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フォークロアの鍵 [川瀬七緖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

羽野千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。“消えない記憶”に興味を持ち、
認知症グループホーム「風の里」を訪れた。出迎えたのは、「色武者」や「電波塔」などと
あだ名される、ひと癖もふた癖もある老人たち。なかでも「くノ一」と呼ばれる老女・ルリ子は、
夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの彼女が発した
「おろんくち」という言葉に、千夏は妙な引っ掛かりを覚える。
記憶の森に潜り込む千夏と相棒の大地。二人を待っていたものは……!


以下、ややネタバレ。



ぼかしてはあるものの、羽野千夏の共同研究員というのは、千葉県佐倉市に
ある国立歴史民俗博物館に違いない(笑)とどうでもいいことは置いておいて・・・

「口頭伝承」というのは、オーラルヒストリーとはまた違うのかもしれませんが、
彼女が老人たちから話を聞き、それを絵という方法で具現化したことが、
老人たちのあるトリガーを引いたのは間違いありません。
そしてそれがきっかけで、「風の里」の老人たちとコミュニケーションを重ねることができ、
物語序盤とは大きく違う、活き活きと描かれている老人たち。
むろん作者もわかっているとは思いますが、現実はそう簡単にいくものではないよなあと、
こうあってくれれば良いと思いつつ、現実は甘くない、そう感じる物語でした。
筆者が相当に参考にされた、六車由美さんの『驚きの介護民俗学』は読んでみたくなりました。

さて、民俗学+介護の話ではなく、本書ミステリの部分である「おろんくち」とは何なのか。
この謎に目的を見失い、親を殺そうと考えていた高校生・立原大地とともに解明に
挑むのですが・・・
「おろんくち」の先にある、現実に起きている悲惨な事件が無事解決したことはともかく、
肝心の「おろんくち」の謎は解明できていないままなのが心残り。
千夏は口減らしという説を出しますが、そうだとすると、そんなところを逢い引きの
場所に選ぶというのもおかしいし、そもそも大量の歯は何なのか。
どうもしっくりこないんですよね。

ラストが大団円的な終わり方になっているだけに、肝心要の民俗学ミステリの部分が
消化不良が残念。


フォークロアの鍵 (講談社文庫)

フォークロアの鍵 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬 七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: 文庫



フォークロアの鍵 (講談社文庫)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: Kindle版



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コメント 4

コースケ

鉄腕原子さま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2019-12-21 20:51) 

コースケ

@ミックさま、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2019-12-21 20:51) 

コースケ

31さま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2019-12-21 20:51) 

コースケ

むうぴょんこ様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2019-12-24 23:17) 

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