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卒業したら教室で [似鳥鶏]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

伊神さんの卒業から丸一年、市立高校にまた卒業の季節がやってきた。今年は柳瀬さんをはじめ、
仲のよかった先輩たちが高校を巣立っていく。そんな、しんみりとしたある日の放課後、
秋野麻衣が、おずおずと不思議な出来事を目撃したと相談に来た。
鍵のかかった真っ暗なCAI室のパソコンに向かって、誰かが何かをしていたらしい。
調査の結果、書道室をはじめ部室棟でも同様に謎の人物の出現と消失の情報が寄せられる。
卒業生でもある教師によると、神出鬼没で出現する「兼坂さん」という
市立七不思議の一つだと分かるが……。
トリックメーカーである著者が贈る、〈市立高校シリーズ〉最新作。

以下、ややネタバレあり。






市立高校の名探偵・伊神さんが卒業して早1年。
ついに、柳瀬さんも卒業に。
しかしそんな中、市立高校の七不思議の八番目「兼坂さん」という謎が登場。
葉山くんは柳瀬さんの卒業に微妙な思いを馳ながら、伊神さんすら解けなかったと
言われる「兼坂さん」事件に挑む!


本書はシリーズ中でもターニングポイント的な作品ではないかと勝手に思いました。
なぜ伊神さんは名探偵なのか?その謎が実は解き明かされます。
この流れでいくと、次作以降は伊神さんは御役御免になるので、登場しない
可能性が高いのですが、どうなんでしょう?さみしすぎる。
しかしたまにご飯を作りに行っているとは、葉山くんもマメというか何というか・・・


途中に挿入される異世界モノは、12年後に描かれた「兼坂さん」事件の真相を
世界観と登場人物を上手く変えて暴いているという、これまた不思議な物語に
なっています。ちなみにこのパートは全部読めませんでした(苦笑)


5章において、葉山くんはこの「兼坂さん」事件の謎を伊神さんを相手に
名推理を披露するのですが、実は謎には続きがあったのです。


本世界の12年後で登場するの葉山くんとミノこと三野小次郎の2人のみ。
そして「未来-12年後(5)」において、12年越しに葉山君とミノは「兼坂さん」事件の
真相にたどり着きます。真の黒幕は誰であったのを、この異世界魔法物語の作者の
正体とともに知る事に。

それにしても「あとがき」の後に「第6章」とは、そしてその内容もなんだか
シリーズ完結の雰囲気が出ていて、もの悲しさを感じますね。

3年生に進級する葉山くんと卒業した伊神さん&柳瀬さんコンビの活躍は
果たして書かれるのかどうか。読みたい気持ちもありつつも、
本書の12年後で語られた内容が、続編を読んだとき、頭をよぎるだろうなあ。


卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

卒業したら教室で 市立高校シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/03/11
  • メディア: Kindle版







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その裁きは死 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

実直さが評判の弁護士が殺害された。裁判の相手方が口走った脅しに似た方法で。
現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。
わたし、アンソニー・ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、
奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて―。絶賛を博した『メインテーマは殺人』に続く、
驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。

本書は昨年の積ん読本でした。
ホロヴィッツ作品は、ホーソーンシリーズより、ピュントの方が好きだなあというのを
前作の時に書いたような記憶があります。
なんか読む機会を中々本書は得られず(?)、今年も上半期が終わるかという頃に読了。
以下、ネタバレあり。






前作ほどホーソーンの嫌味な場面は描かれてません(笑)
一方、担当するグランショー警部とミルズ刑事がトンデモなく不快です(笑)
ラストにこの二人が大恥をかくところが無かったのが非常に残念!

本書において謎を解くための大きな手がかりは実は2つ(個人的感想です)。
1つは普通に読んでいればわかる、被害者リチャードが遺した「もう遅いのに」という言葉。
この言葉は何を意味するのか、それがわかると真犯人に直結します。

もう1つは、最後のホーソーンの謎解きを読まなければ気づきませんでした。
ホーソーンの過去を探るために描かれたと考えられた読書会の場面。
そしてさらりと出る「絹の家」という本。
つまり、シャーロック・ホームズが本物語に隠された手がかりなんですね。
あくまで個人的な分析なので、全くの的外れかもしれませんが、
これは中々上手く潜り込ませたなーと言うのと、ある意味パスティーシュ的な意味合いも
含まれているのだと思います。

アンノとアダムズが隠していた極秘収入は、作家家業のリアルを描いているようでしたね。


その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/09/10
  • メディア: Kindle版







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鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース [島田荘司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

島田荘司さんといえば、知らない人はいないミステリー界の巨匠。毎年繰り出される作品には、
いつも斬新なアイデアと大胆な仕掛けが充満し、デビュー40年を迎えても創作意欲は衰え知らず。
ですが、読者諸氏のなかには、「難しそう」「怖そう」「大御所すぎて何から読んだらいいか迷う」
と敬遠している方もいるかもしれません。しかし、本書には、怖い場面もエグい場面もありません。
殺人事件はありますが、名探偵御手洗潔が事件を解き明かすうちに見えてくるのは、
単なる謎解きではなく……暗い過去にも挫けることなく、次の人生を踏み出そうとする女性や、
哀しいまでに人を想うことの純粋さ。名探偵御手洗の見事な解決に、
温かいものが湧いてくる名編です。

Amazonさんの解説がやたらに優しい文章!
しかし、島田御大の真骨頂は「」で括られている面は当然あるので、こういう
紹介もどうなんだという気もします。
驚天動地のトリック、と使い古した言葉かもしれませんが、それも当てはまる。


元々短編を長編に膨らませているので、やや冗長な感もあります。
ただ、本編で語られるのは過去の事件で、その際の容疑者の回想が大部分を
占めていて、よりその容疑者の心情を理解できるようにはなっていますね。

京都大学在学中の御手洗潔の活躍で、少々トリッキーな姿を垣間見えますが、
上記に書いたように、真相は先に容疑者の回想で明らかにされ、御手洗の推理は
(読者からみれば)それをなぞる形で披露されます。

また「御手洗潔と進々堂珈琲」で登場した「ワトソン役」のサトル再び。
彼は御手洗学生編で登場するんでしょうかね?

ところで、全体を構成する大きな核である「鳥居の密室」
これは実際の京都の場所を見たことがあるかどうかで大きく本書の楽しみ方含め
変わりますね。
私には想像ができませんでした(汗)


鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

鳥居の密室世界にただひとりのサンタクロース (新潮文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/27
  • メディア: 文庫







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誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート [歌野晶午]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

引きこもりの少年・馬場由宇は、近所に住む大久保家の幼児虐待を疑っていた。
ある日、件の幼児、真珠を炎天下の車内から助け出し、弾みで自宅に連れ帰ることに。
だが、目を離した隙に、何者かが真珠を連れ去ってしまった!困り果てた由宇は、
いくつもの難事件の解決に関わった友人、舞田ひとみに助けを求める。
しかし、ひとみの推理で一度解決したかに見えた事件は思わぬ形に変貌していき…。
謎が謎を呼ぶ誘拐ミステリ!

光文社文庫から刊行されていた舞田ひとみシリーズが、角川文庫に移って復活!
第1作「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」が2010年。
第2作「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」

が2013年刊行で、
なんと第3弾刊行に(文庫化まで)9年もの歳月が流れました。
ひとみも17歳、高校生になりました。
前2作が短編集であったのにたいし、本作は初の長編。
叔父の舞田歳三、母の野々島愛も登場します。一方で父親は全く登場せず!
思春期の多感な年頃というのを反映しているのでしょうか。

本作、ミステリとして見ると、誘拐事件の解決はひとみの名推理が見事です。
一方で、ひとみの成長物語としてみると、少し悲しい側面も見えますね、
また、最大の問題は、実質的主人公の馬場由宇でしょうね。
こいつがどうしようもない。自分で判断しない、良い方向にばかり考える、そして
何もしない、ひとみを頼るのみ。
読んでいてここまでイライラするのは久しぶりです。
特に、最後の「かなり長めのエピローグ」は、ひとみがひょっとしたら彼のために
身の危険が相当あったのに、ほとんど危機感を感じていないのがあまりに人ごとすぎる。

ひとみ自身は彼の生い立ちと自分の生い立ちをみて、自分と同じ不幸な17歳、自分は
馬場から明日を生きる力をもらっていると。
彼女自身が納得してるなら良いのですが、読んでるこっちは納得いかん!と怒りを
覚えてしまいました(苦笑

しかし、本作で推理を披露していた頃の自分を「黒歴史」と呼んでいますが、
次作、おそらく3年後、彼女が20歳(つまり大学生)になったとき、
はたしてどういう心境になっていて、どんな生き方をしているのか、
それもまた楽しみなのです。

今回角川からの出版に変更になったことで、過去作がリニューアルして登場していますが、
ぜひ第4弾も期待してます。
しかし、角川文庫からシリーズが登場するのは良いのですが、
タイトルは光文社文庫の方がいいなあ。
本作も原題「コモリと子守り」は秀逸過ぎる。


誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 文庫



名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート (角川文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/05/21
  • メディア: 文庫



名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート 舞田ひとみシリーズ (角川文庫)

名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート 舞田ひとみシリーズ (角川文庫)

  • 作者: 歌野 晶午
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/02/25
  • メディア: Kindle版







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