うらんぼんの夜 [川瀬七緖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
片田舎での暮らしをきらう高校生の奈緒は、東京から越してきた亜矢子と親しくなる。
しかし、それを境に村の空気は一変し、亜矢子の口数も少なくなってしまう。
疑念を抱く奈緒は、密かに彼女の自宅に忍び込もうとするが……。解説・西上心太。
川瀬先生の作品は『女學生奇譚』以来ですね。
こちらも同じノンシリーズ。
本作では、田舎の弊害、旧村の因習とか、そういうモノが描かれますが・・・
村に祀られている地蔵の謎は、やや消化不良かなあと。
ちょっと真相が唐突すぎるし、それまで経緯があまり語られていないので、
やや難しい印象。
この村の地蔵と村の因習、都会から来たよそ者という2つが、上手く組み合わされば
中々面白かったのだと思いますが、いかんせん、都会から来たよそ者が
引っ越してすぐに地蔵に願掛けするという行為をしているので、
余計に話が見えにくくなっている。
よそ者(亜矢子)がこの村の因習を知っていたとは到底思えないので、おそらく偶然なのですが、
彼女たちの引っ越しの目的を達するには極めてちょうど良かったわけで、
その意味で、よそ者と内部落の人が実は協力しているという事実を、
最後まで奈緒は気付かなかった。
ここはかなり面白く読めましたが、亜矢子たちは実は村の因習を知っていた(調べてきた)
のだろうという予測は容易にたつでしょう。
(特に亜矢子の兄と姉が調べている。)
内部落の人も東京へ調べに出ているというのも中々面白く、極めて閉鎖的に描かれている、
いわばステレオタイプ的な田舎なのに、実は相当な調査をしているという、面白い矛盾だなと
思いました。
その割に、奈緒の両親とか、いくらなんでも価値観が古すぎだし、どうなってるんだろうと
いうのもまた矛盾ですかね。
片田舎での暮らしをきらう高校生の奈緒は、東京から越してきた亜矢子と親しくなる。
しかし、それを境に村の空気は一変し、亜矢子の口数も少なくなってしまう。
疑念を抱く奈緒は、密かに彼女の自宅に忍び込もうとするが……。解説・西上心太。
川瀬先生の作品は『女學生奇譚』以来ですね。
こちらも同じノンシリーズ。
本作では、田舎の弊害、旧村の因習とか、そういうモノが描かれますが・・・
村に祀られている地蔵の謎は、やや消化不良かなあと。
ちょっと真相が唐突すぎるし、それまで経緯があまり語られていないので、
やや難しい印象。
この村の地蔵と村の因習、都会から来たよそ者という2つが、上手く組み合わされば
中々面白かったのだと思いますが、いかんせん、都会から来たよそ者が
引っ越してすぐに地蔵に願掛けするという行為をしているので、
余計に話が見えにくくなっている。
よそ者(亜矢子)がこの村の因習を知っていたとは到底思えないので、おそらく偶然なのですが、
彼女たちの引っ越しの目的を達するには極めてちょうど良かったわけで、
その意味で、よそ者と内部落の人が実は協力しているという事実を、
最後まで奈緒は気付かなかった。
ここはかなり面白く読めましたが、亜矢子たちは実は村の因習を知っていた(調べてきた)
のだろうという予測は容易にたつでしょう。
(特に亜矢子の兄と姉が調べている。)
内部落の人も東京へ調べに出ているというのも中々面白く、極めて閉鎖的に描かれている、
いわばステレオタイプ的な田舎なのに、実は相当な調査をしているという、面白い矛盾だなと
思いました。
その割に、奈緒の両親とか、いくらなんでも価値観が古すぎだし、どうなってるんだろうと
いうのもまた矛盾ですかね。
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 990 円
桃ノ木坂互助会 [川瀬七緖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
厄介事を起こすのは、いつだってよそ者だ。七十歳の光太郎は憤慨していた。
われわれが町を守らなくては――。そこで互助会の仲間たちと手を組み、
トラブルを起こす危険人物を町から追い出し始める。その手段はなんと嫌がらせ!?
老人だからこそできる奇想天外な作戦はなかなか好調に思えたが……。
大家と揉めていた男を次なるターゲットに決めたことから、事態は思わぬ方向へと動き始める。
老人たちの暴走とも受け取られかねない、この桃ノ木坂互助会の活動。
害を及ぼす「よそ者」を、様々な嫌がらせで追い出しにかかる、熊谷光太郎と互助会。
そしてDV加害者を依頼で苦しめる鈴木沙月とその姉優月。
この両者が巡り会うのは、桃ノ木にDV加害者が居ることから、始まります。
本書で描かれるのは、自分たちの住む町を良くしたいと考える、その町に
長く住む住人たち。
しかし、それは一歩間違えれば、現実社会でもある、村八分、もっと小さなことで言えば
町内会、しきたり、伝統、そんな言葉で縛られた誤った倫理観へも繋がりかねません。
沙月たちとの対立の際、互助会はその活動を大きく踏み外そうとする行動を見せます。
主人公の光太郎らはこれを危惧するものの、考えや行動を押し留まらせるには
至らず、結果的に、沙月らをDV加害者・武藤から救ったことで、
一連の事件は丸く治めることになりました。
最後に沙月が推理する、桃ノ木坂互助会のある人物の病気については、
一連の事件での、(本人は意図していないとしても)「黒幕」が誰であったかを
わからせる話でもあり、実は互助会、古くからの地域住民が、地域の事件・事故を
引き起こしていたという、極めて強烈な皮肉で幕を下ろします。
これから光太郎らはどうこの互助会の中で、どう振る舞っていくのか、
ラストは決して大団円でなく、不安をひきずる終わり方になっています。
自分たちにとって正しい、正義であると信じていても、
いつからかそれが、相手、あるいは社会にとって悪であることに変化することも
あるわけで、本書はそうした側面も持っていると感じました。
厄介事を起こすのは、いつだってよそ者だ。七十歳の光太郎は憤慨していた。
われわれが町を守らなくては――。そこで互助会の仲間たちと手を組み、
トラブルを起こす危険人物を町から追い出し始める。その手段はなんと嫌がらせ!?
老人だからこそできる奇想天外な作戦はなかなか好調に思えたが……。
大家と揉めていた男を次なるターゲットに決めたことから、事態は思わぬ方向へと動き始める。
老人たちの暴走とも受け取られかねない、この桃ノ木坂互助会の活動。
害を及ぼす「よそ者」を、様々な嫌がらせで追い出しにかかる、熊谷光太郎と互助会。
そしてDV加害者を依頼で苦しめる鈴木沙月とその姉優月。
この両者が巡り会うのは、桃ノ木にDV加害者が居ることから、始まります。
本書で描かれるのは、自分たちの住む町を良くしたいと考える、その町に
長く住む住人たち。
しかし、それは一歩間違えれば、現実社会でもある、村八分、もっと小さなことで言えば
町内会、しきたり、伝統、そんな言葉で縛られた誤った倫理観へも繋がりかねません。
沙月たちとの対立の際、互助会はその活動を大きく踏み外そうとする行動を見せます。
主人公の光太郎らはこれを危惧するものの、考えや行動を押し留まらせるには
至らず、結果的に、沙月らをDV加害者・武藤から救ったことで、
一連の事件は丸く治めることになりました。
最後に沙月が推理する、桃ノ木坂互助会のある人物の病気については、
一連の事件での、(本人は意図していないとしても)「黒幕」が誰であったかを
わからせる話でもあり、実は互助会、古くからの地域住民が、地域の事件・事故を
引き起こしていたという、極めて強烈な皮肉で幕を下ろします。
これから光太郎らはどうこの互助会の中で、どう振る舞っていくのか、
ラストは決して大団円でなく、不安をひきずる終わり方になっています。
自分たちにとって正しい、正義であると信じていても、
いつからかそれが、相手、あるいは社会にとって悪であることに変化することも
あるわけで、本書はそうした側面も持っていると感じました。
フォークロアの鍵 [川瀬七緖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
羽野千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。“消えない記憶”に興味を持ち、
認知症グループホーム「風の里」を訪れた。出迎えたのは、「色武者」や「電波塔」などと
あだ名される、ひと癖もふた癖もある老人たち。なかでも「くノ一」と呼ばれる老女・ルリ子は、
夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの彼女が発した
「おろんくち」という言葉に、千夏は妙な引っ掛かりを覚える。
記憶の森に潜り込む千夏と相棒の大地。二人を待っていたものは……!
以下、ややネタバレ。
ぼかしてはあるものの、羽野千夏の共同研究員というのは、千葉県佐倉市に
ある国立歴史民俗博物館に違いない(笑)とどうでもいいことは置いておいて・・・
「口頭伝承」というのは、オーラルヒストリーとはまた違うのかもしれませんが、
彼女が老人たちから話を聞き、それを絵という方法で具現化したことが、
老人たちのあるトリガーを引いたのは間違いありません。
そしてそれがきっかけで、「風の里」の老人たちとコミュニケーションを重ねることができ、
物語序盤とは大きく違う、活き活きと描かれている老人たち。
むろん作者もわかっているとは思いますが、現実はそう簡単にいくものではないよなあと、
こうあってくれれば良いと思いつつ、現実は甘くない、そう感じる物語でした。
筆者が相当に参考にされた、六車由美さんの『驚きの介護民俗学』は読んでみたくなりました。
さて、民俗学+介護の話ではなく、本書ミステリの部分である「おろんくち」とは何なのか。
この謎に目的を見失い、親を殺そうと考えていた高校生・立原大地とともに解明に
挑むのですが・・・
「おろんくち」の先にある、現実に起きている悲惨な事件が無事解決したことはともかく、
肝心の「おろんくち」の謎は解明できていないままなのが心残り。
千夏は口減らしという説を出しますが、そうだとすると、そんなところを逢い引きの
場所に選ぶというのもおかしいし、そもそも大量の歯は何なのか。
どうもしっくりこないんですよね。
ラストが大団円的な終わり方になっているだけに、肝心要の民俗学ミステリの部分が
消化不良が残念。
羽野千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。“消えない記憶”に興味を持ち、
認知症グループホーム「風の里」を訪れた。出迎えたのは、「色武者」や「電波塔」などと
あだ名される、ひと癖もふた癖もある老人たち。なかでも「くノ一」と呼ばれる老女・ルリ子は、
夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの彼女が発した
「おろんくち」という言葉に、千夏は妙な引っ掛かりを覚える。
記憶の森に潜り込む千夏と相棒の大地。二人を待っていたものは……!
以下、ややネタバレ。
ぼかしてはあるものの、羽野千夏の共同研究員というのは、千葉県佐倉市に
ある国立歴史民俗博物館に違いない(笑)とどうでもいいことは置いておいて・・・
「口頭伝承」というのは、オーラルヒストリーとはまた違うのかもしれませんが、
彼女が老人たちから話を聞き、それを絵という方法で具現化したことが、
老人たちのあるトリガーを引いたのは間違いありません。
そしてそれがきっかけで、「風の里」の老人たちとコミュニケーションを重ねることができ、
物語序盤とは大きく違う、活き活きと描かれている老人たち。
むろん作者もわかっているとは思いますが、現実はそう簡単にいくものではないよなあと、
こうあってくれれば良いと思いつつ、現実は甘くない、そう感じる物語でした。
筆者が相当に参考にされた、六車由美さんの『驚きの介護民俗学』は読んでみたくなりました。
さて、民俗学+介護の話ではなく、本書ミステリの部分である「おろんくち」とは何なのか。
この謎に目的を見失い、親を殺そうと考えていた高校生・立原大地とともに解明に
挑むのですが・・・
「おろんくち」の先にある、現実に起きている悲惨な事件が無事解決したことはともかく、
肝心の「おろんくち」の謎は解明できていないままなのが心残り。
千夏は口減らしという説を出しますが、そうだとすると、そんなところを逢い引きの
場所に選ぶというのもおかしいし、そもそも大量の歯は何なのか。
どうもしっくりこないんですよね。
ラストが大団円的な終わり方になっているだけに、肝心要の民俗学ミステリの部分が
消化不良が残念。
女學生奇譚 [川瀬七緖]
まずはAmazonさんの紹介ページから。
この本を読んではいけない――奇妙な警告文の挟まれた古書が
オカルト雑誌の編集部に持ち込まれた。
古書の持ち主だった兄が数カ月前に失踪し、現在も行方不明だと竹里あやめは訴える。
フリーライターの八坂駿がその本を少しずつ読み始めると、周囲で不気味な出来事が続く。
いたずら? 狂言? それとも……。
八坂はペアを組むカメラマンの篠宮、依頼人のあやめとともに、古書の謎を追う。
以下、ややネタバレあり。
川瀬さんの作品は「よろづのことに気をつけよ」以来2作目。
前作は期待外れだったんですよねえ・・・
本作もオカルト系という伝承系とミステリの組み合わせだと思いましたが、
「女學生奇譚」を読みながら、謎を解いていく八坂&篠宮コンビは好感が持てます。
女学生たちがどこへ連れて行かれたのか、その真相を看破し、
奇譚に描かれている屋敷や遺骨を発見するまでは、1つのミステリとして
かなり面白かったです。
ただ、ここからが問題。
というか、最初に「この本を読んではいけない」という警告文から
全てが始まっているのですが、
途中途中に挟まれる八坂を襲う不可思議な現象。
唐突に登場する八坂の双子の弟。
このあたりの伏線を一気に回収するのが、最後の謎解き&真犯人の登場なんですが、
これは蛇足だったような気がします。
むしろオカルト系ライターとしての八坂とカメラマン篠宮コンビを主人公とし、
こうした奇書の謎を解いていくシリーズとした方が良かったのではないでしょうか。
シリーズを重ねていく上で、八坂の弟の存在や、彼の持つ特殊な性格、
それらを匂わせながら、本作の展開にもっていった方が、まだ受け入れやすい。
物語がタイトルの「女學生奇譚」から、一気に乖離していくのが非常に残念。
ただ、「この本を読んではいけない」は八坂の興味を惹くだけでなく、
読者の興味も惹くので、無かった方がいいかと言えば、微妙なところ。
「女學生奇譚」という奇書をめぐるミステリとしては快作。
しかし、全体としてみると、陰謀論のような、残念な作品な気がしました。
この本を読んではいけない――奇妙な警告文の挟まれた古書が
オカルト雑誌の編集部に持ち込まれた。
古書の持ち主だった兄が数カ月前に失踪し、現在も行方不明だと竹里あやめは訴える。
フリーライターの八坂駿がその本を少しずつ読み始めると、周囲で不気味な出来事が続く。
いたずら? 狂言? それとも……。
八坂はペアを組むカメラマンの篠宮、依頼人のあやめとともに、古書の謎を追う。
以下、ややネタバレあり。
川瀬さんの作品は「よろづのことに気をつけよ」以来2作目。
前作は期待外れだったんですよねえ・・・
本作もオカルト系という伝承系とミステリの組み合わせだと思いましたが、
「女學生奇譚」を読みながら、謎を解いていく八坂&篠宮コンビは好感が持てます。
女学生たちがどこへ連れて行かれたのか、その真相を看破し、
奇譚に描かれている屋敷や遺骨を発見するまでは、1つのミステリとして
かなり面白かったです。
ただ、ここからが問題。
というか、最初に「この本を読んではいけない」という警告文から
全てが始まっているのですが、
途中途中に挟まれる八坂を襲う不可思議な現象。
唐突に登場する八坂の双子の弟。
このあたりの伏線を一気に回収するのが、最後の謎解き&真犯人の登場なんですが、
これは蛇足だったような気がします。
むしろオカルト系ライターとしての八坂とカメラマン篠宮コンビを主人公とし、
こうした奇書の謎を解いていくシリーズとした方が良かったのではないでしょうか。
シリーズを重ねていく上で、八坂の弟の存在や、彼の持つ特殊な性格、
それらを匂わせながら、本作の展開にもっていった方が、まだ受け入れやすい。
物語がタイトルの「女學生奇譚」から、一気に乖離していくのが非常に残念。
ただ、「この本を読んではいけない」は八坂の興味を惹くだけでなく、
読者の興味も惹くので、無かった方がいいかと言えば、微妙なところ。
「女學生奇譚」という奇書をめぐるミステリとしては快作。
しかし、全体としてみると、陰謀論のような、残念な作品な気がしました。
よろずのことに気をつけよ [川瀬七緖]
第57回江戸川乱歩賞受賞作。
単行本発売当時から気になっていて、
ようやく文庫化されましたので、早速購入しました。
Amazonでのレビューがあまり良くなかったのでどうかなあ・・・とは
思いつつ。
まずはあらすじ
都内に住む老人が自宅で惨殺された。奇妙なことに、遺体は舌を切断され、
心臓をズタズタに抉られていた。さらに、縁の下からは「不離怨願、あたご様、五郎子」
と記された呪術符が見つかる。なぜ老人はかくも強い怨念を受けたのか?
日本の因習に絡む、恐るべき真相が眼前に広がる!第57回江戸川乱歩賞受賞作。
酷評されるほどひどいとは思いませんでした。
まあ普通に読めましたが、以下雑感。
最後も一気に物語が解決しますが、ここはあっけないというか、
終わり方としてはどうなんだ、と。
半世紀近くにもわたって呪いを続けてきたのに、
あの終わりはどう考えてもおかしいだろう。
主人公とヒロインの過去が途中挿入されるのですが、
それが分かりづらい、かつ中途半端なため、何が言いたいのか
いまいち分からず。取って付けた感じです。
怪奇や幻想といった非科学的あるいは非合理的な面(呪術)
と合理的な面(現実の殺人)の組み合わせは
いかに整合性や両者で合理的なロジックを作るのか、
あるいは非科学的な側面もかなり残しつつも、
現実に起きた事件は合理的に解決するという、
まあいくつか方法はあると思うのです。
(上記整理は私の個人的見解です・苦笑)
本書はその二つを持ち合わせているわけですが、
どちらもうまく活かしきれていないのが難点かなあと
個人的には感じました。
単行本発売当時から気になっていて、
ようやく文庫化されましたので、早速購入しました。
Amazonでのレビューがあまり良くなかったのでどうかなあ・・・とは
思いつつ。
まずはあらすじ
都内に住む老人が自宅で惨殺された。奇妙なことに、遺体は舌を切断され、
心臓をズタズタに抉られていた。さらに、縁の下からは「不離怨願、あたご様、五郎子」
と記された呪術符が見つかる。なぜ老人はかくも強い怨念を受けたのか?
日本の因習に絡む、恐るべき真相が眼前に広がる!第57回江戸川乱歩賞受賞作。
酷評されるほどひどいとは思いませんでした。
まあ普通に読めましたが、以下雑感。
最後も一気に物語が解決しますが、ここはあっけないというか、
終わり方としてはどうなんだ、と。
半世紀近くにもわたって呪いを続けてきたのに、
あの終わりはどう考えてもおかしいだろう。
主人公とヒロインの過去が途中挿入されるのですが、
それが分かりづらい、かつ中途半端なため、何が言いたいのか
いまいち分からず。取って付けた感じです。
怪奇や幻想といった非科学的あるいは非合理的な面(呪術)
と合理的な面(現実の殺人)の組み合わせは
いかに整合性や両者で合理的なロジックを作るのか、
あるいは非科学的な側面もかなり残しつつも、
現実に起きた事件は合理的に解決するという、
まあいくつか方法はあると思うのです。
(上記整理は私の個人的見解です・苦笑)
本書はその二つを持ち合わせているわけですが、
どちらもうまく活かしきれていないのが難点かなあと
個人的には感じました。