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密室蒐集家 [大山誠一郎]

第13回本格ミステリ大賞受賞作品。
原書房・ミステリーリーグからの出版でしたが、
文庫は文春文庫から。

解説の千街晶之さんが、オールタイム・ベスト選出があれば、
本作をまず挙げたいと書かれていますが、
千街さんがそこまで言うのもすごい。

全5編からなる短編集で、その事件は1937年から2001年までと幅広いのですが、
この各話の時代設定にももちろん意味があります。
どの時代に起きた事件にも、
必ず「同じ」風体の「密室蒐集家」が登場します。

この時系列に焦点を当てた面からオススメを考えると、「柳の園」と「理由ありの密室」2編。
前者の主人公・鮎田千鶴が再び登場し、蒐集家との邂逅がとても印象的です。
すでに「柳の園」事件から50年ほど経過しているのに、蒐集家の風貌は全く変わらず、
そして、彼は彼女のことも、その事件も記憶している。
千鶴にとって、これほど嬉しいことはなかったでしょう。

「理由ありの~」では密室の謎そのものではなく、なぜ密室が作られたのか?という謎に
まで彼が登場するという、作品群の中では変化球的な作品で、
それもおもしろい。
彼は言います。「密室に関する謎がある限り、私は現れます。」と。
つまり、本作はどのようにこの密室が作られたのか、を解くのではなく、
なぜ作ったのかを解き、そして本当の本事件のキーワードは
ダイイングメッセージにあるのです。

そして本作の各事件の特徴は、蒐集家による犯人当てです。
これが唐突で、かつ登場人物がこれだけ少ない中で、良くこれほど
意表を突く犯人は素晴らしい。

「少年と少女の密室」は、密室のトリックではなく、ある種のミスリードと
意外すぎる犯人の組み合わせの2点で、個人的には本作愁眉ですね。

本書のようなミステリを読めて、実に良かった。





密室蒐集家 (文春文庫)

密室蒐集家 (文春文庫)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/10
  • メディア: 文庫



密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

  • 作者: 大山 誠一郎
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/10
  • メディア: 単行本



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コメント 1

コースケ

Ujiki.oOさま、nice!ありがとうございます!

by コースケ (2015-12-15 23:23) 

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