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アルファベット荘事件 [北山猛邦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

巨大なアルファベットのオブジェが散在する屋敷『アルファベット荘』。
岩手県の美術商が所有するその屋敷には、オブジェの他に『創生の箱』と呼ばれる
関わったものは死に至るという箱もあった。雪が舞う12月のある日、
そこで開かれるパーティに10人の個性的な面々が集う。
しかし主催者は現れず、不穏な空気が漂う中、
夜が明けると『創生の箱』に詰められた死体が現れて――。
売れない役者、変人にして小劇団の看板女優、そして何も持たない探偵が、
奇妙な屋敷の幻想的な事件を解き明かす! 
当代きってのトリックメーカー・北山猛邦の、長らく入手困難だった初期長編が待望の復刊!


以下、ややネタバレ。




元々デビューが「城」シリーズであった北山先生。
大きな意味で「館」シリーズに連なる作品群ですが、本書はそれに見事に合致する
作品という印象を受けました。
東京創元社さんの復刊は流石です。


『創生の箱』のトリックはさておき(笑)、巨大なアルファベットのオブジェが何らかの
トリックに用いられているのは誰しも読んでいて、気付くはずです。

物理トリックとして、箱に死体を運ぶことが出来たのは誰か?=犯人である、という推理は
非常に鋭く見事。
ただ、箱そのものがどういう物なのか、これも絵入りで説明してほしかったなあ。
あとアルファベットの上を移動する、というのが結構事前にしていたとしても、
犯人としては、ヒヤヒヤだったろうなと。

さて、本作は本書のみでシリーズ化もしていないのですが、
それゆえに、より謎が深まる点も多いなと想いました。

単なる謎解き役=探偵役としての機能しか果たさない、と「あとがき」で北山先生も
言われている「ディ」。だからこそこの通称なのですが、
彼の記憶がなぜ無いのかとか、シリーズ化して掘り下げて欲しかったなあ。

プロローグで語られる少女と少年の話。登場人物でこの二人は誰なのか?というのも
楽しみの1つなのですが、
最後に、成長した少女が「不可能犯罪を必要としている人がいるの」という言葉は、
明らかに「ディ」との何らかの繋がりを示唆するものなので、余計に気になりました。

オーパーツ専門の探偵・春井もなかなかの曲者で、再登場してもらいたい。
というか、このオーパーツを鍵として、このシリーズ化をぜひ!


アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

アルファベット荘事件 (創元推理文庫 M き 7-5)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/10/12
  • メディア: 文庫






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ランチ探偵 彼女は謎に恋をする [水生大海]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

すべての構図が、見えました――
美味しい謎を、いただきます!

ランチ合コンにいそしむ阿久津麗子と謎には目がない天野ゆいかの迷コンビには、
コロナ禍のなかでも新たな出会いが待っていた。学校の廊下に置かれていたお稲荷さん、
百貨店に届いた不穏な脅迫メール、キッチンカーへの嫌がらせ…
合コン相手が持ち込む謎に目を輝かせ推理するゆいかに、麗子は天を仰ぎ…。
恋の行方も気になる本格グルメミステリー。


以下、少しネタバレ。



このシリーズの最新作が、この「コロナ禍」で読むことが出来るとは思いませんでした。
しかも、内容もしっかりとコロナ禍を踏まえているという(書き下ろしもあるのです!)
さすが水生先生。


コロナ禍だろうが、なんだろうが、イイ男を見つけたいというパワーは誰にも
負けない阿久津麗子、充分なコロナ対策をし、ステイホームをしっかり続けるも、
謎には眼が無い天野ゆいか。
本書では、阿久津麗子はどちらかというと、男よりも美味しい食事が主目的に
なっているように思いましたが・・・


第1話の「お稲荷さん、いまは消え」は、コロナ禍前のお話。
この謎の答えは、試みとしては非常に素晴らしいけれども、
確かに食中毒とかアレルギーとか、そういったことを考えると難しいですね。
彼の言う、当時がいつなのかはわかりませんが、こうした試みをした校長は
すごいなあと思います。

そして2話以降が、コロナ禍でのお話になります。
とくにリモート飲み会やオンライン合コンというのが登場し、「ずっとお家で暮らしてる」
では、このオンラインならではのトリックが登場します。
特にこの3話は、それ以外にも麗子の合コンに対する立ち位置が若干変わっていることも
特筆に値しますね(笑)

「同じ空間で同じものを食べて、あれが美味しいとかこっちが美味しいとか、そういう話を
するのも合コンの楽しみのひとなわけ。盛り上がりたいの。」(179頁)

これは麗子の立ち位置変更発言に読めて、一方でコロナ禍で集まれなくなった人たちの
一種の叫びでもあるのでしょう。

4話もオンラインならではのお話。というか、3話と4話は実は合コンではないという。
3話は二人ともオンライン飲み会であるとわかっているので良いのですが、
4話は、ゆいかの謎解きにより判明するという、ちょっと男たちがずるいですね。

しかし、本トリックや犯人も、コロナ禍という特殊状況下であるから生じてしまった、
悲しい話ではありますね。ラストでうまく解決できそうなのが救いです。

第5話は個人的には本作愁眉。永田&久野の行動を看破するゆいかの謎解きだけでなく、
久野のその先の想いまで見通したところ、そしてラストの爽快感がイイですね。
「誰かと出会うって楽しいことなんだって。」(324頁)という麗子のセリフがまた良い。

ランチ合コンが当たり前のようにできる日常が早く戻り、
麗子にも幸せが訪れることを祈りつつ。


ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

ランチ探偵 彼女は謎に恋をする (実業之日本社文庫)

  • 作者: 水生 大海
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/02/04
  • メディア: 文庫







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シャーロック・ホームズたちの新冒険 [田中啓文]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

ベーカー街で出会わなかったホームズとワトスンの“最初の事件”、
手塚治虫の原稿紛失を巡るトキワ荘での騒動、死後自分を殺した犯人を推理する明智小五郎、
正岡子規が推理する松尾芭蕉の死の真相、〈黒後家蜘蛛の会〉に持ち込まれたアシモフが
クラークにしたためたとされる手紙の謎……。推理小説の名探偵から実在する歴審の偉人まで、
誰もが知る著名人たちの知られざる探偵行全5編を収録した、オマージュミステリ短編集第二弾!


以下、ややネタバレあり。




ブログを見たところ、どうも第1弾「冒険」は購入していないようですねえ。
うーん、記憶が定かで無い。


正直どれも面白いのですが、やはり背景や元ネタを知らないと、このシリーズは
当然ながら楽しめません。
私、恥ずかしながら<黒後家蜘蛛の会>は未読だったので、そちらを読んでから
再読したいと思います・・・

「トキワ荘事件」、この話で一番気になったのは『イナゴ身重く横たわる』なる書物。
解説の北原尚彦さんが触れていますが、なるほど、そういう使い方なのかと。


「二人の明智」、名探偵・明智小五郎と明智光秀が共演する豪華作品。
明智が殺害されるという、ショッキングな出来事から始まりますが、
メインは明智光秀の謀反と、そこから始まる壮大なる仮説!
当然ながら、そこにはダジャレが上手く取り入れられています(笑
それも[附記]にまで!
「明智光秀」がなぜ謀反を起こしたのか?この謎を解くよう、明智光秀から依頼された
明智小五郎のダジャレ(失礼!)連想はお見事。小栗栖村まで出てくるとは・・・
驚きですね。

「二〇〇一年問題」、「ロボット三原則」と「HAL団治」が笑いました。
いや、前者は笑うところではないのですが、アシモフが提唱した原則で、
これが物語上、鍵を握るという、誰もが知っていたのに、この話の中で
誰もそれに気付かなかったのかという、メンバーのマヌケさが良いですね。

後者はもうダジャレを超えて、素晴らしい想像力です。

「旅に病んで」。この話は正岡子規と高浜虚子の物語なのですが、
正岡子規が松尾芭蕉の弟子である服部土芳の書いた書状を見つけたといい、
そこから、松尾芭蕉の暗殺、彼の正体、遺した句等々、壮大な話に繋がっていきます。

松尾芭蕉が隠密であるとか、忍者であるとかいう説は昔から有名だったと思いますが、
本書はこれを逆手に取っていて、実はその真逆だったという新説を披露しています。
これは正直言って驚きました。説得力もしっかりしていて、上記作品群の中では、
一番面白かったです。
あと圧巻は257~258頁の箇所で、「夢のまた夢」「聚楽第」と、さらに虚子が
推理を進めて、正岡子規が示そうとした仮説を補うところがいいですね。
が、それら全てをひっくるめての258頁が、やはり一番。
他作品群と異なり、全て悪戯だったとしたのは、田中さんなりの何か配慮があったのかなあ。

「ホームズ転生」。ホームズとワトソンが同居生活しなかったという、別の時間軸の物語。
いやあ、これは読んでいて結構きつかったなあ。ホームズ好きとしては、
こんなホームズ、見たくないという。
ラストでこの夢を見ているのがホームズというのも、中々捻りが効いていて、
ホームズ自身も、ワトソンと同居していなければ名探偵にはならなかった、という
深層心理があったことを示唆していますね。
決してワトソン=ストーリーテラーではない、という。

解説は先にも書きましたが北原尚彦さんが書かれています。ぜひホームズパスティーシュ
の第2弾、お願いします!




シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

シャーロック・ホームズたちの新冒険 (創元推理文庫 M た 6-5)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/11/29
  • メディア: 文庫






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三世代探偵団 次の扉に潜む死神 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

天才画家の祖母と、生活力皆無でマイペースな母と暮らす女子高生の天本有里。
彼女が出演した舞台で、母の代役の女優が何者かに殺された。
有里の目の前で倒れた被害者が最後に口にしたのは、母の名前だった。
彼女の身に何が起きたのか。事件を追ううちに、3人の周囲に次第に不穏な影が忍び寄り……?
個性豊かな女三世代が贈るユーモアミステリ開幕!


2017年、赤川次郎先生が、『キネマの天使』と同じく初めた新シリーズ。
御年69歳(70歳)で新たなシリーズを始めるという、すごい試みです。

主人公は高校生の天本有里、ですが、探偵役は祖母の幸代なのでしょう。
年の功(失礼!)といってはあれですが、彼女は物語の中である程度の事態を
見通している感があります。

相変わらず場面転換が激しいですが、それ以上に物語に惹き込まれます。
有里の目の前で起きた殺人事件。有里が通う学園の事務員である三田洋子の弟・三田広士
の元に突然現れた女性・アケミ。洋子の上司が原口恒子が抱える何らかの秘密・・・
殺人事件にどう絡んでいくのか、想像が付きません。

様々な人物の思惑と、その後ろで何かを企む組織が見え隠れする中で、
物語は続いていきます。

個人的にはラストの犯人というか、組織というか、このあたりはもっと明確に記す、
具体的に書いて貰いたかったですね。何が学園を含め起こっていたのか。
実のところよくわかりません。

ただし、赤川先生の狙いは当然結末にあるのではないのだろうというのは、
これまでの作品からも想像が付きます。

本書の副題「次の扉に潜む死神」は、人が歩んでいく上で、その都度その都度
何が潜んでいるかわからない、どうその人が変わるかわからない、という意味を
含んでいるのであろうと勝手に想像しました。

大人しそうな三隅研一や、裏の顔役をしていた永田、そして三田洋子等々・・・
多くの人たちがまるで違う人物かのように変貌、変化していく様が描かれています。

しかし、三毛猫ホームズシリーズしかり、本シリーズでも祖母の幸代がグリップ(?)
しつつ、文乃や有里は彼彼女たちの変貌に影響を受けながらも、前に進み
事件を解決に導いていくのもまた事実。

人間ちょっとしたことで、道を踏み外したり、変わったりしてしまうけれども、
彼女たち三世代のような人が近くに居れば、どんだけ安心だろうかと思ってしまいますね。

赤川先生の作品群の主人公はそんな優しい人たちばかりなのが素晴らしい点なのですが。

本シリーズ、すでに3作品刊行され、4作目もという話のようです。
1・2作は同時刊行されましたので、また近いうちに。


三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

三世代探偵団 次の扉に棲む死神 (角川文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/12/21
  • メディア: Kindle版







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西村京太郎先生、お疲れ様でした。 [西村京太郎]

91歳まで現役を続けこらえた先生にまずは敬意を表したいと思います。

世間的に見れば、トラベルミステリーという分野を開拓した、
まさに第一人者、そして2時間ドラマには欠かせないシリーズ原作者といえるでしょう。

一方で、このトラベルミステリーの大ヒットのおかげで、各出版社が
ミステリ(本格、新本格なども含め)という分野に財源を回せるようになったのではないか
とも思っているのです。

ミステリファンならば、やはり初期の「天使の傷痕」「四つの終止符」
そしてスパイミステリの傑作「D機関情報」、
さらには青春ミステリ「おれたちはブルースしか歌わない」

そしてそして、なんと言っても「そして誰もいなくなった」に真正面から挑んだ
作品である「殺しの双曲線」。
パロディであって見事な本格ミステリである、名探偵4部作。

実は島も多いのです、「伊豆七島殺人事件」「幻奇島」「南神威島」
拙ブログでも色々とご紹介させて頂きました。
(「神話列車殺人事件」や「鬼女面殺人事件」も素晴らしい。)

そしてそして、やはり「消失モノ」は忘れてはいけません。
十津川警部が活躍する「消えたタンカー」、左文字進登場の「消えた巨人軍」
「ミステリー列車が消えた」、「華麗なる誘拐」「盗まれた都市」等々・・・
挙げればキリがありませんね。

「寝台特急殺人事件」、「終着駅殺人事件」、これらも名作です。
事件現場を作り出してしまう「七人の証人」は十津川警部シリーズでも異色の傑作。

昨年まで自筆原稿で入稿されていたとのこと。
大往生の御年齢ではもちろんありますが、まだまだお元気で執筆して頂きたかった
のもまた事実。

先生、多種多様な作品を生み出して頂き、ありがとうございました。合掌。



四つの終止符 (講談社文庫)

四つの終止符 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: Kindle版



新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

新装版 天使の傷痕 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Kindle版



新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版



おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

おれたちはブルースしか歌わない (講談社文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: Kindle版



華麗なる誘拐 (河出文庫)

華麗なる誘拐 (河出文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/07/04
  • メディア: 文庫



左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

左文字進探偵事務所 消えた巨人軍(ジャイアンツ)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/01/31
  • メディア: Kindle版



ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

ミステリー列車が消えた(新潮文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/05
  • メディア: Kindle版



神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

神話列車殺人事件〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 西村京太郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2012/11/02
  • メディア: 文庫



新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

新版 名探偵なんか怖くない (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/07/12
  • メディア: 文庫



終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

終着駅(ターミナル)殺人事件 (光文社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/10/08
  • メディア: 文庫



七人の証人 新装版 (講談社文庫)

七人の証人 新装版 (講談社文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/06/15
  • メディア: 文庫



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怪異筆録者 [太田忠司]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

売れない怪奇小説家・津久田舞々(本名)は、ある日小さな田舎町からの依頼を受けて、
その町の郷土史を執筆することになる。だが、到着したその日の夜に、
彼は謎の幽霊(?)の封印を解いてしまう。「しっかり妾に仕えろよ。さもなくばお前を呪い殺す」
――現れたのはまだ幼い少女だった。ふりかかる受難を躱しつつ、
紳士的な祟り神から生意気なお狐さまなど、
異界のものたちに遭遇してゆく舞々の運命やいかに。


太田忠司先生の作品はなんと初読。狩野俊介じゃないのか!と言われそうですが、
東京創元社のHPを見ていて、気になったので購入しました。

ミステリともホラーとも内容的には言いがたく(分類としてはホラーでしょうが)、
つかみ所の無い、中々に表現しづらいものですが、楽しめました。

後半が、世界を救う!的なライトノベルというか、そういう方向だったのは
個人的にあまり好みで無かったので、前半の非日常における話の方が好きです。

各話の初めに、必ずといっていいほど、編集者の明神が夢の中に登場し、
舞々先生を罵倒したり、意味不明な言語を並び立てたりするところは面白い。
現実でもやられてそう。

個人的には「津久田舞々は夜汽車に乗る」が愁眉。
汽車内の老人との会話が絶妙です。平然と乗っている英丹がシュール過ぎる。
それと車掌の正体も以外過ぎましたね。

方喰鐵山が作った結界が、舞々の前に現れた様々な神なのでしょうが、
彼彼女(?)たちは、あくまで鐵山が旅の途中で救ってきて、古賀音につれてきた神々
なのでしょうね。
元々居たのが、旧き神で、これはまあ怨霊的な神様なんでしょうかね。
御霊信仰ではないですが、敬うことで、逆にそこに留まらせる。
まあこの話では、世界を滅ぼす方向に行ってしまうのですが。

元々居た土着神と別のところから来た神という意味では、明治以降の各地の勧請とか
思い起こさせますが、まるっきり話とは関係ないのでこのへんで(笑

この珍しい名前の舞々先生とともに、肩肘張らず、ゆったりと読める小説です。


怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/30
  • メディア: 文庫






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