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御手洗潔のメロディ [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。
無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在する時、見えない線が光り始める。
御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか、大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」
など、名探偵の過去と現在をつなぐ4つの傑作短編を収録。


短編集第3弾。
前作、前々作とはかなり趣向が変わっています。
どちらかというと、『御手洗潔と進々堂珈琲』シリーズにやや近い短編集でしょうか。

「ボストン幽霊絵画事件」は、今までの奇人・変人ぶりから、天才への道程を
描く先駆け的なものでしょうか。だからといって事件の謎は非常におもしろい。


とはいえ、やはり「IgE」は群を抜いています。奇人・変人ぶりは健在で、
まるで繋がりの見えない2つの事件、これを見事に看破する御手洗の大活躍が
素晴らしい。そして、このタイトルの付け方がまた秀逸です。

ノンミステリ2編が含まれますが、この「IgE」を目当てに購入しても、
まったく損はありません。
作品、普通に読んでもまず解けません(笑)いや、普通じゃなくても解けないか。
便器が何度も壊される、などという謎から、壮大な大事件への繋ぎは
素晴らしいの一言に尽きます。

御手洗短編集、「挨拶」から「メロディ」まで今もまだ文庫で新品を購入
することができるというのは本当に有り難い。
他の長編作品もお願いできませんかねえ、講談社様。


御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版







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御手洗潔のダンス [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。

またまた間隔が空いてしまいました。


『挨拶』に続く第2弾。
こちらも良作揃いです。

「山高帽のイカロス」は、犯人にとっても予想外な事が起き、
まさに被害者が「浮遊した」「飛行した」とした思えない状況に。

より面白いのは「舞踏病」。
自宅の2階の下宿人が、どうやら「狐つき」らしい・・・
そんな奇妙な謎を持ってこられて、うごかないはずがない!

本作では、御手洗の医療に関する考えなども伺う事ができ、
後々の天才御手洗潔(この時点で天才ですが)の片鱗を垣間見ることが出来ます。

トリックの面白さならば「ある騎士の物語」。かつて藤原宰太郎さんの、
『世界の名探偵50人』とその続編を読んだことがあるのですが、
そこにバッチリと、この事件のトリックがネタバレされてました(苦笑
当時はまだ小学生くらいで、御手洗シリーズを読んでいませんでしたので、
余り気にしませんでしたが、改めて読んで見て、ああ、そういえばと思い出しました。

エキセントリックな言動とともに、極めて不可思議、奇妙な事件を解き明かすのが、
やはり御手洗潔だなあと、改めて思いました。
落ち着いた御手洗より、やはり好きですね。




御手洗潔のダンス (講談社文庫)

御手洗潔のダンス (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版








世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

世界の名探偵50人―あなたの頭脳に挑戦する 推理と知能のトリック・パズ (ワニ文庫 A- 20)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1984/01/01
  • メディア: 文庫




続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

続 世界の名探偵50人―知的興奮をもう一度 推理と知能のトリック・パズル (ワニ文庫)

  • 作者: 藤原 宰太郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1993/12/01
  • メディア: 文庫



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御手洗潔の挨拶 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。
しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。
男は殺されるために謎の移動をしたのか?
奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた4つの事件に名探偵・御手洗潔が挑む短編集第1弾。


長編に続いて、短編集も再読を始めました。
こちらは新装版などは出ていないので、「挨拶」「ダンス」「メロディ」と
改めて購入しました。
というか、昔読んだのはブックオフで購入していたようで、どうせなら新品を買おうと
思いまして。ブックオフで購入したのはブックオフに売りました(笑


本書所収作で、何を愁眉と挙げれば良いのか、はっきり言って非常に難しい。

エキセントリックな御手洗という点でいえば、「疾走する死者」でしょう。
チック・コリアのライブがあるから事件を解決して、警察から解放されるという(笑
ギターの凄まじい腕前も魅せられるし、また語り手が石岡くんではないので、
その点からも面白いのですよね。御手洗潔の風貌や雰囲気、行動などなど、
相変わらず何なんだ、この人は?という。

石岡語り手で御手洗の脅威の推理力を見せ付けられる「ギリシャの犬」。
この作品は、タコ焼き屋に残されていた紙きれ。これが圧巻です。
そして、最後にタコ焼き屋が無くなった理由をも解き明かす御手洗の名推理。

ワトソンのような語り口で始まる「数字錠」。
この語り口調で始まるのならば、よほど奇妙な事件なのだろうと思うのですが・・・
この作品、御手洗の優しさというか、性格の一面が非常に出てますよね。
これを短編集第1作の最初に持ってくるというのが、素晴らしい。

で、私が一番好きなのは「紫電改研究保存会」。
いや、これは何度も読みました。これも第三者視点からの語りで、
関根という人物が体験した非常に奇妙な体験。
この謎を解き明かすのが同じバーに居た、御手洗潔。

関根が尾崎善吉の話の代金ではした金をくれてやる、というのと、
御手洗の名刺をみて大笑いするところが最高です。

何度読んでもやはり面白い。


御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版






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改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

さらし首の名所だった「暗闇坂」にそそり立つ樹齢二千年の大楠。
この巨木が次々に人間を呑み込んだのか。近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは。
とうてい信じられない怪事件に名探偵・御手洗潔が敢然と挑む。しかしながら真相に迫る
御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めるものだった。
本格ミステリーの巨匠が精力を注いだ大傑作。

以下、ネタバレあり。






おそらく10年弱ぶりの再読です。
拙ブログには登場するのは初めてですが、かつて「斜め屋敷の犯罪」を
アップした後くらいに読んだ作品です。
そして、その後に『挨拶』『ダンス』『メロディ』と短編集を読了しました。

今回、改訂完全版が発売されたことを機に、改めて読んで見ました。
イッキ読みしました(笑)数日で読了。
それだけ圧巻ということです(改めて主張するまでもありませんが)。

御大はかつて「本格ミステリー」とは何か、という問いに対し、
「まず第一に、『幻想味ある、強烈な魅力を有する謎』を冒頭付近に示すこと」、
「第二のそれは、『論理性』、『思索性』である」と述べ、この2つさえあれば、
『本格ミステリー』たり得ると信じる」と記しています(本書解説より)。

この定義が絶対であるとは言いませんが、本書が完璧にまで、この2つを兼ね備えているのは
疑う余地はありません。
特に『強烈な魅力を有する謎』という点では、『斜め屋敷』『占星術』以上ではないかと
個人的には感じます。
そして本書は、この2つに怪奇性まで加味しているという。
御手洗ですら、解けない謎が登場するという、この「人喰いの木」の恐ろしさ。

また、横浜という都会でありながら、金田一耕助シリーズの旧家・名家で起きたような
事件のようにも感じましたが、これは犯人の動機が大きな要因ですかね。

金田一耕助は防御率の低い探偵なんて言われたこともありますが、
個人的には、なんとなく家の因習や風習、村の風習などに縛られてしまった人たちを、
その縛りから解放する役割を果たしているような一面があるのかなあと感じる事があります。

御手洗は本書で、藤並家の人たちを(松崎レオナ)を救うために、そいて家の因習やDNAといった
ものから解放するために、最後に「みんな集めてさて」と言わず、数年間口を閉ざしたのです。

なんというか、探偵とは何か、名探偵の存在とは?みたいなことまで考えてしまいました(汗)

横浜時代の御手洗&石岡コンビの活躍、まだまだ読みたいですね。






改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

改訂完全版 暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/03/12
  • メディア: Kindle版







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鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

島田荘司さんといえば、知らない人はいないミステリー界の巨匠。毎年繰り出される作品には、
いつも斬新なアイデアと大胆な仕掛けが充満し、デビュー40年を迎えても創作意欲は衰え知らず。
ですが、読者諸氏のなかには、「難しそう」「怖そう」「大御所すぎて何から読んだらいいか迷う」
と敬遠している方もいるかもしれません。しかし、本書には、怖い場面もエグい場面もありません。
殺人事件はありますが、名探偵御手洗潔が事件を解き明かすうちに見えてくるのは、
単なる謎解きではなく……暗い過去にも挫けることなく、次の人生を踏み出そうとする女性や、
哀しいまでに人を想うことの純粋さ。名探偵御手洗の見事な解決に、
温かいものが湧いてくる名編です。

Amazonさんの解説がやたらに優しい文章!
しかし、島田御大の真骨頂は「」で括られている面は当然あるので、こういう
紹介もどうなんだという気もします。
驚天動地のトリック、と使い古した言葉かもしれませんが、それも当てはまる。


元々短編を長編に膨らませているので、やや冗長な感もあります。
ただ、本編で語られるのは過去の事件で、その際の容疑者の回想が大部分を
占めていて、よりその容疑者の心情を理解できるようにはなっていますね。

京都大学在学中の御手洗潔の活躍で、少々トリッキーな姿を垣間見えますが、
上記に書いたように、真相は先に容疑者の回想で明らかにされ、御手洗の推理は
(読者からみれば)それをなぞる形で披露されます。

また「御手洗潔と進々堂珈琲」で登場した「ワトソン役」のサトル再び。
彼は御手洗学生編で登場するんでしょうかね?

ところで、全体を構成する大きな核である「鳥居の密室」
これは実際の京都の場所を見たことがあるかどうかで大きく本書の楽しみ方含め
変わりますね。
私には想像ができませんでした(汗)


鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/27
  • メディア: 文庫







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星籠の海 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

瀬戸内の小島に、死体が次々と流れ着く。奇怪な相談を受けた御手洗潔は
石岡和己とともに現地へ赴き、事件の鍵が古から栄えた港町・鞆にあることを見抜く。
その鞆では、運命の糸に操られるように、一見無関係の複数の事件が同時進行で発生していた―。
伝説の名探偵が複雑に絡み合った難事件に挑む!

織田信長の鉄甲船が忽然と消えたのはなぜか。幕末の老中、
阿部正弘が記したと思われる「星籠」とは?数々の謎を秘めた瀬戸内で怪事件が連続する。
変死体の漂着、カルト団体と死体遺棄事件、不可解な乳児誘拐とその両親を襲う惨禍。
数百年の時を越え、すべてが繋がる驚愕の真相を、御手洗潔が炙り出す!


久しぶりの更新となりました。このところネットサーフィンしかしてません(笑
『眩暈』も読んだので、他の御手洗シリーズもと思い、本棚を片付けつつ
色々と探していたら、かつて『リベルタスの寓話』を発見。ブログに出てこないはずなので、
その前に読了したのかー。それから短編集も当然ありました。これがまた良いんですよねえ。

とまあそんな話はともかく、『傘を折る女』が映像化した時は驚きましたが、
映画化までするとは思わなかった。
かつての島田御大は御手洗シリーズの映像化は拒否していたのを、何かのあとがきで
読んだので・・・
本書の解説でも少し触れられていますが、映像化の過程を少し知ることができます。

本書は、御手洗潔が石岡和己と組んで解決した、日本での(現時点での)最後の事件。
御大の故郷を舞台に、さらに1994年の物語ですが、現在の社会問題なども絡め、さらに
村上水軍や幕末の開明派と言われた老中・阿部正弘まで登場する、壮大なスケールの物語
となっています。

そのため、最初の御手洗登場シーンでは、変わらずトリッキーさを発揮していますが、
その後は、推理そのものはさすがですが、御手洗の物語というよりも、瀬戸内海の物語、
そこに昨今の様々な社会問題を絡み合わせた、というのが印象です。

小坂井茂や忽那准一、辰見洋子・・・彼彼女たちそれぞれの物語も重厚で、
これらがどう一つの事件に結びついていくのか、ここも読みどころの一つ。

ただし、先少し書いたように、日本で起きた御手洗潔シリーズとして見ると、
些か物足りない。突拍子もない謎、奇想天外なトリック、そんなものが突然登場し、
それをいかに御手洗がトリッキーさを見せつつも、合理的に解決していくのか、
そうしたものを期待してしまうと、肩すかしかもしれません。
ただ、そうした点で本書を読むのはちょっと違うのかもしれませんね。


個人的には石岡さんがあんなに女性に積極的にいこうとしているとは思わなかった(笑




星籠の海(上) (講談社文庫)

星籠の海(上) (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/08
  • メディア: Kindle版



星籠の海(下) (講談社文庫)

星籠の海(下) (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/08
  • メディア: Kindle版



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改訂完全版 毒を売る女 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

娘は名門幼稚園に入り、家も手に入れた。医者である夫の仕事も順調で、
全てがうまくいっているはずだった。あの女があんな告白をするまでは―。
人間が持つ根源的な狂気を描いた圧巻の表題作をはじめ、
御手洗潔シリーズの傑作「糸ノコとジクザグ」からショートショートまで、
著者の様々な魅力が凝縮した大充実の傑作短篇集!


以下、ややネタバレ。


表題作は、大道寺靖子の行動が若干支離滅裂。
いや、パニックになっているのはわかるんですが、ひたすら手作り料理を
持ってくるより、状況を理解して、早く伝えればいいのになあ、と。
それにしても、梅毒ってのはこんなに恐ろしい病なんですね。
今は薬で良くなると思っていましたが、いや現代は治るんですかね?

オススメは「渇いた都市」。最初の場面は最後に繋がるのですが、
偶然てのは恐ろしいのと、完全犯罪というのはやはり難しいという。
田中昴作というか、遊んでない男性が女性に嵌まってしまうのは、良くあるんだろうな・・・
しかし、どうでもいい見栄を張るのはよくわかりませんね。

「バイクの舞姫」は、結局妹の存在も幻だったということなんでしょうか??
あくまで美術館へ彼を導くためだけの存在だったのか。ちょっと謎が残る結末でした。

「糸ノコとジグザグ」は、あの御手洗潔が名前は出ませんが登場します。
あんなトリッキーな人は、彼しかいないでしょう。
演説先生として紹介されていますが、肝心の事件解決の際は、
眠かったので、結論だけ述べたという(笑

「土の殺意」には、御大の双璧をなす吉敷竹史が登場。
これは今でもあり得る話で、固定資産を保有している方々は、
どう節税していくか、本当に悩むところですね。

御大には、短編集をそろそろ刊行してほしいですね。
御手洗潔のダンス、メロディ、挨拶、追憶と刊行されていますが、
ぜひ最新作は御手洗潔の短編集をお願いします。


改訂完全版 毒を売る女 (河出文庫)

改訂完全版 毒を売る女 (河出文庫)

  • 作者: 荘司, 島田
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/06/26
  • メディア: 文庫



毒を売る女 (光文社文庫)

毒を売る女 (光文社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: Kindle版



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異邦の騎士 改訂完全版  [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。
自分は本当に愛する妻子を殺したのか。
やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。
名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に
著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。
幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

以下、ややネタバレ。





『ネジ式ザゼツキー』でも記憶喪失の人物が物語の鍵を握っていました。
そして、その頃の御手洗潔は、脳科学の研究者として
スウェーデンにて教鞭をとっていました。
偶然なのか、必然なのかは別として、御手洗潔シリーズ真の第1作で、
記憶喪失の人物が主人公であり、彼の記憶を解きほぐしていくのが
御手洗潔であるというのは、感慨深いものがあります。

主人公は偶然出逢った石川良子を彼女のヒモから助けることで、
彼女の引っ越しを手伝い、そして一目惚れし、彼女との共同生活が始まります。
良子から「石川敬介」と名前をもらい、近くの工場で働くことに。

自分が天秤座であることになぜか確信した敬介は、
「御手洗潔占星学教室」の門を叩くと、そこには・・・
「名前など記号ですよ!」などと突然ハイテンションで喋る男が。
異常に不味いコーヒーを出す。その男・御手洗潔こそ彼の記憶を呼び覚ましてくれる人物の1人だったのです。

この出会いは「敬介」にとって強烈な印象を残していて、読者にも強烈な印象を
与えてます。まさに正真正銘、これが御手洗だと私は思いました(笑

「敬介」は良子とともに御手洗の元を訪れますが、良子は『便所ソウジ』という
御手洗のあだ名話に爆笑しつつも、彼の元を訪れることを暗に拒否しています。
すでに良子には、彼が真実を解き明かす人物であることがひょっとしたら
なんとなくわかっていたのでしょうか。

「敬介」は免許証から自分の本名が「益子秀司」であることを御手洗に伝え、
自分の記憶喪失についての相談も持ちかけます。
御手洗は君は再生障害だと言い、長々と説明しますが、ここにも彼が後に
脳科学研究者となる片鱗を魅せてくれます。
そしてこの場面には、後に御手洗の推理の重要なピースにもなる
ある男も登場します。

自分が誰なのか知るために、免許証へ記された「西尾久」へ向かい、
アパートの住人からさらに情報を得る秀司。
そして、墨田区の一軒家へ赴き、自分には「千賀子」と「菜々」という妻子が居たことを知るのです。
文庫版223頁からの、「千賀子と秀司の日記」の内容は壮絶でした。
読んでいてもあまりの極悪非道ぶりに読むのも辛かったですが、
この手記により、秀司は井原へ復讐を誓い、いざナイフで刺そうとしたところに、なんと良子が現れ、彼女を刺してしますのです・・・

この後、御手洗が登場し、怒濤の展開が続きます。
「いい質問だよ益子君、狂人の夢想では、あそこで君を待てない。これこそ推理というものだよ」
「僕はいつも思うんだ。クイズは、作るより解く方が何倍もやさしいんだ。(中略)古今東西、巧妙な犯罪や事件に真の芸術家がいるとすれば、それはホームズやポアロなんてやからじゃなく、その犯罪を計画し、実行した勇気ある犯人たちだよ。」
これは御手洗の言葉ですが、読んでいて好きなんですよねえ。
推理というものを自身でしつつも、解くよりも考えた人間を褒める。
そしてこの事件でも、天才はただ1人、そう真犯人の名前を彼は挙げるのです。

この御手洗の(時間は空きますが)推理の過程で、「敬介」は様々な感情を御手洗にみせます。
そして、最後に彼の本名が明らかになるときは、本当に衝撃です。
本書を読んだ後、「占星術殺人事件」や「斜め屋敷の犯罪」を読むと、
本書の「敬介」と、その後の彼は同一人物なのか。
本書最後には彼自身がこの事件を振り返る場面がありますが、
御手洗をドン・キホーテと称し、最後に鉄の馬に乗り、颯爽と夜の荒川土手に現れ、とも表していて、彼にとって、御手洗が「異邦の騎士」であるかのような描写です。
しかし、石川良子にとっては、「敬介」こそが「異邦の騎士」だったのです。

ところでこの事件の計画は、最初から綿密に練られていた訳ではなく、
彼の実際の住所と秀司の住所が近似していたという偶然と、彼の鏡を見ることができないという恐怖症の2つから、真犯人が急遽計画したもので、これはまさに天才的な仕掛です。
しかし、記憶が呼び覚まされる可能性もあった訳で、非常に危ない橋を渡っていたともいえます。
ところが、危ない橋というのは真犯人たちの計画が挫折するだけで、最後に犯人が語ったように、
自分自身に火の粉がふりかかることはないという、絶対的に安全な場所を
確保していたというのも、この仕掛けの見事な点でしょう。

ものすごく気になったのは、改訂版前の『異邦の騎士』です。
これはぜひ読んで見たい。
御手洗の天才的な推理や閃きは、『占星術』や『斜め屋敷』と比較すれば、
劣るかもしれません。
しかし、本書は推理小説と恋愛小説の両面を兼ね備え、現在の御手洗シリーズへの繋がりが非常に垣間見え、何より、ホームズ役&ワトソン役の最初の出会い(ネタバレですね)でもある本作は、御手洗ファンのみならず、今更ながらミステリファンにもぜひ読んでほしい一冊。



異邦の騎士 改訂完全版

異邦の騎士 改訂完全版

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/03/13
  • メディア: 文庫



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ネジ式ザゼツキー [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

記憶に障害を持つ男エゴン・マッカートが書いた物語。そこには、蜜柑の樹の上の国、
ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。
御手洗潔がそのファンタジーを読んだ時、エゴンの過去と物語に隠された
驚愕の真実が浮かびあがる!圧倒的スケールと複合的な謎の傑作長編ミステリー。

GW中はたくさん本を読もうかと思い、そういえば御手洗潔シリーズで
長編ものはあまり読んでいないなと思い、購入したうちの1冊です。

本書はすでに御手洗が横浜を離れ、スウェーデンのウプサラ大学で教鞭を取りつつ、
脳科学の研究を行っています。
そこへ現れたのが、エゴン・マーカットという記憶に障害を持った人物。
彼の失われた記憶を物語るのは、彼が書いた小説『タンジール蜜柑共和国への帰還』のみ。

御手洗がこのファンタジー小説の記述から、その中の事項と、現実の事実とを
次々と結びつけていくところは流石です。
物語後半の「フランコ・セラノ、ネジ事件」では、担当したラモス刑事との対話から、
この事件の真相に迫っていくのですが、なぜ遺体にネジが組み込まれていたのか?という、
異常な事実を、これまた論理付けて解いていく過程は鮮やか。

この事件の真相を明らかにし、さらに真犯人をも突き止め、エゴン・マーカットが
何者なのかまでを一気に解いていく御手洗の推理は素晴らしいの一言です。

昔からそうなのですが、シャーロック・ホームズ譚のように、人智では説明できないかの
ような不可思議な謎や出来事を、いかに論理的に解きほぐしていくか、
そんな話が大好きなんですよね。
横浜時代のトリッキーな御手洗は全く見られないところが残念ですが、
読み応え十分でした。
そして、本作と対となるといってもよい『異邦の騎士』も近日アップ予定です。


ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

  • 作者: 島田荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版



ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

ネジ式ザゼツキー (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/14
  • メディア: 文庫



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斜め屋敷の犯罪 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館で
パーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。
人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!?
本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場!解説=綾辻行人

毎年クリスマス・イブにはそれにちなんだミステリを書いていますが、
海外ミステリは意外と多いのですが、日本では中々見つからない・・・

色々と思い返してみると、なんとこの『占星術』と並び、本格ミステリの金字塔的作品も
聖夜に事件が起こるという、クリスマスミステリなのです。

この作品は、あのトリックのためだけの「斜め屋敷」というのが難点ではないかと
言われる場合もありますが、
いくつもの不可思議な事柄が、御手洗の推理で一気に収束していく推理は
見事というほかありません。

クリスマス・イヴの今夜、読んでみてはいかがでしょうか。


改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫



改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: Kindle版



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屋上 [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

自殺する理由がない男女が、次々と飛び降りる屋上がある。足元には植木鉢の森、
周囲には目撃者の窓、頭上には朽ち果てた電飾看板。そしてどんなトリックもない。
死んだ盆栽作家と悲劇の大女優の祟りか?霊界への入口に名探偵・御手洗潔は向かう。
人智を超えた謎には「読者への挑戦状」が仕掛けられている!

U銀行の屋上にある数多くの盆栽(盆景)
この盆栽は多くのいわくがあり、この盆景へ水をやりにいった行員・岩木俊子が
突然自殺し、その後も次々と、「自殺しない」と言っていた行員の自殺が続く。
これを取材していた小鳥遊記者は、御手洗潔へ相談し・・・

最初のオカルト的な話は話の枕であり、なぜ住田係長の部下、そして最後には住田係長
までもが自殺してしまうのか、というのは本当に謎です。
これをどう論理的に御手洗が解決するのか、気になり気になり一気読みしました。

途中途中フォントが違う物語が挿入されます。
これが「苦行者」田辺信一郎と「サンタクロース」菩提裕太郎の二人の物語です。
解説で乾くるみ先生が、両者ともトイレで人生のどん詰まりを味わうという共通点が(笑

そして先生が本書を「ユーモアミステリ」と評しているのですが、これは納得。
まず舞台が神奈川県T見市なのに、大阪が舞台かのような錯覚を起こさせる登場人物。
そして上記のトイレでの人生どん詰まり。
最後に明らかにされる真相も、ユーモアミステリと言って良いのではないでしょうか。


本事件は1991年頃に起きた事件らしく、まだ石岡との共同生活中の、
エキセントリックが目立つ頃の御手洗の事件でかなり楽しみにしていました。
真相はかなり驚きましたが、屋上の図面はほしかったなあ・・・
それと、小鳥遊兄弟のあまり意味がない会話が続くのが苦痛でした。

しかし、この頃の御手洗の事件簿はもっと読みたいですね。


ところで、乾先生の解説は必読です。
特に『占星術殺人事件』の刊行2週間後に、横溝正史御大が死去し、
御大が島田荘司へ本格・新本格の旗手のバトンを渡した、という話はある種感動しました。
島田荘司御大という旗手は、講談社の宇山日出臣氏、東京創元社の戸川安宣という
お二人を得て、平成が終わろうとする中、多くの担い手を生み出しました。

これからも御大には幅広い活躍とともに、若き御手洗シリーズもぜひ執筆をお願いします。



屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: 文庫



屋上 (講談社文庫)

屋上 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/02/15
  • メディア: Kindle版



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御手洗潔と進々堂珈琲 [島田荘司]

新潮文庫nexという新レーベルで二冊同時刊行された
御手洗潔シリーズの1編。
「ロシア幽霊軍艦事件」は角川文庫版を購入しよう(?)と
考えており、本巻のみ購入。

まずはAmazonさんの紹介ページから。

京都の喫茶店「進々堂」で若き御手洗潔が語る物語(ミステリー)。進々堂。
京都大学の裏に佇む老舗珈琲店に、世界一周の旅を終えた若き御手洗潔は、日々顔を出していた。
彼の話を聞くため、予備校生のサトルは足繁く店に通う――。
西域と京都を結ぶ幻の桜。戦禍の空に消えた殺意。チンザノ・コークハイに秘められた記憶。
名探偵となる前夜、京大生時代の御手洗が語る悲哀と郷愁に満ちた四つの物語。
『進々堂世界一周 追憶のカシュガル』改題。

カテゴリーをミステリとしていますが、ミステリではありません。
御手洗潔が放浪してきた中で体験した話を集めた短編集です。

オススメは「追憶のカシュガル」。
老人がなぜカシュガルで他の皆から避けられ、疎まれているのか、
植民地化時代の老人からの話と最期にそれが明かされます。

ところで石岡さんポジションである浪人生のサトルは
この後どうなるんでしょうかねえ?他作品でも出てくるのかな。

初期御手洗が変人で描かれ、その後超人として変容していきましたが、
本作御手洗は名探偵になる前ですが、まあやはりどこか人生というか、
世界というか色々と超越している雰囲気を出しています。
ただ知識はまだあまりないようで(苦笑

御手洗潔シリーズがフジテレビで映像化されましたが、
あれはちょっと驚きましたね。

かつて島田荘司先生は、どの小説か失念しましたが、
あとがきにおいて「御手洗潔の映像化は断っている」という事を書いていたので。
Twitterでもドラマをチェックしており、次も同様キャストで御願いしたいとか。
島田御大も当時とは気持ちが変わったのでしょうねえ。



御手洗潔と進々堂珈琲 (新潮文庫nex)

御手洗潔と進々堂珈琲 (新潮文庫nex)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/01/28
  • メディア: 文庫



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改訂完全版 占星術殺人事件 [島田荘司]

「東西ミステリーベスト100」堂々の第3位。
新本格ミステリの金字塔にして、名探偵御手洗潔を
生み出したデビュー作でもあります。

「斜め屋敷の犯罪」はかなり昔に読みましたが、
本書は改訂完全版が出たのを気に改めて再読。

改めて御手洗&石岡コンビの面白さと
この驚天動地とも言うべきトリックの見事さに驚きました。
アゾート、星座、そして占星術師と色々な仕掛けが描かれますが、
そこが物語の核心でもあり、トリックでもあるのです。

何度読んでもその感動は変わりません。
日本ミステリ界に燦然と輝く作品です。


占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫



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写楽 閉じた国の幻 [島田荘司]

久々の御大のミステリーです。
写楽という、極めて謎に包まれた人物に焦点をあてる歴史ミステリー。

写楽は誰なのか、という視点だけでなく、
蔦屋はなぜ写楽を世に出そうとしたのか?という視点から
考えていくというのはとてもおもしろかったです。
御大の膨大な調査と取材、そして発想があったからこそ、
これほどまでの壮大な世界が描けたのは間違いありません。

ただ、続編が出て然るべきという思いが強いですかねえ。
主人公の悲劇や家族はこの後どうなったのか?
協力者となった片桐教授、彼女はとても謎めいていて、
彼女が協力するのはなぜなのか?そのバックボーンに何かあるのか?

御大もあとがきで書かれているのであえて書くまでもないのですが、
現代編の物語は未完だよなあ。
ぜひ続編を御願いします!



写楽 閉じた国の幻(上) (新潮文庫)

写楽 閉じた国の幻(上) (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/01/28
  • メディア: 文庫



写楽 閉じた国の幻(下) (新潮文庫)

写楽 閉じた国の幻(下) (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/01/28
  • メディア: 文庫



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透明人間の納屋 [島田荘司]

かつて子どもだったあなたと少年少女のために創刊された
ミステリーランドで刊行された一冊。

まずは講談社のページから内容紹介を。
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2705613
透明人間はこの世に存在する。人間を透明にする薬もある。
見えないから誰も気がつかないだけなんだ、この町にだっているよ。……
学校、友人、母親、すべてに違和感をもって生きる孤独な少年、
ヨウイチがただひとり心を開き信じ尊敬する真鍋さんの言葉だ。
でもどうしてそんな秘密を知っているのだろうという疑問がぬぐいきれないでいるところに、
不可解な誘拐事件が発生した。密室から女性が蒸発したかのように消失したのだ。
透明人間による犯行だと考えると謎は氷解するのだが。

少年ヨウイチが体験する摩訶不思議な事件。
真鍋さんから教えてもらった人を透明人間の薬を作る機械、
真鍋さんの言う理想の国。
そして起こる奇怪な殺人事件。
どの謎も解けずに、少年ヨウイチは大人になる。
そんな中、あるニュースで取り上げられていた人物が
ヨウイチの所に面会に来て・・・

ミステリーランドの刊行ですが、
謎解き部分というか、真鍋さんや薬を作る機械、
殺された真由美や赤座、そして理想の国。
これらの謎が一気に解明された時は驚天動地の驚きでしたね(大げさか)
あまり書くとネタバレになりますから、書きませんが、
ミステリーランドの刊行とは思えない重厚なものを感じました。

少年ヨウイチに真鍋さんが語っていた宇宙人や透明人間の話が
最後にある意味を持つ事に繋がるのも良かったです。

刊行が2003年、もうそんなに時が経ったのですね・・・


透明人間の納屋 (講談社文庫)

透明人間の納屋 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 文庫



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最後のディナー [島田荘司]

本作はすでに御手洗は日本に居らず、
石岡さんの日々の苦悩が描かれます。

そんな苦悩を和らげてくれるのが
「龍臥亭事件」で登場した犬坊里美の再登場。
本作は里美に良い意味で振り回される石岡さんが
見物です。

表題作も「大根奇聞」も御手洗は見事にその謎を解きますが、
両作とも、自然のなせる技あるいは奇跡みたいなある種の
「トリック」(いやトリックとは呼べませんけど、あえて)が印象的。

しかし石岡くんの英会話はさすがにもう少し頑張ってほしい(笑



最後のディナー (文春文庫)

最後のディナー (文春文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/01/04
  • メディア: 文庫



最後のディナー (角川文庫)

最後のディナー (角川文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 文庫



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リベルタスの寓話 [島田荘司]

「やっぱり、御手洗!」
素晴らしい帯だ、と思いました(笑

さて本作には中編2編が収録。
しかも表題作は、その間に「クロアチア人の手」を挟んでの、
前編・後編という配置。
何か意味があるのか?と思いますよねえ。

2作品に共通するのは<民族紛争>
いや、非常に大きな、そして永遠の克復すべき課題とでも
いえばいいのでしょうか、難しい問題です。

「クロアチア人の手」では石岡氏が活躍。
といっても、相変わらず御手洗に電話で指示を仰いだり、
推理を聞き出す役割ですが(苦笑

「リベルタスの寓話」は
島田御大が「ブリキ人間リベルタスの伝承の物語は創作」とあとがきで
述べていますが、そうは思えない程の出来映え。
そして読者にはこの殺人が<見立て>ではないかと思わせるという
トリックにもなっています。

御大も「あとがき」で述べられていますが、
僕は今回のこの事件最大のテーマは「仮想通貨」かなと。
RMTという方法で仮想通貨を現実の通貨にする。
なんだか今の現状そのまんまですよね・・・

ヤフオクやいろんなオークションを見てみたら
わかるように、本当にゲーム内のアイテムやら
レアものやらがとんでもない高値で取引されてますし・・・
本当にどうしようもないよなあ・・・

あ、話がずれましたが、
御手洗の推理は相も変わらず素晴らしいの一言に尽きる。
なぜ被害者の身体から臓器が抜かれていたのか。
その理由を見事に看破します。

前作「UFO大通り」が日本に居た時の御手洗でしたが、
(僕はこの日本滞在時のお話が一番好きなんですが)
今回もまた楽しめました。


リベルタスの寓話 (講談社文庫)

リベルタスの寓話 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/08/12
  • メディア: 文庫



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UFO大通り [島田荘司]

おれはこの御手洗&石岡コンビを待っていた!!
横浜時代の御手洗&石岡コンビが活躍するこの頃を。
1981年、そして1993年に起きた奇怪な事件を
名探偵・御手洗潔が鮮やかに看破する。
まさに本格ミステリの金字塔。

表題作「UFO大通り」
鎌倉の自宅で、白いスーツに体をぐるぐる巻き、
ヘルメットとゴム手袋という重装備。
なぜそんな姿で男は死んでいたのか?

そして同じ頃、御手洗潔はこの男の近所に
住むラク婆さんが、家の前にUFOが行き交い、
戦争をしていたという話を聞き及ぶ・・・
ラクお婆さんが見たものとは何なのか?
そして男はなぜ奇妙な姿で亡くなっていたのか?
果たして彼はどう「殺害」されたのか?

もう一編「傘を折る女」
ラジオ番組に投稿された不可思議な話。
それは雨の中、わざわざ横断歩道で傘を
車に折らせる女が居たという奇怪な行為の話だった。
御手洗は、この話だけから、驚くべきストーリーを
石岡に話すのだが・・・

とにかくおもしろかったです。
こうした奇妙な謎の作品、かなり好きです。
とにかく全然想像もつかない、という設定を、
いかに御手洗が解決していくのか、
そこに面白さがあると思います。

また石岡くんを時折馬鹿にしたりと
まさに初期の御手洗&石岡コンビで、
良いですね。

Amazonのレビューでは手厳しいご意見もありますが、
この頃の御手洗を、もっと読みたいと思うのは
僕だけではないと思います。


UFO大通り (講談社文庫)

UFO大通り (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/10/15
  • メディア: 文庫



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摩天楼の怪人 [島田荘司]

ニューヨーク・マンハッタンの高層アパートにて、
死の床にある大女優ジョディ・サリナスは半世紀近く前の殺人を告白した。
しかしそのアリバイは完璧であり、不可能犯罪に思われたのだが・・・・
彼女の言うファントムとは?そしてこの摩天楼で起こった数々の事件の真相とは?
彼女と謎の解明の「賭け」をした若き御手洗潔は、
一連の謎を解くことができるのか?

御手洗21歳の時の活躍を描く本作。
過去と現在を行き来する体裁となっており、
過去の事件は一連の事件を担当した刑事サミュエル・ミューラーの視点で語られます。

はっきり言って僕はこれは一体どう御手洗は合理的説明をつけるのか
ホントに読めば読むほど気になって気になって仕方ありませんでした。

謎のメモ、老刑事からの話・・・これらから組み立てられる御手洗の推理そして
真相は非常に鮮やかです!
ある意味本作は人類の発展の歴史とも関わっていて、
まさに盲点を突かれたトリックだったなと感じました。

今wikiを見たのですが、御手洗は今年で61歳。
う~ん、年をとったなあ・・・
今後もその活躍を期待したいですね。


摩天楼の怪人 (創元推理文庫)

摩天楼の怪人 (創元推理文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/05/30
  • メディア: 文庫



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漱石と倫敦ミイラ殺人事件 [島田荘司]

島田荘司さんがミステリー文学大賞受賞された記念の出版。総ルビで登場です!
オリジナルは1984年。
実在の人物夏目漱石とあの名探偵シャーロックホームズが出会うという夢の物語です。

事件の怪奇性や不思議さはまさにコナン・ドイルの聖典を読んでいるかのような
感じでした。
その謎解きもまさにホームズそのもの。
ラストはちょっぴり感動させる展開となっていて、これがまたいい。

しかしなんといっても本作の魅力はワトソンの視点と漱石の視点の両者の視点から
描かれたホームズ像のあまりの食い違い!!(笑

自分の推理が外れると拳銃をぶっ放すホームズ。
揉み手やあからさまに変装がばれているホームズ。
推理が悉く外れ、最後は地面に落ちてしまうホームズ・・・
なんて情けないんだ!
漱石視点で描かれるホームズはどうしようもない人物で
なんとモリアーティ教授もワトソンが生み出した架空の人物だと言うのです。
ま、最後地面に落ちて頭を打ったはずみで元に戻るんですがね(笑

一方ワトソン視点では我々の知っているホームズそのものです。
果たしてどちらが正しいのか?これが僕にとっては最大の謎です。
わからん。どう考えてもわからん(笑

ホームズパスティーシュとしても、本格ミステリとしても
充分に楽しめる作品だと思います。
ぜひご一読あれ。


漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/03/12
  • メディア: 文庫



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暗闇坂の人喰いの木-80,000hit- [島田荘司]

アクセス数がのびるのはとてもうれしいことです。
本当にありがとうございますm(_ _)m

さて、本作は誰もが知っている御手洗潔シリーズ長編。
これは読んでいてワクワクする反面、どんどん怖くなっていきました(>_<) とにかく凄惨なんですなあ。 日本とスコットランドの事件を結びつける伝奇性、そして猟奇性、さらには奇想天外なトリック・・・ トリックは「斜め屋敷」や「占星術」にひけをとらない出来だと思います。 ただホラーというか、怖いです。うわぁ・・・と思わずイッテシマイマス。 最近は島田さんの著書は読んでないんですよね。 ミステリそのものをあまり読んでない気が・・・orz 夏なのでホラー系のものを読もうかなともちょっと思ったりしています。

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/06
  • メディア: 文庫


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斜め屋敷の犯罪-60、000hit記念- [島田荘司]

友人に薦められて読んだ一冊。
記憶が定かではないのですが、綾辻行人さんや有栖川さん、二階堂さんなどのほうを先に読んでいて、
島田荘司さんのものは全く未読というミステリ好きとしては問題ありすぎなスタイルでした(汗

あまりに有名なので解説するまでもありませんが、見事なトリック。
そして御手洗の変人ぶり(笑
星影龍三のようなふてぶてしさもあるけれど、彼よりも神秘的な謎に包まれているのが
また魅力でもあります。

「占星術~」もそのトリックはパクられるほど有名で、鮮やかでしたが、僕はこちらの方が
好きです。

ミステリ好きなら必読の一冊ではないでしょうか。

斜め屋敷の犯罪

斜め屋敷の犯罪

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/07
  • メディア: 文庫


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上高地の切り裂きジャック [島田荘司]

御手洗潔シリーズ中編。
先頃主人公に「昇格」した犬坊里美も登場します。

考えても見ると、御手洗ものは久々に読みます。
このブログでも書いてない気が。
「斜め屋敷」「暗闇坂」そして短編「メロディ」「ダンス」「挨拶」
これだけしか実は読んでないのです(ファンの方、すいません)

「上高地」もすでに御手洗は日本にいません。
しかもほとんど登場しない。電話のみ。
しかしさすがは名探偵。与えられた情報のみで
解決してしまいます。

犯人はなぜ臓器を持ち去ったのか?これが大きな謎であり、
事件解明の大きなキーです。
「暗闇坂」もそうでしたが、ちとこれもショッキングな描写もあります。

御手洗はもう日本には帰ってこないんですかねえ・・・

上高地の切り裂きジャック

上高地の切り裂きジャック

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫


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