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名探偵誕生 [似鳥鶏]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

僕は、名探偵になる。世界一大切な人のために――
切なくて、愛おしい青春本格ミステリ!

小学4年だった僕は、となり町の幽霊団地へささやかな冒険に出た。
その冒険に不穏な影が差したとき助けてくれたのが、近所に住む名探偵の「お姉ちゃん」だった。
彼女のとなりで成長していく日々のなかで、日本中を騒がせることになるあの事件が起きる――。
ミステリとしての精緻さと、青春小説としての瑞々しさが高純度で美しく結晶した傑作。



本書は星川少年の成長物語であるとともに、初恋の人をずっと想い続けているという、
青春小説ともいえるでしょう。隣に住む千歳お姉ちゃんとともにある意味歩んでいく人生。

第5話構成ですが、私の愁眉は第2話「恋するドトール」。
星川少年がもらったラブレターから、この驚異的な謎に行き着くのはすごいの一言。
一方で、このトリックを成り立たせた犯人の恐ろしい執念も感じますね・・・

第4話・第5話は本作で殺人事件が描かれ、さらに少年にとっては千歳お姉ちゃんの彼氏が
登場するという、衝撃の回でもあります。
そして新たな名探偵が登場する回でもあります。
第4話はこれまで通り、頼りっぱなしだった千歳が探偵役を務め、
第5話は、星川少年が名探偵として「誕生」します。

トリックでいえば本話のトリックはかなり見事です。ただし犯人とそれをかばった
お姉ちゃんの彼氏の対応がちょっとなあ・・・。
ラストも、個人的にはそのまま二人が結婚で良かった気もしましたね。


名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

名探偵誕生 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/12/03
  • メディア: Kindle版







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あいにくの雨で [麻耶雄嵩]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

町に初雪が降った日、廃墟の塔で男が殺害された。雪の上に残された足跡は、塔に向かう一筋だけ。
殺されたのは、発見者の高校生・祐今(うこん)の父親だった。8年前に同じ塔で、
離婚した妻を殺した疑いを持たれ、失踪していた。母も父も失った祐今を案じ、
親友の烏兎(うと)と獅子丸は犯人を探し始める。そんな彼らをあざ笑うように、
町では次の悲劇が起こり――。衝撃の真相が待ち受ける、青春本格ミステリ。


以下、少しネタバレあり。



巽昌章さんの解説が、この作品の麻耶作品群内での位置づけ等々、
非常に良くまとめられていますので、ぜひそちらもあわせて。

メルカトル鮎で周囲を騒然とさせるデビューをし、そのシリーズを重ねてきた
講談社で、本書が刊行されたというのは、同時代的に考えると、千街晶之さんの
言葉も頷けるところがありますね。

私が本書を読了した後に感じたのは、『隻眼の少女』に似た印象を受けました。
それと、登場するメインキャラクターの名前が、相変わらず麻耶先生らしいという(笑)
あれ、なんて読むんだっけ?と何度も確認してしまいました。

本書は一応青春本格ミステリとあるのですが、
塔で起きた一連の事件の謎と、生徒会での不正を追うスパイ活動の2つで
主に構成されています。
後者の活動は、青春ミステリと銘打つミステリの中でほとんど見られない話で、
結構珍しいと思いつつ、実際、もう少しこちらをメインにしても良かったのでは
ないかという思いもあります。

前者は,私は赤川次郎先生で慣れすぎているのか、高校生が名探偵役として活躍するのが
当たり前になってしまっているので(笑)、そこまで驚きませんが、
鳥兎と獅子丸が探偵役として活動していいきます。
むろん、後者もこの二人がスパイ役です。

しかし、ミステリの部分については、最初の冒頭で塔からの脱出トリックが読者に
早々に明かされ、その後はそれに至る経緯が書かれていくのが本書の特徴でしょう。

つまり、なぜ犯人が塔でこのような犯罪を行ってきたのかを、読者が読み解いて
いくというのが、本書の謎解きになるのだろうと思います。

とはいえ、この結末は予想できそうで、予想出来なかった、な・・・
反抗期がこちらの想定や予想を遙かに超えたと考えるべきかと思いましたが。

それまでの事件の謎を解き明かすという行動はそもそも何だったのかいう
疑問も当然出てきますし、ラストも果たしてこの後どうなるのか、余韻を残す
終幕となっているのも気になります。

なんとも評価というか、感想が難しい作品でした。


あいにくの雨で (集英社文庫)

あいにくの雨で (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: Kindle版







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白魔の塔 [三津田信三]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

『黒面の狐』で連続怪死事件を解決し、炭鉱を後にした物理が「復興の現場」として
次に選んだ職場は「灯台」。戦中は軍事設備としての側面もあり、海運の要である灯台を
献身的に支える灯台守という仕事にやりがいを見出した物理だが、新たな赴任先である
轟ケ埼灯台にいわくいいがたい不穏なものを感じる。案の定、灯台に至る道から怪異に遭い、
「立ち寄るな」と警告されていた山中の一軒家に迷い込んでしまった。
そして、ようやく辿りついた灯台で物理を待ち受けていたものは――。

そこそこネタバレあり。




物理波矢多シリーズ第2弾。
前作『黒面の狐
を読んだのがおおよそ2年前なので、波矢多に出会うのも久しぶりです。

前作が、三津田先生が得意とする、ホラーや怪奇が全面に出されておらず、
かなり本格ミステリだったのに対して、本作はまるで違いました。
正直、読んでいて良い意味で愕然としてしまいました。傑作です。

3部構成で描かれる物語ですが、なんと第1部は轟ケ埼灯台までようやく到着する所
までしか描かれていません。白衣の森は、迷いの森レベルではなく、
不思議のダンジョンレベルの道程ですね(笑)

それはやや冗談としても、この1部で語られる白子村、白神様、白屋、白もんこ、
これらのキーワードや波矢多が体験した不可思議な出来事は、そっくりそのまま
2部の入佐加灯台長が体験し語られる物語とそっくりそのままなのです。

なんという構成なのかと驚いてしまいました。すでに怪異的な現象は
描かれているとしても、果たしてこの物語は何を描こうとしているのか。
白子村や白神様、そして憑物筋の家と思われる白屋、白もんこと呼ばれる化け物。
これらの謎を波矢多が解き明かすのか?とぼんやり考えていたのですが、
まるでそんな気配はない。そもそも舞台はほとんど灯台です。

3部、ここは波矢多の真骨頂でもあり、物語が一気呵成、怒濤の展開を見せ始めます。
まずかつて横山教官から聞いた、アイリーン・モア島の灯台の事件。
この謎の事件に1つの合理的解釈を波矢多が示します。

この解釈、さらっと書かれているのですが、「日記」という誰かの筆記体の内容を
どう捉えるのかということを1つの見事な推理だなと。
綾辻行人先生の『黒猫館の殺人』もこの『手記』を元に大がかりなトリックが仕組まれています。

さらに自分が出遭った白もんこにも合理的解釈を示します。
この解釈、なるほどと思いつつも、彼がそこまでやるのかなあという疑問。

そもそもの前提として、白子村の人々は白衣の森に入ることに恐懽している
のにも関わらず、ここまで堂々(?)とした振る舞いが取れるのか?
いや、そもそもその前提が間違いなのか。波矢多の弁当箱に入れられていた
白屋に泊まるな、という警告は、彼が入れたのか?
彼が入れたとすれば、実は波矢多の解釈と一致するところも多いのですが、
なんとも解答は示されず。

入佐加灯台長へ突きつけた、1つのある事実は確かに驚きました。
「路子」の推理は秀逸。「白」が多いと波矢多が考えていたの描写がありましたが、
それがここに通じてくるのかと思いました。

しかし問題はその後なのです。3部が「五里霧中」というタイトルを付けられているのは
この後があるからでしょう。417頁からの展開は全く予想出来ません。

2部の入佐加灯台長の体験談はともかく、1部最後の轟ケ埼灯台到着と灯台長夫妻との出会い、
ここからが全て狂っているのです。
そもそも入佐加灯台長と路子、そして灯台守の浜地はどこへ消えたのか?
そしてなぜ消える必要があったのか?
全くその点は語られません。余計に恐ろしく、波矢多が記憶を失うのも無理は無いでしょう。
白い巨人が迫ってくるという波矢多の悩みは、彼の推理がある種正しいことを示して
いるのですが、この轟ケ埼灯台に波矢多が着いた時から起こっていた事象は、
一体何なのか。
彼が海上から灯台へ向かっている時に見た、白い人=浜地or入佐加だったんでしょうか?
ここを怪奇(灯台にある怪奇の1つ)として残されてしまうというのは、
本書の性格から納得できる部分はあるものの、ここにも波矢多の合理的解釈を
どうにか付けてもらいたかったなあ。まあこれは高望み過ぎるのでしょうけど。

前作とは全くベクトルの違うシリーズですが、私にとってはここ最近読んだ中では
紛う事なき傑作でした。



白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

白魔の塔 (文春文庫 み 58-2)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/06
  • メディア: 文庫







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やぶにらみの時計 [都筑道夫]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

昨日までの『きみ』はもう居ない。
恋人、友人、知人に否定された男の奇妙な自分探しの迷宮。

「あんた、どなた?」妻、友人、そして知人、これまで親しくしていた人が〝きみ〟の存在を否定し、
逆に見も知らぬ人が会社社長〈雨宮毅〉だと決めつける──
この不条理で不気味な状況は一体何なんだ!真の自分を求め大都市・東京を駆けずり回る、
孤独な〝自分探し〟の果てには、更に深い絶望が待っていた……。
都筑道夫の推理初長篇となったトリッキーサスペンス。
幻の連載長篇『アダムと七人のイヴ』第一話も特別収録。

「トクマの特選!」として復刊した都筑道夫先生の最初の1冊。
すでに『猫の舌に釘を打て』も刊行されています。

トクマの特選!、とは復刊レーベルであり、
Z世代に読んでほしい名作」としてミステリやSFのほか、一般小説、エッセイ、
ノンフィクションなども刊行される。、とのこと。

こうした試みはうれしい限りですね。
笹沢左保先生の作品群もすでに刊行されていますし。
徳間文庫の購入がどんどん増えそうです。

ところで都筑道夫先生作品は、河出書房さんや筑摩さんからも次々と復刊されており、
ちょっとしたムーヴメントのような感じにここ数年なっています。
この勢いにのって、物部太郎も出てほしいなあ。
(ちなみに電子書籍版は出てます。)

さて、本書は都筑さんの初長編作品とのこと。
この辺りの話は、解説で法月綸太郎先生が非常に詳しく書かれているので、
ぜひそちらをじっくり読んでください。

私の中ではかつて創元推理文庫で復刊した「退職刑事」がやはり浮かびますね。
全て購入しました。今調べてみたら、なんと元々は徳間書店刊行とは・・・
いや、ぜひともトクマの特選!で再び!!

話が色々と飛んでしまいました。
本書、タイトルは当然聞いたことがあるのですが、初読です。
そもそも「やぶにらみ」という言葉、最近では馴染みが薄いのではないでしょうか。

『日本国語大辞典』によると、
「藪睨』:①物を観るとき、両眼の視線が平行しないで、一眼が他方を向く状態の俗称。斜視。
     ②言動・思考などが見当違いなこと。

明らかにこの小説では②の意味を指しています。
しかし、このタイトル、秀逸だなあと感じました。

そしてやはり文体、「きみ」という二人称で描かれる全編。
(これも詳しくは解説を)

自分が生きてきた世界が一瞬にして変わってしまうという、
衝撃的な朝から始まる物語。
自分は浜崎誠治だと思っていたが、実は違うのか・・・?という所まで
追い詰められていく「きみ」
特に255頁は、そう思い込んでいるということを、<殺し屋>こと鈴置の猫の話から
引用して、かなり哲学的な考えまで及んでいるところが印象的です。

ところで、猫についてはかなり残酷な描写も出てくるので、
その点は閲読注意ですが、先ほど挙げた『猫の舌に釘を』もタイトルだけみると、
かなり残酷というか目を背けたくなるタイトルです。
都筑先生は何か猫に独特な観点があったのかなあ、とふと考えてしまいました。

狂言回しというか、名探偵役?で登場する猪俣がかなり良い味出してます。
このまま彼が一気に謎を解くのかと思っていたのですが、結構情けない状態になるところも
ちょっとおもしろい。
むしろ、たまたま一緒にいた、女性・千沙子の方が最後は活躍するという・・・(笑

本書の最大の問題点と私が思うのは、やはりラストなんだろうと思います。
自分を他人に仕立てたのは誰か、そうしなければならないのはなぜか。
これらを追って浜崎は1日中奮闘しますが、最後の犯人の独白というか、
それが実のところよくわからないんですよね。

しかもかなりあっさりしてます。
むしろラストの浜崎の感想(279頁)の方がより読ませます。

都筑さんなりの推理作家としての<再スタート>の作品として試行錯誤した
結果なのだろうか。他の作品や評論含め、色々と読んでみないとわからないのかも
しれませんね。


やぶにらみの時計 (徳間文庫)

やぶにらみの時計 (徳間文庫)

  • 作者: 都筑道夫
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/11/09
  • メディア: 文庫







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アリスの国の殺人 [辻真先]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

コミック雑誌創刊に向けて鬼編集長にしごかれる編集者の綿畑克二。ある日、
行きつけのスナック「蟻巣」で眠りこけ、夢の中で美少女アリスと出会う。
そして彼女との結婚式のさなか、チェシャ猫殺害の容疑者として追われるはめになった。
目が醒めると、現実世界では鬼編集長が殺害されており、ここでも殺人の嫌疑をかけられてしまう。
二つの世界で無実を証すために事件の真相を追うことになった。
日本推理作家協会賞受賞の長篇ミステリー。


以下、ネタバレあり。





相当前から気になっていて、徳間も、双葉社もいずれも絶版?で全然読むことが叶わなかった
作品でした。今回、徳間文庫さんから念願の復刊ということで、早速に購入。

アリスの世界(夢?)と現実世界を行き来する主人公・綿畑克二。
彼が最後に行き着く先はどこなのか・・・?

ともかく、アリスの世界が不条理極まりない世界です。
アリスはともかく、ニャロメやヒゲオヤジ(伴俊作)、さらには鉄人28号まで
登場します。しかも、鉄人28号はこの世界で起きたチェシャ猫が<密室>で殺されている
という事件を解く、最大のキーにもなります。

とにかくレベルの高い言葉遊びが凄い。辻真先御大はこれは執筆していて、
気持ち良かったのだろうなあ。
章タイトルの反射(鏡)表現、しりとりで進む文章、証人から白兎への近似語遊び、
挙げればきりがありません。

それでいて、この夢の世界の殺人事件が実に凝っている。密室を逆手に取ったトリックや、
『仮題・中学殺人事件』の意外な犯人に通じる、犯人を裁く法廷の裁判長が犯人という。
御大のこだわりが見えますね。

現実の世界では『深夜の博覧会』で(私にとってはなじみ深い) 那珂一兵が登場。
こちらの事件はアリバイ崩しがメインとなりますが、そもそも事件の大前提を覆す
『蟻巣』の面々の活躍(?)。明野編集長の執念とも言える思いが彼彼女を
動かしたのでしょう。

しかし、結局こちらの事件の最後はどうなったのだろうか。
最後を飾る章は夢の国の話で、301頁の「これじゃおわらない!」は何を指すのでしょうか・・・
続編にあたる『ピーター・パンの殺人』に続くということなのでしょうか。

ここまで遊びを盛り込んで、それでいて夢と現実いずれの事件も見事な作品。
合わない方も居られるかもしれませんが、復刊したことでぜひ手にとってほしいものです。


アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

アリスの国の殺人 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 辻真先
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/07/08
  • メディア: 文庫







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こうして誰もいなくなった [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

仮想通貨で成功した若き大富豪に招待された10名の男女が、
"海賊島"で巻き込まれる不気味な連続殺人事件――クリスティの名作を大胆に再解釈した表題作
をはじめ、書店店長の名推理が痛快な「本と謎の日々」、肥大化した男の欲望と
巨大生物の暴挙に恐怖する「怪獣の夢」、遊び心に満ちたタイポグラフィが楽しい「線路の国のアリス」など多彩な14篇を収録。ジャンルを超越した物語世界の魅力を堪能できる、唯一無二の作品集!


ちょっと更新が空いてしまいました。
昨年発売された、有栖川有栖先生のノンシリーズ短編集。
少しネタバレ。






「線路の国のアリス」。実はこの本の前に読んでいたのが『アリスの国の殺人』で
なんという偶然!と思いました。
P.35のお遊びなど、まさに「不思議の国のアリス」でも、そして『アリスの国の殺人』でも
あり、「アリス」を舞台に、様々な異なるミステリが描かれていて、いやいや驚きました。
それだけに小林泰三さんの逝去が悔やまれてなりません。
最後、夢から醒め、現実世界に戻ったかのようなアリス、そこにはエキシャ猫と
白ウサギが・・・アリスは再び追いかけますが、果たしてこれはまだ夢の中なのか、
それとも「鏡の国」へ今度は向かうのか。少し余韻を残した終わり方もまた良いです。

「劇的な幕切れ」。これ短編ながら見事なミステリ。サスペンス、ホラーでも
あるのかもしれませんが、主人公のラストをどう考えるか?というのもあるのですが、
<パープル>というある種の趣味というか、そういうものを持つ人も当然ながら
居るのでしょうね。

「未来人F」は江戸川乱歩が生んだ「少年探偵団」シリーズのパスティーシュ。
解説だと、パロディとしてますが、やはりパスティーシュの方がしっくりくる気がします。
それは表題作も同じこと。

パロディとパスティーシュの違いは、確か『シャーロック・ホームズに愛を込めて』か
ジューン・トムソンの『シャーロック・ホームズの秘密ファイル』の解説か、
何か書いてあったと記憶してます。

閑話休題。
この「少年探偵団」はいわゆる「通俗小説」になるのでしょうが、
有栖川さんがあとがきで書かれているように、小学生が夢中で読むのはよくわかります。
明智小五郎の登場のかっこよさも良いし、二十面相との対決も良い。
ただし、本作は最後にメタ要素があるのが少し捻ってますね。
(だからこそ、パロディと評したのかもしれません。)

「本と謎の日々」は大崎梢先生を読んでいるかのような錯覚を受けましたが、
それもそのはず。あとがきで書かれていますが、本作は『大崎梢リクエスト!本屋さんの
アンソロジー』所収作品。シリーズ化してもよい作品!

さて表題作「こうして誰もいなくなった」
いやあ、さすが有栖川先生。最後の「密室殺人」は見事の一言。
密室の中に死体を入れるという逆転の構図。『そして誰もいなくなった』パスティーシュ
としても第一級の作品ではないでしょうか。

それとやはり探偵役には触れない訳にはいきません。響・フェデリコ・航。
名探偵。<怪奇八十面相事件>を解き明かした、警察にも知られる人物。
ポワロをさらに奇抜にした感じにしたかの、星影龍三を私は思い出しました(笑
何で勝手にミドルネームを入れているんだwww
そして、なぜ事件が起きている事を知ったのだ?!
いいですねえ。彼の事件簿を作品にしてほしい。


解説では『殺しの双曲線』、『獄門島』、『パノラマ島奇談』といった作品への
オマージュも指摘していますが、なるほどと思いました。

『そして誰もいなくなった』の偉大さはもはや語るまでもありませんが、
『殺しの双曲線』に影響を受けて書いた、というパスティーシュも
あるかもしれませんね。



こうして誰もいなくなった (角川文庫)

こうして誰もいなくなった (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/11/20
  • メディア: Kindle版







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