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訃報・志村けんさん [テレビ]

自分が物心ついた時に、初めて触れたお笑いが
「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」でした。
だいじょうぶだぁ教とあのタイコ、今でも覚えています。
スイカマンやネコヘビなど、当時の私にとっては怖い探偵物語もありましたが、
練りに練ったコント、今でも十分笑わせてくれました。

そして火曜ワイドスペシャルで月1で放送されていた「ドリフ大爆笑」
志村さん初の冠番組「志村けんのだいじょうぶだぁ」
ウンジャラゲを一緒にTV前で踊った人はたくさんいたでしょう。

「8時だョ!全員集合」がDVD化したとき、本当にうれしかった。
生放送での屋体崩しの大がかりコントから、
「ドリフ大爆笑」での、収録でしかできない、ブラックユーモア溢れるコント。
好きなコントを挙げればキリがありません。

ドリフ5人のコントも、カトケンの黄金コンビのコントも、だいじょうぶだぁファミリーの
コントも、そして今も続くバカ殿やメンバーを変えてのだいじょうぶだぁ、
オチは分かっていても、笑えるコントを作れる人はもういない。

今年は映画の主役に朝ドラ出演と、日本の喜劇王が喜劇俳優としての一面を存分に
魅せてくれる、そして新たな志村さんを観ることできる年でもあったのに、
本当にショックで、ただただ残念で、言葉になりません。

慎んでご冥福をお祈りいたします。


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7番街の殺人 [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

駆け出しの舞台役者・三枝彩乃は公演の稽古に励む毎日だったが、ある晩、母が急病で倒れてしまう。
手術は成功したものの、今度は父が不倫相手と出奔。入院費と生活費を稼ぐべく女優・中原真知子の
付人として働き始めた彩乃は連続ドラマの撮影に同行する。
予定のロケ地が工事で使えず、新たに撮影場所に決まったのは、
21年前に祖母が殺害された団地だった―。一気読み必至の青春ミステリー!

本当に一気読みしてしまいました。
今の赤川作品は、シリーズものより、ノンシリーズものの方が面白いですね。

本作は、主人公の綾乃の祖母が殺害されている所から始まります。
そして、綾乃の母・佑香がまだ若く、しかも綾乃の父との出会いから。

物語は一気に進み、綾乃が女優として芝居に打ち込みつつ、
母の病により、痴話喧嘩のもつれに巻き込まれ、女優の付き人になったり、
同棲している只野との関係など、自分自身の人生がめまぐるしく変わっていく様が
まさに、ジェットコースターのように描かれていきます。

そんな彼女はふとしたことから祖母が殺害された事件を
その事件を捜査していた刑事から聞かされます。
そこからが再び物語が二転三転。

ラスト、浅野から「あの事件が眠りからさめたせいで、君がとんでもない目にあった」
という台詞に、綾乃は「いいえ、はっきりして良かったんです」と答えます。
そう、綾乃が中原真知子の付き人にならなければ、実はこの事件の解決はなかったのです。
犯人にとっては因果応報なのです。

そして、「生きるって、余計なことが積み重なってできてるんですよね」という
綾乃の台詞は赤川作品の主人公らしさでもあり、まさにユーモア・ミステリと呼ばれる
作品群を象徴する言葉だと思いました。

文庫で422頁。中々の厚さですが、そんな厚さを感じさせない展開、謎、
そして張られた伏線・・・
今、非常に大変な時期でご自宅にいる方も多いかと思いますが、
良質なミステリを楽しんでみるのも良いかもしれません。


7番街の殺人 (新潮文庫 あ 13-46)

7番街の殺人 (新潮文庫 あ 13-46)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: 文庫



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濱地健三郎の霊なる事件簿 [有栖川有栖]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

探偵・濱地健三郎には鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。彼の事務所には、
奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の刑事も秘かに足を運ぶほどだ。
ホラー作家のもとを夜ごと訪れる幽霊の目的とは?殺人事件の被疑者が同時刻に
複数の場所にいたのは、トリックか生霊か?生者の嘘を見破り、死者の声なき声に耳を傾ける
心霊探偵が、驚くべき謎を解き明かす。ミステリと怪異の融合が絶妙な、新シリーズ!

有栖川有栖先生には、
臨床犯罪学者であり、犯罪をフィールドワークとする火村英生。
英都大学推理小説研究会(EMC)の部長であり、4回も留年を繰り返す江神二郎。
南北に分断され、探偵行為が禁止された日本で、母の消息を追いつつ、事件を解明する空閑純。

この3人がシリーズ探偵を務めてきましたが、ここに4人目の探偵が登場しました。
それが心霊探偵を自称する濱地健三郎です。

あとがきで詳しく書かれているのですが、
事件の依頼人が階段を上って探偵の事務所へやってくる、ベーカー街221Bへ。
シャーロック・ホームズは依頼人が来るのを窓から眺めている・・・
そんな、まさに探偵たる探偵が本作の濱地健三郎。

ところが彼が扱うのは本格ミステリの対極にある怪奇・心霊など超常現象にまつわる事件。
(この点は詳しくは解説で書かれてます。)
しかも、警視庁捜査一課の刑事までも相談に訪れるという、これまた名探偵らしさも持ちます。
実に有栖川先生らしい感じもあります。

上記に書いたように、怪奇・心霊など超常現象を扱うとはいえ、
結構本格テイストも入ってます。
第1話「見知らぬ女」は、夫に憑いている女性の調査を頼む妻の話ですが、
このラストは第1話でこれとは驚きました。

本書の中で最も恐ろしいのは最終話「不安な寄り道」
この話はまさに怪奇。廃寺で起こっていたのは一体何であったのか。
濱地が以前に受けた依頼にも俄然興味がわきました。

積み重なった衝突やギスギス感から、このような行為に及んだと思うのですが、
さらにそこを深く知りたくなった「霧氷館の亡霊」
昂太くんには実際には視えていたのか、それとも「彼女」の配慮で、
誰かわからないようしていたのか、その辺りも気になりました。
この事件解決はかなり痛快で、最後に昂輔がランプスタンドを贈ったのは
本当の真相を濱地は彼にだけ話したからなのでしょうか?

心霊としてもミステリとしても一捻りが見事に効いている「分身とアリバイ」
そんな小説じゃあるまいし、というトリックを用いているのですが(笑
このトリックを非常にうまく活かした作品です。

いやどの作品もおもしろい。心霊的なら「寄り道」が愁眉。
ミステリとしては「分身とアリバイ」が愁眉かなあ。

すでに第2作目も発売されるということで、こちらも楽しみです。
有栖川先生、ソラシリーズもお願いします!


濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: 文庫



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聯愁殺 [西澤保彦]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者、梢絵を囲んで推理集団“恋謎会”の面々が集まった。
四年前、彼女はなぜ襲われたのか。犯人は今どこにいるのか。ミステリ作家や元刑事などのメンバーが、さまざまな推理を繰り広げるが…。ロジックの名手がつきつける衝撃の本格ミステリ、初の文庫化。

以下、ややネタバレ。



多重解決ものの様相を裏表紙解説文などでは感じられ、特に本書では、
推理集団「恋謎会」の存在が特筆される存在でしょう。

ところが、、、です。
確かに本書の大半はこの「恋謎会」のメンバーの推理が占めているのですが、
彼彼女らの推理が微妙なラインをいくんですよねえ、これが。
それは良い意味でも悪い意味でも微妙なんです(笑
被害者の繋がりなど絶妙なヒント(というか調査)を報告する人とかも居て、
なるほどと思わせつつも、実際の事件の解決には至らず。

本書はいわゆる「どんでん返し」の作品なのでしょうが、
確かにこのラストはさすが西澤保彦先生と思わせるものがあります。
しかし、上記「恋謎会」とこのラストを結びつけるのがちょっと弱すぎるのではないかと
感じました。最後に推理を披露する人物は、確かに「恋謎会」でのディスカッションを
聞いて、真相に到達するのですが、もっと繋がりを持たせてほしかったなあと。

ラストは新たなミッシングリンクに基づき殺人を行っていく犯人の決意が語られる
のですが、ここは動機というホワイダニットを考える上でとても興味深かったですね。


聯愁殺 (中公文庫)

聯愁殺 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/09/22
  • メディア: 文庫



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黒面の狐 [三津田信三]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

敗戦に志を折られた物理波矢多は、九州で炭坑夫となる道を選ぶ。
意気投合して共に働く美青年・合里光範もまた、朝鮮人の友を過酷な労働に従事させた過去に
罪悪感を負っていた。親交を深める二人だが、相次ぐ変死体と“黒い狐面の女”の出現で
炭鉱は恐怖に覆われる。ホラーミステリーの名手、新シリーズ開幕!

三津田さんの著作も久しぶりです。
刀城言耶シリーズを読んでいないのですが、新シリーズもので、他ブログ様で紹介
されていた本書を購入して早速読んでみました。

本格(+民俗学的側面)かと思いきや、本書は社会派ミステリといって
差し支えないでしょう。
かつて日本の産業の中心であった炭鉱が舞台の本書は、戦前・戦後の炭鉱の有り様や、
そしてそこで働く労働力の確保、そこにある戦前の日本軍の関与など、
様々な面を垣間見ることができます。

主人公の物理波矢多がまたどこかつかみ所がないというか、中々面白い人物に
描かれていて、飄々としている面、復員直後だからなのか、人生を諦めている感も
あり、かなり好感が持てます。

ミステリとしては、いわゆる「顔のない死体」が炭鉱から発見されますが、
このトリックのさらに裏をかいた仕掛けがお見事。
この仕掛けは、本書が戦後の混乱期を示す一場面となっている点でもあります。


一点だけ、これは民俗学というか都市伝説的なものだから仕方ないのかもしれませんが、
黒い狐面をかぶった女性の存在が、気になりました。
そんな話が伝わっている、といえばそれまでなのですが、
この話にもできれば何らかの解釈が欲しかったところです。


すでに次回作は発売されているようなので、ぜひ早く文庫化を!


黒面の狐 (文春文庫)

黒面の狐 (文春文庫)

  • 作者: 信三, 三津田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/03/08
  • メディア: 文庫



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