SSブログ

台風の目の少女たち [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

9月。台風が近づいてきている中、山間の町に住む高校2年生の須川安奈は、
母とともに体育館へ避難する。そこでは、東京の大学へ進学した恋人の章が謎の美女と一緒にいたり、
母が誰かと駆け落ちを計画していたり、父が部下の女性を伴って帰ってきたりと、
トラブルが続出。さらには殺人事件まで発生してしまい―。
安奈たちは、無事に嵐を切り抜けられるのか!?避難所を舞台に関係者たちの思惑が交錯する、
一夜限りの長編サスペンス。

辻真先先生が解説を書かれているのですが、物語の校正技術にグランドホテル形式
というのがあるようです。
大勢の登場人物を限定された場所に集めた作者が、そこへなにかの一石を投ずる。
石の正体は人間同士の愛憎であったり、火災であったりします」とのことで、
本物語では、それが台風であると。

しかし、赤川作品は、本物語に限ったことではありませんが、関係者の人間関係だけで
見事に物語を構成してしまいますから、辻さんの指摘の、いわば愛憎がすでにある状態に、
台風という、しかも近年に非常に多い、○○年に一度という非日常が放り込まれている
のです。
角川文庫では、これに近似しているのは『夜』でしょう。
あれもパニックホラーないしパニックミステリの部類に入ると思いますが、
これを読んでいて、まず真っ先に思い出しました。

台風によって暴かれる秘密も本書では語られていて、元々の愛憎劇(安奈と雅美、弥生と??)
にもさらに拍車がかかり・・・
松田拓郎の父親があっけなく死んでしまうシーンは、自然災害の恐ろしさを改めて知ると
ともに、拓郎がああなってしまうのも致し方ないと同情してしまいました。

ところで、本書の主役は一応須川安奈なのでしょうが、赤川作品常連からみると、
どう考えても琴平雅美が主人公に見えてしまう(苦笑
彼女の言動は(赤川作品によくある)突拍子もないものにみえて、上手く周りをまとめていく
という凄さがあるのです。
ラストまで読んでも、彼女への深掘りは実はなく(彼女自身が少し過去を話したりしますが)
その点はもう少し掘り下げて欲しかったなあと思うところ。

最後、生き延びた人たちが描かれ、それぞれの想いも語られたりし、一応ハッピーエンド
的な終幕となります。
しかし、赤川さんには、この後、自然災害に遭った人々の復興を描いてほしいと思いました。
日本の様々な所で行われている「復興」。これを現実とフィクション交えて、
描いてほしいですね。


台風の目の少女たち (角川文庫)

台風の目の少女たち (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/09/24
  • メディア: 文庫



nice!(7)  コメント(7) 
共通テーマ:

nice! 7

コメント 7

コースケ

鉄腕原子様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2020-10-18 20:35) 

コースケ

@ミック様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2020-10-18 20:35) 

コースケ

31様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2020-10-18 20:35) 

コースケ

サイトー様、nice!ありがとうございますm(_ _)m
by コースケ (2020-10-18 20:35) 

コースケ

ゆーじあむ様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2020-10-25 18:28) 

コースケ

ネオ・アッキー様、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2020-10-25 18:29) 

コースケ

Sachaiさま、nice!ありがとうございます!
by コースケ (2020-11-03 20:17) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。