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影踏亭の怪談 [大島清昭]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

四つの怪異が解かれるとき、あなたは見てはならないものを目にする

第17回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか全四編
怪談×ミステリの最前線

僕の姉は怪談作家だ。本名にちなんだ呻木叫子というふざけた筆名で、
専攻していた民俗学でのフィールドワークの経験を生かした
ルポルタージュ形式の作品を発表している。ある日姉の自宅を訪ねた僕は、
密室の中で両瞼を己の髪で縫い合わされて昏睡する姉を発見する。
この常識を超えた怪事件は、彼女が取材中だった旅館〈影踏亭〉に
出没する霊と関連しているのか? 姉を救う手掛かりを求めて
宿へ調査に出向くことにした僕は、宿泊当夜に密室で起きた
殺人事件の容疑者となってしまい……
第17回ミステリーズ!新人賞受賞作ほか、全4編を収録。

以下、ネタバレあり。






これは傑作短編集です。ミステリ好きの方はぜひ読んで欲しい。
私見ですが、
本書収録全ての短編は(広義・狭義含めた)密室という、極めて精緻な作りです。
確かに怪奇的現象、怪談は登場します。
しかし、その怪奇的現象をいかに事件解決に合理的に考えるか、
ある意味、どう「論理仕掛けの奇談」につなげるか、これが非常に上手い。
(「朧トンネルの怪談」などは好例でしょう。)

「ドロドロ坂の怪談」は、本筋の殺人事件は、「犬神家の一族」で登場する、
「無作為の作為」が実に上手く効いています。
本作は直球の密室が登場しますが、そもそもこの状況下ではどう考えても、
鍵を閉められるのは・・・となるのですが、この「無作為の作為」により、
事件が大混乱をするんですね。

一方で、中で語れる怪奇現象は、最後かなり深いところまで行ってしまい、未解決。
ここもまた恐ろしくてねえ・・・

一方、「影踏亭の怪談」は大半が怪奇小説です。ほとんど何も怪奇的な現象について
語られません。その意味では全く闇の中です。
本作が面白いのは、最初の探偵役である呻木の弟が、いきなり殺害され、
探偵役がバトンタッチされ、姉である叫子が弟の事件を、見事に論理的に
解決するパターン。まさか語り手がいきなり死亡は中々無いですからね。

本作では、叫子のまぶたが縫い付けられていた理由も、最後にしっかり説明
されていますが(むろん、ある意味怪奇的な説明ですが)、
それ以外の「影踏亭の怪談」の謎は、不明のまま。
「こうべ」が「頭」であることを叫子が指摘したのみ。

しかし、この最初の短編こそが、連作短編の始まりで、最後の叫子の悲劇にも
繋がるのは、実に練りに練った構成だなと。

とにもかくにも、次作『赤虫村の怪談』も早く文庫化を!


影踏亭の怪談 (創元推理文庫)

影踏亭の怪談 (創元推理文庫)

  • 作者: 大島 清昭
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/06/19
  • メディア: Kindle版






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