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オルゴーリェンヌ [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

書物が駆逐される世界。旅を続ける英国人少年・クリスは、
検閲官に追われるユユと名乗る少女と出会う。彼女と共に追い詰められたクリスの前に、
彼を救うべく少年検閲官・エノが現れる。三人は、少女が追われる原因である宝石の形をした
『ミステリ』の結晶『小道具(ガジェット)』をいち早く回収すべく、
オルゴール職人たちが住む海墟の洋館に向かったが……。
そこで三人を待ち受けていたのは、職人たちを襲う連続不可能殺人だった! 
先に到着していたもう一人の少年検閲官・カルテの支配下に置かれた場所で、
三人は犯人を突き止めるべく、トリックの解明に挑む。著者渾身の力作!


少年検閲官シリーズ第2弾。
前作よりさらにボリュームが増し、2人目の少年検閲官も登場します。


以下、ネタバレ。



物理の北山の異名を取る作者の全力作品でした。
中でもヤガミ殺しは圧巻。
横倒しのビルで、いかに殺されたのか。
単にうえから落ちたのではなく、この世界における「書物」を
上手く使った見事なトリックです。

シグレ殺しは雪の密室。
カルテの、そもそも密室ではないという推理も中々面白いのですが、
エノの、オルゴールが燃えているところにおびき寄せる、というのは、
やはりこの世界の「ガジェット」を巧妙に使った罠で、お見事。

とここまで記載すると、要するに本書は「多重解決」ものなんですが、
もう1つ、私が連想したのは泡坂妻夫先生の『乱れからくり』。
誰が犯人なのか、というのと、本書の<クローズド・サークル>を
一気にぶち破る大仕掛けが最後にあるのです。

真犯人は生きているので、その意味では『乱れからくり』は当てはまらない
かもしれませんが、実際のところ、真犯人の仕掛けはすでに終わっているので、
実質はほぼ同じではないかと思います。

ところで、本書は単なる多重解決ではなく、本書世界観での多重解決なので、
カルテの推理がイコール真相、つまり解決と、本世界ではなるわけで、
真の解決を知るのは、クリスとエノの二人という状態。
エノはこの事実をどう考えるのか、
クリスはこの真実を物語にするのか、
いずれにせよ、次作が非常に気になります。


オルゴーリェンヌ 〈少年検閲官〉シリーズ (創元推理文庫)

オルゴーリェンヌ 〈少年検閲官〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/04/28
  • メディア: Kindle版






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少年検閲官 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印
が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、
クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。
書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。
本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。



『オルゴーリェンヌ』が文庫化されたので、シリーズを読み始めようと
購入した1冊。

あくまで私個人のこれまでの嗜好として、メルヘンというか、特殊世界というか、
異世界というか、そうした場所を舞台としたミステリは避けていました。
北山先生の作品は『『アリス・ミラー城』殺人事件』が初で、
その後引きこもり探偵シリーズを読み始め、『猫柳十一玄』を読み・・・と
きたところで、以前書いた講談社文庫の2冊や、本シリーズなどは
意図的に避けていた、という感じです。

が、ここにきて色々と幅を広げるという意味でトライしているという。

本作は、書物がない、禁止されている世界、焚書が当たり前、
人類には政府の大本営発表的なラジオから発信される情報しかないという、
ディストピア的な世界で、描かれる殺人事件を、検閲官が解き明かすというストーリーです。

なので、本書を読んでいく際には、事件の謎だけでなく、この世界観、世界の種々の
謎(まあ設定でしょうか)も合わせて考えていく、知っていく必要があるので、
中々読み応えがありました。

犯人の動機は極めてこの世界の中においては極めて単純ですが、
それを実行すると、これほどまでに残酷になるのか、というのが最初の感想。
物語の中では平然と語られていますが、想像を絶しますね。
それを平然と聞いていられる関係者も凄かったな。
この辺りが、この世界に住む人々の特殊性なのかもしれません。

ミステリそのものは、かなり練り込まれていて、
最初で描かれた小屋が消えるトリックや、少女が「復活」する話。
そして事件の中心的トリックたる湖での犯人消失。また、家に赤い印を付ける意味。
これらの謎が見事に論理的に解き明かされていくのは流石の一言。

また、この世界観から、犯人が探偵と呼称され、事件を解決するのが検閲官というのも
面白いですね。クリスが物語中で苦しむのも理解できる。
しかし、なぜこの街の人々は、この犯人を「探偵」と名付けたのか?
その辺りはよく分かりませんでした。

また、「ガジェット」という、本作世界観では欠かせなそうなシロモノが
出てくるのですが、いまいち重要性がわからなかったなあ。
「首切り」のガジェットというのがあって、それを持っていた、だから
犯人は首切りを行っていた?訳ではないですよね。
(私の読み込みがまるで足りてないのかもしれません、すいません。)

物語全体としては、ミステリとしては非常に面白いものの、
作者が創ったこの世界観をそれに充分に活かせているかはかなり疑問。
焚書や書物のない世界、もミステリだけない訳ではなく、他の本もないですしね。
それと、探偵は謎を解く存在なのだ、というクリスの思いも、本世界観だけでは
中々説明しにくい。実際に書物を知っている人たちも大勢まだいるようですし。

とはいいつつ、次もそのうち読み始めよう。


少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

少年検閲官 〈少年検閲官〉シリーズ

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: Kindle版







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アルファベット荘事件 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

巨大なアルファベットのオブジェが散在する屋敷『アルファベット荘』。
岩手県の美術商が所有するその屋敷には、オブジェの他に『創生の箱』と呼ばれる
関わったものは死に至るという箱もあった。雪が舞う12月のある日、
そこで開かれるパーティに10人の個性的な面々が集う。
しかし主催者は現れず、不穏な空気が漂う中、
夜が明けると『創生の箱』に詰められた死体が現れて――。
売れない役者、変人にして小劇団の看板女優、そして何も持たない探偵が、
奇妙な屋敷の幻想的な事件を解き明かす! 
当代きってのトリックメーカー・北山猛邦の、長らく入手困難だった初期長編が待望の復刊!


以下、ややネタバレ。




元々デビューが「城」シリーズであった北山先生。
大きな意味で「館」シリーズに連なる作品群ですが、本書はそれに見事に合致する
作品という印象を受けました。
東京創元社さんの復刊は流石です。


『創生の箱』のトリックはさておき(笑)、巨大なアルファベットのオブジェが何らかの
トリックに用いられているのは誰しも読んでいて、気付くはずです。

物理トリックとして、箱に死体を運ぶことが出来たのは誰か?=犯人である、という推理は
非常に鋭く見事。
ただ、箱そのものがどういう物なのか、これも絵入りで説明してほしかったなあ。
あとアルファベットの上を移動する、というのが結構事前にしていたとしても、
犯人としては、ヒヤヒヤだったろうなと。

さて、本作は本書のみでシリーズ化もしていないのですが、
それゆえに、より謎が深まる点も多いなと想いました。

単なる謎解き役=探偵役としての機能しか果たさない、と「あとがき」で北山先生も
言われている「ディ」。だからこそこの通称なのですが、
彼の記憶がなぜ無いのかとか、シリーズ化して掘り下げて欲しかったなあ。

プロローグで語られる少女と少年の話。登場人物でこの二人は誰なのか?というのも
楽しみの1つなのですが、
最後に、成長した少女が「不可能犯罪を必要としている人がいるの」という言葉は、
明らかに「ディ」との何らかの繋がりを示唆するものなので、余計に気になりました。

オーパーツ専門の探偵・春井もなかなかの曲者で、再登場してもらいたい。
というか、このオーパーツを鍵として、このシリーズ化をぜひ!


アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/10/12
  • メディア: 文庫






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私たちが星座を盗んだ理由 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。
景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。
かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、
ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!


『千年図書館』を読了し、その後すぐに購入し、早速読了しました。
以下、ややネタバレ。




もの悲しさと、主人公たち三者三様、彼彼女たちのすれ違いから生まれた
表題作は、なんともやりきれませんね。

「恋煩い」は誰が恋煩いなのか、で物語が反転する見事な作品。
一見して都市伝説や噂を、恋は盲目状態のアキが信じて起こしてしまう出来事ですが、
シュンの推理で一気に違う景色になるという、構成が秀逸。

「終の童話」は、ラストをどう考えるのか?によりますが、
「女か虎か」のリドルストーリーなのかもしれません。この文章だけで判断できないのでは。

しかし、なぜ石像化した人々が壊されるのか?という謎は、予期せぬものでした。
ただ、善意から来るものとはいえ、何度も経験しているのだから、
先に状態を確認すれば良いのではないかと思いますが、それは言ってはいけないのかなあ。

「妖精の学校」は『さかさま少女』所収の「千年図書館」にあたる作品。
しかし、前作より謎は複雑かつ、ネタバレを読むとさらに暗澹たる気分になります。

これは「千年図書館」と違い、リアルタイムの話に近い内容。
子どもたちがどこからつれてこられるのか、これが一番怖いですが、
確実に国家ぐるみの計画なんでしょうね・・・

そして、大人になった時、彼彼女たちにはどういう事が待ち受けているのか、
それも気になりました。

「嘘つき紳士」はどんでん返しな作品。これもラストは驚き。
そして、殺人が明確に登場するミステリでもあります。

いや、どれも完成度が極めて高いです。本作及び『さかさま少女』、未読の方は
ぜひ読んで下さい。


私たちが星座を盗んだ理由 (講談社文庫)

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社文庫)

  • 作者: 北山猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: Kindle版







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さかさま少女のためのピアノソナタ [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

古書店にあった「絶対に弾いてはならない!」と記された謎の楽譜。その旋律をピアノで
奏でた高校生を襲う戦慄の出来事とは。TVドラマ化された表題作をはじめ、
世にも奇妙な5つの物語を収録。美しくも切ない世界が一瞬にして変わる結末、
心ざわつく余韻。これぞミステリの醍醐味。〈『千年図書館』を改題〉

以下、ややネタバレ。






全5編集録のノンシリーズミステリ短編集。
北山さんは「城」シリーズと、引きこもり探偵<音野順>シリーズを読んでいますが、
ノンシリーズは初ですね。
先に一言感想を言ってしまうと、非常に楽しめたので『私たちが星座を盗んだ理由』も
購入しました。

「見返り谷から呼ぶ声」は言い伝えを合理的に解釈するという解決方法が示されて、
(それが事実かどうかはわかりませんが)
かつ、叙述トリックも仕込まれています。結末はもの悲しいんですけどね・・・

「千年図書館」は、やはりこちらも古くからの生け贄という儀式。司書として生きていく
ペルやヴィサスの(ある種の)日常が描かれますが、ラストの結末はある程度は
想像できましたね。とはいえ、この話はこの図書館に「他に」どのような本を所蔵しているのか、
そもそも、生け贄の儀式は何がきっかけで始まったのか、なんかそんな描かれていない
ところばかりが気になりました。

「今夜の月はしましま模様?」は、異星人の地球侵略を描く物語なのですが、
主人公と異星人のやりとりで進む話に、恐ろしさより、むしろコミカルに感じますが、
やはり最後に、どんでん返しのように現れる別の異星人登場で、その雰囲気も一転します。
このアイデアはかなり見事で、そういう<異星人><生命体>か!と。

藤子・F・不二雄先生のSF短編に「考える足」というのがありましたが、あれを
思い出しました。あちらは話し合いが通じましたが、この<異星人>には通用しない、
というか、通用のさせようがない・・・恐ろしいですね。

「終末硝子」は結末が最後までわからず、個人的に本書所収昨の白眉。
いつの間にか、墓を建てる際に高い塔を建て、その上に死者を埋葬(置く)というやり方
になっていた故郷。男爵による恐ろしい行動かと思いきや・・・

いや、どの作品も楽しめます。ノンシリーズで避けていましたが、さすが北山先生。


さかさま少女のためのピアノソナタ (講談社文庫)

さかさま少女のためのピアノソナタ (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/07/15
  • メディア: 文庫







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密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

密室殺人を企てる犯人の前に一匹の黒猫が現れた。あろうことかその猫は、
今まさに密室にならんとする部屋に入り込んでしまい……。思わぬ闖入者に翻弄される犯人だが、
さらに猫探しに訪れた探偵も現れる! 完全犯罪を目論む犯人の焦燥を描いた表題作をはじめ、
音楽室で起こった犯人と凶器が消失した殺人事件を解き明かす「音楽は凶器じゃない」など
気弱で引きこもりがちな名探偵・音野順の五つの活躍を収めた短編集、シリーズ第二弾!


またまた久しぶりの更新です。
このところ読書時間<Youtube時間となっており(笑)、あまり読んでない状況です。
しかしGWは少し積ん読本を読みたいですね。たまにはゆっくりのんびりと。

さて、そんな久しぶりの更新ですが、これまた超がつくほど久しぶりのシリーズ。
青崎有吾さんの解説にもあるように「ようやく!」文庫化です。

なんとこのブログでも前作『踊るジョーカー』を書いたのは2011年。
つまり10年ぶりです!そしてこの作品がいつ文庫化するんだ!と叫んでいたのが
猫柳十一玄の失敗』,2016年の記事です。
それから数えても5年ですから、よく私が生きていたなと思います(苦笑
以下、ネタバレあり。





四六版が出てから文庫化まで12年かかっているので、登場する携帯とか時代を感じますねえ。
とはいえ、ミステリとしては色あせません。
なんといっても、名探偵が解く謎の第一ともいうべき密室殺人が5編中2編もあるという、
『アリス・ミラー城殺人事件』などで魅せてくれたトリック・メーカー北山先生は
やはり伊達ではなかった。

解説で青崎さんが指摘している、引きこもり探偵、あるいは名探偵の使命という点での
シリーズ白眉ともいえるのは「停電から夜明けまで」。
確かにシリーズ探偵である音野順は、本当に何もしていない。
兄である音野要が事件を推理し、殺人計画を見抜くのです。
しかし、その決定的な証拠がまさか名探偵その人という。名探偵不要論を吹き飛ばす作品です。
なんというか、最後があまりに鮮やかな終わり方なので、
刑事コロンボの「二枚のドガの絵」を思い出しました。
さらに犯人の兄弟二人のバカさぶりもすごいです(笑


「クローズド・キャンドル」は王道の密室トリックですが、
ある意味叙述トリックの面もあるんですよね。
しかも双子という事実を隠しておきながら、そこにトリックがあるわけではないというのも見事。
琴宮探偵が良い味だしてます。

個人的オススメは「人喰いテレビ」。
目撃者の怪しげなUFO研究会、テレビに人が食われるという謎、想像できない結末・・・
一番惹き込まれましたね。

『踊るジョーカー』、再読します。
というか、猫柳十一玄も復活希望!


密室から黒猫を取り出す方法 (名探偵音野順の事件簿) (創元推理文庫)

密室から黒猫を取り出す方法 (名探偵音野順の事件簿) (創元推理文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: 文庫








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猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

「成人までに嫁がねば一族を追放する」――
山に閉ざされた村にある名家・後鑑家の末娘に脅迫状が届いた。
事件は、相談を受けた大東亜帝国大学探偵助手学部二年・月々の体を張った解決策で一件落着、
と思われたが、ゼミ教官で女探偵の猫柳十一弦は、
これから連続見立て殺人が起こると推理。猫柳は惨劇を防げるのか!?

探偵の存在をある種否定するかのような、事件を未然に
防ぐ事が本作品最大の見せ場でしょう。

探偵が国家資格で探偵助手が職業として成り立つ世界であるにも
関わらず、本編で事件を防ぐ事をメインとしたのも面白かったです。

また山村の因習や和歌が、実は後鑑家しかほとんど知らないという
オチも面白い。金田一的な世界かと思いきや、でしたね。
もっとも和歌にはしっかり秘密がありましたが。

ところで、ずいぶんと猫柳探偵と君橋君人のラブコメ要素が
あまりにも盛り込まれすぎていて、読んでいて辛かったです。
そういうシリーズに持って行こうとしているのかなあ・・・やめてくれ。

それと各章に付されている探偵助手五箇条とその章内容が
ほとんど無関係、かつこの五箇条を作った扇孤月が登場するのですが、
ほとんど五箇条へも物語自体にも無関係(事件ではお世話になりますが)。
このあたりは意味がよくわからず。
もっと五箇条を活かした内容には出来なかったんでしょうかね。

音野順シリーズはいつ文庫化するのだろうか。


猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社文庫)

猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 文庫



猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社ノベルス)

猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条 (講談社ノベルス)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/07
  • メディア: Kindle版



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猫柳十一弦の後悔 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大学の探偵助手学部に通う君橋と月々は、志望のゼミに落ち、
悪ふざけで出した第3希望の猫柳ゼミ行きが決定してしまう。指導教官は、
功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦(25歳)。
ショックを受ける二人だったが、名門ゼミとの合同合宿が決まり、
勇んで向かった孤島で、本物の殺人事件に遭遇する!

北山さんの新シリーズ。
本ブログでも「城」シリーズや音野順シリーズは
かつて記事で書かせて頂きました。

まずおもしろいのは、架空ではありますが、
探偵になるのではなく、探偵助手になるというのが
本作主人公君橋とその相棒・月々守。
どうやらこの世界では、名探偵になるには
頭脳だけでは駄目そうな感じですね。

そして博士号的なものとして、名探偵号があるようです。
ぜひほしいものです(笑

二人は、大東亜帝国大学探偵助手学部へと入学し、
各名探偵のゼミに属するのですが、
なんと第三希望の猫柳ゼミに二人して入る事に。
そこで人気No1の雪ノ下ゼミとの合同孤島合宿に参加する
事になる猫柳とクンクン、マモル。
なんと孤島では連続殺人が起こってしまい・・・


この連続殺人では、やはり最初と二番目の殺人が見事。
二番目の箱の中の殺人と一番目の杭を打たれた「奇妙な屍体」の
一見関係が薄そうなものが、犯人が実に周到に用意した
舞台装置のようなものだったというのは、本作では愁眉かなと思いました。

ただし物語の設定として、探偵助手学部や名探偵と呼ばれる人たちや
その辺りはほとんど掘り起こされていないのが残念ですね。
ノンシリーズで猫柳が探偵役を務める、でも話としては
成り立ってしまうので、せっかくおもしろい設定なんですから、
もっと活用してもらいたかったと個人的な感想です。

たとえば雪ノ下がどのような経緯で名探偵号を(周囲を騙して)
取得し、(この世界で)大学教員にまでなれたのかとか
さらっと語られますが、いかんせん舞台設定からすると弱すぎる
気がします。

次作もすでに刊行されてますから、そのあたりをちょっと期待。
ところで、音野順の次作はいつ文庫化されるんでしょうか・・・


猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫



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踊るジョーカー [北山猛邦]

<城>シリーズが有名な北山猛邦さんの新シリーズ。
以下はAmazonさんの紹介ページから。

類稀な推理力を持つ友人の音野順のため、推理作家の白瀬白夜は仕事場の一角に探偵事務所を開設する。
しかし当の音野は放っておくと暗いところへ暗いところへと逃げ込んでしまう、世界一気弱な名探偵だった。
依頼人から持ち込まれた事件を解決するため、音野は白瀬に無理矢理引っ張り出され、
おそるおそる事件現場に向かう。新世代ミステリの旗手が贈るユーモア・ミステリ第一弾。

日本一気弱かつひきこもりがちな名探偵音野順とその友人で推理作家の白瀬白夜の名コンビ。
友人の社会復帰(?)と自らの小説のネタ集め、そして<名探偵>のワトソン役に奮闘する白瀬が、
半ば強引に探偵事務所を開き、嫌がりながらも事件を解決する音野。
なかなかおもしろいコンビです。
そしてことある事に「名探偵」と称し、そしてまずは形からと事務所に合う家具やら電話やらを
買ってくる白瀬の姿が楽しい。

オススメは「時間泥棒」と「見えないダイイング・メッセージ」
前者は「奇妙な味」な一編。まさにホームズを読んでいるかのような感じでした。
なぜ時計、しかもアナログ時計ばかり盗まれるのか?
そこに意外な謎が。

後者はどう見てもメッセージらしきものは写ってないのですが、
そこから導き出される解答は?音野の推理が冴えます。

ところで依頼料はどのくらいなんだろうか?(笑
続編も早く読みたいです!


踊るジョーカー (名探偵音野順の事件簿 ) (創元推理文庫)

踊るジョーカー (名探偵音野順の事件簿 ) (創元推理文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/06/29
  • メディア: 文庫



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『ギロチン城』殺人事件 [北山猛邦]

北山猛邦氏の「城」シリーズ、最新作が文庫で登場です。
前作『アリス・ミラー城』では見事にやられましたが、さて本作は。以下ネタバレ。


本作のメイントリックは二つ。
その1つは密室トリックです。
なぜ首と胴体がそれぞれ別人のモノが組み合わさっていたのか?
さらには物語冒頭の「スクウェア」の記述によるミスディレクション。
死体の数を首と胴体をわけることで、本来3人の死体を4人にみせる。
さらに3つの部屋しか行き来していないのに、可動式の廊下の存在により
4つの部屋を行き来したかのようにみせる。
この密室トリックはまさに秀逸でした。
図面でしっかりと説明されていたところも素晴らしい(笑・正直そうでないとわからないです)

問題はもう1つのトリック。
これは前作でもあった叙述トリックなのですが、
異様な犯人の正体とでも言いましょうか。
首から上と首から下が別の人物、それはあくまで認証システムが存在する
『ギロチン城』内だけで通用するのみですが、
この非常に複雑なトリックが僕を多いに悩ませている訳です(笑
つーかよくわからないんですよねえ。
別人てのはあくまで認証システム上であり、実際に二人いる訳じゃないんですよねえ。
だけどもなぜ頼科は勘違いしてるのかなあ・・・
馬鹿な僕には理解できません、誰か教えてくださいませ。
幕辺ナコは事件を解きはしましたが、この謎への説明はなかったな(笑
個人的には前作「アリス・ミラー城」の叙述トリックが勝ったかなという気がします。

彼の存在については最後に「藍」の口からほのめかされますが、
これは彼が「高貴な人間の血が流れている、そしてそれは優れた名探偵のものである」
と自ら述べていることと関連するのでしょうか。

ところで本作でも探偵という存在について否定的な描写が多く見られます。
この「城」シリーズでの探偵の存在意義なども今後どうなっていくのか楽しみですねえ。


『ギロチン城』殺人事件 (講談社文庫)

『ギロチン城』殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/13
  • メディア: 文庫



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『アリス・ミラー城』殺人事件 [北山猛邦]

北山さんの御著書は初めて読みます。
なんといっても裏面の紹介文と帯の文章で購入を決めました(笑
本書はクリスティの古典的傑作「そして誰もいなくなった」に挑んだミステリといえるでしょう。
以下ネタバレ。


本書のトリックは大いなる叙述トリックにあります。
最後まで読んで犯人の名前を見ても、「?」というのが第一印象です。
確かにそこまで読んで読み返してみると、いくつかおかしな点があることには気づきます。
そして「誰もいなくなった」でのインディアン人形ならぬ、チェス盤の白い駒の数が次々と
減っていくという心理トリックに、実は黒の女王駒も存在しているという矛盾も気づきます。

しかし入瀬が「あとはかれしかいないじゃない」と述べるところや
登場する探偵が「α」(=犯人の事です)について一切言及しない点もあるんですよね。
なぜ「α」を犯人のリストから除外するのかなあ。

もちろん、「α」を名指ししている探偵もいるんですよね(笑
しかしそれはうやむやにされている気が。
出てくる探偵の中で、もっとも頭がキレるのはおそらく観月か最後まで生き残った事を
考えて无多かなと。

観月は殺された探偵や堂戸・ルディの死体を確認しているにも関わらず、
「α」犯人説には傾かず、自ら罠だと言っていた密室トリックを解明することに
重点を置いたり、実際はその時生きていた古加持を死んだと見誤るなど・・・
やっぱり優れた探偵じゃないのかな?(笑

非常に印象的だったのはルディが述べた言葉。
「シャーロック・ホームズやエラリー・クイーンももういない。彼らが探偵として勝ち得た
はずの誇りは、現代において既に失われているのです。(中略)探偵は生きていてはいけない。
死ぬべきなのです。」
どこの箇所だか忘れましたが、「探偵は交換可能」という記述もありました。
名探偵不要論かな(笑
とはいえ、本作でのルディの目的がよくわからなかったです。
彼女は探偵を殺すのが目的だったんでしょか。
そして彼女は「α」の正体には気づかなかったのでしょうかねえ。

しかし本作は本格ミステリファンにはたまらない一冊であることは間違いないと思います。
ぜひご一読を。


「アリス・ミラー城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-3)

「アリス・ミラー城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-3)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 文庫



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