますよね。
それを暴力や武力で解決しないのが、赤川先生の神髄というか、
赤川作品の根幹の1つなのだろうと。
次々と新たな登場人物が出てきますが、全く混乱しないところも赤川作品ならでは。
ところで三世代の中間・文乃はマイペースと紹介されていますが、
ある意味登場人物の中では数少ない常識人ですよね(笑
常識というか、ある意味人間らしいというか、そういう思いや判断を下していると思います。
私だけのけ者にして!とか私には何も知らせないで!とか、シリーズでそうした発言を
する文乃ですが、これは幸代や娘の有里があまりにぶっ飛んでるから。
何しでかすかわからないので、家族として共有しないとマズイという危機感から、と
私は思いましたが、買いかぶりすぎかも(笑
ラストは大団円とはいかないまでも、落ち着くところに落ち着く結末。
次作は、村上刑事を巡る逆の鞘当ても語られるかも。
いつもと違う日 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「あの英秀治郎ですか?」
旅行社の風谷は信じられなかった。
誰もが知っている有名作家が、二十年ぶりに英国から帰国する。
本好きを理由にその世話役を任されたのだ。
風谷は英の大ファンである妻のためにサインをもらうが、
受け取った彼女の反応は予想と全く違っていた。
そして、風谷は同僚から英の本当の帰国理由を聞かされて――。(「私だけの巨匠」)
非日常が日常を覆す五篇のミステリー。
「本日は休校日」と「忘れものの季節」の2編が、ある意味両極端でオススメです。
前者は赤川ワールド全開の作品。
休校日に忘れもの(?)をして取りに行くハメになった(しかも友達のせいで!)河口彩子。
なぜなら、休校日にロッカー等の持ち物検査を教員がするからだ。
しかもその忘れ物は、友人のラブレター。勝手に自分のロッカーに入れられた(笑
ところがなんと学校で死体が!しかも殺人?!
まさに赤川ワールドです。
間一髪で助かった彩子ですが、助けてくれた森山先生の戻ってきた理由が秀逸過ぎますね。
いや犯罪だろうと(苦笑
後者は昨今相当な問題にもなっている、学校の規律や校則に関わる一編。
京子と夕香の関係や、生徒たちが一斉に走る姿は、明るい未来を想像させますが、
その両親や弟は、この校則を守るためとんでもない行動に出ていて、実に極端ですね・・・
子どもの方がよっぽどまともです。
「支払われた少女」は、一見すると非常に良いエンディングを迎え、心も温まる
結末なのですが、ストーカー的でもあるし、祖父はあまりに無謀な賭けをしてるよなあ。
最後の「私だけの巨匠」は、落ち着いた物語だけども、読ませる作品。
それでいて、素晴らしい作品です。
赤川作品は長編も短編も面白い。
![いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/8085/9784198948085_1_3.jpg?_ex=128x128)
「あの英秀治郎ですか?」
旅行社の風谷は信じられなかった。
誰もが知っている有名作家が、二十年ぶりに英国から帰国する。
本好きを理由にその世話役を任されたのだ。
風谷は英の大ファンである妻のためにサインをもらうが、
受け取った彼女の反応は予想と全く違っていた。
そして、風谷は同僚から英の本当の帰国理由を聞かされて――。(「私だけの巨匠」)
非日常が日常を覆す五篇のミステリー。
「本日は休校日」と「忘れものの季節」の2編が、ある意味両極端でオススメです。
前者は赤川ワールド全開の作品。
休校日に忘れもの(?)をして取りに行くハメになった(しかも友達のせいで!)河口彩子。
なぜなら、休校日にロッカー等の持ち物検査を教員がするからだ。
しかもその忘れ物は、友人のラブレター。勝手に自分のロッカーに入れられた(笑
ところがなんと学校で死体が!しかも殺人?!
まさに赤川ワールドです。
間一髪で助かった彩子ですが、助けてくれた森山先生の戻ってきた理由が秀逸過ぎますね。
いや犯罪だろうと(苦笑
後者は昨今相当な問題にもなっている、学校の規律や校則に関わる一編。
京子と夕香の関係や、生徒たちが一斉に走る姿は、明るい未来を想像させますが、
その両親や弟は、この校則を守るためとんでもない行動に出ていて、実に極端ですね・・・
子どもの方がよっぽどまともです。
「支払われた少女」は、一見すると非常に良いエンディングを迎え、心も温まる
結末なのですが、ストーカー的でもあるし、祖父はあまりに無謀な賭けをしてるよなあ。
最後の「私だけの巨匠」は、落ち着いた物語だけども、読ませる作品。
それでいて、素晴らしい作品です。
赤川作品は長編も短編も面白い。
![いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] いつもと違う日 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/8085/9784198948085_1_3.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 803 円
逃げこんだ花嫁 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
友人達と旅行で温泉に向かっていた亜由美は、決闘へ向かう男たちと出会う。
その成り行きが気になり、後日、殿永刑事に調べてもらっていた亜由美のもとへ、
十三歳の少女が逃げて来た。
決闘の原因となった抗争に巻き込まれてしまい、
年上の男と無理に結婚させられそうだと言うのだ。
なんと男の年齢は——。
表題作のほか「花嫁学校の始業式」収録。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年一発目は、私のブログでおそらく最も多い赤川次郎先生作品。
花嫁シリーズは、ジョイノベルズ→角川文庫のパターンでしたが、
実業之日本社文庫創刊により、そのまま実業之日本社から文庫も刊行される
ようになりました。
本書は、角川からの逆輸入ですね。
この頃の花嫁シリーズ、勢いありますね。物語がスピーディーなのは
言うまでも無く、登場人物たちの会話や行動のテンポも素晴らしい。
亜由美の両親も相変わらずの凄さを魅せますが(笑
聡子との掛け合いも面白い。
まだ谷川准教授登場前で、そういえば八木刑事っていたなあと思い出しました。
ちなみに表題作より「花嫁学校の始業式」の方が面白いです。
入学したいという変な男と表現される殿永部長刑事や、
妙な服装の八木刑事などが見られます。
表題作はむかーしの地方には本当にありそうですね。
さすがにこれほどの喧嘩は騒乱罪になりそうな気もしますが・・・
また実業之日本社で文庫を集めてしまうかもしれません。
友人達と旅行で温泉に向かっていた亜由美は、決闘へ向かう男たちと出会う。
その成り行きが気になり、後日、殿永刑事に調べてもらっていた亜由美のもとへ、
十三歳の少女が逃げて来た。
決闘の原因となった抗争に巻き込まれてしまい、
年上の男と無理に結婚させられそうだと言うのだ。
なんと男の年齢は——。
表題作のほか「花嫁学校の始業式」収録。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年一発目は、私のブログでおそらく最も多い赤川次郎先生作品。
花嫁シリーズは、ジョイノベルズ→角川文庫のパターンでしたが、
実業之日本社文庫創刊により、そのまま実業之日本社から文庫も刊行される
ようになりました。
本書は、角川からの逆輸入ですね。
この頃の花嫁シリーズ、勢いありますね。物語がスピーディーなのは
言うまでも無く、登場人物たちの会話や行動のテンポも素晴らしい。
亜由美の両親も相変わらずの凄さを魅せますが(笑
聡子との掛け合いも面白い。
まだ谷川准教授登場前で、そういえば八木刑事っていたなあと思い出しました。
ちなみに表題作より「花嫁学校の始業式」の方が面白いです。
入学したいという変な男と表現される殿永部長刑事や、
妙な服装の八木刑事などが見られます。
表題作はむかーしの地方には本当にありそうですね。
さすがにこれほどの喧嘩は騒乱罪になりそうな気もしますが・・・
また実業之日本社で文庫を集めてしまうかもしれません。
素直な狂気 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「受け取っていただけますか?」
お金を返そうと「あいつ」が追いかけてくる!
最終電車が迫っている。
会社員の松山は財布をなくした青年に電車賃を手渡した。
「これはあげるんだよ」
「いえ、きっとお返ししますから」
青年は言葉通り、松山の家を訪ねて金を返そうとする。
しかし、妻の沙織は人違いだという。先々週の金曜日、N駅にいたはずはないと。
松山の完全犯罪が崩れ始める……。
(「素直な狂気」)
誰もが秘める狂気を鮮烈に描き出したミステリー。
なんか勘違いしており、長編だと思っていたら短編集でした。
元々は角川文庫で発売されていたとありますが、購入した記憶がないので、おそらく初読。
全編どれも面白いですが、表題作「素直な狂気」と「ラブレター」は構図が
やや似ていますね。しかも結末も全然違うけれども、主人公の想いはそこまで違わないの
だろうなと感じました。
ただし表題作の場合、お金を貸した鈴木なる人物は本当に存在していたのか?
(ちなみに表紙も主人公の松山と鈴木が描かれています。)
というホラーな要素も含んでいます。
もちろん借りたお金を苦労してでも返しに来るのは素晴らしいことなのですが、
彼が固執した理由があまり述べられてなく、かなり不気味です。
ラストも松山が彼の幻影を見ているように、存在そのものが?ですね。
(ただし奥さんや娘さんも会っているので、しかも刑事も。実在はしているのかなあ。)
最後の幻影的なものは、松山が生み出した自分の辛さを解消してくれた存在みたいな
ものでしょうか。
ちなみに、ホラー的要素ではなく、完全ホラーなのは「わらの男」と「皆勤賞の朝」
前者は時枝のやりたいことは一体何なのか?まるで不明。
後者はこの学校の校長も相当悪いですね。昔ながらの根性論。
母親と正人を狂わせた張本人です。
しかし、正人への同級生やその姉の仕打ちから考えると、
正人やその母親がこの6年間で何かをしてきたのだろうとは推測できますが。
(電車での行為はもしかしたら正人の母親がかつてした行為なのでは?)
「拾った悲鳴」は親子が助かる話で、主人公大活躍。ほっとします。
「インテリア」は、なんというかちょっとした喜劇を見ているようですね。
いや実にうまい。背景を描かず、この母子関係を想像させるようになっているのも。
徳間文庫さん、これからもよろしくお願いします!
![素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7903/9784198947903_1_3.jpg?_ex=128x128)
「受け取っていただけますか?」
お金を返そうと「あいつ」が追いかけてくる!
最終電車が迫っている。
会社員の松山は財布をなくした青年に電車賃を手渡した。
「これはあげるんだよ」
「いえ、きっとお返ししますから」
青年は言葉通り、松山の家を訪ねて金を返そうとする。
しかし、妻の沙織は人違いだという。先々週の金曜日、N駅にいたはずはないと。
松山の完全犯罪が崩れ始める……。
(「素直な狂気」)
誰もが秘める狂気を鮮烈に描き出したミステリー。
なんか勘違いしており、長編だと思っていたら短編集でした。
元々は角川文庫で発売されていたとありますが、購入した記憶がないので、おそらく初読。
全編どれも面白いですが、表題作「素直な狂気」と「ラブレター」は構図が
やや似ていますね。しかも結末も全然違うけれども、主人公の想いはそこまで違わないの
だろうなと感じました。
ただし表題作の場合、お金を貸した鈴木なる人物は本当に存在していたのか?
(ちなみに表紙も主人公の松山と鈴木が描かれています。)
というホラーな要素も含んでいます。
もちろん借りたお金を苦労してでも返しに来るのは素晴らしいことなのですが、
彼が固執した理由があまり述べられてなく、かなり不気味です。
ラストも松山が彼の幻影を見ているように、存在そのものが?ですね。
(ただし奥さんや娘さんも会っているので、しかも刑事も。実在はしているのかなあ。)
最後の幻影的なものは、松山が生み出した自分の辛さを解消してくれた存在みたいな
ものでしょうか。
ちなみに、ホラー的要素ではなく、完全ホラーなのは「わらの男」と「皆勤賞の朝」
前者は時枝のやりたいことは一体何なのか?まるで不明。
後者はこの学校の校長も相当悪いですね。昔ながらの根性論。
母親と正人を狂わせた張本人です。
しかし、正人への同級生やその姉の仕打ちから考えると、
正人やその母親がこの6年間で何かをしてきたのだろうとは推測できますが。
(電車での行為はもしかしたら正人の母親がかつてした行為なのでは?)
「拾った悲鳴」は親子が助かる話で、主人公大活躍。ほっとします。
「インテリア」は、なんというかちょっとした喜劇を見ているようですね。
いや実にうまい。背景を描かず、この母子関係を想像させるようになっているのも。
徳間文庫さん、これからもよろしくお願いします!
![素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 素直な狂気 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7903/9784198947903_1_3.jpg?_ex=128x128)
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- 価格: 814 円
三世代探偵団 枯れた花のワルツ [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
天才画家の祖母、生活力皆無な母と暮らす女子高生の有里。祖母が壁画を手がけた病院で、
有里は大女優・沢柳布子に出会う。彼女の映画撮影に関わるうち、3人はまたもや事件に
巻き込まれ――。ユーモアミステリ第二弾。
2作同時刊行されたのに、2作目が遅くなってしまいました。
前作は有里、幸代、文乃のキャラクター確認がメインで、かつそれなりに深刻な事件も発生。
しかし、本作はもちろん殺人事件が起こり、深刻な事件も起こります。
ただ、それ以上に、有里と幸代の活躍とキャラの確立が目立った作品だなと思いました。
また有里と、そして有里自体もどういう思いなのかよくわからない村上刑事のファンクラブ
が設立されます(笑)。当の村上刑事はまるで気付いていませんが、好意を寄せてくる女性
が幾人も・・・なんてうらやましいんだ。
有里は、なんとなくその女性たちにムッとするものの、彼女にもボーイフレンドが
ついに登場します。
かつての大女優・沢柳布子が、再び主役を務める「影の円舞曲」の撮影過程で起こる
それぞれの事件。天本幸代は布子の側に付き、彼女に降りかかる災いを見事に守って
いきます。今回、絵を描いているシーンはほとんどなかった(おそらく)のですが、
最後にある人物を描いた絵が登場するので、どっかで書いてたのかなあ。
しかし、前作と同じく、画家としてではなく、彼女の鋭い洞察力は本作では
さらに磨きがかかっています。
一方、三世代探偵団と銘打っているのですが、文乃はどこか仲間ハズレ感が
本作では強かったですねえ。
ある人物(しかも妻子持ち!)に恋してしまう場面があるのですが、出番は
ある意味そこだけ。
彼女がメインを張る作品は、今後登場すると期待したいですね。
ところで本作はしっかり時系列が描かれていて、次々作は「影の演舞曲」プレミア上映が
舞台とのこと。
赤川作品で時間が過ぎていくのは、中々珍しく(杉原爽香シリーズは別)
シリーズとしてどこまで描いていくのかも気になりますね。
天才画家の祖母、生活力皆無な母と暮らす女子高生の有里。祖母が壁画を手がけた病院で、
有里は大女優・沢柳布子に出会う。彼女の映画撮影に関わるうち、3人はまたもや事件に
巻き込まれ――。ユーモアミステリ第二弾。
2作同時刊行されたのに、2作目が遅くなってしまいました。
前作は有里、幸代、文乃のキャラクター確認がメインで、かつそれなりに深刻な事件も発生。
しかし、本作はもちろん殺人事件が起こり、深刻な事件も起こります。
ただ、それ以上に、有里と幸代の活躍とキャラの確立が目立った作品だなと思いました。
また有里と、そして有里自体もどういう思いなのかよくわからない村上刑事のファンクラブ
が設立されます(笑)。当の村上刑事はまるで気付いていませんが、好意を寄せてくる女性
が幾人も・・・なんてうらやましいんだ。
有里は、なんとなくその女性たちにムッとするものの、彼女にもボーイフレンドが
ついに登場します。
かつての大女優・沢柳布子が、再び主役を務める「影の円舞曲」の撮影過程で起こる
それぞれの事件。天本幸代は布子の側に付き、彼女に降りかかる災いを見事に守って
いきます。今回、絵を描いているシーンはほとんどなかった(おそらく)のですが、
最後にある人物を描いた絵が登場するので、どっかで書いてたのかなあ。
しかし、前作と同じく、画家としてではなく、彼女の鋭い洞察力は本作では
さらに磨きがかかっています。
一方、三世代探偵団と銘打っているのですが、文乃はどこか仲間ハズレ感が
本作では強かったですねえ。
ある人物(しかも妻子持ち!)に恋してしまう場面があるのですが、出番は
ある意味そこだけ。
彼女がメインを張る作品は、今後登場すると期待したいですね。
ところで本作はしっかり時系列が描かれていて、次々作は「影の演舞曲」プレミア上映が
舞台とのこと。
赤川作品で時間が過ぎていくのは、中々珍しく(杉原爽香シリーズは別)
シリーズとしてどこまで描いていくのかも気になりますね。
花嫁は三度ベルを鳴らす [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
実業家の片瀬は、妻の靖代とその妹の早紀と東欧を旅していた。
途中、靖代が体調を崩して亡くなってしまう。
異国だったが仕方なく現地に埋葬するが、
そこには、棺の中から鳴らせるように墓標の十字架にベルを取り付ける奇妙な風習があった。
鳴るはずのないベルが鳴り響くとき女子大生・亜由美は事件に巻き込まれていく!
人気シリーズ第33弾。
赤川次郎先生作品が続きました。
花嫁シリーズも長い!33作目とは。
現在は35作目(『花嫁、街道を行く』)まで刊行されています。
通常と変わらず、本書にも2作が収録。
表題作は後回しにして、まずは「花嫁は滝にのぼる」から。
近年の赤川作品だなあというのが感想。
大きな権力に立ち向かっていく、それを亜由美とドン・ファンらが助けるという。
それと本作での花嫁は誰なのかなあと。
宇佐見しのぶ?これは騙しのためだから、実際はせずで、やはり高野良子ですかね。
さて表題作ですが、久しぶりに谷川准教授が登場します。
本作、かなり楽しめます。
亜由美一行はいきなりルーマニアへ行きますし、母である清美も大活躍します。
黒幕自体はすぐわかるのですが、亜由美たちをルーマニアまで行かせた人物は
一体誰なのか?谷川というのが仄めかされ、さらに諸岡早紀のことを
「ずっと前から好きだった」という衝撃の証言まで・・・
いやいや亜由美にとっては、重大なる謎が残りましたね。
これ、次作以降で描かれるのでしょうか?気になります。
それにしても、赤川先生作品は、ページをめくる手を止めさせないなあ。
ちなみに、多くの赤川作品を読んできましたが、実は双葉文庫刊行作品には
手を出していないのです(笑
あれも多いんですよねえ。あれに手を出すと、相当数読むものが増えてくる。
さてどうしたものか。
実業家の片瀬は、妻の靖代とその妹の早紀と東欧を旅していた。
途中、靖代が体調を崩して亡くなってしまう。
異国だったが仕方なく現地に埋葬するが、
そこには、棺の中から鳴らせるように墓標の十字架にベルを取り付ける奇妙な風習があった。
鳴るはずのないベルが鳴り響くとき女子大生・亜由美は事件に巻き込まれていく!
人気シリーズ第33弾。
赤川次郎先生作品が続きました。
花嫁シリーズも長い!33作目とは。
現在は35作目(『花嫁、街道を行く』)まで刊行されています。
通常と変わらず、本書にも2作が収録。
表題作は後回しにして、まずは「花嫁は滝にのぼる」から。
近年の赤川作品だなあというのが感想。
大きな権力に立ち向かっていく、それを亜由美とドン・ファンらが助けるという。
それと本作での花嫁は誰なのかなあと。
宇佐見しのぶ?これは騙しのためだから、実際はせずで、やはり高野良子ですかね。
さて表題作ですが、久しぶりに谷川准教授が登場します。
本作、かなり楽しめます。
亜由美一行はいきなりルーマニアへ行きますし、母である清美も大活躍します。
黒幕自体はすぐわかるのですが、亜由美たちをルーマニアまで行かせた人物は
一体誰なのか?谷川というのが仄めかされ、さらに諸岡早紀のことを
「ずっと前から好きだった」という衝撃の証言まで・・・
いやいや亜由美にとっては、重大なる謎が残りましたね。
これ、次作以降で描かれるのでしょうか?気になります。
それにしても、赤川先生作品は、ページをめくる手を止めさせないなあ。
ちなみに、多くの赤川作品を読んできましたが、実は双葉文庫刊行作品には
手を出していないのです(笑
あれも多いんですよねえ。あれに手を出すと、相当数読むものが増えてくる。
さてどうしたものか。
名探偵はひとりぼっち [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「彼女が不治の病であと半年の命なんだ」。高校一年の酒井健一が見栄を張ってついた噓は、
クラスメイトから同情され、ついにはカンパ金まで渡されることに。
架空の彼女と待ち合わせた上野駅へ向かった健一だが、そこに、いるはずもない恋人が現れた!?
さらに健一をコインロッカーへ促した彼女は「逃げようなんて思わないで」と拳銃を突き付けてきた!
同い年コンビが事件に挑む青春ミステリ。
こんな中短編集があったとはなあ。知りませんでした・・・
元々は角川文庫からだったみたいなので、あの青表紙の時に出てたのだろうか。
表題作は、なんというか嘘から出た実に近い話なのですが、主人公の酒井健一が
あまりに面白すぎる。途中出てくるヤクザの白井も中々良いキャラしていて、いいですね。
偽札をめぐる抗争に巻き込まれた健一。しかし倉原みどりという拳銃をぶっ放す同級生とも
知り合い、さらに殴り込みにまで連れていかれる始末という、まさに踏んだり蹴ったり
なのですが、みどりが可愛いからなのか、彼の正義感、いや名探偵としての気概でもあるのか、
自ら進んで危険な道に入ります。
赤川作品だと、この場合の主人公は女性で、それに倉原みどり、というのが
想像できますが、男性は珍しいですね。
最後はものすごくあっさり終わるのですが、ちょっと健一にとっては切なすぎるかなあと。
表題作が実は名探偵と入っているのにはかなり違和感がありました。
内容がヤクザの抗争ですからね。謎を解く、とかそういう話でもないし、
そもそも酒井健一はそこまで頭が良いとは思えない(笑)
一方で、短編である「学生時代」の和也は、名探偵なんですよねえ。
この話、トリックというか、仕組みは良く出来ていて、教員による覗きという、
今現在も問題になっている、教員の性犯罪を取り上げていて、決して古いと思えないです。
ラスト、タイトルと上手くリンクさせるのですが、こちらもあっさりした終わり方です。
和也と勇樹、ほとんどプライベートも高校すら書かれないのですが、この2人で
シリーズ化しても良かったのではないか。
「ぼくと私とあなたと君と」。こちらも高校生が主人公ですが、殺人事件が起こります。
これもあっさりです。女装がよくばれなかったなあという感想(笑)
「彼女が不治の病であと半年の命なんだ」。高校一年の酒井健一が見栄を張ってついた噓は、
クラスメイトから同情され、ついにはカンパ金まで渡されることに。
架空の彼女と待ち合わせた上野駅へ向かった健一だが、そこに、いるはずもない恋人が現れた!?
さらに健一をコインロッカーへ促した彼女は「逃げようなんて思わないで」と拳銃を突き付けてきた!
同い年コンビが事件に挑む青春ミステリ。
こんな中短編集があったとはなあ。知りませんでした・・・
元々は角川文庫からだったみたいなので、あの青表紙の時に出てたのだろうか。
表題作は、なんというか嘘から出た実に近い話なのですが、主人公の酒井健一が
あまりに面白すぎる。途中出てくるヤクザの白井も中々良いキャラしていて、いいですね。
偽札をめぐる抗争に巻き込まれた健一。しかし倉原みどりという拳銃をぶっ放す同級生とも
知り合い、さらに殴り込みにまで連れていかれる始末という、まさに踏んだり蹴ったり
なのですが、みどりが可愛いからなのか、彼の正義感、いや名探偵としての気概でもあるのか、
自ら進んで危険な道に入ります。
赤川作品だと、この場合の主人公は女性で、それに倉原みどり、というのが
想像できますが、男性は珍しいですね。
最後はものすごくあっさり終わるのですが、ちょっと健一にとっては切なすぎるかなあと。
表題作が実は名探偵と入っているのにはかなり違和感がありました。
内容がヤクザの抗争ですからね。謎を解く、とかそういう話でもないし、
そもそも酒井健一はそこまで頭が良いとは思えない(笑)
一方で、短編である「学生時代」の和也は、名探偵なんですよねえ。
この話、トリックというか、仕組みは良く出来ていて、教員による覗きという、
今現在も問題になっている、教員の性犯罪を取り上げていて、決して古いと思えないです。
ラスト、タイトルと上手くリンクさせるのですが、こちらもあっさりした終わり方です。
和也と勇樹、ほとんどプライベートも高校すら書かれないのですが、この2人で
シリーズ化しても良かったのではないか。
「ぼくと私とあなたと君と」。こちらも高校生が主人公ですが、殺人事件が起こります。
これもあっさりです。女装がよくばれなかったなあという感想(笑)
僕らの課外授業 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
中学3年生といえば、何にでも興味があり、何でもやりたいし、
早く大人にもなりたい本当に難しい年頃だ。大和田倫子はその問題の中学3年生。
厳格な家庭に育った彼女は、両親への反発から、酒に溺れ、男に夢中になり、
あげくのはてオートバイで自殺した。だが一ヶ月後、東京駅に彼女の幽霊が……。
自称“世が世ならお姫様”の容子と女性にはめっぽう甘い友也の中3コンビが、
醜い大人達の悪事に挑戦状をたたきつけた!! ユーモア・ミステリーの傑作。
他にオリジナル3作品収録。
Amazonさんには徳間文庫版がないので、角川文庫版の解説となります。
私自身は、角川文庫版を遙か昔に購入し、一度読んでいるのですが、
徳間文庫で復刊したので、改めて購入しました。
表題作は、やはり今読んでもかなりおもしろい。ジュブナイル小説として
青い鳥文庫あたりから刊行しても良いくらいです。
死んだはずの人間、東京駅の謎。殺人事件・・・とにかくワクワクドキドキ感満載です。
大友克洋先生の『SOS東京大探検隊』も思い出します。
あちらは確か丸の内駅でしたが、まあほぼ近距離ですね。
「何でも屋は大忙し」と「夢の行列」は、悲しい結末です。
特に前者は主人公(勢)が愉快な仲間達的なところがあるので、余計に
この結末は悲しいものがあります。
後者は最後に若い2人の新たな恋?が始まりそうで、まだ救いがありますが。
「ラブ・バード・ウォッチング」は鳥を見るつもりが、ついつい他人の家をみて
しまったことから始まる物語。こういうのは男性が女性の部屋という設定かと
思いきや、そこは赤川先生。逆パターンです。
最近更新が滞りがちですが、またぼちぼちあげていこうと思います。
![僕らの課外授業 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 僕らの課外授業 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/6371/9784198946371.jpg?_ex=128x128)
中学3年生といえば、何にでも興味があり、何でもやりたいし、
早く大人にもなりたい本当に難しい年頃だ。大和田倫子はその問題の中学3年生。
厳格な家庭に育った彼女は、両親への反発から、酒に溺れ、男に夢中になり、
あげくのはてオートバイで自殺した。だが一ヶ月後、東京駅に彼女の幽霊が……。
自称“世が世ならお姫様”の容子と女性にはめっぽう甘い友也の中3コンビが、
醜い大人達の悪事に挑戦状をたたきつけた!! ユーモア・ミステリーの傑作。
他にオリジナル3作品収録。
Amazonさんには徳間文庫版がないので、角川文庫版の解説となります。
私自身は、角川文庫版を遙か昔に購入し、一度読んでいるのですが、
徳間文庫で復刊したので、改めて購入しました。
表題作は、やはり今読んでもかなりおもしろい。ジュブナイル小説として
青い鳥文庫あたりから刊行しても良いくらいです。
死んだはずの人間、東京駅の謎。殺人事件・・・とにかくワクワクドキドキ感満載です。
大友克洋先生の『SOS東京大探検隊』も思い出します。
あちらは確か丸の内駅でしたが、まあほぼ近距離ですね。
「何でも屋は大忙し」と「夢の行列」は、悲しい結末です。
特に前者は主人公(勢)が愉快な仲間達的なところがあるので、余計に
この結末は悲しいものがあります。
後者は最後に若い2人の新たな恋?が始まりそうで、まだ救いがありますが。
「ラブ・バード・ウォッチング」は鳥を見るつもりが、ついつい他人の家をみて
しまったことから始まる物語。こういうのは男性が女性の部屋という設定かと
思いきや、そこは赤川先生。逆パターンです。
最近更新が滞りがちですが、またぼちぼちあげていこうと思います。
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- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 704 円
交差点に眠る [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
「娘に渡して」と、偶然出会った女から写真を託された梓悠季。
だがヤクザの殺し合いで、その女は悠季の目の前で射殺された。
命拾いした悠季は十三年後、人気ファッションデザイナーになった。が、
またしてもショーの前夜、射殺現場に遭遇してしまう。
二つの事件に見え隠れするヤクザの正体、
そして渡された写真の意味とは?
正義感の強い悠季は真実を暴くため事件の真相を探る!
相変わらず、タイトルが上手い。物理的な「交差点」と、出会いと別れがある
という意味の「交差点」という。途中で解説が少し出てきます。
ヤクザの抗争がメインのお話で、赤川作品常連の強いヒロインが活躍しますが、
ちょっと意外な犯人でしたね。ややビックリ。
悠季が過去に体験した、ヤクザの殺し合いとその前の追われる男女の性交が、
彼女の運命を大きく変えたのは事実で、彼女がそれを本当に心の糧のような
ものにしているのなだと、読んでいる中で思いました。
そしてヒロインが強いだけでなく、その母も強かった(笑
どちらかが抜けているか、天然かというパターンが多いのですが、
命が狙われる恐れがある!→世界一周旅行に行こう、という思考が素晴らしい。
最後に明かされますが、母親からのメールで、事件が解けたようなものですし。
それにしてもジェットコースター的展開なのは、いつものことかもしれませんが、
流石の一言。
ヒロインに良い彼氏(候補)が現れなかったなあ、悠季も残念でしょうね(笑
![交差点に眠る (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 交差点に眠る (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7057/9784198947057_1_4.jpg?_ex=128x128)
「娘に渡して」と、偶然出会った女から写真を託された梓悠季。
だがヤクザの殺し合いで、その女は悠季の目の前で射殺された。
命拾いした悠季は十三年後、人気ファッションデザイナーになった。が、
またしてもショーの前夜、射殺現場に遭遇してしまう。
二つの事件に見え隠れするヤクザの正体、
そして渡された写真の意味とは?
正義感の強い悠季は真実を暴くため事件の真相を探る!
相変わらず、タイトルが上手い。物理的な「交差点」と、出会いと別れがある
という意味の「交差点」という。途中で解説が少し出てきます。
ヤクザの抗争がメインのお話で、赤川作品常連の強いヒロインが活躍しますが、
ちょっと意外な犯人でしたね。ややビックリ。
悠季が過去に体験した、ヤクザの殺し合いとその前の追われる男女の性交が、
彼女の運命を大きく変えたのは事実で、彼女がそれを本当に心の糧のような
ものにしているのなだと、読んでいる中で思いました。
そしてヒロインが強いだけでなく、その母も強かった(笑
どちらかが抜けているか、天然かというパターンが多いのですが、
命が狙われる恐れがある!→世界一周旅行に行こう、という思考が素晴らしい。
最後に明かされますが、母親からのメールで、事件が解けたようなものですし。
それにしてもジェットコースター的展開なのは、いつものことかもしれませんが、
流石の一言。
ヒロインに良い彼氏(候補)が現れなかったなあ、悠季も残念でしょうね(笑
![交差点に眠る (徳間文庫) [ 赤川次郎 ] 交差点に眠る (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7057/9784198947057_1_4.jpg?_ex=128x128)
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 836 円
三世代探偵団 次の扉に潜む死神 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
天才画家の祖母と、生活力皆無でマイペースな母と暮らす女子高生の天本有里。
彼女が出演した舞台で、母の代役の女優が何者かに殺された。
有里の目の前で倒れた被害者が最後に口にしたのは、母の名前だった。
彼女の身に何が起きたのか。事件を追ううちに、3人の周囲に次第に不穏な影が忍び寄り……?
個性豊かな女三世代が贈るユーモアミステリ開幕!
2017年、赤川次郎先生が、『キネマの天使』と同じく初めた新シリーズ。
御年69歳(70歳)で新たなシリーズを始めるという、すごい試みです。
主人公は高校生の天本有里、ですが、探偵役は祖母の幸代なのでしょう。
年の功(失礼!)といってはあれですが、彼女は物語の中である程度の事態を
見通している感があります。
相変わらず場面転換が激しいですが、それ以上に物語に惹き込まれます。
有里の目の前で起きた殺人事件。有里が通う学園の事務員である三田洋子の弟・三田広士
の元に突然現れた女性・アケミ。洋子の上司が原口恒子が抱える何らかの秘密・・・
殺人事件にどう絡んでいくのか、想像が付きません。
様々な人物の思惑と、その後ろで何かを企む組織が見え隠れする中で、
物語は続いていきます。
個人的にはラストの犯人というか、組織というか、このあたりはもっと明確に記す、
具体的に書いて貰いたかったですね。何が学園を含め起こっていたのか。
実のところよくわかりません。
ただし、赤川先生の狙いは当然結末にあるのではないのだろうというのは、
これまでの作品からも想像が付きます。
本書の副題「次の扉に潜む死神」は、人が歩んでいく上で、その都度その都度
何が潜んでいるかわからない、どうその人が変わるかわからない、という意味を
含んでいるのであろうと勝手に想像しました。
大人しそうな三隅研一や、裏の顔役をしていた永田、そして三田洋子等々・・・
多くの人たちがまるで違う人物かのように変貌、変化していく様が描かれています。
しかし、三毛猫ホームズシリーズしかり、本シリーズでも祖母の幸代がグリップ(?)
しつつ、文乃や有里は彼彼女たちの変貌に影響を受けながらも、前に進み
事件を解決に導いていくのもまた事実。
人間ちょっとしたことで、道を踏み外したり、変わったりしてしまうけれども、
彼女たち三世代のような人が近くに居れば、どんだけ安心だろうかと思ってしまいますね。
赤川先生の作品群の主人公はそんな優しい人たちばかりなのが素晴らしい点なのですが。
本シリーズ、すでに3作品刊行され、4作目もという話のようです。
1・2作は同時刊行されましたので、また近いうちに。
天才画家の祖母と、生活力皆無でマイペースな母と暮らす女子高生の天本有里。
彼女が出演した舞台で、母の代役の女優が何者かに殺された。
有里の目の前で倒れた被害者が最後に口にしたのは、母の名前だった。
彼女の身に何が起きたのか。事件を追ううちに、3人の周囲に次第に不穏な影が忍び寄り……?
個性豊かな女三世代が贈るユーモアミステリ開幕!
2017年、赤川次郎先生が、『キネマの天使』と同じく初めた新シリーズ。
御年69歳(70歳)で新たなシリーズを始めるという、すごい試みです。
主人公は高校生の天本有里、ですが、探偵役は祖母の幸代なのでしょう。
年の功(失礼!)といってはあれですが、彼女は物語の中である程度の事態を
見通している感があります。
相変わらず場面転換が激しいですが、それ以上に物語に惹き込まれます。
有里の目の前で起きた殺人事件。有里が通う学園の事務員である三田洋子の弟・三田広士
の元に突然現れた女性・アケミ。洋子の上司が原口恒子が抱える何らかの秘密・・・
殺人事件にどう絡んでいくのか、想像が付きません。
様々な人物の思惑と、その後ろで何かを企む組織が見え隠れする中で、
物語は続いていきます。
個人的にはラストの犯人というか、組織というか、このあたりはもっと明確に記す、
具体的に書いて貰いたかったですね。何が学園を含め起こっていたのか。
実のところよくわかりません。
ただし、赤川先生の狙いは当然結末にあるのではないのだろうというのは、
これまでの作品からも想像が付きます。
本書の副題「次の扉に潜む死神」は、人が歩んでいく上で、その都度その都度
何が潜んでいるかわからない、どうその人が変わるかわからない、という意味を
含んでいるのであろうと勝手に想像しました。
大人しそうな三隅研一や、裏の顔役をしていた永田、そして三田洋子等々・・・
多くの人たちがまるで違う人物かのように変貌、変化していく様が描かれています。
しかし、三毛猫ホームズシリーズしかり、本シリーズでも祖母の幸代がグリップ(?)
しつつ、文乃や有里は彼彼女たちの変貌に影響を受けながらも、前に進み
事件を解決に導いていくのもまた事実。
人間ちょっとしたことで、道を踏み外したり、変わったりしてしまうけれども、
彼女たち三世代のような人が近くに居れば、どんだけ安心だろうかと思ってしまいますね。
赤川先生の作品群の主人公はそんな優しい人たちばかりなのが素晴らしい点なのですが。
本シリーズ、すでに3作品刊行され、4作目もという話のようです。
1・2作は同時刊行されましたので、また近いうちに。
誇り高き週末 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
莫大な財産を持つ柳原一馬、七十歳。四十年前に妻と死別して以来独身で子供もいない彼が、
突然再婚を発表する。しかもお相手は二十八歳!
それぞれの事情から彼の財産を狙っている親族たちは、
複雑な思いで週末に行われる花嫁披露パーティのため山荘に赴くが、
そこに前妻の幽霊が現れて……!? 表題作ほか、
妻の殺害を計画する夫、社内の盗聴が趣味の社長の「週末」を描く2作品を収録。
久しぶりの更新となってしまいました。
このところ、読書ではなく、「メトロイドドレッド」と「大逆転裁判」をしていて、
いや、これが面白いのです。
本書も復刊です。集英社文庫さんも徳間文庫さんに負けず劣らず復刊してくれて、
有り難いことです。
本来、平日仕事で、土日休みという形態の職種ならば、週末はうれしいものですが、
本書所収3編の主人公にとって、それは覚悟、恐怖、憂鬱と、うれしいとはかけ離れた
感情ばかりでした。
表題作は、所収作では実は変化球作品。主人公が「女を落とす」職業の武藤と、
柳原の前妻である早苗、といっても彼女は幽霊ですが。
この話、年の差婚から財産を巡るドロドロ話なのですが、職業はあまり良いとは思えない
武藤が相当な好人物なのが印象的です。
もしかしたら、早苗の幽霊をみたから変化があったのかもしれません。
しかし、早苗をみることが出来たというところも、ある意味その性格を現しているのかも。
夫であった柳原には全くその姿は見えず、さらに武藤初め誰も説明しないというのは、
優しさの表れでもあるのでしょうし、武藤とすれば、早苗との約束なのかもしれません。
さて「雨の週末」と「疑惑の週末」の2編は、殺す・殺されると立場がまるで違うにも
関わらず、どこか主人公に共通点があるんですよね。
ただし、水沼はもう少し罰を受けても良いよなあ。社員の松尾さんが引き立てるのは
素晴らしいことで、話としては、そこくらいしか実は救いがない話なのです。
俊子は恋人を殺され、洋子は殺害されそうになるも、その計画は知らず。
多田克代に至っては早々に殺害されて退場しますし。
しかし、ラストだけ読むと、非常に上手く物語がまとめられていてそこがいいです。
山崎課長の落胆ぶりも溜飲が下がりますね。
「疑惑の週末」は、盗聴器を会社や自宅に仕掛けた越谷が変わる物語。
「自分自身のやましさを。あの「声」に映していただけにすぎない」ことに気付いた
彼は、良き経営者、良き父親になっていくのだろうと(期待したい)。
ゲームの秋も読書の秋も楽しみます。
莫大な財産を持つ柳原一馬、七十歳。四十年前に妻と死別して以来独身で子供もいない彼が、
突然再婚を発表する。しかもお相手は二十八歳!
それぞれの事情から彼の財産を狙っている親族たちは、
複雑な思いで週末に行われる花嫁披露パーティのため山荘に赴くが、
そこに前妻の幽霊が現れて……!? 表題作ほか、
妻の殺害を計画する夫、社内の盗聴が趣味の社長の「週末」を描く2作品を収録。
久しぶりの更新となってしまいました。
このところ、読書ではなく、「メトロイドドレッド」と「大逆転裁判」をしていて、
いや、これが面白いのです。
本書も復刊です。集英社文庫さんも徳間文庫さんに負けず劣らず復刊してくれて、
有り難いことです。
本来、平日仕事で、土日休みという形態の職種ならば、週末はうれしいものですが、
本書所収3編の主人公にとって、それは覚悟、恐怖、憂鬱と、うれしいとはかけ離れた
感情ばかりでした。
表題作は、所収作では実は変化球作品。主人公が「女を落とす」職業の武藤と、
柳原の前妻である早苗、といっても彼女は幽霊ですが。
この話、年の差婚から財産を巡るドロドロ話なのですが、職業はあまり良いとは思えない
武藤が相当な好人物なのが印象的です。
もしかしたら、早苗の幽霊をみたから変化があったのかもしれません。
しかし、早苗をみることが出来たというところも、ある意味その性格を現しているのかも。
夫であった柳原には全くその姿は見えず、さらに武藤初め誰も説明しないというのは、
優しさの表れでもあるのでしょうし、武藤とすれば、早苗との約束なのかもしれません。
さて「雨の週末」と「疑惑の週末」の2編は、殺す・殺されると立場がまるで違うにも
関わらず、どこか主人公に共通点があるんですよね。
ただし、水沼はもう少し罰を受けても良いよなあ。社員の松尾さんが引き立てるのは
素晴らしいことで、話としては、そこくらいしか実は救いがない話なのです。
俊子は恋人を殺され、洋子は殺害されそうになるも、その計画は知らず。
多田克代に至っては早々に殺害されて退場しますし。
しかし、ラストだけ読むと、非常に上手く物語がまとめられていてそこがいいです。
山崎課長の落胆ぶりも溜飲が下がりますね。
「疑惑の週末」は、盗聴器を会社や自宅に仕掛けた越谷が変わる物語。
「自分自身のやましさを。あの「声」に映していただけにすぎない」ことに気付いた
彼は、良き経営者、良き父親になっていくのだろうと(期待したい)。
ゲームの秋も読書の秋も楽しみます。
呪いの花園-ミステリー組曲「幻影稼業」 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…
(表題作「呪いの花園」)。
夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、
“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物―
この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている!
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。
徳間文庫の赤川次郎先生作品の復刊もあるのですが、集英社文庫でも新装版が多く出ている
んですよね。まあオススメで出てきたので気づいたのですが(汗)
(ちなみに本書は新装版ではなく、この後書く本が新装版です。)
ホラーとありますが、いわゆる赤川作品群の中で私はホラーというより、
人間の醜い部分を描いた、まさに説明にある
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末といったホラーです。
(純粋なホラーというと、『長い夜』とかを思い出します。)
「悪夢、買います」での五十嵐涼子、「幻のタイトロープ」の阿部涼子、
「失われた恋人」の野田、彼彼女たちは、主人公の犠牲となり、亡くなりました。
主人公たちは彼彼女たちの死去を十分に悔やみ、心に留め、その後を生きていくの
でしょうが、やはり胸くそ悪いですね(苦笑)
特に最初の「悪夢、買います」の笠原は浮気だからなあ・・・
彼にはもう少し天罰が落ちても良かったのでは。
「失われた恋人」はバーチャル恋愛の走りです。本書が刊行されたのは1998年、文庫化が
2001年と、windows95の大熱狂から98の登場の頃ですね。
自分もこの頃にダイヤルアップ接続でテレ放題でネットを接続していたのを思い出します。
「呪いの花園」だけは少し趣向が違い、主人公自身が殺人者になる物語。
とはいえ、江田美奈子の最後の「殺人」は心情として理解してしまう一面もありますね。
本作はラストの皆川刑事のセリフが秀逸。悪夢の連鎖が続くことを匂わせて終幕します。
「隅の少女」は、解説でも触れられているように、「隅の老人」のもじり。
しかし、本作で一番怖いのは、草間知子の前に突然現れた老人はいったい誰なのかという点。
一切語られないので、余計に恐怖感が増します。
男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…
(表題作「呪いの花園」)。
夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、
“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物―
この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている!
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。
徳間文庫の赤川次郎先生作品の復刊もあるのですが、集英社文庫でも新装版が多く出ている
んですよね。まあオススメで出てきたので気づいたのですが(汗)
(ちなみに本書は新装版ではなく、この後書く本が新装版です。)
ホラーとありますが、いわゆる赤川作品群の中で私はホラーというより、
人間の醜い部分を描いた、まさに説明にある
心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末といったホラーです。
(純粋なホラーというと、『長い夜』とかを思い出します。)
「悪夢、買います」での五十嵐涼子、「幻のタイトロープ」の阿部涼子、
「失われた恋人」の野田、彼彼女たちは、主人公の犠牲となり、亡くなりました。
主人公たちは彼彼女たちの死去を十分に悔やみ、心に留め、その後を生きていくの
でしょうが、やはり胸くそ悪いですね(苦笑)
特に最初の「悪夢、買います」の笠原は浮気だからなあ・・・
彼にはもう少し天罰が落ちても良かったのでは。
「失われた恋人」はバーチャル恋愛の走りです。本書が刊行されたのは1998年、文庫化が
2001年と、windows95の大熱狂から98の登場の頃ですね。
自分もこの頃にダイヤルアップ接続でテレ放題でネットを接続していたのを思い出します。
「呪いの花園」だけは少し趣向が違い、主人公自身が殺人者になる物語。
とはいえ、江田美奈子の最後の「殺人」は心情として理解してしまう一面もありますね。
本作はラストの皆川刑事のセリフが秀逸。悪夢の連鎖が続くことを匂わせて終幕します。
「隅の少女」は、解説でも触れられているように、「隅の老人」のもじり。
しかし、本作で一番怖いのは、草間知子の前に突然現れた老人はいったい誰なのかという点。
一切語られないので、余計に恐怖感が増します。
たとえば風が [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
七十歳の八木原亮子は名家の未亡人。使用人を雇うに当たり、身許など調べない主義。
お手伝いにきた十九歳の山中千津は、丁寧な仕事ぶりから長男の秀、次女の圭子、
嫁の康代、孫の秀一郎からも信頼されるようになった。お金に苦労することも、
将来の心配もない八木原家だったが、千津が来てから一家の歯車が狂い出し、
徐々に彼らの裏の顔が見え始め――。家族の繋がりを問うミステリ。
ネタバレあり。
なんとも表現しがたいミステリ。
山中千津という存在が、これまでの八木原家を壊し、若干ではありますが、
今後の八木原家を立て直したとも言えるのではないでしょうか。
最後まで読むと、この企みや一味がわかり、大金持ちを罠に嵌めて大金をせしめる、
いわば詐欺グループに近いんですが、千津の発言から今まではそうだったけども、
今回は人殺しまでやるという所まで陥り、仲間割れが起きるのです。
しかし、千津が下さずとも、辻間と房子夫妻はハナから悪事に手を染めようとしましたから、
最後に亮子が述べるように、元々が危なっかしい状態だったのでしょう。
康代の自殺だけは結構ショックでした・・・なんとかならなかったのかと。
本書はこのタイトルが秀逸過ぎますね。よくこんなタイトルを思いつくよなあ。
七十歳の八木原亮子は名家の未亡人。使用人を雇うに当たり、身許など調べない主義。
お手伝いにきた十九歳の山中千津は、丁寧な仕事ぶりから長男の秀、次女の圭子、
嫁の康代、孫の秀一郎からも信頼されるようになった。お金に苦労することも、
将来の心配もない八木原家だったが、千津が来てから一家の歯車が狂い出し、
徐々に彼らの裏の顔が見え始め――。家族の繋がりを問うミステリ。
ネタバレあり。
なんとも表現しがたいミステリ。
山中千津という存在が、これまでの八木原家を壊し、若干ではありますが、
今後の八木原家を立て直したとも言えるのではないでしょうか。
最後まで読むと、この企みや一味がわかり、大金持ちを罠に嵌めて大金をせしめる、
いわば詐欺グループに近いんですが、千津の発言から今まではそうだったけども、
今回は人殺しまでやるという所まで陥り、仲間割れが起きるのです。
しかし、千津が下さずとも、辻間と房子夫妻はハナから悪事に手を染めようとしましたから、
最後に亮子が述べるように、元々が危なっかしい状態だったのでしょう。
康代の自殺だけは結構ショックでした・・・なんとかならなかったのかと。
本書はこのタイトルが秀逸過ぎますね。よくこんなタイトルを思いつくよなあ。
静かな町の夕暮に [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
こんなに楽しくていいのかな。
小さな町に撮影隊と事件がやってきた。
山あいの田舎町に三週間だけ映画の撮影隊がやってきた。
ビッグニュースに町は沸く。
地元の高校演劇部にも声がかかり、部長の法子もスクリーンデビューすることに!
撮影が終わったある夜、演劇部の後輩克枝が夜中に保健室の明りを見つけ、
近づくとそこには男女の姿があった。
その二人は誰だったのか法子に話す前に克枝は殺されてしまう!
高揚していた町は不思議な沈黙に包まれ――。
更新が止まってしまっておりました。しかし暑い!
以下、ややネタバレありです。
赤川さんのノン・シリーズはほとんどハズレがない。
講談社文庫でかつて発売されていたとは知りませんでした。
それにしても、徳間さんの新装版、復刊は本当にありがたい。感謝感謝です。
本作の主人公は赤川作品常連ともいえる、女子高生の指田法子。
彼女の住む、山間の町に、映画のロケ隊がやってきたことから、事件は始まります。
といっても、彼女が探偵役という訳ではありません。
ただ、彼女は、このロケ隊が来たことから、自身の人生や、自分が住んでいた町、
さらには大人たちの勝手な都合などを、次々と目にすることになっていきます。
真相が語られた最後、彼女は「『良かったですね』なんて言う資格は、誰にもないわ」と
強い口調で言います。これが彼女の今回の事件への怒りそのものですね。
「かもしれない」、という曖昧な表現で、なぜか町の外れに住む平井家の人々が犯人に
されているのか。かつてあったある事件がきっかけとはいえ、これは極めて陰湿です。
今でもあるのかもしれませんが、ある意味「村八分」的なものなのでしょう。
事件は確かに解決しました。しかし三屋久美、佐野康代・ユリ母娘、平井啓一、
彼彼女たちは誰一人として、救いがありません。
(啓一にとっての唯一の救いは、殺害された岡田典子の手紙でしょうか。)
そして、法子たちが住んでいた町も、平穏を取り戻すのでしょう。
しかし、町の本質は変わっていません。
法子たちが東京へ引っ越すというのも、ある意味脱出とも取れてしまいます。
この辺り、大団円と見せかけて、中々に後味の悪い作品を描かれたなあと
勝手に思いました。
ところで解説で述べられている、講談社推理特別書下ろし、の第1期ラストを
本作が飾ったというお話。もちろん初めて知りましたし、
この叢書レーベル自体も初耳でした。
確かに後世に残る作品が送り出されていて、素晴らしいの一言。
過去のミステリの歴史を振り返る作品というのは、
『本格ミステリ・ディケイド300』などあり、私も持ってますが、
より奥深く、こうした各出版社のレーベルのみならず、そのラインナップにも
迫る、ミステリ評論のような書籍が出てくれると、うれしいですね。
刊行した作家さんのオーラル・ヒストリーもぜひ収録で。
(すでにされている書籍があったらすいません。)
こんなに楽しくていいのかな。
小さな町に撮影隊と事件がやってきた。
山あいの田舎町に三週間だけ映画の撮影隊がやってきた。
ビッグニュースに町は沸く。
地元の高校演劇部にも声がかかり、部長の法子もスクリーンデビューすることに!
撮影が終わったある夜、演劇部の後輩克枝が夜中に保健室の明りを見つけ、
近づくとそこには男女の姿があった。
その二人は誰だったのか法子に話す前に克枝は殺されてしまう!
高揚していた町は不思議な沈黙に包まれ――。
更新が止まってしまっておりました。しかし暑い!
以下、ややネタバレありです。
赤川さんのノン・シリーズはほとんどハズレがない。
講談社文庫でかつて発売されていたとは知りませんでした。
それにしても、徳間さんの新装版、復刊は本当にありがたい。感謝感謝です。
本作の主人公は赤川作品常連ともいえる、女子高生の指田法子。
彼女の住む、山間の町に、映画のロケ隊がやってきたことから、事件は始まります。
といっても、彼女が探偵役という訳ではありません。
ただ、彼女は、このロケ隊が来たことから、自身の人生や、自分が住んでいた町、
さらには大人たちの勝手な都合などを、次々と目にすることになっていきます。
真相が語られた最後、彼女は「『良かったですね』なんて言う資格は、誰にもないわ」と
強い口調で言います。これが彼女の今回の事件への怒りそのものですね。
「かもしれない」、という曖昧な表現で、なぜか町の外れに住む平井家の人々が犯人に
されているのか。かつてあったある事件がきっかけとはいえ、これは極めて陰湿です。
今でもあるのかもしれませんが、ある意味「村八分」的なものなのでしょう。
事件は確かに解決しました。しかし三屋久美、佐野康代・ユリ母娘、平井啓一、
彼彼女たちは誰一人として、救いがありません。
(啓一にとっての唯一の救いは、殺害された岡田典子の手紙でしょうか。)
そして、法子たちが住んでいた町も、平穏を取り戻すのでしょう。
しかし、町の本質は変わっていません。
法子たちが東京へ引っ越すというのも、ある意味脱出とも取れてしまいます。
この辺り、大団円と見せかけて、中々に後味の悪い作品を描かれたなあと
勝手に思いました。
ところで解説で述べられている、講談社推理特別書下ろし、の第1期ラストを
本作が飾ったというお話。もちろん初めて知りましたし、
この叢書レーベル自体も初耳でした。
確かに後世に残る作品が送り出されていて、素晴らしいの一言。
過去のミステリの歴史を振り返る作品というのは、
『本格ミステリ・ディケイド300』などあり、私も持ってますが、
より奥深く、こうした各出版社のレーベルのみならず、そのラインナップにも
迫る、ミステリ評論のような書籍が出てくれると、うれしいですね。
刊行した作家さんのオーラル・ヒストリーもぜひ収録で。
(すでにされている書籍があったらすいません。)
花嫁は迷路をめぐる [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
死んだはずの妹が上京し、故郷から大金が盗まれた!?
姉の早苗を訪ねて上京したとも子は、土地勘なく困っていた。
そこへ偶然通りがかった亜由美に案内してもらうことに。
しかし、出会えた早苗はとも子を見て驚いた。
故郷の竜太から、とも子は死んだと知らされていたからだ。
なぜかそんな嘘をついた竜太も上京し、同時に故郷の村役場から2000万円が盗まれ——。
表題作ほか「花嫁たちのメロドラマ」収録。
花嫁シリーズも長寿シリーズですねえ。
亜由美の恋人・谷川は本書でも姿をみせず。今大学は大変だしなあ(時期が違いますね)。
表題作の「迷路をめぐる」って、どういう意味なんでしょうか?
主人公の片桐とも子が、田舎の村から東京という大都会に出てきて、最初に道に
迷ってますが、これも含め、とも子の本作で描かれる人生の過程を指しているのかな?
早苗・とも子姉妹もいいですが、亜由美の同級生である美月も良い!
亜由美の影は少し薄いかもしれません。
「花嫁たちのメロドラマ」はいくつかのショートショートに近い作品群を
1つにまとめたかのようなお話。最近の花嫁シリーズの中では、かなり楽しめました。
拳銃をぶっ放すシーンがここかしこに登場し、亜由美ほか狙われまくるのですが、
白クマ組や黒クマ組の争いがコメディのようで、危機感がまるで伝わりません(笑
一方で文香と母親の麻美が経験した自然災害や、麻美の病院で出会う「昔なじみ」。
息子と妻を奪われた久保田啓一。記憶を失ってしまった久保田悠と早紀の物語。
悲しい結末を迎えるものが多いのですが、イッキ読みしてしまいました。
ここ最近の同シリーズは、赤川先生の危機意識みたいなものが強く出ていたものが
多かったように思いましたが、本書はそうした感じはなく、純粋に物語として
楽しめました。
本シリーズの締めくくり、つまり最終作は、やはり亜由美が大学を卒業して結婚する
時に起こる事件なんだろうなあ。でも最後に結婚まで至らずに終わりそうなのを
想像できてしまうのが、赤川作品かつ本シリーズの特徴でしょうか(笑
死んだはずの妹が上京し、故郷から大金が盗まれた!?
姉の早苗を訪ねて上京したとも子は、土地勘なく困っていた。
そこへ偶然通りがかった亜由美に案内してもらうことに。
しかし、出会えた早苗はとも子を見て驚いた。
故郷の竜太から、とも子は死んだと知らされていたからだ。
なぜかそんな嘘をついた竜太も上京し、同時に故郷の村役場から2000万円が盗まれ——。
表題作ほか「花嫁たちのメロドラマ」収録。
花嫁シリーズも長寿シリーズですねえ。
亜由美の恋人・谷川は本書でも姿をみせず。今大学は大変だしなあ(時期が違いますね)。
表題作の「迷路をめぐる」って、どういう意味なんでしょうか?
主人公の片桐とも子が、田舎の村から東京という大都会に出てきて、最初に道に
迷ってますが、これも含め、とも子の本作で描かれる人生の過程を指しているのかな?
早苗・とも子姉妹もいいですが、亜由美の同級生である美月も良い!
亜由美の影は少し薄いかもしれません。
「花嫁たちのメロドラマ」はいくつかのショートショートに近い作品群を
1つにまとめたかのようなお話。最近の花嫁シリーズの中では、かなり楽しめました。
拳銃をぶっ放すシーンがここかしこに登場し、亜由美ほか狙われまくるのですが、
白クマ組や黒クマ組の争いがコメディのようで、危機感がまるで伝わりません(笑
一方で文香と母親の麻美が経験した自然災害や、麻美の病院で出会う「昔なじみ」。
息子と妻を奪われた久保田啓一。記憶を失ってしまった久保田悠と早紀の物語。
悲しい結末を迎えるものが多いのですが、イッキ読みしてしまいました。
ここ最近の同シリーズは、赤川先生の危機意識みたいなものが強く出ていたものが
多かったように思いましたが、本書はそうした感じはなく、純粋に物語として
楽しめました。
本シリーズの締めくくり、つまり最終作は、やはり亜由美が大学を卒業して結婚する
時に起こる事件なんだろうなあ。でも最後に結婚まで至らずに終わりそうなのを
想像できてしまうのが、赤川作品かつ本シリーズの特徴でしょうか(笑
三毛猫ホームズの裁きの日 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
片山たちは、観光で訪れた岬の突端で、
目の前で起きた一家心中から浜中美咲という少女を助け出す。
しかし美咲は、「私たち一家を死なせた人たちに仕返しする」と書き置きを残し、
行方をくらましてしまう。
美咲の父は、勤務先の不正を告発し、裏切り者として報復を受けていたのだ。
そんな中、美咲の父を追い込んだ上司・室田の不倫相手が殺され、室田が逃亡を始める……。
国民的ミステリーの第53弾、待望の文庫化!
シリーズもはや53弾とは・・・長寿という言葉だけでは言い表せませんね。
前々からも書いていますが、赤川先生のシリーズで、位置づけが大きく変わっているのは
花嫁シリーズと、この三毛猫ホームズシリーズでしょう。
両者とも、明らかに現代社会の問題を意識して書かれています。
(あくまで私見ですが。)
今回も解説部分に、カッパノベルズ版の「著者のことば」が引用されています。
ー今回の物語のきっかけになったのは、NHKのドキュメンタリー<事件の涙>である。
(中略)内部告発を勤め先への裏切り行為とみなす風土は、日本に深く根を張っている。
ここで、片山やホームズたちは企業のモラルだけでなく、
私たち日本人にとって、「正義」とは何なのかを問いかけているのだ。-
赤川先生は作品を通して、こうした社会の問題に目を向けてほしい、ともすべれば、
本作品の解決にように、一筋の光明がみえるようになってほしいと思っておられるの
かもしれません。
ところで本作では、ホームズがそこまで活躍(?)していない印象。
もちろんポイントはしっかり抑えてます、鳴き方で片山らにわからせます(笑)
そして、これも何度も書いてますが、登場する女性達はとにかく強い。
いや、最初は死体をみて気を失ってしまったのですが、須藤克代、川崎ちづる、佐川睦・・・
最後は彼女達に追いかけられる片山刑事で終幕という、いつもの日常なのが良いですね。
片山を評して「あったかい感じの人」というのは言い得て妙でしょう。
ちなみに犯人というか、真犯人や謎の女性は全然わかりませんでした(苦笑)
最近長編が多いので、ぜひ短編集をまたお願いしたいですね。
片山たちは、観光で訪れた岬の突端で、
目の前で起きた一家心中から浜中美咲という少女を助け出す。
しかし美咲は、「私たち一家を死なせた人たちに仕返しする」と書き置きを残し、
行方をくらましてしまう。
美咲の父は、勤務先の不正を告発し、裏切り者として報復を受けていたのだ。
そんな中、美咲の父を追い込んだ上司・室田の不倫相手が殺され、室田が逃亡を始める……。
国民的ミステリーの第53弾、待望の文庫化!
シリーズもはや53弾とは・・・長寿という言葉だけでは言い表せませんね。
前々からも書いていますが、赤川先生のシリーズで、位置づけが大きく変わっているのは
花嫁シリーズと、この三毛猫ホームズシリーズでしょう。
両者とも、明らかに現代社会の問題を意識して書かれています。
(あくまで私見ですが。)
今回も解説部分に、カッパノベルズ版の「著者のことば」が引用されています。
ー今回の物語のきっかけになったのは、NHKのドキュメンタリー<事件の涙>である。
(中略)内部告発を勤め先への裏切り行為とみなす風土は、日本に深く根を張っている。
ここで、片山やホームズたちは企業のモラルだけでなく、
私たち日本人にとって、「正義」とは何なのかを問いかけているのだ。-
赤川先生は作品を通して、こうした社会の問題に目を向けてほしい、ともすべれば、
本作品の解決にように、一筋の光明がみえるようになってほしいと思っておられるの
かもしれません。
ところで本作では、ホームズがそこまで活躍(?)していない印象。
もちろんポイントはしっかり抑えてます、鳴き方で片山らにわからせます(笑)
そして、これも何度も書いてますが、登場する女性達はとにかく強い。
いや、最初は死体をみて気を失ってしまったのですが、須藤克代、川崎ちづる、佐川睦・・・
最後は彼女達に追いかけられる片山刑事で終幕という、いつもの日常なのが良いですね。
片山を評して「あったかい感じの人」というのは言い得て妙でしょう。
ちなみに犯人というか、真犯人や謎の女性は全然わかりませんでした(苦笑)
最近長編が多いので、ぜひ短編集をまたお願いしたいですね。
キネマの天使-レンズの奥の殺人者 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
東風亜由子、32歳、気鋭の映画スクリプター、もとい、正木監督の雑用係。
強烈な個性を持つ役者やスタッフに振り回されつつ、新作映画の撮影も佳境を迎え…たところで、
スタントマンが殺された!昔は映画監督になりたかった。そう語っていた著者が、
映画への愛と知識を惜しみなく込めた、魅惑の新シリーズ第1弾!
以下、ややネタバレ。
赤川次郎先生の新シリーズです。
いやあ、すでにいくつものシリーズをお持ちであるにもかかわらず、
こうして新たな分野を開拓していくというのはすごいです。
今回の主人公は映画スクリプターという、普段あまり聞き慣れない職業です。
解説等にもあるように、赤川先生ご自身がかつて映画監督になりたかったという事から、
本作は、事件よりも、映画撮影・制作に重点が置かれているように感じます。
特に主人公の東風亜由子は、赤川作品王道の強い女性で、大半の事にも動じず、
しかもお人好し。そしてとんでもなく度胸があります。
ただ、個人的には「探偵役」ではないなあと感じました。
最後はなんか、ここ数年で表面化している芸能事務所の問題と密接に関係づけられている
結末で、大団円とはならず。実行犯は捕まりましたが、
真犯人(という言い方が妥当か微妙ですが)は特に制裁も受けていません。
ただ、亜由子と倉田刑事のコンビで行くのかと思いきや、最後にあっと驚く、
特に亜由子にとってはちょっとがっかり?する結末が、なんと2回も描かれます(笑
幽霊シリーズ、花嫁シリーズとは別のバディでいくのか、それとも
亜由子と正木悠介監督コンビで本シリーズは続くのか、続編で新たなパートナーは
見つかるのでしょうか?
東風亜由子、32歳、気鋭の映画スクリプター、もとい、正木監督の雑用係。
強烈な個性を持つ役者やスタッフに振り回されつつ、新作映画の撮影も佳境を迎え…たところで、
スタントマンが殺された!昔は映画監督になりたかった。そう語っていた著者が、
映画への愛と知識を惜しみなく込めた、魅惑の新シリーズ第1弾!
以下、ややネタバレ。
赤川次郎先生の新シリーズです。
いやあ、すでにいくつものシリーズをお持ちであるにもかかわらず、
こうして新たな分野を開拓していくというのはすごいです。
今回の主人公は映画スクリプターという、普段あまり聞き慣れない職業です。
解説等にもあるように、赤川先生ご自身がかつて映画監督になりたかったという事から、
本作は、事件よりも、映画撮影・制作に重点が置かれているように感じます。
特に主人公の東風亜由子は、赤川作品王道の強い女性で、大半の事にも動じず、
しかもお人好し。そしてとんでもなく度胸があります。
ただ、個人的には「探偵役」ではないなあと感じました。
最後はなんか、ここ数年で表面化している芸能事務所の問題と密接に関係づけられている
結末で、大団円とはならず。実行犯は捕まりましたが、
真犯人(という言い方が妥当か微妙ですが)は特に制裁も受けていません。
ただ、亜由子と倉田刑事のコンビで行くのかと思いきや、最後にあっと驚く、
特に亜由子にとってはちょっとがっかり?する結末が、なんと2回も描かれます(笑
幽霊シリーズ、花嫁シリーズとは別のバディでいくのか、それとも
亜由子と正木悠介監督コンビで本シリーズは続くのか、続編で新たなパートナーは
見つかるのでしょうか?
忘れられた花嫁 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
結婚式直前に花嫁が失踪。控え室を片付けるため、アルバイトの明子が部屋へ向かうと、
そこには、花嫁が着るはずだったウエディングドレスを着た、見知らぬ女性の死体が。
翌日には、式場の主任の光子が何者かに刺され、帰らぬ人となってしまう。
次々と起こる事件に関係はあるのか?
なぜか調査を任されることになった女子大生明子が、事件の真相に迫る!
新年明けましておめでとうございます。
本年も拙ブログをよろしくお願い申し上げます。
さて、やはり首都圏(1都3県)に緊急事態宣言発出とのニュースが出ていますが、
当然というか、この状況を打開しなければいけませんから。
とはいえ、さっさと特措法を改正して、前年度比売上の7割保証とか、そのくらいを
国がしっかりやらないと、閉店倒産で大変な事にもなりますし。
いずれにせよ、今年もそこまで変わらない年になりそうです。
本年一作目は、今年読んだまさにホヤホヤの一冊。
現在まで続く「花嫁シリーズ」の第2作で、その後探偵役を務める塚川亜由美ではなく、
同じ女子大学生でも、合気道を嗜む永井明子が主人公。本作しか彼女は登場しませんので、
かなりレア作品です。
後に彼女の設定も(大学講師と恋仲)も塚川亜由美が取り込みますから、
徐々に徐々に一体化が図られたのかもしれませんね。
というか、かなり似ている主人公なので、同シリーズ内で描き分けは難しいだろうなあ。
しかし、何か久しぶりに「花嫁シリーズ」を楽しめた感じがしました。
そこかしこに出てくる、赤川さんのちょっとした言い回しが良いんですよ。
物語冒頭にはそうした言い回し、良く出てくるのですが、本作はかなりそれが
ちりばめられていて、ある種のクッションになっていて、実にいい。
主人公の明子は性格は亜由美より短気で、即座に行動に出るタイプです。
そして、本作では死にそうな目に(本当に!)何度も遭遇しつつも、猪突猛進。
母親の啓子も若干トボけた感じですが、最後の台詞でそれは親譲りであることもわかります(笑
彼女の勤務先の結婚式会場の社長がまた良い味出してます。
名前、苗字すら全く出てこないにも関わらず、充分にメインキャラクターです。
謎解き部分はもう少し丁寧であって欲しかったなあと思いますが、
最初誰だか分からない女性が、貸衣装のウエディングドレスを着て、
結婚式場で亡くなっていたり、明子の上司にあたる人物が突然辞表を提出したり・・・
物語序盤の掴みは最高です。
現時点では永井明子にとって、最初で最後の事件ですが、
可能であれば、奇跡的に復活して欲しいと思います。
結婚式直前に花嫁が失踪。控え室を片付けるため、アルバイトの明子が部屋へ向かうと、
そこには、花嫁が着るはずだったウエディングドレスを着た、見知らぬ女性の死体が。
翌日には、式場の主任の光子が何者かに刺され、帰らぬ人となってしまう。
次々と起こる事件に関係はあるのか?
なぜか調査を任されることになった女子大生明子が、事件の真相に迫る!
新年明けましておめでとうございます。
本年も拙ブログをよろしくお願い申し上げます。
さて、やはり首都圏(1都3県)に緊急事態宣言発出とのニュースが出ていますが、
当然というか、この状況を打開しなければいけませんから。
とはいえ、さっさと特措法を改正して、前年度比売上の7割保証とか、そのくらいを
国がしっかりやらないと、閉店倒産で大変な事にもなりますし。
いずれにせよ、今年もそこまで変わらない年になりそうです。
本年一作目は、今年読んだまさにホヤホヤの一冊。
現在まで続く「花嫁シリーズ」の第2作で、その後探偵役を務める塚川亜由美ではなく、
同じ女子大学生でも、合気道を嗜む永井明子が主人公。本作しか彼女は登場しませんので、
かなりレア作品です。
後に彼女の設定も(大学講師と恋仲)も塚川亜由美が取り込みますから、
徐々に徐々に一体化が図られたのかもしれませんね。
というか、かなり似ている主人公なので、同シリーズ内で描き分けは難しいだろうなあ。
しかし、何か久しぶりに「花嫁シリーズ」を楽しめた感じがしました。
そこかしこに出てくる、赤川さんのちょっとした言い回しが良いんですよ。
物語冒頭にはそうした言い回し、良く出てくるのですが、本作はかなりそれが
ちりばめられていて、ある種のクッションになっていて、実にいい。
主人公の明子は性格は亜由美より短気で、即座に行動に出るタイプです。
そして、本作では死にそうな目に(本当に!)何度も遭遇しつつも、猪突猛進。
母親の啓子も若干トボけた感じですが、最後の台詞でそれは親譲りであることもわかります(笑
彼女の勤務先の結婚式会場の社長がまた良い味出してます。
名前、苗字すら全く出てこないにも関わらず、充分にメインキャラクターです。
謎解き部分はもう少し丁寧であって欲しかったなあと思いますが、
最初誰だか分からない女性が、貸衣装のウエディングドレスを着て、
結婚式場で亡くなっていたり、明子の上司にあたる人物が突然辞表を提出したり・・・
物語序盤の掴みは最高です。
現時点では永井明子にとって、最初で最後の事件ですが、
可能であれば、奇跡的に復活して欲しいと思います。
クリスマス・イヴ [赤川次郎]
毎年クリスマス・イヴにはそれにちなんだミステリを紹介していますが、
昨日すっかり忘れていて、本日更新。
で、もうさすがに自分の抽出がなくなりつつあります・・・
というわけで、今回はそのものズバリのタイトル。
赤川次郎先生の『クリスマス・イヴ』
以下は、Amazonさんの紹介ページから。
クリスマス・イヴの夜、恋人たちで賑わうSホテルが企画したイベント、「ミステリー・ナイト」。
ホテルを舞台に推理劇が演じられ、宿泊客がその謎を解いていくというゲームだ。
推理劇に出演する俳優、人目を避けてイヴの夜を過ごす大女優、ホテルの従業員、
婚約中の恋人たち…。ホテルに集う人々の運命が複雑に絡み合い、
ゲームは思わぬ方向へ転がりはじめた!聖なる夜に繰り広げられる、ロマンチック・サスペンス。
本日はクリスマス。これまでご紹介したクリスマスにまつわる
ミステリーも含め、楽しんでみてはいかがでしょうか。
昨日すっかり忘れていて、本日更新。
で、もうさすがに自分の抽出がなくなりつつあります・・・
というわけで、今回はそのものズバリのタイトル。
赤川次郎先生の『クリスマス・イヴ』
以下は、Amazonさんの紹介ページから。
クリスマス・イヴの夜、恋人たちで賑わうSホテルが企画したイベント、「ミステリー・ナイト」。
ホテルを舞台に推理劇が演じられ、宿泊客がその謎を解いていくというゲームだ。
推理劇に出演する俳優、人目を避けてイヴの夜を過ごす大女優、ホテルの従業員、
婚約中の恋人たち…。ホテルに集う人々の運命が複雑に絡み合い、
ゲームは思わぬ方向へ転がりはじめた!聖なる夜に繰り広げられる、ロマンチック・サスペンス。
本日はクリスマス。これまでご紹介したクリスマスにまつわる
ミステリーも含め、楽しんでみてはいかがでしょうか。
卒業旅行 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
四年前の約束通り、卒業旅行の打ち合わせに集まった四人。
父親たちが会社の同僚で同じ社宅に住み、K女子大に揃って入学した親友同士だ。
しかしある事件がきっかけで、それぞれの運命がわかれることに。
加奈子と友江は今も大学へ通っているが、かおると由紀子は中退し家計を助けるために働いている。
久々に旧交をあたためる四人だったが、再会が思わぬ悲劇を引き起こす。
赤川作品が続きます。それもノンシリーズ。
以下、ややネタバレ。
タイトルにある「卒業旅行」は、本当に最後の最後に登場するだけで、
本書はこの「卒業旅行」に至るまでの、加奈子、由紀子、友江、かおる4人の4年間と、
それぞれの家族の4年間が語られていきます。
現在と過去がそれぞれ交錯しつつ物語は進みます。
本書は、『夜に迷って』以上に、どういう結末を迎えるのか、どういう物語が描かれるのかが
掴みにくい作品に感じました。
すでに、4人を引き裂くことになった出来事は過去のことなのです。
しかし、読み進めて行く上で、友江の「彼氏」的立場である奥村の登場で、
やや現在の物語へも変化が生じていくことに・・・
とはいえ、本書最大の見せ場は、最初から描かれていたある人物が
実は亡くなっていたということでしょう。しかも、その人物は4人だけでなく、
彼女たちの家族をも救っていたのです。
この人物の想いは物語では語られません。しかし、彼女含めた家族は
この人物のおかげで前を向いて生きていくことが出来るようになったのです。
赤川作品で幽霊が登場する話はたくさんありますが
(『幽霊はテニスがお好き』『怪談人恋坂』『三毛猫ホームズの降霊騒動』などなど)、
かなり初めからオープンなのが多いのですよね(笑
なので、本書はかなり意外な所を突かれました。
ノンシリーズはやっぱり良い。一気読み確実です。
四年前の約束通り、卒業旅行の打ち合わせに集まった四人。
父親たちが会社の同僚で同じ社宅に住み、K女子大に揃って入学した親友同士だ。
しかしある事件がきっかけで、それぞれの運命がわかれることに。
加奈子と友江は今も大学へ通っているが、かおると由紀子は中退し家計を助けるために働いている。
久々に旧交をあたためる四人だったが、再会が思わぬ悲劇を引き起こす。
赤川作品が続きます。それもノンシリーズ。
以下、ややネタバレ。
タイトルにある「卒業旅行」は、本当に最後の最後に登場するだけで、
本書はこの「卒業旅行」に至るまでの、加奈子、由紀子、友江、かおる4人の4年間と、
それぞれの家族の4年間が語られていきます。
現在と過去がそれぞれ交錯しつつ物語は進みます。
本書は、『夜に迷って』以上に、どういう結末を迎えるのか、どういう物語が描かれるのかが
掴みにくい作品に感じました。
すでに、4人を引き裂くことになった出来事は過去のことなのです。
しかし、読み進めて行く上で、友江の「彼氏」的立場である奥村の登場で、
やや現在の物語へも変化が生じていくことに・・・
とはいえ、本書最大の見せ場は、最初から描かれていたある人物が
実は亡くなっていたということでしょう。しかも、その人物は4人だけでなく、
彼女たちの家族をも救っていたのです。
この人物の想いは物語では語られません。しかし、彼女含めた家族は
この人物のおかげで前を向いて生きていくことが出来るようになったのです。
赤川作品で幽霊が登場する話はたくさんありますが
(『幽霊はテニスがお好き』『怪談人恋坂』『三毛猫ホームズの降霊騒動』などなど)、
かなり初めからオープンなのが多いのですよね(笑
なので、本書はかなり意外な所を突かれました。
ノンシリーズはやっぱり良い。一気読み確実です。
夜に迷って/夜の終りに [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
可愛い中学生の娘と次期社長の夫とともに、社宅で暮らす沢柳智春にとって、
たった一度の浮気は気の迷いにすぎなかった。過ちは水に流して幸福な家庭の主婦に戻り、
義父の隠し子の幼稚園探しや義弟や実弟のトラブル解決に暗躍し、実家の父母の悩みに向き合いながら
家族を守ろうとする智春。しかし、いつの間にか、悪意と嫉妬に染まった噂が広まっていく。
家族のしがらみにとらわれ、追いつめられていく緊迫のサスペンス。
高校生の沢柳有貴は、3年前の殺人事件を機に記憶を失った母と二人暮らし。父は別居して、
若い恋人に夢中だ。ある日、殺人事件の犯人の夫が何者かに殺された。
さらに、有貴が通り魔に狙われ、父の会社では盗聴器が見つかり、
一家の経営する会社に窮地が訪れる。"家"を守るために秘密を抱えた"家族"の行く末は。
私が読んだのは新装版ですが、元は光文社から刊行されていて、
前者の『夜に迷って』が1997年、『夜の終りに』が2000年と、物語の時間軸と同様、3年の月日が空いています。
以下、ややネタバレ。
赤川作品はこうした続編は描かれていて、
『招かれた女』と『裁かれた女』。こちらは15年もの歳月が物語上流れています。
『魔女たちのたそがれ』と『魔女たちの長い眠り』、私オススメの2作品ですが、
『たそがれ』で終わっていてもしっくりくるところですが、
『長い眠り』のラスト少し不気味な感じを残したところも良いですね。
『殺人よ、こんにちは』と『殺人よ、さようなら』。
昔読みました。確か海辺の別荘か何かで起きる事件だったような・・・
『ふたり』と『いもうと』。いずれも未読という申し訳ありません。
他にもあると思いますが、ひとまずこのあたりで(他にあればお教えください)。
本作品、特に『夜に迷って』は本当に智春やその家族の日常が描かれていき、
そこにちょっとした(ではないものもありますが)「非日常」(不倫や再就職、婚約etc・・・)
が介入することで、徐々に幸せな日常が変わっていく様が、実に見事に描かれていきます。
最後に殺人事件は起こりますが、それまでは本当に何も起こりません。
しかし読者には智春が追い詰められていく様や、その関係する人たちが変化していることが
わかり、果たしてどういう結末で締めくくられるのか?疑問に思うでしょう。
後編にあたる『夜の終りに』の方がよりミステリでしょうか。
しかし、ある意味前作の時間を再び動かすこととなる奈良の死が通り魔殺人であった
というのは皮肉が効いています。
奈良敏子の出所、久保田と呼ばれる人物の庇護など様々な変化が起こる中、
置かれた環境によって、人の心も変化してしまったというのが本作品の核でしょうか。
ただ、智春の祖父母や弟(浩士)の方がそこまで深く描かれなかったのは少し残念ですね。
まあそれは求めすぎかもしれません。
しかし、だいたい赤川作品は読んでいるのですが、まだこういうのもあったのか(苦笑)
最近のシリーズもの(特に三毛猫ホームズや花嫁シリーズ)は、赤川先生の
現代社会への危機感や危機意識みたいなものが、如実に表れているのが多いように感じます。
拙ブログでも何度か過去作品のような作風が読みたいと書いたことがありますが、
こういうノンシリーズを読むと、余計にそういう思いが強くなりますね。
可愛い中学生の娘と次期社長の夫とともに、社宅で暮らす沢柳智春にとって、
たった一度の浮気は気の迷いにすぎなかった。過ちは水に流して幸福な家庭の主婦に戻り、
義父の隠し子の幼稚園探しや義弟や実弟のトラブル解決に暗躍し、実家の父母の悩みに向き合いながら
家族を守ろうとする智春。しかし、いつの間にか、悪意と嫉妬に染まった噂が広まっていく。
家族のしがらみにとらわれ、追いつめられていく緊迫のサスペンス。
高校生の沢柳有貴は、3年前の殺人事件を機に記憶を失った母と二人暮らし。父は別居して、
若い恋人に夢中だ。ある日、殺人事件の犯人の夫が何者かに殺された。
さらに、有貴が通り魔に狙われ、父の会社では盗聴器が見つかり、
一家の経営する会社に窮地が訪れる。"家"を守るために秘密を抱えた"家族"の行く末は。
私が読んだのは新装版ですが、元は光文社から刊行されていて、
前者の『夜に迷って』が1997年、『夜の終りに』が2000年と、物語の時間軸と同様、3年の月日が空いています。
以下、ややネタバレ。
赤川作品はこうした続編は描かれていて、
『招かれた女』と『裁かれた女』。こちらは15年もの歳月が物語上流れています。
『魔女たちのたそがれ』と『魔女たちの長い眠り』、私オススメの2作品ですが、
『たそがれ』で終わっていてもしっくりくるところですが、
『長い眠り』のラスト少し不気味な感じを残したところも良いですね。
『殺人よ、こんにちは』と『殺人よ、さようなら』。
昔読みました。確か海辺の別荘か何かで起きる事件だったような・・・
『ふたり』と『いもうと』。いずれも未読という申し訳ありません。
他にもあると思いますが、ひとまずこのあたりで(他にあればお教えください)。
本作品、特に『夜に迷って』は本当に智春やその家族の日常が描かれていき、
そこにちょっとした(ではないものもありますが)「非日常」(不倫や再就職、婚約etc・・・)
が介入することで、徐々に幸せな日常が変わっていく様が、実に見事に描かれていきます。
最後に殺人事件は起こりますが、それまでは本当に何も起こりません。
しかし読者には智春が追い詰められていく様や、その関係する人たちが変化していることが
わかり、果たしてどういう結末で締めくくられるのか?疑問に思うでしょう。
後編にあたる『夜の終りに』の方がよりミステリでしょうか。
しかし、ある意味前作の時間を再び動かすこととなる奈良の死が通り魔殺人であった
というのは皮肉が効いています。
奈良敏子の出所、久保田と呼ばれる人物の庇護など様々な変化が起こる中、
置かれた環境によって、人の心も変化してしまったというのが本作品の核でしょうか。
ただ、智春の祖父母や弟(浩士)の方がそこまで深く描かれなかったのは少し残念ですね。
まあそれは求めすぎかもしれません。
しかし、だいたい赤川作品は読んでいるのですが、まだこういうのもあったのか(苦笑)
最近のシリーズもの(特に三毛猫ホームズや花嫁シリーズ)は、赤川先生の
現代社会への危機感や危機意識みたいなものが、如実に表れているのが多いように感じます。
拙ブログでも何度か過去作品のような作風が読みたいと書いたことがありますが、
こういうノンシリーズを読むと、余計にそういう思いが強くなりますね。
台風の目の少女たち [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
9月。台風が近づいてきている中、山間の町に住む高校2年生の須川安奈は、
母とともに体育館へ避難する。そこでは、東京の大学へ進学した恋人の章が謎の美女と一緒にいたり、
母が誰かと駆け落ちを計画していたり、父が部下の女性を伴って帰ってきたりと、
トラブルが続出。さらには殺人事件まで発生してしまい―。
安奈たちは、無事に嵐を切り抜けられるのか!?避難所を舞台に関係者たちの思惑が交錯する、
一夜限りの長編サスペンス。
辻真先先生が解説を書かれているのですが、物語の校正技術にグランドホテル形式
というのがあるようです。
大勢の登場人物を限定された場所に集めた作者が、そこへなにかの一石を投ずる。
石の正体は人間同士の愛憎であったり、火災であったりします」とのことで、
本物語では、それが台風であると。
しかし、赤川作品は、本物語に限ったことではありませんが、関係者の人間関係だけで
見事に物語を構成してしまいますから、辻さんの指摘の、いわば愛憎がすでにある状態に、
台風という、しかも近年に非常に多い、○○年に一度という非日常が放り込まれている
のです。
角川文庫では、これに近似しているのは『夜』でしょう。
あれもパニックホラーないしパニックミステリの部類に入ると思いますが、
これを読んでいて、まず真っ先に思い出しました。
台風によって暴かれる秘密も本書では語られていて、元々の愛憎劇(安奈と雅美、弥生と??)
にもさらに拍車がかかり・・・
松田拓郎の父親があっけなく死んでしまうシーンは、自然災害の恐ろしさを改めて知ると
ともに、拓郎がああなってしまうのも致し方ないと同情してしまいました。
ところで、本書の主役は一応須川安奈なのでしょうが、赤川作品常連からみると、
どう考えても琴平雅美が主人公に見えてしまう(苦笑
彼女の言動は(赤川作品によくある)突拍子もないものにみえて、上手く周りをまとめていく
という凄さがあるのです。
ラストまで読んでも、彼女への深掘りは実はなく(彼女自身が少し過去を話したりしますが)
その点はもう少し掘り下げて欲しかったなあと思うところ。
最後、生き延びた人たちが描かれ、それぞれの想いも語られたりし、一応ハッピーエンド
的な終幕となります。
しかし、赤川さんには、この後、自然災害に遭った人々の復興を描いてほしいと思いました。
日本の様々な所で行われている「復興」。これを現実とフィクション交えて、
描いてほしいですね。
9月。台風が近づいてきている中、山間の町に住む高校2年生の須川安奈は、
母とともに体育館へ避難する。そこでは、東京の大学へ進学した恋人の章が謎の美女と一緒にいたり、
母が誰かと駆け落ちを計画していたり、父が部下の女性を伴って帰ってきたりと、
トラブルが続出。さらには殺人事件まで発生してしまい―。
安奈たちは、無事に嵐を切り抜けられるのか!?避難所を舞台に関係者たちの思惑が交錯する、
一夜限りの長編サスペンス。
辻真先先生が解説を書かれているのですが、物語の校正技術にグランドホテル形式
というのがあるようです。
大勢の登場人物を限定された場所に集めた作者が、そこへなにかの一石を投ずる。
石の正体は人間同士の愛憎であったり、火災であったりします」とのことで、
本物語では、それが台風であると。
しかし、赤川作品は、本物語に限ったことではありませんが、関係者の人間関係だけで
見事に物語を構成してしまいますから、辻さんの指摘の、いわば愛憎がすでにある状態に、
台風という、しかも近年に非常に多い、○○年に一度という非日常が放り込まれている
のです。
角川文庫では、これに近似しているのは『夜』でしょう。
あれもパニックホラーないしパニックミステリの部類に入ると思いますが、
これを読んでいて、まず真っ先に思い出しました。
台風によって暴かれる秘密も本書では語られていて、元々の愛憎劇(安奈と雅美、弥生と??)
にもさらに拍車がかかり・・・
松田拓郎の父親があっけなく死んでしまうシーンは、自然災害の恐ろしさを改めて知ると
ともに、拓郎がああなってしまうのも致し方ないと同情してしまいました。
ところで、本書の主役は一応須川安奈なのでしょうが、赤川作品常連からみると、
どう考えても琴平雅美が主人公に見えてしまう(苦笑
彼女の言動は(赤川作品によくある)突拍子もないものにみえて、上手く周りをまとめていく
という凄さがあるのです。
ラストまで読んでも、彼女への深掘りは実はなく(彼女自身が少し過去を話したりしますが)
その点はもう少し掘り下げて欲しかったなあと思うところ。
最後、生き延びた人たちが描かれ、それぞれの想いも語られたりし、一応ハッピーエンド
的な終幕となります。
しかし、赤川さんには、この後、自然災害に遭った人々の復興を描いてほしいと思いました。
日本の様々な所で行われている「復興」。これを現実とフィクション交えて、
描いてほしいですね。
ひとり夢見る [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
女子高生ひとみの母、浅倉しのぶはかつて女優だった。人気絶頂の二十七歳で突然の引退。
その七か月後、ひとみが生まれたが、父親はいない。十七歳のある日、母にパトロンがいると知り、
ショックのあまり夜の街に飛び出した。地下通路の一角で眠り込み…
目覚めると、そこは十八年前の映画スタジオだった。監督にスカウトされ、
若き日の母と共演することに!母と娘の不思議な縁の物語。
またまた更新が少し滞りました。
本書もだいぶ前に購入したもの。
以下、ややネタバレ。
それにしても、赤川先生の文体は読みやすい。そして改めて驚き。
冒頭にある「十七年間付き合ってきた母のことだ。」なんて文章をさらりと書くんですよね。
完全に掴みでやられます。主人公がその母の娘・浅倉ひとみだとしても、中々こういう文章
書けないよなあ。
ひとみは自分の母親が突然女優業を辞め、自らが「あの浅倉しのぶの娘」と言われるのにも
嫌気が指し、演劇部(の文化祭催し)を辞退します。
さらに、母の店がいつの間にか無くなっていて、母と男の人が出てくる場面を目撃し・・・
気がつくと、彼女は18年前の過去、しかも自分が生まれた時、さらに彼女の母親が
まだ女優をしていて、引退した年。しかも母親主演の映画に突然出演することになり・・・
自分の母親の性格を改めて認識したり、母親と男を取り合うことになったり(笑)
一方で、同じ年のマチ子の「家族」の非常に辛い場面をみたり、肺がんでこのあとすぐ亡くなる
多田と出会ったり。過去ならではのエピソードもあります。
過去に戻ってしまったひとみは、自分の父親は誰なのかも一方で気にしていて、
その候補は案外と多く。ところが、この点はさすが赤川先生。
父親どころか、母親までがというドンデン返しをもってくるとは(笑
本書で一番幸せに、人生が変わったのは、担任の谷中ミネ子先生ではないでしょうか。
最後の文化祭の場面は素晴らしいの一言。
女子高生ひとみの母、浅倉しのぶはかつて女優だった。人気絶頂の二十七歳で突然の引退。
その七か月後、ひとみが生まれたが、父親はいない。十七歳のある日、母にパトロンがいると知り、
ショックのあまり夜の街に飛び出した。地下通路の一角で眠り込み…
目覚めると、そこは十八年前の映画スタジオだった。監督にスカウトされ、
若き日の母と共演することに!母と娘の不思議な縁の物語。
またまた更新が少し滞りました。
本書もだいぶ前に購入したもの。
以下、ややネタバレ。
それにしても、赤川先生の文体は読みやすい。そして改めて驚き。
冒頭にある「十七年間付き合ってきた母のことだ。」なんて文章をさらりと書くんですよね。
完全に掴みでやられます。主人公がその母の娘・浅倉ひとみだとしても、中々こういう文章
書けないよなあ。
ひとみは自分の母親が突然女優業を辞め、自らが「あの浅倉しのぶの娘」と言われるのにも
嫌気が指し、演劇部(の文化祭催し)を辞退します。
さらに、母の店がいつの間にか無くなっていて、母と男の人が出てくる場面を目撃し・・・
気がつくと、彼女は18年前の過去、しかも自分が生まれた時、さらに彼女の母親が
まだ女優をしていて、引退した年。しかも母親主演の映画に突然出演することになり・・・
自分の母親の性格を改めて認識したり、母親と男を取り合うことになったり(笑)
一方で、同じ年のマチ子の「家族」の非常に辛い場面をみたり、肺がんでこのあとすぐ亡くなる
多田と出会ったり。過去ならではのエピソードもあります。
過去に戻ってしまったひとみは、自分の父親は誰なのかも一方で気にしていて、
その候補は案外と多く。ところが、この点はさすが赤川先生。
父親どころか、母親までがというドンデン返しをもってくるとは(笑
本書で一番幸せに、人生が変わったのは、担任の谷中ミネ子先生ではないでしょうか。
最後の文化祭の場面は素晴らしいの一言。
三毛猫ホームズの復活祭 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
高畠和人の母はオレオレ詐欺に引っかかり、さらにトラックにはねられて重体に―。
一方、片山と妹の晴美は、別のオレオレ詐欺を阻止したものの、金の受け渡し役が殺害されてしまう!
捜査過程で浮き上がってきた“K学院”の寄宿舎で暮らす少女・和美を訪ねるが…。
和美と犯人の関係とは?寄宿舎に集まった人々が事件の真相に迫る。
国民的大人気シリーズ第52弾!
52弾のテーマは、オレオレ詐欺。今では振り込め詐欺と統一されていますね。
この「復活祭」というタイトル、内容とあまり絡んでない気がしたのですが、
解説で、カッパノベルズ版著者のことばで、その意味がわかります。
「そこには、「いつか自分もトシをとる」という想像力のかけらもない。政治が国民に
平然と嘘をつくご時世だが、こんな時代だからこそ、「真実」と「真心」を大切にする、
ホームズや片山兄妹に活躍してもらわなくてはならない。「人間性の復活」の祈りを
込めて。
赤川先生の近著を全て読んでいるわけではありませんが、花嫁シリーズしかり、
本書三毛猫ホームズシリーズしかり、現代社会の問題と密接に関係するものが多いですね。
以前、先生が「伊集院とラジオ」とにゲスト出演された際にも、「表現の自由」に
ついて取り上げられていたと記憶しています。
それだけ、現在の日本社会が危機的状況と感じられているからこそ、
作品内で、その危険性や危機的状況を警鐘しつつも、
シリーズキャラクターは不変であるという、安心感を読者に与えてくれるのです。
一方、この「復活祭」という言葉は、本書では家族の復活の意味も含まれている
ように感じました。
松井明と和美、おばさん。西川郷子と寛治、竹本涼香と久美。
今回の事件がなければ、出会うことがなかった・話すことがなかった家族です。
そして、彼彼女たちを見守るホームズ。すでにホームズは全てを見通している
かのような佇まい!いや、昔からそうだった気もしますが・・・
個人的に社会問題や現代社会との関係は、確かに重要だと思うのですが、
一方で、初期の「怪談」「降霊騒動」、ヨーロッパシリーズ(「騎士道」「幽霊クラブ」)
短編集「びっくり箱」など、かつての作品群のような作風もまた是非とも読みたい!
高畠和人の母はオレオレ詐欺に引っかかり、さらにトラックにはねられて重体に―。
一方、片山と妹の晴美は、別のオレオレ詐欺を阻止したものの、金の受け渡し役が殺害されてしまう!
捜査過程で浮き上がってきた“K学院”の寄宿舎で暮らす少女・和美を訪ねるが…。
和美と犯人の関係とは?寄宿舎に集まった人々が事件の真相に迫る。
国民的大人気シリーズ第52弾!
52弾のテーマは、オレオレ詐欺。今では振り込め詐欺と統一されていますね。
この「復活祭」というタイトル、内容とあまり絡んでない気がしたのですが、
解説で、カッパノベルズ版著者のことばで、その意味がわかります。
「そこには、「いつか自分もトシをとる」という想像力のかけらもない。政治が国民に
平然と嘘をつくご時世だが、こんな時代だからこそ、「真実」と「真心」を大切にする、
ホームズや片山兄妹に活躍してもらわなくてはならない。「人間性の復活」の祈りを
込めて。
赤川先生の近著を全て読んでいるわけではありませんが、花嫁シリーズしかり、
本書三毛猫ホームズシリーズしかり、現代社会の問題と密接に関係するものが多いですね。
以前、先生が「伊集院とラジオ」とにゲスト出演された際にも、「表現の自由」に
ついて取り上げられていたと記憶しています。
それだけ、現在の日本社会が危機的状況と感じられているからこそ、
作品内で、その危険性や危機的状況を警鐘しつつも、
シリーズキャラクターは不変であるという、安心感を読者に与えてくれるのです。
一方、この「復活祭」という言葉は、本書では家族の復活の意味も含まれている
ように感じました。
松井明と和美、おばさん。西川郷子と寛治、竹本涼香と久美。
今回の事件がなければ、出会うことがなかった・話すことがなかった家族です。
そして、彼彼女たちを見守るホームズ。すでにホームズは全てを見通している
かのような佇まい!いや、昔からそうだった気もしますが・・・
個人的に社会問題や現代社会との関係は、確かに重要だと思うのですが、
一方で、初期の「怪談」「降霊騒動」、ヨーロッパシリーズ(「騎士道」「幽霊クラブ」)
短編集「びっくり箱」など、かつての作品群のような作風もまた是非とも読みたい!
花嫁をガードせよ! [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
女性警察官の西脇仁美は、命を狙われていた政治家の蔵本をかばい撃たれてしまう。
その現場に偶然通りがかった女子大生の塚川亜由美と愛犬ドン・ファンによって
一命をとりとめるが重傷を負ってしまい、それが原因で婚約破棄になりそう。
命がけで捕まえた犯人だが、取り調べ中に自殺をしてしまい―。
大人気シリーズ第31弾!(「花嫁は日曜日に走る」を併録)
花嫁シリーズもついに31作目とは。
赤川先生のシリーズはどれも息が長いですね。
ただ、個人的に「九号棟の仲間たち」や「1億円もらったら」など、
もう終了してしまったシリーズの方に好きなものがあったりするんですよね(苦笑
「1億円」は現代社会では、どういう描かれ方をするのか読んで見たいところです。
本作では珍しく亜由美の恋人である谷川准教授が登場。とはいっても冒頭だけなんですが。
表題作は政治への風刺。蔵本のような政治家が、今の日本にどのくらいいるでしょうか?
黒幕が具体的に描かれていないのと、ラストはこれからだ!的な感じで終わっているのが、
赤川先生らしい。今の日本は本作をハッピーエンドで描けないともしかしたら
感じているのかもしれません。
「花嫁は日曜日を走る」はオリンピックへの痛烈批判。
花嫁は主人公ではなく、途中から出てくる神西みどり、になるんでしょうか?
それにしても教員である松永の動機がすごい。
昨今の教員の不祥事ニュースから考えると、このくらいの教員はもしかしたらわんさか
居るのかもしれません。むろん真面目でまともな方々が大半でしょうが。
この場合ドン・ファンは吠えただけなので、特に罪には問われないんでしょう(笑
しかし、そろそろ原点回帰的なミステリ色の濃い花嫁シリーズも読みたいですね。
「紙細工の花嫁」、「迷子の花嫁」なんかも良かったです。
あと、表紙絵は前の方が良いです!
女性警察官の西脇仁美は、命を狙われていた政治家の蔵本をかばい撃たれてしまう。
その現場に偶然通りがかった女子大生の塚川亜由美と愛犬ドン・ファンによって
一命をとりとめるが重傷を負ってしまい、それが原因で婚約破棄になりそう。
命がけで捕まえた犯人だが、取り調べ中に自殺をしてしまい―。
大人気シリーズ第31弾!(「花嫁は日曜日に走る」を併録)
花嫁シリーズもついに31作目とは。
赤川先生のシリーズはどれも息が長いですね。
ただ、個人的に「九号棟の仲間たち」や「1億円もらったら」など、
もう終了してしまったシリーズの方に好きなものがあったりするんですよね(苦笑
「1億円」は現代社会では、どういう描かれ方をするのか読んで見たいところです。
本作では珍しく亜由美の恋人である谷川准教授が登場。とはいっても冒頭だけなんですが。
表題作は政治への風刺。蔵本のような政治家が、今の日本にどのくらいいるでしょうか?
黒幕が具体的に描かれていないのと、ラストはこれからだ!的な感じで終わっているのが、
赤川先生らしい。今の日本は本作をハッピーエンドで描けないともしかしたら
感じているのかもしれません。
「花嫁は日曜日を走る」はオリンピックへの痛烈批判。
花嫁は主人公ではなく、途中から出てくる神西みどり、になるんでしょうか?
それにしても教員である松永の動機がすごい。
昨今の教員の不祥事ニュースから考えると、このくらいの教員はもしかしたらわんさか
居るのかもしれません。むろん真面目でまともな方々が大半でしょうが。
この場合ドン・ファンは吠えただけなので、特に罪には問われないんでしょう(笑
しかし、そろそろ原点回帰的なミステリ色の濃い花嫁シリーズも読みたいですね。
「紙細工の花嫁」、「迷子の花嫁」なんかも良かったです。
あと、表紙絵は前の方が良いです!
迷子の眠り姫 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
体育祭に備えてクラス対抗リレーの練習に出かけた昼下がり、誰かに川に突き落とされ、
「あの世」に行きかけた高校一年生の笹倉里加。病院で目を覚ますとなぜか
不思議な力がそなわっていた!自分の背中を押した犯人の正体、家族や友達に迫る危機に、
不思議な力が味方する!?異色の青春ミステリー長篇。
少しの間でも「あの世」を見てしまったことで、何か不思議な力を
手に入れた、主人公の笹倉里加。
その能力とは、遠くにいる友人やその周囲の行動・会話を聞く事ができる場所に
居たりする、なんとなく幽体離脱に近い感じもありますね。
しかし、彼女を救ってくれた祖母から、能力のことを話さないよう言われていて、
彼女自身は、気になった、感じたという表現でぼやかしています。
彼女の周囲で(自分の家庭を含め)起こる様々な問題は、彼女が力を
手に入れる前から起きていたものでした。
その問題を力で知ることができることで、彼女なりにそれらをうまく解決に
導いていく、というのが大まかな流れです。
しかし、彼女の性格から考えると、おそらくそんな能力が無くても、
自分他人関係無く、問題を精一杯解決していこうとするでしょう。
この物語の核心は、彼女の能力にある訳ではありません。
話が進むにつれて、彼女と徹の関係、また親友との関係に変化が生じてくるのですが、
このあたりが赤川さんが描きたかったとこなのだろうと、勝手に思いました(笑)。
「私、特別な力をもってるなんてうぬぼれてたけど、親友の気持ちもわからなかった」と
いう台詞は、「恋心」という物語後半の核の中、彼女自身が言うことで
非常に深いものがあります。
家族が崩壊しようとしたり、麻薬の密売にかかわったり、赤川作品の主人公(女子高生)
たちは、本当に理不尽な境遇ですが、その中で強さや弱さも垣間見えているところが、
なんとなく読者の共感を得るのかもしれません。
体育祭に備えてクラス対抗リレーの練習に出かけた昼下がり、誰かに川に突き落とされ、
「あの世」に行きかけた高校一年生の笹倉里加。病院で目を覚ますとなぜか
不思議な力がそなわっていた!自分の背中を押した犯人の正体、家族や友達に迫る危機に、
不思議な力が味方する!?異色の青春ミステリー長篇。
少しの間でも「あの世」を見てしまったことで、何か不思議な力を
手に入れた、主人公の笹倉里加。
その能力とは、遠くにいる友人やその周囲の行動・会話を聞く事ができる場所に
居たりする、なんとなく幽体離脱に近い感じもありますね。
しかし、彼女を救ってくれた祖母から、能力のことを話さないよう言われていて、
彼女自身は、気になった、感じたという表現でぼやかしています。
彼女の周囲で(自分の家庭を含め)起こる様々な問題は、彼女が力を
手に入れる前から起きていたものでした。
その問題を力で知ることができることで、彼女なりにそれらをうまく解決に
導いていく、というのが大まかな流れです。
しかし、彼女の性格から考えると、おそらくそんな能力が無くても、
自分他人関係無く、問題を精一杯解決していこうとするでしょう。
この物語の核心は、彼女の能力にある訳ではありません。
話が進むにつれて、彼女と徹の関係、また親友との関係に変化が生じてくるのですが、
このあたりが赤川さんが描きたかったとこなのだろうと、勝手に思いました(笑)。
「私、特別な力をもってるなんてうぬぼれてたけど、親友の気持ちもわからなかった」と
いう台詞は、「恋心」という物語後半の核の中、彼女自身が言うことで
非常に深いものがあります。
家族が崩壊しようとしたり、麻薬の密売にかかわったり、赤川作品の主人公(女子高生)
たちは、本当に理不尽な境遇ですが、その中で強さや弱さも垣間見えているところが、
なんとなく読者の共感を得るのかもしれません。
夜会 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
川で溺れている男の子を助けた水泳世界大会金メダリストの沢井聡子。
そのお礼にと少年の母親に招かれ贅沢な夏休みをすごしていた。姉に早く戻るよう言われるが、
数日後に迫る男の子の誕生会までは居ることに。一方、友人の焼身自殺の真相を追う
高校生の佐山清美はあるパーティに参加することになった。
それは聡子が助けた少年の誕生会だった。二人が目撃した「夜会」の真実とは?
このところYoutubeサーフィンしていて、本をあまり読んでません(笑
本書も結構前に読了したもの。
以下、ややネタバレ。
この「夜会」、昔読んだ記憶があります。
特にクライマックスはよく覚えていて、さて何で読んだのだろう?と。
Amazonで調べると、本書は徳間書店からしか刊行されていないようで、
おそらくトクマノベルズを購入したんだと思います。
当時は文庫でなく、新書版も積極的に購入していたのです(笑)。
再読になるのですが、本書は内容(結末)的にはホラーに分類されるのだと思います。
ただ、それ以上に、突然有名人(主人公の沢井聡子は当時全然注目もされておらず、
無名だったのにもかかわらず、金メダルを取る快挙を成し遂げています。)に
なった主人公やその周辺に訪れた大きな変化が主題なんでしょう。
最後に、亡くなった間宮しのぶ(の幽霊?)から、「人生のピークは、一つだけじゃありませんよ」
と諭されたこともあり、考えを改めることができました。
しかし、唐突に変わってしまった環境で、自分や周囲も突然変わってしまうことへ
簡単に対応できる人はいないでしょう。沢井家は結果的には悪い方へ変わってしまったのです。
また奇妙な植物が敵(?黒幕)として登場するのは、次の文からその理由がわかります。
252頁「柳田も父も「聡子」から養分を吸い上げて生きてきたようなものだ-人の心の中にも、
あの植物は根を張っているのかもしれない。」
本当はあんな奇妙な生物は居らず、人間が生み出した欲の塊みたいなものだったのかも
しれないという、ちょっと突拍子もない考えまで浮かんでしまいました。
しかし赤川さんは上手いですねえ。ホラー小説なんだけども、人間社会とうまく関連づける
というか、人ごとではないんだよ、というのを描くのが実にうまい。流石です。
最後に気になった点。姉の初子は元に戻ったんでしょうか?
明らかに倉田のせいであちら側に行ってしまった描写があったんですが・・・
彼らが消滅したことで、その効果も消えたのでしょうね。
川で溺れている男の子を助けた水泳世界大会金メダリストの沢井聡子。
そのお礼にと少年の母親に招かれ贅沢な夏休みをすごしていた。姉に早く戻るよう言われるが、
数日後に迫る男の子の誕生会までは居ることに。一方、友人の焼身自殺の真相を追う
高校生の佐山清美はあるパーティに参加することになった。
それは聡子が助けた少年の誕生会だった。二人が目撃した「夜会」の真実とは?
このところYoutubeサーフィンしていて、本をあまり読んでません(笑
本書も結構前に読了したもの。
以下、ややネタバレ。
この「夜会」、昔読んだ記憶があります。
特にクライマックスはよく覚えていて、さて何で読んだのだろう?と。
Amazonで調べると、本書は徳間書店からしか刊行されていないようで、
おそらくトクマノベルズを購入したんだと思います。
当時は文庫でなく、新書版も積極的に購入していたのです(笑)。
再読になるのですが、本書は内容(結末)的にはホラーに分類されるのだと思います。
ただ、それ以上に、突然有名人(主人公の沢井聡子は当時全然注目もされておらず、
無名だったのにもかかわらず、金メダルを取る快挙を成し遂げています。)に
なった主人公やその周辺に訪れた大きな変化が主題なんでしょう。
最後に、亡くなった間宮しのぶ(の幽霊?)から、「人生のピークは、一つだけじゃありませんよ」
と諭されたこともあり、考えを改めることができました。
しかし、唐突に変わってしまった環境で、自分や周囲も突然変わってしまうことへ
簡単に対応できる人はいないでしょう。沢井家は結果的には悪い方へ変わってしまったのです。
また奇妙な植物が敵(?黒幕)として登場するのは、次の文からその理由がわかります。
252頁「柳田も父も「聡子」から養分を吸い上げて生きてきたようなものだ-人の心の中にも、
あの植物は根を張っているのかもしれない。」
本当はあんな奇妙な生物は居らず、人間が生み出した欲の塊みたいなものだったのかも
しれないという、ちょっと突拍子もない考えまで浮かんでしまいました。
しかし赤川さんは上手いですねえ。ホラー小説なんだけども、人間社会とうまく関連づける
というか、人ごとではないんだよ、というのを描くのが実にうまい。流石です。
最後に気になった点。姉の初子は元に戻ったんでしょうか?
明らかに倉田のせいであちら側に行ってしまった描写があったんですが・・・
彼らが消滅したことで、その効果も消えたのでしょうね。
壁の花のバラード [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
伊原有利はNデパートに勤めている、二十六歳。
容姿は人並みだが彼氏なし。素敵な出逢いを求めて出席するパーティーでは
いつも壁の花。そんな有利の平凡な人生が一変した。いつものように出席したパーティーで、
ハンサムな青年実業家・沢本徹夫にダンスを申し込まれたのだ。夢心地の有利。
だがなんと、彼は幽霊だった!
驚く有利に沢本は、自分を殺した犯人を捜してほしいと頼む。
彼を殺した犯人は誰!?
以下、ややネタバレ。
赤川作品には平然と幽霊は登場します(笑
最近復刊された『幽霊はテニスがお好き』、『三毛猫ホームズの騒霊騒動』
『怪談人恋坂』etc・・・
しかし、出てくる幽霊は結構明るいタイプも多く、本作品のようにどこかとぼけた
感じの幽霊もチラホラ。
主人公は伊原有利、デパートに勤める人並みのOL。
しかし、婚活パーティーで沢本徹夫という幽霊に出会ったことから人生が一変します。
本書は、沢本を殺したのは誰なのか?を突き止めるのが目的ですが、
その裏には、沢本との出会いで、有利の人生そのものが変わっていく物語でもあるのです。
彼女のかつてのクラスメートである山形とその部下の黒岩が良い味出してますねえ。
有利のことを想い続けていた山形の、食事へ有利を誘うシーンが全然ロマンチックな場面
で描かれないところもまた面白い。
それにしても、真犯人はわかったのにまだ成仏できない沢本と有利は
この先どうなってしまうのか?(笑
伊原有利はNデパートに勤めている、二十六歳。
容姿は人並みだが彼氏なし。素敵な出逢いを求めて出席するパーティーでは
いつも壁の花。そんな有利の平凡な人生が一変した。いつものように出席したパーティーで、
ハンサムな青年実業家・沢本徹夫にダンスを申し込まれたのだ。夢心地の有利。
だがなんと、彼は幽霊だった!
驚く有利に沢本は、自分を殺した犯人を捜してほしいと頼む。
彼を殺した犯人は誰!?
以下、ややネタバレ。
赤川作品には平然と幽霊は登場します(笑
最近復刊された『幽霊はテニスがお好き』、『三毛猫ホームズの騒霊騒動』
『怪談人恋坂』etc・・・
しかし、出てくる幽霊は結構明るいタイプも多く、本作品のようにどこかとぼけた
感じの幽霊もチラホラ。
主人公は伊原有利、デパートに勤める人並みのOL。
しかし、婚活パーティーで沢本徹夫という幽霊に出会ったことから人生が一変します。
本書は、沢本を殺したのは誰なのか?を突き止めるのが目的ですが、
その裏には、沢本との出会いで、有利の人生そのものが変わっていく物語でもあるのです。
彼女のかつてのクラスメートである山形とその部下の黒岩が良い味出してますねえ。
有利のことを想い続けていた山形の、食事へ有利を誘うシーンが全然ロマンチックな場面
で描かれないところもまた面白い。
それにしても、真犯人はわかったのにまだ成仏できない沢本と有利は
この先どうなってしまうのか?(笑
7番街の殺人 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。
手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の
付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。
予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、
21年前に祖母が殺害された団地だった―。一気読み必至の青春ミステリー!
本当に一気読みしてしまいました。
今の赤川作品は、シリーズものより、ノンシリーズものの方が面白いですね。
本作は、主人公の綾乃の祖母が殺害されている所から始まります。
そして、綾乃の母・佑香がまだ若く、しかも綾乃の父との出会いから。
物語は一気に進み、綾乃が女優として芝居に打ち込みつつ、
母の病により、痴話喧嘩のもつれに巻き込まれ、女優の付き人になったり、
同棲している只野との関係など、自分自身の人生がめまぐるしく変わっていく様が
まさに、ジェットコースターのように描かれていきます。
そんな彼女はふとしたことから祖母が殺害された事件を
その事件を捜査していた刑事から聞かされます。
そこからが再び物語が二転三転。
ラスト、浅野から「あの事件が眠りからさめたせいで、君がとんでもない目にあった」
という台詞に、綾乃は「いいえ、はっきりして良かったんです」と答えます。
そう、綾乃が中原真知子の付き人にならなければ、実はこの事件の解決はなかったのです。
犯人にとっては因果応報なのです。
そして、「生きるって、余計なことが積み重なってできてるんですよね」という
綾乃の台詞は赤川作品の主人公らしさでもあり、まさにユーモア・ミステリと呼ばれる
作品群を象徴する言葉だと思いました。
文庫で422頁。中々の厚さですが、そんな厚さを感じさせない展開、謎、
そして張られた伏線・・・
今、非常に大変な時期でご自宅にいる方も多いかと思いますが、
良質なミステリを楽しんでみるのも良いかもしれません。
駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。
手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の
付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。
予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、
21年前に祖母が殺害された団地だった―。一気読み必至の青春ミステリー!
本当に一気読みしてしまいました。
今の赤川作品は、シリーズものより、ノンシリーズものの方が面白いですね。
本作は、主人公の綾乃の祖母が殺害されている所から始まります。
そして、綾乃の母・佑香がまだ若く、しかも綾乃の父との出会いから。
物語は一気に進み、綾乃が女優として芝居に打ち込みつつ、
母の病により、痴話喧嘩のもつれに巻き込まれ、女優の付き人になったり、
同棲している只野との関係など、自分自身の人生がめまぐるしく変わっていく様が
まさに、ジェットコースターのように描かれていきます。
そんな彼女はふとしたことから祖母が殺害された事件を
その事件を捜査していた刑事から聞かされます。
そこからが再び物語が二転三転。
ラスト、浅野から「あの事件が眠りからさめたせいで、君がとんでもない目にあった」
という台詞に、綾乃は「いいえ、はっきりして良かったんです」と答えます。
そう、綾乃が中原真知子の付き人にならなければ、実はこの事件の解決はなかったのです。
犯人にとっては因果応報なのです。
そして、「生きるって、余計なことが積み重なってできてるんですよね」という
綾乃の台詞は赤川作品の主人公らしさでもあり、まさにユーモア・ミステリと呼ばれる
作品群を象徴する言葉だと思いました。
文庫で422頁。中々の厚さですが、そんな厚さを感じさせない展開、謎、
そして張られた伏線・・・
今、非常に大変な時期でご自宅にいる方も多いかと思いますが、
良質なミステリを楽しんでみるのも良いかもしれません。
静かなる良人 [赤川次郎]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
浮気をして家へ帰ると、夫は血まみれで倒れており、一言「ゆきこ」と言い残して息絶えた。
冷たい世間の眼と間抜けな刑事の尾行のなか、後ろめたさから自ら犯人捜しにのりだした
妻の千草であったが、犯人捜し過程で、「いい人」だけど退屈で面白みのない人間、
と思い込んでいた夫の意外な一面を知る……。千草は果たして夫を殺害した犯人を
捜し出すことができるのか?夫婦の絆を描いたユーモア・ミステリの傑作。
普通は物語の最中に殺人が起こり、それを解いていくのが、大半のミステリかと思います。
しかし、本書は妻が浮気をして帰ると、真面目な夫が殺害されていて、
しかも最後に遺した言葉が女性の名を想起させる「ゆきこ」。
そして次々と舞い込む、夫の知らない一面・・・
千草は夫を殺した犯人を突き止めるというより、自分が全く知らなかった夫の
顔を探すために、(世間からどう思われようと)積極的に行動していきます。
それがさらなる事件も引き起こす引き金にもなるのですが、
夫が亡くなった後に、自分にはもったいない夫で、これ以上の男はいないと豪語する千草
の台詞は、ある意味とても皮肉が効いています。
落合刑事がまたいい脇役で、最後に千草を口説くのがまたおもしろい。
赤川作品はまだまだ未読本がたくさん。これからも読んでいきます。
浮気をして家へ帰ると、夫は血まみれで倒れており、一言「ゆきこ」と言い残して息絶えた。
冷たい世間の眼と間抜けな刑事の尾行のなか、後ろめたさから自ら犯人捜しにのりだした
妻の千草であったが、犯人捜し過程で、「いい人」だけど退屈で面白みのない人間、
と思い込んでいた夫の意外な一面を知る……。千草は果たして夫を殺害した犯人を
捜し出すことができるのか?夫婦の絆を描いたユーモア・ミステリの傑作。
普通は物語の最中に殺人が起こり、それを解いていくのが、大半のミステリかと思います。
しかし、本書は妻が浮気をして帰ると、真面目な夫が殺害されていて、
しかも最後に遺した言葉が女性の名を想起させる「ゆきこ」。
そして次々と舞い込む、夫の知らない一面・・・
千草は夫を殺した犯人を突き止めるというより、自分が全く知らなかった夫の
顔を探すために、(世間からどう思われようと)積極的に行動していきます。
それがさらなる事件も引き起こす引き金にもなるのですが、
夫が亡くなった後に、自分にはもったいない夫で、これ以上の男はいないと豪語する千草
の台詞は、ある意味とても皮肉が効いています。
落合刑事がまたいい脇役で、最後に千草を口説くのがまたおもしろい。
赤川作品はまだまだ未読本がたくさん。これからも読んでいきます。