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妖怪ハンター稗田の生徒たち [コミック]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

異端の考古学者・稗田礼二郎の教え子たちが人智を超えた常世の世界を垣間見る――。
大きな藁の人形の謎に誘われて四方口村に訪れた美加は、
村に伝わる不思議な風習に触れ現世と幽世を繋ぐ坂へ足を踏み入れる…。
コミックス未収録の「美加と境界の神」他、「夢見村にて」「悪魚の海」の全三編を収録。


ミステリ以外は久しぶりです。
元々、民俗学とか、怪異とか怪奇、あるいはオカルト系が好きで、
諸星大二郎先生の妖怪ハンターとか、山口譲司先生の村祀りとか、
伊藤潤二先生作品などなど、結構読んでます。
楳図かずお先生ももちろん。神の左手悪魔の右手が好きですねえ。

というわけで、主役は稗田礼二郎ではありませんが、このシリーズも読んでいて、
今回、コミックス未収録作品も入るということで購入しました。

「美加と境界の神」は、まあ日本でどういう埋葬方法、葬儀をしているか、
もしかしたら、ある地域によってはこういう事もあるんじゃないかと思わずにも
居られません。
しかし、本来は「賽の神」として機能していたはずの「大人形」が、
地蔵菩薩のような役割を果たすというのが意外過ぎました。
稗田が最後に語るように、「境の神もいろいろな顔をもつようになる」のでしょうか。

「夢見村」は再読ですが、何度読んでも完全に理解できないなあ(苦笑)
美加は先生の設定では、超能力美少女女子高生!らしいので、まあとにかくすごい
のだろうということはわかりますが・・・言葉の意味はよくわからんが、というやつです(笑)

この物語、どれが夢でどれが現実なのか、どこまで夢なのか、それがあまりに
曖昧で、不気味なんですよね。ドラえもんの「うつつまくら」を思い出しました。

妖怪ハンターシリーズ、また新作が読みたいですね。ぜひ。


妖怪ハンター 稗田の生徒たち 美加と境界の神 / 夢見村にて / 悪魚の海 (集英社文庫(コミック版))

妖怪ハンター 稗田の生徒たち 美加と境界の神 / 夢見村にて / 悪魚の海 (集英社文庫(コミック版))

  • 作者: 諸星 大二郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/16
  • メディア: 文庫







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静かな町の夕暮に [赤川次郎]

まずはAmazonさんの紹介ページから。


こんなに楽しくていいのかな。
小さな町に撮影隊と事件がやってきた。

山あいの田舎町に三週間だけ映画の撮影隊がやってきた。
ビッグニュースに町は沸く。
地元の高校演劇部にも声がかかり、部長の法子もスクリーンデビューすることに!
撮影が終わったある夜、演劇部の後輩克枝が夜中に保健室の明りを見つけ、
近づくとそこには男女の姿があった。
その二人は誰だったのか法子に話す前に克枝は殺されてしまう!
高揚していた町は不思議な沈黙に包まれ――。


更新が止まってしまっておりました。しかし暑い!
以下、ややネタバレありです。





赤川さんのノン・シリーズはほとんどハズレがない。
講談社文庫でかつて発売されていたとは知りませんでした。
それにしても、徳間さんの新装版、復刊は本当にありがたい。感謝感謝です。

本作の主人公は赤川作品常連ともいえる、女子高生の指田法子。
彼女の住む、山間の町に、映画のロケ隊がやってきたことから、事件は始まります。

といっても、彼女が探偵役という訳ではありません。
ただ、彼女は、このロケ隊が来たことから、自身の人生や、自分が住んでいた町、
さらには大人たちの勝手な都合などを、次々と目にすることになっていきます。

真相が語られた最後、彼女は「『良かったですね』なんて言う資格は、誰にもないわ」と
強い口調で言います。これが彼女の今回の事件への怒りそのものですね。

「かもしれない」、という曖昧な表現で、なぜか町の外れに住む平井家の人々が犯人に
されているのか。かつてあったある事件がきっかけとはいえ、これは極めて陰湿です。

今でもあるのかもしれませんが、ある意味「村八分」的なものなのでしょう。
事件は確かに解決しました。しかし三屋久美、佐野康代・ユリ母娘、平井啓一、
彼彼女たちは誰一人として、救いがありません。
(啓一にとっての唯一の救いは、殺害された岡田典子の手紙でしょうか。)

そして、法子たちが住んでいた町も、平穏を取り戻すのでしょう。
しかし、町の本質は変わっていません。
法子たちが東京へ引っ越すというのも、ある意味脱出とも取れてしまいます。
この辺り、大団円と見せかけて、中々に後味の悪い作品を描かれたなあと
勝手に思いました。

ところで解説で述べられている、講談社推理特別書下ろし、の第1期ラストを
本作が飾ったというお話。もちろん初めて知りましたし、
この叢書レーベル自体も初耳でした。
確かに後世に残る作品が送り出されていて、素晴らしいの一言。

過去のミステリの歴史を振り返る作品というのは、
『本格ミステリ・ディケイド300』などあり、私も持ってますが、
より奥深く、こうした各出版社のレーベルのみならず、そのラインナップにも
迫る、ミステリ評論のような書籍が出てくれると、うれしいですね。
刊行した作家さんのオーラル・ヒストリーもぜひ収録で。
(すでにされている書籍があったらすいません。)



静かな町の夕暮に 〈新装版〉 (徳間文庫)

静かな町の夕暮に 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/06/08
  • メディア: 文庫



静かな町の夕暮に (講談社文庫)

静かな町の夕暮に (講談社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: Kindle版










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災厄の町 [海外ミステリ]

まずはAmazonさんの紹介ページから。

結婚式直前に失踪したジムが、突如ライツヴィルの町に房ってきた。
三年の間じっと彼の帰りを待っていた婚約者のノーラと無事に式を挙げ、
ようやく幸福な日々が始まったかに見えた。ところがある日、
ノーラは夫の持ち物から奇妙な手紙を見つける。そこには妻の死を知らせる文面が…
旧家に起きた奇怪な毒殺事件の真相に、名探偵エラリイが見出した苦い結末とは?
本格ミステリの巨匠が新境地に挑んだ代表作を最新訳で贈る。

以下、ネタバレがあります。




はっきりと覚えていないのですが、『十日間の不思議』の新訳版というのが
Amazonさんのオススメか何かで出てきたんですよね。
で、よくよく見てみると、架空の町・ライツヴィルを舞台とした、シリーズとのこと。
それだったら、それを最初から読まないとと思い、購入しました。
ちなみに、初めて電子書籍でミステリを購入しました。
本書と『フォックス家の殺人』、いずれも過日のプライムデーの関係で、
Kindle版がかなり安くなっていたので。
そして『十日間の不思議』は新訳文庫版で購入。


このライツヴィルという、町がいいですね。良い意味でも悪い意味でも。
前半のライト家への接し方と、後半のそれのギャップがすごすぎます。
金田一耕助シリーズと少し似た感じがありますが(旧家が舞台)、
いかにも地方や田舎に多い、噂話、すぐに広まるゴシップ等々・・・

エラリイは何が気に入ったんでしょうかね?小説を書くのに打ってつけだったのか?
そうだとすると、それは環境の問題なのか、ライツヴィルに住む人々の問題なのか、
どちらなんでしょう。
しかも偽名で滞在します。


そして本作で描かれる事件、解決までが非常に長い!
ライト家を取り巻く人間模様が精緻に描かれていきますが、事件という程の事が
起こるのはずっと後。そう、ジム・ハイトがライツヴィルに戻ってきてから
進行していきます。この発生までも結構長いですね。

やはり陪審員裁判のところが、私は個人的に一番好きです。
特にエラリイが本名を明かし、そしてあの衝撃的な証言。
一方で、この段階では未だエラリイにも真犯人は不明だということも、
この証言から明確なんですよね。

エラリイが真実に気づくのは、本当にちょっとした、3通の手紙が出てきた場所から。
しかし、この真相は凄まじい。
ジムがライツヴィルに帰ってきた後、ほぼ即座にノーラは結婚していますが、
それだけ燃え上がっていたにもかかわらず、3通の手紙から、
彼女も真相に気づいたのでしょう。

そしてジムもそれを受け入れ、頑なに口を閉ざしています。
ノーラの最期があまりに壮絶なので、エラリイもこの真相は
パットとブラッドフォードだけにしか伝えていません。
真相が分かってよかったのかどうか、それすら悩む事件です。

いやあ、私なんか言うのもおこがましいのですが、これは傑作です。


災厄の町〔新訳版〕

災厄の町〔新訳版〕

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: Kindle版










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