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深世海 Into the Depths [ゲーム]

このところ読書ではなく、コンシューマゲーム(Switch)をしていて、
積ん読本が多くなってきました・・・

ゲームを紹介するのは相当に久しぶりなのですが、
ちょうどクリアしたので、書いてみます。

この「深世界」というゲームは、元々はApple Arcadeで発売され、
その後Switchへ移植されました。
結構前に出たのですが、ようやくクリアという(汗

カプコンさんのゲームといえば、モンハンやバイオハザード、ロックマン、魔界村など錚々たる
タイトルがありますが、こうしたソフトを発売するのは個人的には意外でしたね。

物語は、氷で地表が覆い尽くされてしまった地球。
深海で生活しているたった一人の人間が主人公となります。

一番のポイントは、いわゆる体力ゲージが空気ボンベなところ。
普通に進めば空気も減るし、衝撃を受ければボンベが壊れます。
所々に空気補給ポイントはあるものの、目測を誤ればすぐゲームオーバーですね。

また着ている大気圧潜水服を強化することで、潜れる深海がどんどん深くなるのも
面白い。耐えられない状態では即危険な状態に陥ります。

ところで、このゲーム。主人公が住んでいた場所も氷に覆われてしまい、
どんどん深海へ進んで行かざるを得なくなる訳ですが、
その途中途中に、色々な遺物や遺構、図解された何かの絵図面、潜水艦に潜導・・・と
色々なものを目にします。
特に鳥居は驚いた。あれなんであんなところにあるんだろうか?
そもそも見てもよく分からないのですが、これが本ゲームの魅力でもあります。

ラストの生物(ラスボスですね)を倒すかやられるか、これでもエンディングが変わるという
のは、やったゲームで初めてかも(普通やられたらゲームオーバーですから)。

それから水の音含め、BGMもいいです。

本作、その背景や設定など、あまり深く語られていないようで、
YoutubeほかSNSで考察されている方も多いみたいです。ついつい昨日観てしまいました。

ロックマン、魔界村までの死にゲーまでいきませんが、難易度もそこそこ高く、
主人公やこの世界の背景なども妄想したり、綺麗な映像や音を聞き入ったり、
色々楽しめます。
お値段も高くないので、オススメです。


深世海 Into the Depths|オンラインコード版

深世海 Into the Depths|オンラインコード版

  • 出版社/メーカー: カプコン
  • 発売日: 2020/04/02
  • メディア: Software Download



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早朝始発の殺風景 [青崎有吾]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

青春は、気まずさでできた密室だ。今、最注目の若手ミステリー作家が贈る珠玉の短編集。
始発の電車で遭遇したのは普段あまり話さない女子。
二人は互いに早起きの理由を探り始め……(表題作)。
部活の引退日、男同士で観覧車に乗り込んだ先輩と後輩。
後輩には何か目的があるようだが(「夢の国には観覧車がない」)。
不器用な高校生たちの関係が小さな謎と会話を通じて少しずつ変わってゆく。
ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイムで進行する五つの青春密室劇。
登場人物総出演、読んでのお楽しみのエピローグ付き。


青春小説かつ「日常の謎」(ただし全てではない)を、実に上手く描いた短編集。
筆者の「館」シリーズとはまた味わいが違い、大変楽しめました。

まずこのタイトルをみて、「殺風景」が登場人物の苗字とは思わないでしょう。
意外な所に仕込んできたなあと。

オススメは難しいところですが、「メロンソーダ・ファクトリー」。
主人公の「私」こと真田と、詩子は付き合いが非常に長いにもかかわらず・・・
というのが青春小説として、頭一歩リードしました。
ノギちゃんは名探偵になれる素質充分です。


「夢の国には観覧車がない」は、次点。いやあ、これは現代だからこそ、というか、
こうした小説が平然と書かれることを望みます。
解説でも触れているとおり、「葛城」の性別をわざと伏せているのが秀逸。
伊鳥がこの計画を実行するのにかけた苦労が報われてよかった。

「三月四日、午後二時半の密室」は、同じクラスだけどほとんど接点の無い二人のお話。
一番青春小説らしいですが、隠された謎が私にもわかったので(笑)惜しい。
だけど、素晴らしい高校生活の最後ですね。

「捨て猫と兄妹喧嘩」。個人的に、猫をその場所で共同で世話するのが無しな作品。
猫好きにはちょっと受け付けなかったなあと。

「エピローグ」では各作品に登場した人たちの、その後が描かれ、
基本みんなハッピーエンドなんだけども・・・
問題というか、やはり表題作だけは実は少し異質だろうと思います。
エピローグでも、殺風景と加藤木、両方とも名前を知らないという所で終幕ですが、
この「早朝始発の殺風景」、殺風景は親友の復讐を果たし、それを加藤木が手伝って
いるんですよね(手伝っているのは「エピローグ」で描かれます)。

少し寄り道すると、加藤木がなぜ始発電車に乗っていたのかは、映像部が行おうとしている
違法行為に荷担したくないから、なんですよね。
でも「エピローグ」では、手伝っていることが明確に描かれ、まあクラスメートの事だから
なんでしょうが、そこも大きく異なってるなあと。

他の物語と違い、この話だけは殺風景と加藤木は大丈夫なのか?
という心配をしてしまう&二人はこのまま口を閉ざしたままなのか?という。
やはりこの物語は異質なんですよね。

しかし、この短編集の中から連作短編主人公となれそうなのは、殺風景と加藤木かなあ(笑)


早朝始発の殺風景 (集英社文庫)

早朝始発の殺風景 (集英社文庫)

  • 作者: 青崎有吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/03/03
  • メディア: Kindle版







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偽悪病患者 [大下宇陀児]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

日本探偵小説草創期に活躍、江戸川乱歩や甲賀三郎と並び称された巨匠・大下宇陀児。
その短篇の精髄を全二巻に集成のうえ、二ヶ月連続で刊行する。
本巻では、兄妹による往復書簡の形式で構成された表題作をはじめ、
子供の視点から家庭の悲劇を描いた佳品「毒」、ひねりの利いた骨董奇譚「金色の獏」、
幻想小説としても世評の高い逸品「魔法街」など、戦前に発表された全九篇を収める。

すでに『烙印』も予約ました(笑
初めて読む作家さん、いやいや日本の探偵小説界における巨匠に失礼ですね。
今回復刊するということで、しかも短編集(どうも自分は短編好きです。)ということで、
購入しました。

全てにおいて捻りが効いている作品ばかりで、とても楽しめました。
表題作は往復書簡形式で語られる物語ですが、「偽悪病」とはまず何なのかというところ
からスタートする人も多いのではないでしょうか。
佐治が偽悪なのか、そうではないのか、その心配をする兄と、兄の心配を受け止めつつも、
信じていない妹。果たして佐治の正体は?
書簡で繰り広げられる疑惑や推理、そして事件。
表題作と佐治という人物の掘り下げでをミスリードとし、実に上手い構成です。
この兄、苗字も名前も出てこず、(調査を友人にさせてはいるものの)安楽椅子探偵的な
面もあるなと感じました。

「毒」はとにかく子どもたちによる純粋小説。ハッピーエンドでよかった。

「金色の獏」は騙しの世界。長編にするならば、この「金色の獏」の秘密を探るところですが、
登場する老人や女性、そして古物商、彼らの背景諸々ほとんど明らかにされなくても、
見事に成り立ちます。古物商の苦労は気の毒ですが・・・

「情獄」は、犯人による手紙という体裁をとった、独白小説。
これは潤子があのタイミングで犯行を暴いたのが、なんともいえないですね。
なぜ事件の翌日に気付いたのに、これほど長い時間黙っていたのか。
彼女の心情に謎が残る一編です。

「死の倒影」、これは超意外な「証拠」から自身の犯罪が露見する名作。
本作も書簡ではないですが、犯人の手紙という体裁で、大下さんはこうした形式を
好んだのでしょうかね。

「決闘介添人」、これも意外な結末。
これも「情獄」に構図は似ているのですが、犯罪が暴かれる結末が全く違います。
「二枚のドガの絵」に近い。強烈な一撃です。

「紅座の庖厨」と「魔法街」はSF作品になりますかねえ。
前者は行われていることは、極めて残忍なんだけれども、それを微塵と感じさせない
ところがすごいな。ユーモア的に書かれているのですよね。
登場人物(少なくとも提供を受ける側)は、全くこの行為について残酷であると
思っていないところが、非常に怖いところでもありますね。

後者は、提示された不可思議な謎を、合理的に解き明かす、
というのをぜひ読んで見たかった作品。
最初の怪事件の2つには、探偵役が見事な推理を披露しますが、推理小説としてはここまで。
この先は、まさに不可思議な世界に突き進んでいきます。

「灰人」は、ルルウという犬と、若き刑事の活躍が光ります。
これもハッピーエンド(失明しているので微妙ですが)、ラストはよかった。

残り二編は評論ですが、探偵小説論争、これは一度まとめたものを読んで見たいですね。



偽悪病患者 (創元推理文庫 Mお 16-1)

偽悪病患者 (創元推理文庫 Mお 16-1)

  • 作者: 大下 宇陀児
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/08/12
  • メディア: 文庫







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